2000年9月19日(火)
Zipper Comic Vol.1 | 祥伝社 | <漫画・雑誌> | 371円 |
「フィールヤング」などでおなじみの編プロ、シュークリームが編集協力している雑誌です。登場する作家は、桜沢エリカ、三原ミツカズ、藤末さくら、吉本蜂矢、栗生つぶら、小野塚カホリ、おかざき真里、朔田浩美、中山乃梨子、国樹由香、南Q太、神田ジョセフィーヌ、架月弥、雁須磨子。いやあ濃いラインナップです。なかでも気になるのはいつものかみ合わない味がタマラン吉本蜂矢、淡々とした雰囲気がセンス良い栗生つぶら、閉鎖感覚と視線の使い方にシビレルおかざき真里、そしてカリスマ先生。漫画の出来はそれぞれなかなかのもので、雑誌としてはかなり好み。12月の次号発売が待ち遠しいです。
ですが。もうお気づきだと思いますが、このラインナップは去年末から今年はじめの「キューティーコミック」とほぼ一緒。桜沢、吉本など連載作品の移行もあります。そう、以前の「キューティーコミック」とおんなじ雑誌が名前と出版社を変えて出ているのです。おそらくその背後には、「キューティーコミック」の編集から、シュークリームが手を引いたことがあるのでしょう。何があったかは知りませんが、一読者として言わせてもらえば、イヤミを通り越して嫌らしいですね。読者に「復讐」を感じさせる雑誌づくりは、なにかが根源的に間違っているように思います。もうちょいヒネりを加えて勝負して欲しいと思います。
メロディ 10月号 | 白泉社 | <漫画・雑誌> | 362円 |
面白い雑誌ですね。私は女性向け(とされる)雑誌をそれほどチェックしていないので、それが正当かどうかちょっと自信がないのですが。今回巻頭は竹宮惠子「ブライトの憂鬱」。眉目秀麗、成績優秀、高い知性と読心のESPを持つブライト君が主人公。一見懐かしい「私を月まで連れてって!」的なSFコメディを思わせますが(実際そうした面もありますが)、なかなかどうしてテーマは現代的。いろんな気苦労が耐えないながらも、スマートに気丈に生きていこうとするブライト君がいい感じ。次に載っているのがわかつきめぐみ「ソコツネ・ポルカ」。何を言うことがありましょうや、この絵柄とこのすっとぼけた展開に。あとは「GO!ヒロミGO!」「どいつもこいつも」「陰陽師」「天上の愛 地上の恋」「さんさんさん」…ああ、幸せ。倉田絵美の最終回はやや残念ですが、これだけ面白いのですから文句は言えないでしょう。…実はこっそり「パタリロ西遊記」を楽しみにしているのはナイショです。
花音 10月号 | 芳文社 | <漫画・雑誌> | 667円 |
ふふふふふ。私の萌えに萌えるボーイズ魂は止まらないのです。まだまだボーイズ雑誌独特の「波動」にあてられているところもあるのですが、いいんです!山田ユギ先生と南野ましろ先生の巧さにクラクラ。
Comic燃絵 Vol.3 | 松文館 | <漫画・雑誌> | 552円 |
着実にハード系の一角を占めてきているように思うのですが。気になるところはロリイタ系甚だしいA・浪漫・我慢、女流とおぼしき柔らかさがいい感じの陽香、どこかリアルが漂白されたビダイセー系の絵柄が好ましい119、大怪我をした娘に犬の脳を移植(!)して、そのものズバリのわんこ少女を作り出すというあじまる…。とくにあじまる先生には感服するほかありませぬ。次も買わなくては。
2000年9月14日(木)
今日の買い物の内容は濃いです。近年まれにみる濃さ。
じゃがたら | 陣野俊史 | 河出書房新社 | <一般> | 2400円 |
昔、じゃがたらというバンドがありました。80年代を疾走し、90年にその幕を閉じました。じゃがたらには「心臓」がありました。江戸アケミという。その死から10年たってまとめられた、じゃがたらについての本です。
