つれづれなるマンガ感想文9月前半

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一気に下まで行きたい



・「おしゃれ手帖」(1)〜(9) 長尾謙一郎(2001〜2005、小学館)
・「でろでろ」(1)〜(3) 押切蓮介(2004、講談社)
【雑誌】・「ウォーB組」10月号(2005、マガジンマガジン)
・「喰いしん坊!」(3) 土山しげる(2005、日本文芸社)
【テレビ】・「ハロー! モーニング。」(2005、テレビ東京)
【映画】・「チーム★アメリカ ワールドポリス」 監督:トレイ・パーカー、脚本:マット・ストーン、パム・ブラディ(2004、アメリカ)
【映画】・「魔法戦隊マジレンジャーTHE MOVIE インフェルシアの花嫁」 監督:竹本昇、脚本:前川淳(2005、東映)
【映画】・「劇場版 仮面ライダーヒビキと七人の戦鬼」 監督:坂本太郎、脚本:井上敏樹(2005、東映)
【映画】・「亡国のイージス」 監督:阪本順治、脚本:長谷川康夫(2005、日本)
・「バキ」(28) 板垣恵介(2005、秋田書店)
【雑誌】・「週刊少年ジャンプ」40号(2005、集英社)
・「刃(JIN)」 9/15増刊号 Vol.16(2005、小池書院)
【テレビ】・「ハロー! モーニング。」(2005、テレビ東京)
・「マンガ嫌韓流」 山野車輪(2005、普遊舎)






・「おしゃれ手帖」(1)〜(9) 長尾謙一郎(2001〜2005、小学館) [amazon]

ヤングサンデー連載。70年代末くらいの清純派感覚の少女・小石川セツコと、その家族、クラスメイトたちを描いたギャグマンガ。

当初、何となく語彙の選び方とかが天久っぽいな〜と思っていたのだが、まとめて読むとものすごく面白いし、思いつきに近い発想のスタートダッシュで逃げ切るような作風、しかも同じキャラクターを使った作品で5年も隔週連載を続けているというのはスゴイことである。

5、6巻当たりで少し路線が変わり、無意味なんだけど笑いに直結しないような話が増え、新キャラも旧キャラのバリエーションみたいな感じの人が出てきてどうなるのかと思ったのだが、7巻くらいからそういうパターンをも巻き込んで一回り面白くなった感じである。

天久聖一とのもっとも大きな違いは、本作のエピソードのほとんどが徹底して個人の妄想だということだろう。だれかキャラクターの一人がメインの回でも、そのキャラの妄想だけで終始するパターンが圧倒的に多い。
だから読んでいてせつなくなってくるというか、夕焼けを眺めながら一人トボトボ歩いていくような気分になってくる話もある。ここまで徹底的に各キャラクターが孤独、っていうのは他にそうそうなんじゃないかなあ(ケンタウロスの旦那を持つずうずうしいおばさん除く)。

セツコの担任の先生と、セツコの母親の浮気相手の黒人がお互いの孤独を抱えて出会うというような話もあるけど、どうなのかなあ。個人的にはそれぞれが徹底して自分の孤独に埋没していき、それがギャグに昇華されるようなのが読んでみたいんだが。

それと、当初は受け身だったセツコがどんどんツッコミキャラになっていくのが面白いのと、80年代キャラみたいのが原宿をリポートする話がものすごいツボに入ってしまった。
(05.0914)



・「でろでろ」(1)〜(3) 押切蓮介(2004、講談社) [amazon]

別冊ヤングマガジン、週刊ヤングマガジン連載。霊感体質らしいヤンキー少年・耳雄が出会う奇っ怪な妖怪の数々をユーモラスに描く。

3巻までの段階で、巻末解説にほとんど書くべきことは書かれており、まあ有名な作品なので「何を今さら」と思われるかもしれないが面白い作品なので感想を書いてみる。

まず怪奇もの、ホラーをベースにしているが、底流にはそうとうハートウォーミングな何かが流れていると感じる。「実はちゃっかりしてました」、「とてもドライです」系のギャグに飽き飽きし、さらに寒々とした気分を味わっている人は読むがいいだろう(偉そう)。

