2003年8月31日(日)
<コミティアでの買い物>
おれさまはハム 流星ひかる
少女コレクション2 桐原小鳥
裏翻弄シナプス 相原こう
東京蜜柑5 甘夏柚子
まぶたの裏に光 甘夏柚子
星かんざし 三五千波
キラキラ星。チロル
少年囚人 チロル
un messe オノ・ナツメ
curiosita オノ・ナツメ
vacanze nella casa di marco オノ・ナツメ
ヒトクイ v.a. プロパガンダユニオン
ちなつのシュート! 青木俊直
B 青木俊直
おしまいの夏 アイ3
Best Eleven2 n.y.janckers
COMICメイキス v.a.
譫妄童話 kashmir.
Short hope lights 001 リョウ、北村
憂貧局短編集 志賀彰
note-book コサカトシフミ&こてはし直樹
THE美女軍団 小田扉&弥生一八
☆☆☆+ 佐藤直大、原笑、横尾梟
この中で特筆すべきはkasumir先生(と呼ばせてください)の新刊と、志賀さんの再録短編集。細かくはあとで書くつもりです。
Landreaal 2 | おがきちか | 一賽社 |
<漫画・単行本> |
552円 |
DXたちの旅も隣国バチカンに達し、オコサマでありながらも王家の一族としての自覚にあふれたウールン皇女が登場。少しずつ謎が明かされるなど、着実にオハナシが進行しています。うーん本格ファンタジーっていいですなぁ。そしてオハナシの横糸になるラブも少しずつ進展していきます。兄萌えながらも六甲に心を許していくイオン、気丈に振る舞いながらもかっこいいお兄さん、DXに好意を寄せるウールン、焦りもあってか積極的なアン。この縦糸と横糸の配分具合が実にいい感じなんですね。以前「ぱふ」のレビューにも書きましたが、漫画としてヒジョーに上手。まんが読みの幸せを感じる作品だと思います。
キミの温度 | 日輪早夜 | 芳文社 |
<漫画・単行本> |
562円 |
前作「幸福のススメ」の舞台設定を使い、次男坊カップルの関係に着目して描いた作品。あとがきでも書かれているとおり、かなり濡れ場の多い内容になっています。濡れ場を必ず入れる、という目標を立てるのは良いのですが、正直まだちょっと消化不良の感がありますね。観念的でかわいい作品を得意とする作家なので、無理にエロシーンを入れたために整合性が崩れ気味になっているように思います。ボーイズは濡れ場なしでも成立すると思うんですがねぇ。ただ、目標を立て、自分に制約を課して、新しい表現をしていこうという姿勢は素晴らしいと思います。
のはらのはらの | 雁須磨子 | 大洋図書 |
<漫画・単行本> |
600円 |
野球部を辞めざるを得なかった男の子と彼を好きになってしまった男の子の、ぎこちないラブが描かれます。すまこ先生の作品の美点として、「読んでいてハラハラする(いろんな意味で)」というものがありますが、この作品でもそれは健在。ただ今回は非常に構成が凝っていて、すこーしずつ近づく二人の気持ちをゆっくりと描いています。これがまたいいんですね。構成に無理がありませんし、引っ張りまくるその分だけ…そして「その後」が明示的に描かれないだけ…カタルシスが増すわけですから。それにしてもこの高校生カップルの初々しいことといったら! 読んでいるこっちが照れてしまいそうです。それはこの作品の「純度」が高いことの証でもあるでしょう。オビは羽海野チカ。
LO Vol.3 | 茜新社 |
<漫画・雑誌> |
648円 |
すごくちっちゃなおんなのこが出てくることがウリのロリ専門誌も3号目にして次号から月刊化。表紙がさわやかで清潔感にあふれてるのに、中身は幼女とのガッチリしてハードなセックス。このギャップが人気の秘訣なんでしょう。しかしいろんな側面で確信犯であることがうかがえますね。表紙と内容のギャップもそうですし、出てくる女の子たちの年齢や学年を明記してますし、表2表4などで「幼女とホントにやっちゃダメ」という意見広告(?)を出していたりしますし。発行・編集している側が、「俺たちはロリが好きだしハードなセックスしているところを見たいんだけど何か?」と考えていることがありありと分かるのですね。もちろんそれは実行してしまっては犯罪になることであるために、「フィクションのままにしておこうよ」と訴えるのは、出版する側としては正しいことなのでしょう。ですが実際はそれは「訴えてるから内容はエロくてもいいでしょ」という免罪符としての役割を持っていますし、スタイルが洗練されている分幼女とセックスすることを煽る内容にさえなっています。別にそのこと自体の善悪を語るつもりはありませんが、当局、ていうか担当者の感情を逆撫でしなければいいよなぁ、なんて余計な心配をしてしまいます。
