オス単:2006年9月の日記より


 このページは、「OHPの日記から、その月に読んだ単行本の中でオススメのものをピックアップする」というコーナーです。文章の中身は、すべて日記からのコピー&ぺーストです。加筆・改稿等は原則として行っていません

 なお、ここで取り上げる単行本は「その月の日記で取り上げたもの」です。「その月に発売されたもの」ではありません。だから古い本でも入ってくることがあります。ピックアップした単行本は多少分類してますが、これはあくまでページを見やすくするための便宜上の分類です。かなり適当に割り振ってますのであんまり気にしないでください。あとシリーズものの途中の巻は、取り上げないことが多いです。


▼強くオススメ

【単行本】「ZOOKEEPER」1巻 青木幸子 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 地味ながら、なかなか良い作品です。お話は、動物園で働く職員さんの物語。主人公である楠野香也はちょっとどんくさそうな感じの新米飼育係だが、実は彼女は「温度の変化を目視できる」という特殊能力の持ち主。その力をうまいこと利用しながら、またやり手の園長に利用されながら、トラブル続きの業務を行っていく。

 まあそんなわけで動物園モノではあるのだけど、この作品は作りが非常に丁寧。世話をする対象となる動物たちの習性をしっかり説明し、それぞれに合った飼育方法とは何なのかということを一つ一つ探ろうとしているのがいい。また主人公は特殊能力の持ち主ではあるんだけど、その能力自体は外に現れるものではないから非常に地味。しかも役に立つ場合と立たない場合がある。ちゃんとできることできないことを見極めながらお話を進めているので、特殊能力でなんでも解決〜ばんざーいってな底の浅い物語になっていない。

 あと動物園というものを運営することの意味について真摯に問い掛けているのもいい。なぜ人間が他の動物の命を扱おうとするのか、見世物にしているのか、そういうことをきちんと意識しながらより良い飼育の仕方、展示方法を探っていく様子はかなり読みごたえがある。絵のほうもちょっと固めではあるものの、スッキリしてて完成度は高いし、内容が濃いわりに読みやすい。青木幸子はこれが初単行本だけど、以前からなかなかいい作品描く人だなーとは思っていたので、今後もぜひ頑張っていってほしい。期待してます。

【単行本】「世界の孫」1巻 SABE 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 さすがSABE。ぶっ飛んでて面白い。にゅーあきば.こむでもレビューしたけれども、本作は中学生なのに顔といい振る舞いといい、全身から「孫っぽい」オーラを放っている少女・甘栗甘水をめぐる物語。彼女の全身孫ならざるところなしってな姿を見るや、老人たちは孫かわいがり欲を煮えたぎらせ、すぐさまメロメロ、目に入れても蚊がさしたほどにも感じんわ状態に陥る。その孫パワーは、老人だけでなく若者にまで及び、人々はこのお孫にかまいたいという欲求に身を焦がし、孫かわいさに身を持ち崩していく。

 そもそも「孫」という目のつけどころからしてスゴいのだが、それをかわいがる快楽を、まるで麻薬のごときものとして描いていく様子がたいへんに素晴らしい。孫かわいがり心が募るにつれ、周囲の人々、例えばお世話係を任された委員長らは正気を失って、目が血走ってくる。学園アイドルの座を甘水に奪われた女教師や妹キャラ同級生も、いずれもマトモじゃない。とくに女教師のイカ子先生はすごい。イカ子という名前どおり、イカが大好きで、身体中に生イカを仕込んでそれを武器にするし、家ではイカ好きの下僕どもにかしずかれているし。なんか変態どもが群をなしている。

 お話のほうも、回を重ねるにつれて孫パワーの影響が大きくなっていき、どうなっちゃうんだかサッパリ予想がつかないぶっとび状態に突入している。この先どうなるのかすごく楽しみだけど、「地獄組の女」とかを見ても分かるとおり、たぶん予想しても意味ないんでしょう。もうどんどん好き放題やっちゃってほしい。

