2001年12月

2001/12/03(月) 23:12:48 とりこ
タイトル 中継ステーション 今日の気分またまた更新止まっててスミマセン

クリフォード・D・シマック「中継ステーション」
        (船戸牧子訳/ハヤカワSF文庫/1963年)

こういうコト書くとアレですが、シマックの作品って、一種こう…例えば「ちとメロウ過ぎるけど、そこがイイ」とかでなく、うう…今まで紹介した作家さんてワリと王道めいた人多かったんですが、シマックに関しては、欠陥ありつつも愛しいオールドモデルを薦めるようなカンジかな。
(カナリ失礼ですね。スミマセン…)
「筋立てが安易」とか言いたがる人もいると思う。けど読みドコロって、そこだけじゃないから。

知る人ぞ知る「田園SF」シマックの懐かしいテイストには、たいへん捨て難いものがあります。赤銅色に日焼けして、麦藁帽子の下から黙ってパイプくゆらせてるような、手足のごつい、無口な農家の男とか描かせると天下一品。

単にカントリーなSFが読みたいなら、まあ他にもあるかもですが、素朴な田園風景の中に鮮やかに浮かび上がる異形の描出、なんかにも萌えがあるワタシです。
例えばこの作品、異星人出てくるんですが、主人公との出会いの場面、とても印象的です。はっとするのね。異質さが。

勿論、「農家生活描写萌え」とか(コーヒーがうまそうでね・・・パンとチーズの素朴な食事とか。)静かな墓参とか、心打つシーンは沢山あって、ノスタルジー好きめ、とか言われても開き直るよワシは。良いものはよい。

あとね、「コミュニケーション萌え」な向きには、ウレシイ何かを保証。壁を超えて判りあえるかも、という、ユメをね。見せてくれるのね。

今回の表題の「中継ステーション」は今年始めにハヤカワ文庫の特別重版企画で復刊されて、オメデトウ。要は、それだけコアなファンがいるってことと思われます。
おかげさまで、アタクシにも買えました。やった。

「都市」とか、別な印象のもあります。そういや「再生の時」なんか、さっぱりワケわからなかったなあ…
その辺また別口でご紹介しようとか思いますが、とりあえず今回は「中継・・・」をおススメ。折角復刊してるし、今ならワリと手に入りやすいし。

「20世紀SF(2)」でも、田園な本領発揮の「隣人」が掲載されてます。
「田園SF」ってのに想像もつかない向きは、コレで味見ってのもアリかも。

2001/12/05(水) 11:44:54 ヤマナ
タイトル 幽玄漫玉日記(5)/この部屋に友だちはいますか? 今日の気分ネーム中
桜玉吉「幽玄漫玉日記」5巻(2001/ビームコミックス・エンターブレイン)

とってもディープでダウナーで、とってもエンターティメントなエッセイ漫画。もう5巻かあ。びっくり。いつも「生きるって…大変だなあ」と呆然としつつ、コマの隅々までサービス精神たっぷりの描写についつい笑わされてしまいます。
本巻では私も10年お世話になっている同人誌即売会「コミティア」参加編もあって、またまた目が離せないのでありました。(「コミティア」当日の描写は玉吉先生の体感時間のせいか、かなりスピーディーな感じですが。ちなみに私も行列してサインいただきました。感謝感激。)

この漫画、エッセイ漫画とは言ってもどこまで事実かは煙に巻かれている感もあって(そこが快感でもある)、おなじみの登場人物達はキャラ立ちすぎてもはや百鬼夜行状態であります。キノコ生えてるしハナチョーチンだし性欲魔人だし。
そんな中、5巻では「ボクも早くキャラ立ちたいなって」と、頭にスニーカーのせてはりきる若き編集者オーバさんが初々しく新鮮でありました。これからもいろいろ頭にのせて自己模索を図っていただきたい。そんでじっくり妖怪になっていただきたい。

あーなんかエッセイ漫画エッセイ漫画書いちゃったけど、そんな枠を超えておもろい漫画だと思います。諦念漂いまくりつつも、妙なパワーがみなぎる作風はとりこも気に入るのではないかな。

三浦俊彦「この部屋に友だちはいますか?」(1994/河出書房新社)

8月11日のとりこのオススメ。友情への熱いこだわりを持つ主人公がとにかく友情を高める!高める!高めすぎる!!

