2000年9月10日(日)
志村貴子先生のサイン会に行ってきました。O村、ヒロポン、ノナカってそれぞれ漫画に描いてあるとおりの人なんですね。
気刊 何の雑誌 1号 | 幻堂 | <漫画・雑誌> | 667円 |
以前に触れた幻堂の雑誌です。予告されていた川崎ゆきお先生のマンガはありませんでしたが、いきなり最初に載っている漫画が福満しげゆきの「バタフライキック」。福満本来の味が出まくっていて素晴らしいです。「先日気が狂って病院に行きました」ですから。あとはマンガはうらたじゅん、藤本和也、森元暢之、竜巻竜二など。全体にコラム中心の構成で、そのコラムがまた玉石混淆だったりしますが、マンガをいっぱい載せてくれるようなら嬉しいと思います。ちなみに気刊とは、原則季刊だが、気が向いたら出す、ということで…。ちなみに刷り数は2000部だそうで…。大手サークルの同人誌より少ないとは…。
HELLO GOODBYE | 本秀康 | 河出書房新社 | <イラストレーション集> | 1900円 |
本秀康のイラスト集です。「レコード・コレクターズ」などの表紙でも知られていましたが、この人結構イラストも多く手がけているのですね。そしてそれぞれ本秀康ならではのホノボノとした味がある。いい感じです。優しさ、というのでしょうか、暖かい視線、というのでしょうか。そうしたものが感じられます。マンガは「それゆけ名盤探検隊」「ボクとハカセ」などが収録されています。値段の高さを感じますが、心が落ち着くいい本だと思います。
カルバニア物語 5 | TONO | 朝日ソノラマ | <漫画・単行本> | 533円 |
志村貴子先生のサイン会の待ち時間用に。相変わらず面白いですね。今回のお気に入りは、靴の痛みに耐えながら必死に役目を全うしようとするパーマー国のシルヴァーナ伯爵令嬢。女は強い!おそらくTONO先生はこうした表現を、フェミニズムなどの思想をふまえないでやっているのでしょう。だからこそ説得力があるような気がします。昨日の講演でも「カルバニア」は好評でしたよ。もう一つは「だいらんど」でしたが。
能瀬くんは大迷惑!Jr.編1 | 辻よしみ | 朝日ソノラマ | <漫画・単行本> | 533円 |
これも待ち時間用に。えーっと、全部揃えるのに躊躇した自分を恥じております。とりあえずジュニア編で満足しようとしたのは間違っておりました。明日全部買ってきます。
デラックス・シングル | 突然段ボール | 日本カセット・テープ・レコーヂング | <CD> | 1500円 |
「ぽえむ・ぱろうる」にて。いいですなあ、こういう情報が収斂している場所は。かつて蔦木さんからメールを頂いたことを話していたら怪訝な顔をされましたよ??
Lol Coxhill & 突然段ボール2 | 突段&ロル・コクスヒル | 徳間ジャパンコミュニケーション | <CD> | 特価1400円 |
レヴェラーズ・チンドン | ソウル・フラワー・モノノケ・サミット | リスペクトレコード | <CD> | 特価1400円 |
短距離走者の孤独 | ソウルシャリスト・エスケイプ | キューン・ソニー | <CD> | 特価600円 |
これは以前買っておいたものです。吉祥寺ウェーブ(パルコ8階)が閉店するとのことで、投げ売りをしているのですね。本当は灰野敬二も買おうかと思ったのですが、まだ2割引だったので。そろそろ半額になっているかな?
2000年9月9日(土)
講演会に来てくださったあやこさん、どうも有り難うございました。
コミックビーム 10月号 | エンターブレイン | <漫画・雑誌> | 467円 |
いつにもまして今回はスゴイ出来。新連載はダークマスター作、泉レッドマン画の「カウントダウン」。泉”レッドマン”晴紀の登場は知ってましたが、ダークマスターとは…ここはやはりカリブ・マーレイ先生ということにしておきましょうか。とにかくビームの原作は全員カリブ先生なんだよう!!そういうことにしておきたいんだよう!!
そのほか最高なのは「テルオとマサル」。おお!ゾーン先生登場っすか。ツァディクは結構集めたものです。お、面白い!
