オス単:2005年12月の日記より


 このページは、「OHPの日記から、その月に読んだ単行本の中でオススメのものをピックアップする」というコーナーです。文章の中身は、すべて日記からのコピー&ぺーストです。加筆・改稿等は原則として行っていません

 なお、ここで取り上げる単行本は「その月の日記で取り上げたもの」です。「その月に発売されたもの」ではありません。だから古い本でも入ってくることがあります。ピックアップした単行本は多少分類してますが、これはあくまでページを見やすくするための便宜上の分類です。かなり適当に割り振ってますのであんまり気にしないでください。あとシリーズものの途中の巻は、取り上げないことが多いです。


▼強くオススメ

【単行本】「青い花」1巻 志村貴子 太田出版 A5 [bk1][Amzn]

 マンガ・エロティクスFにて連載中の、たいへんステキな百合漫画。すでににゅーあきば.comのほうでレビューをアップしちゃっているので、そちらのほうをご参照いただくのもよろしいかと思います。あっちは画像付きですし。まあそんなわけで繰り返し書くことになっちゃいますが、本作の舞台は鎌倉。高校入学とともに、久しぶりに幼いころに過ごした地に戻ってきた女子・万城目ふみさんは、そこでひょんなことから子供のころの親友であった奥平あきら、通称あーちゃんと再会。それによって昔彼女に抱いていたほのかな恋心が蘇るが、通い始めた学校でバスケ部の先輩女子・杉本サンに気に入られ、彼女とおつき合いを始めることに……。

 ってな感じで女の子同士の恋愛物語が、トキメキたっぷりに、美しく展開していきます。志村貴子といえば抜群に漫画がうまい人だけど、この作品もまた素晴らしい。まずはキャラがいい。美人でなんでもできそうでいながら実は恥ずかしがり屋で泣き虫のふみちゃんが、なんともおくゆかしくてかわいらしい。そして彼女が杉本センパイにアタックされてドギマギしたり、あーちゃんのことを思ってもやもやするあたりの甘酸っぱさにも、これまたドキューンとくるものがある。それから見せ方もうまい。そんな激しくお話が動いているわけではなくとも、間の取り方が絶妙なんで、スルスルと物語に引き込まれていってしまう。

 このままふみちゃんと杉本センパイがラブラブなままでいくのか、それともあーちゃんのほうに傾くのか、そのどちらでもない道に行くのか。今のところまだそこらへんは全然分からないけれども、どうなっていこうと面白そうだし、このまま物語に身を任せてればオッケーだろうなあという信頼感みたいなものはあります。続きも楽しみだー。

【単行本】「へうげもの」1巻 山田芳裕 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 面白いですねえ。織田信長の家臣にして、茶器などの「名物」にはからっきし弱い数奇者・古田左介の生き様を描いていくという物語。武人として身を立てるため、勲を強く求める気持ちはあれど、いざというときには物欲がむくむくと頭をもたげてしまう。そんな左介を、ときにコミカルに、ときにかっこよく描き出す物語は痛快至極。信長や千利休など彼より格上の数奇者たちも鮮烈な印象を残す。また、強烈なデフォルメを効かせた描写はダイナミックで迫力満点。洒落ていつつも豪胆。大変愉快。

【単行本】「ボーイズ・オン・ザ・ラン」1巻 花沢健吾 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 ヴァーチャル世界に逃げ込んだダメ男の恋愛ストーリーを描いた前作、「ルサンチマン」で名を売った、花沢健吾の最新作。この作品の主人公はガシャポンを作ってる弱小メーカーの営業マンである田西敏行27歳。営業マンとしてはいまいち使えず、不器用にしか立ち回れない彼の、恋愛やら苦悩やらを描いていく。基本的に現実離れした事件とかは起きず、どこにでもありそうな青春ストーリーなんだけど、これがしっかり面白い。読みやすいし、絵に力があって印象的なシーンも多々。

