2000年11月12日(日)
コミティアの戦果です。値段はほとんど忘れてしまったので、覚えている範囲で書き込むことにします。
七転八倒ひめあられ2 | 藤井ひまわり | クラビウス | <漫画・同人誌> |
作者は唐沢なをきの有能なアシとして知られていますね。ロケット修理が専門のブルーカラー三人娘が主人公。技術が進んでいるようでどこか懐かしい世界を舞台にしています。キャラ立ち、設定はいいのですが、ちょっとオハナシにぎこちないところがあるように思います。ですが感心するのはその継続性。同じモチーフで連続する漫画を2冊も出し、まだまだ続くような雰囲気ですから。頑張って欲しいと思います。
eat 食べる | 安藤滋郎・編 | <漫画・同人誌> |
その名の通り「食べる」ことをテーマにしたアンソロジーです。 うまくアンソロとしてのグルーヴを生み出しているところがいいですね。しかもこれだけ多くの人を集めながら、一貫したセンスの良さを醸し出している。コンピレーションの妙というのでしょうか目立つ作品は広木陽一郎、あんどう(あるまじろう先生?)、SAI2COといったところです。
ゲイツちゃん本 | 桜玉吉 | 玉屋 | <漫画・同人誌> | 1300円 |
間違いなく今回のコミティアの目玉でしょう。買うとクジを引くことができ、それに応じて何種類かのピンズがもらえる、という趣向がありました。そのため全然行列が解消しないという問題もありましたが…。内容は「週アス」連載の「ゲイツちゃん」をまとめたもの+大昔の原稿「とってんくん」(懐かしい名前!)などです。「全八十頁おしなべてキー」という目次が実にイカしてます。内容もまあだいたいその通り。連続して読むと実にクルものがあります。そういや最近とってんくん(アシスト社長)の本が久々に出ましたね。なんたるシンクロニシティ!
A-PRISM
extra SPECIAL HAPPY BABY COME! 出産直前号 |
まんだ林檎 | 林檎堂 | <漫画・同人誌> | 500円 100円 |
委託で購入。前者は夏コミの新刊で、出産を控えてのエッセイ漫画と、純情系少女漫画(マジ)が載ってます。これがまあ素晴らしい出来なんですね。この人の徳目は第一に絵のうまさ、第二にくだらないギャグのうまさがあると思うのですが、何よりいいのがオハナシづくりのうまさだと思うのです。そしてなんということはないオハナシを、ちょっとした演出で見違えるように面白くできるワザも持っている。こりゃあ参った、と感服した次第です。後者はエッセイ漫画のコピー本。性別が分かったとたん「得体の知れない他者」から「うちの子」になる、というくだりにいいものを感じます。
ファンシー段平 | 小田扉 | みりめとる | <漫画・同人誌> | 100円 |
コピー本。相変わらずのすっとぼけた味は健在。コピー本というぐにゃぐにゃな形式も、この「味」を出すのに一役買っています。今回の目玉は「としごろとしこ」の続編が載っていること。確かに何も始まらず、何も終わらないオハナシなのですが、それが何とも「今」の感覚にマッチしているのですね。やっぱり凄い才能だと思います。
あした | 袴田めら | 逆ギレ刑事 | <漫画・同人誌> |
3月に出た「ステンシル」の最終号(今のところ)でこの人を見つけたときには、心底ひっくり返ったものです。こがわみさきの作品とともに、少年まんがや少女まんがというカテゴライズが全く無効になる瞬間を痛烈に感じたものですから。そして夏の新作2冊で私は完全にノックアウトされました。やばいほどのビビッドな感性。そしてとどめを刺すようなこの作品。 はあ…。ちょっと毛色こそ違いますが、強く読者のこころに訴えかける「男少女まんが」になっていると思います。商業誌での活動も強く期待。
カルピス2 | はちまき | mer | <漫画・同人誌> |