【単行本】「わにとかげぎす」1巻 古谷実 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 なんかすごくじんわり面白い。長いことスーパーの警備員をやっている32歳男・富岡。学も技能もなく、人付き合いがものすごく苦手、ずっといじけた人生を送っていた富岡だが、いつも一人で適当に警備していればいいスーパーの警備員の仕事にはかなり満足。夜中にスーパーの階段で筋トレしたり、屋上でジョギングしたりと自由にやっていたけれども、気がつけば独身、もちろん恋人はおらず、友達さえ一人もいないホントーに孤独な状況に陥っていた。

 富岡は友達を欲したりはするものの、具体的な行動はとくに起こすでなく、日々の生活に流される。まあそんな中で、富岡を脅迫して警備員をやめさせようと奴が現れたり、借金まみれのおっさんの尻ぬぐいをさせられることになったり、あろうことか富岡に惚れる美人まで現れたりするのだが、富岡の生活自体は本当に少ししか変化しない。平々凡々としているようで意外とヘンなことをやっていたり、不穏な展開もあったりはするのだけど、ものすごいクライマックスって感じにはならず、むしろ富岡を外したところで事態が動いていく。

 最近の古谷実は「本来主人公になりようもない人物」「決着したんだか分からない決着」「クライマックスに至らない物語」といったものを、すごく意識的に描いているような気がする。本作の主人公・富岡も、普通ならばけして主人公になりようのない人物。戦隊モノに例えれば、グリーンはもちろんのこと、敵の戦闘員や味方の基地の下っ端研究員でさえなく、せいぜい研究所にプロパンガスを納入する会社の作業員ってところだろうか。

 お話のほうも 富岡が今よりちょっと欲張ったり、一歩踏み外せばものすごくタイヘンなことになっちゃいそうな感じではあるけれども、ドラマチックな事態というのは、富岡みたいな人はひょいと避けて進行しそうに思える。連載のほうは今かなり不穏な展開になってるけど、富岡自身は今のところほとんどといっていいくらい事件に関わってないし、この先、何か重要な役割を果たしそうにも思えない。富岡が気づくころには、彼に関係のないところで事件はあいまいに一段落しちゃってそう。

 まあそういう意味では、平凡な日常の危うさ、貴重さを描いた物語といえなくもないんだけど、そこまで切羽詰まってるかといえばそんなこともなし。身に余る幸福や圧倒的な不幸が訪れるわけでなく、中くらいの下のほうくらいの半端なあたりでゆらゆらぬるぬるお話が進んでいっていて、そこに妙な心地よさ、気楽さがある。ダメ人間漫画といわれるタイプの作品は最近多いけど、本作はガツガツ反省するわけでもなく、開き直って現状肯定するわけでもない、独特のスタンスを保っている。あぶなっかしいけどどこかマヌケでもある、なんとも不思議な生ヌルさのある作品といえましょう。

【単行本】「夜明け前より瑠璃色な」1巻 作:オーガスト+画:脳みそホエホエ メディアワークス B6 [bk1][Amzn]

 今週のにゅーあきば.こむのレビューはこの作品にしました。ゲーム原作だけど、漫画版のほうもこれがけっこうイイんですよ。月の王国の王女さまが、主人公である達哉の家にホームステイすることになって、そこでほのぼのした日常生活が繰り広げられていくという作品。なんといってもこの作品では脳みそホエホエの絵がいい。シンプルだけど暖かみがあって、たいへんかわいらしい。なんだか見ててとても気持ちの良い絵なんだよね。んでもってラブコメとしてもなかなか良い出来。王女さまであるフィーナの気持ち自体は1巻の時点ではハッキリしてないけど、フィーナと達哉が仲良くしているのを見て胸をチクチクさせている、幼なじみっ娘の菜月ちゃんが、たいへん健気でグッド。楽しく読める作品なんでこれからも楽しみ。


▼一般

【単行本】「わがまま戦隊ブルームハート!」1巻 石田敦子 幻冬舎コミックス B6 [bk1][Amzn]

