アワーズ2001(2000年4月発売)

*今回はスポットでデジタル ボウイズの男マンさんにレヴュをお願いしています。ありがとうございます!!!!!

レヴュ担当 吉本松明
久遠永遠
男マン

恋愛ディストーション

犬上すくね
吉本 一緒に新幹線を使って帰郷する大前田と棗。だが隣り合った席を取ることができず、ちょっとすれ違うふたり…。大前田と棗の関係がどのように作られてきたか、という辺りの描写にニヤリ。「イヌ型」人間は確かに存在するのだ。甘甘の展開が確実に読者の骨を抜きさる危険な作品。単行本の広告さえテレているのが面白い。
久遠 俺様ちゃんも友達と、帰郷を同じくすべく待ち合わせをしたことがあるのですが、何故キャツは待ち合わせの5分前に柏にいますか?殺して良いんですか?柏から東京駅まで何分かかると思っているのですか?
男マン なんだか長さのわりにあっさりしてるような・・・。もっとこっぱずかしさを!もっとラブ光線を!赤面のあまり先を読み続けられなくなるほどに!!
ひねもすヨメ日記

ひぐちきみこ
吉本 ラブラブだったんですか。今もそうなんじゃないですか?ページが短いのでちょっと減点。
久遠 そうか!このころ壁の隙間からするめとかが出入りしていたんだね。
男マン 読むとなんだかほのぼのしてきますな。といいつつ、無くてもいいといえばいい、と言えてしまうところが弱い。
さくらなはーと

大石まさる
吉本 大石の美徳は、あらまほしき少女像を作り上げ、それにきわめて忠実であることにある。それは想像上の存在かもしれない。しかし大石は少女の徳目をきちんと、余すことなくそれに付与する。製作姿勢にぶれがないのがいいじゃないか。「こんな少女いねえよ」なんて、言いっこなしなし。この作品では、互いに惹かれ合うきもちを丹念に描いている。ページ数が多いせいもあってか、実に描写は丁寧。真っ向からの直球勝負がまぶしい。
久遠 ああ、乙女が!乙女が!でも、卒業後、違う町に行くというのは、王道すぎて、反則。
男マン 甘酸っぱい!!好きな男の子に出くわして、あわててスカートの下のジャージをまくりあげる桜ちゃんがかわいすぎです。ああん。抜群!
銀符とその守護者

おがきちか
吉本 旅の姉弟は、宿の娘を巡ってひと暴れ。結果大きな争いに巻き込まれる。だが実は彼女らは悪魔の使い。邪悪な魂を狩って、悪魔に売り渡すのが仕事…というオハナシ。意外性のあるプロットがまずはいいじゃないですか。善に属す人が善を行うのではなく、悪を行うことによって結果的に善になるという複雑で興味深い構造がここにある。加えて前作でも見られた躍動感ある描線が良い。特にアクションシーンではそれが存分に発揮されている。微妙にデッサンが狂って見えるのが、逆に動きを作り出しているのだ。キャラクタも魅力的。流石にティアで高い評価を受けるだけのことはある。次も期待。シリーズものもいいでしょう。
久遠 にょー、ちょっと展開が速いかな?というか、これまた王道すぎ?
男マン 読み切りというより、連載の一部分、という感じ。きっちり楽しめる小品。
自転車フランケン

黒田硫黄

吉本 10 …。
1ページ読み進むたびに嘆息。「外人にナンパされたよ」と語るホステスだが、外人っちゅうのはなんともフランケン的な存在じゃあないですか。その人を食った、硫黄独特の世界(日常に潜む異質なもの)にまずは酔う。そしてフランケン的存在はやっぱりうあーとかぐえーとかしか言わないし。目が回りまくりってしまう。肩の力の抜けた可愛い描線も笑うしかないという感じを強めている。最近の硫黄の作品の中でも図抜けて笑える作品。
久遠 何なんですか?これは?ちょっと、奥さん!私にナニを求めているんですか?
男マン 自転車に乗るフランケン!しかもそれを何の違和感無しに受け入れる主人公達。全編に漂うやる気の無さ。すばらしい!あと前から思っていたけれど、僕はこの人のマンガのなにげない会話のシーンが好きです。説明無しなところがリアルな感じになるのだと思うのだけれど。
トリコの娘

TAGRO
吉本 突然男の前に現れる女。彼女は炊飯器を抱えている。「それ炊飯器だよね」「それって私が女か尋ねてるようなものです」
どうやっても手からすり抜けていってしまう女。それをなんとかつなぎとめようとする男。むなしい試みかもしれないと知りつつも、男は試みをやめるわけにはいかない。そこにドラマが生まれ、切なさが生まれる。ちょっとネームが多いきらいこそあるが、「痛さ」は相当なもの。ちなみにTAGRO先生の掲示板によると本当のタイトルは『トリコの器』であるとのこと。
久遠 いたいですなあ、相変わらず。っつーか、今までのコンボで、失神しそうですよ?
男マン 女の子の目が恐い。恐いけれど可愛い。あああああ!そしてずんずん引き込まれて行きました。おもしろい!ですが最後の方、ちょっとくどく感じたので8点ということで。
痛怪!百物語