「ティアズマガジン」のルポ漫画などでおなじみ。可愛い絵に惹かれるところです。
四畳半間男の襖 ポン刊フルーツ12号(無料配布) |
鵜匠カシヲ | 赤色オレンヂ | <漫画・同人誌> |
鵜匠先生最高じゃあ!80年代的に懐かしい少女的グロテスクさを忘れずに持ち続けている。それはある意味「ダメ」なことなのですが、それを表現するとなると話は別です。比肩しうるもののない特殊な世界。しかもそれを曲げることなく貫徹している。このまま永遠に続けて欲しいものです。
ダチェラット2 | 赤根晴 | ENIGMA | <漫画・同人誌> |
「1」に比べると絵柄は多少変化していますが。薄墨を使って描く画法は健在。雑誌では再現できないような微妙な絵柄に惹かれるところです。もの凄い絵の上手さ。オハナシもいい感じ。聖なる使命を担わされた青年ですが、自分なりに生きる道を探ろうとする。いいですなあ。次回作もゆっくりと待ちたいと思います。
東の沼 | 弘岳粟高 | あわたけ | <漫画・同人誌> |
相も変わらず独特な雰囲気。相も変わらず特殊なセクシュアリティ。少女が異世界(異星?異次元?)からやってきたへんな生物(おっぱい好き)に裸に剥かれ、いたずらされ…。その背後にあるSFテイストを強く評価する一方で、その「骨太さ」とエロの節合が、そして彼独自の丸っこい描線が醸し出すそこはかとないへっぽこ巻に注目したいと思います。この人も商業誌での活躍に期待。
candy candy 2 | 上倉旧 | ロボ音 | <漫画・同人誌> |
コピー本。クーラーボックスいっぱいにあめ玉を詰めて旅する男は、雪山で遭難してしまう。気がつくと男は寝かされており、そばにはかいがいしく世話を焼いてくれる女がいる…というオハナシです。今までの「スターチマン」のようなホノボノしたオハナシを予想していたらとんでもない。実にこころに突き刺さるような切ない話になっています。女の思いが強く伝わってくる、その分だけ。続き物なので、次が読みたくてタマラヌ、という感じです。
TWO STORY TOWN | オノ・ナツメ+緑山りょう | <漫画・同人誌> |
今回のティアの目玉・その2。ニューヨーク市警を舞台にしたオハナシの続きで、二人とも同じ舞台背景とキャラクタを使って作品を描いています。…なんとまあ、とにかく、ページ数の多いこと。数えてみたら200ページ強。同人でこれですからクラクラ来ます。そして内容も実に素晴らしいものです。…これについては、後できちんとブックレビューを書くことにしたいと思います。とにかく買わなきゃダメ、と断言しておきましょう。
TGZ | 半端マニア | <同人CD> |
「半端マニア」の渡辺さんからの頂き物。いきなり1曲目が「半端マニアのテーマ」ですから人を食ってます。ボーカルが割れてたり、インディーズのかほりが濃厚に漂うアレンジだったりと、額面通りなら悪く取られそうな面も持っていますが、それも間違いなく演出されたもの。狙っているところがよく分かるコンセプチュアルなCDだと思います。狙うは突然段ボールですか?なんだか私もマルチに音楽とか作ってみたくなっちゃいますね。
parking? 6 | ヒタカヒロフミ・編 | parking | <漫画・同人誌> |
ヒタカ親分やってくれます。parking?の復活でファンを喜ばせるだけでなく、その内容たるや。今回の執筆者はウォーターマン、オノ・ナツメ、山本昌幸、山川直人、南研一。小原愼司のインタビューまで載っているという…。それぞれの漫画のレベルの高さも凄いのですが、ここにある尽きない情熱、そしてそれをセンス良くまとめあげる手腕には感服です。それにその人徳にも。コンピレーションのひとつの到達点がここにあるといえるのではないでしょうか。親分に対抗してウチは木持さんに登場願います。負けないぞ!