余談だが、最近漫才をテレビでよく観るのだが、みんな「本題に自然に入るにはどうしたらいいか?」だけでもたいへんに苦労しているのがわかる。それだけ構成を練っている。
キレイな女の人やかわいい女の子がとつぜん悟りきったことやザンコクなことを言う、なんていうギャグをいまだに繰り返しているマンガ(まあそれが面白ければいいんだけどね)は、恥ずかしいと思ってないのだろうか。ギャグの世界でもマンガは他ジャンルにじりじりと水を開けられているのではないか。

話を戻す。ヤンキーで口より手が先に出る耳雄だが、妹の留渦と飼い犬のサイトーさんはとても大事にしている。突き放してみれば、ヤンマガに載っている関係上、ヤンキーキャラと萌えキャラを両方出しているというようなことも書けるが、主要キャラ2人と1匹がちゃんとキャラ立ちしているのだから何ら問題はなかろう(というか、サイトーさんはカワイイです)。

古来からの妖怪には「風呂場のあかをなめるあかなめ」などの、生活に関係するものが多い。本作では、現在日常でありそうな出来事に妖怪がからんでくる。それは「あるあるネタ」と妖怪との融合、というか、そもそも妖怪自体が「あるあるネタ」と親和性の高いものだと言うことに気づかされる。

また、たいていの作品で耳雄のゲンコツによって決着が着けられているのも爽快だ。
もちろん、それは前述のとおり耳雄が、目つきは悪いが妹思いで動物好きで、ときには妖怪にも同情するようなキャラクターだからこそ許されていることである。
個人的には単行本第2巻の、「名作劇場で不幸な目にあっている少女をテレビの中に入って助けに行く」奇っ怪の18 不幸少女ローラと、同じく第2巻の、インターネットのゲームで自分の正体がわからないことをいいことにヒドいことを繰り返すヤツを懲らしめる奇っ怪の25 神の左手を持つ男がケッ作だと思った。
両者とも、「あるあるネタ」を超えて「♪こんなこといいな、できたらいいな」の世界なのだが、そういえばしばらく我々は藤子・F・不二雄の新作を読んでいないのに気づくのである。

また、作者がハートウォーミングな感性を持ち合わせている点からも、Fの後継者の一人になれるかもしれない、ということも。
(05.0914)



【雑誌】・「ウォーB組」10月号(2005、マガジンマガジン)

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巻頭は橋本愛実[amazon]。ぜんぜん知らない人だったけど、もうDVDは5、6枚出してんのね。

野田ゆうじ「ぼくとすずなのいた夏」は、第39話「純愛STORY」。
姉がロシア関係の秘密結社かなんかに拷問されている頃、ケンイチは同級生の美果とラブコメ中。
「今夜、泊まっていっていい?」、「シャワー、先に浴びてくるね」みたいな展開。

他にはマンガとしては児島未生、杉友カヅヒロ、ぐれいす。
次号は10月8日発売。

先月号の感想

(05.0912)


・「喰いしん坊!」(3) 土山しげる(2005、日本文芸社) [amazon]

週刊漫画ゴラク連載。ハンバーガー早食い大会に向けて、胃袋の調整に余念のない満太郎。予選であるおむすびの大食いにもかろうじて勝ち残る。そんなとき、以前に大食いで負かした相手が改心、近づいてきて……?

今、いちばん読んでてニコニコできるマンガなのではないかと思う。もはやラーメンづくりだとかのグルメ系マンガは、不景気とそれに反比例して隆盛している(かどうかは知らないけど、そのように見える)外食産業を見ているとなんだかホロニガな気分になってくるのだが、「喰う側」、しかもそこに大食いという競技性を加えることでどこかカラッとした仕上がりになっている。

「大食い」のいい意味での無意味さを、真剣に、かつエンターテインメントとして非常にうまく料理していると思う。それと「美味しく食べるところを見せる」というグルメマンガのノーハウが活きていることも、忘れちゃならねェ。

ところで、「ハンター錠二」は明らかに大食いの「皇帝・岸義行」がモデルだと思うんだけど、岸さんのサイトって今ないみたいね。検索したけど出てこない。「きれいに美味しく大食いする」という主張も、ずっと前にBUBKAの岸さんの連載で読んだものなんだけどなあ。取材協力みたいなクレジットもないし。謎。

