プチフラワー99年9月号
時の地平線 諏訪緑 |
吉本 | 6 | 所帯じみた諸葛孔明というのは新鮮ではある。ただネタが有名にすぎるのではなかろうか。イメージを膨らませる余地が少なくなるであろうから。 |
久遠 | |||
ジャングリズム 大竹サラ |
吉本 | 4 | ギャグ4コマだから仕方ないのだが、こうも毎回パターンが同じだと… |
久遠 | |||
残酷な神が支配する 萩尾望都 |
吉本 | 7 | 絶望的−希望的−絶望的−希望的…。 だが次第にその波は救済の方向へと「上昇」している。上昇しきるのも時間の問題であろう。 |
久遠 | |||
ハウス・サンプル 眞部ルミ |
吉本 | 5 | 岡田史子?ミック板谷?どちらにせよその手法は懐かしさを感じさせる。リリシズムが感じられるのはいいのだが、やや観念の遊びに堕している感が否めない。絵のセンスは良いものを持っていると思うので、もっとファンタジイを磨くべきだと思う。 |
久遠 | |||
子供は泣かない 吉野朔美 |
吉本 | 7 | 盲導犬として訓練中の犬を取られまいとして、自らの眼を傷つける少年の描写は実に心に訴える。その点では良い作品。少年と神経質な父親、クラスメイトとの関係がオハナシに直接からんでこないように見えるという、少女漫画の文脈にはいまだ慣れないところがあるが。 |
久遠 | |||
ちくわぶ・でてくちぶ 小道迷子 |
吉本 | 2 | いったん手法が完成されてしまうと、それを変更するのは非常に難しい。決定的にソリが合わないのだから悲しいことである。 |
久遠 | |||
唯我独尊の炎 名香智子 |
吉本 | 6 | デキのいい、大人びた子どもは生意気であるが頼もしい。「子どもっぽくない」という言説はおとながその地位を脅かされるために出てくるものだ。子どもにも人格や尊厳はある。こういう子どものほうが私は好きですな。思えば私もこうだったのだから。 |
久遠 | |||
黒い猫 神坂智子 |
吉本 | 5 | つよいリアリティを感じさせる描写や、解決策の見当たらない行き違いが繰り返されるので、本当に本当に気が滅入る。こうした悪循環を描こうとする作者の意図やいかに。ラストで一応ハッピーエンドになっているが、どうもそうしたカタルシスを描こうとしているのではないように見受けられる。 |
久遠 | |||
種と風船 眞部ルミ |
吉本 | 5 | 誰かの原稿が落ちたのか?やや不可解な複数作品掲載。絵の雰囲気はとても良いが、やはりあまりにもガロ的。観念的な謎かけは脳には心地好いが、エンターテイメントとしては弱い。 |
久遠 | |||
美味しいもの 倉多江美 |
吉本 | 7 | プロ棋士で実にマイペースの父。そそっかしい母。父にならって棋士を目指す弟。そして二流短大の付属女子高に通う主人公の私。福引で当てたホテルの食事、というトピックはあるが、家族それぞれは自らの道をマイペースに進む。暑苦しくなく、かと行って冷えきってもいない家族の姿を淡々と描き実に好もしい。 |
久遠 | |||
死水精の沼 MAYZON |
吉本 | 6 | びっしりと敷き詰められた絵は独自の世界を持っていて流石といえよう。だが猫の描きかたがあまりにも独特なので、どうにも馴染めない。あえて一般的にならないような方法を選択するのは好ましくもあるが、やや疑問ではある。 |
久遠 | |||
留守猫 奈知未佐子 |
吉本 | 8 | これは良質のファンタジイ。日常性に潜む「おとぎ話」を上手く引き出し、リアルの世界と結びつけている。ファンタジイはリアルを強化し、深みのあるものにすることができる。 |
久遠 |
<総評>
吉本 | 「子供は泣かない」「美味しいもの」といった良い作品はあるものの、全体的にどうも地味な印象が否めない。ベテランが独自の味を出すといった作品ばかりで、パワーのある新人の作品が載っていないからだ。眞部ルミは新人だが、ぱっと目をひくというタイプではないし。「噂の真相」の未確認情報(「残酷な神が支配する」の終了と同時にプチフラワー休刊)も説得力を持ってしまいそうな印象だ。 |
久遠 |
<ベスト>
吉本 | 今回は目を引く作品がないので難しい。奈知未佐子は確かにとても良いのだがぐっとひきつけられるというタイプの作品ではないし。そこでここでは「子供は泣かない」にしよう。かわいがっている動物との別れは辛いものだから。 |
久遠 |