想像していたよりずっと不気味な小説でした。いや、笑うんだけど。おかしいんだけど。諧謔の裏側に得体のしれないコワイものがびっちりはりついているような。
「よかったら、共に友気を高めあおうではないか、イカちゃんよ 」って、いいの?とりこ?もう、もとの二人には戻れなくなるかもよ!?

しりあがり寿による装画がナイスですが(文庫版はどうなのかな?)、登場人物達の文語体なしゃべりや奇矯な一本気さには、むしろ吉田戦車の漫画を彷彿とさせられました。作品全体の雰囲気は、吉田戦車のどこか枯れた味わいとはかなり異質なものですけど。

2001/12/07(金) 01:32:16 とりこ
タイトル なみだ研究所へようこそ!/ダ・ヴィンチ 2002年1月号 今日の気分興奮してて眠れナイ

鯨統一郎「なみだ研究所へようこそ!」(祥伝社NON NOVEL/2001年)

「伝説のサイコセラピスト」波田先生と、美人会計士の小野寺さん、そして語り手の松本清(自称ハンサム)の3人だけの研究所に、今日も奇妙なクライアントがやってくる。
おもろいですね、これ。

ミステリです。探偵役が私立探偵でも保険調査員でもなく、心理療法士なのがちょっとした変り種かな。
奇妙な症状(事件)を抱えたクライアント(依頼人)が、症状の改善(ナゾの解決)を求めて研究所を訪れます。カリスマセラピスト(?)波田先生が、天才的なひらめきでもってナゾを解決してくれますが、その解決っぷりが、・・・うう。

一見そっけない淡々としたムードと脱力系ユーモアが、不思議にぬるくていい具合です。巻末近くではそっけなさは薄れちゃってますが、まあ読んでる方も肩の力抜けてくるよ。思わず口開けて、「目が点」になっちゃったりね。

流血もアクションもなく、一応美人とお色気は出てくるんですが、どうも「コノヒトたち、ちょっと変わってる・・・」って感じが。
地味といえば地味かな。
ワタシはかなりお気にです。おとぼけ風味はイカちゃんにもイイセンなのでは。

浅倉めぐみさんの挿絵(ドン・ウィンズロウの「ストリート・キッズ」シリーズ表紙とかの方)も、とってもマッチしています。


「ダ・ヴィンチ 2002年1月号」/メディアファクトリー

コミック欄の「要チェック!注目の新人続々登場」を読みたくて買ったのですが、川上弘美特集もあって大喜びでした。
記事中、川上さんのSF好きに延々と言及があるので、SFも少しはイメージアップになるかな、なんて思ってみたり。

あと、日頃良く行く「BOOKS昭和堂」って本屋さんが取り上げられてて驚きました。
「出版後3年も経った文庫本を、手書きポップでベストセラーへ導いた伝説の書店員」(それはスゴイ…)木下氏の、紹介記事です。
あの可愛い字のポップ、男性がお書きだったのですね…。

ちなみに今、店頭の平台には、他の色んな本に混じってオースン・スコット・カードの「ソングマスター」とヴォネガットの「タイタンの妖女」が、やはり木下さんのおススメポップつきで出てます。
イエーイ。

2001/12/07(金) 19:27:33 ヤマナ
タイトル ERECTRIC DRAGON 80000V 今日の気分今夜は留守番
●「ダヴィンチ」

川上弘美インタビューのみならず、黒田硫黄インタビューも載ってますね。わーい。

そしてなにより、万年新人漫画家のワタクシをちんまり、でも誠実に、取り上げて下さった記事に感謝感謝であるのです。身に余る光栄とはこのことかな。がんばらねばいかんね、ホント。

石井聰亙監督「ERECTRIC DRAGON 80000V」(2000年)

浜松でのレイトショーで観てきました。ウワサに違わぬ激走バカ映画で、非常におもしろかったです。

幼少時の事故によって超能力を身につけた男。その力はあまりに激しく、自分自身にもコントロールがきかない。溢れ出る力によってしばしば暴走する男を救ったのは唯一の親友だった。
力にうなされながらも、平穏な生活を営むべく日々努力する男。そんな彼の前に宿命のライバルが現れる。ライバルの挑発にいらだちつつも、親友の力を借り、男は心を静かに保とうとする。
だが、ライバルはそんな男の大切にしているものをあっさりとふみにじり、男はついに怒りを爆発させる。そして二人は宿命の対決へといたるのだった…!!