 5人の少女が「少女戦隊ブルームハート」に変身して、街の平和を守るという変身ヒロインもの。そんなわけで一見すごく明るいノリで始まるんだけど、実に石田敦子らしく、ただ明るかったりメルヘンな話で終わったりはしない。お話が進むにつれ、ブルームハートや助けられる人々の心の中のドロドロしたものが見えてきて、しだいにキッツい状態になってくる。ブルームハートの優等生なお嬢さまがミスは多いけど屈託なく明るいメンバーを妬んでみたり、誰を助けるかの基準が平等でないと人々になじられたり、安易に表面的な救けの手をさしのべることの是非を問われたり……と、少女ヒロインに対して厳しい判断をどんどんつきつけていく。かわいいからといって絶対甘やかしたりしないところは、まさに石田敦子ワールド。1巻のラストを見ると、続きはさらにドロドロしていきそうな気配。なかなかスリリングで面白いです。

【単行本】「ぬいぐるみっくす♥」1巻 泉ゆうじ ワニブックス B6 [bk1][Amzn]

 うはー、すごく馬鹿馬鹿しい。主人公の少年・公太がすごくドキドキするとぬいぐるみに意識が乗り移ってしまうという体質になってしまい、生身状態でもぬいぐるみ状態でもウハウハな想いをするというドタバタコメディ。主人公の少年は普段は弱気でうじうじしてるんだけど、それが母性本能をくすぐるのか、秘かにけっこうモテている。屋根伝いにやってくる幼なじみ女子・亜子はツンデレ系だが彼にメロメロであるし、主人公が想いを寄せる女子・姫華さんも実は公太を心憎からず思っている様子。さらに公太の妹も、兄LOVE娘なのでふとんにもぐりこんできたりとタイヘンな状態。

 まあそれはともかくとして、この作品は本当に無駄にサービスシーンが多い。公太の通う学校の女子の制服は、スカートが股下5cmくらいしかないし、胸の部分も乳の谷間や下乳の部分までくっきり線が浮き出る乳袋付き。パンツは見えまくり出し、そのパンツも尻やアソコの割れ目までくっきりぴっちりって感じ。スパッツももちろん同様。元々この人は「泉ゆうじろ〜」名義でエロ漫画を描いてた人ではあるけど、一般誌でここまであからさまにやるとは。絵はちゃんとかわいくて内容も甘ったるい。亜子ちゃんの報われない片想いっぷりは少し切なげな感じではありますが。でもまあサービスシーンのムチャクチャな多さのおかげで、実にアホらしいしょうもないお話に仕上がっております。この頭の悪さは素晴らしいと思いますね。

【単行本】「椿ナイトクラブ」1巻 哲弘 秋田書店 新書判 [bk1][Amzn]

 にゅーあきば.comのレビューでも紹介済み。今、週刊少年チャンピオンで旬を迎えつつある、ドタバタ学園ギャグ。本作の主人公はごく平凡な中学2年生男子・三島茜。彼自体はおおむね普通なのだが、彼にちょっかいを出すとその1歳年下で幼なじみの茜ちん大好き少女・椿五十六が現れて、その相手をぼこぼこにぶっ飛ばす。五十六はもともとめちゃ強なうえ、いつも手甲をつけて武装しているトンデモ少女で、さらに天然でドジッ娘で頭が悪い。しかも人のいうことをまったく聞かないで思い込みで突っ走るので、茜ちんやその他大勢は彼女に振り回されまくる。

 てなわけで大筋は、チャンピオン系によくある元気で暴力的な女の子大暴れなお話なんだけど、この作品を特徴づけてるのは主人公・茜ちんのお姫様ぶり。五十六が「茜ちゃんは私の姫だもん!」と公言するとおり、男子なのに身体がやけになよっちい。最初のうちはわりと普通の男子だったのだが、回が進むにつれて作者が調子に乗ってきたのか、ことあるごとに茜を脱がし、なだらかなラインを描く乳とぽっちりした乳首、細くしなやかな腰周り、ちいさなお尻などを気合いを入れて描いて、読む者を誘惑。最近ではもう完全に茜はいじられキャラとして定着して、脱がされ女装させられ男女(主に男子)に狙われる状態。萌え度ももりもり上昇しているのだ。

