◆ 1999年1月上旬 ◆
1/1〜10
【トップページ】
【過去日記トップ】
ご意見・ご感想はメール
か掲示板でどうぞ
1/10(日)……シャア専用ザクろヒメ
当然赤い。
【単行本】「HeRaLD」上下巻 イダタツヒコ 講談社 B6
|
|
上下巻同時発売。ヤンマガ98年No.51まで連載された「HeRaLD」と、昔の短篇を収録。昔の絵と比べると一目瞭然だが、ものすごく絵が変わっている。昔の絵は線が細く、奥瀬サキやら藤原カムイなどを想起させるところがあるが、現在ではずいぶんと線がクッキリとしてキャラクターの目も大きくなっている。だいぶ売れ線の絵に化けたともいえるかもしれない。なんとなくエロ漫画家にいそうな絵でもある。そういえば、すぎむらしんいち「ALL NUDE」のアシスタント一覧に「井田辰彦」という名前があったが、たぶんイダタツヒコのことなのだろう。
「HeRaLD」の主人公はかつては写真集まで出したことのある美人ホラー作家、笛吹籠女(うすい・かごめ)。彼女は現在、作家業の傍らラジオ番組のDJもつとめているのだが、その番組内の一コーナーとして、継続的に「口裂け女」と「花子さん」(個人的には「赤いちゃんちゃんこ着せましょか」とかそこらへんを思い出すが)を一緒くたにしたみたいな都市伝説を扱っていた。その都市伝説は、赤い制服を着た女、「ざくろヒメ」の問い掛けにきちんと答えられないと殺されてしまうというものだったが、それについての情報を持っていると電話をかけてきた男が、番組放送中にざくろヒメに殺害されてしまう。そこから始まる、ざくろヒメの謎をめぐる都市の怪談といった感じのお話。
謎めいた雰囲気に覆われ緊迫感を持ったまま進む陰惨なストーリーは、なかなか緊迫感がある。キャラクターもイキイキとしていて、魅力的。ラストまでそれなりによくまとまっていて、上下巻一気に読めた。少し考えオチな感じがしなくもないが、昔の短篇はもっと考えオチ的であり、かなり一般に受けいれられやすいよう作風が変わっていることは伺えた。
【単行本】「イッパツ危機娘」2巻 原田重光 講談社 B6
|
|
ヒロインがひょんなことから命に関わるような危機的状況を招いてしまい、全裸になったりヨガも真っ青のヘンテコなポーズになったりしながら、なんとかかんとかそれを脱出するというお話。それが一回だけならまだしも、毎回毎回、磁石が砂鉄を吸い寄せるように危機的状況を招き、甚だ下品かつ強引になんとか免れる。その過程に面白さがある。危機娘はクーニャンから、政治家の秘書のマドカへと代変わり。危機的状況も深刻化しているのだが、クーニャンのときよりもパワーは落ちているように思える。1巻の段階ではとても面白かったのだが、2巻ではどうもギャグなどが滑っているように思える。危機的状況が下手に論理的に説明されちゃっていることもあるし、脇役キャラがクーニャン編ほどには立っていない。もう一押し欲しい。
【単行本】「同じ月を見ている」2巻 土田世紀 小学館 B6
|
|
少し頭は弱いが、純朴すぎるほどに純朴すぎる男、ドンちゃんが幼馴染みのエミのため、少年院を脱走する。しかし、ドンちゃんはエミともう一人の幼馴染みテッちゃんのため、素直に身を引き少年院に戻る。テッちゃんはドンちゃんの影を恐れて、ドンちゃんに悪意ある言葉を浴びせかけるが、ドンちゃんのまっすぐな気持ちはけして変わらなかった。少年院を出た後、ドンちゃんはひょんなことからヤクザに拾われるが……というところで以下次の巻。
不器用で純粋な男ドンちゃんは、真っすぐすぎるがゆえに辛い目に遭うが、それでも人をうらまず生きていく姿は眩しくもある。真摯な純愛青春物語になりそうで期待している。ただ、今のところ盛り上がりは少し弱いか。
【単行本】「東洋妖人伝 用神坊」7巻 秋田書店 新書判
|
|
次の巻で最終巻。アヤシイ占師、用神坊(YOさん)が口先三寸で人をたぶらかしたり、妖術を使ってみたりして、事件を解決したりさらに混乱に陥れたりする。通読してみると気づくのだが、YOさんは意外と神通力を使っておらず、知恵と舌と駆け引きで世の中をわたっている。結局頭を使ったほうが勝ちという小ずるさが作品を地に足のついたものにしている。すべては道具で解決、ってわけでなくそれぞれに趣向を凝らしてくるあたりがこの作品の妙味の一つだ。
1/9(土)……ドイ・コイ
「ドイ・モイ」はベトナム共産党が進めている包括的な改革政策だ。「刷新の意」らしい。「ドイ・コイ」は「どいつもこいつも」の略だ。「ドレイ・コイ」はEカードをやっているときの心の叫び。
【雑誌】花とゆめ 1/20 No.3 白泉社 B5平
|
|
巻頭カラーで、ヘンな漫画「あるへっぽこ漫画家の一日」というのが掲載されていて、それの描いた人当てクイズが行われている。正直言って少女漫画に詳しくない俺には、正体は分からなかった。日渡早紀じゃないかなーとは思うのだが。でもたぶんハズレてると思う。そのほかの漫画だが、どれもそれなりに面白く読める。コンスタントでこぎれい。少年漫画雑誌に例えると、少年サンデー的って感じがする。でも、今回はとくにコレっていうのがなかった。高屋奈月「フルーツバスケット」、中条比紗也「花ざかりの君たちへ」、羅川真理茂「しゃにむにGO」、日高万里「世界でいちばん大嫌い」あたりがわりと好き。山田南平「紅茶王子」は今回お休み。
【雑誌】FEEL YOUNG 2月号 祥伝社 B5平
|
|
楠本まきが巻頭カラー8ページ。タイトルは「pre-sale」(本当はeの上に点が付いている)。硬質で排他的。おしゃれすぎるほどにおしゃれ。三原ミツカズ「ハッピー・ファミリー」。なるととまゆらを狙う性悪同性愛兄妹が、日比野家を攪乱しようと底意地の悪い計略を用いてくる。なかなかに手ごわそう。安野モヨコ「ハッピー・マニア」は、シゲタと愛し合うイカれた小説家兄ちゃんの化けの皮がはがれ始める。豪快でハイスピードな恋愛模様がやはり楽しい。
実用重視系のエロ漫画雑誌。
今回も沙村広明の2ページSMイラストは健在。ガリガリにやせて鎖につながれている少女の絵と、太い釘が何本も何本も突き刺さりまくった少女人形の絵。メジャーでやっている人とは思えないほどに、ハードでこちらの痛覚を刺激してくる。
美女木ジャンクション「彼女は病気!?」は、オナニーを覚え立てでことあるごとにしたくなっちゃう少女が、ドクターを名乗る男に治療という名目でやられまくるお話。ぱっつんぱっつんではなく、だらしなく肉が付きすぎな感じの身体が力強く揺れる様子がなかなかにいやらしい。この人の漫画に出てくる体液は、なんか濃そうだ。友永和「MOMONE」。桃音先生は朝も昼も夜も、はた迷惑なほどに凌辱されまくりである。ほとんど意思なきがごとし。「そろそろクライマックス」だそうだが、いつまで続くのだろうか。友永和の漫画はいやらしくて昔から好きだ。この作品はすでに何年にもわたって桃音先生がやられ続けているので、少し飽きてきた感じもあるが。美樹カズ「二人の時」。この人は、昔は水芸的な体液噴出作品が多かったが、最近は汗を玉のように噴き出させるタイプに変わっている。とりあえずちんちんをやたら丁寧に描くのはいいことだと思う。