とまあ、お話の骨格だけ抜き出せば少年漫画のスタンダード的な作品なのですが。轟く爆音で!メタリックな画面で!特異なキャラクターで!迫力の描き文字で!熱血のナレーションで!空飛ぶギターで!輝く仏像で!爬虫類で!電波で!とにかく色々で!ディストーションかけまくって歪めて壊して、なんだか見たことない世界を展開してくれます。一時間程度の短い映画なのですが、これ以上見続けたら脳が壊れるんじゃないかってぐらいの爆走っぷりでした。

とりあえず「電気と感応し爬虫類と心を通わせる男!!竜眼寺盛尊(りゅうがんじもりそん)」!!「電気を修理し怪電波をキャッチする謎の男!!雷電仏蔵(らいでんぶつぞう)」!!という異様に熱い人物設定にちょっとでも心惹かれた方は観て損なし!の映画だと思います。特撮ヒーローものがお好きな方にもけったいなバリエーションとして案外ヒットするのではないかと!あ、さすが「ユメノ銀河」の監督らしく、静的なシーンの不気味さも非常にええ感じでありますよ!
この映画の紹介には「!」を使いたくてたまらなくなりますな!しかし!

2001/12/11(火) 20:36:11 とりこ
タイトル 鳥類学者のファンタジア 今日の気分めっきり寒いですね

奥泉光「鳥類学者のファンタジア」(集英社/2001年)

注意:本の厚さにびびってはいけません。

出だしはやや硬い雰囲気ですが、明らかに婦女子におススメしたい作品です・・・フツウのミステリかと思ってるヒト(※例えば自分)はユカイな裏切りに遭います。

ネコ大活躍な音楽モノ(「ネコ弾きのオルオラネ」)を先日ご紹介しましたが、この本もまたネコ大活躍な音楽モノ。
「グリンプス」もご紹介しましたが、これまたかぶってます。
でもそれ、全然問題じゃないから。

「とりこ」であるアタクシは、さぞかし鳥が・・・と期待してたら、
答え:全然出てこない。
(※さあどうかな?)
出てくるのは、ちょっと斜に構えた、ものぐさ気味の女酒飲みジャズピアニスト。

主人公フォギーの一人語りで物語は展開します。しっかしこのフォギー女史、ハゲシク無駄話をする傾向が・・・。筋だけに削ると、もしかしたら3分の1位になっちゃうのでは。
ただしこの無駄話でもって、彼女が何を考えているのか大変よく判るので、大層親しみが湧きます。てか、気づいたら読者はフォギーの味方になってると思う。
「さすらいの女バッパー」我らがフォギー、ひねてる癖に情にもろくて、素直になれない照れ屋さん。
酒飲んで啖呵切って無茶すんの。
何だかんだいって本番に強いでやんの。
ああお姉さまかっこイイ…(はーと)

奥泉作品って今回初読でしたが、全部こんなにも饒舌なのでしょうか…正直、初め戸惑いました。読みづらいように思ったし。
でも慣れてくると(※ワリとすぐ慣れると思います)、茶目っ気に思わず「奥泉センセイ!」(黄色い声援)ってカンジ。頬が緩みっぱなし。だっておかしいんだもん。
・・・やっぱ婦女子向けかも。

ステキビジョンが見えるのもいいです。イメージイラストのネタに事欠かないと思う。ピアノ宙吊りってだけで(そういうシーンがあるのだ)もう充分スゴイと思うんですが、更に凄いイロイロが。例えば、・・・やっぱ読んで驚かなきゃ勿体無いな。まあ、イロイロ意外スギます。
実はホラーとしても成立しえたお話だと思います。
SFファンが喜びそうな絵も沢山ある。
宮沢賢治ファンあたりなんもいいかも。