個人的に良かったのはEB110SS「町田まんこ」と、長月みそか「ぷりーずぷりーずみー」ですね。前者はオコサマとのセックスが不可避的に持つ危険性(女の子の方が得意になってバラしちゃう可能性)を描いていますし、後者は中学生を描くことによって、ロリものに欠けがちなリアリティが生まれています。内容的には優れたものが多いと思いますし、沈滞傾向著しいエロ漫画に一石を投じると思いますので、是非とも長続きして欲しいものです。
快楽天 10月号 | ワニマガジン社 |
<漫画・雑誌> |
円 |
いまさらもうもとの路線には戻らないのは分かっているんですが、エロ重視はやっぱり賢明ではないように思います。かつてのハイセンス路線の名残…タカハシマコ、三浦靖冬、レンジ☆ムラタといった人々との整合性もとれていないように思えますし。まぁYUG先生が載っていれば買うんですけど。
2003年8月27日(水)
カルバニア物語 8 | TONO | 徳間書店 |
<漫画・単行本> |
505円 |
非常に手慣れてきた感じ。良くも悪くも安定しています。これには、キャラの組み合わせでいくらでもエピソードが作り出せる、「不敗の構造」ができているところが大きいでしょう。それに急いで終わらせる必要もありませんし。
水街 | ユズキカズ | 青林工藝社 |
<漫画・単行本> |
1500円 |
暑い暑い夏の午後、瑞々しい瓜を売り歩く若くて肉感的な女の子。スコールのような夕立が降るなか、つい全裸で外に飛び出してしまう少年少女。町中に潜むエロス。どの作品も粘つくような湿気に満ちていますが、だからこそ生まれる陽気さと力強さにあふれています。ここ作品集を読んでいると、日本もモンスーンアジアなんだな、ということがよくわかってきます。日本の「アジア性」に着目した作品集といえるでしょう。
うれしいのは「朗ラカニ歩メ」が収録されていること。なぜか二足で歩く犬が街を歩き回り、人々から「あっでっかい金玉」と言われるだけ、という作品なんですが、これが実にいいんですよ。非常にリアルな日常のなかにヘンテコなものが入り込むことによって、つまんなそうな日常が鮮やかに輝きはじめる。さりげない日常の人々のコミュニケーションのなかに異物が入り込むことによって、どこにでもありそうな話し合いがとたんに輝いてくる。逆柱いみりの作品に通じる良さがここにあります。長井勝一が死の直前絶賛していたというのも頷ける大名作です。
よつばと 1 | あずまきよひこ | メディアワークス |
<漫画・単行本> |
505円 |
「あずまんが大王」のことを「原因不明の大ヒット」と表現するなんて、なんと自己韜晦的な! 「4コマまんがの連続で時の経過を表現する」「萌え要素を組み合わせる」「4冊できちんと3年間を描ききる」「表向きはギャグで狙っているのは別のところ」などと、非常にコンセプチュアルな作品だったではないですか。ヒットするのは狙っていたからであって、当然のことだったわけです。
で、この作品も非常にコンセプチュアルな構造を取っています。ちよちゃんの外見+ともの中身、といったよつばの造形からしてそうですし、謎に包まれたよつばの過去、次第に明らかになっていく父ちゃんの仕事、隣のお姉さん三人組のキャラ造形など、最初から綿密に設計図が引かれていることがありありとうかがえます。それがまた心地よいのですね。一方でオハナシ自体はよつばの滅茶苦茶さ加減でパワフルに進んでいきます。綿密に設計されたスタティックな部分と、どんどん破綻していこうとする力強い部分が上手く組み合わさっている。この作品は、そうすることによって「萌え」と、その先を描こうとしているように思えます。スタジオオルフェの連中などがやっているように。
あと、ひどく下世話な話になりますが、隣のお姉さんたちが妙に肉感的でムッチリしているのがエロくていいですね。模様みたいなよつばの描き方とは決定的に異なっていますし、どんどん抽象化されて細っこくなっていく傾向が強い現在の「萌え絵」とも異なっています。そろそろムチムチが復権してくるかな、なんて考えたりもします。
2003年8月26日(火)
ラヴ・バズ 1 | 志村貴子 | 少年画報社 |
<漫画・単行本> |
505円 |
