2000年6月中旬

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2001年6月19日(火)

コミックバンチ No.6   コアミックス/新潮社 <漫画・雑誌> 210

 今回も快調。ことに梅川和美「ガウガウわー太」が秀逸です。バンチに決定的に不足している「萌え」を適度に補いながら、テンポよくギャグを見せてくれる。アテにならなさそうな次回予告もええ感じ。あとは渡辺保裕「ワイルドリーガー」でしょうか。武蔵野市に球場がある、ってところはニヤリとさせてくれます。国鉄野球場線って奴ですか?

サンデーGX 7月号   小学館  <漫画・雑誌> 438円

 小野敏洋「ネコの王」ですねえ。今回はタイニーなラブをかますかと思えば、実は焦点は委員長のおしりにあるという複雑な(?)構造。分かってますねえ。ですが実は小野はこういうのが全然好きじゃないのかも…とも思ってしまいます。好きじゃないから突き放せる、という印象を受けるんですよね。それから陽気婢「ロケハン」が始まっています。田舎の廃校を舞台に映画を撮ろうとする大学生と、すでにそこで撮影を行っている怪しげなプロダクション、そして役場の地味げな(でも美人な)女の子がからまっていき…ってオハナシみたいです。陽気婢は絵にツヤがありますから、打率が低くても満足感があるところがいいですね。次回は高橋しんと森見明日が登場ですか。アグレッシブな作家構成ですなあ。

近代麻雀オリジナル増刊号WINNING   竹書房  <漫画・雑誌> 333円

 伊藤誠「兎」の番外編をどーんと載せる、という形式の増刊ですね。普段は麻雀雑誌はたまに「近麻」を立ち読みするくらいなんですが、これは買わずにはおられない事情が。なんといっても犬上すくね「おかしな二人」で麻雀漫画を描いているのですよ!ガーン、って感じでしょうか。犬上漫画に闘牌シーンがあるんですから!ちゃんと麻雀漫画の形式を取っていながらも基本は恋愛漫画。なんちゅう綱渡りでしょうか。そしてそれを成功させている犬上のバランス感覚に改めて息をのむところです。今度麻雀しましょう、先生!あとは日高トモキチ「そらんの記憶」、大武ユキ「DICE」、安彦麻理絵「女みょーりにつきること」が載ってます。これは…あの編集者でしょうかね。ともかく意図的に麻雀(ギャンブル)漫画を越境させていこうという姿勢は応援していきたいと思います。次は3ヶ月後ですか。

いちばん上


2001年6月18日(月)

初夜(ヴァージン・ナイト)2 田中ユタカ 竹書房  <漫画・単行本> 562円

 エロにおける田中の代表作、待望の2巻が出ました。おもに「Dokiッ!」に季刊ペースで掲載されたものを集めています。例によって例のごとくのあまく、せつなく、そして何よりも幸せな、セックスにまつわるオハナシを集めています。もっとも古い作品は98年のもの。コツコツと続けてきた結果が結晶した、という印象を受けます。
 細かいことについては「つべこべ言うな、とにかく読め。」というタイプの作品なので触れませんが、ひとつだけ。全編を通じて感じ取れることは「セックスとは幸せなものである」ということです。もちろん心の交流の、愛のないセックスでも、快感を得ることはできます。ですが思いを寄せ合っているものどうしが、体もひとつにとろけてしまうようなセックスの方が、より強い、深い快感を得ることができます。そしてそれは人間のもっとも深いところまで届く可能性を持っています。それを田中は訴えようとするのですね。様々なつらさを経てきた上での、実感ある/重みある描写として。
 確かにこの訴えかけは、今の若者たちの現状とは違った状況を背景としているといえましょう。ですから若い世代の人たちにはリアルなものとして受け取られない可能性があります。ですが田中はある程度それを知った上で、倦まずに発話を続けていきます。それが自らの責任/使命であるかのように。比べちゃ(両方に)申し訳ないのですが、山本夜羽よりよほど「勁い」姿勢だと思います。負けてられないよな、と感じるところです。