木工用ボンド「BE QUIET」。それほどうまい絵でもなく、なんかステロタイプなエロ漫画絵って感じなのだが、やっていることは十分迫力があって実用的。人妻モノだというのも、俺としては好み。井ノ本リカ子「ママ・メイド」。この人の絵は柔らかくて女性的。一見シャレた感じではあるのだが、けっこう肉弾系でやることはやっている。そろそろ単行本が出てもいいころかな、とは思うのだが。みかりん「B.DはケーキでChu!」。アットーテキとクリスティがなくなってから見てなかったが、東京Hにちゃんと吸収されて安心。ただ、実用重視の雑誌カラーに合わせてか、今回は女の子が育ち気味。出来としてはイマイチなのだが、作者の実体験なのかなあと思わせる生々しさは健在。そしてゴブリン「理奈がお気に入り」。相変わらず女性を憎悪しているかのごとき鬼畜ぶり。年端もいかない感じの少女が例によってヤラれまくるのだが、前振りの段階ですでにさりげなく「たった五日間でお前もう二百人以上の男に膣の中へ精液出されちゃったんだぞ!!」とか、「一晩で一人四〜五発は射精するから」という戦慄するようなセリフが。ということは五日で800〜1000発、一日160〜200発という計算。仮に200発とすると1時間8.3発、7.2分に1発という計算だ。いやはや。
【単行本】「どいつもこいつも」1巻 雁須磨子 白泉社 新書判
|
|
メロディ連載作品「どいつもこいつも」に、読切「地獄の玉三郎」を追加したもの。「どいつもこいつも」は自衛隊の駐屯地を舞台にしたラブコメ。主人公はドジでノロマでカメでボケナス、憧れの先輩を追っかけて自衛隊に入隊した朱野という女の子。異様なまでの赤面性で間の抜けた朱野を中心として、平和でダラダラとした駐屯地の日常が経過していくというお話。絵は有川祐に似ていて、閉じた環境で淡々と日常が過ぎていく様もなんとなく近い作風。有川祐ほど暗かったりファンタジックにはならないが、軽く力の抜けたノリが読んでいて楽しい。絵もシンプルで素っ気なさげな線ながら、ほのぼのとした暖かさが染み出してきていて気持ちいい。肩が凝らずに楽しめる作品。
1/8(金)……すえひろGirl
【雑誌】ヤングアニマル 1/22 No.2 白泉社 B5中
|
|
柴田ヨクサル「エアマスター」は、マキ vs.金ちゃんの闘いがヒートアップ。スピーディに繰り広げられるアクションは、問答無用の痛快さ。文月晃「藍より青し」。実に都合のいい、女の子アパート押しかけ一方的に好いてくれる型ラブコメ。このベタベタさ、甘ったるさ。素晴らしい〜。稲光伸二がアニマル初登場。タイトルは「愛されるだけ」。セックスに流されやすく、だらしなくいやらしくなさけない日常をダラダラと送り続けるOLの話。自堕落なオフィスラブものなのだが、お話的にはイマイチ。絵も4色カラーの表紙はいいのだが、あとは以前よりちょっと荒れ気味。硬質でスッキリした描線で、絵は好きなタイプだけにもう一押し頑張って欲しいところ。
次号から少年チャンピオンで「大助ゴール!」を連載していた馬場民雄がアニマルに登場。集中連載とのこと。あと中田ゆみも読切を描くということで楽しみ。
【雑誌】YOUNG YOU 2月号 集英社 B5平
|
|
なんだか巻頭で、緒形もりのペットのアライグマ、うめが死んだということで8ページの特集が組まれている。しかも緒形もりのインタビューや、いくえみ綾からのメッセージ、フォトアルバムまで。なんだかすごい。
漫画でいうと、今回は谷地恵美子「明日の王様」がとくに良かった。主人公・有プロデュースの舞台は好評のまま終わり、ライバル(とまではまだ有はいってないが)の数馬倫の舞台に有が酔いしれる。劇の具体的なストーリーはそれほど語られないのだが、そこで素晴らしい舞台が展開されているのだということは伝わってくる。そして読んでいるほうも面白い劇を見たような気分になる。ここらへんは演出の力だ。武内直子「武内直子姫の社会復帰ぱーんち!!」。今回は結婚準備で忙しいのか、少しパワーダウン。武内直子と富樫義博の交換日記のくだりは馬鹿馬鹿しくていいけど。岩館真理子「美代子さんの日記」。雪かきの最中に屋根から落ちて倒れた43歳の母が、ザウルスらしい携帯情報端末でつけていた日記を娘が覗きみる。実は彼女は自分の半分以下、21歳の男性に恋していたらしいのだが……というお話。後半はメールのログでお話が進むので文字ばかりになってしまうあたり、仕方ないとは思いつつもう一工夫欲しいような気もした。お話としては少し安い。たかさきともこ「白衣でポン」。いい加減なナース、桃園が病院をズル休みする。うまいことズル休みが許されて浮かれまくり、意味のない行動をとる桃園の姿が馬鹿っぽくて楽しい。
表紙に逢坂みえこと小沢真理の名前があるが、逢坂みえこは「ベル・エポック」休載のおわびと言い訳漫画。肺炎だったとのこと。小沢真理は「ホームページ作ってます〜」といった感じのレポートだけで漫画はなし。ちなみにURLはhttp://kate.sakura.ne.jp/。
【単行本】「ALL NUDE」 すぎむらしんいち 講談社 A5
|
|
【単行本】「超・学校法人スタア學園」14巻 すぎむらしんいち B6
|
|
すぎむらしんいち2冊同時発売。この2冊の巻末で、すぎむらしんいちの既刊単行本として「右向け左!」「東京プー」「HOTEL CALFORINIA」「サムライダー」が紹介されているのだが、「尚、いずれも在庫切れのため、古書店でお求めください」との注意書きがある。潔いな、講談社。「右向け左!」は漫画文庫になるそうだ。
まず「ALL NUDE」のほうは、すぎむらしんいち初の短編集。ヤンマガ海賊版、エグザクタ、ミスターマガジン、COMIC CUEに掲載された作品に描き下ろしをちょっとだけプラスしたしたもの。最も古い作品で1986年発表。この中では、女の子が親のカメラを使ってさまざまな写真をとって歩く「少女カメラ」が、静かで淡々とした味わいがあって好き。ギャグものでは、ショートショートがオムニバス形式で続く「CARNAVAL1999」。どの作品も演出がうまくて面白く読めるのだが、すぎむらしんいちの場合は長編のほうが面白く感じる。一見地味な作風だけに(よく読むと地味でもないのだが)、短篇だとうまくまとまりすぎてしまっている感じがなくもない。ダラダラと続けていくうちに、キャラクターたちの味がどんどん出ていくといったタイプのほうがより面白い。
