2000年6月下旬

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2000年6月30日(金)

久々に買い物に出ました。重い!重すぎ!!!

快楽天 8月号   ワニマガジン社 <漫画・雑誌> 314円

 今回もセンス良くまとまってます。まず目立つのは「お姫様賞」を受賞した綾瀬さとみの「そして終わる夏休み」。夏休みの間田舎に遊びに来る少年と、同じ年の少女。ふたりには必然的に別れが来るのだが、その前に夏祭りで、ふたりっきりになる時間を過ごす…。エロという観点からすると、かなり物足りない作品ですし、オハナシもありきたりではあります。ですがこの作品はそれを補ってあまりある徳目を持っているのですね。第一にその線。筆で描いたかのような主線が、他の作家にはない完成された絵柄を作り出しているのですね。オコサマの描き方としても非常に魅力的。それだけで「勝った」様なものです。加えて細かい演出が優れています。いろんな意味で楽しみな作家といえましょう。他にはくだらなささらに増量のピロンタン、オハナシが痛ーい朔、相変わらずネームが多いもののやらしさ爆発のえのあきらなど、読める雑誌です。来月は米倉けんご先生の連載が始まるそうで。…あれ?TAGRO先生は?

キューティーコミック 8月号   宝島社 <漫画・雑誌> 476円

 どうやら安野モヨコ先生は落とされたようで、代わりにKomSomida「至高!」と、小野塚カホリ「フェイクファー(再録)」が載ってます。「至高!」は…この人桃吐&福未実なんじゃないの?と最初思ったことですよ。あとは小林ユミヲ、オーツカヒロキ、栗生つぶらなどが目にとまるところです。羽海野チカ「ハチミツとクローバー」は今回ははぐちゃんがあまり出てこなくて残念ですが、変わり者度炸裂の森田先輩が描かれていて、ほのぼのとした印象です。きっとこんな人いたんでしょうね、美大で。

アフタヌーン 8月号   講談社 <漫画・雑誌> 457円

 注目すべきは3つ。まずは四季賞受賞作の元町夏央「橙」。一見して黒田硫黄のフォロワか?と思わせますが、キャラクタに寄せる視線はより近いものになっているように思います。主人公の女の子の浮き立った気持ちを、画面全体を揺らすことによって表現する。そのダイナミズムは非常に心地よいものがあります。次は真鍋昌平「スマグラー」の最終回。すでに先月号の段階で勝ったも同然だったわけですが、最後にじわりと読ませてくれました。伏線をきちんと生かす展開、一面非情で、反面こころの暖かみを大切にするポリシー。切ない状況にあるからこそやさしさや強さが生きてくる。そうした描写にうたれるところです。最後に待望の五十嵐大介「すなかけ」。日常に疑問を感じ、家を飛び出す女子中学生と、砂を体から出す女と絵描きの男のカップル。体内からわき上がってくる砂は、様々なもののアレゴリーとして考えることができるでしょう。一面でサンドペーパーのような「ざらついた」印象であり、もう一方で「乾燥した」イメージも持っています。一粒一粒は硬質な結晶でありながら、総体的には柔らかく体の周りに押し寄せるものでもあります。そうした様々なイメージを、五十嵐は実に巧妙に、そして印象深くストーリーに結びつけていきます。そしていのちの出会いとふれあいを描いていく。なんとも心が動かされること。キャッチーな作品が雑誌には必要なのは分かりますが、やはりこうした「読ませる」作品も忘れて欲しくないものだと、強く思うところです。

コミックガム 8月号   ワニブックス <漫画・雑誌> 590円

 そりゃあやっぱり流星ひかる先生でしょう。ノスタルジアと幻想を上手くミックスさせたオハナシの妙と、キャラクタの可愛さが揃っているのですから。やはりこの手の「男少女まんが」は強烈です。ジーンズの女の子とスカートの女の子を絶妙に描き分けているところも注目すべきでしょう。やばいです。あとは新展開突入の「まほろまてぃっく」、さらに遠くに来てしまった「プースー」、可愛さ炸裂の「月詠」、興味深い展開を見せる「エンブリヲンロード」と、読める作品が揃っているのがエエ感じです。トータルで見た場合、「新・少年誌」のなかではいちばん平均値が高いように思います。