Gファンタジー 7月号   エニックス <漫画・雑誌> 552円

 以前からちょっとチェックしていたのですが、今月からちょっと買うことになりそうです。なぜならTAGRO「宇宙賃貸サルガッ荘」が始まっているからです。あの…そう、あの「サルガッ荘」ですよ。かの「キュート・プラス」に掲載された作品が、短期集中連載という形を取って帰ってきましたよ。「パイク」からTAGROを追っかけてきた甲斐があるちゅうものじゃないですか。しかも掲載は峰倉かずや「最遊記」の次。もの凄い取り上げ方じゃあないですか。感慨深いものがあります。
 内容としては…まあ一言でいってしまえば雑然としてますが(最近のTAGRO作品に共通する点ですね)、いつものポップでハイエンディカリリィな(古い?)絵柄は魅力的です。サービスも満点ですし。全体的にファンタジックでありがちな絵柄が支配するこの雑誌のなかで、いいアクセントになっているように思います。また「サルガッ荘」のあとに、例の田口イエスタディ先生とネズみみ色白アシ・蒔子の登場する「Don' Trust Anyone Over Thirty」が付属しているのがイカしすぎてます。「Gファンタジー」の読者を置いていきまくっている毒毒の展開。もちろん私のようなヒネた読者にはサイコーなんですが、実際のところどうなんでしょうね。で、だからこそいいんです。
 ところで著者近況のところで挙げられているのが更科修一郎の名前。自分を韜晦するのはとっとと止めて、本格的に活動を再開すりゃいいのにと常々思っていたのですが、ようやく動き出したようですね。なんだかんだ言っても、良くも悪くも、現在の漫画の状況を作り上げるのに大きな一石を投じた人。センスにも嗅覚にも進んだものがあったのだから、自信を持っていいと思うんですがねぇ。叩かれたら叩かれたで大塚英志みたいに開き直ればいいわけですから。ともあれ、この人の動きにも今後注目していきたいと思います。

いちばん上


2001年6月17日(日)

やらしい昼下がり 山田ユギ 書房  <漫画・単行本> 562円

 「麗人」に載ったものをまとめたものです。とにかく仕事量の多いこと!死期が早まってはしないかと余計な心配さえしてしまいます。掲載誌のカラーに合わせてハード系の展開になっているところがまずは興味深いですね。それからカプの多彩なこと!年下が攻め/積極的、というパターンがよく見られるのですが、それが一筋縄ではいかない微妙な展開を生み出しています。それから背景というか舞台設定が繊細なのがいいですね。たとえば風呂なし木造モルタルのアパートに住む大学生のカップルを描いた「男なら気にしない」という作品があるのですが…これが何ともリアルきわまりない描写。ボーイズでこうした生活臭あふれる描写をし、それをエロへとつないでいくところは、全く他に例を見ることができません。ですから今後もまったく目が離せない作家といえましょう。
 ところで「まんがの森」で原画を見てきたのですが、これがまあホレボレするような美しさ。非・ボーイズにも進出してほしいよな、と思ったりもします。どうなんでしょう>ユギ先生。

ミルクコミックさくら vol.17 V.A. 松文館  <漫画・アンソロ> 790

 いつものメンバー、という感じなのですが、今回は巻頭の中村みずも「AWAKEN」が圧巻。エンピツを思わせる繊細な(CGの?)描線で、アリスとドジソン先生のセックスを描きます。「これをアリスのここに入れると もうアリスはアリスでなくなるんだ」だそうで。分かってらっしゃる!あとは黒崎まいり「ステップ」、栗東てしお「Study…」がいいですね。古くさい?そこがいいんじゃないですか。ほのぼのしていて。

メロディ 7月号   白泉社  <漫画・雑誌> 381円

 雑誌全体から「アドゥレセンスのにおい」が漂ってくる、というのでしょうか。少女の世界から抜けきったわけじゃない。だが大人にもなりきっていない…といったイメージなんですね。それは掲載作品が非常にバラエティに富んだものであるところから感じられるものです。巻頭の成田美名子「天の響き」、続く橘裕「人形師の夜」といった、ガーリィで「少女まんが!」という作品のすぐあとに、岡野玲子「陰陽師」が来るのですから。それにしても「天の響き」にしろ「陰陽師」にしても、凄いことになっていますね。緊張感がビシビシと感じられます。後半は老成した青池保子「修道士ファルコ」(最高じゃあ)、川原泉「ブレーメンII」、魔夜峰央「パタリロ西遊記」と続き、落ち着いた感じでまとめています。次は雁須磨子先生再登場ですか?楽しみ、じゃあ!

