SFセミナー2002・本会企画レポート

●本会企画(1)「SF入門というジャンル」

出演:川又千秋、巽孝之、牧眞司、小谷真理 / 司会:野田令子 (敬称略)

スライドを用いた「既刊の入門書」の解説と、「SF入門」というジャンルについて語られる企画でした。そうか・「入門」もジャンルだったとは。

スライドがメガネ有りでも全然見えず、出版社・タイトル・作家名の読み上げがあると嬉しいなあ、なんて思いました。或いは、紹介本の書誌データプリント配布、とか。 でも、自分の視力低下にも愕然。使い捨てコンタクト購入とかちょっと真剣に考えようと思いました。こりゃやばい…

裏話がいろいろ聞けて、楽しかったです。「54名の著者全員にサインしてもらうと物凄いサイン帖になる!」との小谷真理氏の発言に、「ソウカ!」と思い、「SF入門」(日本SF作家クラブ/早川書房)を会場で購入しました。(つまり、あのトークで少なくとも一部は売れたわけです。)

で、サインは、一つも増えなかったです。(そんなもんです。…トホホ。)


●本会企画(2)「かめ、くらげ、たぬき、北野勇作」

北野氏の華麗なる経歴が明かされるのでした。生半な追随を容易には許さぬであろうその生活(年収X00万とか)。聴衆は総じて「真似できません。できっこありません。かないません北野さん」とか・思ったに相違あるまい。

創作落語で、入賞(賞金10万円)とのことです。それ、凄く読みたい…

「で、FTノベル大賞を見事獲得なさって。」「そうそう、職場にデンワかかってきてん。」「職場の方、驚かれましたでしょう?」「いや誰も知らんねん。ファンタジック・ノーベル賞? なんやそれ、北野さん何や発明したんーてなもんですわ」
ファンタジック・ノーベル賞…ナニヤラ北野作品にフィットするネーミングではありませんか。

下手に北野作品のナゾが解けてしまうと、雰囲気を壊しやしないか、勿体無くないか、なんて心配は杞憂でした。司会の尾山さまともども、すっとぼけた愉快トーク、とても楽しかったです。

「俺にとっての創作とは? 遊びや。小説を書くのは、一番面白い遊び。」
さらりと一言。印象的でした。


●本会企画(3)「立ち上がれSF新レーベル! 編集者パネル」

小浜徹也氏(東京創元社)を司会に、現役編集者の方々のナマのお声を伺う事が出来ました。印象に残った発言を、幾つか纏めてみます。

■大野修一氏(徳間書店/ デュアル文庫/アニメージュ/SFJapan各編集長を兼任

「持(自?)論ですが、SFって、思春期小説でしょ。世界なんて滅んじゃえ!って時期の、逃避文学=SF。
ただ、FTやキャラクターノベルだと別世界(逃避世界)に行きっ放しになっちゃうけど、SFは、戻ってこなければならない構造性を持つ。アンタが壊したかった世界って何なの? という問いかけ、そういうものがSFにはある。だから若い世代に読んでもらうのはSFがいい、そう思う。かつてSFが果たしていた役割、機能が今は生かされていない、という思いが、かつてSF読者だった自分にはあります」

Q:「デュアル」の発刊について/SFと冠さなかったのはナゼ?
「自分はSFを読むことで救われたが、SFだけを読むことが育つことに繋がるとは思わない」「ばらばらのラインナップになってはいるが、一方で、限定しない大きな振幅を持つことで色々なことができる、やりたい」
「好きな作品にカッコいい絵をつけて出してみたかった。」

「徳間のジャンルを金かけてさらったのは角川、『ニュータイプ』なんかに持ってかれた、って悔しさはあります。種まいたのは徳間だ、って思いがありますね」と、大野氏が隣りの席の中津氏(角川)を、横目で睨む一幕も。

■保坂智宏氏(祥伝社/400円文庫編集担当

「近頃は売れるもの−やたら売れるものと、売れないものの売れなさ加減、貧富の差が激しくなっているね。まあ、売れるものを読んでみると、かなりな(広い層の)人が読んで楽しめるようになっているようですが。
でも、自分の若い頃は、小説読者、本を読む人間として、隣りの人と同じものを読んでていいのか? というのがありましたね。人より先に、人と違うものを読む、という快感。そこに、本という商品の特殊性がありましたし。
そういうのって、今はどうなの、と思いますね。」