 ……などと書いてはいるんだけど、このような茜ちんの痴態に期待しまくって第1巻を読むと、おそらく「話題になってるから読んでみたけど大したことねーじゃん」と思われるんじゃないかと思う。本作品の場合、最初のうちはまだ手探り状態だったせいか、茜いじりはそんなに行われておらず、五十六によるドタバタ活劇のほうがメインとなっている。これはこれで普通に学園ギャグ漫画としては面白いんだけど、茜いじりを中心とした面白みが顕在化してくるのは1巻の後半あたりから徐々にって感じなんで、単行本初見でネットの評判を聞いて読み始めると肩透かしを食う可能性がけっこうある。

 そんなわけで単行本派の人は、1巻購入のついでに雑誌も見てみるか、2巻が出るまで寝かせておくというのも手かもしれない。なんか奥歯にモノが挟まったような言い方になっちゃってるけど、こういうのは「雑誌では旬を迎えているけど単行本がそこに追いついてない作品」を紹介するさいに共通するジレンマ。最近では「デトロイト・メタル・シティ」のときも、1巻に東京タワーレイプの回が入ってなかったので似たような気持ちになりましたな。

【単行本】「スミレ16歳!!」1巻 永吉たける 講談社 新書判 [bk1][Amzn]

 「スミレ17歳!!」(→にゅーあきば.com内レビュー)が、週刊少年マガジンでの毎号連載に昇格し、タイトルも改めてリニューアル。といっても人形にしか見えない女子高生・スミレと、それを後ろで動かしているように見えるオヤジという組み合わせは17歳のときと同様。16歳ではスミレたちが高校に入学するところからお話を展開しており、友達を作ったり部活にチャレンジしたりと、相変わらずアクティブな活動を見せる。

 連載昇格後、最初のうちはギャグのキレが17歳時と比べるともう一つかな?とも思ったけど、最近ではだんだんまた波に乗って来ているように思う。どちらかというと17歳のときはスミレ&オヤジをキモく見せる演出が多かったような気がするけど、16歳ではより友情方面を強化して、「ヘンだけど一緒にいると面白い同級生としてのスミレ」を描いている感じがする。あとまあオヤジのハイスペックぶり、芸の細かさは相変わらず。オタク・パロディネタに走らず、キャラとアクションで見せられるギャグ漫画は貴重なんで、これからも頑張ってほしい。

【単行本】「カラスヤサトシ」 カラスヤサトシ 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 アフタヌーンの片隅でひっそり連載されていた4コマ漫画がついに単行本化。えーと8月下旬には買っていたんですが、読むのに時間がかかりそうだったので忙しいから後回し……とかやっているうちに、ここまでかかってしまいました。4コマって普通の奴よりも読むのに時間かかるんですよね。しかもこの作品は、1ページに2本ずつ4コマが載ってて、それぞれにネタが詰まってるからなおさら。いっぺんにまとめ読みせず、ちびちび読んでいくのが向いている作品といえるかもしれない。どこからでも読み始められて、どこでやめてもいいタイプの作品なので、トイレに置いておくとか、枕元に常備しておくベッドサイド本とかに良いかもしれない。

 内容のほうはけっこう笑えて面白いです。カラスヤサトシ自身の日常を描いているだけといえばそれまでなんだけど、カラスヤサトシ自身が面白い人なんで、内容も面白くなってる。いい歳して自宅で一人でガシャポンを戦わせたり、奇妙なオブジェを作成してみたりと、地味にいろんな奇行に走っている様子を淡々と面白おかしく描いている。なんだかものすごく一人遊びの上手な人って感じ。そういう人だけにモテないオーラも濃厚に放っているのだが、自虐ネタがクドくなりすぎることがなく、あくまでネタとしてサラッと見せられているバランス感覚が良い。けっこうツボにハマるネタも多くて、笑える漫画に仕上がっている。