そういう意味もあり、「超・学校法人スタア學園」のほうが素直に楽しめた。今回の巻は映画撮影がまだ終わっていないのに、スニャップの合宿参加を強制されたコキジが、合宿先の海岸でめくるめく愛欲の世界に……。予想できない方向に、ゴロリゴロリとお話を転がして、キャラクターを動かしていく感覚が見事である。巻を重ねるごとに、作者の恥部が身もフタもなくさらけ出されていく感じがたまらない。
【単行本】「ロマンス」5巻 高見まこ 集英社 B6
|
|
オスマンでも紹介しているようにオススメ作品である。
5巻では、金持ちの若奥様の元にいて何不自由なく暮らしていた吾郎が、あまりにも至れり尽せりであるがゆえに絵を描く衝動を失っていた自分に気づく。そして、若奥様の元を飛び出す。しかし、生活する術を持たない吾郎は、医者になるという夢のために金持ちの妾をして学費を稼いでいる女性の元に居候として転がり込む。そこでもまたその女性との愛欲の日々に溺れていく吾郎だが、絵に対する情熱は取り戻していく。5巻の終わりでは、吾郎をその後導いていく運命の女性が登場し、次巻へと続く……といった展開。
この巻では、吾郎の環境がコロコロと目まぐるしく変わる。そして、いろいろな女性と交わるたびに吾郎は鋭い色気を増していく。体内の火を抑えられず、愛欲に溺れていく女性たちと吾郎の姿がなんともいやらしい。それでいて下品にはならないところが、高見まこのうまさでもある。
【単行本】「タイムマシン」 すえひろがり コアマガジン A5
|
|
ホットミルクを中心に、ショタキング、アリスの城、パピポなでで描いた作品を集めた短編集。すえひろがりは、描線は単純で洗練されているのだが、作品全体から淫靡さがにじみ出ていてとてもいやらしい。女ないし男の痴態を、ときに隠し、ときに大胆に露出させ、羞恥と快感の描写を実にうまくコントロールしてくる。「見え隠れ」を操るテクニックが抜群なのだ。そしてそれはあくまでも、関与者たちだけの秘密の遊戯であると見せる。そこらへんが大胆な露出をさせても、けして下品にならないうまさでもある。スッキリした絵柄なのに劣情を掻き立てる。なんともうまい。
1/7(木)……オダーラ・ドラグーン
新年初出社だというのに。またしてもなんだか会社に泊まっている。といっても、今日は酒を飲んでたら終電がなくなってしもうたので会社で時間をつぶしているだけなのだが。
【雑誌】モーニング 1/22 No.6 講談社 B5中
|
|
うえやまとち「クッキングパパ」が連載600回め。ということはもう12年くらい連載が続いているということだ。この作品を読んでいるといつも感心させられるのは、実にコンスタントに平和な気分にさせてくれること。そして料理がおいしそうだ。数ある料理漫画の中でも、料理のおいしそうさではピカイチ。なんといっても登場するキャラクターたちが、とても幸せそうに料理を食べる。おいしそうに食べられると、その料理が何倍もおいしそうに見える。山下和美「天才柳沢教授の生活」は、柳沢教授夫人のお姉さんのお話。一人では電車にさえ乗れない、浮き世離れしたお嬢様育ちのおばあさんが、なんと素敵に見えることか。本当にうまいなあ。今谷鉄柱「DIVE MAN」は、昨年8月以来の第2話。潜りのプロを目指す男、純平が主人公。今回は何メートルもある巨大なハタを追い続ける男について、海に潜る。今風ではないが、絵も話つくりもしっかりしている。描けば描くほど伸びるタイプと見た。
【雑誌】まんがタイムジャンボ 1月号 芳文社 B5平
|
|
こうの史代が描いているので購入。12月の前半発売号だったので、ほとんどの書店で在庫がなかったのだが、会社の近くのやる気なさげな書店で一冊発見した。けっこう探したのだが、確保できてよかった。12日には後編が掲載される次号も発売されてしまうので、もう少しで買い逃すところだった。こういう捜し物をするときに、やる気のなさそうな書店は貴重だ。
掲載されている作品は「願いのすべて」の前編。ページ数は8。4コマ漫画誌だけど、普通のコマ漫画である。同人誌で発表された作品のリメイクで、基本ストーリーは共通だが、別物に近い。心優しい飼い主に買われている犬が人間になることを願っていたら、クリスマスの夜にサンタさんのはからいによって本当に人間となってしまう。人間の女の子になった彼女が、飼い主宅に押しかけ突拍子もない行動をとるのだが……といった感じの前編。なんといってもいいのが、スクリーントーンを使わずカケアミを多用した柔らかい画風。伸びやかで暖かい雰囲気のある画面は、見ていてホッとする。垂れ目がちなキャラクターたちの表情もいい。自然体な感じでなんとも懐かしい雰囲気を持っている。
そのほかでは、なりゆきわかこはわりと好き。
【単行本】「おやすみなさい。」1巻 小田原ドラゴン 講談社 B6
|
|
かなり激しく待望していた単行本である。表紙は主人公鉄郎がグラサンをかけている図案なのだが、グラサン部分は特殊印刷になっており、温度を上げてやると下の図案が浮かび上がる仕組み。単行本を手にとったら、グラサン部をナデナデしてあげよう。
小田原ドラゴンは昨年のヤンマガ系列では、俺のイチオシである。というよりも、98年の新人(といって差し支えないだろう)トータルで見てもイチオシなのだ。描画テクニックがあるほうでは、決してない。描線は素人くさくやぼったい。でも全体の雰囲気として、ものすごく味がある。これだけやぼったく、情けない画風はなかなか類を見ない。「おやすみなさい。」の主人公、上野鉄郎はミラーボール製造会社でミラーボール用の木材を削り出す職人だ。そしてアイドルマニアでもあり、毎週1回、自分の中でのアイドルランキングを作り延々と記録し続けている。内気でいつもオドオドしている彼は、心優しく不器用で、そして童貞だ。そのわりに、ミュージシャンを目指しており、町中で自分のプロモーションビデオを一人撮影していたりするという案外大胆な一面も持っている。その鉄郎が、毎回地味で情けない活躍をする。その描写の克明ぶりがとてもいいのだ。一人暮らしを始め家電を買いに行けば、家電マニアの同僚と店員の押しに負けて70万円もする巨大冷蔵庫「シグマ」を買ってしまう。家賃より高い電気代を必要とするシグマ。その必要もないパワーをそれでも気に入ってしまう、楽観的で現状を肯定する、あまり意味がないほどの純朴な姿勢が鉄郎の特徴だ。わけが分からないうちに、ブルセラの匂いつき下着のバイトで思わぬ才能を発揮してしまったりもする。