ケプラー爺さんホカ、魅力的なサブキャラも沢山。
きっとイカちゃんも楽しめると思うな。シゴトに余裕があるときにでも、読んでみてね。

2001/12/12(水) 21:52:26 とりこ
タイトル 傭兵グランド(3) クレイジー・ウォー 今日の気分手袋買いました

●岡本賢一「クレイジー・ウォー」・・・朝日ソノラマ文庫/2001年
(シリーズ既刊「ゴーストエリアQ」「アンデッド・レディ」)

シリーズものの3巻で、一応「第一部・完」(後書きによる)だそうです。
イカちゃんの強烈プッシュがあって読んだのですが、
うん!面白いです!

主人公の傭兵「死神グランド(百戦錬磨のエリート兵士。多少旧型だけど。)」が、とにっかく、カッコイイ・・・。
冴えたアタマと無謀さでもって、一人で大勢を相手に生き残る、その様といったら。

サイボーグ兵士はサイボーグなので、脳さえ無事ならどんなに壊れても修復可能(※おカネはかかるけど)と言う設定。
だからって、幾ら何でも主役がここまで毎回ボロボロで、いいのかなあ・・・
「今、動かせるのは左腕と口だけ。」
「左の聴覚と、嗅覚は生きてる」(本文引用)
そんなのばっかり。
でも実は、案外それもまたステキかも…(あれ?)

ニヒルで情に脆く、弱い者や女子供を放っておけない。
「ブラピに似てる」そうです(本文による)が、アタシ的にはもうちょっと苦みばしった印象かなあ。
「脳内キャラ」(人工頭脳のOSに常駐する、電子キャラ)のエレンがまたかわいくて。
まさにココロの恋人。
(??)

ネタばれを避けつつムリに言えば、
1巻・・・グランドのカッコ良さを堪能しましょう。
2巻・・・そんな彼の過去が絡んだ愛憎劇(おおっ・・・)、
3巻・・・最もSFっぽいかな??
どれも面白いですが、ヤハリ3巻…ああ、でもどれも捨てがたいな。
2巻と言えば、敵役のお姉さん、ではなく「お姉さんに反応するグランド様のご様子」に、女子な自分は萌えでした。(笑)

3巻のラスト・・・私コレ系、弱いです。ヤバい。
これで終わりは惜しいと思います。
それに、こんな美しいまま、幕、なんて、ちょっとズルい・・・なーんて。

周囲のグランドファンは女性ばかりですが、今回、男性支持者のお声を発見しました。
わーい。心強いです。
この方は、マウスやノイズがイイと仰いますが、
・・・世の中、萌えにもイロイロあるのですね。何やら不安になってきました。萌えポイント、見落としたかしら。
じゃあ、も一度読み直さなくてはっ♪

それにしても、アップルパイ食べたくなるなあ…。

2001/12/16(日) 13:01:42 とりこ
タイトル 放課後退魔録ロストガール/それゆけ薔薇姫さま! 今日の気分腹をこわし中

●岡本賢一『放課後退魔録ロストガール』・・・角川スニーカー文庫/2001年

ええい、もう岡本さん祭り・・・6月29日のイカちゃんのおススメです。
イカちゃんお見立ての通り、魅力的な妖怪に大喜びのワタシです。

スピーディな展開(?)とか『蓄積率75%』とか、これがゲーム系ってモノか・・・結構新鮮でした。
「遊天」がいっそ男子だったらアタシ相当萌え萌えかも。
女子な今でも萌えてますが。
(邪スギ。)

「途方に暮れるオチ」って、OGの正体?
アタシ的には大いに喜んでたんですが・・・(ダメだこりゃ)

今、続刊出てるよね。チェックせねば。


岡本賢一『それゆけ薔薇姫さま!』・・・ファミ通文庫/2000年

先日Xmasパーティを開きました。
持ち寄った本をカードゲームで奪い合いました。
その中に、この「薔薇姫さま」が・・・
「はっ!」キラーン(目が光る・とり)

(読了)
う、肝心なトコ全部「検閲」じゃないですか(オイ)。

「ウワサのジェンダーSF」その実体は、宇宙最強の美女・薔薇姫さまが、お供の眼鏡っ娘と二人してステキ男子を××たり●●●な目に遭わせ、「恥ずかしい写真を暴かれたくなければ言うことをお聞き!」と。
そういうアレがナニな・・・スペオペ・・・かな?

