みるく2号(特集・ロリ)サンプラー!!(吉本松明の分)

幼女漫画の星座 〜漫画家たちが作り出す位相〜


−目次−

はじめに

定義

3つの軸

取りあげる漫画家

8つの象限

幼女漫画の特徴

何が危険視されたのか?

幼女漫画の今後


8つの象限

以上の三つの軸を重ねあわせると、それぞれの軸によって区切られた8つの象限ができあがる。図4を参照して欲しい。ここではそれぞれを次のように呼ぶ。

(1)ホンモノ度高い、即物的、暴力的(象限A)→キチ型。本当にヤリかねない恐ろしさを感じさせるタイプ。サディスティックな表象が現れるために、一般的なセクシュアリティの側の目から見ると非常に狂気的に見える。

(2)ホンモノ度高い、即物的、非暴力的(象限B)→真性愛好型。「幼女とのフィジカルなセックス」がその人の最強のセクシュアリティであるというもの。セクシュアリティのあり方が一般的な「常識」からはかけ離れているので、しばしばキチであるように見えることもある。本人にとっては至って当たり前のことなのであろうが。そこに乖離が生まれ、「面白さ」が生まれる。

(3)ホンモノ度高い、観念的、暴力的(象限C)→転倒した少女愛型。幼女の持つ少女性が好きで好きでたまらないのに、それを素直な形であらわすことができないというタイプ。あるいは逆に、サディスティックになり「空虚」を作り出すことにより、幼女に対する愛を深めてゆこうとするタイプ。どちらにせよ作品は求道者的になる。

(4)ホンモノ度高い、観念的、非暴力的(象限D)→古典的少女愛型。80年代より明確な形を取るようになってきた、観念的かつ「古典的」な少女愛がエロというフィールドに現れた形。「ロリコン漫画」と言い換えてもよい。一般的な少女愛よりはエロ寄りになってはいるが、比較的分類しやすい作品が生まれる場合が多い。

(5)ホンモノ度低い、即物的、暴力的(象限E)→ルサンチマン型。何らかのルサンチマンを幼女に対してぶつけるタイプ。あるいはルサンチマンの矛先が幼女に向かうタイプ。描きたいところが実は幼女ではないので、幼女漫画的文脈からはどうしても外れたものとなりやすい。しかし別の意味で、すぐれて「クルった」作品が生まれやすいエリアでもある。

(6)ホンモノ度低い、即物的、非暴力的(象限F)→お試し型。「幼女ものは受けるから」「弾圧される前にとりあえず」といった形で、みずからのセクシュアリティと関係なく幼女ものを描いてしまうパターン。このエリアで面白い作品が生まれる可能性は限りなく低い。

(7)ホンモノ度低い、観念的、暴力的(象限G)→可能性拡大型。精神的サディズムの矛先が幼女に向かうタイプ。エロさや面白さは幼女によって喚起されるのではなく、シチュエーションや構成などの「普通の漫画の面白さを作り出す部分」が作り出す。幼女漫画というよりは普通の「美少女漫画」の文脈で語られるべきエリアである。

(8)ホンモノ度低い、観念的、非暴力的(象限H)→抽象またはハイエンド型。既存のエロ漫画を離れ、リアリティを抽象化した先に幼女に行き着いたというタイプ。ここも(7)同様、漫画としての面白さは幼女に依存せず、幼女漫画の文脈で語るべきではないエリアである。

 

それではそれぞれの漫画家がどのような位置づけになるのかを見てみよう。図5を参照して欲しい。

幼女漫画の特徴

 一見してわかるように、幼女漫画に一定の傾向性が存在するわけではなく、広い範囲に作家は分布している。ただよく見るとわかるが、【メインストリーム】の作家のほとんどが、上半分の象限(A〜D)に属している。その点で象限Hに属す【ハイエンド】や、象限F、Gに多いであろう【美少女漫画】と一線を画している。他の漫画ジャンルとの違いは、やはりホンモノ度の違いによって現れる。

 それでは、「古典的」な幼女漫画である【ロリコン】とはどういった違いを持っているのだろうか。メインストリームの作家の中でも、【ロリコン】漫画家が属するところである象限Dに属する人がいる。そうした人は【ロリコン】の遺産をそのまま引き継いでいるといえる。しかし【メインストリーム】の作家は象限Dだけでなく、象限A〜Cに広がっている。こうした広がりが、【ロリコン】と【メインストリーム】とを区別していることはすでに述べたとおりである。現在の幼女漫画は、様々なセクシュアリティのレベルを取るようになり、広がりが増しているのだ(図6参照)。その様は、あたかも天空を彩る星座のごとくである。限られた空にのみ見える星ではなく、全天をカバーするようになってきているのだ。そしてそれぞれの象限の頂点には、あたかも明星のごとく、象限を代表する作家がいる。それは極端な姿であり、万人に受け入れられるものではない。しかし極端であるからこそ、人間の「ナマの」欲望や姿を強力に映し出す。意識的であれ、無意識的にであれ、強力であるために、それは「感動」を生み出すものになる。ここに幼女漫画の面白さがあるのだ。

 だが、この広がりは一方で、様々な議論を呼び起こし、弾圧を導きかねないものにしている。無論チャイルドポルノ規制法案をめぐる議論である。では、何故このような動きが生じてきたのか、何が危険とされたのかを考察してみよう。


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Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:16:39 JST