スーパーフィール2号(99年7月発売)

?マーク物語

井上三太
吉本 大嘘のオハナシを本気でやっているのが実にイイですな。カラーまで使って。全然女性向けの内容じゃないところも素晴らしい。意図不明の内容なれどその意図不明性がまた面白いじゃないですか。馬鹿万歳!
久遠 くだらねえなあ。まあ、まんだらけでも若者向け渋谷系漫画家だからねえ。
1992 狛江

南Q太
吉本 実話なんだかフィクションなんだか。それでも淡々とオハナシが進んでゆき、説得力のあるリアリティが醸し出されている。ちょっとした出来事でリアルを感じさせるところは流石といえようか。空虚、切ない空虚が胸を打つ。
久遠 ゆらさーん。3日目の阿佐ヶ谷腐れ酢学園に行けば真相が分かりますか?
チビが来たりて紙を食う

二ノ宮知子
吉本 言うことを聞かない猫を凶悪に描いているが、やはり親バカモード入っているのが微笑ましい。
久遠 犬の代わりに檻に入れられた過去を思い出しました。
赤んぼ先生インタビュー

おおひなたごう
吉本 これもちっとも女性向けじゃなく、どちらかといえばボンクラ(褒めことばである)青年向けの内容。編集意図の産物よのう!内容は人を喰っていて微笑まし。
久遠 ウルフガイはホントウにいるんです!
サチといった海

古屋兎丸
吉本 兎丸の短編は久しぶり。兎丸の面白さは「どうしてもヒネらずにはいられない」ところ。今回も登場する必要があまりないであろう宇宙人(グレイタイプ)を登場させ、それを軸にオハナシを紡いでいる。これはくそリアリズムに対する一種のアンチテーゼである。「非常識的な状況でいかにして感動を作り出せるか」といった試みなのだ。まだ木に竹を継いだ感が否めないものの、ある程度のポエジイを作り出すことに成功している。
久遠 きっと学校のテストに重なったんだよ。
カメのお願い

松井雪子
吉本 松井雪子の短編らしい、お馬鹿でタイニーなオハナシ。美男美女を中心にお話が進むのではないところに気概を感じる。
久遠 わんこさんですか。そうですか。
アンチ テレフォニカ

三原ミツカズ
吉本 画面構成や展開のキレは流石。「ハッピー・ファミリー」よりもこっちのほうが才能が生かせると思うのだが。ただ残念なのはネタの選択や「寝かせ方」がやや陳腐なところ。コンピュータ・メディエイティドなコミュニケーションには、独自のポエジイがあるはずだ。次回に期待。
久遠 俺様ちゃんも悔しいから、出会い系のネットにでもいってみますかあ。ってゆうか、一番好きな絵本は「アルミちゃん」DEATH。
アニマル インデックス

吉武哲
吉本 サラブレッド生産牧場である自分の家の様子を描いたエッセイ漫画。アテ馬の様子が描かれていたり、絵柄が微笑ましかったりするので結構楽しめる。次も読みたいところ。
久遠 牧場ですか。いってみたいですねえ。
サマービーチ・ナイトメア

高瀬志帆
吉本 リゾート地で喧嘩してしまい、別の異性に目が向かう二人。だが結局もとのさやに収まるというきわめてたわいないオハナシ。まぁこんなものでしょ。線や絵に伸びやかさがあるので、お馬鹿なオハナシへ向かってゆけば良いのではなかろうか。
久遠 俺様ちゃんももうマニュアルは運転できないかもしれません。ってゆうか、運転免許の現住所が違ってビデオ屋のカードも作れません。
ひとつ

埜納タオ
吉本 彼と別れてしまい、歳の離れた妹と夏を過ごすはめになった主人公。この妹の存在が重要で、単なるラブものからこの作品を抜け出させている。重層的な描写には実に見るべきものがある。またざっくりした味のある描線も面白い。きっと伸びるであろう、この人は。
久遠 子供の頃うちの近くのアパートの前で巨大なアオダイショウを見たのを思い出しました。
なかよしのリボンにちゃおしよ

桃吐マキル&福実未ノアル
吉本 …ひでえ漫画だこと。本当にひでえ。分裂症患者が古典的少女漫画を模写したような絵柄が実にヤバい。
久遠 恋の資格がナッシング?
トマトドロップス