2000年11月13日(月)
ガロ 12月号 | 青林堂 | <漫画・雑誌> | 780円 |
特集は鮫肌実。うーん、漫画で勝負して欲しいところです。「出演交渉でギャラ5割り増しを要求」「10分の持ち時間のところ無理矢理30分やる」ってところは面白いんですが、ライブも見たことがなければどんな芸をするのかもわからない。私にはちょっと痛い特集でしたね。CDは凄く面白いって言いますけど。特筆すべきはやはり津野裕子、いみり。
鱗粉薬 | 津野裕子 | 青林堂 | <漫画・単行本> | 1500円 |
待ちに待った津野裕子の新作。ちょっと高いですが短編が15編も載っています。どれもトリハダが立つような完成度を持っています。それに絵の流麗さ!間違いなく私にとっては2000年ベストワンの単行本です。これについては「読む」を書くつもりですし、長いレビューを書く予定ですので、ここではこのくらいで。とにかく「生きてて良かった」と痛感させる作品集だと思います。
貧乳教室 | V.A. | あまとりあ社 | <漫画・アンソロ> | 900円 |
なかなか快調なロリアンソロ。今回も読者をふぬけにしてくれます。なんといっても女性作家が生き生きしているのがいいのですね。まずは流星ひかる先生。今回も強度な「男少女まんが」。「好きだ」というところから始めなければいけませんね!それから桐原小鳥。この人のロリ的破壊力は、タカハシマコに匹敵するものがあるとずっと考えてきたのですが、それは本格的に確信に変わりつつあります。病弱な娘さんを出してくるのですから…恥ずかしげにパジャマの前をはだける姿は凶悪です。男性作家では山野紺三郎、てるき熊がいい作品を描いています。
ロングスロー | 藤たまき | 桜桃書房 | <漫画・単行本> | 581円 |
「ミスターシーナの精霊日記」で注目している作家のボーイズものです。シリーズものなのですね。買ってから気づくとは…。やはり独特のざくざくした線は健在。「ミスター…」のようなファンタジイを想像していると、かなりエロい内容なので驚かされますが、破綻しているわけではないのでいいのではないかと思います。
虜囚 | 小野塚カホリ | マガジン・マガジン | <漫画・単行本> | 619円 |
小野塚のレトロ嗜好がよく現れた作品集になっていると思います。マガジン・マガジンから出ている単行本は、多くがそうした要素を持っているとは思いますが(テラヤマテイストあふれる「我に五月を」とか)。今回とびきりなのは特高警察をテーマにした「虜囚」。特高の刑事・国崎は、売れない小説家・白井にアカの嫌疑をかけて、徹底した拷問にかける。刑事は捜査の過程で小説家を「見つけて」おり、かれの純粋さや、屈託のない笑顔に複雑な感情を抱いていたのだ。小説家の許嫁を犯し、小説家のたましいを砕こうとする刑事。その背後にうごめく感情は…。これはなかなか深い短編です。ボーイズの多くはオハナシとしては甘口で、「純一」や「ピアス」などのハード系にしても、どこか責められる/攻められる側の許容が見られるものだったと思います。それは幸福な結末を導くために必要なことではあるのですが。ですが小野塚は(そうしたオハナシも描く一方)、原理的にそうした甘さが許されない状況を描き、「どうやっても縮めることができない」関係性の絶望を描こうとします。得てして現実はそのように苛烈なもの。その苛烈さを描き出すところに、小野塚の作品の迫力があるのだと思います。「ニコ・セッズ」なんかもそうでしたしね。
零式 | リイド社 | <漫画・雑誌> | 524円 |
今月から綴じ方が変わり、ボリュームアップしています。まず注目すべきはすえひろがり。ネタとしてはお得意のエキシビジョニズムものなんですが、ケータイというネタと、美少女アニメというネタをミクスさせているのが面白いです。それから中田ゆみ。ネタとしてはご都合なのですが、絵のエロさはいつも通り。あとはまいとしろう、まぐろ帝國、大島永遠などがエロとしては目に止まります。まぐろって人は、マジメにメカものにすれば非常にカッチリした作品になるはずなのに、どうしてこう下品なエロをキメますかね。宇宙での戦闘中にアナルセックスをかますのですから…。注目したい作家です。そしてもう一つ着目する点が。小石川ふにの登場です。これがなかなかいい案配なのですね。ハードなエロや痛いエロに混じって、乙女のたましいを感じさせるような作品がある。そこに強い「骨抜き」が構成されるわけです。もっとやってくれー!