一話一話のネタも面白いのだが、通しで読むとその丁寧な世界構築の姿勢に気づかされる。鉄郎アイドルランキング、冷蔵庫シグマ、ミラーボール工場、ブルセラバイトなどなどの設定が、一話だけのエピソードだけで終わらずきっちり後の話に続いて蓄積されていく。誰も気にしてはいないだろうに、こちらの予想を上回るほどの折り目正しさを持っている。しかも、それがまったく役に立つものではないところがステキだ。アイドルとのデートを妄想する回など、実に素晴らしい。まず出会いから始まり、親密になる過程、別れまで想像し、鉄郎が自分の妄想に自分で照れたりもする。でもその最中に母親に「ごはんまだー?」と呼びかけたりするような日常的な行為が、まったく分け隔てなく描かれる。鉄郎という情けない人物の日常を、異様なまでの丁寧さで、細部にまで神経を行き渡らせて描き出している。しかも、細部まで描いたからといっても、ちっとも華麗でも美しくもない。力むところのない淡々とした描写が、またいい味を出している。日常の中で、各人が自然にやっているような、みみっちいエンドルフィン創出行為を、賛美するでもなく軽蔑するでもなく丹念に記録する作風は一見の価値あり。っていうか二見も三見もしてくれい、って感じ。俺はすでに鉄郎の虜だ。
【単行本】「賭博黙示録カイジ」10巻 福本伸行 講談社 B6
|
|
Eカード編。連載で読んでいる人ならご存じの、例の「悪魔的奇手」を出す直前までである。当初、このEカード編は限定ジャンケンに比べてルールが単純すぎてあまり盛り上がらないかに思えた。その前の鉄骨渡りにギャンブル的要素が少なかったこともあり、さほど期待はしていなかったのだが、この「悪魔的奇手」で一気に来た。盛り上がりそうになければ、強引な手段を用いてでも盛り上げてみせる。福本伸行の力業の威力は素晴らしい。単行本でしか読んでない人は、タネ明かしは次巻まで持ち越しだ。でも、単行本で読むのと雑誌で読むのとでは驚きの度合いは違うのではないかなーとか思うのだが、自分を用いた比較実験はできないで実証は難しい。
1/6(水)……まあまあ、どんと喰らえ
少女をビニールひもで縛りあげる。崩れないようにきっちり縛るのは案外握力を必要とする作業だ。ギュウギュウに引き絞ったひもは少女たちの顔といわず身体といわず、がっちりと食い込んでいる。
そして縛り上げた順にどんどん積み重ねていった。
そんなわけでたまりにたまっていた少女漫画等、女性系漫画雑誌をひもで縛って整理する。実は正月早々、忙しく働いていた方には申しわけないのだが、本日まで正月休みをとっていた。休み前はいろいろやることも考えていたのだが、結局とくに大したこともせぬまま休みが終わるところだったので、なんかやった気になるためにも雑誌の整理くらいせねば、と思ったしだい。
【雑誌】ヤングマガジンUppers 1/20 No.2 講談社 B5中
|
|
今号のおっぱいイラスト「E-Oppers」は亜木祭。
桑原真也「0(ラヴ)リー打越くん!!」。何やら打越くんのテニスに賭ける熱い思いが語られてしまい、本当にテニス漫画をおっぱじめようという雰囲気に。先が読めなくて面白い。玉置勉強「恋人プレイ」は、奥野が佐伯に電話をかけて呼び出してくる。何か決着がすぐそこに迫っている雰囲気。最終回は近いと見た。現在18話。単行本1巻は10話まで収録されていたので、20話までやって2巻分にして終わらすのではないかと推理するがいかに? さすがに佐伯の昔の彼女というネタも使ってしまったし、これ以上引っ張るのも難しいとは思うのだが。
【雑誌】ヤングキングダム 2/4 No.2 少年画報社 B5中
|
|
佐野タカシ「イケてる刑事」。今回も夢オチ系のサービスカットがバシバシと挿入され、仕事してんな〜という感じ。五十嵐浩一「Home Sweet Home」。今回は50ページ。セクハラ教授を殴ったため、大学講師を辞職するに至った主人公・土屋は予備校の講師に転職する。が、受け持ちクラスは講師の話を聞かない不真面目な生徒揃い……といった感じで、何やら教育ドラマっぽくもなってきた。軽くスッキリとした読み口。大石まさるが登場。タイトルは「雪洞(ぼんぼり)」。とあるサラリーマンの男と、彼が飲みに行って記憶をなくした間に部屋に連れ込んでしまった女の子とのアツアツラブストーリー。女の子が健気で可愛らしい。なんか男に都合が良すぎではあるが、過ぎるくらいに甘ったるいのはとてもいい。甘ったるくするならこのくらいやらないと。いつもの優しい絵柄ながら、適度にHなシーンも挿入されていて良かった。
【雑誌】オールマン 1/20 No.2 集英社 B5中
|
|
谷口ジローが読切を描いているので購入。谷口ジローの作品のタイトルは「ママ、ドントクライ」(原作:原田宗典)。ある男が、自分が17歳のとき、本気で泣いた日のことを振り返り妻に話して聞かせるという形式でお話は進む。彼の父はろくでなしで、ギャンブルに溺れて出奔してしまう。母は自分のやりたいことも我慢して働きに出て、女手一つで男を育てる。そしてある日、バイトで稼いだお金で買ったバイクで、男は母とともに動物園にいく。たかがそれだけのことで無邪気に喜ぶ母の姿を見て、それまで何もいいことのなかった母の人生を思い、男は思いきり泣く……という話。ただ、それだけの親孝行物語である。しかし、これが泣けるのだ。谷口ジローらしく、キチンキチンとした折り目正しい描写をしだいしだいに積み上げていき、実に感動的な物語に仕立て上げてしまっている。仕事のためにザラザラに荒れた薄幸な母の手など、地味ながらも描写に深みがあり泣けてくる。こういったものは地味で小細工の利かない部分だけに、より作画者の技量が問われてくるのだが、さすが谷口ジロー。緻密な描き込み効果的な演出。見事である。
六田登「親愛なるMへ」。かつて殺人を犯した少年と、彼を世話する保護司の娘が駆け落ちする。少年は何やらヤクザのようないかがわしい男と付き合い始めるが……という展開。薄暗い雰囲気が漂う。現在の六田登作品の中では、一番の期待株。末松正博「殿様ルーキー」。ヘラヘラ顔の大金持ちのおぼっちゃま社員が、並外れた精力でホイホイといろんな女性を落とし、仕事も成功させていくお気楽なお話。やはり「右曲がりのダンディー」的ではあるが、お手軽で楽しい。
【雑誌】コミックライズ 2月号 メディアックス B5中
|
|
表紙に代表されるように、全体的にわりとシャレたポップなテイストの雑誌。でも完全に研ぎ澄まされてはおらず、若干ヌルめ。
すがわらくにゆき「おれさまギガ☆ライズ」は、原稿落ちまくり。殴り描きなおわび漫画が2ページ掲載されているが、これもすがわらくにゆきの味っぽくもあり、それなりに面白かったりはする。大輪田泊「かぼちゃ姫」。なんかこの人、作風が瀬口たかひろ(少年チャンピオン連載「オヤマ!菊之助」の人)っぽくなってきているような気がするのだけど、気のせいだろうか。「大江戸Suite OP:3」のEB110SSはなんとなく垢抜けない、カエルっぽい造形のキャラクターが特徴。鈍角な絵柄が読んでいるとホッとする。田浦こうじ「検温の時間です」は、ライズの中では肉弾系で乳がでかく、実用度は高め。
