2003年8月20日(水)
首代引受人 |
平田弘史 | リイド社 |
<漫画・単行本> |
619円 |
アフタヌーンに連載、ということになっている「新・首代引受人」ですが、この作品は1970年代に発表された元祖シリーズにあたるものです。戦国の世、命を助けて貰う代わりにあとで金を支払うことを約束する手形を発する者がいた。戦いが終わったあと支払う者もいたが、支払わぬ者もいた。そうした者から「首代」を徴収することを請け負う凄腕の侍、首代半四郎を巡る物語です。人は命が惜しくもなりますが、金も惜しくなるもの。手形を発行した人は何とか払わずに済まそうとします。また命乞いをしたという事実を隠そうとする者もいます。そうした、端から見ればつまらない、欲や意地によって、人は落とさなくても良い命を落としていきます。なんとむなしいことなのでしょう。「新・首代引受人」では、よりそのむなしさが強調されていますが、この作品でも基本的なドラマトゥルギーは同一です。むしろこうした作品が、70年代の初頭に描かれていたことが驚きです。…劇画、というフィールドの中では、これで当然だったのかも知れませんが。
2003年8月19日(火)
ハチミツとクローバー 5 |
羽海野チカ | 集英社 |
<漫画・単行本> |
400円 |
森田さん再登場でまた新しい1年が始まる、という展開になっています。講談社漫画賞を受賞するなど、もうすっかりメジャーになりましたね。「キューティーコミック」で第1話を読んだときから…あれからどれくらい経つのでしょうか。やっぱりメチャクチャ面白いのですが、オハナシを引き延ばそうとする傾向には、強い危惧を感じますね。今ヒットしているからできるだけ引き延ばそうという。でもそれじゃやっぱり作品としての完成度は低くなるでしょうし、「お父さんが言うことにゃ」のように「終われなくなってしまった作品」も身近にあることですので、サッサと終わらせて次回作で引っ張る、という形にするべきなんだと思います。
つっぱり桃太郎 |
漫☆画太郎 | 集英社 |
<漫画・単行本> |
590円 |
おお!すごい!ドラマトゥルギーがあるじゃないですか。主人公は桃から生まれた桃太郎。鬼退治に行くことを期待されたために、ぐれて不良になっている。本当の夢はバレリーナになること。ある日突然じいさんとばあさんは、桃太郎が鬼退治に行くことをあきらめ、自分の道を進んでも良いとする。喜ぶ桃太郎。しかし次の日、鬼たちが復讐にやってくる…。いや、ホントに「らしからぬ」ぐらいに物語性ができあがっているのですね。ただ先生のことです、次の巻はこうはいかないんでしょうね。ていうかいかに破天荒な展開になるかが楽しみですね。
エルフェンリート 5 |
岡本倫 | 集英社 |
<漫画・単行本> |
505円 |
「漫画の墓堀人」と思われたこの作品もついに5巻。タイトルにもなっているエルフェンリートも登場し、いよいよクライマックスへと向かっています。すっかり普通の作品になってしまっていますね。まだ多少にゅうのオマヌケな姿は描かれますが、まだまだチグハグなところも見られますが(ていうかこのチグハグさこそがこの作品の破壊力になっていたわけですが)、全体的にはすっきりとまとまった作品になって「しまって」います。その秘密は、岡本倫という作家がきわめて謙虚で、しかも勤勉であるところにあるようです。
みんなはどう?ZOMBIE |
G=ヒコロウ | コアマガジン |
<漫画・単行本> |
933円 |
やられた! 中身は新声社版とほとんど一緒。「アルカディア」に載った漫画や、有賀ヒトシ、結城心一のゲストページが加わっている程度。中を見ることができれば買わなかったのに!
