「ポップ幻想歌謡集」と、帯に記してあるが、なんだかまさにそんな感じ。歌ものが中心なので、現在のアヴァンギャルドな活動との接点は少ないように感じられなくもない。が、その曲は決して他の作曲家のものとは似ておらず、その詞もまったく尋常なものはない。それに赤瀬川源平&その一派(トマソン系)の人々に通じるようなすっとぼけた過剰なサービス精神。心がほのぼのすることこの上なし。また、楽しいタイプの歌&曲だけではなく、どうしようもなく切なくなってしまうような佳曲も何曲かある。多彩な参加ミュージシャンもあいまって、非常に奥の深いアルバム。とうじ魔とうじの活動に惹かれるのは、思うに、トマソニアン的サービス精神だけではなく、誰もがさまざまな形で持っている、ちょっと貧乏臭いノスタルジアをかきたてる何かを持っているからなのだろう。そこには地に足のついた人間への視点がある。まあ多分本人はそこまで考えてやってはいないと思うが。どうもこういうのに私は弱いんだよなあ…。