2000年11月14日(火)
コミックビーム 12月号 | エンターブレイン | <漫画・雑誌> | 467円 |
なるほど、コミティアでO村編集長が言っていたネタってこのことだったのですね。玉吉復活で部数が伸びてくれればいいのですが。今回目立つのは「ラズレズ」。知ってる曲になると、とたんにイメージが湧くのですね。音楽漫画として恐るべき力を持っていることを骨身にしみて実感しました。音楽的知識が必要とされる漫画だ、ということも見えてくるわけですが。「父ちゃん殺して母ちゃんとやりてえ」とはね…。分かんない人は「アポカリプス・ナウ」を見ましょう。後は安井誠太朗「ミズトカゲのいる沼」が載ってます。
風まかせ月影蘭 | 大地丙太郎/SUEZEN | 角川書店 | <漫画・単行本> | 古書価350円 |
「何故今時代劇なのですか」という問いに対して、大地丙太郎は「面白ければいいじゃん」と答えたとか。至言ですなあ。この漫画版はいくつかの弱点を抱えているように思います。オハナシの大きさに対して少なすぎるページ数、消化しきれていない物語、駆け足にすぎる展開。すべては全1巻というボリュームの少なさに由来しています。ですがいいところもあります。まずはその伸びやかな線。SUEZENの絵が美しいことぐらい、とうの昔に知っていたつもりだったのですが、やっぱり本の形になるとその魅力の強さを痛感することになります。次に巧みに組み込まれたエロ要素。エロ話が2話もあるのですからお得です。このへんは「新性/生活」の名残りでしょうか?そして最後にラストシーンのさわやかさ。どうやらアニメ版と違った演出がなされているらしいのですが、それが実に心地よいのですね。やや食い足りないのは事実ですが、「ま、いいかな」と思える単行本だと思います。
2000年11月15日(水)
サンデーGX 12月号 | 小学館 | <漫画・雑誌> | 410円 |
やっぱり「ネコの王」でしょう。やや描写が難解なところも見受けられますが、今まで子ども向け漫画で培ってきたワザが存分に発揮されています。キャラの可愛さもやっぱりええ感じ。この調子で「実は委員長は男の子だった」といった感じのどんでん返しを期待したいと思います。次には表紙にもなっている「Wake Up!」。幼なじみの女の子は実は戦闘用アンドロイドだった、というネタがまず懐かしくていいじゃないですか。そして女の子の高い能力とちょっと引っ込み思案な性格のギャップ…。すげえジェンダー論的にいえば無頓着な作品なのですが、少年漫画的にはこれでいいのだと思います。ハレンチな格好をして恥ずかしそうにしている表紙絵に萌え!それからいけだたかし「Fade Out」もいい作品です。中学二年生の女の子・かすみは、祖先である幽霊族の体質が発現してしまう。そうしたちょっと間違えばかなり滑ってしまうようなネタを、ちうがくせい的ラブへと絡めていくところが上手いです。初々しいですなあ。ちなみにかすみなどの女の子の描き方が、実に中学生的であるところも見逃せないところです。この人、ホンモノかも知れません。さらに今回は凄いのが載ってます。田丸浩史「激羅撫戦隊レンジャー3」です。同棲しているカップル。男の方は女に結婚を申し込む。正義の味方であるという自分の正体を明かしたうえで…。田丸健在!大馬鹿な展開、やっぱりという感の筋肉、ナイス必殺技、そして眼鏡。いうことのない短編です。このまま連載になってくれれば何を言うことがあろうか(反語)という感じです。合い言葉はROVE!