コミックゼロサムWARD |
一賽社 |
<漫画・雑誌> |
571円 |
峰倉、がゆんとビッグネームが載っていますが、実際は新人に描く場を与えるための雑誌のようですね。私はおがきちか「エビアンワンダーREACT」のために買ったのですが。いやあいい感じに盛り上がっていたあの連載が復活するとは嬉しいですなぁ。季刊というのがちょっと辛いですが。気になった作家は、まず久米田夏緒「あんときあんなで」。以前からゼロサム本誌でも描いていた作家ですが、ここでは中学生のみずみずしい恋愛をすっきりした絵柄で描き出しています。甘酸っぱいですがここでは褒め言葉。力の入った短編をもっと読んでみたいところです。それから秋月しょう「スキノイ」。別天荒人を明らかに参考にしているふしがあり、別天を超えていないところが見られますが、こうした「イヤミでないオシャレな線」は表現としての可能性を含んでいると思います。まずは別天を乗り越えよ!
とアドバイスしたくなる新人です。あとは高遠るい「九龍少女」。ちっちゃいひっつめ髪の少女を主人公に持ってくる、というところからしてただならぬものを感じますが、その子が実は暗殺者で、戦う相手がかつての師匠という展開になってくると「おお」と思ってしまいます。そしてアクションの華麗なこと!
これは大きな拾いものです。
どこの出版社のものでもそうですが、こうした新人登用のための雑誌は、読んでいて本当に嬉しくなってきます。たまに本当に箸にも棒にもかからないものもあったりはしますが、たいていは数人「これは」という新人がいたりするもの。今後の漫画界を支えるためにも、こうした雑誌は絶対に必要なのだと思います。
2003年8月17日(日)
コミケ三日目の戦果です。
YUGMIX2003 |
YUG | YUGMIX |
<漫画・同人誌> |
円 |
フルカラーのイラスト本です。強度強すぎです。「リカヴィネ」(あまりのぷにエロ加減に全国のオタクを戦慄させた)の原型師・大嶋優木と組んで、「週刊わたしのお兄ちゃん」というフィギュアシリーズをやるそうですが、もう最初からヤラレちゃってますが何か?という感じです。
STRAWBERRY BUBBLEBATH2 PANASONICATION |
ばらスィー |
<漫画・同人誌> |
円 |
…ホールの外に並んで同人誌を買うのは、非常に久しぶりです。買ってみるとこれまた強度が強いこと。模様のように繰り返されるノホホンとした女の子たちに、すっかりヤラレてしまったことですよ。この脱力感は、どこか音楽的だよな、と思っていたら、後書きに大量のアルバムが挙げられています。エイフェックス・ツインが好きなのは知っていましたが、なるほどな、と感じた次第です。
むすんでひらいて 準備号 |
袴田めら | 逆ギレ刑事 |
<漫画・同人誌> |
円 |
辻加護をメインにしたモー娘。本です。袴田めらの描くようじょの可愛いこと!そしてののたんの頭の悪いこと! なんだか2ちゃんに山ほどいそうなダメなモーオタそのまんまをやっているところが微笑ましいです。創作をやって欲しかったところではありますが、まあこういった力の抜けた作品もよいのでありまして。
全身焦燥家 |
犬上すくね&鈴木風太郎 | ワーカホリック |
<漫画・同人誌> |
円 |
ナンバーガールですか! そして内容は、うわっエロ! …どこかで「恋ディス」を再開してくれるところはないものでしょうかねぇ。
スパークス |
いづなよしつね | いづな屋 |
<漫画・同人誌> |
円 |