後は最後にじわじわくる金平守人「サヨナラ
チビ」。この人こういう才能も持っているとニラんでいたので、ようやくやってくれたか、という感じです。ティア☆スター!!これもまた悪意の産物かもしれませんが、純粋に作品だけで見るとかなりぐっとくるものがあります。
エースネクスト 10月号 | 角川書店 | <漫画・雑誌> | 619円 |
オハナシが動き出した「ニア」、次回最終回(?)の「ああ!21世紀警備保障」でしょうか。最終回を予告したら「突然最終回」じゃないでしょう…というツッコミはおいといて。来月から玉置勉強(プロダクションI.G.原作)の「BLOOD」が連載開始とのこと。ほほう?勉強が原作つき??
東京H 10月号 | 一水社 | <漫画・雑誌> | 524円 |
ゼロ、月森、友永とヌケる布陣。加えて今月は久々登場美女木ジャンクション。以前のような突出は見られませんが、まあ健在をアピール。気になるのは司人形の「猫被りの住人達」と、八月薫の「鳴かないピアノ」。前者は描線に特徴があります。鉛筆書きのような繊細さ。しかもネタはロリ。集団。うむ。という感じでしょうか。後者はおそらくレディス系からの移行。女性らしい描線とキャラクタ造形、女性の視点からのエロが感じられて良いです。ハードな部分ではすでに男性向けも女性向けも関係なくなっているのだな…と感じます。作者が男性なのか女性なのかはわかりませんが。それから気づきませんでしたが、不適切図書の指定を連続して受けたため、今号で休刊とのことです。ありゃ。ですがさすがはタコ多田、11月中旬に「純愛果実」という名前で再スタートするようです。
零式 21号 | リイド社 | <漫画・雑誌> | 362円 |
中田ゆみ、まいとしろう登場。舞登は久しぶりなのでちょっと嬉しいです。中田はネタこそちょっとアレですが、絵の方のエロスキルはええ感じ。今後も描いてくれると嬉しいのですが。まいとはやっぱり排泄ネタが絡んで、まいとらしいフェティッシュな作品になってます。オハナシのぎこちなさはまだ感じるところですが、それもまた味。後は之瀬ハルオ「発情の孤島」が気になります。無人島に流れ着いた男女。男は頼りなく、女は力強いものの容姿に乏しい。男はいつもセックスを求めるが、女は拒否する。だがその実、女は男にもう一歩を踏み出してほしいと願っている…。ワイルドな野良セックスに訴求力があります。
2000年9月8日(金)
フィールヤング 10月号 | 祥伝社 | <漫画・雑誌> | 352円 |
内田春菊「見せつけないで これ以上」がなんか凄いです。もちろんネットでの匿名投稿なりチャットなりは、自我がぐにゃぐにゃになってしまうような気分を味わうものですが、これはちょっと凄いことになってます。意図的と見るか、壊れちゃったと見るか。おそらくは前者なのでしょうが、それにしても凄いです。後はやまじえびねの「LOVE MY LIFE」、多田由美「Tide」がいい感じです。それから「Zipperコミック」が創刊されるとのこと。キューティー…いやいや。執筆陣は、桜沢エリカ、三原ミツカズ、南Q太、小野塚カホリ、楠本まき、おかざき真里、朔田浩美、吉本蜂矢、藤末さくら、栗生つぶら、雁須磨子ほか。キューティー…いやいや。この作家陣の雑誌が増えるのは喜ばしいところです。19日発売だそうですよ。
ヤングアニマル 18号 | 白泉社 | <漫画・雑誌> | 248円 |
山口よしのぶ「ダブル」が新連載。サカタタカシ「故・姫川」が緊急掲載。
Linux Magazine 10月号 | アスキー | <PC・雑誌> | 1324円 |
カーネル2.4の特集が気になるところです。MAME関係をデータベース化したいと思っているので、ちょっとLinuxスキルを上げようと思ってまして。
2000年9月7日(木)