成るホド京フェスにて、某M先生が「早く壁を超えて欲しい」と仰っておられたの納得かも、でした。
「まだまだあーっ!」(by薔薇姫様)
(笑)
まあ、「この本より更にえげつないものをお書きになる岡本さん」を、自分は本当に見たいのか・・・どうかな・・・
(複雑な乙女ゴコロ・・・)

「検閲箇所は、『パラドックス傑作選・SFスナイパー』
(SMスナイパーと同一版元のミリオン出版)でご確認下さい」
(後書きより)
・・・私の住むC市の中央図書館、検索によると、この本所蔵してるのです。

何故??

税金で買ったのか寄贈でしょうか・・・
これ買ってくれるならしゃーない税金も払うか。
寄贈なら寄贈者は偉い。受け入れた図書館は何を考えてたのか。はあまり考えたくない。そのまま何も考えないでいて欲しい。ぜひ。

岡本さんの名前で検索する度に引っ掛かってくるので、前から気になってました。
中を知った今、ますます読みたいような・読みたくないような。

2001/12/23(日) 01:45:36 とりこ
タイトル ポール・オースター「幽霊たち」・他(その1) 今日の気分(前編)

●ポール・オースター「幽霊たち」・他

※今回は2本立てで、こちらは前編(?)です。

オースターの新刊「ミスター・ヴァーティゴ」出たようです。
「初のファンタジー」だそうで、楽しみです。
とりあえず今回は、80年代作品をメインにご紹介してみますね。

代表作と呼ばれる「ニューヨーク3部作」(「シティ・オブ・グラス」「幽霊たち」「鍵のかかった部屋」)は、どれもたいへん読みやすいです。
ミステリ形式で、探偵が出てきます。

色や温度のない、透明感のある文章で、主人公たちは非常にぐるぐる考えてます。読みはじめた頃はその両立がフシギで、非常に新鮮でした。
だって、淡々とした文章で、「考えすぎ」という超ウェットな言動が描かれてるのだ。
主人公達、妄想に陥るまで淡々とぐるぐると考え過ぎてます。
精神病じみてても、重くなく、暗くない。エレガント。エレガントにぐるぐる。

「ココロに巧妙に蓋をして、見ずに、気づかずに幸せに暮らしてきたのに、ある日、ふと綻びが…」
という物語(「春にして君を離れ」/A・クリスティ/早川/1923)がありますが、オースターのNY3部作では、
「そんな羽目に陥りそうになったら、素早く上手に回避して、済ませて」きた、「ごく、健康的な人々」が、
自分の内面の中に潜む、闇やら不安やら、要するに「こわい考え」になってしまうタネみたいなものに、正面から向き合わざるを得ない、といういやーな状況を、淡々と描いてあります。
なかなか心地いいです。

シンプル/モダン/シュールで、幽かにユーモア/怖さも感じさせる「幽霊たち」が、ワタシは1番のお気に入りです。
「白」を強くイメージさせられます。
不思議に若々しい印象で、ラストも、またいい具合です。

淡々度のMAXを「幽霊たち」とすると、3部作のトリ「鍵の・・」を含め、「孤独の発明」「鍵・・・」「ムーンパレス」の3冊は、淡々としつつも大きなカタルシスを伴う、アツく青春っぽい作品だと思います。
読んでいて、涙が沢山出てきます。

(ニューヨーク3部作)
・「シティ・オヴ・グラス」(1985)…山本楡美子・郷原宏訳/角川文庫/1991年
・「幽霊たち」(1986)…柴田元幸訳/新潮社/1989年
・「鍵のかかった部屋」(1986)…柴田元幸訳/白水社uブックス/1989年