アニメ「ガドガード」の原作、というか、アーキタイプになっている作品です。コミックニュータイプに連載され、同誌の休刊により未完となっている作品をまとめたものですね。見てみると、基本的なキャラ設定と、鉄鋼人のデザインは「ガドガード」に引き継がれていることが分かります。かれらが覆面をしているのはここから来ているのですね。ただアニメになるまでに随分時間がかかったせいか、細部ではかなり異なったものになっています。カタナやゼロは登場予定になっていただけですし、アラシたんの造形は全然異なりますし。感じられるのは、描線の伸びやかさというんでしょうか、キャラが非常に生き生きしていることですね。また、ライトニングやサンダーボルトといった鉄鋼人も、アニメよりずっと生き生きと描かれています。おいおいアニメでも鉄鋼人が「動いて」来るのでしょうが。アニメとの共通点や相違点を楽しむことができるために、アニメが好きな人は持っておいた方がよい本でしょう。
SUMMERNUDE |
月野定規 | むうんるうらあ |
<漫画・同人誌> |
円 |
ギャルゲー「セックスフレンド」をモチーフにしたエロ漫画なんですが…これがエロいことエロいこと。描写のエロさにとどまらず、セックスをしているふたりが深く「結ばれて」いるので、エロさがずーっと深まるのですね。セックスの醍醐味というのはまさにここにあるわけでありまして。田中ユタカや加賀美ふみをに共通する方法であるといえましょう。この方向で突っ走って欲しいものです。
5157 |
倉澤京章 | 東京大陸 |
<漫画・同人誌> |
円 |
オールカラーのCG集です。「マリみて」人気を反映してか、おんなのこ同士が絡むCGが多くなっているのが目を引きます。ていうかこの本も強度が高くて参ってしまいます。あと最近の倉澤さんの本では、ボヤキというんでしょうか、文章が入っているのですが、これがかなりアナーキーで面白いんですね。あの倉澤さんがこんなことぼやいてるんだ、と考えると、凄く面白く感じてしまいます(すいません)。あ!山名沢湖の「マリみて」本を買うのをすっかり忘れてた!
蝉の声と夏休み |
駿馬 | STUDIO MAILAND |
<漫画・同人誌> |
円 |
メーリングリストなどでお世話になっている駿馬さんの作品集です。今まで出したものをまとめた合本なんですが、駿馬さんの作品を買い始めて間もない私にとって、非常に助かる内容ですね。いやあ、この髪のベタの加減が大好きなんですよ。
余熱 |
京山なつき | 京山ロープウェー |
<漫画・同人誌> |
円 |
「仮面ティーチャー」(徳間書店)がめちゃめちゃ面白かった京山なつき。西館にはこの人を楽しみに行ったと言っても過言ではありません。「余熱」は「仮面ティーチャー」の番外編的なオハナシで、演出家の先生に恋している可愛い青年が描かれます。これがまた優柔不断というか、一線を越えることができずに懊悩するんですね。そこがこの人の面白い所なんです。「少佐殿〜」は、軍人をモチーフにした連作で、本人は分からないんだけれど実はフェロモン振りまきまくりの少佐殿が、いろいろ言い寄られてああしてこうして、というオハナシになっています。これまた少佐殿が困惑するさまが楽しいのですね。ギャグのセンスはただものではないと思っていましたが、同人でもそれは発揮されています。これは先が楽しみというものじゃあないですか。
DONADONA |
CJ Michalski&日輪早夜 | M2 COMPANY |
<漫画・同人誌> |
円 |
BL界でいま一番注目しているふたり組です。前者はCJ個人誌で、フルカラーという豪華さ。出てくるのは子牛少年で、カウボーイにあんなことやそんなことをフルカラーでされたりします。まったくヒドすぎる内容でまったく最高です。後者はコラボレーションで、日輪は持ちネタ「PETS」を使っています。「エッチしよー」とじゃれついてくる子猫少年…萌えー! CJのほうは一流企業に部長として赴任してくる半ズボン少年、まもる君を描いています。私の相棒石川ひでゆきが「くっだらねー」と言っていましたので、その凄まじいばかりのくだらなさが知れようというものではないですか。そしてまもる君は激烈に可愛く、登場人物のみならず読者をも骨抜きにしてしまうという…。くだらなさとかわいさがうまく調和しているCJは、やっぱり天才なのだと実感した次第です。
Marble Chocolate |