コミックバウンド 4号 | エニックス | <漫画・雑誌> | 円 |
次号で終わりとの噂がほぼ固まったという感じでしょうか。連載作品は二本掲載が多く、すでに納入されている原稿を消化している、という印象が強いです。またグラビアも同様。最初から辛い戦いだったことはいうまでもないのですが、見切りをつけるのが早すぎるような…。
ウルトラジャンプ 12月号 | 集英社 | <漫画・雑誌> | 410円 |
…「新・銃夢」ですか?いや確かに「銃夢」は面白い作品だと思いますよ。しかしあれだけいい感じだった「水中騎士」を終わらせてまでやることですか?おそらく映画かなんかとのタイアップなんでしょうが、すでに一段落ついている作品を、加えてネットであれだけマイナスイメージが広がっている作品を、何故蒸し返すのですか?そして今時「バスタード」ですか?確かにこの雑誌向けのネタではありますが、こんなヘタレダメ作家を復活させてなんになるというんでしょうか。逆の意味で期待はできる(無様な屍をさらすのを楽しむという)のですが、雑誌側は大マジなので気になるところです。どう転ぶことやら。この編集方針の転換が雑誌を「殺さない」ことを祈るばかりです。ですが強力なウリがあります。介錯の「魔法少女猫たると」です。猫の(読者にはネコみみロリっ子にみえる)魔法使い見習いたると。語尾は「にゃーの」、当然どじっ子で魔法は失敗ばっかり…最高です!先生、脳が腐りきってます!病みきってます!もちろん褒めているんです!
アフタヌーンシーズン増刊 秋号 | 講談社 | <漫画・雑誌> | 円 |
「みんみんミント」でしょう。大馬鹿の展開といい、わかりやすすぎる萌えキャラといい、なんとも生き生きしていること!やっぱり士貴の「基礎」がここにあるのが分かります。やっぱりこういう作家なんでしょうね。「神・風」がいかにちゃんちゃらおかしいかってのが如実に分かってきます。あんな無理したオハナシははやく畳んで、こっちのほうに全力投球して欲しいものです。
2000年11月16日(木)
COMIC CUE Vol.9 | 太田出版 | <漫画・雑誌> | 897円 |
「Mr.ドリラー」のホリ・ススムくんの表紙が目を引きます。「ドリラー」の成功のほとんどの部分がこのかわいいキャラクタにあったのでは、と私は考えているのですが(オタクっぽい女の子キャラではここまでウケはしなかったでしょう)。内容は待っただけの甲斐があった、という印象です。江口寿史とかはかなりどうでもいいのですが、小原+硫黄が、地下沢が、水野が、そして何よりよしもとがいいんですね。
マンガ・エロティクス 冬号 | 太田出版 | <漫画・雑誌> | 780円 |
対してこっちは…わずかに砂が頑張っているという印象ですが、作家や作品が軒並み「F」とだぶっているため、新鮮味がないのですね。「F」の創刊の結果、エロティクスはもう完全にその役割を終えたのだと思います。
花音 12月号 | 芳文社 | <漫画・雑誌> | 667円 |
R.I.P. | 三原ミツカズ | 飛鳥新社 | <漫画・単行本> | 952円 |
天使のトランシルバニアンローズはいつも退屈。そんな彼女は地上で美しく、唄のうまい青年を見つける。だが彼は見ている前で自殺してしまう。自殺した魂を救うことが許されていない天使だが、トランシルバニアンローズはためらいなく彼女の片方の羽を青年の魂につけてやる。天使と同じ、死者の魂の救い手となる青年。青年には他の天使にはない特技があった。自殺者の魂を救うことができるのだ。そして明かされていく青年の過去…。ミツカズ節、出まくってますなあ。耽美な天使というキャラクタ造形がまずはいいところ。オハナシも「Doll」に通じるいい感じのものです。「ケラ!」っていう掲載誌はぜんぜん知りませんでしたが…。オススメの一冊。
D-Ange 12月号 | ヒット出版 | <漫画・雑誌> | 333円 |
にしまきとおる先生で決まりです。とうとうクレアもモノにしてしまうタッちゃん。「これからおまえはオレの女だ、クレア!」というパターンが決まり切っているのが素晴らしすぎます。何人もの女におんなじ事言っているのに、女同士のコンフリクトが起きないのもナイス。何故かといえば、それはにしまき先生の妄想がきわめて都合のいい形で発現しまくっているから。「こんなこといいな、できたらいいな」といった気持ちが直球勝負で現れています。
2000年11月17日(金)
メロディ 12月号 | 白泉社 | <漫画・雑誌> | 362円 |
「ヒロミGo!」が表紙とは。真っ赤な表紙が印象的です。今回も内容は充実。「ヒロミ」といい、「天上」といい「ソコツネ」といい「パタリロ」といい、隙のない布陣です。今回は そしていつものアレですよ。編集のアオリが最高!