マドンナの片想い | 梶原にき | ソニー・マガジンズ | <漫画・単行本> | 590円 |
「ルチル」などで活躍中の作家の三冊目の単行本です。あきくんは同じ乗馬クラブののなかくんがだいすき。いつもはなしかけるのだけれど、のなかくんはいつもつめたい。それじゃあ愛するあきくんのために、わたしがひとはだ脱ぐしかないわね…と決意するマドンナ。マドンナって?もちろんお馬さんですよ。安芸くんと野中くんの心が少しずつ近づいていく様子を、お馬さんであるところのマドンナの視点から描いているのです。そしてマドンナは安芸くんにラブラブだという…それ故の「片想い」。ふはー!「馬並み」という言葉がありますが、ここでは語り口がお馬さんレベルなので、ちょっと凄いものがあります。一方で描線はきわめて繊細、かつ美しいものがあります。こいつぁ面白いですよ。他の単行本も買わなくちゃ。
あしながおじさん達の行方 1,2 | 今市子 | 芳文社 | <漫画・単行本> | 各562円 |
春日は施設育ち。両親の行方はわからない。そんな春日には毎月「あしながおじさん」からの学資と手紙が届く。春日の心の支えになっているその手紙。中学を卒業し、合格した公立高校を蹴って、自立しようとする春日。あしながおじさんの住所を尋ねてみると、そこにいたのは長髪の男・夏海と、かれの義理の息子でかれを慕っているヤスヒロ。夏海のことをあしながおじさんでは、と疑う春日。ヤスヒロとともに秘密のファイルを盗み出すと、そこには5人の名前があった。春日は5人の人物から支えられていたのだ。夏海はその一人。残りの四人を求めて、春日は行動を開始する…。非常に力がこもっています。まず驚かされるのは複雑きわまりない人間関係。5人の支援者がいる理由が少しづつ明らかになっていくのですが、その関係がヒジョーに入り組んでいるのです。それはオハナシに強い必然性を与えているのですが、「考えるの大変だったろうなあ」という印象も与えます。次に丹念な心理描写。人間関係の複雑さ故に、春日もヤスヒロも夏海も悩んだりするのですが、その結果3人の心は少しづつ接近していく。その描写に説得力があるのがいいのですね。セックスシーンをあえて排除しているところも好ましいところです。ボーイズラブのひとつの徳目、心のふれあい、惹かれあいを凝縮しているのですね。ですからたった2巻ではありますが、非常に内容は濃くなっています。読解に覚悟がいりますが、ファンならずともオススメできる作品です。
にくらしいあなたへ | 森永みるく | ワニマガジン社 | <漫画・単行本> | 505円 |
96年から97年にかけて「快楽天」に掲載された作品です。これだけキャリアがあって、これだけ実力があって2冊目の単行本とは。背後にあるであろう根本的な「欠如」を感じざるを得ません。「メア」も中断してますし。コスプレもいいですが、ちょっと頑張って作品を発表してほしいところです。とにかく「わんだふる」が単行本化されるまでは、私死んでも死にきれない思いです。
GO!ヒロミGO! 1 | 麻生みこと | 白泉社 | <漫画・単行本> | 390円 |
ヒロミはこの春最高学府であるT大(架空の大学)に入学したばかり。暗かった高校生活を終え、大学生活に希望を抱くヒロミ。気張って登校するが、最初から浮きまくる…とまあ、ハイテンションにすっぽこなヒロミの様子が描かれていきます。スピード、グルーヴ、ともによし!ちと学生生活のリアルから遊離したところもなくはないですが、安野モヨコに匹敵するハイスピードでガンガン攻めてくれます。
夢雅 10月号 | 桜桃書房 | <漫画・雑誌> | 514円 |