【雑誌】YOUNG Hip 2月号 ワニマガジン B5中
|
|
巻頭カラー、SABE「ブルマー1999」。世紀末、ブルマーをこよなく愛する兄弟の兄が「ら王」と名乗り、暴力で近隣を支配し女の子全員に体操服&ブルマー着用を義務づける世界。兄はブルマーをつけた少女のいやらしい姿を好み、弟はブルマーをはいた少女の自然な振る舞いを愛す。同じブルマー好きなのに、理解し合えない兄と弟の間で、大いなる戦いが、起こらない。妄執のあふれる下らない展開がたいへんよろしい。〆のお言葉も素晴らしかった。やっぱりSABEが本領発揮するとすごい。東京都町田市在住漫画家(ちなみに俺=しばたも町田在住)、The Amanoja9「Queerな女の子」。The Amanoja9自身が体験した、イメクラでバイトしているコスプレ女とのアナルSEX体験記を赤裸々にカミングアウトした物語。ファンシーな絵柄のわりにやることはやってて、なかなか生々しくて良かった。
1/5(火)……DS神悦楽大作戦
ゲームボーイカラーの「ドラクエモンスターズ」を今さらながら一生懸命やっているのだが、ゲームボーイカラーの画面って映り込みが激しいのでかなり目が疲れる。Palm Pilotとか用の液晶保護用のクリアシートとかそういうので、ちょっとくらい抑えられないかなーとか思っているのだがまだ試してない。なんか映り込みを抑えるいい方法があったら教えてくださいませ。
【雑誌】週刊少年ジャンプ 1/28 No.6 集英社 B5平
|
|
桂正和「I''s」では、またしても一貴が告白するか?って感じの見せ場。今まで何回もこういったパターンがあったが、今回はどうなるのか。なんとなく相手も酔っ払ってたってオチがありそうな気もするのだが。萩原一至「BASTARD!!」。今回は本筋(が何かはよく知らないが)そっちのけでエロだ。途中、江口寿史やら、榎本俊二のパロディをやってみるなどやりたい放題。いっそのこと本気でエロ漫画やっちゃえばいいのに。なかなかHでいいと思うので。最後のコマは、アオリに「D・S→復活→分身…!?」などと書いてあるが、「えの素」を読んでいれば分かるとおり射精の隠喩だな、こりゃ。
【雑誌】週刊少年サンデー 1/16+22 No.5+6 小学館 B5平
|
|
満田拓也「MAJOR」は、最近毎回のように風変わりな「地獄の特訓」が行われていて、近年まれに見るアナクロなスポ根ものとなっている。風変わりとはいったが、特訓自体はいちおう理に適っているように見えるあたりがちょっとだけ現代っぽくはある。北崎拓「なぎさMe公認」では、なぎさとまーくんが愛の逃避行。いつになくまーくんが照れないでなぎさに愛をぶつけまくりである。ラブコメ風味満開。
【雑誌】週刊少年マガジン 1/22 No.6 講談社 B5平
|
|
森川ジョージ「はじめの一歩」。こちらでもまた激しい特訓が行われている。描写は力強く迫力があるが、描線は洗練されていて線を投げ出すような感じではない。なんとも高度に完成された骨太さ加減。毎回読みごたえがある。塀内夏子「Jドリーム完全燃焼編」は、現在サッカーW杯最終予選、ジュベスタン(旧ソ連)との試合が続いている。ディナモ・キエフの選手が敵の中心ってこともあり、正々堂々としたプロらしい闘いになってきている。しかも、アジア予選の厳しさも十分。でもやはり本番はW杯だとは思う。
【雑誌】週刊少年チャンピオン 1/18+21 No.6+7 秋田書店 B5平
|
|
いとう杏六「東洋妖人伝 用神坊」が最終回。一話完結タイプの話だったので、いつ終わってもOKな感じではあったがちょっと残念。でも、そろそろだいぶ長くなってきていたし引き時としてはちょうど良かったかも。コミックスは7巻が1/8発売、最終巻の8巻が2/26発売。能田達規「おまかせ!ピース電器店」。今回は東麗子が中心のお話。鼻っぱしらは強いけど、実は内面は寂しがりやのお嬢さまってことで、燃えるものあり。ピース電器店に出てくる女の子はなんだかどれもいい。
1/4(月)……饅頭こわいかしょっぱいか
アクセスログによると、23時ちょい前くらいに10万アクセスを達成した模様。とくに記念プレゼントとかはやらないが、昨年俺が読んだ少女漫画雑誌だったら全部保管してあるので、それでよかったら欲しい人に差し上げます。っていうか、200冊くらいあるのでそろそろ始末しないといい加減うっとうしいのだ。なんか読みたいのあったらメール下さい。
今日から雑誌がまた出始める。というわけで本屋さんに行って、出ていた雑誌をいろいろと買ってくる。4大少年誌も全部出ていたが、感想は明日回し。こうやって日記ネタを温存する俺。卑怯者なり。
【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 1/18 No.4+5 小学館 B5中
|
|
まずは、村上かつら「いごこちのいい場所」最終回。セリフで説明しすぎな感じはあるが、なんでもできるように見えて実は耕平を心の支えにしていた春田のセリフがなかなかに泣かせる。もっと引っ張ろうと思えばいくらでも引っ張れるだろうけど、消化していない設定があるでなし、それなりにいい締めくくりだったと思う。掲示板の#1053で匿名の方が内部情報として「打ち切りではない」と言ってくださってるが(匿名なので情報を提供してくださった方には申しわけないが、ストレートにうのみにしちゃうわけにもいかないのだけれど)、俺も打ち切りという印象は持たなかった。
盛田賢司が新連載(原作:周防瞭)。タイトルは「ブルーダー」。スペルは「Bruder」で「兄弟」の意。武道家の父のもとに生まれた、双子の兄弟、正と仁の物語。仁は周囲を恐れさせるヤクザ者に、正はエリート銀行マンに成長し、二人の人生は交わらぬはずだった。しかし……、といった感じの第一話。なんかハードな雰囲気で、面白くなりそうではある。浦沢直樹「Happy!」。最近のウィンブルドン決勝戦の展開はなかなかに面白いのだが、もうちょっとテニスコート内のお話を細かく描写してほしいところ。海野幸が懸命に、女王・ニコリッチに食い下がる必死の形相は美しくて、そしてまた強い。柴門ふみ「ブックエンド」。サオとヨッチの二人がうまく行くかと思えば、またしても運命の魔の手。今のところ、悲恋ラブコメって感じだが、手慣れた描写で手堅く読ませる。けっこう面白いのだ。
江川達也「東京大学物語」は、遥がなぜ村上にいつまでも付き合い続けているのかが明かされる。この漫画はときにイヤでイヤで読めない(読むけど)のだが、ときどき思い出したように面白くなってくる。面白いときは素直に面白がって、イヤなときはスパッと流すのが吉か。
