プチフラワー99年3月号
花笑みの庭 波津彬子 |
吉本 | 7 | やや、ややありがちな展開になってしまい興ざめな部分はあるが、それを上手く乗り越えることに成功している。もうひとつ、日本の伝統へのまなざしが紋切り型になっていないのも好もしい。そちらへの誘惑を感じながらも、そこからなんとか逃れている。微妙なバランスが支配する危うい空間。 |
久遠 | 5 | うーん、まず第一に絵に魅力がないんだよなあ。ただ、舞台が金沢だというのは可(行ったことないけど)。 | |
花車 奈知美佐子 |
吉本 | 6 | 上質なファンタジイとして上手く成立している。そのままの意味も含めて泥臭いところがいい。 |
久遠 | 7 | 川を流れる花は、紅い花じゃないんですか? | |
伏義 諏訪緑 |
吉本 | 6 | あらまほしき方向にオハナシが収束しているようで。ファンタジイなのでこれもよし。 |
久遠 | 6 | うむ、トラウマ自慢でもしますか。ちなみに俺様ちゃんは・・・ | |
エメラルドは気取り屋 名香智子 |
吉本 | 4 | 評価の難しい作品。現代性を取り込もうと必死になっているのはわかるのだが、またそれにある程度成功しているのもわかるのだが、いまいち中途半端。古臭さのほうが先に立ってしまっている。かといってこの古臭さも評価できない、ということはない。他に抗した古い香りのする作品はなかなか見られないのであるから。難しい。 |
久遠 | 4 | どーも、この絵を見ていると、新谷かおるを思い出してしまう。 | |
ジャングリズム 大竹サラ |
吉本 | 4 | 線が相変わらずごちゃごちゃしていて見づらい。 |
久遠 | 3 | この動物達が喋ったり、種族を越えた愛を持っていたりするのは、トランスフォーム能力を持っているからですか? | |
残酷な神が支配する 萩尾望都 |
吉本 | 10 | …さすがに今回は天を仰いで神に祈りたくなった。望都先生!どうしてあなたはジェルミをそこまで追いつめるのですか!救いというものはどこにあるのですか!そして私は戦慄する。望都先生の徹底した、逃げのないスタンスに。凄え作品だ。 |
久遠 | 9 | うううう、もう勘弁して下さい。もう解放してやって下さい。 | |
二藍 竹宮恵子 |
吉本 | 7 | …うーむ。やや安易な方向に走り過ぎてしまったような。インランな王子、というのは絵としては良いのだが、この作品の初期に強く顕れていたヒリヒリするような欠乏感は失われてしまったように思う。ちょっと残念か。 |
久遠 | 8 | あああ、その身に眠る淫乱の血が目覚めてしまったのか。 | |
真夜中のMidnight 西烱子 |
吉本 | 4 | このたびあなたの10年前の作品である「9月」を読みました。…何をやってらっしゃるのですか? |
久遠 | 7 | 疾風の銀二と入れ替わったまま戻れなくなってしまったのですか。そういうときは、王子様のキス、で決まりでしょ。 | |
仏師 下村富美 |
吉本 | 10 | 生と死のぎりぎりの狭間から表現を紡ぎ出そうという試みは上手く成功している。よくもまあここまでオハナシを紡ぎ出せるものだ。そしてこころの暗闇とそれに抗して生きてゆこうとする人のあがきも抜かりない。現代漫画はまたひとつの宝石を生み出した。皆読め。 |
久遠 | 9 | 成長を扱った話はいいね。おめでとうおめでとう。ありがとう。父にありがとう、母にさようなら。 | |
ねこねこね 小道迷子 |
吉本 | 1 | 何も言うことはありません。 |
久遠 | - | - |
<総評>
吉本 | 今月もうっとりするほどテンションが高い。強力な牽引車である萩尾望都を筆頭に、力ある作家がきちんと脇を固める。そしてきわめて「読ませる」短期集中連載。ベテランの底力をひしひしと感じる雑誌になっている。いいなぁ、この雑誌。 |
久遠 | ふむ。上と下の差が激しいね。でも、上がこれだけいいのだから、買うでしょ。 |
<ベスト>
吉本 | 望都先生の覚悟の強さにも心底こころ打たれるが、ここはやはり下村富美の「仏師」にしよう。ある程度想像できた内容とはいえそこに至る過程に逃げやごまかしはない。虚無に陥りそうになりながらもそれを上手く回避することに成功している。現代における恥ずかしいほどの生命賛歌。素晴らしい作品だ。 |
久遠 | 最終回ということもあり、スゲエ緊張感だった仏師に決定。 |