オス単:2004年2月の日記より


 このページは、「OHPの日記から、その月に読んだ単行本の中でオススメのものをピックアップする」というコーナーです。

 日記形式だと、どうしても日にちが過ぎてしまうと大量の過去ログの中に個々の作品が埋もれてしまうため、このコーナーではダイジェスト的にまとめてみました。文章の中身は、すべて日記からのコピー&ぺーストです。加筆・改稿等は原則としてしませんので、普段日記を読んでくださっている方にとっては読む意味がないかもしれません。手抜きといえば手抜きなんですが、まあその点はご容赦ください。

 なお、ここで取り上げる単行本は「その月の日記で取り上げたもの」です。「その月に発売されたもの」ではありません。だから古い本でもどんどん入れていきます。ピックアップした単行本は多少分類してますが、これはあくまでページを見やすくするための便宜上の分類です。かなり適当に割り振ってますのであんまり気にしないでください。あとシリーズものの途中の巻は、わりと省略しがちです。


▼強くオススメ

【単行本】「団地ともお」1巻 小田扉 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 いやあ面白いねえ。素晴らしい。父は単身赴任、母、姉と一緒にとある団地に住んでいる小学生4年生男子・ともおの日常を描いた作品。基本的にはとても頭が悪いけれど元気だけは人一倍のともおの生活を、ユーモアたっぷりに飄々と描いていくのだが、そこにスルッとしんみりした表現を差し挟んで来る手腕が絶妙。例えばギャグっぽく描いている情景から、お父さんがそばにいなくて寂しいともおの気持ちを、本当に嫌みなくなりげなく描き出してきたり。また、カナブンの足にひもをつけて振り回して遊んでいたともおが、森の中で捕まえた新しいカナブンの足がもげているのを見て、自分の行いを反省したり。ギャグと叙情、そのどっちかだけじゃなくて、両方が抜群のキレ味を見せているあたり非常に素晴らしい。ところでどうでもいいけど、読み返してみると最初のころはともおがまだいくぶん頭悪くなさそうな顔していたことに気づいた。最近のほうがより頭が悪そうになっていると思う。

【単行本】「男ロワイヤル」 小田扉 太田出版 A5 [bk1][Amzn]

 小田扉がいろんなところで描いた作品を、細かく集めてできた作品集。収録作品は前にも書いたけど以下に示すとおり。いずれもこの人でしか描けないような味のある作品揃い。収録されてとくにうれしかったのが、日経クリック連載の「エレクトロねえちゃん」と、モーニングの巻末1ページ漫画「男ロワイヤル」の2本。ちゃんと単行本化されるかどうか心配だったんで、なんとなく儲けたような感じさえした。どうせなら小学館と示し合わせて「団地ともお」1巻と同日発売にして、並べて平積みとか狙ったらいいのに、とか思ったりしたが「男ロワイヤル」も「団地ともお」も平積みにするほどには数を刷ってないだろうからそれも難しいかな。

 それはともかく、内容のほうは基本的に短編中編なのであまりあらすじはまとめようがないんだけど、まずは野木さん&古野さんシリーズの数作がいい。OLの野木さんと女子高生の古野さんの生活を描くものだが、破天荒でやることむちゃくちゃな古野さんの恵まれない家庭事情とかに想いを馳せるとちょっと切ない気持ちにもなる。すっとぼけたノリと、そこに共存する切なさは小田扉独特の味。あと「エレクトロねえちゃん」は、パソコン誌連載ながら、パソコンがまんま猫。猫型というレベルでなく普通に猫。1回につき2Pながら、物語がけっこうちゃんとあったりして何気に読ませる作品でもある。

【男ロワイヤル収録作】「百年後の子供」「三十路ときめき」「姉ちゃんが来た!」「野木さんのひと工夫」「お母さん対古野さん」「おんなの手作り」「私のおじさん含み笑い」「ともみの親友」「新学期」「注文が多すぎ」「はじめての草」「エレクトロねえちゃん」「平介の思い出」「男ロワイヤル」「野木おやびん」

【単行本】「犬嶋高校行進曲」1巻 小松大幹 少年画報社 B6 [bk1][Amzn]