マガジンZ 8月号   講談社 <漫画・雑誌> 457円

 単に厚いだけではないのがいいじゃないですか。克・亜樹はやりたいようにやってますし、「ヴァルナス」とか「み〜ちぇ」とか「ヒゲ」とか「フリクリ」とかテンション高いですし。今回の目玉はやっぱり徳光と「King of Bandit JING」の再開でしょうか。「ドムを創った男たち」ですか。最高です!佐賀弁で喋る技術士官…そうでなけりゃあいかんのですよ。そして登場するSF者…無限に盛り上がってませんか?そして「JING」はため息が出るほど構成されつくした美しい画面で「魅せて」きます。幸せだ!
 でも実は最近とみに注目しているのはひのき一志だったりします…あなた、本気ですか?

コミックメガフリーク 創刊号   FOX出版 <漫画・雑誌> 762円

 基本的なコンセプトは、同人作家を中心としたエロ漫画に、同人誌の通販情報を組み合わせたものといえるでしょうか。新しい作家を発掘する一方、地方の人には縁の遠いメディアである同人誌を広めよう、という意図が見えます。その裏には通信販売の売り上げを増やそうという意図も当然あります。通信販売を行っているのはご存じとらのあな。紹介されている同人誌はすべてとらのあなで買うことができ、通信販売もできるわけです。両者の関係は…というと、住所を見ればお分かりの通り実は同じ会社。FOX出版とは有限会社とらのあなの出版部門なのですね。同人誌通販という新しい業務形態で、主導権を握っていこうというとらのあなのアグレッシブな姿勢が伝わってくるものとなっています。
 漫画の内容ですが、西木史郎以外は知らない人ばかりでした。ですが井上眞改「満月の瞳」、パニックアタックの「トンデモ小悪魔トンデ☆コマ!!」は絵柄といいオハナシといい、優れたものを持っていると思います。次号買うかは微妙ですが、注目はしていきたい雑誌だと思います。とらのあなにはお世話になっていることですし。

マンガエフ 創刊号   太田出版 <漫画・雑誌> 552円

 一言でいえば「エロティクス」+松本次郎、という雑誌です。以上。

モーニング 31号   講談社 <漫画・雑誌> 248円

 普段は立ち読みでじっくり読むモーニングですが、今回はちゃんと買いました。何故って…小田扉「話田家」第5話が載っているじゃあないですか!「マグナム増刊」を限りなく魅力的にしていたこの作品に、モーニングで出会えるとは!そりゃまあオハナシ的にはちょっとテンションが低いように思いますが、他の作品に比べて異彩を放ちまくっているのは確か。「この野郎が朝っぱらからカーブなどを投げるからだ」ですから。すでにアンケート用紙をコピーし、5通の葉書を書いたことですよ。「単行本希望!!!!!!!!!」と。

デザインフレックス 001   BNN <美術・ムック> 838円

 雑誌「デザインレックス」のムック版と言えましょうか。現在の目立ったデザイナーを取りあげ、まとめています。もう一つのコンテンツが「リスペクト・ガンダム」といったもので、最近目立つデザイナーにガンダムを「料理させる」ものです。「現代美術ガンダム」などでも明らかなように、すでにガンダムは我々の世代の共通の知識となっているわけですが、ここでもそれは実感されるものとなっています。その中でも頭をぶっ飛ばされるような印象を受けたのが鈴木志保。なーんと「小説ガンダム」2巻のクスコ・アルの死のところを引っ張ってきているのですね。タイポグラフィの恐ろしさは、ジェニー・ホルツァーに劣らないものがあります。ロンドン橋!
 そして追い打ちをかけるような鈴木志保の新作「たんぽぽ1−2−3」。こりゃあ「ロンメル進軍」じゃないか!と思ったら、解説の最初に書かれてしまったのでちょっと嬉しい&かなり残念。鈴木のブローティガン好きは知られていたところですが、「アメリカの鱒釣り」から「ロンメル進軍」へと焦点が移ってきているのが面白いと思います。素晴らしい作品で背筋に電気が走ります。ブローティガンを知らない?ていうか読めよ、という感じでしょうか。