■塩澤快浩氏(S-Fマガジン編集長)

Q:Jコレクションの立ち上げについて
「SFは氷河期だ、という評の出るような風潮の中、FTノベル大賞出身の高野史緒さん、ホラー大賞出身の小林泰三さんら、他分野の受賞者を入れるように」「今SFはどうなっているのかを呈示する為にも、2000年度から『SFが読みたい!』を出したのですが、特に初回は、国内ベストに挙がって来るのは当然ながら他社の本ばかりで、悔しい。という思いはありました」

「普通の人が読んでも読めるSFを作ってくださいね、という意見を聞くが、本当に、本当に、そうなのか?」(うーん。これは難しい問いです。)

■中津宗一郎氏(角川春樹事務所/ヌーヴェルSFシリーズ編集担当

「『星界の紋章』のヒットは象徴的で、コレはSFの中央に位置しつつ、今までは拾い切れなかった読者を拾っていると言う印象があります。」

※発言の順序が、時系列的に一部入れ違っている箇所があります。ご容赦下さい。


●本会企画(4)「小説の可能性を求めて―奥泉光インタビュー

初めて目にする奥泉氏は、機知に富んだ、話芸達者な方でした。エンタテイナー、挑戦者としてのご自分の立位置、ご自身の「仕事の領域」に対し非常に自覚的でおいでで、明確に整理された論の展開、「どうせなら明るくて楽しいほうがいいでしょう!」という方向性は、聞き手を安心させる、気持ち良く嬉しいものでした。

「例えばね。私が今日御茶ノ水駅に立ち。そして、6万5千年経った。
と書く、物語の中では、それが実現可能なわけです。
語りが自在に時間を超えていくのはむしろ自然なことだよね。言葉というのはそうしたものでしょう?」
このように奥泉氏は、自分は自然主義である・と主張なさるのでした。
「自在に時間が動いていくことは、一方で読者に不安も与える。その時、SFである、という仕掛けがあることは緩衝材となりうる(まあ、消極的な使い方になってしまうけれども)。」

「ワープロの発明は、作家にとって決定的にチガウものだね。徹底的に書き直すことが可能になるからね」

「エンタテイメントは、安心を提供するものである。純文学とは、小説の持つ可能性を拡張するものである。
人間は言葉で思考する。思考にコトバが必要である以上、小説はもっとも世界の拡大を行うに易い方法である筈だ。小説は言葉で出来ている。」

SFというジャンル(に限らず、ミステリにせよ)の持つ「小説を面白くする様々な技法、イメージ」にご興味がおありとのことでした。
「今まで誰も見たことがない、まったく新しい風景を生み出せるジャンル=SF。しかし、それ(を考える事)は自分の仕事ではない。自分の仕事はWhatではなくHowの部分にある。新作、新しく小説を書くとき、まず8割は文体について考えている。」
「テク(技術)は新しいのに、描かれた未来社会に出てくる人間が古いSF、あれは、読んでいて淋しいねえ。」

鈴木力氏によるインタビューは「鳥類学者のファンタジア」(※)を核としたもので、面白かったです。しかし奥泉氏はマジメ系な質問をエサに、自分ストーリーへとぐんぐん羽ばたいてゆかれ、話題を振った鈴木氏が、舞台の上で予期せぬ答に目を白黒、といったステキ展開も、しばしば。
「前作と併せ、ネコ3部作とも言えますが…」 「ネコはね、神秘性の記号として便利なのよ。イヌじゃあダメだねえ。イヌは神秘じゃないよ。」

純文学とエンタテイメントの差異についてのコメント、曰く 「発表媒体と編集者が違うね。」 …会場みんなが、ファンになったと思います。

8月から朝日新聞朝刊にて、連載小説のご予定があるそうです。
構想等はまだ未定とのことですが、うーん、非常に楽しみです。

※SF大賞の候補になりました。



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