 みっともない男を描くときの暑苦しい筆致、リアリティには素晴らしいものがあるし、それとは対照的に女性の描写も鮮烈。とくに田西のことを好ましく思っている後輩女子である植村ちはるちゃんは絶品。平凡な娘さんではあるのだが、表情がとてもいい。彼女の人なつこい笑顔、恥じらいの表情、ふくれっつらなどなど、なんかズキューンと来てしまう。この1巻については、ちはるちゃんのためにあったといっても過言ではないでしょう。お話としては、このまま田西があがき続ける感じでいくのかな? まだなんかあるのかもしれないな〜とも思うけど、現時点でも十分魅力的な一作。本当に先が楽しみ。


▼一般

【単行本】「ソラニン」1巻 浅野いにお 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 青春モノの俊英、浅野いにおの週刊雑誌初連載。現在ヤングサンデーにて連載中。お話のほうは、バンド活動に未練を残したまま大学を卒業しフリーターに近い生活を送っていた青年・種田と、その彼女の芽衣子。同棲中の二人の、将来への希望と不安が交錯する青春模様を描いていくという青春ストーリー。前に踏み出せず、実家に戻るという選択も避け、進むも退くもままらならぬ自分たちの現状に不安を抱いていた芽衣子は、種田に再び音楽をやれと焚き付けるが……。

 これまでサンデーGXで活躍していた浅野いにおだが、青くささの強い青春ストーリーの描き手としてはすでにかなりの技量を持っている。作画はスッキリとしてシャレていつつ愛敬もあるし、画面構成も読みやすい。また日常に退屈してもやもやを抱えている若者たちの描き方がとてもうまい。この作品も現状に依存したい気持ちと前に進みたい焦りを抱えた恋人たちの姿を、ときに甘く、ときにほろ苦く、しっかり描き込んでいると思う。週刊雑誌でもしっかり描き続けていて破綻を見せていないし、絵も着実に上達していて大したモノ。お話のほうは、1巻の最終話を受けて急展開しているけど果たしてどうなるか。すでに完成度はかなり高い人だが、せっかくの週刊連載。ここで一気にステップアップしていってほしい。

【単行本】「こどものじかん」1巻 私屋カヲル 双葉社 B6 [bk1][Amzn]

 今ネット上では旬な作品となっているようですな。ロリで萌えでわりとエロいということで話題になっているけど、漫画自体の内容も面白いと思います。ストーリーのほうは、新任の男性教師が、担当クラスの小学3年生小悪魔的女子・九重りんちゃんに迫られちゃって、ドキドキな日々を送る……という「そりゃヤバいでしょ」的ラブコメ。りんちゃんは学校で下着を見せつけてみたり、迫り方がなかなかきわどい。突き放したり甘えてみたりのヒット&アウェイ戦法も駆使して、先生を翻弄。でもまだまだ子供だという弱さも見せてみたり、なかなか駆け引きが巧み。その揺れ動きっぷり、濃厚で甘いラブコメ風味が読んでいてとても楽しい。

 表現についても大胆。大人と小学生という年の差ラブコメで、しかもちょっとエッチっぽいという、今時ヤバめなネタをコミックハイ!というマニア誌だがどちらかといえば一般誌寄りにある雑誌で展開。でもきわどいことやりつつも、ちゃんと抑えは利かせてる見せ方はうまいですな。見えそで見えないチラリズム感覚に近いとでも申しましょうか。いやまあパンツくらいはモロに見せてはいるんですが。そんなわけで、わりと「エロい」ということが強調されがちな作品ではあるけれども、りんちゃんがなぜ先生に惹かれているかといった内面的な描写も少しずつやってて、ストーリー的にもなかなか楽しめるものがある。