【雑誌】ヤングマガジン 1/19+25 No.5+6 講談社 B5中
|
|
巻頭カラーで安野モヨコが読切で登場。タイトルは「花とみつばち」。かっこよくなりたいと願う男が、男エステの思惑にコロコロと躍らされて美しくなることにハマっていくお話。男が主役でも、軽くてテンポの良いノリは変わらずうまい。どうでもいいことだが、このお話みたいな感じで、男エステでサクラの女の子を2、3人用意しといたらたやすくハマるだろうな。エステから出てきた男が歩いてるのを見て、二人くらいが聞こえる程度の小声で「あの人ちょっといいよねー」とかいったり、もう一人がうるうるした目つきでチラチラと眺めてみたりするのさ。
山崎さやか「フローズン」。相変わらずねちっこい。イジメられっ子が、自分からイジメの矛先をそらすべく主人公の桃花を泣かそうとまとわりつく。女性作家だけに、女の子の陰湿さを描くのは実にうまい。柏木ハルコとタメを張る。まずは好調といっていいだろう。小田原ドラゴン「おやすみなさい。」。今回はバイト先のブルセラショップで、女子高生3点セットをお年玉としてもらった鉄郎が、雪の中お地蔵さんにブラウス、スカート、パンツをかぶせてあげるという、「かさじぞう」もどきのお話。それにして、この作品は、随所に神経の行き届いた小技が利いていて心憎い。ブルセラショップの店長の、「アニメ」とだけ書いて在るあるダサいどころじゃないトレーナーだとか、「歳末パンツフェアー」とかいう貼紙とか、鉄郎の書き初め「萬田久子」とか。ブルセラショップのバイトだって、冷蔵庫シグマを買ったために始めたものだったのだ。鉄郎の情けなさを読者にアピールする、周到な小細工が素晴らしい。1月7日発売日の第1巻も楽しみだ。
あと、巻末の記事ページ「黒BUTA農場」において、タイム涼介が映画「キラーコンドーム」の推薦漫画「ヌルヌルメントール」を描いているので、ファンはいちおうチェックだ。それから次号では、漫画ばんがいちで描いている船堀斉晃が掲載されるとのこと。
【雑誌】ヤングサンデー 1/22 No.6 小学館 B5中
|
|
佐藤秀峰の海上レスキュー漫画、「海猿」は期待どおり、序盤からガッツンガッツンと熱い展開になってきた。炎上し沈む寸前の船上、救助のために死ぬか、生きるために人命を放棄するかの二者択一の選択を主人公は強いられる。絵的には目が大きくてキラキラしすぎかな、って気はするのだけれど、そのほかの部分の描線の力強さ、激しさはなかなかのもの。岩田やすてるの卓球漫画、「球魂」はかなりアヤシイ面白さがある。スポーツ漫画にしては脂っこくて濃い絵柄と、力が入っているわりにどこか間抜けた作風がたまらない。いちいち大げさだし。それから最近のヤングサンデーで俺が最も注目している作品が、遊人「桜通信」である。何がストーリーの本筋なのかまったく分からなくなるほど、強引に色欲の世界に持ち込んでくる。あまりにも戦略的なアングル、常軌を逸したご都合主義な展開。そしてSEXシーンの下品な擬音。今回の「ジュポッ ギャパップ」というのにはかなり笑った。そのあまりの無軌道ぶりには圧倒されるばかり。かなりヤケクソな感じもする。下品だから嫌いな人も多いだろうけど、耐えて読むべし。無理には勧めないが。
「黒い羊は迷わない」の落合尚之が読切で登場。タイトルは「WONDER WALL」。本格登山漫画である。幼いころからの友達が挑戦し敗れて命を落とした1000m級の大岩壁に、若干18歳の主人公・日置が挑む。冬山登山は極限状況での生死をかけた挑戦だけに、読みごたえのある作品がけっこうある。塀内夏子「おれたちの頂」とか。で、友情と意地が交錯するこの作品もなかなか。できれば前後編にして、も少しページ数があったらなお良かったかなあとは思うけど。
なお、今号の新井英樹「ザ・ワールド・イズ・マイン」は休載。次号のヤングサンデーは木曜日ではなく、1月13日(水)に発売。
1/3(日)……にくげなるハンターD.
「にくげなるちご」で有名な漫画家のナカタニD.が、宮村優子さんという声優の方と結婚されるという情報を、セガ掲示板のアニメの項にて目にする。といっても、それに関する情報を集めてたのではなくて、OHPのアクセス解析の逆リンクにたまたまそのページが引っかかっていただけなのだが。向こうからリンクがあったわけではなく、たまたま上記ページを見たすぐ後にこちらに来た人がいた模様。
【単行本】「あさってDance」全7巻 山本直樹 弓立社 A5
|
|
けっこう前に単行本は買っておいたのだが、ほったらかしにしていた作品。雑誌連載時に読んでいたので、単行本通しではまともに読んでなかったのだ。でも読み始めてみると、実にスルスルと読めて面白い。テンポの良いストーリー運び、セリフ、スレンダーでかつなまめかしい絵柄もかっこよくて読者を飽きさせない。このころはまだ山本直樹もペン描きだったのだなあ、などと思ったりもする。最近の山本直樹に見られるトリッキーな構成でなく、ストレートな青春ラブストーリー。主人公スエキチのアパートに転がり込んでくる、奔放な元・人妻、日比野綾が妖しく色っぽく、激しやすく気まぐれで意地らしくて無邪気で、すごく魅力的。スエキチに向けるカラリとした弾けるような笑顔がとてもいい。山本直樹キャラクターの中でも、トップクラスの魅力的な女性ではなかろうか。
1986年にひばり書房から描き下ろし単行本として発表された作品で、1998年に蒼馬社から再版された。
一読して、子供だましな安っぽさを感じてしまう。水死体となった男が、自分の家族に会いたいという一心で甦る。しかし、身体は腐った死肉のままであり、体組織自体は完全に活動を停止している。とある病院が彼を保護し、治療や実験を施すが、家族への想いが抑えきれなくなった彼は病院を脱走する。強烈な腐臭と崩れ落ちた身体ながら動き続ける彼が脱走したという事実は公表され、世間を恐怖に陥れるが……といったお話。たしかにグロテスクといえばグロテスクなのだが、どちらかといえば死肉男の家族への想いが中心の「いい話」に仕上げられている。それだけにどうにもぬるく感じてしまう。日野日出志にしては描線が太くて単純な絵柄になっているし。日野日出志の場合、もっともっと細部まで描き込まれた、陰惨でグロテスクなお話のほうが好きだ。
コレクターの人は買うべきだと思うが、それ以外の人にはあんまりオススメしない。日野日出志にはもっともっとすごい作品(例えば「蔵六の奇病」「まだらの卵」「毒虫小僧」など)があるので、これから日野日出志に手を出すという人は、まずそちらのほうを先に読んでもらいたいところ。
1/2(土)……謎はすべて解けない!