ビッグコミックオリジナル 7月増刊号   小学館  <漫画・雑誌> 267円

 花輪和一「刑務所の外」しかないでしょう。いつもの鉄砲好きの少女が登場する日本むかし話のパートと、ボロボロに腐食したコルトガバメントの実銃を分解しようとするパートが、フーガ的に行き来するのですから。錆びたリコイルスプリングが「ドロ〜」と出てくるシーンの衝撃力たるや!「悪行そのもの」が流れ出してくるかのようです。出所した今に至っても、ぜんぜんエーテル体が三角になっていないことが伺えて、実にスリリングな作品になっていると思います。

花音 7月号   芳文社  <漫画・雑誌> 638円

 やったあ!CJ Michalsky「時の羅針盤」!いろいろオハナシは動いているのですが、実はそんなことはぜんぜんどうでもいいのです。可愛いかわいい暁人くんがヒヒじじいにさんざんにあんなことやそんなことをされるのですから!拒絶する暁人に対してヒヒじじいは薬を使い、「飽きるまで犯してから殺してやるぜ、ぐへへへ」と。いやあ、好きですなあ、Michalsky先生!私もこういうヒドい展開は大好きです。むしろハッピーエンドじゃない方がいいと言ってもいいくらいでしょう!あとは山田ユギ(仕事量多いですなあ)「我らの水はどこにある」、高井戸あけみ「ブレックファースト・クラブ」がピンと来たところです。そうそう、忘れるところでした。「南野ましろ先生って凄いなあ!!」

いちばん上


2001年6月15日(金)

小さく弱い人たちへ 1 松山花子 ホーム社/集英社  <漫画・単行本> 648円

 舞台は精神科のクリニック。美形の先生といっそう美形のナゾの助手が、日々訪れる精神にハタンを来した美少年たちを診察します。まあこの美少年たちの面白いこと!ホントに、完全に、すみからすみまで自分のことしか愛せないロックバンドのボーカル。特に眉目秀麗というわけではないのに、どんな人からも無条件に愛されるフェロモン少年。あまりに魅力的なあまり生き神様になってしまった少年。もちろん同人女的にダメな要素満載なんですが、そこは松山、ひと味違うエンターテイメントに仕立て上げています。何が面白いかっていうと、人間が本質的/根元的に不平等な存在であり、それを普遍的な真実として描いているところです。「ああっ総統 人間ってこんなに不平等よ!(丸尾末広)」。美少年と不細工な少年がホームランで窓を割ってしまった。怒られるのはどっちでしょう?不細工な少年に決まっています。こうした差は、これまでの平等という感覚からすると良くないものと考えられるものなのでしょうが、実際世界には厳として存在します。松山の場合は、それをよりいっそうさらっと描き、そこには罪悪感のかけらもない。あまりにも人を食った展開。そこに「常識を揺るがす力」があるのだと思います。
 もちろんここには同人女特有の生々しさがあります。怖いお姉さんが美少年をさんざんに(いろいろなレベルで)食い物にする、という。駒井悠と同じ袋小路に陥ってしまう可能性も見て取れます。ですがこの人の、徹底的に読者を見下したような視点は、他にはない良さを持っているように思います。表紙で相当損をしているように思いますが、面白い単行本ですよ、これ。

いちばん上


2001年6月14日(木)

零式 Vol.30   リイド社  <漫画・雑誌> 524円

 今回は最初からエロ度高いですな。天竺浪人→鬼ノ仁→きお誠児→すえひろがりのコンボですから。それに加えて中田ゆみ「レンタルラバー」むつきつとむ「としうえの魔女たち」がある。加えてまぐろ帝國、電光石火轟という変態的な漫画を取りそろえる。いやあ、お腹いっぱいです。特に今回注目すべきはまぐろ帝國「下剋上」。いつものかれはリアル系の絵柄なんですが、今回は脳の「スジ」が数十本ブチキレたような萌え絵柄。この作品単体で見ると大したことはないのですが、以前のかれを知っていればそれがいかに悪夢的なことであるかが分かります。…この作品がこの人の大きな転機になるんじゃないか、なんて思います。あとは小石川ふに「マジカル♥ふにゃっと」。可愛さ100万倍ですわ〜、といった感じのこの作品もそろそろ最終回ですか?