2巻の感想

(05.0912)


【テレビ】・「ハロー! モーニング。」(2005、テレビ東京)

9月11日放送分。

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飯田、亀井、久住がパンチ佐藤と、富士サファリパークかなんかでデート

「ごきげんよう」において、「仕事から帰ってきたとき、中学一年の娘が目を合わせて挨拶しないと、自分は激怒する。二回まではガマンしたが、三回目でブチ切れた」と、ギョロ目で父権礼賛トークを繰り広げたパンチ佐藤。
今日はそんなパンチ照準で見たいと思います(半分くらい想像が入ってます)。

まず冒頭、時間どおりに来た飯田、亀井、久住を「遅い遅い! 待ち合わせ時間には30分前に来なきゃ!」と軽く体育会系なテイ(ははは、今流行の言葉を使っちゃったよ私)で叱るパンチ。
当然、生まれてすぐみたいな亀井、芸能界に入ってすぐの久住は「はあ?」という反応。ASAYANという過酷な番組を体験し、芸能界の「不条理」にさらされて現在の地位を築いた飯田圭織嬢も、「いいわね、プロ野球選手という貯金で芸能界渡っている人は」と言わんばかりの冷たい視線。

「みんな、パンチDEデートって知ってる?」とか、虎が出てきたときには「みんな、タイガーマスクって知ってる?」など、たぶん自分の娘や年下の連中には「知らないなら覚えろよ!」と、体育会系にありがちな「人生の先輩=神」的態度で押しつけてきたであろうパンチも、自分たちが生まれる前くらいのことばかり言われてシラケ気味の女の子たち(もしかして飯田の貯金はパンチ以上!? カンケイないですが)に対してビビり気味。
ディレクターや周囲のスタッフの値踏みするような視線に、目玉も飛び出します。

もっとも、彼らが2チームに分かれてやっていた「指令どおりの地点に行き、変わった動物の前で写真を撮ってくる」というゲームは、素直に「日曜日の昼間」的な面白さが出ていたと思います。動物カワイイしね。ライオンの赤ちゃんもかわいかったし。

さらに調子に乗ったパンチ、「ライオンは我が子を千尋の谷にたたき落とす」と、ガセビアを披露。ナレーションは亀井でしたが「そんなパンチさんのうんちくが……」と、亀井のナレーションを書いている作家さんもメンドクサイのでうんちく扱いにしてしまいました。

パンチ、「群れのリーダーになったライオンは、前のリーダーの子を噛み殺す」くらいのことは言えよ!! まあ言っても全員引くと思うけどね。責任は持たん。

後は焼きそばとか食ってましたが、パンチが焼きそば食っているところを見たいのはおそらく「パンチ病」という病気の人だけなのでぜんぶ早送りしてしまいました。

それにしても、筧利夫もそうですが、ゴリ押しすれば何とかなると思い込んでいるバラエティ芸人は半分くらいに減らした方がいいね。
ダンディ? 私、ダンディ大好きだからあの人はいいんだよ。問題は体育会系的な雰囲気を前面に出した連中だね。後輩のおべんちゃらで自分が面白いと思い込んでいるんだな。やれやれ。村上春樹調で「やれやれ。」

コント。公園通り三丁目。マキエル、ツジエル、石川天使、吉澤悪魔、新垣と三好、岡田のバレー部。
レシーブの練習をして胸を強調しようとする岡田を、天使と悪魔が止めるというくだらなさ全開の台本なんですが、岡田が「レシーブがしたい!」って言って、その後三好も同じことを言いかけるのを新垣が止める、という流れが個人的に最高だったのでよかったです(笑)。

エリック亀造の毎度ありぃ。今週もピンキーさゆみんが司会。あと中澤、紺野。フットサル関係のDVDの宣伝のためにPK合戦をやっていました。グダグダで楽しかったです。
(05.0911)


【映画】・「チーム★アメリカ ワールドポリス」 監督:トレイ・パーカー、脚本:マット・ストーン、パム・ブラディ(2004、アメリカ)

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アメリカの、そして世界の平和をおびやかすテロリストどもはぶち殺す、それが「サンダーバード」みたいな組織「チーム・アメリカ」だ! そして映画そのものも「サンダー・バード」みたいに出てくるのはぜんぶ人形だ!