普段は買わない雑誌なのですが、今回は海明寺裕が載っているので。タイトルは「調度品」。ほんの気まぐれから家具屋に入る男。そこは人間家具・ファニチャノイドを扱う店だった。椅子やテーブルとして奉仕するスレイヴァリー諸島産のファニチャノイドたち。その中で男は、ひとつのテーブルに目を留める。そのファニチャノイドだけは他と違い漆黒の髪を持っていたのだ…。今までの「K9」とは異なり、わんこではなく家具として奉仕するものたちが登場しています。「K9」世界と矛盾しない設定なのが面白いじゃないですか。この世界は構造的にK9も存在し得るし、ファニチャノイドも存在し得る訳です。楽しさ二倍、という奴ですか??ドキドキしてしまいます。これを「ヤプー」のパクリという奴は逝ってよし!次回予告にはありませんが、今後も連載でこのシリーズを続けるようなので期待大です。ただ残念なのは、三和の新雑誌にはK9は載らないとのこと。こっちで頑張ってほしいものです。詳しくは海明寺先生のWebページを参照してください。
2000年9月6日(水)
アニメスタイル 2号 | 美術出版社 | <アニメ・雑誌> | 1714円 |
アニメ!アニメ!アニメー!!!アニメが好きだーっ!!!1号はちょっと敬遠してしまったのですが、2号を買ってみたら面白いこと。まず特集はりん・たろう。この人の監督術の繊細さはすでに知れ渡っているところなのですが、その秘密が絵コンテにあったとは。まるで漫画のように描き込まれた絵コンテには吃驚です。書き文字に味があること。次は押井守×小黒祐一郎の対談。押井守の神格化はあちこちで見られるところですが、この対談は淡々としていていい感じです。そのほかいろいろ面白い記事があり、出崎統の絵物語さえある!(白鯨伝説は??)満足です。値段は高いですがその分充実してます。アニメがこれだけ充実してきているのに、「アニメック」のような雑誌がないことを危惧していたのですが、これがあれば安心だと思います。1号も買わなくちゃ。
漫画の鬼AX 16号 | 青林工藝社 | <漫画・雑誌> | 933円 |
特集は猟奇王。もうダメ、という感じです。「首領 来月の食料がありません」「夢の中から食料を調達できぬか」ですから。後は秋山亜由子、入選作中野シズカの「ワオンアパート」が繊細でいい感じ。やっぱり細やかさは必要です。…それから最近めきめきと面白くなってきているのが「須磨で」。最初は拒否反応しか起こらなかったのですが、ツボがわかってくるといいのですね。おっさんになってしまった少年が、透明通信を受信するためには、一度徹底的に汚れなければならないのです。ああ切ない切ない。
ヤングキングアワーズ 10月号 | 少年画報社 | <漫画・雑誌> | 324円 |
小田中さんも書いているように、連載作品の展開が遅すぎます。ケレン味にあふれた「J」、確信犯的な「朝霧の巫女」、またも登場西村竜、たまにしか読めないからこそ面白い「ヘルシング」と、見るべきところはあるのですが、どうにも色あせてしまって…。しばたさんなども疑義を呈していますが、さすがに私もちょっと、という感じです。テナ訳で今回を限りにクロスレビューをやめようかと考えています。
快楽天 10月号 | ワニマガジン社 | <漫画・雑誌> | 314円 |
米倉けんご「エヴァーグリーン」のテンションの高さたるや。達せられない二重の思いを描き込み、それでいてエロも十二分。女性が主導権を握るセックスを実に丹念に描いています。嘆息するばかり。それから今月は新人の三浦靖冬、綾瀬さとみが載ってます。前者は閉ざされた空間で、閉塞感に潰されそうになりながら出口を探す「きょうだい」たちのオハナシ。トーンの使用を押さえ、線で構成された画面は美しいです。後者は…まあ、無理にエロにしなくても、という感じでしょうか。可愛ければよし!という場合もあるので、ソッチで攻めてもいいんじゃないでしょうか。YUGみたいに。後は夏蜜柑も載ってます。この人やっぱりいいですね。好きじゃあ〜!神寺千寿も載ってます。好きじゃあ〜!