 待望の小松大幹(こまつ・ひろもと)初単行本。この人はヤンマガの別冊などで、青臭さが眩しい読切やシリーズものを描いていたころからかなり印象に残っていた。それがヤングキングに移って不良漫画を描いているわけだけど、いや〜、これ面白いよ。とてもいい。自堕落な奴とオタクの吹き溜まりでケンカも弱く、県内ではさんざんにバカにされている犬嶋高校に、ある日一人の男が転校してくる。彼の名前はサダキチ。バカではあるけどやたらめったらケンカに強く人情に篤い彼の登場は、負け犬根性の染みついていた犬嶋高校の面々の心をじょじょに揺さぶっていく……というのが大まかなストーリー。

 不良漫画というとケンカバリバリの抗争ものか、ウダウダ日常モノが多いのだが、これはそのちょうど中間くらいに位置する作品。ただしこの作品自体には、だらーっとしたウダウダ感はあまりない。自分の力で立とうとする者を後押しするような、一本筋の入った物語になっているから。それまで各人の中に眠っていた勇気、希望、夢といったものを呼び覚ますきっかけを、サダキチが与えてくれる。そのさいの各キャラクターの行動、セリフは青くさいけどとてもアツい。ツボにハマるセリフも多くて泣けるのだ。表紙の荒々しいイメージとは裏腹に、しみじみ感動してしまういい漫画です。ヤングキングは何気にこういう気持ちいい漫画が多いんだよね。

【単行本】「SOIL」1巻 カネコアツシ エンターブレイン B6  [bk1][Amzn]

 雑誌読みではお話が追えなくなっちゃいがちな作品なんだけど、まとめて読んだらえらく面白かった。お話は、刑事たちが新興住宅街「そいるニュータウン」で起きた家族の失踪事件を追いかけるうちに、一見申し分なく幸せそうな町の暗闇を覗いていくことになる……という感じのミステリ。謎の失踪事件、現場と近くの学校に残された大量の塩の山、鉄塔の倒壊と、思わせぶりなアイテムが盛りだくさん。うさんくさいくらいに秩序のとれていた町が、事件を境に少しずつ崩壊していく様子はひたひた迫る危うさを感じさせる。町中を監視カメラで覗き町の秩序を保つことに異様なまでの執念を見せる自治会長や、セクハラ癖のあるベテラン刑事ら、登場人物たちのキャラクターも濃厚。謎めいた人物が多く、たいへんミステリアス。少しずつ情報を小出しにしながら進んでいくストーリーは読みでがある。続きが気になる。

【単行本】「読もう!コミックビーム」 桜玉吉 エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]

 本当は昨日、100号めのコミックビームと一緒に読んだほうが良かったとは思うんだけど。内容のほうは、ファミ通に長きにわたって掲載され続けてきたコミックビームの宣伝4コマをまとめたもの。個人的には宣伝漫画ってかなり好きだったりする。「とらのあなの美虎ちゃん」とか「げまげま」とかあーゆーのを見るとなんか安心するのだ。宣伝漫画だけにくったくがないし、普通の物語とかじゃやらないようなヘンなこともやってたりするし。

 で、「読もう!コミックビーム」は、自分がそういう宣伝漫画好きであることを割り引いても面白い部類に入ると思う。あとコミックビームの愛読者であることさえ割り引いちゃってもイケる。けっこうビームの宣伝そっちのけで日常ネタを描いたりしてて、それが時々ツボにハマってついうひょひょひょと笑ってしまう。もちろんビームネタも、日頃楽しんで接してきた雑誌だけにもちろん面白く感じる。この本がきっかけとなってコミックビームが1冊でも2冊でも多く売れるといいなー。そんなわけで読もう!コミックビーム→定期購読:出版社/eS

【単行本】「S60チルドレン」1巻 川畑聡一郎 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 昭和60年代という非常に短い期間に小学生だった、当時の少年少女たちの姿を等身大で描いたお話。学校に行って授業を受けたり友達とダベったり、家でファミコンをしたり……といったごく普通の日常的な営みの中から、その当時、おそらく作者が体験したであろう気持ちを生々しく描写していく。その手つきの丁寧さは特筆に値する。基本的には誰もが見に覚えがあるであろう、友情や裏切り、恋愛や勉強などなどから心情の機微をすくいあげてきており、その鋭さにときおりドキッとさせられる。子供モノではあるが、けっこうドライでクールな部分も多いのであざとい感じはあまり受けない。作画はすごくデフォルメが利いていて独特だが、目が吸い寄せられる味がある。個性的で視点も鋭く面白い作品。

