Gloryシリーズ第一弾「War of Resistance」について

 

売価:100ドル(書泉ブックマートでいちまんろくせんえん)

駒の数:1960個

マップの数:B4大が19枚

試しに広げてみた図。右下の黄色いフロッピーディスクと大きさを比べて欲しい。優に2畳を越える「広さ」には感服。一坪だよ、一坪!

その他内容物:ルールブック、戦闘序列(日本軍、中国軍、その他)、シナリオブック、各種図表


特徴:

・ルールそのものは基本的に「ヨーロッパシリーズ」と同じ。戦闘、移動、蹂躙、装甲部隊ルールは全く変わらない。

・フェイズ進行は、手番プレイヤーの移動、戦闘→非手番プレイヤーの対応移動・戦闘→手番プレイヤーの再移動というダブルインパルス・システムになっている。他、補給ルールが大きく異なっている。

・日本軍は1個師団あたりの戦力が高く、損害にも強い。その代わり数が少なく、広大な中国大陸全域を有効に支配するのはきわめて困難。また補給も滞りがち。

・中国軍は国民党軍と共産党軍では大きく扱いが異なる。全体的に国民党軍は脆弱で、共産党軍は精強だが支援部隊を欠く。共産党軍はゲリラとしても活動できる。

・中国側のゲリラルールは非常に充実。ゲリラは正規の支配地域を無視して日本の勢力下に侵入でき、破壊活動を行える。一方日本軍も対ゲリラ部隊を編成できる。また日本側は「省」を支配するたびに傀儡政権を樹立することができ、2年間3つ以上の省を支配し続けると「汪兆銘政権」を樹立することができる。

・日本側は占領地を拡大したり、傀儡政権を樹立することで国民党政府を動揺させ、最終的に崩壊させれば勝利。中国側は太平洋戦争開戦まで一定の統治レベルを保てば勝利。

・南京大虐殺はできないが、黄河の堤防を破壊することは可能。


感想:

 まずはマップの広さに愕然。自宅じゃ広げることさえ出来はしない。もうここまで来ると完全にキチの領域に入っている。これが全てでないというのだから途方に暮れる。また、駒の数も圧巻。呆れを通り越して実にすがすがしいのだ。

 だがそれだけではない。このゲームは歴史的資料/史料としてもかなりレベルの高いものになっている。どのようにして戦力のリサーチをしたかはかなり不透明な部分があるが(特に中国軍の編成や戦力のレーティング)、日本側は一般に非常に細かく調査されている。1937年7月の廬溝橋事件以来、どのように日中戦争が展開していったかがよく分かるのだ。実際プレイしてみたわけではないが、おそらく日中戦争特有の「点と線」の支配の様子もうまく再現されているようだ。

 ポリティカルな要素も再現されているところも面白いところだ。史実では果たせなかった国民党政権崩壊、中国の植民地化は、ポリティカルな要素を積み重ねることによって再現される。単なる軍事面の再現だけでなく、政治的な目的も達成しないとならないのである。これは明らかにゲームに深みを加えている。

 中国を巡る政治的な言説が高まっているなか、このゲームで日中戦争の歴史を再現してみるのも面白いのではなかろうか。日本の「戦争」がどのようなものであったかを知るためにも、このゲームは使うことができる。多くの人、特に右寄りの人(または右に魅力を感じている人)にプレイして欲しいと思う次第である。


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