全体は三部構成になっており、第一部はじゃがたらの10年強の活動の記録を各種資料やインタビューからまとめたもの。第二部はじゃがたらに縁の深い山本政志(「闇のカーニバル」「ロビンソンの庭」の監督)、町田康(町蔵時代に競演、「ロビンソンの庭」で準主演)、こだま和文、近田春夫、大熊亘へのインタビュー、第三部は筆者による「じゃがたら論」になっています。この作者がじゃがたらを本格的に聞き始めたのはつい最近で、「知ってはいたが通過してきた」とのこと。ですが序にはこうあります。
いま、こんな本を書こうとしている私は、真剣に、若い人間にじゃがたらを聴いてほしいと思っている。バトンの受け手が一人でも増えることを期待している。そしてじゃがたらと同時代を生きながら、そのグルーヴをナマで体験することを永遠に逃してしまった馬鹿者にできることは、可能な限り克明にじゃがたらの足跡を辿ること、記憶を再現・更新してもらうことであり、それを文字として刻印することだけである。(p.17)
そう、我々はすでに大きなものを失っているのです。そしてそれに対しては決して手をつけることができません。その不可能性の中でできることは、歴史をきちんとふまえ、語り継いでいくことだけです。喪失の悲しみを克服する、または昇華する唯一の方法といえましょう。作者の姿勢と努力に心底から敬意を表したいと思います。
「音楽、好きになりましたね。結構”モーニング娘。”とか子供がこんなになって(こぶしを突き上げるフリ)歌ってたりすると、”そうね、下世話なのがいいのよね”とか思ったりする。”知的なのはダメなのよ、よけいダサいのよ”って思いますね。”日本人って暗いね”(「でも・デモ・DEMO」の歌詞)の、あの下世話さは、あれは早かったなあと思います」(p.37 古市弥生のインタビューより)
という言葉も忘れてはいけないと思いますが。
とにかくじゃがたらというバンドが、私の人格形成において決定的な役割を果たしたことは間違いなく、今でも、そしてこれからも、江戸アケミの存在が私の心から消え去ることはないでしょう。バトンを受け取る人が一人でも増えてくれることは、私の願いでもあります。
プラスチックガール | 古屋兎丸 | 河出書房新社 | <漫画・単行本> | 2000円 |
「スタジオボイス」の巻末を飾っていた見開き2ページの作品をまとめたものです。ここに来て、漫画は完全にアートの領域に突入し、アートという水準から見ても高く評価されるものになっています。インスタレーションの技法と漫画の技法が融合しているのですね。それぞれの作品は、インスタレーションとして展覧会会場に置かれたとしても、きわめて強く観客のこころを突き動かすでしょう。そして表現は漫画としての側面も持っている。題材、オハナシは少女特有の危うさ、アドゥレセンスを迎えた少女の喪失の悲しみ。「じゃがたら」も相当なものですが、これも背筋の凍り付くような本です。今の漫画文化が到達したひとつの頂点が、間違いなくここにあります。さすがに現在では少なくなりましたが、日本漫画をけなす言説のひとつに、「メビウスやエンキ・ビラルと異なり、日本の漫画はアートとしての完成度が低い」というものがありました。ですがここではその言説を完全に無効化するだけの、問答無用の迫力と美しさがあります。漫画文化に関心のある人のみならず、アートに携わる人は、全員触れなければならない作品です。日本文化に革命を起こすかもしれない最尖端の作品。絶対に歴史に残ります。
かわいいしっぽのペロくん | 鴨沢祐仁 | 青林堂 | <漫画・単行本> | 1300円 |