永山薫さんホームページの日記の12月26日分を見たところ、コアマガジンからコミックジャンキーズの続刊が出ることはなくなったと書いてあった。残念。ああいう情報誌は継続すればするほど、バックナンバーを含めた資料的意義が出てくると思うのだが。「これでほかの出版社にジャンキーズ的雑誌の企画を持っていける」みたいなことも永山さんの日記では書かれていたので、どこからでもいいから復活することを期待したい。
兄貴に岩館真理子「キララのキ」を読ます。だいぶ面白がっていた様子だが、やはり謎解きしてみないとスッキリしなかったようだったので、二人で人間関係整理とかをやってみる。うまくいったら、推理討論みたいな感じで同人誌の原稿にしよう……とかいっていたのだが「謎は謎のまま」ということになり原稿にできるような材料にはならなかった。
結局のところ、登場人物の相関関係や謎に関する説明が、例の家族たちによってしか語られないわけだが、そのキャラクターたちが揃いも揃って信頼に足る語り手でないというのがポイントだろう。信頼できる判断材料が決定的に欠如しているのだ。「証明材料不足により解なし」というのが正解だと思う。少なくとも作品から得られる情報だけでは。そして、「解なし」という答えを自分の中で得たというのはそれはそれで収穫ともいえる。あれこれ考えあぐねる時間がなくなるし。信頼できない情報のいくつかを「これは正しいものだ」と決めつけ、それを前提にして解を導き出すことは可能かと思われるが、その前提だって物語から得られる情報だけでは確実なものにはならないから容易にひっくり返し得る。一見、謎が解けそうな気配がするから余計に居心地が悪いのではないだろうか。謎が完全につまびらかになっていたり、絶対に解けないと分かっていればそれはそれでスッキリすると思う。でも、謎を残したままあれこれ考える余地を残したラストっていうのも、俺はけっこう好きだったりするのだけれども。
とまあ、休みで時間があるとこういう役に立たないかもしれない議論に時間が費やせてうれしい。年末買ったままで消化してなかった単行本も読めるし、というわけで今日は単行本3冊。
イワモトケンチの絵を、中村光信的に描線を太くしたみたいな絵柄。分かりにくいたとえで申しわけないが、イワモトケンチにはけっこう似てると思う。その共通点は、キャラクターのまるで死体のような目つきだ。あと凹凸のない、米粒のような形をした顔の輪郭。イワモトケンチはだいぶ線が細く偏執狂的なのに対して、井上ポルノはかなりコミカルなので、井上ポルノのほうが若干親しみやすいかもしれない。イワモトケンチの絵柄を見てもらうために、検索エンジンで彼のコミックスを画像付きで紹介しているページがないか探してみたが空振り。単行本出たのはずいぶん前なんで仕方ないといえば仕方ないのだけど。
話を戻すが、井上ポルノの腐ったような目つきのキャラクターたちは、かなりイヤったらしい雰囲気を醸し出しており、甚だ爽やかでない。お話もイヤな感じである。靴を履いたら中にイカの塩辛が入っていたとか、そういう生理的にイヤな部分を軽妙につついてくるようなギャグだ。そしてそのイヤったらしさが、井上ポルノの魅力である。上記の靴に塩辛という例においても、自分にやられたらイヤだが他人がやられているのを見るのは楽しい。漫画もまたしかり。イヤなギャグであっても、読んでいる分には毒々しくて楽しいのである。
【単行本】「ねこぢるうどん」1巻 ねこぢる 文藝春秋 A5
|
|
青林堂版の「ねこぢるうどん」1巻に、ねこぢるの夢日記を元にして山野一が描き下ろした20ページの短篇「とうめい」が同時収録されている。そんなわけで青林堂版を持っている人も買わねば、という感じである。「とうめい」は夢を元にしただけあって、霧に包まれたような不思議な雰囲気を持っている。突然、にゃーこの家の前が川に、隣の家がレストランになる。川にかかった橋を渡っていく途中で、向こうから自分がわたってくるのをにゃーこは見る。向こうから来るにゃーこは、自分を通り抜けてそのまま歩いていく。橋から家に戻ろうとすると、たもとにピエロが居て「毎日人のいるところでじっとしていれば、だんだん身体が透き通り、この世の人じゃなくなっていくよ」と語る。……とまあこんな感じで、夢だけあって脈絡はない。しかし、人混みの中で自分を消してしまおうとするかのようなストーリーは、なんだか悲しい雰囲気に満ちている。そう考えてしまうのは、ねこぢるがどういう人だったかという伝聞情報のせいもあるだろうけど、それだけが原因ではないだろう。欠落していること、消えることを受容し、肯定するかのような物語は、読者に虚無感を抱かせずにはおかない。
【単行本】「大人チョップ」 花くまゆうさく マガジンハウス A5
|
|
いつまで経ってもうまくなっているように見えない、ヘタウマでやる気のなさげな描線は相変わらず花くまゆうさくの味である。ほうり出すような画風と弱っちい線は、なんかすごくぶっ飛んだことをやっていてもそれを大したことに見せない。ヘンな行動が、まるで当たり前のことであるかように感じられてしまう。ただ、最近は花くまゆうさくの作品にもだいぶ慣れてきてしまったので、さらなる一手を期待したいところではある。
1/1(金)……犬にこんばんは
お正月でヒマなので、ウチの犬とじゃれたりした。「あけましておめでとう」といってみたが、犬にとっては正月も何も関係なく、いつもとまったく変わらない一日であり主人に腹を撫でられるその感触がすべてなのだなあと思ったりもする。前年の漫画についての総括を去年は書いたが、今年は書かない。面倒くさいので。簡単にいえば、面白い漫画は面白くて面白くない漫画は面白くなかった。以上。
1999年の抱負だが、「そろそろ会社をドロップアウトして高等遊民になりたい」というのがあるが、そのほかでは「一年中強まりっぱなしでいたい」というのも目標。1999年は「しばたたかひろ特別強化年間」と位置づけ、日々精進しないとダメだよ〜ん、って感じか。
サッカー天皇杯はやはり横浜フリューゲルス優勝。薩川も出してやりたかったなあ。本当にいい試合だった。いいもの見せてもらった。フリューゲルスはこれからJ2、J1参入を目指して市民団体として再出発するらしいが(フリューゲルスという名称は使えない気配)、J1に戻ってこれたら、監督は山口素弘にやってもらいたいものだなあ。そのころはそういう年齢になっていることだろう。
それから1月のお買い物予定はこんな感じ。
まずは小田原ドラゴン「おやすみなさい。」が待望の単行本化。それから吉田戦車「油断ちゃん」が案外早く単行本になってくれたのもうれしい。KKベストセラーズのいましろたかし単行本も注目。「森繁ダイナミック」といい、最近のKKベストセラーズはちょっと偉い。