まずは、劇場で観たときの感想を書こう。
まあアメ公(っつーか監督、何人だっけ? 忘れた)のお下品パロディものだと聞いていたから、「どいつもこいつも皆殺し、これが健全なアメリカだアメリカ万歳!」ってやって、「おいおいそれはないだろう」というツッコミ待ちのギャグ作品だと思ってたんだよね。
そしたら、それは違ってた。きちんとしたプロットがあった。
次に、序盤のストーリー展開やパロディなんかはあまり面白くない。あのなんつーの? 歴代の大統領のでっかい顔の石像みたいなやつ。あそこが基地になってたりとか。そういうのは日本のオタクも自主制作レベルで平気でやってるし、チーム・アメリカのメンバーが戦闘機に乗りつつも痴話喧嘩をしながらバンバン敵機を撃ち落としたりとか、そういうのはちょっと作為的すぎると思ったんだよな。

ところが、中盤あたりから「ハリウッド映画のお約束のパロディ」として実によくできていることがわかってくる。もう本当に、唸るほどうまい。たとえばまあ「ザ・コア」程度の映画の脚本ならいつでも書けるんだぜという人がパロディを書いているという凄さが感じられる。

後でネットでちょっとカンニングしたら、ジェリー・ブラッカイマーというプロデューサー(「トップガン」、「アルマゲドン」、「ブラックホーク・ダウン」、「パール・ハーバー」、「ナショナル・トレジャー」などをつくった)の映画のテイストを直接的にパロっているらしい。私、この人の映画って「フラッシュダンス」しか観たことないや。

で、すごいすごいと感心していると最後に「アレ?」となる。バカの殺戮集団であるはずの「チーム・アメリカ」は、まさしくそのブラッカイマー的な手法によって、「サイテーだけどテロ組織に対抗できるのはヤツらだけ」ということになってしまうのだ。
何かこう、考えさせられてしまいましたよ。

まず、製作者がブラッカイマー的な映画を茶化せたかどうか、なんだけど、
私、ブラッカイマーの映画ほとんど観たことないんで「ありがちなハリウッド映画的なもの」と解釈するとして、果たして本当に「コケにする」という文脈で茶化せたのかと。

たとえば、本作はゲイリーという俳優が、「その演技力を活かしてスパイになってくれ」と頼まれたことからチーム・アメリカと関わることになる。要するに、エリート集団に普通の人(ゲイリーはスター俳優だが、キャラクターとしては普通人に意識が近いことになっている)が関わることによって観る側が物語に入っていきやすいことになっているし、
クライマックスでは一度は挫折したゲイリーが、場末の居酒屋でおちぶれた老人から聞いた言葉を叫ぶことによって問題が解決する(まあ、これだけでは何のことかはわからないだろうからネタバレにはならないでしょう)。
このあたりも「もっとも役立たずが、クライマックスでもっとも重要な役割を果たす」というハリウッド流のベタな展開である。

でも、ここら辺がすごく微妙で、描き方としては突き放しているけど、これで感動してしまう人もいると思うよきっと。
そこが、この映画をかなり微妙な位置に持ってきていると思う。

その後、ネットでざっとカンニングしてみた。
本作は反戦を唱える俳優たちを徹底的にコケにする。反戦俳優たちは全員、血みどろになって死ぬ。金正日は悪人ながらもユーモラスに描かれているが、ハリウッド俳優たちにはあまり愛が感じられない。
どうも、本当に反・偉そうなことを言うハリウッド俳優、をモチベーションにつくられた映画らしい。

そりゃまあね、私も「ハリウッド俳優は自分たちを貴族と勘違いしてるんじゃないのか?」とは思いますよ。日本はそこまで俳優の発言権がなくてまだマシだと思ってるし。
しかし、製作者があらゆるところにウンコを投げつけているように見えて、ブッシュだけは温存し、まさしくブラッカイマー的な展開でチーム・アメリカの存在意義にOKと言ってしまうのは、なんか違う感じがすんだよなあ。
っていうか、本人たちがそのつもりはなくても、結果的にはそうなっちゃうでしょ。
どう観ても。