アイラ Vol.9   三和出版  <漫画・雑誌> 552円

 待望の堀骨砕三が「しとふくべ」で登場です。女性に「飼われて」いる少年たち。かれらは女主人たちの嗜好に応じて様々な改造を施される。胸をつけられるのは序の口。会陰部にペニスを受け入れるための穴を開けられる。かれはそれを嫌がるのではなく、愛玩物としてすすんで改造を受け入れる…というものです。エロという意味ではなかなか抜けないのですが、改造を受け入れる少年の心理が実にうまく描かれているのですね。また絵柄によって「改造」を説得力ある形で描いているのもナイス。やはりこの人、追いかけざるを得ません。あとは巻頭カラーで登場の井ノ本リカ子、「なんじゃこの古い原稿は」と思わせる船堀斉晃、といったところでしょうか。

コミックメガストア 7・8合併号   コアマガジン  <漫画・雑誌> 648円

 いやあ、最初っから飛ばしてくれます、ヨネケン先生「Pink Sniper」。今回は、とうとう完成した薬により春菜先生にチンポが生えてきますよ?そして当然シンバくんは女性化しますよ?それをカラーでやるところがスゲエっす。隆々と勃起したちんちんがカラーで…ヨネケン先生はこうした「ギャグを交えたエロ」もキチンとできるのですから侮れないところです。続いては月野定規「♭37.4℃」。もう完全に吹っ切れたようで、徹底的にエロに溺れる女性を描いています。あまりの快楽に脳までとろけちゃってるが如し。イキ果ててしまい焦点の合わなくなった視線がそそります。あのセンシティブな作風を売りにしていた月野が…と思わなくもないですが、間違いなくこちらの路線の方が売れるでしょう。この調子です。そしてEB110SS(いーびーひゃくじゅうえすえす)「トイレではじめましょっ」。チャットで出会った小学生と公園のトイレでやっちゃう、ってオハナシなんですが、これがまあマズイのなんのって。まずは正々堂々と「小学生」と描いてあるところがナイスです。それから小学生の描き方!ぽっこりとふくらんだ幼女特有のおなか、帰るときに背負う日能研のリュック…いやあ、とにかく「ホンモノ」を感じます。そしてそのあと古事記王子「『妹系』いんすとあ・なう」があるという…。森山文相の手前、規制が強化されるであろうとささやかれていますが、そんなことは全く気にしないロリ攻勢。しかもいずれも「重度の」ロリ。その強気の構成と妥協なきエロに感じ入るところです。

いちばん上


2001年6月13日(水)

読んだはしからすぐ腐る! 松尾スズキ・河井克夫 実業之日本社  <漫画・単行本> 1300円

 ぎゃはははは。これは面白いです。「漫画サンデー」に連載された松尾スズキによるコラムと、松尾作/河井画のエッセイ漫画のセットになっています。もともと松尾といえば「大人計画」でギャグの効いた芝居を作っていたわけですが、それが河井の絵を得たのですから…これが面白くないわけがありましょうや。途中で松尾が失踪し、河井だけで描いた回があったり(結局ネタでしたが)、赤塚不二夫と対談したりとアナーキーきわまりない展開だったりするのも見逃せません。くわえてあちこちに出現する河井の「ガロ」への愛がまた愉快です。当たり前のようにいみりとか登場しますし。ちょっと高い本ですが、通好みでちょっと大人のギャグマンガを好む人にはタマラヌ本であることには間違いないでしょう。しりあがり寿のカメオ出演もありますよ!

ネムキ 7月号   朝日ソノラマ <漫画・雑誌> 543円

 今回はかまたきみこ「深海蒐集人III」が載っているのが嬉しいですね。ダイバーたちの元締めとして厚い信頼を受けていたパパジーノ。陸に邸宅を構え(この世界では陸に住めるというのは大金持ち)、ミミをあたたかく迎える。しかし…というオハナシです。まっとうに読んだらなんだかやりきれないオハナシなんですが、そこはさすがに上手なストーリーテラー。やりきれない思いをさわやかに昇華しています。伸びやかで清潔感のある線がそれを強化していることは言うまでもありません。川原由美子同様オハナシに時間のかかる人かもしれませんが、これは是非とも頻繁な掲載をお願いしたいところです。それからいつもの通りいい感じなのがTONO「チキタ☆GUGU」。本格的に女の子になっていくクリップ、募っていくチキタへの思い、そしていつもの(?)漫画的ヒキ。やるせないっす。たまんないっす。あとは新人?の中島あらた「ヤレバデキル」が目を引くところです。ネムキ本来の道であろうちゃんとしたホラー。茶屋町勝呂を思わせるゴシックな絵。オハナシこそもっと伸びそうな感じですが、これは期待できます。

いちばん上


2001年6月12日(火)