そもそも志村貴子が女子プロレスを舞台に作品を描くこと自体が驚きなのですが、表面的形式も驚き。志村貴子が「動き」を描いてるのですから。おお、効果線が描いてあるよ! ところが内容は相変わらずいつもの感じ。主人公の藤かおるは、女子プロ界のスター街道にありながらも、これからというところで逃げ出し、何年かして平気な顔して子連れで戻ってくるようなダメな人。もうそれだけでニヤついてしまうというものです。オハナシは藤がうだうだ煮え切らない行動を取ってばっかりですし、娘のえりかはエポケーされた存在ですし、妙に本編と直接関係しない設定ばっかり細かかったり(えりかの父親がエコロジーにはまっているダメ野郎だったり)と、もう輪をかけてダメなんですね。試合のシーンだけ絵に動きがある分空疎さが加速しているのも見逃せません。
で、空疎だから駄目かといえば、全くそんなことはありません。むしろ作品全体がこれまでのマンガの方法論とは異なり、静止した瞬間のつなぎ合わせで成立している(だから空疎に見える)ところが興味深いところなのですね。映画でいうモンタージュ技法でしょうか。そしてそれはこれまでのマンガ作品とは異なった…そして「今」だからこそリアルな…感覚を呼び起こします。それこそ志村貴子作品のキモですし、この作品はより積極的にそうした表現を深めていこうとしているように見えます。
ぱにぽに 4 | 氷川へきる | スクウェア・エニックス |
<漫画・単行本> |
590円 |
キャラの描きわけとか画面構成とかいろいろツッコミどころはありますが、今のオタ向けギャグ作品に必要な要素はきちんと押さえてますね。それはオタクの心胆を寒からしむる、メタ的にオタクを嗤うブラックなギャグなのだと思います。
電撃大王 10月号 | メディアワークス |
<漫画・雑誌> |
590円 |
「月姫」「ゴーダンナー」の連載が始まっていますね。いずれも10月からの注目アニメ作品。さすがにメディアミックスにそつがありません。注目すべきは桂遊生丸「ひばりFLY」ですか。オリジナル作品のせいかなんだかサービスしすぎ、頑張りすぎ。サービスシーンだけで構成されたような作品になっていて微笑ましく読めます。いや、いかに萌え雑誌とはいえそこまでエロは要求されないと思うのですが。ただ「これでやっていくんだ!」という意欲が強く感じられ、頼もしく思います。あとはいつもの「ドールマスター」「ぷりてぃまにぃず」でしょうか。94式軽装甲車TKとはまたマニアックな…。
マガジンZ 10月号 | 講談社 |
<漫画・雑誌> |
590円 |
巻頭ピンナップにみさくらなんこつを迎え、遅ればせながら積極的に「萌え」にシフトしようとしているように見えます。それにしてもみさくらのこのキャラ…。髪の毛が体の周りで渦を巻いているとは…。「萌え絵」の特徴とは、重力や物理法則から解き放たれた髪の毛にあり、なんて考えてしまいます。表紙は百瀬武昭「マジカノ」。オリジナル作品になっていい仕事をしまくること。過剰すぎるサービスで「萌え担当」としての責務を果たしつつ、「可愛い女の子になりたい」生徒会長の心理をきちんと描き出しています。まんがとして実にしっかりしているのですね。これは注目すべき作品です。あとかねこしんや「カルドセプト」が載っているのが嬉しいですね。相変わらずの美しい線、魅力的な表情。「まんがの快楽」を味わえる作品になっていると思います。
少年エース 10月号 | 角川書店 |
<漫画・雑誌> |
590円 |
戸田泰成「ガンダムSEEDアストレイ」と、長谷川裕一「クロスボーンガンダム」が連続して載っているため、まあ濃いこと濃いこと。「エヴァ」が例のごとく載っていないため、一層「ガンダムエース」のように見えてしまうことですよ。まあ、こうした濃い作品が、今後日の目を見るようになると良いのですが。そして長谷川裕一先生の再評価も進んでくれると嬉しいのですが。あとは最終回を目前とし、異様な(異常な?)盛り上がりを見せるゴツボ☆リュウジの「ササメケ」でしょうか。
2003年8月25日(月)
星の砂漠 タルシャス・ナイト | 友谷蒼/船戸明里 | 幻冬舎 |
<漫画・単行本> |
750円 |
「ミステリービィストリート」連載中の「Under the Rose」にヅキュンと来たので購入。オハナシの静謐さもさることながら、なんといっても絵がものすごく綺麗。元々イラスト畑の人だというせいもあるのでしょうが、一枚一枚の絵がきわめて完成されているのですね。愛美の硬質なかわいさ/美しさときたら、まさに嘆息するほど。漫画作品としては正直まだ完成されていないところが見られます。「絵の展開でお話を語る」やりかたが、まだ身に付いていないというべきでしょうか。特に後半は展開がとっちらかっていて、どういう物語になっているのか追うのが難しくなっています。ですが絵の美しさはそれを補って余りあるといえるでしょう。