桑原ひひひ+にん | プルヒヨズム |
<漫画・同人誌> |
円 |
すっかり「俺フェチ」のたまこさんにヤラレちゃってる私。作者桑原がコミケに出ているというなら買わねばなりますまいて。この人の徳目はすっきりして萌え漫画的に完成された線でありながらエロくない、というところにあると思っていたのですが、同人ではエロエロ。ジャンプ漫画をモチーフにした1冊目ではヒジョーにエロい作品を見せてくれます。まぁエロ漫画も描いていたわけですからね。後者2冊は既刊で近況報告もの。ていうかまんまと新刊のこみパ本を買いのがしてしまっています。切腹しようかと考えています。
2003年8月16日(土)
コミケ二日目の戦果です。
X高探偵団 |
梅川和実 | Studio Cosmos |
<漫画・同人誌> |
円 |
梅たんが今後関わる探偵もの小説の設定資料…といった本です。まあ本の内容よりペーパーの内容が凄いのですね。思っていたとおりでしたが。梅たんの作品を支持する人はここにいるぞ! と、高らかに宣言したいと思います。
クツアトノニワ |
蓬田いお&桂田ぎら | 返り血バカ |
<漫画・同人誌> |
円 |
蓬田いおと桂田ぎら(=袴田めら)のハリポタ本です。前者は蓬田の個人誌。私はハリポタに触れたことがないのでネタがよく分かりませんが、ふたりとも漫画がヒジョーに達者なので、とても楽しく読めます。桂田の漫画のうまさはとっくに知っていたところですが、今回驚いたのは蓬田もヒジョーに漫画が上手なこと。ちょっと気づくのが遅すぎですね。線に勢いがあって、可愛い女の子がよりいっそう可愛く感じられる絵柄。ちょっとブラックなオハナシ。強調のうまさ。これは強力な才能です。こんなふたりがタッグを組んでいるわけですから、作られる同人誌もまた強烈になるというわけです。すごいなあ、本当に。
風は巡る |
おがきちか | ソニックワークショップ |
<漫画・同人誌> |
円 |
ファイアーエンブレム本。ハリポタ同様FEも私は知らないのですが、ジェンダーに言及していて、すっかりおがき作品になっています。いつも思うのですが、この人の作品は非常に「おんながおんなであること」に自覚的なのですね。この作品もそれが全面に現れていて、おがきの「調子の良さ」を感じさせます。
GUNPARADE MARCH |
むっちりむうにい | HELLO WORLD |
<漫画・同人誌> |
円 |
一番目はガンパレ、二番目はセラムン、三番目はアニメを中心としたいろんなネタを集めた本です。「十兵衛ちゃん」の第二シーズンが始まるので注目している作家ですが、実際作品に接してみると、「漫画のうまさ」が感じられますね。パロディをかます一方、しっとりと読ませる話も含める。そして絵柄ののびやかさ。やっぱり漫画に愛されているのだな、と感じる作家ですね。
冬は幻の鏡 |
半端マニアソフト | 半端マニア |
<同人ソフト> |
円 |
「半端マニア」の渡辺遼一さんから頂きました。10人ほどのメンバーで、1年半かけて作ったビジュアルノベルで、シナリオはなんと3000枚! 頭の下がる大作です。なんたって「本当に作った」んですから。このことは同人でもやろうと思えばかなりしっかりしたパッケージソフトが作れる、ということを示していますが、もう一方でそれをやるには並々ならぬ「覚悟」が必要だということも示しています。そう、覚悟しないと勝者にはなれず、ずっと消費者のままなんですね。オタク業界というものは、これまでのメディアに比べて、はるかに作り手と受け手の距離が狭くなっていますが、それも「超えようとしなければ」超えられないものです。それを何とかして超えた、半端マニアの人たちには深い敬意を表したいと思います。これからプレイしてみますね。
ありふれ2003 |
架月弥 | ヨカナーン |
<漫画・同人誌> |
円 |