(後編(?)へ続く)

2001/12/23(日) 01:50:49 とりこ
タイトル ポール・オースター「幽霊たち」・他(その2) 今日の気分(後編)

※今回は2本立てで、こちらは後編です。どうぞ前編よりお読みクダサイ。

沢山泣いたあとって、静かでクリアな気持ちが訪れるものですが、オースターのカタルシスは読者をきちんとそこまで連れて行ってくれます。
だから、読後はハッピーですらある。
「ムーンパレス」のラストはそれがホントに顕著です。
透徹した目、哀しみを突き抜けた場所。
心打ちます。

ただ、カタルシスを伴う物語って、良くも悪くも読後「スッキリ」してしまうと思う。読んで気が済んじゃうというか。「何も解決していなくても、それでいいんだ」ってキモチになるというか。
(※スッキリするために読むのもとても大事だと思うので、どちらが優劣ってハナシじゃないです。念のため)

そんな「ムーン・パレス」の、続編のような「偶然の音楽」は、
1:寓話っぽさ
2:魅力的な人物造形、&読みやすさがもたらす、ある種のムード
3:1&2を残酷に裏切りながら、ヤハリ淡々と物語が進行する
お話です。
悲惨系というか徒労系というか。

硬軟で分けると、オースターって、明らかに「軟」です。
語り口は。
でも、「軟」と言えども「最後の物たちの国で」は多少とっつきにくいかもしれません。
仕事帰りのワタクシは、冒頭、3度ほど寝ました・・・(情けなや)(汗)

中盤〜ラストはなかなかドラマティックで、出だしでこけた方(いるのか?)は、50ページ位まで頑張るといいかも・・・その辺から物語が流れ始めているような。

「出だし」に顕著な寓話性がとても魅力的です。
生き抜くための職業=ゴミ収集、マストアイテム=ショッピングカート(ゴミ運搬に使用)、日に日に壊れ行く世界、相変わらず不思議に淡々としたムードが、ここでは怖さに繋がってます。
そう、怖いのだ。
女性が語り手なので、ブキミさは「アンネの日記」のようでもある(※全然違うけどさ)。

「淡々」だけは一貫ですが実は毎回違うので、「コレとこれは似てるから」っておススメもしにくいなあ。
今回は散漫なレビューで申し訳ないです。
新刊「ミスター・ヴァーティゴ」読んだらまたご報告するね。

・「孤独の発明」(1982)・・・新潮文庫/1991年
・「最後の物たちの国で」(1987)・・・白水社/1994年
・「ムーン・パレス」(1989)…新潮文庫/1994年
・「偶然の音楽」(1990)・・・新潮文庫/2001年
(※訳はすべて柴田元幸氏です。)

2001/12/23(日) 19:33:09 とりこ
タイトル ‘75年日本SFベスト集成/ベルセルク(22) 今日の気分次はサムライ・レンズマン

‘75年日本SFベスト集成・・・筒井康隆編/徳間文庫

先日73年版をご紹介しましたが、翌々年版です。
相変わらず「何でもアリ」で、前回はジャンプに掲載されたますむらひろしのデビュー作やら諸星大二郎やら載ってましたが、今回は手塚のブラック・ジャックが載ってた。しかしそんなんは大してどうでもいい・・・だって、驚かないでしょ。

冒頭、見慣れない作家と思ったら、TV雑誌の読者欄の投稿モノ(誰も名乗り出ず、「秋野鈴虫」というフザけたPN以外、不詳)・・・なんじゃあそりゃあ。
安部公房のエッセイ「藤野君のこと」とか、有名な半村良の「ボール箱」とかも載ってます。そっか75年てそういう年だったのか・・・。

勿論、社会背景を含め新鮮味は失われた部分もあるかも(「藤野君」も「ボール箱」もBJも、既読だし)。
でも、編者のセンス―いやあのね、直裁に言っちゃえば、筒井氏が読者をビックリさせようと思っている、その「やる気」がスバラシイです。一般的に見てSFっぽいかどうかなんて蹴っ飛ばして、解説を力強く語んの。自信満々で。
心地いいです。方向性がハッキリしてて、実におもろい。