 脇役では、りんちゃんに同性愛的な好意を抱く、おともだちの黒ちゃんも面白いキャラ。自分は巨乳派なので、先生の同僚の巨乳先生も気になるところではありますが……。まあそんなわけでいろいろ楽しく、私屋カヲルの芸達者ぶりが存分に発揮された一作といえましょう。

【単行本】「ニコイチ」1巻 金田一蓮十郎 スクウェア・エニックス B6 [bk1][Amzn]

 ドタバタしてて楽しい作品。恋人が遺した幼い子供を引き取った主人公・須田真琴だが、母を慕う子は彼になつかず、しょうがないから彼は女装して母親を演じることに。そしてそのまま時は過ぎ、彼は息子の前&近所では女装して良き母を演じ、会社に行く前にメイクを落として男に戻る……という二重生活を続けていく。

 まず風変わりな状況設定が面白いし、そこに真琴が通う会社に勤める女の子・藤本菜摘ちゃんがからんできて、さらにお話はゴロゴロと転がっていく。男として会社で接するときは彼女に嫌われ、女としてプライベートで接するときは彼女に好かれ……というドタバタ模様が、非常に楽しく展開していく。主人公が動けば動くほど、女装をカミングアウトしづらくなるが、息子&菜摘にバレそうになる危険性も増していくという作りがうまい。絵柄的にもスッキリしてて読みやすいし、主人公の女装時の美人ぶりと通常時のヘタレぶりの落差や、息子&菜摘のかわいさなど、キャラに可愛げがあるのもいい。よくできてると思います。

【単行本】「殻都市の夢」 鬼頭莫宏 太田出版 B6 [bk1][Amzn]

 いつかどこかに存在したかもしれない、ちょっと未来チックで退廃的な都市で繰り広げられる哀しい人間模様を描いた全7編の連作。愛する女性のクローンを作っては殺し続ける男、餓死寸前のところを不治の病を持つ男に助けられ3年後彼と同じ病で死ぬ運命を得た少女、街の下部階層にあるどことも知れぬエリアに住む少女……などなど、さまざまな人間たちの物語が語られていく。それぞれに孤独と愛を抱えた人々の物語は、ささやかだけれど心に切なく響くものがある。各話とも完成度が高く、読みごたえのある単行本になっている。

【単行本】「太臓もて王サーガ」1巻 大亜門 集英社 新書判 [bk1][Amzn]

 現在週刊少年ジャンプで連載中、「無敵鉄姫スピンちゃん」の大亜門の最新作。2000人以上のナオンにフラれ続けた異世界の王子・太臓が、人間の世界の学校にやってきて、うっとうしさを発揮しまくるというギャグ漫画。特徴はとにかくジャンプをはじめとした他漫画のパロディネタがてんこ盛りである点。「そういうことやっちゃいますかー!!」ってなぶっちゃけたネタが多くて面白い。ジャンプ漫画を読み込んでいる人であればあるほど、ウホッ!とかいいながら楽しめるんじゃないかと思う。次から次へとギャグを繰り出すテンポの良さもグッド。まあパロディネタをやりすぎちゃうのもどうかという気はするけど、ネタが続く限りはまあいいかな。そういえば作者コメントによると、ジャンプ漫画のネタを使うときは、いちおう編集者がその元ネタの作家さんに話は通してるんだとか。ここらへんは偉いですな。

【単行本】「漫画家超残酷物語」 唐沢なをき 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 スピリッツの増刊系でちょこちょこやっていた漫画家をネタにしたギャグ漫画だが、これはすごく面白い。漫画家自身が漫画家をネタにするというのは、けっこうリスキーなもの。下手なことやると「何様のつもりじゃー」的な反応を招いてしまう危険性がある。でもそこらへんは唐沢なをきはキャリアのある人なんで納得できるし、きちんと「漫画家」という職業を客観視して、ギャグとしていじり倒している。その力加減は絶妙だと思う。マニアックではあるんだけど分かりにくくはないし、ネタのヒネリ方もさすがとうならされる。まあ実際に漫画を描いている人にとっては、身につまされるところもあったりはするのかもしれないけど、個人攻撃や皮肉にはならず、あくまでカラッとしていつつもディープなギャグに仕立ててるのが素晴らしい。漫画家という面白い素材を実にうまく料理していると思う。さすが唐沢なをきだ、と膝を打ちました(実際に打ってはいないけど)。