ホットミルク 10月号 | コアマガジン社 | <漫画・雑誌> | 838円 |
わんぱく先生登場。やはり狙いはアニュス。ANUSに入れた魚肉ソーセージを食べたりしていていい感じです。ところで同人誌で見たことあるような原稿ですが??それからやはり見逃せないのがナヲコ先生「綺麗」。今度はくせっ毛の女の子が性的存在としてクローズアップされてきます。ナヲコ先生の徳目は人物に「厚み」があるところ。第二次性徴を迎え始めた女の子を、あたかも肉体がそこにあるかのように描いています。そして「何か」が始まる…目が離せません。KICO?エロゲーはよくわかりません。
マンガエフ 3号 | 太田出版 | <漫画・雑誌> | 552円 |
うーん、やっぱり何か足りない感じ。アタマを刺激する駕籠&安田、コンスタントに見せてくれる小野塚&南Q太、書き込みが素晴らしい松本&深谷と、それぞれの作品はいいのですが、全体の印象がぼけたような感じなのですね。極端さが足りないというか。ガツーンとくる何かが足りないというか。ということで次回の砂先生の登場に期待したいと思います。
フラッパー 10月号 | メディアファクトリー | <漫画・雑誌> | 429円 |
新谷かおるが落とした結果(ワンフェスでぶっ倒れたそうで)、竹本泉先生が2本載ってます。しかも連続で。幸せだ…。駕籠も快調、スカルマンもいい、ビューティーは可愛い、と全体的にまとまりを見せてきて、フラッパーらしいグルーヴが出てきていると思います。いいじゃないですか。そして最後は柳沼行で締める。ちょっと強引かな、と思わなくもないですが、柔らかい絵柄と、夢に対する確信が感じられて、そんなことはどうでも良くなってしまいます。長谷駅は確かにいいところですよね。
2000年9月5日(火)
ぱるぷちゃんの大冒険 | 吾妻ひでお | ぱるぷ | <漫画・単行本> | 1000円 |
…これは見たことも聞いたこともない単行本でした。それがひっそりと「まんがの森」に新刊として置いてある。カバーを見ると消費税表示が3%。初版発行は85年、新装版発行は94年。奥付にはシールが貼ってあり、発行所の住所は埼玉県浦和市。ふ、不可解な!なかなか珍しい本だと思い速攻で保護しました。内容は「マンガ奇想天外」に掲載されたものを中心としています。「悪い宇宙人にさらわれたお姫様を救い出す宇宙の英雄」に限りなく惹かれるぱるぷちゃんが主人公。わ、ワイドスクリーンバロック!!85年頃といえばあじま先生がSFにどっぷり浸かっておられた頃。そうした状況のなかであえてワイドスクリーンバロックに対するオマージュを捧げる。やっぱりこれがいいんです。必要なものはセンスオブワンダー。緻密な科学考証も悪くはありませんが、そこにある荒唐無稽なほどの想像力の羽ばたきに参ってしまうというわけです。
ここちよい重さ | ミルフィーユ | ヒット出版社 | <漫画・単行本> | 874円 |
「D-Ange」で気になっていた作者の初単行本です。とにかくたぷたぷと揺れる巨乳と、柔らかい描線が非常に好ましい感じ。上手いです。自らのリビドーに忠実です。その分こっちにも訴えかけてくるものがあると思います。この調子でみなすきぽぷり先生の単行本もお願いしたいところです。
COCONUT CRUSH | JERRY | 青林堂 | <漫画・単行本> | 880円 |
随分前に買っていたものですが、記録をつけていなかったもので。魚喃キリコと同時期に「ガロ」でデビューした作家の初の作品集です。収録されている作品の多くが93年から95年にかけてのもの。今まで何をやっていたのですか?という印象です。内容としては、実にイラスト的であるところが目を引きます。画面構成そのものが一枚絵を前提としているのですね。その点でこの作家は林静一、佐々木マキの正統後継者といえるでしょう。実際佐々木とは手法上の共通点が見受けられますし。ただ絶対的に異なっているのは、JERRYの場合は90年代的オシャレさを身につけているところ。そこにこの作家のアクチュアリティがあるのだと思います。是非ともこの単行本発売を機に、漫画の世界に帰ってきてほしいものだと思います。
天からトルテ! 10 | 近藤るるる | エンターブレイン | <漫画・単行本> | 560円 |
…何も申し上げることはございません。いや、何をこれ以上語ることがありましょうや?