コミックバーズ 7月号   ソニー・マガジンズ <漫画・雑誌> 467円

 なんともはや雑多な。今回は村上真紀「キミのうなじに乾杯!」が巻頭にきてますし、おわりには竹美家らら「チョーク。」があります。「きみとぼく」デスカ?という印象なんですね。で、最初と最後を抜かしてみるといつもの「バーズ」だという…女流作家を積極的に使っていく、という方針はトランスジェンダーへとつながっていくので賛成するところなんですが、今回はちょっと配置がマズかったかな、と思います。
 ひとつひとつの作品は相変わらず好調です。「キミのうなじに乾杯!」は、まあオハナシこそ錯綜している感が強いですが、絵の伸びやかさは好ましいところ。それからクライマックスを迎えている浅田寅ヲ「すべてがFになる。」もいい感じ。そしてこれまた盛り上がりまくっている古屋兎丸「Marieの奏でる音楽」…。予想通りの展開なのですが、ここまで宗教性と人間の近代の問題に迫った作品を他に私は知りません。そして骨抜き三部作…東城和美「いちばんっ!」、ともち「れりび」、新名あき「デビルスマイル」と。これに田嶋安恵「アクア・ステップ・アップ!」をくわえるのもまたオツなものです。てな感じで今月も充実しているのは間違いないですね。
 しかし、冬目景「羊のうた」映画化ですか…。私は別にいいんですが、「信者」がうるさいんでしょうなぁ…。

コミックバンチ No.5   コアミックス/新潮社 <漫画・雑誌> 210円

 げげ。「山下たろーくん」面白くなってきたじゃあないですか。もちろんオハナシで攻める、という方法を取るのは分かってはいたのですが。商業主義では見向きもされないような「いい漫画」に焦点を当てる、とこられては、「まんが者」として見逃すわけにはいきません。まだ引っかかるところは多いですが、評価を改めていきたいと思います。あとはにわのまこと「ターキージャーキー」がいいですね。いや、前からいいんですけど。なんたってプロレスへの愛が感じられるところを評価したいです。プロレスが好きで、停滞したプロレス界にかつてのカオスを復活させ、娯楽として確立させたいという主人公の気持ちに私は共感しますよ!大山鳴動していまいちネズミ気味の現在のプロレス界に対する警告の作品、と見ることもできるでしょうし。大仁田出馬?馬っ鹿じゃねえの?

ファミコンロッキー 1 あさいもとゆき  朝日ソノラマ <漫画・単行本> 1600円

 私がリアルタイムで「コロコロ」を読んでいた頃はファミコンはまだ存在せず、ゲーム漫画といえば「ゲームセンターあらし」でした。今でも第一話をよーく覚えています。「ムカデを勉強しろ!」って。ファミコンが発売された頃、私はコロコロをとっくの昔に卒業していたのですが、弟が買っていたので読んでいたのですね。その頃のコロコロに載っていた作品が、今こうして復刊されるとは…ノスタルジー商売はもうやめい!と思っちゃいますね。これより先に復刊すべき作品はあるじゃないですか。「あまいぞ!男吾」とか。
 まあそれはともかく。「ゲームセンターあらし」も相当破天荒な作品でしたが、これもまた「幼年誌向けアナーキーさ」に満ちあふれていて実に気持ちがいいです。実際のロムには*絶対に*焼かれていないような内容を、ストーリーの盛り上がりのために簡単に捏造する。「ゼビウス」でソル・バルウがバリアーを張るなんて序の口。「バンゲリングベイ」にボスが登場したりしますよ!「事実と違うじゃん」という人もいましょう。ですがこうしたことに目くじらを立てるのはまさに野暮というもの。漫画なんだから滅茶苦茶やっていいんです!ですから「設定」とか「リアルさ」にこだわるあまり、センス・オブ・ワンダーに乏しくなってしまっている現在、実に示唆的な作品になっていると思います。いや、ワイドスクリーンバロックの描き手が長谷川裕一先生しかいないっていう現在の状況を、私は寂しく思うものですから。
 それからもうひとつ。濃厚に感じられるチャイルディッシュなエロがいいんですね。この人が後に浅井裕となってエロで名を馳せた、ということはよく知られていますが、この頃からそうした要素はばっちり現れています。常にビーチクが透けていた五代響子さん(!…今は説明しないと吃驚している意味が分かりませんかね)とか。いつもパンチラしてる女の子とか。こうした路線が後の怪作「バーコードバトラー」につながっていったと思うと、なかなか感慨深いものがあります。
 ノスタルジーにかられて読む。昔の漫画を「馬っ鹿でー」という目で読む。エロ漫画家の過去の作品として読む。いろいろ読み方はできましょう。ですが私は昔懐かしい「大風呂敷漫画」として読んでみたいですね。今は失われつつあるテイストを思い起こす、という意味も込めて。

いちばん上


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Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:16:51 JST