アワーズ2000(1999年12月発売)

アレキサンダーの図書館

犬丸
吉本 巨大な図書館に紛れ込んでしまった少年。そこで出会う長髪の青年…。短いページ数ながらもきちんとオハナシを配しているのが好ましい。カラーのつけ方がいかにもまだ未熟という感は否めないが、まとまっているのは良い。
久遠 そういえば、子供の頃は司書になりたかったなあ。
愛しのリボンちゃん

犬上すくね
吉本 なにゆえ大学生江戸川と(夜間)高校教師まほ先生が付き合うようになったかは、永遠の謎(笑)としてわれわれに提示されてきたわけだが、ここできちんと理由が示されている。なるほど、こういうわけだったのですね。50ページの長尺を感じさせない息を付かせぬ展開と、ふぬけ極まりないラブラブ展開が好ましい。その一方で恋愛には何が必要かを気づかせてもくれる。もうダメ、って感じです。私。
久遠 10 ぎにゃー!もうワタシの骨はありません。
ワタスモノ

桃色ハナ子
吉本 立て続けに唸らされてしまう。最初はギスギスしたオハナシで、ある転機を境にハートフルなオハナシに急展開するってのはハナ子先生お得意のパターンなのだが(「おなかのなかのあなた」参照)、ここでもそれは存分に発揮されている。転機になる一言がブラフなのか、心底からのものなのかはわからないのだが…ただヤりたいだけの言葉が相手に訴えることもあるからなァ…。
久遠 何故に、桃色?名前かえる必要有るの?ってゆうか、「おなかの中の貴方」を思い出しました。
仔羊は迷わない。

おがきちか
吉本 毎年一回のサンタとの対戦に備える女子高生イチノ。勝てば「なんでも欲しいもの」がもらえるのだ。もう11年も負けつづけているイチノは今年こそ勝つ覚悟でサンタ(本名桜井憲太郎)に挑む…というオハナシ。サンタが武芸の達人というのが面白いじゃないですか。ほぼ全編打撃系の格闘シーンなのだが、そこに上手くオハナシを絡める手法がよろしい。そして予想はされていたものの、存分に骨抜きのラスト。実力を感じる。
久遠 ちょと、身体の動きに無理がないかい?
EXTRA CHIKEN

西村竜
吉本 クリスマスの過ごし方についてケンカしてしまう恋人たち。周りの友人たちはなんとか仲直りさせようとするが…。オハナシについては「こんなものでしょ」というレベル。気になるのが絵。この人の場合、単調で動きのない絵が特徴であるのだが、ちょっとこの作品では単調に過ぎるような気がする。「そういうあなたもアップばっかり(必殺山本るりこ)」
久遠 くりすます?そんなモノが今年、存在したんですか?
アニバーサリー199X

樹るう
吉本 クリスマスに彼女と楽しいひとときを過ごそうと早めに帰宅するサラリーマン。しかし鍵を落としてしまい…トいうところから始まるコメディ。コメディとしては良くできているように思う。気軽に読めるのがいいではないですか。
久遠 冬は寒いよ・・・。あの放射冷却の寒さといったら・・・
サディスティック・サーキット

永井朋裕
吉本 南野はづきは普通の女の子だったが、悪の秘密結社ジャドーに改造され、「女王女」にされてしまった。普段は心やさしい女の子。しかしジャドーは彼女を見逃すはずはない…といったくっだらないオハナシにまず感服するではないか。後半、「女王女」に変身してからの展開もスピーディーでよろしい。短編としての完成度が高いのが良いではないですか。まるで漫画賞の投稿原稿みたい。…ていうか、持ち込みですか?これ?
久遠 ふーん、まあ、こういうも、有るでしょ。
サンタクロースになろう!