製作者インタビューをざっと呼んで、「何もわかんねえやつが投票に行く必要はない」という言い分もわかりますよ。「俳優気にくわない」っていうのもわかるんだけど、それをこれだけの技術力と、知力を動員して描くことなのかなあ、という。
まあ、知りませんけどね。アメリカだかどこだかにはそういう「知」のあり方があるのかもしれないけど、どうもねー、やっぱりおまえらインテリじゃん、言葉本来の意味ではないかもしれないけど確かなセンスと技術力を持っているという点でインテリじゃんと。
ときどきこういうことがあるんだけど、「おれたちバカです」っつっといて、でもほんまもんのバカだったら映画なんかつくれるわけないじゃん。そういう「ぜったいバカになれない限界点」をさらしてしまう瞬間というのが「バカに憧れる人」にはあるんですよ。バカは大切だけど、バカに憧れてる人は決してバカにはなれないし、真のバカだったら今のあんたの立場はねェよ、という。この映画はそういうのを露呈してるんじゃないかという気はする。

要するに、ものすごくひねくれた手法でブッシュを支えてるよね結果的に。別に私が反ブッシュというわけでもないし、そうであるべきだとも思わないけど、この映画のようにひねくれた手法そのものが「知」なのだと肝に銘じておかないと、バカだバカだと喜んでいるうちに思わぬことに巻き込まれかねんとは思った。

「バカ」ということで言えば、一カ所だけ大爆笑するシーンがありました。
実は、そのシーンだけでこの映画を愛してもいいと思っています。
(05.0910)


【映画】・「魔法戦隊マジレンジャーTHE MOVIE インフェルシアの花嫁」 監督:竹本昇、脚本:前川淳(2005、東映)

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それにしても、昨年の劇場版の公式ページはアドレスそのまんまで出会い系サイトになってましたよ。単にビジネス的な問題にすぎないんだろうが、ホロニガな気持ちになるのはなぜなんだろう。

さて、お話はマジレッドが密かに恋心を抱いているサッカー部マネージャーの山崎さん(平田薫)が、インフェルシア最強の冥獣人・バーサーカーの王グルームにさらわれてしまうところから始まるんですよ。
セーラー服のままさらわれてしまう山崎さん、グルームに洗脳されてしまう山崎さん、洗脳されて変なインフェルシア調の花嫁衣装を着せられ、グルームと結婚されそうになる山崎さん、とそのテのマニアのハートを鷲掴み!(別に私に「洗脳」のシュミはないですが)

例年どおりの駆け足的な展開ですが、山崎さんがさらわれるシーンから回想シーンに入ってそこからたたみかけるようなスピーディな展開はきっと子供も飽きないでしょう。
また、人間がインフェルシアへ行くためには一角聖馬ユニゴルオンを手に入れるしかない。その馬は天空聖界マジトピアにあるんですが、「ジャックと豆の木」みたいな超巨大な樹木に掴まったまま空へ登ると空中に浮かぶ島々があり、そこがマジトピア。
マジトピアには、マジレンジャー一人ひとりの守護神みたいのがいて、それが空を飛び回って手を振っている、というイメージにはなかなかクラクラするものがありました。まあ、どっかに元ネタがあるのかもしれないけど。

お話もベタでありながらたいへんに気持ちがいい。やっぱり東映の映画ってこうでなくちゃなー、と、まあ個人的には思いました。

・参考
・「特捜戦隊デカレンジャーTHE MOVIE フルブラスト・アクション」 監督:渡辺勝也、脚本:荒川稔久(2004、東映)感想

(05.0910)


【映画】・「劇場版 仮面ライダーヒビキと七人の戦鬼」 監督:坂本太郎、脚本:井上敏樹(2005、東映)

公式ページ

でっかい龍みたいなヤツが海岸に出現、響鬼と明日夢は戦いに向かうが、響鬼は敗れてしまう。龍みたいなヤツを倒す方法を見つけるため、下條アトムとともに古文書を読む明日夢。
そこには自分と同じ名前が書かれていた。かつて、過去にも自分がいて、響鬼がいたのかもしれない……古文書を読み進める明日夢。

