2000年1月上旬

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2000年1月7日(金)

エースネクスト2月号   角川書店 <漫画雑誌> 619円

 なんとびっくり、『NieA_7(ニア・アンダーセブン)』がアニメ化とは。そういや「アニメの仕事をしています」と阿倍吉俊がどこかで言っていましたっけ。漫画の内容はもう爆笑。Abaptek!ガンガル!
 あとはもうとにかく石田敦子様の『からくり変化あかりミックス!』につきます。絵柄といい、少女の成長を細ーかく描きだすオハナシといい、もの凄い状態です。いったい私をどうしようというのですか?もう私の骨はすっかりとろけきっております。
 この二つの作品があれば、他は何もいりません。なお、次号から大地丙太郎/SUEZENの『風まかせ月風蘭』が始まるとのこと。『十兵衛ちゃん(胸)』にはまりまくった私ですから、楽しみで仕方ないです。

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2000年1月6日(木)

コミックフラッパー2月号   メディアファクトリー <漫画雑誌> 400円

 創刊第三号。巻頭カラーは永野のりこ先生の「ひっち&Go!!」。今回の主人公はピージー(「電波オデッセイ」参照)型の冴えない男。おお!「くふう」が!まぁネタはいつものアレなんで最初はこんなものでしょう。コミックアルファの遺産を引き継いでいる/引き継がざるを得ないので、今ひとつまだ雑誌全体の統一感が出ていないようにも思いますが、一つ一つの作品はだいぶ「読める」のではないかと思います。駕籠真太郎とか、SABEとか。
 気になるのは伴ルツキの「にこぽこ」。ていうかまんま近藤るるる先生??おそらくご本人ではないのですが、どのような関係なのでしょうか?
*↑しばたたかひろさんにより以前ビームに描いていた人と判明。ありがとうございました。

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2000年1月4日(火)

コミック・ファン   雑草社 <漫画情報誌> 705円

 年末に出たものですが。「まんが業界の問題点」と題して、漫画が今直面している問題、とくに「閉塞感」について特集しています。私自身は、漫画が閉塞しているという意見には真っ向から反対したいと思います。エロ漫画にもマイナー漫画にも、そしてこうした言説を一番適用されやすい少年誌にも、面白い漫画はいくらでもあると思うものですから。バブル期のジャンプ600万部の頃に比べ、おいしい商売はできなくなったかも知れませんが、漫画表現そのものはずいぶん深くなり、重くなっていると思います。ここにあるのは障害ではなく、変化の一つの過程なのだと思います。…昔の目から見れば障害なのかも知れませんが。
 ちょっとけなしましたが、この雑誌は徳目も持っています。他の漫画評論を標榜する雑誌やムックに比べ、ずいぶんレヴュの質が高いのです。我執院譲治=しばたたかひろさんにゴマをするつもりはないのですが、掛け値無しに良い読みをしていると思います。それだけでも価値のある雑誌なのではないでしょうか。

トーキョーキューティーズ トーキングヘッズ叢書14 アトリエサード <漫画関連ムック> 1200円

 これも年末に出たものですが。フェミニズム/女性論的な立場から、「シュークリーム系」の作家…小野塚、Q太、キリコ、モヨコなど…を採りあげています。「トーキョーキューティーズ」と称して。まだよく読み込んではいないのですが、いったい何なんでしょうね、「Jなんとか」って。「Jポップ」という言い方は、外国産のポップと区別することが簡単にできるので、有用な言い回しだと思うのですが、「J文学」とか「Jコミック」ってのはどうも納得がいかないものがあります。文学も、漫画も、どこか本場があるのでしょうか?日本には日本の漫画があり、文学がある。あえて「J」をつける必要はないと思うのですね。そして「J」をつけることによって、わかりやすい「新しい漫画/文学の姿」が提示されてしまう。…これは南研一さんが最初に言い出したことなのですが。ともあれ、結構面白い要素があるようなので、そのうちブックレヴュで取りあげようかと思っています。

コミュニティ・ソリューション 金子郁容 岩波書店 <学術書> 1700円

 その筋では有名なSFCの郁容先生の本です。去年5月の発売。99年にクローズアップされるようになったLinuxなどを取りあげ、インターネット上のコミュニティがどのようなコモンズを作り上げてゆくか、といったことを述べています。私がこのようにインターネット上で記録をつけるのも、コミュニティに対する情報還元という意味合いが強いので、参考になるところが大きいです。

ナショナル・ヒストリーを越えて 小森陽一・高橋哲哉編 東京大学出版会 <学術書> 2300円

 昨今流行りの「歴史修正主義史観」に対する、初めてのまとまったサヨク側からの書物です。執筆者は小森陽一、徐京植、成田龍一、吉見俊哉など、もろにカルスタ/東大社情研人脈。カルスタの本としても読むことが可能です。
 私自身はここで政治的立場を明らかにしたくはないと思いますが、少なくともカルスタ的に歴史を読もうとする彼らの方法論、すなわち固定化された視点を排除し、相対性の中から出来事を紡ぎ出そうとする方法には共感するところが大きいです。

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2000年1月2日(日)

 新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

D-Cup Lovers にしまきとおる ヒット出版 <漫画単行本> 古書価500円

 ああっ、しまった!にしまき先生はもう涅槃に達しておられた!「みるく3号」は失敗であった!!
 ともあれ。この人が「何を求めて」作品を描いているのかよーく、心のそこまでわかるナイス作品になっていると思います。