【単行本】「ディアスポリス−異邦警察−」 1巻 漫画:すぎむらしんいち+脚本:リチャード・ウー 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 密入国者たちが東京で秘かに作った、密入国者たちだけの都庁。そこで警察官の役をやっている国籍不詳の男、久保塚の活躍を描いていくB級アクション。不法滞在の外国人がわんさか出てくるので、東京なんだけどそのコミュニティはタイヘン怪しい。また日本の警察はまったく保護してくれないため、殺人やら何やらなんでもありで、事件はスリリングに展開していく。まあ脚本付きの作品なのですぎむらしんいちらしいぶっ飛んだところはちょっと弱いかなって気もするけど、ハッタリはきいてて、まずまず面白く読めるかなといったところ。

【単行本】「ウルトラファイト番外地」 唐沢なをき 角川書店 B6 [bk1][Amzn]

 面白い。すごく昔に放映された、ウルトラ怪獣たちがからみ合ったりして、ときにガチンコ、ときにシュール、ときにマヌケな戦いを繰り広げる低予算怪獣番組「ウルトラファイト」の世界を唐沢なをきが漫画化。自分は本物の「ウルトラファイト」はたぶんリアルタイムでは見てなくて、映像を多少見た程度なんだけど、あの独特のヘンテコな世界を唐沢なをき流にすごく楽しく漫画化できていると思う。怪獣たちの絵もすごく思い入れたっぷりだし、本当にこの人はアレが好きなんだなあというのがビシビシ伝わってくる。元祖「ウルトラファイト」にしろこの漫画にしろ、見ていると怪獣たちがどんどんいとおしくなってきてたまらない。6月にDVD-BOX[Amzn:通常版/スーパーアルティメット]が出たようだけど、ウルトラマンシリーズにはさほど詳しくないけど、つい欲しくなっちゃいましたよ。

【単行本】「ガゴゼ」1巻 アントンシク 幻冬舎コミックス B6 [bk1][Amzn]

 幻冬舎のネット雑誌幻蔵にて連載されている作品。足利義満が権勢を振るっていた時代が舞台。義満が差し向けた陰陽師によって力を吸い取られ、子供と見紛うような姿に変えられてしまった大妖怪ガゴゼが、失われた力を取り戻すべくさすらうという感じのお話。アントンシクはこれが初単行本になるが、この人は、以前ガンダムエースで「ガンダム トゥルーオデッセイ」を描いてた、町田トンシクと同じ人ですかね。作画面ではもうかなり高いレベルに達しており、線が確かで、しっとりした感触もあるし、おどろおどろしい妖怪の描写もうまく、ちゃんと読ませるお話になっている。ただ1巻の時点ではまだガゴゼが感情移入できるほどにはキャラが立っていないし、ヒロイン格の少女・鬼無砂もまだあんまり活躍してない。技量的には問題ないと思うし、ストーリー的にはちゃんと読ませられそうなんで、あとはキャラが立ってくればなーといったところでしょうか。

【単行本】「Dark Seed −ダークシード−」1巻 紺野キタ 幻冬舎コミックス B6 [bk1][Amzn]

 こちらも幻蔵で連載されている作品。魔法学校で修行中の魔法使いたちの物語。この世界では魔法使いは、強い魔力を持つ「持てる者」と、持てる者の中の闇の因子が結晶化したような物質である石を預かって保管する「預かりし者」の二人が対になっているという設定。この作品では、誓約によって対になった少女、セレストとクリスの二人の絆をメインに描いていくという感じ。といったわけで紺野キタお得意の、女子寄宿舎友情ストーリーの魔法使い版といった感じかな。お話のほうはまだ序盤という感じで、魔法をどういうアプローチで描いていくかとか不明な点は多い。ただ上品な作画と雰囲気作りはいかにも紺野キタという感じで、今後には期待を持たせる。

 そんなわけで幻蔵連載の2作品を読んだわけだが、個人的にちょっと気になったのはどちらも連載の展開がちと遅めであること。この手のネット雑誌だと先行きがどうなるか不透明な部分もあるとは思うので、もう少し展開は早め早めにしてってもいいんじゃないかと思う。どちらも期待は持たせるのだけど、1巻めでもう少し序盤の大ヤマみたいな部分も作っておいてほしかった。やっぱWeb雑誌、しかも有料となると読む人は限られてくると思うので、単行本1巻ずつで勝負できるようにしとかないと、読者の興味をつなぎにくいんじゃないかなーって気はするんですよね。