西川魯介
吉本 そして魯介ですか。切なくさせておいて魯介でさらりと切り返す台割の妙。オハナシは際立ってくだらなくって良い。この調子でどんどん作品を発表して欲しいもの。旧支配者ものなんていいと思うンすが。
久遠 首のリンパ・・・俺様ちゃんも腫れたことがある・・・。臨死体験っちゅうやつ?
男マン 男たちのスネ毛が涙を誘います。なんか共感してしまう・・・。
エターナル ブルー

犬丸
吉本 確かに一見すると手抜きに見えるかもしれない彩色ではある。しかしそれは表現内容に合わせ、積極的に選択されたものである。今回は喪失がテーマなので、いっそうざっくりした、空虚を多分に含んだ彩色が生きている。短いページ数ながらきちんとオハナシもまとまっている。
久遠 !少女だったのですか!手塚治虫の描く少年かと思った!
男マン 正直、女の子が男の子に見えてしまいました。Painter的な塗りの味は好きですが。
LIO BRAVO!

伊藤伸平
吉本 銀河の借金取りリオ。息子を私立の小学校に進学させるために、宇宙戦争真っ最中の恒星系に赴く。お供をするのはロボットのロボ子…。いやあ、スペオペなんて何年振りに読むだろう。それだけでもドキドキものだっていうのに、キャラクタが非常に良く立っていて魅力的。美人で強引で目的のためなら手段を選ばないリオ。いつもリオに「可愛がられ」ながらも、けなげに主人に尽くすロボ子。いいですなあ。ロボ子萌えだぜ。加えて練りこまれたプロット。キャプテンの遺産ここにありといったところだろうか。改めてストーリーテラーとしての伊藤の実力を確認。ちなみに登場する地名はすべてWW2に関係したもの。アシカ人民軍、ってのはドイツのイギリス本土攻撃作戦の「アシカ作戦」から取ったものでしょう。
久遠 やはり一本木蛮とかと行ったのか?加藤礼二郎はやっぱり全身タイツだったのか?
男マン むー。やっぱり面白い。結構ひさびさに読んだ気がしますが、職人芸を感じます。それと、この人のマンガを読むたびに自分の知識の浅さが悔しくなるのです。多分ぜんぜん読み取れてないんだろうなー、というところで。
水の中の少女

どざむら
吉本 6.5 女子高に転校してくる早紀。彼女はプールで泳ぐショートカットの女の子に目をとめる。「アワーズ」に登場した最初の頃は、エロ的要素と表現したいことが乖離を見せていたが、最近では次第に頭と手が結びついてきているように思う。というかエロ要素を正面に出さないようにしているのが良いのだ。無論まだ成長しきってない娘の水着、全裸で飛びこむプールと、エロ要素はあるが、それは背景/メタファに後退している。直接的なエロを描かずして、エロを演出するから面白いのだ。この調子でばんばん作品を発表して欲しいものだと思う。
久遠 似たような話をどこかで読んだような・・・。どざむらの漫画はいつもそういう感覚を引き起こすのですが。
男マン なんというか、軽いレズ的要素であるとか、レイプという暗い過去であるとか、安易に流れているような気がしてならないのです。モチーフは好きなんですが入り込めず。
あかるい農村

比古地朔弥
吉本 主人公の村は、昔からどんな天変地異からも守られていた。それは村の守り神がいたからだ。そして主人公は村を守る役目の忍者なのだ!というオハナシ。いろんな意味で目を疑う作品。何故に忍者?という疑問が最初に出てくるのだ。そして主人公夫婦の造形もヘン。奥さんは主人公のことを「ダーリン」と呼ぶし、ボケボケだし、農村はのどかだし…。期待を裏切る比古地には吃驚だが、どう対処していいのやら。
久遠 馬鹿スキルは限りなく低いのでは?でもなあ、痛いのだと、そんな漫画ばっかりになっちゃうからなあ。雑誌的に。
男マン ほんわかしてますなー。「2000」の時の短編もそうですが、こっちのほうがさらにほんわか。ぬるま湯につかってる心地よさです。「けだもの」もいいがこれもいいです。
妄想侍2000