これも待望の一冊。漫画は少なく、イラストレーションが中心ですが、最後に載っている鴨沢本人によるあとがきが泣かせます。アル中として知られる鴨沢が何とか現世にしがみつくことができたのは、他ならぬペロがいたからだ、といいます。それだけかけがえのない存在だったペロを失うことは、鴨沢にとっていかばかりの痛みであったでしょうか?それが伝わってくる、素晴らしいあとがきだと思います。もちろん漫画も痛切なほどポップです。今月の「ガロ」にあったような、エッセイも読んでみたいとは思いますが、こうして一冊の単行本になったことを喜びたいと思います。
コミック.H 10月号 | ロッキンオン | <漫画・雑誌> | 648円 |
ロッキンオンが満を持して?放つ漫画雑誌です。当面は季刊ペースで発行される様子。描いている漫画家は、真鍋昌平、村田江里、藤原薫、関根美有、岩山義重、海埜ゆうこ、青木京太郎、近藤聡乃、衿沢世衣子、マツヤマアキオ。加えて安野モヨコと山本直樹のインタビューが載ってます。インタビューの人選の&写真撮影術の陳腐さには呆れを通り越して憐憫の情さえ感じますが、漫画はいいものがあります。真鍋昌平は流石に現代の暗黒を描き出しています。海埜ゆうこは、もっと突っ込めるだろうという印象を持ちますが、それでも「キューティーコミック」では読めないようなイタイオハナシを描いています。そして何よりいい感じなのは藤原薫。「おまえが世界を壊したいなら」で知られる作家ですが、その繊細な描線のもつ力はすさまじいものがあります。この作品だけでじゅうぶんモトはとれるように思います。
その他の漫画世界ではあまり知られていない作家達は、基本的にアートやデザイン系で活躍している人です。こうした人たちの作品は、お世辞にも漫画として優れたものではないと思います。漫画の作劇術や作画のセオリーを採用していなかったりしますし、オハナシがずいぶんとひとりよがりだったりしますし。ですがこうしたクロスオーバーの試み自体は評価したいと思います。また、編集の方法といいますか、雑誌のフィニッシュの方法に女性らしい繊細さが見られるところに注目したいと思います。女性編集が、女性としての視点からコンピレーションしていく、という方法は、まだまだ男性優位の漫画世界に静かな動揺を与えるのではないか、と考えているものですから。「キューティーコミック」や「フィールヤング」がそうであるように。
魔法少年チャイナシュガー | タカハシマコ | 大洋図書 | <漫画・単行本> | 580円 |
すいません最後がこれで。ですが私の萌えに萌えるボーイズ魂を鎮めることはできないのです。「それはそれ、これはこれ。」ですから。タイトルを何度も口に出してみてください。「魔法少年」というところでずいぶんと引っかかりませんか?そして内容はまさに愕然とするものです。可愛い少年がチャイナ服でふわふわでもこもこで「そんなことで立派なラーメン屋と魔法使いになれると思ってるのっ!?」ですから。変身の呪文は「チャー シュー メーン」です。
2000年9月13日(水)
麗人 オータムスペシャル | 竹書房 | <漫画・雑誌> | 714円 |
ホモエロ雑誌の増刊です。目当ては山田ユギ。そのほかには国枝彩香、直野儚羅、猫田リコなどが描いています。今後本格的なボーイズラブへの進出を狙っており、その第一段階を、と思っていたのですが、いやあ、ホントーのホモエロってのはかなりエグいものですなあ。たくましいor繊細な男同士が、掘ったり、掘られたり…。確かにボーイズラブの根幹をなす「ドキドキ感覚」はどの作品もしっかりしているのですが、それがたくましいモロのホモセックスへとつながって行くのが、興味深くもあり食傷気味でもあり。目立ったところは複雑な人間関係を描ききった山田ユギ(さすが)と、可愛い絵柄とヤってることのギャップが激しい猫田リコ、オジサンの筋肉描写が美しい(!)直野儚羅、劇画を思わせる絵柄が楽しい大竹直子、といったところでしょうか。ホモエロを甘く見ていた私が悪うございました。ちょっと修行し直したいと思います。
貧乳専科 | あまとりあ社 | <漫画・アンソロ> | 900円 |