【単行本】「サマータンク」 吉田戦車 講談社 A5 [bk1][Amzn]

 この作品は馬鹿馬鹿しくて好き。夏を愛する夏防衛隊と冬を愛し夏を撲滅せんとする秘密結社・冬々団の、アツくてヘボい戦いを描いたナンセンスギャグ漫画で、夏防衛隊に所属する少女スパイの父村ジュン、それからその父親であるジョーが、なんかしょうもない活躍を繰り広げていく。そもそも設定からしてシュールなのだが、父村ジョーをはじめ、やけにグラマラスな雪ダルマとか、キャラも変人揃い。すべての季節を冬化しようとする冬々団の活動は、「ちくちくウニウニ」に出てきた「海埋め団」を思い起こさせる無駄っぽさがある。その存在の無益さにはおおいに興趣をそそられた。父村ジョーの何事が起きても揺らぐことのない無敵の暑苦しさ、猫好きなキャットラバー准将の変態っぽさなども面白い。イブニング連載時はちょっと地味かなと思ったけど、まとまってみるとけっこう笑えた。吉田戦車はやっぱりいい。しみじみ好きだ。

【単行本】「短編マンガ集 バニーズほか」 笠辺哲 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 現在で月刊IKKIで「フライングガール」を連載中の笠辺哲の初単行本。いかにも古き良き時代の作品って感じのまんがまんがした絵柄で、飄々とした味のある短編を執筆。SFチックな作品あり、ショートコメディあり、シュールな短編ありで、内容もバラエティに富んでいる。収録作品の中では、コインロッカーがタイムトンネルになってしまい、現代からは食物、異常寒波に襲われた未来からはすっかり価値を失ってしまったお金という具合に、時代を越えた取引をする「ロッカー貿易」が個人的には好み。なんとなく西岸良平や藤子作品みたいな雰囲気があって楽しい。

【単行本】「花ボーロ」 岩岡ヒサエ 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 学校が舞台のほのぼのとした読切形式のショートストーリー10本を集めた単行本。独特のちょこんとまとまったかわいらしい絵柄が面白いし、日常の中にファンタジーを感じさせる作風も良好。風景描写も細かくて美しい。小さくかわいくまとめていく方向性の作品だが、この人の場合はそのちんまり感がかもしだすかわいさが味なのでこれはこれでオッケー。個人的には、絵にもうちょっと潤いみたいなものが出てくるとさらに良いかなという感じもするけど、完成度は非常に高いので下手にいじる必要もないかな。

【単行本】「ゆめの底」 岩岡ヒサエ 宙出版 A5 [bk1][Amzn]

 「夢ができる場所」である、生と死の中間点みたいな不思議な世界にあるコンビニを舞台にしたファンタジー。主人公はそこで手伝いをやってる女の子。そのコンビニの店長さんや、店を訪れる魂たちらの間で、胸を締めつけるような切なさ、そして暖かさが同時に存在する、静かで優しい物語が展開される。元は同人誌で描かれた作品だけど、完成度はかなり高い。独特の細い線で丁寧に描かれたちんまりした絵柄がとてもかわいく、また情景描写も幻想的で不思議な感触がある。新鋭ながらもすでに作風は完成されてて、パッと見てすぐ岩岡ヒサエだと分かるオリジナリティもある。ただ完成された作風だけに、このあとどういうふうに伸ばしていけばいいのかはちと見えにくいタイプだとは思うので、そこらへんはうまいことやってってほしいところではあります。