コピー本。雁須磨子先生と共通する「におい」を感じる作家です。今回はコピーのせいもあって妙に解像度が低く、ただでさえ危うい内容がさらに危うくなっています。ちゃんとした作品が読みたいよなぁ、と思います。
ちびのギルティのっぽのジャスティス |
野火ノビタ | 月光盗賊 |
<漫画・同人誌> |
円 |
非常に手慣れた本で、逆に何も言うことがありません。
永遠の緑の中で逢いましょう |
タカハシマコ | Pika Pika |
<漫画・同人誌> |
円 |
これまたいつものタカハシマコという感じで、特に何も言うことがありません。榎本にせよタカハシにしても、慣れてしまったのでしょうか。どうも同人で読むと、なじみのないネタというせいもあってか、心が動かないんですね…。
この恋は秘密 |
ほり恵理織 | メガマウス |
<漫画・同人誌> |
円 |
「花音」などで活躍する作家さんです。きれいな絵なので注目していました。内容はイニDもの。後者は拓海が涼介と結婚(………)して、新妻として(………)、あんなことやこんなことをする、というものです。絵がきれいなだけにきちんと読ませるのですが、冷静に考えるとかなりものすごい内容です。商業ではなかなか味わえないこういったすんごい作品があるので、コミケはやめられないというものです。
東京情景 |
すずはら篠 | 陽炎座 |
<漫画・同人誌> |
円 |
二日目の私の主目標。「踊る大捜査線」ものです。元ネタが分からないのでいまいち楽しめないのですが、元ネタがある作品でも、流れのある大河的な作品にしてしまっています。「もの語り」としてのすずはらの才能を強く感じる内容になっています。
メトセラ・チルドレン |
犬丸 | 黒戌社 |
<漫画・同人誌> |
円 |
最近はショタものでも活躍している作家ですね。CGを使った茫漠とした作風が特徴ですが、同人誌でもそれは存分に発揮されています。前者は手塚ネタ、後者はハリポタネタなんですが、犬丸お得意のケモノネタを交え、ヒッジョーにフェティッシュな作品になっています。絵柄の密度の低さで損をしている面が多々あると思いますが、この人の場合はそれを補ってあまりあるフェティッシュなエロがあります。中世的な…どちらの性にも訴える力を持った。そこに注目していきたいと思っています。
海神 |
南京ぐれ子 | JARO |
<漫画・同人誌> |
円 |
「あかてん☆ヒーロー」でブレイクした南京先生ですね。忙しいと思いきや新作。しかも「十二国記」の尚隆萌え本じゃあないですか。やっぱりうまいんですよ、オハナシの盛り上げ方やまとめ方が。ある意味できすぎてはいる(=オヤクソク的)のですが、それでも演出面がしっかりしているので、「読める」のですね。「あかてん」の成功も、まんが者としての基礎体力の高さによるのではないか、と感じさせる作品になっています。
JTH |
星逢ひろ | くるぐるDNA |
<漫画・同人誌> |
円 |
ショタものや「ポプリクラブ」で活躍する作家さんです。男性向けもショタものも描ける人、ということで注目していたのですが、最近の「妄想少年」「少年愛の美学」に描いた作品が非常に文芸的なものだったので、同人誌を買ってみた次第です。デジモン本なんですが、これがエロい! 前者は64ページあるのですが、非常に濃厚なセックスシーンが描かれるのですね。それがまた楽しそうなこと。同人とは自分の好きなことを描けるメディアですが、それが存分に発揮されているという印象です。この濃さが男性向けでも通用する秘訣なのでしょう。ただ男性向けもショタも両方描ける、ということの答えはちょっと得られなかったように思います。
みんなでまほろさん |
V.A. | ワニブックス |
<漫画・アンソロジー> |
円 |
「コミックガム」のブースで売られていたものだそうで。いろんな作家さんがまほろさんを描く、というものになっています。ふくやまけいこの描く強烈に癒し系のまほろさんなどがあるのですが、一番の見所は森野達也のまほろさん。水木翁の正統後継者なわけですから、絵は当然「ぽあー」となるわけです。この人ちゃんとした萌え絵も描けるのに!自分が何をなすべきかをちゃんと知っているのですね。ニヤニヤしてしまったことですよ。