ぎょ!っとパラダイス 1&2 ひな。 ラポート <漫画・単行本> 古書価各200円

 「1ねん3くみ桃ちゃん先生。」で危険思想を振りまきまくっているひな。先生(先生と呼ばせていただきたい)の、処女単行本です。ひとり暮らしの大学生のもとに、突然金魚と名乗る可愛い女の子が現れる。かいがいしく世話を焼く金魚。だが彼女は水に触れると姿が見えなくなる。実は彼女は大学生がかわいがっていた金魚が人間の姿になったものだったのだ!…という。ちょっと凄くありません?まさに猫、といえるのではないでしょうか?
 まあオハナシは問いますまい。面白いのは、いちいちこの大学生が金魚のキワドイ格好(とはいえ、乳首見せさえないのですが)に対し、鼻血を吹いて倒れるところなのですね。そして金魚ちゃんはどんどん等身が下がっていくという…。97年に出た単行本なのですが、まさしく「桃ちゃん先生。」のプロトタイプなのですね。「先生。」にヤラれまくっている人は是非とも購入すべき本と言えましょう。

幽玄漫玉日記 3 桜玉吉 エンターブレイン <漫画・単行本> 950円

 初っぱなから飛ばしてくれます。真っ暗です。玉吉の離婚のことも語られます。全編を通してプロザックなどのお薬が登場します。これを私は待っていたのです。

SWAIN' IN THE AIR 雁須磨子 ソニー・マガジンズ <漫画・単行本> 620円

 ボーイズラブ、です。高校生の筑は、幼なじみの夏目(長髪・もてる)がずっと好き。悩みながらも、チャンスをつかんだりしながらも、結局決定的な告白はできない。一方夏目は極端なほどにぶちん。1冊、ほぼ全体に渡って、そうした宙ぶらりんの関係が描かれます。モドカスィー!注目すべきは線。いまの「どいつもこいつも」に比べて、非常にすっきりした線になっているのですね。5話は書き下ろしになっているので、比べてみるといいでしょう。いまの線の方が、あいまいで、頼りなく見えるのは何故でしょうか?ただ、「頼りなく」なっているからこそ、最近の諸作品は面白いものになっているのは間違いないでしょう。カリスマ先生の絵の変化も見ることができる、オトクな本といえましょうか。

俺は悪くない 1 山田ユギ 芳文社 <漫画・単行本> 562円

 そしてボーイズラブといえば、最近ブレイク著しいこの人でしょう。私の本をお買いあげ頂きましてありがとうございました。だからコビを売るという訳じゃあないのですが、内容はやっぱり面白いです。特に眼鏡の中村くん(友だち少ない)がいいんですね。私も大学入学のため上京したおりには、似たような感情を味わったものです。そして同じような境遇の人にホレられたことも(男女問わず)あったりするわけです。ですから深ーく共感してしまったことです。そうした細かいところに目を配る一方、ギャグも忘れない。このバランスの良さには舌を巻くところです。

ニア アンダーセブン 1 阿部吉俊 角川書店 <漫画・単行本> 600円

 アニメと違って漫画の方は、ギャグのドライブがあっていいです。アニメの方のまゆ子は基本的に悲惨な面ばっかりが目立ちますが、漫画の方はニアと一緒になって馬鹿をやったりするのでいい感じです。だからこそまゆ子の悲惨な状況が際立つというのでしょうか。アニメの方にはもっとデタラメなギャグを期待したいところです。そういやこの本は阿部吉俊の初のコミックなんですね。アニメと比較対照しなくてもヒッジョーに楽しめる本だと思います。オススメですよ。