▼エロ漫画

【単行本】「小池田さんと遊ぼう!」 みた森たつや コアマガジン A5 [Amzn]

 ラブラブで甘甘、エロエロで濃密。いやあいいですね。普段は愛想がなくてとっつきにくい、でも実はよく見ると美人で巨乳な小池田さん。そのクラスメートの木村くんが彼女が学校をノーパンで歩き回っているところを目撃してしまい、そこから彼女との変態セックスまみれの生活が始まっていく。小池田さんは普段は目立たないけど、エッチになるとたいへん積極的。そしてMっ気バリバリ。そんな彼女に触発されて、木村くんも自分の中に眠っていたSとしての素質を見る見る開花させていく。

 で、この二人がほぼ全編にわたってのべつまくなしやりまくる。放課後の教室で、屋上で、学校や公園のお便所で、町中で、木村くんのおうちで……。とにかくセックスの相性が良すぎな二人の行為はどんどんエスカレート。終盤は木村くんが所属する「バイト部」に恨みを持つ生徒会長によって二人はピンチに陥るんだけど、それがまたいっそう絆を強化。そのセックスがディープになっていくのに伴い、二人の恋愛感情もまた高まっていく。エロのハードさと恋愛感情が正比例している。そのラブラブな様子には、トロけるような甘美さがある。

 また小池田さんのキャラは終始魅力的。エッチには貪欲ながらもさまざまな恥じらいの表情を見せてくれて飽きない。初めて木村くんの家に行ったときに、彼の匂いのついたふとんに欲情しまくって恥ずかしがるあたりなんかは、くわーっとくるかわいさ。エロシーンの前の欲情と好奇心、期待に満ちあふれた表情なんかもいいし。まあ正直、バイト部がらみの話はちと説明不足な感もあるけれども、そういった細かいことは吹っ飛ばしてくれるくらいにこのカップルのテンションは高いし、見てて面白い。といったわけでとても満腹感のある作品でした。

【単行本】「ブルマー200X」増補改訂完全版 SABE ワニマガジン社 A5 [bk1][Amzn]

 SABEが描いたブルマーフェチ漫画の未収録分を完全収録。ブルマーシリーズでは過去に「BLOOMER 1999」という単行本が出ているが、こちらでは「ブルマー1999」と「ブルマー2001」しか収録されていなかった。しかし今回は、「ブルマー2002」「ブルマー2002.4.27」「ブルマー1998」「ブルマー小競り合い(前)(中)(後)」「ブルマー外伝 ブルマの里物語 アケビちゃん」と大幅に増補がなされて、SABEブルマー世界を思いっ切り堪能できるようになった。

 このブルマーシリーズでは、ジャッキー・チェン似の弟と、ブルース・リー似の、ともにブルマーをこよなく愛してやまない兄弟が、「北斗の拳」よろしき世界を展開する。それぞれブルマーを愛しつつも、ブルマーを着けたままヤルか、脱がしてからヤルかなどの細かい点で対立したり、とにかく下らない争いを繰り広げる様子がすごく面白い。「ブルマー小競り合い」では、ナイロン派とポリエステル派で抗争が勃発。最初っから最後までブルマ尽しのアホさ加減に心揺り動かされる。

 自分はブルマーについてはよく分からんのだけど、フェチ心をこれでもかと出しつつ、ぶっとんだ下らない作品に仕上げてて笑える。やっぱSABE作品はおもしれーなーと痛感。実に素晴らしい。

【単行本】「ぼっきーず」 秋緒たかみ 松文館 A5 [Amzn]