【単行本】「はなしっぱなし」上巻 五十嵐大介 河出書房新社 A5 [bk1][Amzn]

 五十嵐大介の初めての作品集「はなしっぱなし」が復刻。最初のバージョンのデータ等は本田健の植民地に詳しい。非常に丁寧に細部まで作り込まれた画風は、独特のしっとり柔らかい質感。そして次々と繰り広げられるファンタジーに魅了される。ここで描かれるファンタスティックなイメージは、例えば剣と魔法の世界みたいにものすごく現実離れしているわけではなく、現実の身近な風景をちょっぴり脇道にそれたところに、もしかしてもしかするとありそうなものばかり。どんなところにも不思議の種、想像の源は転がっているんですよと語りかけてくるよう。それをありありと具現化する作画の力も素晴らしい。全編を通じるストーリーとか、大きな意味とかはないけれども、そのイメージの奔流に身を任せるのは素直に心地よい。


▼一般

【単行本】「あなたの遺産」 あびゅうきょ 幻冬舎コミックス B6 [bk1][Amzn]

 「彼女たちのカンプグルッペ」「JET STREAM MISSION」と、あびゅうきょの初期作品集2冊をまとめた作品集。両方とも作品の発表時期は1980年代中盤から1990年代頭あたりと、すでに10年以上を経過しているのだが、ものすごく緻密に細部まで描き込まれた絵柄は今見ても新鮮。最近では現代男子の根源的な絶望をこれでもかと描き出した作風だが、このころはまだ多少楽観的な部分もあり。しかしそれでも「あびゅうきょは昔からホンモノだったのだなあ」と感じさせるところは多々あって、精密な描写とバックボーンとなる思想の重厚さに圧倒される。また長編である「JET STERAM MISSION」は、高度1万メートルを流れる風と戦争、それから神話的な要素が渾然一体と絡まりあって崇高な美しさを感じさせる作品に仕上がっている。本当はもう少しデカい判型で読みたかったところだが、まずは入手がいくぶん困難だった初期作品集を、今改めて出してくれたというだけでも感謝せねばなるまい……といった感じです。

【単行本】「氷が溶けて血に変わるまで」 きづきあきら ぺんぎん書房 A5 [bk1][Amzn]

 現在はCOMIC SEED!などで活躍中のきづきあきらが、同人誌で発表した作品を収録した作品集。同人誌時代からきづきあきらの完成度の高さは話題となっていたが、今改めて読んでも面白い。義父から性的な虐待を受けて死を選ぼうとしている姉妹の物語「suicide note」、子供のときに肉体関係を持ったがそれを心にしまい込んだまま成長した兄妹のお話である「WHITE」、性同一性障害を真っ向から扱った「LOVE HORIZON」など、意欲的で胸に響く作品が揃っている。クッキリとした線による作画は一見キュートなんだけど、描かれる内容は切なくて鋭い。甘さと苦さの共存する物語を安易な結論には持ち込まず、きっちり語り上げる真摯な作風は読みごたえ十分。商業誌用に角を丸めてない分、キレ味はこちらのほうが上かもしれない。それがこうやって商業単行本化され、より広い層の目に触れる可能性が出来たっていうのは素直にうれしい。同人作品のストックはまだまだあるはずなので、それもまとめてくれたらさらに素晴らしい。

【収録作品】「suicide note」「WHITE」「氷が溶けて血に変わるまで」「BITTER CAKES」「LOVE HORIZON」「Sweet Cures」「ふってくる日」「SWEET SCRAP」

【単行本】「新世紀エヴァンゲリオン 鋼鉄のガールフレンド 2nd」1巻 作:GAINAX+画:林ふみの 角川書店 新書判 [bk1][Amzn]