森見明日
吉本 地図に載らない、サンタクロースを輩出する村。そこでは年に一度、最高のサンタの座をかけたバトルが行われる。青年アイルは、レミとの結婚を認めてもらうために、20年連続優勝しているレミの父親にバトルを挑む。森見らしいさわやかなオハナシ。ただ、もう少し「なにか」が欲しいような気もする。もうちょい。
久遠 いやーん、はーとふるー。
泥棒猫

大石まさる
吉本 悪徳商人のビルに忍び込む男女の怪盗。狙うは…というオハナシ。キャラクタが犬なのでいつもの大石味はやや薄まっているように思うが、こうしたタイニーなドタバタも悪くない。
久遠 ほんとうに、ホントウにこのスタイルで行きなさるのか?何故に猫でなくちゃ行けないんだあっ!
SWEETS

比古地朔弥
吉本 OL、ユカの彼氏はケーキ職人。彼の店も、作るケーキも、レベルは高いのだが地味地味。彼はクリスマスフェアでケーキを出品するのだが、地味なため全然売れない…と、絶望的なオハナシ。最後にはちょっとほっとするのであるが、それにしても。「神様ゆるして」でもそうだったが、比古地はこうしたビターな展開がお好みなのであろうか。ちょっとグレイになりすぎてしまい、エンターテイメントとしては弱いような気がするが、他では読めないような作品であることは間違いない。
久遠 神様ゆるして。
ジオブリーダーズ

伊藤明弘
吉本 「紅の流れ星」梅崎のオハナシ。完全にアクションと割り切って読むと非常によろしい。
久遠 増刊で本編の複線張るなよう。
嗚呼!純愛番長

小野寺浩二
吉本 クリスマスイブの夜、ギャルゲーで一人過ごそうとする番長。子分にそそのかされ、夜の町へ出る。ところが…「今ならなんかスゴイ必殺技繰り出せそう!」と。加藤礼次郎を思わせる過剰な描写とベタネタのオンパレードに「覚悟」を感じる。面白いじゃあないか。
久遠 加藤礼次郎かと思った。
戦場でメリークリスマス

竿尾悟
吉本 本誌掲載中の「迷彩君」のオハナシ。今回迷彩君は礼装用の制服を着て、ベレー帽を被って彼女のところにクリスマスプレゼントを届けに行く。プレゼントはかわいらしいぬいぐるみ…これはかなり悪夢的なオハナシ。意識的に描いているのだったらかなりのモノだ!ヤバ!
久遠 いらない。
はたらくおねえさん

八雲みどり
吉本 OLの日常や旅行体験を描いた4コマ。一応クリスマスと絡んだネタもあり。これは評価しづらいところ。
久遠 後藤ユタカや秋月りすの路線なのかなあ。
X'mas・修羅場ーズ・ナイト

井原裕士
吉本 実力派登場。主人公の女の子は漫研所属。26日の例のイベントに備え原稿を描くが、部長にダメを出されてしまう。本当は部長と二人きりの夜を迎えたかったのに。…オハナシはきわめてありきたりなのだが、絵柄とコマ割りが工夫されているので、ずいぶんすらすらと読める。さすがにこの辺りは実力を感じるところ。骨抜き系展開も面白い。いい短編を描ける作家なので、多く作品を読んでみたいと思う。
久遠 今年に限ってそんなことはないよ。だって、ねえ、当日が戦場だし。
ひねもすヨメ日記

ひぐちきみこ
吉本 本誌と変わらず。
久遠 電脳学園ミレニアム、バグが多いよう。
きよしこのよる

宮下未紀
吉本 後悔先に立たず。こぼれたミルクを嘆いても遅い。恋愛たあそういうもんです。
久遠 むにー、御都合?ってこの人も、外周だよねえ。
冬の羽音

九尾たかこ
吉本 まだ若い夫婦。ダンナは会社がつぶれ、ヨメに食わせてもらっている。クリスマス用の買い出しに出かけた商店街で、二人は迷子の女の子に出会う。女の子が来ることでぎすぎすし始めていた二人の関係は…というオハナシ。後半フャンタジイになってしまいちと残念ではあるが、人の心のつながりを描いているという点で評価できる。いい短編だ。
久遠 内藤先生と結婚したという噂は、ホントウなのですか?

<総評>

吉本 見事なくらいのコミティア人脈。青田刈りの成果とでもいうべきか。ただこうした「コミティア的傾向」は、現在の漫画状況においてかなり有効であるように思われる。方向性としては間違っていないのではないか。実際面白い作品が多いし。
久遠 ってゆうか、モロティア系?いいのか?こんなにモロで?ってゆうか、表紙の評判悪すぎ。

<ベスト>

吉本 そりゃあ普通に選べばすくね先生なのだが、ここはあえて小野寺浩二「純愛番長」にしよう。最後の1ページに私も泣きましたぜ。
久遠 姉が昔包装紙を留めていたリボンで髪を縛っていたのを思い出しました。

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