BStreet Vol.2 | V.A. | ソニー・マガジンズ | <漫画・アンソロ> | 950円 |
探偵ものがテーマのアンソロ、第2弾です。描き手は冬目景、斎藤岬、亀井高秀、羽海野チカ、東城和美、しまじ月室&Marr、梶原にき、雁須磨子。まあもの凄いラインナップですこと。着目すべきはまずは羽海野チカ。今まで知られた「スラムダンク」系の絵柄でも、はぐちゃん系の絵柄でもない、子ども向けを感じさせる可愛い絵柄。少年キオが行方不明になったみどりの子犬を探す、というスジなのですが、これが上手くまとまっているのですね。闊達な線が高野文子の領域に入っているところも目が離せないところです。二重に吃驚仰天の大名作。この作家に早いところ気づくことができたことの幸せを感じます。次は東城和美。足首だけを残して焼死した事件を捜査する探偵。周りは動機のある人物ばかり。さあどうする…というオハナシなのですが、結末の付け方が驚天動地もの。先生、本当に、本当に、それでいいんですか!!天の神様に対して申し訳なく思わないのですか!とさえ感じてしまう強引きわまりない終わらせ方に完全に腰砕けになります。ああ、深く詮索するのはやめよう、読者のこっちが天罰をくらいそうです。もちろんそうだから最高なのです。後は当然カリスマ先生。これもギアが全然かみ合っていない印象で、読んでいる最中にグラグラになります。よく読むとプロットはしっかりまとまっているのですね。ですが先生お得意の絵柄が…。そこにめまいの魅力が生じるというわけです。
まるくり倶楽部 Vol.01 | ラピュータ | <漫画関連ムック> | 1500円 |
この会社からメールが来たので試しに買ってみました。メインコンテンツはまんが描きへのインタビュー。取り上げられているのは和田慎二、須藤真澄、永野のりこ、竹本泉などなど。聞き手はさとうげん。コンセプトとしては作家のナマの声を聞く、というものがあるようです。確かに北千住を須藤真澄と歩いたり(ばずび先生の写真を見るのはこれが初めて)、祖師ヶ谷大蔵を永野のりこと歩いたり、という企画はなかなか面白いと思いましたね。それぞれの作家の思い出を直接聞き出す一方で、作家が歩いてきた道を明らかにしているのですから。ただ、いかんせん他のコンテンツとの連携が悪く、そこ以外はあまり見るところのない内容になっているように思います。値段が値段なのですから、もう少し工夫してほしかったと思います。インタビューをもっと増やすべきではないでしょうか。
鳩よ! 2000年9月号 | マガジンハウス | <文芸・雑誌> | 476円 |
特集は魚喃キリコ。作品二本掲載。創作メモも載ってます。お友達であるところの安彦麻理絵、大久保ニューも登場しています。まあ、それだけまんがが描く領域と文芸が描く領域が接近してきているということで。ただ、文芸側の人々の、まんがに対するある種の無神経は鼻につくところ。どっちもおんなじなんだよう!現在はよう!
2000年9月4日(月)
今まで更新をさぼっていた分、行きます。
船に棲む 1,2 | つげ忠男 | ワイズ出版 | <漫画・単行本> | 各1800円 |
「COMIC釣りつり」に連載されていた作品をまとめたものです。なんと完全新作!オハナシは次のようなものです。利根川の近くでジーンズ店を営む主人公。そろそろ店は息子に任せようと思っている。一方で小説家も生業にしており、釣りのエッセイの連載を持っている。普段は岸からの釣りで我慢しているが、舟釣りへの思いが募る。そんなときに、廃業した漁師から舟を譲り受けることに成功する。かれは舟に細工を施し、そこに棲むことができるようにする。世間から離れ、「隠棲」するために。舟で月のうち何日か暮らす彼は、様々なもの、人と出会う。理念的な水死体、全国の河原を旅して回る「先生」と弟子、大酒のみの漁師、黒猫、助川助三…。
とにかくひしひしと感じられるのは、世間から身を引こうという強烈な志向です。助川助三とちがい、この主人公は店を営み、小説家という職業も持っています。ですが一人になることのできる場である舟を手に入れることにより、彼は世間から生きながらにして隔絶することができるようになります。そして仕事に、店の経営に追われることによって、ますます世を捨てて舟に逃げ込もうとします。そのときに感じられるものは「もういいよ」という感覚。「もういいから早く引退したい」という感覚がひしひしと感じられるのですね。それは「無能の人」で描かれる「蒸発」と強い共通点を持っています。そのために読者は強い厭世の念を抱くわけです。ああ、私も蒸発したいなあ…という。その意味でこの作品は実に反社会的であり、そして魅力的になっているのだと思います。全4部まで構想はできあがっているとのことですが、現在は掲載誌の休刊により制作が止まっているとのこと。是非とも(書き下ろしで?)3巻、4巻が出てほしいと願うものです。