「Under the Rose」はかなり漫画として完成されていますし、聞くところによると「ファミ通ブロス」で連載していた「HoneyRose」はかなり強烈な名作とのこと。長い経験を持っている人ですが、今まさに新たなステージに到達しようとしていると思います。今後も注目していこうと考えています。
堕ち天! バトルアンジェリカ 1 | 面堂かずき+はづき | ワニブックス |
<漫画・単行本> |
900円 |
天界でドジばっかりしたために、天使失格ギリギリになってしまったかりん。天界に戻るためには、人間界に現れる魔物を退治して、ポイントをためなければならない。普段は女子高生として生活しながら、魔物が出現すると「バトルアンジェリカ」に変身して戦う…というオハナシです。いやあたわいなくていいですなぁ。ノーパンで戦ったり鎧が外れちゃったりとオヤクソクなサービスもありますし、主人公のかりんはほやほやのふにゃふにゃですし。その点できわめて明確に、かつ十分に「萌え漫画」になっています。ガム掲載作品ですから、それはまぁ当然といえるでしょう。ですがこの作品にはふたつの着目すべき点があります。ひとつは女性が描いていること。絵柄やコマ割りは非常に少女漫画的です。現在の「萌え漫画」と、「ブレイド」「ゼロサム」などに載っている漫画は、かなりの共通点を持っており、特にオタ向け作品において、もはや「少女漫画」「少年漫画」という区別が意味をなさなくなっている状況があります。ですがこの作品は明確に「少女漫画」なんですね。区別が意味を持たなくなっていることを明示する、という意味合いもあるのでしょうが、この作品ではそれ以上の戦略性を感じます。何か「仕掛け」があることは間違いないでしょう。少女漫画的であることによって、エロさが中和されていることも重要です。エロければそれでいいのか、ということのアンチテーゼになっているというのでしょうか。同誌に連載されている「一騎当千」に対する当てこすりになっている(だから「ガム」という雑誌は面白いのですが)ともいえるでしょう。もうひとつは、オハナシの構造が非常にしっかりしていること。見た目は非常にほやほやしていますが、かりんが置かれている状況には最初から謎が設定されています。かりん自身も実は謎を含んだキャラですし。これは、萌え以外の部分でも勝負しようという意図の現われなのではないか、と思います。ちゃんとしたオハナシで勝負するという。いやあ、「ガム」の掲載作品ってのはこれだから面白いんですよ。
Chara 10月号 | 徳間書店 |
<漫画・雑誌> |
552円 |
TONO「カルバニア物語」は、コンラッド王子の弟、ソルダムの登場によって、ようやくオハナシが進みそうな塩梅ですね。以前のオハナシで「ライアンが病気を理由にタニアを避けているようで実は本当に病気だった」という素晴らしいオチをカマされたものですから、どうなるかとやきもきしていたのですが。それから神奈木智/穂波ゆきねの「凛」。相変わらず穂波の絵は静謐でホレボレします。これだけ絵が達者なのに、決してオリジナルをやらないってのは逆に気になりますが。そして最終回を迎えた(次回番外編ですが)辻よしみ「まものなまもの」。この人はカワイイ少年を描かせると本当に天下一品です。最後にちょっとしょぼんとしてしまった「能瀬くんは大迷惑!」に比べると、こうした悪意のこもった作品のほうがより生き生きしているように見えます。まぁもともと少年を困らせて楽しむという「根のスケベさ」がありますから。あとは藤たまき「夏の名残りのばら」でしょうか。
Rutile vol.2 | 幻冬舎 |
<漫画・雑誌> |
680円 |
なんだか他のボーイズ誌に比べると、ずいぶんとレベルが違って(高い、というわけではないですが)見えますなぁ。「ガッシュ」とか「マガビー」などと比べて、絵柄の耽美度が低いというんでしょうか、BLに特化した絵柄が少なくなっているのがその原因だと思いますが。まぁその分より広い層に訴える可能性を持っていると思います。