 月刊AUKAで連載中の「新世紀エヴァンゲリオン」アナザーストーリー。ゲームのほうはやったことないんで知らないけど、漫画についてはけっこう楽しく読めた。要するにエヴァキャラで学園ラブコメをやるという内容。TV版の最終回あたりを見て「このラブコメパートだけ独立した世界として見たい」と思ってた人には打ってつけ。すでにアニメなどですっかりおなじみで性格は先刻承知なキャラだけに、最初っからスッと物語に入っていけちゃうのが強み。あと学園ラブコメとしても実にオーソドックスすぎるくらいオーソドックスにできているので、読んでいて普通に楽しい。第1巻では幼なじみのシンジとアスカがいる学校にレイが転校してきて、いろいろあった後、レイがアスカにライバル宣言……ってなところまで。キャラクターでいうと個人的にはやっぱりアスカ。なんかふにゃふにゃしているレイよりアスカのほうが見ていて面白い。あ、でもこの作品における、シンジに対していろいろトキめいているレイもこれはこれでいいと思う。

【単行本】「藤田和日郎短編集 暁の歌」 藤田和日郎 小学館 新書判 [bk1][Amzn]

 「暁の歌」は藤田和日郎2冊めの短編集。「瞬撃の虚空」「空に羽が…」「ゲメル宇宙武器店」「美食王の到着」の4作6話を収録。どれも見事にエンータテインメントしてて面白いが、この中では2003年10月9日の日記のサンデーRの項で感想を書いた、「瞬撃の虚空」と「美食王の到着」の2本がとくにいいと思った。「瞬撃の虚空」は、主人公の少年が日頃ばかにしていた祖父が、実は恐ろしい戦闘術の持ち主であるということが判明。その祖父とアメリカが生んだ最強の兵士との戦いを目撃するうちに、少年も自らの弱さに気づいていく……という物語。超高速で戦う爺さんがカッコイイだけでなく、セリフもアツい。「美食王の到着」も、究極の美食を求めて民を圧迫する王、彼に復讐を誓い自らの身体を毒物へと変えた「毒娘」の踊り子、そして王の来賓である「美食王」の3人が織り成す、エキゾチックで痛快なアクションストーリー。作画、展開ともに見せ場のシーンがひたすら気持ち良く、最初から最後までしっかり楽しめる。全体の雰囲気作りも良好。太い面白さにうならされる一冊。

【単行本】「榎本俊二の映画でにぎりっ屁!」 榎本俊二 講談社 B6変形 [bk1][Amzn]

 榎本俊二が映画を語る! ってなわけでヤングマガジンUppersで連載中の、黒田硫黄「映画に毛が三本!」[bk1][Amzn]と並ぶ映画評の漫画コラム。Uppersではこの二人が交互に描いてるんだけど、読むたびに「理想的なレビューだよな〜」と思う。なんといっても紹介している映画が見たくなる。そして漫画自体もユーモラス。面白い。読んで楽しめるエンターテインメントになってるし、しかも観賞欲刺激効果抜群。これは素晴らしい。自分もこんな感じで漫画レビュー書けたらいいのにな……と羨ましくなったりしてしまう。黒田硫黄のほうと比べると、紹介されている映画をコンスタントに見たくなる度では黒田硫黄、ハマるとスゴいのが榎本俊二という感じ。榎本俊二側では、とくにブルース・ウイリスとトム・クルーズは単純に見たくなる。あとクソ映画について描くときの切れ味が最高。「エンド・オブ・デイズ」[Amzn:DVD/VHS]のレビューは何度読んでも笑ってしまう。

【単行本】「DAY DREAM BELIEVER again」全2巻 福島聡 エンターブレイン B6 [bk1:1巻/2巻][Amzn:1巻/2巻

 以前講談社から発売された「DAY DREAM BELIEVER」が復刻。講談社バージョンが発売されたときに書いた感想およびあらすじ等は、2000年11月23日の日記を参照のこと。この作品を初めてモーニングで読んだとき「こんなうまい人がいるのか」と驚いたものだった。シャープでカッコイイ描線、キャラクターの表情のつけ方、印象的な構図取りなどなど、その技術の確かさはとても新人のものとは思えなかった(実際には新人じゃなかったんだけど、かなり長いブランクはあった)。思い描いたものを現実に呼び出す超能力の持ち主である主人公・日下部霞と、彼女の能力に目をつけヤバいヤマに引き込もうとする二人の男の逃避行を描いた物語は、不穏な空気に満ちていて独特の緊張感があった。まあ最終的にはイマイチ分かったような分からんような結末になっちゃうのだけれども、一読すればその実力の高さは誰もが認めるだろうという単行本。現在コミックビームでやってる「少年少女」で福島聡を知った人はぜひ読んでみていただきたい。