1999年1月 |
日 | タイトル | 著者 | 価格 | 出版社 |
上 | ボンデージフェアリーズ(3) | 昆童虫 | 857 | 久保書店 |
06 | タイムマシン | すえひろがり | 1000 | コアマガジン |
07 | HeRaLD(上/下) | イダタツヒコ | 505 | 講談社 |
07 | イッパツ危機娘(2) | 原田重行 | 505 | 講談社 |
07 | おやすみなさい。(1) | 小田原ドラゴン | 505 | 講談社 |
07 | ALL NUDE | すぎむらしんいち | 未定 | 講談社 |
07 | 超・学校法人スタア學園(14) | すぎむらしんいち | 505 | 講談社 |
07 | カイジ(10) | 福本伸行 | 505 | 講談社 |
07 | どいつもこいつも(1) | 雁須磨子 | 390 | 白泉社 |
08 | 東洋妖人伝用神坊(7) | いとう杏六 | 390 | 秋田書店 |
09 | 東京H | | | 一水社 |
09 | パーコレーション〜Percolation〜 | SUEZEN | 1000 | 角川書店 |
09 | 球魂(2) | 岩田やすてる | 505 | 小学館 |
09 | 同じ月を見ている(2) | 土田世紀 | 505 | 小学館 |
09 | 夢を見る人 | 橋本みつる | 505 | ソニー・マガジンズ |
14 | Jドリーム完全燃焼編(4) | 塀内夏子 | 390 | 講談社 |
中 | 新装版まるまる変丸ショウ | 町野変丸 | 897 | イースト・プレス |
18 | からくりサーカス(6) | 藤田和日郎 | 390 | 小学館 |
18 | 俺たちのフィールド(34)(完) | 村枝賢一 | 390 | 小学館 |
19 | どす恋ジゴロ(2) | 平松伸二 | 505 | 集英社 |
20 | 西遊記天の巻 | 藤原カムイ | 952 | NHK出版 |
22 | COLOR MAIL | 藤原カムイ | 1714 | エニックス |
22 | 蒼天航路(15) | 王欣太/李學仁 | 505 | 講談社 |
22 | 油断ちゃん | 吉田戦車 | 457 | 講談社 |
22 | なるたる(2) | 鬼頭莫宏 | 505 | 講談社 |
22 | 東京幻視行 | 谷口ジロー | 952 | 講談社 |
22 | 新首代引受人(1) | 平田弘史 | 未定 | 講談社 |
25 | 時事おやじ(1/2) | しりあがり寿 | 880 | アスペクト |
25 | 宇宙喜劇M774(仮) | ほりのぶゆき | 880 | アスペクト |
25 | ゲームびと公式ガイド(仮) | 上野顕太郎 | 未定 | アスペクト |
25 | デメキング | いましろたかし | 952 | KKベストセラーズ |
27 | Blow Up! | 細野不二彦 | 838 | 小学館 |
29 | ナィーヴ(2) | 二宮ひかる | 505 | 白泉社 |
30 | ギャラリーフェイク(15) | 細野不二彦 | 505 | 小学館 |
下 | 聖徳太子 | ふくしま政美 | 2500 | 太田出版 |
下 | 彼女がつながれた日 | わんぱく | 886 | 二見書房 |
それと1998年冬コミケで兄が買った分の同人誌。
【同人誌】「けだもののように」II-4 渋蔵 <ぐんたまカンパニー>
|
|
コミックビンゴ!で「神様ゆるして」を描いていた比古地朔弥が同人誌で続けている一連のシリーズの最新刊。このシリーズは、ヒロイン・ヨリ子の妖しく野性的な色気がとてもいい。なまめかしいだけでなく、描線はシャープ。もう長いこと続いているシリーズだけあって、同人誌としては異例の読みごたえ。コミケやコミティアに行く機会があったら、総集編が出ているのでぜひ手に取ってみてもらいたい。「神様ゆるして」は単行本になってほしいところだけど、連載終了からずいぶん経っているし単行本になることはあるまいな。
なお、比古地朔弥名義では、2月中旬から近代麻雀オリジナルにて連載開始とのこと。タイトルは「崖っぷちギャンブラー(仮)」。
【同人誌】「Monaural」前編 冬目景 <かさなや>
|
|
冬目景の絵はやはり美しくかっこいい。少年が亡父の仕事場の書斎で、父を知っているらしい不思議な少女・ニサと出会う。ニサはずっとその書斎にいて帰るところなどないというが、亡父はかなり前から入院し、建物自体が放棄されていた。ニサは何者なのか、父との関係は?というところで以下次号。……なのだが、次号が出るのは1999年の冬コミの予定という、なんとも気の長いペース。最低1年はこの続きが読めないというわけで、もどかしさが募りまくること請け合い。でも、この雰囲気、美しい描画。いいなあ。
【同人誌】「夜の童話」 紺野キタ <Sally Gardens>
|
|
実に綺麗かつ端整、というのが第一印象。スミベタをあまり使わない淡くて白っぽい画面は、なんともふわふわと、またキラキラとした印象を受ける。そしてお話作りも非常に端整綻がない。浮き世離れと思えるほどに、整った清浄な美しさがある。一編一編もきっちりまとまっていて、とびきり上品な面白さだ。紺野キタといえば、偕成社から「ひみつの階段」が2巻まで出ているが、コミックファンタジー休刊のため、残りの未収録部分は単行本が刊行される可能性は低い。同人誌でもなんでもいいので、まとめてくれるとうれしいのだけど。
あびゅうきょが幻惑された、アニメや漫画の美少女たちに関するイラスト+エッセイといった本。あびゅうきょの美しい絵はすごいのだが、内容は病みまくっている。扱われているキャラクターは「青い空を白い雲がかけてった」のヨシベエ、「赤毛のアン」のアン、「未来少年コナン」のラナ、「太陽の王子ホルスの大冒険」、そして「新世紀エヴァンゲリオン」の綾波レイだ。エッセイ部分の真摯さ、そして真摯であるがゆえに恐ろしい迫力を持った切々とした告白に圧倒される。輝かしいヒロインたちに対する憧れと陶酔、嫉妬、憎悪。そんなものが凝り固まっている。ヨシベエとアンの項では模範的男女の恋愛に対する憧れと絶望と憎悪、ラナの項では理想的母親の発見と現実世界での欠落に対する深き絶望、ヒルダの項では自由を手にした女たちに深い憎悪を語る。そして、綾波レイの項においてあびゅうきょは「レイという人工子宮に僕は、魂を移植して、この絶望的世界からおさらばだ」と語る。その病んだ精神性、深い絶望は受け手を慄然とさせる。あびゅうきょは本気だ。大真面目である。それだけに怖い。ホンモノだけが持ち得る迫力がここにはある。
【一番上へ】
ご意見・ご感想は→tshibata@picnic.to