江戸時代(だろうな、たぶん)に、同じ龍みたいなヤツが出現し、やはり鬼たちと戦っていたのだ……。

本編まったく観てないんですが、何か脚本家が交代したとか何とかで物議を醸しているらしい。
まあ、私も「井上敏樹には、ジェットマン〜シャンゼリオンと過大評価しすぎたのかも?」と思っていたりもしますが、本作に限って言えばよくできていたと思います。

「七人の侍」のパロディ具合もこれくらいのバランスでちょうどいいと思うし、響鬼と明日夢の関係もきっちり描かれていたし、響鬼はちゃんとヒーローしてましたよ。
個人的には北原雅樹(「グレチキ」という史上まれにみるつまらないお笑いコンビ)と湯江健幸(デビュー当時は吉川晃司っぽい歌手活動もしていた)が出ていたのがスゲー驚いたけど。

・参考
【映画】・「劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE」 監督:石田秀範、脚本:井上敏樹(2004、東映) 感想

(05.0910)


【映画】・「亡国のイージス」 監督:阪本順治、脚本:長谷川康夫(2005、日本)

公式ページ(注意:音が出ます)。

自衛隊のイージス鑑が、あーなってこーなってしまうアクション映画。
まあ、どこをどう書いてもネタバレになっちゃうのでね。

いろんな意味で「ローレライ」(→感想)[amazon]と観比べるという自分テーマが私にはあったんだけど、そういう意味でも面白かったですよ。
確か「ローレライ」のプロットは、映画先行でプロデューサーや監督の意見を採り入れながらつくられたのだと記憶するけど、本作を観ると監督を含めた映画スタッフが原作者の得意とするどこを延ばしてどこを飛躍させたかったのかがわかるような気がして、ちょっとニヤリとしましたね。
で、予想どおり「ローレライ」はかなり冒険をした映画であり、製作者の世代感が前面に出ている映画であり、逆に本作は手堅い娯楽作品という仕上がりでした。

まあ、イージス鑑の撮影が可能なら普通はこっちを映画化するよなあ、という手堅さが本作のプロットにはあるね。「ローレライ」のように、第二次大戦を舞台にして冒険するよりも「北の脅威」という今日的な問題を扱った方が通りはずっといいと思いますよ。
でも、そういう手堅さを選ばずに冒険をした「ローレライ」も私は好きだけどね。

さて、本作単体として観た場合、非常に面白いし、がんばってるとは思うんだけどサイドストーリーの削り方などにどうしてもムリを感じてしまう。
「ローレライ」の場合、あまりに設定が飛躍しているんで許せる部分も、本作ではもうちょっと効率よく削れなかったのかと思う。
原作者の福井晴敏が口出してたとしたら、それはちょっとどうかな、と思う。だれかが勝手にやってんだったらそれはそれでアレだけど。

福井晴敏がらみの映画は「戦国自衛隊1549」[amazon]も含めてこれで3本観たけど、彼は梶原一騎や小池一夫などの劇画イズム〜宇宙戦艦ヤマト〜ガンダムという流れをリアルタイムで経験して身体に取り込み、アウトプットできる最後の世代なんだろうなという感じは強くする。
自身の作品の映像化に強い色気を示しているようだけど、それは戦略的に正しい。こういうプロットを練れる脚本家って、たぶんそんなにいないと思うから。今後も、こういういい意味で劇画的な映画ができればいいなあと思う。

監督の阪本順治は手堅い人なので、ところどころカットがすっとんでるような変な編集の印象がある以外は安心して観られた……とか書いてるけどこの人の映画観るの、10年ぶりだったわ。
(05.0909)


・「バキ」(28) 板垣恵介(2005、秋田書店) [amazon]

週刊少年チャンピオン連載。刃牙の恋人・梢江に惚れたアライJr.は、彼女にプロポーズ。そして刃牙を倒すために渋沢剛気、愚地独歩、ジャック・ハンマーなどと対決する。

正直、まったくダメだと思う。アライJr.が梢江にプロポーズし、刃牙と対立するのはいいとして、作者が本気でそれを描こうとしてないように感じる。こういう「ケンカをやめて」パターンは、当の女性の意志を無視するか、多少なりとも女性が両方に心が傾いていくところを描かなければならないが、どっちつかず。
だいいち、刃牙が「だれを好きになるかを決めるのはおれじゃなくておまえ自身」みたいな突き放した恋愛観ならば、「ケンカをやめて」は成立しないだろう。