【単行本】「はるか17」1巻 山崎さやか 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 就職難で追い詰められていた女子大生はるかが、営業や宣伝をやるつもりで受けた芸能プロダクションに、タレントとして採用されてしまう。そして17歳と年齢を偽ってグラビアアイドルの道を進むことに……というお話。山崎さやかは女性を主人公にした作品を描くのがうまい人だけど、今回はけっこうストレートにカワイイ女の子を描いてきた。まあ最初はお堅い女子大生なんだけど、そのはるかがタレントとしての活動を続けているうちに、秘められた魅力を輝かせていく様子は痛快なものがある。安定感があってしっかり読ませる作品。

【単行本】「男女」 宇仁田ゆみ 白泉社 B6 [bk1][Amzn]

 ヤングアニマル増刊嵐に掲載された作品4本と、フィールヤング、シルキー増刊スパイス、コミックMIUに掲載された作品を1本ずつ収録。若えモンの恋愛模様を、スッキリ暖かく描いた作品揃いで、どれも安心して楽しめる。とくに3話ある「ハレエション」あたりは、普段は職場でカタブツとして通っているけど、プライベートでは特撮ヒーローショーでのハツラツおねえさんと化すヒロイン像が魅力的で個人的にヒット。

【掲載作品】「ハレエション VOL.1〜3」「ファースト「ロクイチ」「ラブライトマン」「コイコイ」「サンアンコー対ラブライトマン」

【単行本】「カミヤドリ」1巻 三部けい 角川書店 B6 [bk1][Amzn]

 人間を怪物に変えてしまう伝染病「カミヤドリ」の蔓延を防ぐため、その感染者を狩るエージェント「右腕(ライトアームズ)」たちが活躍。主人公はその「右腕」の一人であるジラルドと、ジラルドとともに行動する謎の少女ヴィヴィ。三部けいの黒々としたスミベタに迫力があって、かっちょいいガンアクションが展開されている。今のところまだストーリーの大枠が見えてない感じもするので、今後の展開でどんどんヒートアップしていってほしい。

【単行本】「ハライソ 〜笑う吸血鬼2〜」 丸尾末広 秋田書店 B5 [bk1][Amzn]

 前作で吸血鬼となった毛利少年と少女・留奈のその後を描く。小さいころに行方不明となった橘ミコ、彼女をずっと探し続けている弟のマコト、それからナゾの男バヤカンもからんで、生き血を求める闇の世界での争いが繰り広げられる。さすがに丸尾末広だけあって妖艶な作画がとても美しい。あとこの人の作品の中ではわりとストーリー性が強く、スペクタクルで読みやすい。前作「笑う吸血鬼」と比べるとキャラクターが多い分、ストーリー的にはちょっと散漫な感じはするけれど、終盤で毛利少年たちに示される運命は残酷でドラマチック。判型が大きくて美麗な作画を存分に楽しめる点も良いです。


▼エロ漫画

【単行本】「御家庭の快楽」 来鈍 コアマガジン A5 [Amzn]

 エロい! 面白い!! というわけで今月のエロ漫画単行本の中ではイチオシ。近親相姦しているまさにその最中、軍人である父母にそれを発見されてしまった巧・久里子の兄妹。それに対する罰として彼らは、軍が用意したとある作戦に参加させられることになる。それは軍が連れてきた美少女たちと同じ家で共同生活を営み、彼女たちとHしまくることであった……というストーリー。

 まあそんなわけで主人公のお兄ちゃんと女の子たちが、これでもかこれでもかとHしまくるという感じでストーリーの大半は展開。その描写のエロいことエロいこと。女の子は顔つきはしっかり可愛く萌え度は強烈。そして女体のもっちり感、吸いついてくるような質感は特筆もの。指がずぶりとめり込みそうな柔らかそうな乳、ちうちうまとわりつくおくちなど、実用性は抜群。しかも基本的に明るいトーンなので殺伐とせず潤いたっぷり。