やっぱり注目すべきは星野リリィ「スーパーダブル」と山本小鉄子「ブラザーズ」ですね。前者はショタであるところのダイヤきゅんのけなげさに激・萌え〜!ってところなんですが、ダイヤの相方の女の子、ラブを魅力的に描いているのがいいんですね。普段はツンケンしているけれど、やっぱり女の子で可愛いところもある、という。この方法論は「都立魔法学園」のメラミちゃんと全く同じではあるのですが、女の子が登場して、そしてそれがきちんと「女の子として」描かれていると、BLもとたんに深みが増すというわけです。そしてそれは男性に対してもアピールする点でしょう。他にBLで女性を有効に使う作家にはまんだ林檎などがいますが、その使い方は男性が男性を愛する理由を明確にするためでした。つまり女性は悪役だったわけです。それはそれでBLが一般性を獲得するひとつのブレイクスルーだったわけですが、星野の方法はそこからさらに一歩踏み出しているように思います。こうした作品をきっかけに、より多くの人が優れたBL作品を読むようになってくれると嬉しいのですが。それから後者は「やな女性」を登場させることによって、くりすちんの困り顔を連発させています。なんちゅう破壊力! すでに述べたとおり「悪役として女性を使う」方法は、今ではちょっと後退しつつある方法だと思いますが、この場合は目的がはっきりしているから問題はありません。自分のかわいさを認識していない人ってのは、本当にいいじゃないですか。
巻頭を張る富士山ひょうた「瞳の追うのは」も頑張っていますし、新連載のシマダマサコ「69」もうまい導入の仕方をしています(絵も上手ですし)。山田ユギ先生「どうして涙が出るのかな」に至っては、あまりに楽しそうにデブ青年を描いているために、鬼気迫るものすら感じます。この調子で「ルチルらしい」誌面づくりをしていけば、かなり競争力を持つのではないか、と感じています。
2003年8月22日(金)
チャンピオンRED 10月号 |
秋田書店 |
<漫画・雑誌> |
467円 |
作品の「タマ」が揃ってきて、テンションがあがってきています。なんといっても山口貴由「シグルイ」がいいのですね。この人お得意の誇張が美しさへと転化しています。そして漲る緊張感。こんなに美しい作品を読むのは久しぶりです。他にも神矢みのる「プラレスラーVAN」は古くさく見えますがきちんと盛り上げていますし、渡辺航「制服脱いだら」はより一層ノホホン感が高まっています。岡田芽武「聖闘士聖矢EpisodeG」も、なんだかんだいってきちんと面白いですしね。今回特筆すべきは有川祐「N.S.Q」の連載が始まっていること。これはまた久しぶりな! 「コミックビーム」の「彼女とデート」以来ですからね。内容がまた切なくっていいんですね。バーチャル・リアリティを使ったネットゲームをモチーフとし、「現実感が薄いからこそ感じられる強い心の動き」を描き出しているのですから。次の掲載は12月号とのことですが、とりあえず連載とのことなのでめでたく感じます。
サンデーGX 9月号 |
小学館 |
<漫画・雑誌> |
438円 |
やまむらはじめ「境界戦線」は、同一世界を舞台としたオムニバス形式が非常に有効に働いていますね。やまむらといえば強い長編志向を持っていますが、実は短編が非常に達者。「肩幅の未来」といった恐るべき名作をものしていますが、このシリーズでもそうした鋭さが発揮されつつあります。世界設定の切なさも実に現代的。期待してしまうというものです。それから犬上すくね「ラバーズ7」。ちょっと中だるみしたかな? と思わせておいて、凄くテクスチャーの細かい描写でドキリとさせる。さすがはよく分かっています。そしてイダタツヒコ「美女で野獣」。もともとこの作品は人間の「ケモノとしての本能」というんですか、ドーブツとしての「深い部分」を呼び起こす力が強かったのですが、今回は本格的な「心の闇」を取り上げています。今までも暗黒面を描いた作品はありましたが、この作品は闘争の中で、体を極限まで動かしていく中で、そして命のやりとりを前提とした中で、生まれてくる闇を描いているのですね。これまでの描写とは質が異なりますし、描かれる闇の深さもまた深いものになっていると思います。斉藤孝ならどう解説しますかねぇ。
花音 9月号 |
芳文社 |
<漫画・雑誌> |
638円 |
高口里純「詩人は一日にして成らず」が掲載されていますね。さすがに親分、可愛い青年の描き方も、その青年の受け受けしさも、堂に入ったものになっています。高口とその弟子たちがBLに及ぼした影響ってのは本当に凄いものがあるのだな、と実感した次第です。あとはやまがたさとみ「フェイクファー」が載っているのがいいですね。最近の花音は絵柄がかなり特殊化し、リアルから遊離する傾向が強くなってきていますが、やまがたはそれを慎重に避けています。オハナシの静謐さもあいまって、強く響く作品になっています。
Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:16:52 JST