サウス 12月号 | 新書館 | <漫画・雑誌> | 552円 |
ボーイズを知るにはまずおたく女のメンタリティを知ることから…と思って買ってみたのですが、なかなかやっかいですね、こりゃ。自らの内面の乙女回路の育成がまだまだ足りないと実感した次第です。そういや「ダスクストーリィ」が終わった後の「クリムゾン」も、ちょっとキツくて買えませんでしたしね。修行が必要なところです。
2000年11月18日(土)
アイラ 12月号 | 三和出版 | <漫画・雑誌> | 552円 |
小瀬秋葉。
燃絵 12月号 | 松文館 | <漫画・雑誌> | 552円 |
あじまる、119、A・浪漫・我慢。
純愛果実 12月号 | 光彩書房 | <漫画・雑誌> | 524円 |
「東京H」の後継です。雑誌全体のテイストは前の雑誌と変わらないのですが(読者コーナーまで引き継いでます)、ちょっと作家や「スパイス」の配合を変えてあって、新鮮な印象を受けます。そうこなくっちゃあねえ。玉置、ゼロ。
HGUC ドム・トローペン | バンダイ | <立体> | 1350円 |
最近はやはりHGUCがお気に入り。MGを組む時間はないのです。2時間くらいでちょっと組んで、目立つゲート跡にやすりをかけて、トップコートを吹いておしまい。それで随分カッチョいい立体ができてしまうのですから。確かに合わせ目処理などMGに比べれば至らないところがあるのですが、立体として置いてみたときの手頃な大きさと、その割に実に多い情報量は強い魅力があると思います。GP01の出来の良さには吃驚!もちろん組んでいないのですが、このハイテンションですから期待してしまいます。
2000年11月20日(月)
CRAFT Vol.7 | V.A. | 大洋図書 | <漫画・アンソロ> | 840円 |
ボーイズアンソロ。執筆者は紺野けい子、門地かおり、石原理、高松由尚、河井英杞、紺野キタ、夢花李。ボーイズとはいえ結構ハードなものや、描かれているキャラの年齢が高いものや、全然エロくないものがあったりして、バラエティに富んだ内容になっています。目立つところでは石原理と紺野キタを挙げることができます。石原の作品は次のようなものです。ある病院の303号室は、ほとぼりを冷まそうとしている政治家や、入院を装わなくてはならない人の専用室で、通称悪党専用。そこに入院するヤクザの親分(まだ若い)。そこの担当になった若い医師は、素っ気ない態度をとりながらも、真摯にヤクザの病気を治そうとする。頑なだったヤクザの心も少しずつうち解けていく。しかしヤクザの流したクスリのオーバードーズで、医師が担当していた少女が死ぬ。そして…といったもの。全然エロシーンとかないのですが、その分ひじょうに純度の高い心のふれあい=ラブ(ボーイズの文脈でですよ!)が現れる。普段はハード系で活躍なさっている方のようで、ちょっとチェックしてみたいと思います。紺野キタの方は続き物の前編。主人公の少年は転校生で、なかなかクラスになじめないでいる。そんな少年が間違えて声をかけた少年。境遇の似ている二人は急速に仲良くなる。病弱で臥せっている少年の妹は、その様子をみて強くおびえる。「あの人はお兄ちゃんを連れて行ってしまう!」と…。全体の構成やら展開やらは、今更何もいうべきこともないでしょう。特筆すべきは半ズボン。少年たちはみな半ズボンを穿いているのです!今までそうした阿漕なアイコンに縁がなかったキタ先生ですが、そうである分慎みあるアイコンの使い方にもだえてしまうところです。次回が待ち遠しすぎ。