ムーミン・コミックス あこがれの遠い土地 | トーベ&ラルス・ヤンソン | 筑摩書房 | <漫画・単行本> | 1200円 |
べらぼうに面白いムーミン・コミックスの2巻です。今回の収録作品は「ムーミン谷の気ままな暮らし」「タイムマシンでワイルドウエスト」「あこがれの遠い土地」「ムーミンママの小さなひみつ」の4編です。最初の作品は、自由気ままな暮らしをしているムーミン一家の元に道徳を説く協会の会員がやってくる。それにまんまと影響されたムーミン一家は道徳的な暮らしをしてみようと試みるが…というものです。道徳などといったものがいかにうさんくさいか、自由人であるスナフキンの生き方がいかに魅力的であるか(それは同時につらいものでもあるのですが)が、実に生き生きと描かれているのですね。もちろんこれは文明批判。ムーミンという題材を使い、近代の世知辛さを描いているのですから興味深いことこの上ないです。2編目と3編目は、ムーミンパパが偶然(!)作ってしまったタイムマシンを使って、西部劇の時代とロココ時代を旅するというもので、これまたキテます。特に後者、革命家をやじり倒すあたり、ヤンソンの真骨頂といえましょうか。とにかく手にとって読んで欲しい本だと思います。「深淵が!」
カムナガラ 1 | やまむらはじめ | 少年画報社 | <漫画・単行本> | 495円 |
「アワーズ」連載作品です。前世の記憶、異世界からやってくる異形のものたち、それに対するはまだ勝手の分からない主人公…という、オハナシの基本構造は非常にオーソドックスなものといえましょう。日本漫画が作り上げてきたひとつの「カタ」に従ったものとなっていると思います。ですからやりようによってはいくらでも陳腐な展開にできるオハナシだと思います。事実、「新・少年誌」には、この手の凡庸なオハナシはいくらでもあります。正直私もこの連載が始まったときには、ずいぶんと危惧を抱いたものです。「どうしちゃったんだ?」と。ですがこの第1巻を見ると、それが杞憂であったことがわかります。主人公九谷の詳細な心理描写、九谷より事情に通じているために、逆に「現実」から遊離してしまっている武弥の描写は、ほかの作品とは完全に一線を画しています。そしてこの描写の背後から、やまむらの意図が見えてきます。おそらくやまむらはあえてこうしたオーソドックスな舞台を選択したのでしょう。ひとつは作品世界をわかりやすくするため、もう一つは「アワーズ」も含まれる「新・少年誌」の状況に一石を投じるため、ではないでしょうか。後者については憶測ですが。いずれにせよ、ありがちでわかりやすい世界を選択しつつ、やまむらならではの味や描写を組み込んでいく、というアグレッシブな姿勢には共感するところしきりです。
アップル・シンデレラ | 伊藤伸平 | 大都社 | <漫画・単行本> | 880円 |
これは懐かしい、伊藤伸平の「サンデー」連載作品の復刻です。アイドル好きの少年が、町で見かけた美少女を本当のアイドルにするために奮闘する…という作品なのですが、描かれている内容が何とも懐かしいのですね。おニャン子クラブ!ああ80年代という時代はかくも○○(好きな言葉を入れましょう)な時代であった!伊藤のアイドルへの愛がひしひしと感じられ、ほほえましくも切なくなります。他には「マッド彩子」のシリーズがいい感じ。SFにも造詣の深い伊藤のワザを感じます。
とにかく驚かされるのは、伊藤は最初から高度なテクニックとオハナシづくりの能力を持っていたということ。週刊連載ということもあってバタバタしているところもありますが、限られた連載期間のなかで存分に「まっすぐな気持ち」を描いている。それが「はるかリフレイン」のような正統派(?)の作品につながってきているように思います。いいですなあ。まあ、それをいうなら「マッド彩子」は「ハイパードール」へとつながるといえるかもしれませんが。
ハネムーンサラダ 2 | 二宮ひかる | 白泉社 | <漫画・単行本> | 505円 |
ひかる先生は意地悪です。すべてが上手くいくような描写を入れた直後に、不安定になる3人の関係を描くのですから。両手に花、という甘い状況は許されないというのでしょうか。まあそれは読者が望んでいることでもあるのですが。苛烈な状況を進んで描くという姿勢を強く応援したいと思います。それにしても絵柄の素晴らしいことよ。特に一花のからだの線の描き方(と、そのエロさ)は嘆息もの。服を着たときの方がセクシーなのはなぜ?それは服の下のふくよかな肉体が容易に想像されるから。ああ、悩ましい。
