何故に、と問う。故に、と答える。

〜あるいはもうひとつのマニフェストとして〜

 

 常日頃インターネットにアクセスし、ネットサーフィンをしていると、いつしかどうしようもない寂しさに襲われることがある。特にそれはサーチエンジンを使っているときに強く感じるのだが、自分の趣味に合ったページが全くといっていいほど存在しないのだ。

 

 特にアングラ系やカルト系のネタは全滅といってもいい。たとえば夢野久作。多少なりともアングラ世界に興味を持つ者なら、ほぼ100%知っているはずのこの名前が、サーチエンジンで引っかかってこない。稲垣足穂や渋沢龍彦といった「マイナーメジャー」な人々もまた同様。有名どころでさえこれだから、さらに通好みであるような沼正三といった名前が引っかかってこようはずもない。まさに不毛の世界だ。

 

 これは最近の作家に関しても同様で、それは現在アングラ系の一つの雄である「ガロ」と、それに関係する漫画家やアーティストがほとんどWeb上に現れないことからも分かる。古屋兎丸、根本敬、東陽片岡、山野一、ねこぢる、丸尾末広、花輪和一、しりあがり寿…これらの作家の全ては、世界に誇ってもいいような漫画家でありながら、日本のWebでは誰も紹介するものがない。「ガロ」系でない、いい漫画家もまた然り。よしもとよしとも、やまだないと、南Q太、松本大洋…マンガだアニメだ、日本文化は世界に受け入れられているんだ、と浮かれている向きがあるようだが、誰も日本の漫画文化のディープな部分を紹介しようとしてはいないのだ。漫画はまだオーバーグランドな分野である。漫画でさえこうした悲惨な状況なのだから、音楽やパフォーマンスといったさらにアンダーな分野は推して知るべしである。

 

 どこかで誰かが言っていたが、Web上でいま一番欠けているものは「濃い」情報なんだそうだ。全くその通りだと私も思う。「濃い」情報はあるにはあるが、その傾向は非常に限られている。アニメ、特撮、コンシューマーゲーム…俗にいう「オタッキー」な分野で。そして、それぞれの情報は確かに濃いのかもしれないが、同じような情報が多すぎてちっとも濃いようには見えない。インターネットに参加している人がまだ限られていて、その趣味もどうしても限られてしまっている現状においては仕方のないことなのかもしないが、俗にいう「オタッキー」なもの以外の趣味を持っている人にとっては、苛立たしささえ感じさせるものでもある。

 

 私は常日頃からこうした状況を嘆いていた。一時はWebにアクセスするのを止めてしまおうかとさえ思った。その時だった。妙にふにゃふにゃした音楽とともに、天から光が差し込み、私を打ったのだ。

 

「暗いと不平を言うよりも 自分で明かりを点けましょう」

 

 私は目覚めた。そうだ、そういう情報が無いなら自分で発信すればいいじゃないか。嘆くよりも行動した方がいいじゃないか。それに、誰も発信してないのだったら、多くの人に読んでもらえるだろうし、それによって状況を打開するきっかけになるかもしれない。「そうだ、僕はここにいてもいいんだ!」じゃなかった、「ユリイカ!」と私は叫んだ。

 

 てなわけで、このWeb「雑誌」、Ionisationが作られたのだ。

 

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