解説が全部巻末で、本文がだーっと続く構成(当然扉もない)も、スッゴクいいと思います。皮が薄く実沢山なお饅頭っていうか。あんこ山盛り。

かんべむさし「サイコロ特攻隊」山田正紀「襲撃のメロディ」堀晃「暗黒星団」そして石川喬司「小説でてくたあ」←特にコレ。63年からSFマガジン誌上で連載されてたSF文芸時評のダイジェスト。鼻血。不勉強な私はたいへん新鮮に読みました。
うう、25年も昔の本なのに。
相当面白いです。


三浦建太郎『ベルセルク』(22巻)・・・白泉社/2001

うっふふー。待望の新刊です。
グリフィス様、お美しいですホントに。

今回お話はあまり大きく動かないですが、「グリフィスとガッツの関係性」に萌えの女子(いや、男子でもいいけど・・・)は必見なシーンが。
丁度雪の場面なんで、タイムリーに寒くてイイカンジかも。
ファルネーゼ様とセルピコ(美味しいトコ取りすぎるキャラだけど、でもやっぱセルピー、ラヴ!ですよねえ?)のエピソードもある。
うっふふー♪


●予告(?)
『サムライ・レンズマン』
あーえーもー、おもろいです。
ホンットに。
今夜、頑張って書いちゃおうかな〜〜(書けなかったらゴメン)

2001/12/24(月) 01:29:35 とりこ
タイトル サムライ・レンズマン 今日の気分日の丸ハチマキってのもまたいいんですわ

古橋秀之『サムライ・レンズマン』徳間デュアル文庫/2001

「ナゼ今レンズマン?」って思いました。「タイアップした何かでもあるの?」とか。(まあ、新訳が出るらしいですが)
今は「そんなん別にどうでもいいや。」って思ってます。
こんだけ面白けりゃ何だっていいや。

読みながら顔ゆるみっ放しでした。読み途中で色々家事やったり。読了を引き伸ばす作戦。この世界を終わらすのが惜しくって。

イカちゃん、原作未読でしたっけ・・・米国の昔懐かし(50年代)スペオペシリーズで、作者(E・E・スミス)はとっくに故人。既に別作者による「正統後継」も結構メジャーです(邦訳も出てるし)。
銀河パトロール隊員の中でも特別な人材だけが「レンズ」を授かって、レンズマンとなる設定で、「銀河」だから、当然レンズマンも地球人型とは限りません。色んなレンズマンがいるよ。
面白いのよ。

作者の古橋さんは勿論日本人ですが、彼の装って描く「海外の眼から見た、日本的エキゾチシズムのカンチガイ」のいい具合ぶりは、日本人たるアタクシに二重の萌えを起こさせるのでした。日本人としてはその間違いに萌え、その上その間違ったカッコ良さにシビレ。

原作ファンサービスも満点です。コアな読者でない私でも、キニスン氏(原作の主役)の扱いは相当嬉しかった。&この懐かしい面々・・・冒頭の指差しゼスチャー!この懐かしいアホさ加減!
若手新米レンズマンを物語の冒頭に配するのも、この手のスぺオペの定番パターンを踏襲してて良し。独白の強調部にボールドかかるのも実に翻訳調で良し。
敵方のキチガイもステキ。『ブラックロッド』の古橋健在、な言語感覚で、読んでて快感です。
「ハハハ死ね死ねハハ死ね死ね死ね死ねハハハハハ!!」

原作のよさ(主に、豪快さ。)は変わらずに生きてて、その上原作にはないステキ大暴れが加味されてます。原作知ってても知らなくても文句ないハズ。と思う。
ヒロインとサムライの絡み(コレが主に新しい要素なんですが)が(新味なのに)ある意味古典的で、絶妙にマッチしてて、読んでて燃えます。
乙女ゴコロ大ヒット。

似非アメコミテイストな沢山の挿絵も、とても楽しめました。とりあえず今は、岩原さんの絵以外に考えらんない・・・

パーティー会場の「アトランティック」号って「タイタニック」号でも良かったんじゃ(それじゃ煽りスギ?)


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