からくり変化 あかりミックス! 2 石田敦子 角川書店 <漫画・単行本> 580円

 私にとって「エースネクスト」とは、かなりの部分この作品のため*だけ*にあるものでした。のちに「ニア」が加わり、それだけではなくなりはしましたが、それでも石田さまのこの作品は最高に楽しみなものでした。休載の時などは枕を涙でぬらしたものです。そして終了したときは寝込んでしまったものです。
 ですが帰ってきました。石田さまは、我々に単行本という形で、聖典をお示しになったのです。
 …もう疲れてきたのでやめますが、素晴らしい本であることは間違いありません。絵の美しさは言わずもがな。あかりちゃんのビルドゥングス・ロマンになっている(というか最初からそれしか考えていない)というところが素晴らしいのですな。お節介焼きのあかりちゃんに触れていくことによって、みんな何かが「変わって」いく。そしてあかり自身も一歩成長していく。それは石田さま自身が、自分の道を拓いていこうとしているようにも見える…といったところが「タマラヌ」ところなのですね。ありがとうございました、とお礼の言葉が出てくるような作品だったと思います。

成恵の世界 1 丸川トモヒロ 角川書店 <漫画・単行本> 540円

 主人公・七瀬成恵は、一見何処にでもいそうな女子中学生。だが実は彼女は宇宙人で、得意技は瞬間移動。何を考えてるか分からないところもあるが、何処か魅力的な女の子。そんな成恵ちゃんに惹かれる和人くん。いろいろあってふたりはおつきあいする(ていうか「交際する」)ことになるのだが、そんなふたりの周りは騒動ばかり。ウラシマ効果で成恵より幼く見える姉が登場したり、瞬間移動に失敗して、壁にはまりこんで動けなくなってみたり…。そう、この作品は、強いSFテイストに貫かれているのですね。当然タイトルから分かるところではあるのですが(ヴォクトですね)。そうしたSF要素の上手い登場のさせ方にはニヤニヤしっぱなしです。それだけでは単なるSFマニヤ向けの作品になってしまうところですが、この人はそこに主眼を置かず、「交際しているふたりの距離関係」を丁寧に描きだすのですね。中学生同士のつきあいとそれに由来するときめき。ぎこちなさ。性と直接は関係しないほのかなラブ。その「男少女まんが要素」にしっかりと気付いているところが凄いところなのです。あとはパンツですか。萌え!萌え!

バスルーム寓話 おかざき真里 飛鳥新社 <漫画・単行本> 952円

 単行本のトリはこれで。おかざき真里(字には気をつけないと。しつこくチェックする人もいますし)の95年から98年の作品を集めたものです。細かいことは後ほどレヴュしようと思っているので書きませんが、完成度と繊細さは驚くほどです。ひとりの男を愛した4人の女。それぞれは男のことを互いに語りあい、そしてそこに男の像(ドイツ語でいうならBild、といったところでしょうか)が現れる。そこで語られるのは、ひとりの男を通じて編み出されていった4つの姿の愛のかたち。それぞれの形は異なるものの、深いところで結びあう部分を持っている。そのために彼女たちは深く結びあうのであり、男との「別れ」を受け入れることができるようになるのです。深い、深い洞察です。そしてそれを繊細きわまりないタッチで描きだす。輪郭を越えて貼られたトーンが繊細さを印象づけるのですね。すでにブレイクしはじめてますが、もっと大きな波が来るように思います。とにかく絶対に読まなきゃダメです。

無限のリヴァイアス 3   バンダイビジュアル <DVD> 6000円
フリクリ 2   キングレコード <DVD> 3700円

 アニメはDVDで買うんです。私は声を大にして訴えます。「宝島」「ガンバの冒険」「ベルサイユのばら」「家なき子」「エースをねらえ!シリーズ」「あしたのジョー」「スペースコブラ」の、出崎統作品をすべてDVDにせよ、と。