らぶじぇね |
V.A. | 小学館 |
<漫画・アンソロジー> |
円 |
「サンデーGX」の作家(それ以外の作家もいますが)を集めて作った、同人誌の体裁を取ったアンソロジー本。前回は島本和彦をフィーチャーしていたのに対し、今回のテーマは「エロ」。広江礼威が、花見沢Q太郎が、犬上すくねが、後藤羽矢子が、こいずみまりが、本誌ではちょっと書けないようなエローい作品を描いています。巻末には島本の手になる昔懐かしい写真漫画が載っています。さすがは資本力のある編集部。同人の体裁を借りるにしても豪華な内容になっています。ただ、「ガム」にしても「GX」にしても、既存の同人誌のあり方に対してリスペクトしている所は好感が持てますね。金と力はあるけれど、新参者であるために遠慮しているというのでしょうか。商業資本が入っていない(であろう)にもかかわらず傍若無人な売り方をする「赤い牙」とは大違いです。
2003年8月15日(金)
コミケ初日の戦果です。
らぐな漬け 2 |
岩崎つばさ | すっぽこ電脳大飯店 |
<漫画・同人誌> |
円 |
「とりパラ」「30 Girl」でおなじみの岩崎先生のラグナ本です。今回は男アコたん総受という話でしたが、開けてみると、主体性がなく、言われるままに変なスキルを取ってしまったなりたて男プリを、廃男アコたんが鍛錬する、というもの。うーん萌えですなぁ。聞くところによると岩崎先生は相当廃だとのことですが、内容も廃ならではのもので、「どこまではまってるんだ、この人は」と不謹慎にも思ってしまいます。頭装備で重量50%? 普段の装備がコロネット? そんな装備見たこともねぇです。
Crazy-D act-7 |
もっちー | もっちー王国 |
<漫画・同人誌> |
円 |
前半はいつものシーマちゃんもの。後半は「プリティー美沙」の単行本未収録分が掲載されています。好きだったんですけどねぇ、「プリティー美沙」。確かに後半はちょっとお馬鹿さが足りなくなってましたが、せめて3巻までは続いて欲しかったものですが。
二十五歳と二十六歳の銀河 |
雁須磨子&ジョン | 雀ライダー |
<漫画・同人誌> |
円 |
ナルト本です。後者はジョンの個人誌。いつものことですが雁須磨子先生の作品は「本当に大丈夫だろうか」「きちんと終わるんだろうか」と、いつもドキドキしてしまいます。そしてラストはまさに絶句といった内容。いやー期待を裏切ってくれません。さすがです。雁先生の凄いところは商業誌でも同じことをなさってくださること。「メロディ」掲載のルポ漫画はかなり体裁が整っていますが、そこここに見え隠れするほころびがいいんですよね。同人で雁先生のすごさを再認識した次第です。
Wishing Well |
多田由美&深山篤嗣 | キャンプファイア・カンサス |
<漫画・同人誌> |
円 |
これはびっくり多田由美のテニプリ本。多田由美がテニプリですよ! あの「戦闘妖精雪風」の。一体どうしちゃったというのでしょうか。一体何があったというのでしょうか。非常に気になります。で、内容は(当然といえば当然なんですが)多田由美の漫画になっているのですが、例のアメリカンなキャラがコンビニでたむろしていたり、カップうどんを食っていたりして、なんだか凄いものになっています。「2」のほうは「エースをねらえ!」のひろみとお蝶夫人の対決もかくや、といった緊張感ある作品なんですが。多田キャラがうどん…。
2003年8月14日(木)
コミックビーム 9月号 |
エンターブレイン |
<漫画・雑誌> |
467円 |
「アフタヌーン」などが立体付録を付けるようになったのに影響されてか、ビームも初の(?)はっきりした形の付録が付けています。「放浪息子」のブックカバー別バージョン。表4の千葉さん@フェルゼンが!