小林ユミヲ
吉本 本命の男と「いい人」の間で二転三転するラブ。展開は結構大味かつ強引なのだが、絵柄に勢いがあって結構読めてしまう。今時風のファッションセンスや舞台設定も面白い。凄く惹かれるというわけではないが魅力的な作品。
久遠 アフロですか。アフロは嫌いです。
雲のシェルター

スズキユカ
吉本 7.5 5年間一人だけで鳥の観察をするという任務についている女の子のもとに、言葉の全く通じない兵士がパラシュートで降下する。コミュニケーションは取れないが体を交わす関係になる二人…と、設定自体はかなり特殊でオハナシが作りやすいもの。実際終わり方はややデウス・エクス・マキナ的で拍子抜けする部分もある。しかし絵柄はかなり繊細で、それだけでも魅力的。また相手とコミュニケーションが取れないという構造のため、語りは徹底的にモノローグ的。これが「閉じて」いるのではなく、パーソナルヒストリーを語るという方向に向かっているのがとても良い。まだ荒削りなところはあるが、この人は絶対に伸びる。
久遠 フィリピンに行って(マレーでしたか?)名物のゆで卵が食べたくなりました。
アロマテラピー

村上ジュンコ
吉本 体臭に惹かれるってのは、野蛮なようにも見えるが(特に清潔志向の高いこの現代では)、実は相当本質的なもの。描かれている表象はそれほどエロくはないのだが、なんだか観念的にエロを刺激されてしまう。こうした「そこはかとないフェティッシュ」ってのは良いではないですか。
久遠 匂いですか。マニアな世界ですね。
LOGiC?

カネコアツシ
吉本 これまた全然女性向けではない作家。オハナシはカネコお得意の「日常に潜む非日常性」。じわじわと迫ってくる非・日常性(狂気)に戦慄する。昔のSFドラマ風の展開にも悪意が感じられ好もしい。
久遠 妄想幻魔大戦が迫っています。は、俺様ちゃん、縫い針どこにやったかにゃあ。
TATOO

宮原久美子
吉本 美白系やや行き遅れ気味(まさか差別表現?)の女と、コギャル系小娘の意外な心の交感。微笑ましいではないですか。ただ美白系女のワガママばかりが目だってしまい今一つ感情移入できない。ふむ。
久遠 ガングロの人を気持ち悪く思うのは、俺様ちゃんが田舎者or封建的だからですか?
人生とは何だ(番外編)

藤臣柊子
吉本 近況報告ですか。この人の近況にはあまり興味がないのでどうでもいいです。
久遠 実家に帰ったら、健康ランドにでも行こうかなあ。

<総評>

吉本 シュークリームの次なる意図が明らかになっている雑誌。シュークリームは男性読者を開拓しようとしているのだ。ちょっとマニア系の。すでに「キューティーコミック」は男性が読んでもかなり読み応えのあるものになっているが、男性にとっては手にとりづらいのも確か。そこでカネコアツシなり井上三太なりを起用することで手にとりやすくすることを図っているのだろう。この試みは比較的成功しているように思える。実際読み応えはかなりある。
ただ、男性向けと女性向けの戦略がややあいまいなので、雑誌全体がやや中途半端になっている印象が否めない。女性も男性も、両方同時に取り込もうとしているのだ。これは不可能な試みではないだろうが、なかなか難しいように思う。工夫のしどころだと思うので、是非とも続けていって欲しいものだ。
久遠 コマがそろってる割に面白くないですねえ。ってゆうか、はっきりいってつまらん。

<ベスト>

吉本 キラリと光る作品が二つある。埜納タオ「ひとつ」と、スズキユカ「雲のシェルター」だ。前者はQなりキリコなりの影響を強く感じるが、独自の線の力を持っている。後者はちと閉じたアニメ的世界からの引用が多すぎるように思うが、線の力があり、描き方も実に自覚的だ。この二人は間違いなく伸びるだろう。今後に期待する意味も込めて二人をベストに推す。
久遠 そうですねえ、どうしよっかなあ、雲のシェルターだと代わり映えしないしなあ。どうしよっかなあ。うーん。

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