「例の」シリーズです。マンガを描いているのは山野紺三郎、てるき熊、流星ひかる、ガビョ布、へっぽこくん、かにかに、フェニキア雅子、栗東てしお、みはらじゅん、桐原小鳥。注目すべきはまずは女性陣。ひかる先生は今回はリリカルに攻めてますし、フェニキア雅子は中世ヨーロッパを舞台に芯の通ったセックスを描いています。桐原小鳥はついに一線を越えてしまった先生と生徒。今までの一線を越えなかった関係も面白かったのですが、まあセックスシーンを描くのもまた良しかと。男性陣はしっかりとした仕事で、大ヒットこそないものの堅実に攻めているという印象です。気になるのはガビョ布。この人って昔ログインで常連をやってたあの人?命名の由来は「名前には布という字を使うことが少ないから」ってあの人?宇宙戦士Jがいたあの頃が懐かしい…。
2000年9月12日(火)
ぬおおおお!なぜ「能瀬くんは大迷惑!」のパパ編の揃いがないのじゃあ!
コミックバーズ 10月号 | ソニー・マガジンズ | <漫画・雑誌> | 467円 |
「アクア・ステップ・アップ」(アクア萌え)と、「Marieの奏でる音楽」は読めるのですが、それ以外目立つところのない印象です。「羊のうた」がないと、これほどまでにパワーダウンするのか、と暗澹たる思いです。なんといっても編集方針に一貫性が見られず、漫画の数の多さが裏目に出てしまっているのですね。配列をちょっと変えれば良くなるとは思うのですが。「Marie」終結までクロスレビュを続けようかと思っていましたが、今月で終わりにしたいと思います。
ガロ 10月号 | 青林堂 | <漫画・雑誌> | 743円 |
特集は駕籠真太郎。「ガロ」生え抜きじゃないのに、全然違和感がないのが興味深いです。漫画に関しては、「恐怖博士の花嫁」「大阪ダンジョン」「ミドリゴ」とテンション高くていいです。加えて津野裕子先生!今回はボーイズラブですか!
一頭象 どんとスーパーベスト | どんと | MIDI | <CD> | 特価672円 |
吉祥寺WAVEの探索・その2。いろいろ安くなってましたね。これは今年1月急逝したどんとのベストアルバム、2枚組でなんと8割引。多分割引ステッカーの貼り間違いか、何者かがインチキにステッカーを貼ったのだと思いますが、少なくとも店頭に並んでいたときには8割引ステッカーが貼ってあったのです。内容は…1枚目はローザ・ルクセンブルグ、海の幸からの音源で、2枚目はボ・ガンボス時代の音源を中心に集めています。死者を不必要に称揚することは避けたいと思いますが、ローザ時代の曲や、ボ・ガンボスの初期の頃の曲を聴くと切なくなってしまいます。ある時期自分のなかで重要な位置を占めていたアーティストがいなくなってしまう、というのは、やはり切ないのであって。
The Best of Nick Cave & The Bad Seeds | Nick Cave & The Bad Seeds | MUTE | <CD> | 特価940円 |
Flawless | Amon Duul | Mystic Records | <CD> | 特価520円 |
In his own sweet way | V.A. | AVAN | <CD> | 特価560円 |
スーパールーツ 7 | ボアダムズ | WEA | <CD> | 特価360円 |
見事なくらいバラバラのセレクションですが。3枚目、ゾーンのレーベルからのヤツは、モダン・ジャズの巨匠ブルーベックへのトリビュートアルバム。ビル・フリゼール、アンソニー・コールマン、デイブ・ダグラス、ルインズ(!)と、ゾーン系の人脈で固めています。灰野敬二はまだ2割引だったので買いませんでした。残念。
Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:16:49 JST