これはなかなかイキで、ついでに言うならコストもあまりかからなさそうな、ビームらしい付録といえましょう。
で、内容ですが、岩原裕二「いばらの王」といい、志村貴子「放浪息子」といい、森薫「エマ」といい、カネコアツシ「SOIL」といい、よくもまあこれほどのテンションを、と嘆息してしまうくらい面白くなっています。鈴木マサカズ「ブルードッグブルース」は切ないクライマックスを迎えつつありますし、須田信太郎「ウルティモ・スーパースター」は、もっともらしそうで実はインチキなことをほざく、一番注意しなければならないタイプの人間を描き、爽快にも一蹴しています。いいですなぁ。それこそ魂のフリーダムですから。注目すべきは新連載の安永知澄「やさしいからだ」と、山川直人「モノクローム」です。前者は以前から期待の新人としていくつか読み切りを描いていましたが、今回から本格的に連載開始。いい意味でスキのあるざっくりした線で、中学生が抱えがちな心の不安定をうまーく描き出しています。ネタ的に「少年少女」と多少かぶるところはありますが、こうした文芸的作品はいくつ載っていても楽しめますしね(それに福島は軍オタ的側面で攻めますし)。それから後者は恐ろしいぐらいに違和感なく載っています。ていうか今まで載っていなかったのが不思議なくらい。これまでお世辞にも掲載誌に恵まれていたとは言い難かった山川なので、ビームという場を得てすんごい作品を発表して欲しいと願うところです。
コミックバーズ 9月号 |
幻冬社 |
<漫画・雑誌> |
467円 |
Peach-Pit「Rosen Maiden」が好調ですね。可愛いといえば凶悪に可愛いのですが、性格は自己中心的。「振り袖いちま」というプロトタイプ的作品があるとはいえ、「黒プランツ・ドール」的な要素もあるので楽しめます。背後に流れるヒキコモリの問題も興味深いですしね。そして新たな人形が! 期待も高まるというものです。あとは南京ぐれ子「あかてん☆ヒーロー」とゴハ「ワンダバスタイル」でしょうか。特に後者はアニメも終わってしまったせいか、オリジナルのストーリーで攻めてくれます。キ、キ、キ、キクちゃん可愛い〜! アニメもキクちゃんの存在がキーになっていましたが、漫画版ではより位置づけが重要になっているのですね。見逃せないというものです。
麗人 9月号 |
竹書房 |
<漫画・雑誌> |
714円 |
うーん、やっぱりいいですねぇ。その理由は「絵がやおいに特化したものではないこと」「オハナシがリアル志向であること」「濃度が濃いこと」にあると思います。隔月ならではのレベルの高さ。BL雑誌のなかでは一番好きですね。
今回の特徴は猫田リコ×山田ユギの合作「夢が叶う温泉王」が載っていること。一見そぐわないようなふたりの絵ですが、そこはボーイズ界でもクレバー度の高さを誇る両名、きちーんとうまくまとめています。ていうかこんなに親和性が高いとは思いませんでしたわい。楽しそうに仕事をしているさまがうかがえて、こちらもニヤニヤしてしまいます。他の作家もいい仕事をしています。子犬系受けが可愛い国枝彩花「いつか雨が降るように」。白髪和服受けが可愛い(そればっか)桜木あやん「恋という字は」。軽妙なタッチもうまさを感じさせるすずはら篠「月の在処」。リアルな描写がナマナマしくも萌えな西田東「あの頃に戻れない」。そしてキンニク描写が素晴らしい内田かおる「僕の倖せ」。どれも質が高く読ませます。この調子で強烈な作品を載せ続けて欲しいものです。
ネムキ 9月号 |
朝日ソノラマ |
<漫画・雑誌> |
543円 |
