カラフル萬福星5号(99年4月発売)

神海のみなも

Maruto!

吉本 一寸懐かしい触手系の作品なれど、モノローグが基本になっているので結構読めてしまう。コンピュータによる描画も自分のものにしているようだし。次は「コンピュータによる描画ならでは」の作品を読んでみたくなる。
久遠    
Smiles Like Teen Spirit

いるまかみり

吉本 今「流行」の内面描写もの。徹底的にモノローグで語る手法は今までのエロマンガとは一線を画し、新しい表現の地平へと向かっている。ほかの漫画より頭一つ抜け出た感じ。ただ、皮肉なことではあるが、こうした手法は実はそう難しくなく、簡単に「それらしく」することができることが明らかになっている。今後この手の漫画は爆発的に増えて行くだろう。問題はその後だ。
久遠    
チカンを捕まえてみたら昔のカレだったと言うわけで…

唯登詩樹

吉本 うーむ。流石に職人。きちんと見せるべきところを見せ、漫画としても短いながらもまとまっている。敬意に値する。
久遠    
Body Language2

けろりん

吉本 実はこの雑誌のなかで一番注目しているのがこの人。深いところから現れる抽象化しない女性のエロスに、きわめて忠実なのだ。加えてやよい先生やるもいじゅんのように「特殊」ではなく、普段のセックスにおいて現れるような女性の性欲をあらわしている。ここにある「生のエロ」に、私は欲情する。
久遠    
Venus

ひよひよ

吉本 独自の絵柄には力があってよい。常に女の子の顔を逆向きにすることによって無重力も上手く表現されている。ただまあそれだけといえばそれだけ。
久遠    
淫魔狩り

吉野小雪

吉本 オハナシはもう使い古されきっているもの。絵柄はかなりコンピュータよりのもので、かつての漫画とは一線を画したものになっている。絵の先進性の足を、オハナシが完全に引っ張っている。もうチョイ考えて欲しいところ。
久遠    
SCSI

町野変丸

吉本 ファスト!ワイド!ウルトラワイド!ただのウルトラではなくウルトラ2ワイド!!ワイドはスピードを落とすのでデイジーチェインから外されるあたり芸が細かい。わかんない人には全く分からないだろうが、コンピュータライズされることが前提のこの雑誌ではきわめて光っている。思わず爆笑してしまったわい。
久遠    
欧珈街道

安森然

吉本 この人のうねるような、そしてねばつくような描線はきわめて注目されるべきものを持っている。今回はエロの要素が少ないが、エロも描ける人なのであろう。フォローしてゆく必要がある。
久遠    
火星電機Save the Mall

藤岡建機

吉本 確かにこの手の「ぷに」は流行ではある。そしてこのざらついた画面はほかの作家と一線を画している。ただ、ぷにはぷにでしか存在し得ず、それ以上のものになり難いのが辛いところ。
久遠    
She's

芹沢克巳

吉本 この作品はコンピュータを完全に紙の代替物としている。それはそれでメリットのあることなのだろうが、どうせならもう少しコンピュータならではの効果なりを見てみたい。オハナシはダメ。
久遠    
ALIVE

NAKADO×橘セブン

吉本 続き物のせいかストーリーはしっかりしているし、CGの使用も効果的。作画とCGワークを分けているところに強みがある。CGの導入はこうした集団制作体制も可能にするのだ。無論このことは「天才」の消失も意味し、微妙なところではあるのだが。今後の可能性は感じる漫画である。
久遠    
家政画報

呼我タカヒロ

吉本 えてしてこの手の蘊蓄系4コマはパターンに陥ってしまいやすいが(『そんな奴ぁいねえ!』を参照)、この漫画は実話に取材することによってその陥穽から逃れている。カリカチュアライズの具合も程よいようだし。面白い。
久遠    
Book Diver

羽衣翔

吉本 いまだにこの手のSF+ファンタジイのミクスチュアをやってしまう感性にほとほと敬服する。様式化されきったキャラクタにどこかで見まくったような設定。絵の迫力こそあるが内容は切ないことこの上ない。ありがちなエロ漫画雑誌から少しずつずれてきているこの雑誌では、逆にこうしたオハナシは生きるのであるが。徳間系の作品とCGの親和性の高さには驚くべきところがある。ただ、この人は、一生同じことを続けそうでやりきれない。卵の殻を破らなければ僕らは生まれずに死んでゆくというのに!!
久遠    
2 PIECE

TAGRO

吉本 流石はTAGRO、意地でも普通の漫画にはしない。抽象化した絵柄で、日常性を少しずつずらして、イマジナシオンの方向に突出したエロスを描こうという意図が見え隠れして脳に心地よい。そして読者は完全に置いてきぼりにされる。だが逆にそのすっとぼけた感じがイイのだ。道満清明と同様の方向性がここにある。とても面白い。
久遠    
VIctim of Love

月野定規

吉本 やや尻切れのきらいがあるがオハナシは深くてよい。CGの使用も手慣れた様子。ただ残念なのは画面解像度が低く、トーンの処理などがざらついて見える点。もう少しマシンパワーが必要なのでは?
久遠    
隣星1.3パーセク

粟岳高弘

吉本 説明不足のオハナシ、常人とはかけ離れたセクシュアリティ、観念性の高さ。こうした要因がこの漫画を非常にとっつきづらいものにしているが、二つの点でこの漫画は徳目を持っている。第一には線が描き出す「異世界」の感覚。第二には昔懐かしい、森山塔がしきりに持ち出していたハードSFの感覚。後者だけでもこの作品は評価されるに値する。
久遠    
愛は萌えているか?激情編

西木史郎

吉本 元気のいい漫画ですこと。一寸参考書(島本作品)に依拠しすぎの感も強いが、この調子でアツくやってゆけばいいのではなかろうか。
久遠    

<総評>

吉本 この雑誌を取り上げる理由は二つある。第一にはコンピュータを画材として採用している漫画*のみ*を載せていること。避けることができないコンピュータの導入の流れを先取りし、その新たな可能性を模索してゆこうとしている姿勢を感じるためだ。第二には載っている作品がそこそこ変わっていて面白いこと。これはおそらく画材の変化に伴う作画/作劇姿勢の変化が背景にあるのだろう。ここにも様々な方向ながら、既存の漫画に対するオルタナティブが現れている。「巨匠」を読み返すことも必要だが、「いま、ここで」起こりつつある変化のダイナミクスにも触れなくてはならない。そこでレヴュに採用するという次第だ。
久遠  

<ベスト>

吉本 笑わせてもらった変丸とTAGROにしよう…とも思うが、かれらはいつでもトップに推せる。そこでここでは「ALIVE」と「Victim of Love」にしたい。両者ともオハナシとCGが程よく、そして必然的に結びついているからだ。
久遠  

Back