Let's野球拳 ペイントロボ 日本出版社 <漫画単行本> 古書価500円

 「ロリイタ系か?」と思って購入。登場する女の子は、作中での年齢こそ高く設定されていますが、皆幼児体型で条件は揃っています。身体的に痛いセックスシーンが多い割に、心の痛みに言及した作品は少ないです。「月光」という作品ではかなり登場人物の痛みが描かれているので、そうしたことが描けない作家ではないのでしょう。良く見たら企画は漫画屋。塩山芳明が「エロが足りねえんだよこの****」と悪態をついている様子が目に浮かぶような気がします。

アンバランスアングル ミナミ 湖川友謙 徳間書店 <漫画単行本> 古書価200円

 「アニメーターに漫画を描かせる」雑誌として特異な地位を占めていた「モーションコミック」に掲載された作品を集めたものです。この雑誌には他には『バース』(金田伊功!2巻は?)、『GBボンバー』(いのまたむつみ!)、『無敵少女ラミー』(平野俊弘)、『アモン・サーガ』(夢枕獏+天野喜孝!!!!!)などが掲載され、単行本化されていますが…なんちゅうおそるべき布陣!1983〜84年ごろのアニメがどういう状況で、どれだけ活況を呈していたかが良くわかるというものです。
 この作品に関していえば、まあとにかく絵が独特。正確なデッサンと、リミテッド・アニメの「動き」を融合させたところに何が生じるのか、ということが見えてくるように思います。ファインアート的なデッサンを背景にしたアニメキャラクタの時代が、1980年代までは存在したのですね。安彦良和や杉野昭夫も同じ系列に含めることができると思います。面白いことに現在ではそうしたキャラクタデザインは完全に傍流に追いやられ、よりアニメに特化したキャラクタデザインになってきていると思います。そしてそれは現在の日本のアニメを語る上で欠かせない要素になっていると思います。ですから、杉野、湖川、安彦といったキャラクタデザイナが作り出したものと、現在のデザイナ(ことぶきつかさなどを代表としてあげることができるように思いますが)の仕事がどのようにつながっているのか、これを検証する必要があるように思います。いやつながっているのですがね、明確に。誰かやってないんでしょうか、こうした仕事を。池田憲章??

LOVE 師走の翁 ヒット出版 <漫画単行本> 古書価500円
Get or Die 師走の翁 ヒット出版 <漫画単行本> 古書価500円

 完成された絵と作劇の方法論。明確な抜きどころ。師走の翁はきわめて着実な作家だと思います。ややプロトンザウルスのように「職人芸」になっているところも見うけられますが…実用性の高さで相殺されていると思います。

肥前屋十兵衛1〜3 富沢ひとし 秋田書店 <漫画単行本> 古書価各200円

 板垣恵介のアシだったのですね、この人は。次号のアフタヌーンで始まる新連載に期待しつつもちょっと引っかかってる、といったところでしょうか。イヤすっごく好きなのですがね、『エイリアン9』。それをめぐる言説がちょっと。

気まぐれハーベスト・ホーム 山本直樹 光文社(!) <漫画単行本> 古書価350円

 山本直樹の衝撃のデビュー作(と、この本に書いてある)などが載ってます。すげえレアな本ではないかと思い購入。レアなんでしょうなあ。時期的にはちょうど「森山塔死亡説」が流れていた頃の作品ですね。いかにもな「良くまとまった短編」が多く、楽しめます。

遊人PIA(ゆうとぴあ) 藤原カムイ 壱番館 <漫画単行本> 古書価100円

 カムイの初期作品集です。な、懐かしい!「マンガ宝島」掲載作品や、細野晴臣の「ノンスタンダードレーベル」と関連した『グロビュール』などが載っています。アーバンダンス!ピチカートファイブ!『パラダイスビュー』のサントラ!テクノと一緒に過ごした80年代がフラッシュバックしてやるせない気持ちになります。最近ちくま文庫で出たとり・みきの作品なんかもそうなんですがね。

マリオの大冒険 チャーリー野沢 小学館 <漫画単行本> 古書価500円

 「チャーリー野沢」ってのはビームやアフタヌーンで連載を持っているアノ人なんですがね。名前だけ見てピンと来る人はよっぽどのものだと思います。これは私の買い物ではないのですが、よくもまあゲームアンソロジーなどの**本の中からこんな掘り出し物を見つけてくるものです。アメリカ向けのマリオのコミカライゼーションで、シナリオは竹熊健太郎…。内容はため息が出るほどつまらないです。大変だったのでしょうね。

ジ・ガレガレ 堀池さだひろ アスペクト <漫画単行本> 古書価450円

 ビームに連載されていた作品をまとめたもの。随分長い連載でしたが単行本は1冊。傑作集、といった塩梅になっています。連載中はあまり目を引かない地味な存在だったように思いますが、こうやって一冊にまとまると、連続した雰囲気が感じられて実にいい感じなのですね。フャンタジイとしての出来がよいのです。

快楽天 2000年2月号   ワニマガジン <漫画雑誌> 314円

 今回はやっぱり道満清明でしょう。問答無用に不可解な世界に引きずり込まれる感覚がタマリマセヌ。詳しくはクロスレヴュを参照してください。


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