HGUC リックディアス   バンダイ <立体> 1200円
HGUC キュベレイMk-II   バンダイ <立体> 1500円

 これは以前買っておいたものですが。キュベレイの方は色違い&デカール違いなので、別に見るところはないですが、リックディアスの方はいい感じです。ザクVカスタム同様「重モビルスーツ」の雰囲気が出ているのですね。加えて黒い、というのがいいじゃあないですか。

マスターグレード ガンダムMk-II   バンダイ <立体> 特価2000円

 これは夕飯の買い物の時買ったものです。近所のダイエーで投げ売られていたのですね。夕飯のおかずのシューマイと一緒にガンプラを買う、というのはなんだかいい経験だなあ、と思うわけです。

いちばん上


2000年6月23日(金)

夢の島で逢いましょう 新装版 山野一 青林堂 <漫画・単行本> 1100円

 どうやっても入手することができなかった山野の処女単行本の復刻版です。元々の内容に「マガジン・バン(聞いたことねえよ)」に99年まで掲載されていた「たん壺劇場」が追加されています。内容はSFに寄ったものです。細胞こそが、実は人間を支配しているのではないかというテーゼが繰り返され、それにフリークス、社会的に抹殺された存在がからんでくる。「四丁目の夕日」のような、階級に由来する理不尽さ(=面白さ)はここではまだ見ることができませんが、やりきれないラストなど、後の作品の萌芽は見られます。これはまた、随分とひさうちみちおの影響が強かったのですね!「たん壺劇場」の方は、掲載が96年から99年と新しいこともあって、随分と時事ネタが含まれてます。驚くべきことにエヴァンゲリオンの(下品な)パロディさえあったりします。内容はホントーにやる気ゼロというのもありますが、それがまたスリリングでいい感じ。全体的には、山野ヴァージンには進めませんが、気になる人にとっては必読といえましょう。

クレメンテ商会 かまたきみこ 朝日ソノラマ <漫画・単行本> 781円

 時は将来。この世界ではOA機器はひとつの会社の独占となっており、メンテナンスなどもその会社に依頼しなければならないものであった。それに反すると様々な罰則が科されるのだ。会社は定期的に新製品を出し、古い製品を強制的に駆逐しようとする。高額のメンテナンス料や機器更新料にあえぐ中小企業の人々。加えて愛着ある機械を手放さざるを得ない人々の苦悩が生じる。そこに現れるヤミの修理人・修子…。なんだか作者個人の怒りが随分と入り込んだようなプロットですが、そこはそれだけではありません。終盤に向けて、修子の本当の目的が明らかになり、そして修子を助けるようになる会社側の人間も現れるようになるという展開は、なかなか読ませるものがあります。「1984」的ビッグ・ブラザーに対する革命ドラマとも言えるのですね。SFだ!
 加えて絵が素晴らしいのですよ。のびのびとした線。微妙な表情のかきわけ。骨格を感じさせるポーズ。実力をひしひしと感じます。
 この本には読み切りの「雲を見る人」も収録されています。こっちもレベル高し!オススメの本です。

フェミニズム・サブカルチャー批評宣言 村瀬ひろみ 春秋社 <一般書> 1600円

 最近ジェンダースタディーズに手を染めてまして(コミック・ファンの原稿もそうですね)、ジェンダー系の新刊はあらかたチェックしているのです。多くは図書館で借りて済ませるのですが、この本は買いました。なぜなら…アニメの話ばっかりなんですもの。最初は「ヤマト」。次は「戦う少女(スケバン刑事、セーラームーン)」。お次は宮崎アニメ。それからエヴァ。最後にウテナ。…これを買わずして何を買えというのですか?
 元々この人は青弓社「ポップ・カルチャー・クリティーク」に寄稿していた人でした。この本の多くの部分も「PCC」の原稿を書き改めたものです。まだ全部は読んでいないのですが、「オタク的共同体」のさまには気付いている様子。楽しみに読んでみたいと思います。
 タダひとつ気になるのが、こうしたアニメについての論考をひとくくりに「サブカルチャー」としていること。そうですかねぇ。いまやアニメもすっかりメインストリームになっていると思うのですがねぇ。そこは特に注意深くなるべきところだと思うのですがねぇ。

