プチフラワー 2000年7月号

レヴュ担当 吉本松明
山田千里

AMAKUSA 1637

赤石路代
吉本 ほ、ほう。ここで赤石を持ってきますか。エリート高校生集団が、高校生活最後を記念した船旅の途中、タイムスリップに巻き込まれる。飛ばされたのは江戸時代初頭の島原であった…というオハナシ。江戸時代にケータイで連絡を取り合う現代人たち、セーラー服を直した戦闘服、徹底的なエリート主義…なんと甘美なんでしょ。大バロックの予感!
山田    
魔女の手紙

奈知美佐子
吉本 今回もしっかりとハートウォーミング。手を変え品を変え、徹底的に心あたたまるオハナシ作りをしている。ヤバいです。危険です。
山田    
強情は強制を嫌う

名香智子
吉本 アテネー可愛すぎ。
山田    
お父さんは急がない

倉田江美
吉本 タイトルの通り、作品そのものも全然急ぐ様子がなく、微笑ましい。10年くらい続くシリーズになるといいと思う。
山田    
ロバノミミ

深谷かほる
吉本 「聞き屋」その2。全体的にはまとまっているのだが、ちょっと「聞き屋」が正面に出すぎのような。スマートに対象の心のひだに分け入るような形にすると思っていたのだが、泥臭い探偵仕事なのだから。ちょっと迷走気味にも思うが、次も見てみたいと思う。
山田    
君くれなゐに

神坂智子
吉本 神坂のこのシリーズでは、常に女性の姿が描かれる…しかも「強い」女性の。それはフェミニズム的な表象として現れる側面が強い。だが描かれる舞台は常に女性が現在より、より抑圧されていた時代。そうした時代にも出てしまう女性の「我」(それは業でもある)を描こうとする姿勢には共感するところ。
山田    
ミーディアムズ

大竹サラ
吉本 やはり線が整理されておらず、雑然とした印象が。それはこの人の味である一方、広く訴える力を減らしていると思う。
山田    
残酷な神が支配する

萩尾望都
吉本 7月に終わり、と聞いていたのだが全然終わる気配がないのは何故?ただそれも悪いことではなく、われわれはさらに焦らされ、放置プレイのような喜びが引き伸ばされる。それもまた良し。
山田    
おくさまは88歳

西炯子
吉本 88歳のおばあちゃんが「田辺のつる」のごとく、お人形のような造形になっているところがちょっとズルいところではあるが、ドラマトゥルギーに対しては実に真摯。心のふれあいを真っ当に描こうとしているところが良いではないですか。
山田    
時の地平線

諏訪緑
吉本 ついに曹操登場ですか。甘口である、ということが徳目であったこのシリーズであるが、厳しくなりそうな予感。容赦なくやって欲しいところ。
山田    
虎ちゃん(フーちゃん)

小道迷子
吉本 何もいうことはありません。
山田    
声音師

奈々巻かなこ
吉本 声音を使うことによって、世の厄介ごとを解決していく存在、声音師という設定がまずは面白い。そしてオハナシそのものも興味深いもの。声を使って人間同士のコミュニケーションを再びつなぎ合わせていくというものなのだから。設定を含めてシリーズものになりそうな予感。楽しみなところ。
山田    
はちみつ

しまざきみさえ
吉本 ハムくまズ、ですか。ティアの優れた才能はどんどん商業誌に進出していますなあ!われわれも負けないようにしないと。
山田    

<総評>

吉本 赤石の登場は雑誌全体の雰囲気にはあっているのだが、内容がちょっと…。今後を見守っていきたいもの。休刊騒動は一段落したようだが、編集方針のぶれも見られるように思う。様子を見てみたい。
山田  

<ベスト>

吉本 「声音師」にしよう。
山田  

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Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:16:15 JST