 で、途中まではすごく萌えて使えるエロ充満なお話として展開するのだが、ラストに近づくにつれてどんどんぶっとんだ内容になっていって驚いた。とくに最終話のラスト10ページは正直爆笑してしまった。あんまり書くとネタバレになっちゃうのだが、ちょっと書いちゃうと、ちょっとびっくりするような壮大で馬鹿馬鹿しい妹モノになっちゃっている。一人のおにいちゃんに対して、これだけたくさんの妹が群がった漫画というのもなかなか珍しいのではなかろうか。絵といい内容といい、この感覚はなかなかに新しい。てなわけでオススメです。

【単行本】「変態生理ゼミナール」 TAGRO 大都社 B6 [bk1][Amzn]

 これまで未収録だった作品がいろいろ入っててうれしい。このうち中心となっているのが5話分掲載されている「変態生理学ゼミ」シリーズ。人間の変態心理を研究するゼミに入った女の子が、イケメンだけど変態の小麦くんにいろいろ翻弄されるというお話。TAGROという人には、キュートTAGRO、ギャグTAGRO、モラトリアムTAGRO、自虐TAGRO、エロTAGRO……といろいろな側面があるけど、このシリーズはよく考えてみるとそれらのちょうど真ん中へんにある感じで、各要素がだいたい少しずつ詰まっているなーという気がする。ゼミの女の子の松隆さんはカワイイし、絵柄自体は非常にキュート、そんな娘にさりげなくザー汁入りシュークリームを食わせちゃったりするし、ゼミメンバーとして田口くんも登場。なんかいろいろ賑やか、かつパンチも効いてて楽しい。そのほかの作品も、けっこう古めのからちょい古めのものまで織り交ぜていろいろな作風、絵柄の作品が読める。「マフィアとルアー」とかの痛い青春系を期待すると若干違うかもしれないけど、そういう人にも「シ塾教師」とかはわりとよろしいのでは。

【収録作品】「卒業」「ガビガビビバッパー」「VIDEO BOY BIDEO GIRL」「ギュッデイ ギュッバイ」「入学」「シ塾教師」「Hooky Pooky」「宇宙のリボンちゃん」「南の島の浮浪人」「HAPPY LIFE」

【単行本】「資本主義の精神」 まぐろ帝國 茜新社 A5 [Amzn]

 OLという存在が、社員の皆さんがスムーズにお仕事できるようその肉欲を処理する係であるという世界の物語。会社のおける「縁の下の力持ち」として、頑張ってお仕事している女性たちを描いたお話デース。別に肉奴隷がどうのこうのといった陰惨なところはなくって、あくまで仕事として明るく、お茶くみやコピー取りみたいな感覚で社内セックスしている様子はけっこうシュール。彼女たちとやる男側のほうは顔とか全然描かれないのも特徴的。まぐろ帝國の作風からは、いつも隙あらばヘンなことをやってしようという意欲がうかがえるのが頼もしい。コミック天魔はストレートに実用狙いな作品が多い雑誌なのだが、その中ではかなり珍しい存在。この作品については、1冊まるまるやるのはちと長すぎかなという気もするけど、最近はヘンなエロ漫画を描く人は少なくなってきているのでこういう人は貴重だと思う。まあ絵柄的には十分実用に供せそうだし、エロ度の高い表紙もキャッチーだから、それを隠れ蓑にしてぜひどんどんヘンなことをやってってほしい。

【単行本】「ふくろのなかみ」 池上竜矢 ヒット出版社 A5 [Amzn]

 池上竜矢としては8年ぶりにして3冊めの商業単行本だそうな。全2冊は非エロで大棚ザラエの原作付き「アミテージ・ザ・サード」全2巻[Amzn:1巻/2巻]。で、この単行本は阿ウン掲載作品をまとめたもの。どうも「おっとりした顔のめがねっ娘」が好きらしくって、そういうキャラがヒロインな作品が中心。ときにダークなお話もあるんだけど、持ち味がとくに発揮されているのは明るいドタバタコメディのほうだと思う。とくに実の息子にラブラブな女教師が、その息子を学校でも家でものべつまくなしHに誘おうとする富岡双葉&真琴の母子シリーズが読んでて楽しい。明るくカラッと元気な作画とノリの良いストーリー回しで面白おかしく読んでいける。エロシーンもけっこうテンションが高くて実用面でも十分なものがあるし、なかなかいい感じに仕上がってるといえるんじゃないでしょうか。


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