ボクはマンガ家 手塚治虫 角川文庫 <文庫> 495円

 手塚の自伝ともいうべき作品。持ってなかったので。

シビュラの目 フィリップ・K・ディック ハヤカワ文庫 <文庫> 740円

 久しぶりのファット先生の本です。短編集。収録作は「待機員」「ラグランド・パークをどうする?」「宇宙の死者」「聖なる争い」「カンタータ140番」「シビュラの目」。ディックを買わないことは私にとっては許されないことです。

漫画の鬼AX 15号   青林工藝社 <漫画・雑誌> 933円

 特集は西岡兄妹。「難儀な人たちだな」とずっと思っていたのですが、最近の作品はそれは意図的なものであるとのこと。なんだかもの凄い話です。桜玉吉にも似た恐るべき行為。頭が下がります。あとは前回発表された漫画賞の受賞作が掲載されています。これについてはクロスレヴュで。あとは「激しくて変」にも掲載された早見純の作品も載っています。サブカル至上主義が匂うところですが、マンガ自体は面白いです。

いちばん上


2000年6月22日(木)

コミック・ファン 9号   雑草社 <漫画関連・雑誌> 705円

 特集は「まんがと性、複雑な関係」「エッセイまんが」などとなっています。全体的にとっちらかった印象がありますが、それぞれの文章は(私のはちょっと除きますが)かなりしっかりしていると思います。とくに永山薫のインタビューや、各雑誌の編集長への聞き取りは、エロの第一線にたつ人ならではの力があります。『少女革命』の編集長(女性)が、「女の子むけのエッチとは何か」(エロじゃなくてエッチ、というところがいいですね)を真剣に追求しているのが好ましいです。必ず避妊の描写を入れさせるとか。まんがを巡る言説に興味のある人は読むべき雑誌といえましょう。売れてくれれば次の仕事も入りますし…って、手前味噌ですかね。てへ。

少年エースA 8月号   角川書店 <漫画・雑誌> 419円

 前半の盛り上がりが凄いです。最初は奥瀬サキ原作/目黒三吉作画の「低俗霊DAYDREAM」。低俗霊というネタといい、奥瀬サキといい、目黒三吉といい、目を丸くするようなものじゃあないですか。漫画の内容も唸ってしまうようなものです。主人公は「口寄せ屋」の崔樹深子姫。ストーカーにつきまとわれて、明日穿くパンツも取られてしまう。その一方で容赦なくやってくる仕事。それは建物に「憑く」なにかを払うこと。借金を返し、SMの女王様のバイトをこれ以上やらないためにも、ノーパンで仕事に向かう深子姫…。奥瀬らしいダークなネタと、目黒らしいエロネタが見事にフュージョンしているところが面白いです。ただ気がかりなのは遅筆の目黒のこと、この長さがどれだけ続くか、というところ。そして次は「エヴァ」で畳みかける。前から書いているとおり、シンジも、レイも、黒エヴァにトウジが乗っていると知っていて闘わなくてはならないのですね。きつすぎます。神崎、天王寺は飛ばして平野耕太「進め!聖学(以下略)」。ネタ的に完全にエース読者を置いていきまくっています。「へーよかったですねーフーン」ですものね。リーフ作品すべてを!そして「いちばんゲームで感動したとき」との質問に「シヴィライゼーション2」と答えるとは!う、うぉう、ってな感じでしょうか。あとは「ケロロ軍曹(胸)」、「成恵の世界」といったところです。