どうにもイラッと来るのは、梢江という女の子のキャラクター(刃牙たち格闘家の「だれがいちばん強いか?」の価値観を認めないなど)をイマドキ風のものにしておきながら、それがキチンと物語の中におさまっていない点だ。これは古色蒼然たるベタ展開よりヒドい。「ただ描いてみました」というに過ぎないからだ。

単行本化されてないその後の展開もかなりダメダメで、本当に刃牙は「死刑囚編」の中盤あたりからダメになったなあ、と思う。哀しいことだが。

27巻の感想

(05.0909)


【雑誌】・「週刊少年ジャンプ」40号(2005、集英社)

45ページ読みきり大久保彰「魔法使いムク」。魔法使いの存在する世界で、魔法が使えるのに弱虫の少年が友達を助けるために成長する。まあこういうタイプの作家が欲しいというのはわからないではないですが……冒頭から回想シーンまでが物語に入りづらいのと、プロットそのものにひねりが欲しいです(偉そうですまん)。

大亜門「太臓もて王サーガ」は、ネットではギャグの元ネタ探しでプチ盛り上がりが見られるけど、わたし的にはものすごい速さでココロが離れていってまして……もともとツンデレって嫌いなんですよね私。
澤井啓夫「ボーボボボ・ボーボボ」は、ここのところ個人的にはやや低調かと思っていたが「大人の女」出現で盛り返してきている。「大人の女」……すげー発想だ。
(05.0905)


・「刃(JIN)」 9/15増刊号 Vol.16(2005、小池書院)

小池一夫オンリーマガジン。
池辺かつみ「桃太郎侍」が、個人的に面白くてしょうがねェ。別に小池一夫的にも新しいことは何もやってないけどね。池辺かつみの絵が好きだというのもある。

「赤い鳩(アピル)」がブッツリと終わり。まあ「手塚治虫マガジン」でもよくあったことだわな。

次号から「丹下左膳」を小池一夫流に料理するらしい「キャット・ディフェンス」が新連載。どうも雑誌全体をリニューアルして、新創刊になるらしいが。
(05.0905)


【テレビ】・「ハロー! モーニング。」(2005、テレビ東京)

9月4日放送分。

公式ページ

ラストフレーズ歌っちゃダメダメ!が復活、さらにNGワード歌っちゃダメダメ!という新企画も。

ここ数カ月、どんどん見るのも感想書くのもモチベーションが落ちてきてたんですが、今回気分的にはちょっと復調してきたかなと。
「NGワード歌っちゃダメダメ」で、「赤いフリージア」のアタマのところでNGの「愛」を実にさわやかに亀井が歌ってしまい、一緒のグループだった新垣が亀井に顔で訴えるシーンだけなんだけどね。でもそこだけがツボにはまってしまって何回も繰り返し見てしまいましたよ。

ま、そんなことでもひとつあれば面白がれるんだから自分も単純なもんです。
前田健がCD「恋のブチアゲ♂天国」[amazon]を出すというのでゲスト。

コギャルコスプレのまえけんと、本物っぽいコギャル2人と計3人で歌い踊るんだけど、もう一人の方が一瞬照れ笑いしてる顔が映って、ああいうのがイイんだよな(笑)。

なっちハワイファンの集いみたいなののレポート。CMの直前に「なっち、涙のわけは……?」とか言っていたけど、そんなの感動したからに決まってるじゃん。ベタですね。

スタジオライブはW(ダブルユー)の新曲「Missラブ探偵」[amazon]。もうね、コレね、古い言い方すると激ヤバ!! 激すばらしい。わたし的には楽曲・歌詞・衣装・振り付け、すべて申し分なし。
まあ「ロボキッス」[amazon]のときも同じようなことを書いて、結果予想よりも売れなかったらしいんだけど、前々から思ってるんだけど現状のWの路線で売れなかったらそれは世の中の方が間違っている。