HARMFUL | 小瀬秋葉 | 光彩書房 | <漫画・単行本> | 876円 |
これは全くの盲点。「フラミンゴ」や「アイラ」、そして「激しくて変」で、卓越した絵の巧さとモノローグ性の高い展開でひときわ目を引く存在だった堀骨砕三=小瀬秋葉。この人は「純一」などでボーイズを描いていたのですね!小瀬秋葉のPNであちこちに描いていたのは知っていましたが、まさかハード系ボーイズだったとは。一本取られた、という印象です。モノローグ性の高い展開はこちらでも変わりありません。そしてそれが「エロに至る心の動き」を実に丁寧に物語っているのですね。自らはノーマルと思いこんでいる男性の多くは「受け」になるのを嫌がるでしょうが、ここでの説得力ある描写を読めばそれは少しは改まるかもしれません。男であろうが女であろうが、実は興奮するシチュエーションはたいして変わりありません。また、受け身になることのよさは、男にだってあるはずです。つくづく男性のペニス至上主義や積極性至上主義の無力さを感じる内容です。その意味で、保守反動勢力から見ればきわめて危険な本であるといえましょう。もう一つ、その幅広くしなやかなセクシュアリティにも注目したいところです。カワウソ少年や命の宿った人形もセックスの対象になり、それをまた気持ちよく描いているのですから。今後も注目し続けたい作家です。
魔術師さがし | 佐藤史生 | 小学館 | <漫画・単行本> | 505円 |
高名な魔術師パングロスが住まう島に集う男女。彼らはいずれも名の知れた魔術師や術つかい。彼らの目的は行方不明になったパングロスを探すこと…。 見るからに懐かしい感じのハイ・ファンタジイ世界という世界設定にまずは面食らいます。変化やあやかしの出没する世界、世界と魔術との密接な関係、そして圧倒的な力を持って君臨する竜(出てきませんが)。「ザンス」や「ゲド」にも似た、ごりごりのハイ・ファンタジイです。現在ファンタジイといえば、新・少年誌やおたく系少女誌(WingsやASKAなど)において、さも当たり前のものであるかのように使われています。その使われかたは実に安易といっても過言ではないでしょう。一部の例外を除き、ファンタジイはすでに陳腐なものに成り下がっています。 ですがこの作品は違います。ファンタジイはあくまで、背後にある世界のシェル/インタフェースとして(文字通り)機能しています。薄々は感じ取られるところではあるのですが、この鮮やかなファンタジイの使い方の違いに驚かされるところです。そして同じ瞬間、この作品は壮大なSFへと姿を変えます。瞬時に、かつ鮮やかに繰り広げられる相の変化。その水際だった手腕と、尽きることのない「SF魂」に頭が下がるところです。確かにやや展開がぎこちなかったり、説明が足りなかったりするところはありますが、他ではなかなか味わうことのできない鮮やかさがここにあると思います。この他には伝奇もの(?)「○たの女」が収録されています。
フロム イエスタディ | 高久尚子 | コアマガジン | <漫画・単行本> | 600円 |
コアマガのボーイズ誌「drop(ドラ)」より。35歳の若い美大の助教授と、助手(可愛い青年)のラブラブな姿を描いています。なんだか微笑ましくなってしまうような設定ではないですか。内容もやっぱり甘口。これはこれで良し!と思います。
Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:16:50 JST