Chara 8月号   徳間書店 <漫画・雑誌> 552円

 『能瀬くんは大迷惑!』『カルバニア物語』のために買っているこの雑誌ですが、だんだん慣れてきたせいか、他の作品も随分と楽しみになってきました。やっぱりこれからはボーイズラブっすよ。『毎日晴天』『WILD ADAPTER』などがピンと来たところです。

Craft Vol.4 V.A. 大洋図書 <漫画・アンソロ> 古書価500円

 何処を探してもなかったこの本に、ふらりと立ち寄ったブックオフで出会えるとは。何てったってタカハシマコ先生と紺野キタ先生がたまらなさすぎるのですよ。マコ先生は「星の王子さま」をもとにした作品で、一見孤独な可愛い少年の「喪失」を描いているように見えるのですが、実はすっげーブラックなオハナシ。この諧謔精神がタマリマセヌ。キタ先生は血のつながらない同い年の兄弟(再婚した夫婦の連れ子同士)+お兄ちゃんのことが本当に好きな妹、というネタで、これまた深みがあっていいのですな。なんといってもキャラクターに「厚み」=本当に空間を占めているような独特の立体感があるのが素晴らしいのです。それがボーイ同士のラブにも、妹のキュートさにもつながっていく。悶えてしまいますってば。他にはサークル「腐食金属」でも知られる吉川博尉、高屋未央などが描いていて、ごくレベルの高いアンソロジーになっています。次も期待。

DIFFERENT VIEW ナヲコ コアマガジン <漫画・単行本> 古書価500円

 確か買っていたはずなのですが、どこかに行ってしまい見あたらないもので。今後のネタに必須なのですね、このタイプの作家は。何がいいかといいますと、「12歳児的等身」と「12歳児的体の厚み」が上手く表現されているところです。ロリものというと得てしてちっちゃい女の子や、手足の細い女の子が描かれがちですが、ナヲコは自らの経験を踏まえてか(?)、実に「その辺にいそうな」女の子を描くのですね。第二次性徴が始まったばかりの女の子の描写(その不安定さも含めて)は、つよいリアリティを喚起するものになっています。

クーデルカ 1,2 岩原裕二. 角川書店 <漫画・単行本> 古書価各200円

 やっぱりすぐに買っておくべきだった、とちょっと後悔しています。オハナシこそやや迷走気味ですが、絵の魅力が非常に強いのですね。基本的に線で面を埋めていく技法と、魅力あるキャラクタの描き方にはすっかり参ってしまったことですよ。クーデルカのコスプレも見逃せない、という感じでしょうか。

僕にだって言い分がある
太陽の下で笑え
山田靫
山田ユギ
芳文社 <漫画・単行本> 各562円

 ユギ先生に関してはこの2冊だけ持っておらず、ずっと探していたのです。ところがふらりと入った(こればっか)まんがの森でなんとサイン本が!渡りに船とはこのことでしょうか、一目散に購入したことですよ。
 「太陽…」の方は、昔やっていたボクシングに未練を残す壮平とフリーライターのチカ(鉄面皮)、チカの同居人のゲイの直樹(『小さなガラスの空』に出てきてますね)の3人の物語。例によって例のごとく壮平とチカの微妙な関係が描かれるのですな。も、萌える!そしてただ単に、盛り上がりだけでセックスに突っ走ってしまうのではなく、一歩引いた視線も忘れない。この笑いとときめきの上手なミクスチュアこそ、ユギ先生の最大の魅力といえましょう。「僕にだって…」においても、軽妙なギャグはしっかりと作品全体を規定しています。この多重性にこころ動かされるではないですか。これからも追いかけていこうと思っています。

いちばん上


2000年6月21日(水)