今回はつんくプロデュースを離れ、作詞:森村メラ/作曲:STEVEN LEE, JOEY CARBONEだそうである。
簡単に言えば辻加護ミーツSPEED、なのだが、「探偵」がタイトルになっているものの安易にストレートな比喩を用いず、何か恋愛相談を会話調にして(要するにそれが「探偵と依頼人」の関係ということか?)、好きな男の子との「運命」を感じさせる女の子らしい少しの神秘をまぶしてみたりと、あなどりがたい歌詞。
つんくの歌詞の才能は私は認めてますが、こういうヒネり方はつんく先生にはできんでしょう。

また、楽曲に関しては知識不足でもっともらしいことは書けないが、SPEEDを知る世代には懐かしいだろうし、ものすごく陳腐な言い方をすれば90年代のアニメ主題歌調とも言える。その勢いが、近頃のハロプロ楽曲の中では心地いい。
そして、SPEEDにおいては、かつていちばん若年のhiroに、おそらく彼女のキーギリギリまでの高音を出させることによって楽曲にエロスを醸し出させていたのと同様、今回その担当が辻ちゃんになってます。
辻ちゃんとエロスの、初めての融合が見られると言ってもいいかもしれない(最初から辻ちゃんが好み直球ど真ん中の人は除く(笑))。

また、衣装・振り付けともにテレビでじゅうぶん楽しめるパッケージングされた感じも完成されている。ステージでもヒートアップすること間違いなし。いやこれは本当にひさびさに、手放しで推せる。大満足。

エリック亀井の毎度ありぃ。今回は中澤、藤本、そしてピンキーさゆみんとかいうのが出ていた。ゲストは新曲を出すW(ダブルユー)。まあ、いろいろわいわいやってましたな。道重の美少女度合いが恐ろしいレベルに達しつつあると感じた。

やっぱり、自分が見たいのは美少女、アニメ主題歌的勢い楽曲(そういう意味で私はトランスは好きである)、そして笑いなんだろうなと再確認。

前回の放送

(05.0905)


・「マンガ嫌韓流」 山野車輪(2005、普遊舎) [amazon]

沖鮎要は、どこにでもいる普通の高校生。韓国にとりたてて興味があるわけではなかった。しかし、日韓共催W杯などをきっかけに韓国に対して「変だな」と思うようになった。
大学生になった要は、韓国を知るため歴史サークル「極東アジア調査会」に入会。彼を案内役に、日韓関係のさまざまな問題について描く。

内容については私の知識不足で判断のしようがないんだが、「ゴーマニズム宣言」ワンアンドオンリーだったジャンルに新人が新規参入した意義は大きい。
今はどうか知らないけど、一時期は「ゴーマニズム宣言だけ読んで社会問題について判断する人」が出かねない勢いだったからね。そういうのを相対化する意味はある。もちろん、本書だけを鵜呑みにするのもまずいけど。明らかに「ウワサ」の域を出ないようなことも描いてあるし。
話題になり方(新聞社の広告掲載拒否とか、売り上げランキングにカウントされなかったとか何とか)も、申し分ないのでは。

マンガ表現部分に関しては、とにかく読みやすいですよ。印象批評で本当に申し訳ないですが、絵柄が似ていることからしても冨樫義博の影響を受けていることは間違いないと思う。で、本作のように「ネームの多いマンガ」って、冨樫的な方法論ってけっこう通用すると思うんですよ。なんだかわからない特殊能力だの、それ同士の駆け引きだのをネームでずっと書いているわけだから。
絵柄も完全にマンガにおける「アニメ絵」ができて以降のものだから、なんかそういう新世代登場、みたいなところを感慨深く思ったりしました。

まあ、ひとつだけ難を言うとすれば韓国人の顔があまりにマンガにおけるソレっぽい顔、ということくらいかなあ。それはマンガの本質的なわかりやすさと、それゆえの危険性みたいなものと関係してくると思うんだけど、この人の絵柄が認知されてくればまた変わってくるでしょう。
後は今後の展開として(続編もたぶん出るだろうから)、「マンガとしての面白さ」と「タブーに抵触する、多くの人が知らないことを説明していく面白さ」をどのようなバランスで描いていくか。
「ゴーマニズム宣言」は、そういう意味では実に多様な実験をしていて、それが一段落したとたんに興味を失ったという私はヒドいゴー宣ファンでもあったのだが、今後の本作がシリーズ化した場合の展開にも興味はありますね。
(05.0902)

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