小石川ふに
吉本 侍とあるが現代もの。主人公はデザイン事務所でバイトする学生。いつもやり手の社長(女性)に鍛えられている。ところが実はふたりはデキていて、主人公の役割は社長のおさんどん。仕事に打ちこみ、疲れている社長を見て、「ちょっとは寄りかかればいいのに」と思う…。ティアでおなじみの作家。ちょっとデッサンや展開にたどたどしいところはあるが、等身大の二人の関係を描き出しているところが非常に興味深い。人という字は支えあって…なんて陳腐なフレーズが頭に浮かぶが、それはやっぱり安心を与えるもの。次回のティアでは同人誌を買わなくちゃ。
久遠 嫌な茶碗の持ち方だな・・・
男マン 主人公のポジティブさが心地よいです。さわやか。さわやか侍!
ばくばく

ちばぢろう
吉本 野球部を舞台にした甘酸っぱい青春もの。主人公には彼女ができるが、実はその彼女はライバルと昔付き合っていて、ホテルの常連だったと噂されていることがわかる。そこで主人公は…というもの。流石にこの手の作品については経験を重ねているだけのことはある。行き違い、痛い関係を、逃げることなくきちんと描き、興味深い事に「その先」までも描いている。この一歩先に踏み出す感覚がちばの優れたところ。
久遠 この頃野球づいているので、嫌です。嫌だ!野球なんか!
男マン 「告白して、つきあいはじめて少したった頃」のあやうさ、心のゆらぎを感じます。主人公のカッコ悪さがさらによし!青春!
嗚呼!純愛番長

小野寺浩二
吉本 何が面白いって、「ページをめくるメディア」としての漫画を良く分かってるところ。ページをめくると現れる衝撃!限りなく加速していくドライブ感がまた好ましい。
久遠 ・・・次は、ボーイッシュスポーツ娘ですね?朝一緒にランニングしたり、とか、そういうの!
男マン このノリに置いてかれました。もうトシかのう・・・・。
こわい女

小田すま
吉本 女の独占欲は怖いですなあ、というオハナシ。絵柄の可愛さに比べてオハナシがブラックなのがいいじゃないですか。
久遠 榊さん系ですか?
男マン 鈴ちゃんカワイイ!そして最後の笑顔とのギャップがまた素敵。照れ屋さんなのね!
遺伝の理由

宮下未紀
吉本 タイトルでネタがばれてしまうのが残念。オハナシもちょっと盛り上がりに欠けるような。直接的なエロを描かないという方法はいいのだが。
久遠 ほくろの位置まで遺伝するかよ。何故この人は外周にいることが多いのですか?
男マン なんかよくわかんなかったんで。雰囲気と絵は奇麗なんですが。
痛っ恥伝説

樹るう
吉本 4コマ。まあ笑える方だと思う。
久遠 わんこを愛でたいです。
男マン 「痛快・・・。」も痛いネタだし、これもそう。ちょっとばかしかぶってるような。でもセロテープは痛そう。
Bitter Sweet Project

九尾たかこ
吉本 ずーっと引っ張った挙句、「実は振られてたのか」と分かる展開。あれれ、という感じ。普通だったら途中で捨てられていたのが分かり、身近な人が気になる、というところなのだろうが。その点で興味深いのだがやっぱりぎこちないような。
久遠 何故昔あった、「勇気を出して初めての告白」が俺様ちゃんのところに来なかったのですか?
男マン 主人公がいい味を出してます。恋は盲目?
言葉

森見明日
吉本 女の子をやっぱり出して欲しいものだと思います。
久遠    
男マン おわりかい!ってカンジです。安易な救いを用意しないという姿勢には共感しますが、それにしても何もなさすぎ。

<総評>

吉本 グウの音も出ないといったところでしょうか?特に硫黄からTAGROにかけての部分は悶絶するほど。小野寺を中心としたギャグも面白く、後半もあまりダレない。前回がちょっとおんなじ傾向の作品ばかりを集めていた印象が強かったのに対し、今回はバラエティに富んでいる。この傾向の新雑誌ですか!実に楽しみ。
久遠 とても良い!良いのですが、似た傾向のモノばかり集まってちょっと食傷気味。
男マン むー。なんだか志願してレビューした割には辛くなってしまった。一応、自分の中では「5」が標準、ということで。でも、確実に「読める雑誌」ではあるのです。全部読み切りだし。あとティア的というか、上品で少しおとなしいような印象を受けました。ストイックだし。そしてやっぱり次は「アワーズ2002」ですか?そして新雑誌・・・。勢いを感じます。

<ベスト>

吉本 いつもだったら硫黄とかTAGROとかを選ぶところなのだが、ここは伊藤伸平にしよう。確信犯的なスペオペと古臭いメカの造形があるために、ワイドスクリーンバロックとキャラクタの魅力が生きるのだ。
久遠 新しい単行本もでたことだし、ロリータ番長かな。
男マン 大石まさる「さくらなはーと」にします。さくらちゃーん!!ふきゅー!!

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Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:16:13 JST