Wsamarus2001 | 古屋兎丸 | イースト・プレス | <漫画・単行本> | 999円 |
古屋兎丸があちこちで発表した作品(短編やイラスト)を集めたものです。メインになっているのは「スーパーフィール」に掲載された「サチといった海」「いちばんきれいな水」で、他に「平成50の怪談」に掲載されたホラーな短編、文芸誌に載った「エミちゃん」の親戚ともいうべき作品が載っています。漫画以外の作品も多いので、ややばらけた印象もありますが、絵描きとしての兎丸のうまさ、そして漫画描きとしてのワザの向上が見え、興味深いです。とにかく引っかかるのは「赤鬼」。「恐怖の実話怪談」に掲載されたものですが、これがホントーにシャレにならないくらい怖い&気持ち悪いのですね。細密画のワザをホラーに生かし、漫画としても強い印象を持った作品に仕上げるとは…と吃驚した覚えがありますが、それが「スーパーフィール」の2作品、そして「Marieの奏でる音楽」につながってきているのだと思います。
カストラチュラ | 鳩山郁子 | 青林工藝社 | <漫画・単行本> | 1400円 |
作品社から出ていた単行本の再販です。帝政が革命によって倒れた後の世界。新しい政府は思想として肉食を廃止しようとしていた。新政府の幹部養成校と思われる学校に通う茅(マオ)と、白人貴族の血を引く舒力(シューリー)。舒力は肉食の習慣を忘れてはおらず、厨房に出入りする少年からこっそり肉を手に入れている。舒力の家に招かれた茅は、街で見せ物小屋に入る。そこでは旧王朝で育てられた最後の去勢歌手、夏洛蒂林(シャーロット・リン)が歌っていた。まるで風船のように太った林に落胆する二人だが、茅はその歌に潜む結晶のような美しさを見て取る。そして林のもとに忍び込む茅。そして彼は見る、林の纏足を…。
この作品の繊細さとものすごさはすでに知っていたところですが(もちろん作品社版も持っています)、改めて読み返してみると実に多くの要素がひとつの作品に詰め込まれ、そしてそれぞれが有機的にに結びあってひとつの結晶体を作り上げていることがわかります。有機的、という言い方は適当ではありません。共有結合とか、水素結合とか、とにかくそうした無機化学の領域に属した結合の言葉がここには入るでしょう。要素それぞれとは、肉食と身体、去勢とそれに伴う喪失…逆に得られる美しさ、纏足と女性、新興エリート勢力(元プロレタリアート)と滅びゆく貴族制、そして少年。そうした多くの要素を見事にひとつの物語に収斂させています。ここではこれ以上細かくは述べませんが、それにしても水際だった手腕だといえましょう。収斂に加えて、美しさ、透明さ、そして結晶が持つ輝きを付与しているのですから。再販を機に是非とも多くの人に読まれて欲しい作品だと思います。
ちなみに旧版との違いは、表紙、前半の2色カラーの色合いの違い、そして最後に5ページ書き足しが加わっているところです。それほどバリューが増えている訳ではないですが、これだけの名作、何冊持っていても問題はないでしょう。
Cat Shit One 2 | 小林源文 | ソフトバンクパブリッシング | <漫画・単行本> | 950円 |
待ちに待っていた、という印象の2巻です。今回も可愛いウサちゃん(アメリカ人)が、ネコちゃん(ベトナム人)やパンダちゃん(中国人)やクマちゃん(ソ連人)とドンパチを繰り広げます。今回はお猿(日本人)の視察団も登場します!もうおわかりでしょう、佐藤と中村が登場するのです!私はこれを待っていたのです。まあ佐藤と中村は本筋とはぜんぜん関係ないのですが、その投げやりな登場の仕方に源文先生の愛を感じます。基本的なオハナシは非常にハードなベトナム戦争物なのですが、キャラクタがこんなのであるために、ちっとも陰惨さが出ないのですね。そのために全体的に悪夢的な様相を呈することになります。イデオロギー的に考えると、もの凄い批判を受けそうな作品なのですが(特に小森陽一などの意見を聞いてみたいところですな)、何より源文先生が楽しそうに描いておられるのでこれでいいのです。その分作品も猛烈に面白くなる、という訳です。それにしても中村が源文先生の娘婿だったとは!それから最近源文先生自ら「2ちゃん」に現れておられるとは!ビバ自営業!
Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:16:49 JST