プチフラワー2000年1月号

魔術師さがし

佐藤史生
吉本 行方不明になった魔法使い・パングロスを探すために招かれた二人の魔法使いと、一人の盗賊、そしてパングロスを監視する「帝国」のお目付け役。閉ざされた魔法の島で、4人の探索の旅が始まる…。4回くらいのオハナシのプロローグ。創造の力を持つパングロスの謎と、かれが行方不明になった謎が少しづつ語られる。「心臓のない巨人」に比べ、軽妙なタッチで描かれているが、背後に存在するアレゴリーは重層的で、深い。読みがいがある作品。
久遠    
ちくわぶ・でてくちぶ

小道迷子
吉本 相変わらず意図不明のオハナシ。どうなっているんですか。
久遠    
縦横無尽の風

名香智子
吉本 ううう。最初のころは随分とけなしていたものだが、近頃はこの様式化された絵柄とオハナシに私はメロメロですよ!?ブルネットの美少女に赤面するミカエル(半ば本気)の微笑ましいこと。なんちゅうのですか、照れがないのが良いのですな。
久遠    
風の紡ぎ家

奈知美佐子
吉本 最近の奈知の鋭さには驚嘆すべきものがある。つむじ風によって紡がれる夢、やさしい人たちの思い。短編であるからこその強さがここにある。
久遠    
残酷な神が支配する

萩尾望都
吉本 いよいよ大団円に向けてオハナシが急展開している。グレッグおじさんの幻影を片っ端から殺してゆくイアン。その行為はまさに命がけだ。イアンはグレッグおじさんからジェルミを取り戻すことに成功するのか?最後の戦いが続く。緊張感のきわめて高い作品。
久遠    
お墓参り

倉田江美
吉本 おなじみの棋士一家のオハナシ。父の出身地である鎌倉に墓参りに行く、というだけのオハナシなのだが、ここに流れるのーんびりした独特の空気の心地よさ。プチフラワーの良質な部分をひしひしと感じる。
久遠    
ファースト・クリスマス

坂田靖子
吉本 いやね、オハナシはいいのですよ。ハッピー・エンドになってるし。だがこの簡略化されきった線はどうにかならないものだろうか。もっと繊細にやって欲しいものなのだが。
久遠    
諸葛孔明 時の地平線

諏訪緑
吉本 先輩の死に直面し、自ら曹操と同じ側面を持っていることに気づく孔明。しかしかれは理想を追うのではなく、足元を見ようとする。この描き方は確かに孔明をヒロイックに描くことであるが(それは安易な道でもある)、人物像に深みを与えることでもある。まとまった量で読みたくなる作品。
久遠    
いつもおそばに

いのまたゆう子
吉本 待ってました、プチフラワー期待の新人。これが実にいい作品なのですわ。女の子の成長を見守る「意識」。ひよこ、飼い犬のチョッパーと転生を繰り返しながら、ずっと女の子のそばに居る。オハナシは確かに荒唐無稽なのだが、女の子が直面するさまざまな問題がリアルで「痛い」ものであるために、説得力は高い。主力作家にしても良いのではないか?
久遠    
豆は弾けて空の色

神坂智子
吉本 戦前の政治家の波乱万丈の人生を描いたシリーズ。神坂なりの解釈が加わっていて面白く読めはする。だがもうひとつ何かがほしい、という気がしてならない。
久遠    
ジャングリズム

大竹サラ
吉本 安定してはいるが、安定だけでは…
久遠    
残菊

塩川桐子
吉本 おお!実に久々の登場。この浮世絵を思わせる独特の描線ときたら!そして内容もこれまた美しい。蔭間に入れ込んで勘当された旗本。蔭間は役者を目指していたために、旗本は身上をつぶしてまでもかれを支援した。しかし再会した蔭間はとうがたち、地紙売りに身をやつしていた…。一見単純な展開に、塩川は見事な結末をつけている。まさに水際立った手腕。是非とも作品を量産して欲しいものだが。
久遠    

<総評>

吉本 本当に休刊するのですか?とてもそうは思えないテンションの高さなのですが。
久遠  

<ベスト>

吉本 今回は良い作品が多いので難しい。いのまたゆう子も捨てがたいが、ここはやはり塩川桐子にしよう。この独特な描線世界で語られる良質なオハナシ。彼女と肩を並べる存在は他にはいない。
久遠  

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