今回はかまたきみこ「深海蒐集人VIII」が載っていてお得感がアップしています。ミステリ仕立てになっていて、ミミが海に潜れなくなってしまう…というオハナシで、ちょーっとミミの魅力がスポイルされているかな、と思います。ですがそれをカバーするためにか、今回はミミが非常にフェミニンに描かれているのですね。ドレスを着たりとか。これはこれでいいものです。次回も登場とのことで、期待が高まるというものです。あとは諸星大二郎「何かが街にやって来る」後編でしょうか。最近文庫化され、そのそらすっとぼけた感じで読者を翻弄した「栞と紙魚子」シリーズですが、新作は新作ですっとぼけていて味があります。これはこれで集中的に載せて欲しいんですがねぇ。
2003年8月11日(月)
都立魔法学園 |
星野リリィ | 海王社 |
<漫画・単行本> |
581円 |
星野リリィ先生の新刊はなんと学園もの。魔法を学ぶ高校が舞台。主人公の湯野が実習の「使い魔召喚」で呼び出したのは、婬魔で可愛い男の子のハーレム。ホレ魔法しか使えないため使い魔としてはオチコボレのハーレムだが、けなげにご主人様に仕えます…という内容です。もう何がいいかっていえば、ハーレムきゅんが激・可愛いこと。女の子と見まごうばかりの絵柄ですが、ちゃーんと骨格は男の子になっています。また男の子ならではのけなげさを、実によく表現してるのですね。そして必殺の上目遣い!
ご主人様の湯野くんだけでなく、読者もヘナヘナと骨抜きにされてしまうというわけです。罪深すぎです、リリィ先生!
それから学園ものですが、共学になっているところも面白いですね。得てしてBLの学園ものといえば、男の園を描いてしまいがち。ですがこの作品では、ちゃんと普通のクラスメイトの女子を描いています。またハーレムきゅんのライバルとして、女婬魔のメラミちゃんも登場します。これは何を意味するかというと、「女の子がいてもやっぱりハーレムきゅんがいい」という、強いドラマ性につながるのですね。BLものといえば、設定が不自然になりがち(美少年ばっかりとか)ですが、それを回避する役にも立っています。女の子が出てきて、それが生き生きとしていると、BLはかなり深みのあるものになると思います。
加えて、続き物としてきちんとできている点、デビューしたての頃のポップな描線が復活している点、バラエティに富んだ展開と、これまでのリリィ作品に比べても、恐ろしく完成度が高まっていると思います。2巻まで続くとのことですが、非常に楽しみではないですか。男性のショタスキーな人にも、抵抗なく受け入れられると思います。是非広く読まれてほしい強烈な一冊です。
DOGLA+MAGLA |
寿たらこ | ビブロス |
<漫画・単行本> |
590円 |
ハードものです。ギャグじゃないです。キリストの遺伝子のクローンであるクリス(多田由美的美形)と、幼なじみのタケちゃん(いがぐり頭の日本人)が、世界的な陰謀に巻き込まれていく…というお話です。きちんとしてますねぇ。あまりにもお話としてまとまっているので、別の作家かと思いましたよ。「尻掘れ!ワンワン」の印象が強すぎるものですから。まぁもともとシリアスの人なんでしょうが。
蒸発旅日記 |
山田勇人監督 |
<映画> |
1800円 |
男ってのはしょうもない生物ですね。やっちゃいけないと分かっていながら性欲を抑えられないのですから。つげ義春の作品を原作にした映画ですが、正直全然つげっぽくはありません。つげ作品の魅力は、「笑っちゃうほどのダメさ」にあると私は考えています。状況は絶望的なんですが、どこか達観した、どこか現世のロジックから逸脱したものの見方があるために、笑ってしまうオチャメさがある、それがつげ作品の魅力だと思います。「無能の人」で、散髪した髪の毛をとっておいてしまうくだりなど。ところがこの映画ではそれがすっぽりと抜けてしまい、ただ単に旅の茫漠感を描くことに重点が置かれています。うーん…。「アンモナイトのささやきを聞いた」は良かったんですけどねぇ。
Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:16:52 JST