フラミンゴ 8月号   三和出版 <漫画・雑誌> 743円

 8月発売の10月号で休刊、ということがアナウンスされています。やはり残念なことですが、新創刊される雑誌はフラミンゴを引き継いだものだということ。楽しみなところです。
 で、今回の内容ですが、やっぱり非常に濃厚で楽しめます。さらに世界が広まっている海明寺裕の「奴隷立國」。「GIさまを取り囲んでちんちんをはじめたのです」というフレーズに、もう完全にノックアウトされてしまったことですよ。また、クライマックスに向かって盛り上がっている天竺浪人「便器」。「純日本精神」というネタが相変わらずニヤニヤさせてくれる駕籠「名もなく貧しく美しく」。デタラメなノリがさらにパワーアップしているるもいじゅん「おとなちゃれんじじゃんぷん」。有機人形ものでなくても読ませてくれる蜈蚣Melibe「フェミニズムの先鋒」。どれもレベルが高いです。加えて今回は、「フラミンゴ漫画大賞作品集4」でその才能を我々に示した掘骨砕三「あたしは犬に吠えられている」が掲載されています。これが面白いのですね。端正な線なのですがネタは特殊。数百匹の犬を前にして欲情する女子高生!そのギャップが素晴らしいです。是非とも連続掲載を望みたいところです。

ミルクコミックさくら Vol.11 V.A. 松文館 <漫画・アンソロ> 761円

 ロリアンソロも一定の方法論を身につけ、安定してきたように思います。そうであるがゆえに、このアンソロジーでは新たな方向を模索しているように思います。とにかくどんどん新人を載せるのですね。それは一方で本全体のグルーヴ感なりを損なってしまうのですが、新しい可能性を開こうとしている姿勢はいいと思います。…単なる青田刈りなのかも知れませんが。今回気になったのは、まず豊川稲利「妹・Game」。隣の部屋でオナニーに耽る妹に、欲望を深める兄。妹には「嫌われて」いるのだが、その分妹を滅茶苦茶にしてみたいという欲望が募る…というオハナシがまずはいいではないですか。そしてそれに溺れていく妹の描写も説得力があっていいです。絵こそこれからという感じですが、伸びる可能性を強く感じます。他にはこけこっこ☆こま、黒崎まいりなどが気になるところです。あとはエッセイのページでA・浪漫・我慢が描いているのが目立ったところでしょうか。

Comicぷちみるく Vol.5 V.A. コアマガジン <漫画・アンソロ> 933円

 ロリアンソロを2冊一緒に買う私って。なんだか誇らしくなってしまいます。最初にわんぱくをぶちかましてくるのがいいじゃないですか。今回はあまり「痛く」はありませんが、家族の役割のねじれ、そして圧倒的ないつもの閉塞感は変わりません。やっぱり実力のある人です。他には宇内鉄朗、チャーリーにしなか、さがのあおい、ほしのふうた、トウタ、黒崎まいり、夕凪薫、馴染しん、鎌やんが作品を描いています。町田ひらくは以前の作品の再録なのでご注意を。この中で目立つのはまずはほしのふうた。少年漫画的に抽象化された線なのですが、それが逆に「○学生らしさ」をかもし出しています。次はトウタ。すっかり犬少女シリーズになってきているところが微笑ましいところです。この世界では純粋な人間(ドウブツとの混血でない)が迫害されているという…。「世界」が感じられるのがいいです。鎌やんは一連の17歳事件に取材したネタ。「殺すとはどういうことか」を考察しています。…やはり鎌やんは繊細にすぎるように思います。腹くくれよな、なんても思ってしまいますが、こういうスタンスの作家が現在いないのも確か。このままやり続けて欲しいものだと思います。

けだもの会社 2 唐沢なをき 集英社 <漫画・単行本> 800円

 トキ課長の独壇場であった前回と異なり、今回は様々なドウブツが出てきて、バラエティあふれる内容になっています。正体がなんなのか分らない「とるにたりない小動物」とか、カタツムリOLのネタなどは爆笑です。相変わらず手堅い仕事です。
 ところで気になったのはトキ課長のタッチ。いつもの唐沢とちょっとパースの付け方や主線の引き方が違っているような…。引き出しの多さをひしひしと感じます。

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Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:16:48 JST