 田沼雄一郎のショタ方面での名義、秋緒たかみの作品集。というわけで当然のことながら少年と少年がからむ漫画ばかりだけど、なかなか面白かった。少年たちがピッチピチにイキが良く、エロ度も高い。女の子のような美少年から、いかにも腕白そうなガキ、ロボ少年までいろいろなタイプが揃っててバラエティに富んでるし、彼らが激しく求め合うさまは艶めかしい。この人は男性向け作品でもかわいい少年を描くことは多かったけど、こちらでも自分の趣味をバリバリ出している。今の男性向けエロ漫画で、田沼雄一郎作品がウケるかというと、ちょっと微妙かなと思うが、ボーイズラブ方面はかなり適材適所な気がする。あっちの雑誌では「エロ担当」ということになっているらしいけど、男性向けで培った濃厚なエロ描写技術はしっかり生きている。メイン読者層であろう女性の反応がどうなのかは知らないけど、イキイキ楽しそうに描いている感じが伝わってくるし、良いと思います。

【単行本】「こいするからだ」 井ノ本リカ子 晋遊舎 A5 [Amzn]

 今回はずいぶん表紙がオシャレ。白っぽくて淡い色使いのイラストに白地のバック、それからコート紙じゃなくてざらざらした手触りの紙質など、オシャレ系な出版社の本みたい。まあ井ノ本リカ子のふわふわした甘い絵柄には合っているといえば合ってるんだけど、エロ漫画的にはあんまりオシャレすぎると受けにくいような気も。もしかして通常のエロ漫画読者層以外にも売りたいという目論見があるのかな。井ノ本リカ子はボーイズのほうでもやってたことあるはずだし、この上品な表紙なら女性読者層も比較的手にとりやすいかもしれない。

 まあそれはともかくとして、内容のほうはいつもながらに良いです。最近はとくに姉モノというか年上のおねえさんものが好評な井ノ本リカ子だが、この作品集には年下や同級生ものもけっこうあり。でもどの作品でも持ち味を存分に発揮されてて、ふよふよした体つきの女の子との甘〜いエッチが堪能できる。3本収録の「教えて!おネエさん♥」では、お姉さんが弟とその友達2人にいじられちゃって多人数プレイ状態だけど、殺伐とすることはない。どの作品も多幸感あり。ふわふわした甘ったるい空気で包み込んでくれる内容でありつつ、けっこう実用面でも悪くない。うまいですなあ。

【単行本】「ずーふぃりあ・しんどろーむ」 栗田勇午 三和出版 A5 [Amzn]

 いやー、あいかわらず栗田勇午はすごい。というわけで獣姦大好き栗田勇午の第2作品集。掲載作品の中では、初の長期連載である「ソナちネ」がやはり凄い。人里離れた僻地にある女子校の畜産関係施設で、生徒たちに代々受け継がれている習慣、つまり家畜たちとの性行為の模様をじっくり描いていくという内容。最初は犬程度だけど、その後は豚、さらには……という感じでだんだんエスカレート。主役格のYAWARAちゃん(もちろん漫画のほう)に似た女の子も超順応を見せる。すっかり獣たちとのセックスに魅せられた彼女が、これ以上ない爽やかな笑顔で「いいよ!ガバガバのユルユルになっても」「もう人間とは一生セックスしないし」といい放つシーンでは、思わず感動さえしてしまった。

 あとそのほかの短編では、家畜以外にもさまざまな獣に挑戦。そのチャレンジャーっぷりには思わずうなる。エロ漫画で獣姦が出てくるのは、たいてい悪い奴が女性を凌辱してどん底に叩き落とすのが目的だけど、栗田勇午の描く獣姦は驚くべきことにほぼすべてが和姦。女の子たちが獣に魅せられ、その虜になっていくというパターンばかり。それだけに凄いことをやっているのだけど、殺伐とはしない。「そんなの俺の獣姦じゃねえ!」と思う方もいるかもしれないけど、これはこれで素敵な世界を作り上げてしまっているのも確か。こういう作品を載せてくれるフラミンゴRは、これからもずっと続いていってほしいもんだなあと思います。あ、あと表紙裏のたがみよしひさライクな漫画もけっこう面白かった。


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