【単行本】「あくはむ」1巻 新居さとし 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 どう見てもハムスターにしか見えない悪魔と、それを呼び出した黒魔術が趣味の女の子の他愛ない日常を描いた4コマ漫画。エラそうだけどどうしてもかわいい小動物にしか見えない悪魔が見てて楽しく、たいへんほのぼの。新居さとしはコミックフラッパーで「地球防衛OLいちご」を描いていたけど、4コマもなかなか。安定して楽しいギャグ漫画を描ける人なのでなかなかいいんじゃないでしょうか。この人のラブコメでの作品もそのうちちゃんと単行本まで持ってけたりするといいんだけど、まずは足場固めということで。

【単行本】「恋きゅー♥」1巻 征海未亜 SBCr/モビーダ B6 [bk1][Amzn]

 「東京ミュウミュウ」の人でしたっけか。ちっちゃなキューピッドの少女たちが、恋する男女の想いをかなえるべく奮闘するというお話。メインとなるキューピッドの少女たちは、みんな幼女形態で、彼女たちがうんしょうんしょと頑張ってる様子はなかなか微笑ましい。基本的に前向きで心温まるお話となっているので、読後感も爽やか。まあ幼女ハァハァ的な部分も多い作品だけど、それ抜きにしても普通に楽しく読めるんじゃないでしょうか。

【単行本】「サタニスター」1巻 三家本礼 ぶんか社 B6 [bk1][Amzn]

 最初は、山の中に人を集めてトラップ仕掛けてバッサバッサ殺していく猟奇殺人女「バルキリー」が主体の話が2回続くんでそういう話かと思ったんだけど、本編の本当の主人公は猟奇殺人鬼の敵である殺戮シスター「サタニスター」。彼女が数々の猟奇殺人鬼どもと戦っていく様子を描いていく感じの話になっていく模様。三家本礼の濃い作風で描かれる殺人シーンはやっぱり刺激的で押しが強い。とくにバルキリーはイイ。性格の最悪さ加減、周到なトラップ、適度ないい加減さ、いずれも彼女の残酷さを際立たせている。個人的にはサタニスターよりこっちのほうが好きかも。残酷なことをやっていながら作品自体にはけっこうユーモアがあるのもいいところで、ムチャクチャやってるんだけどなんだかとても痛快でもある。続きもけっこう楽しみ。

【単行本】「びんちょうタン」1巻 江草天仁 マッグガーデン B6 [bk1][Amzn]

 なんとなく今ごろ購入。いや、前から買おうと思ってはいたんだけど、つい買いそびれてたんですよね。山奥に一人で住んでいる女の子・びんちょうタンが、健気に日々働き、生活を楽しみながら暮らしていく様子を描いた作品。冗談みたいな企画なのに、びんちょうタンの不憫な生活環境、よちよち動き回る健気さに心打たれてちょっとほろっとしてしまう一作。この巻ではまだあんまり描かれていないけど、びんちょうタンに友達ができて生活がより楽しく、賑やかになっていく様子にも心癒されるものがある。自分はアニメのほうから先に入ったけど、アニメ版のほうがよちよち動くかわいらしさが出ているのと、カラーによる自然の美しさのおかげでよりジーンときてオススメかなー。ただ漫画版には漫画版の暖かみとほのぼの感があって、これもまた良かったりするのですが。


▼エロ漫画

【単行本】「Come Together」 ZERRY藤尾 幻冬舎コミックス A5 [Amzn]

 なんかすごく久しぶりな単行本。純粋な新刊は2002年6月発売の「リボルバー」以来だったかな。ZERRY藤尾作品は「扉をコジあけて」以降、だいぶ汁っ気を増し、乳の大きい女子もふんだんに描くようになり、実用度がアップ。ヒロイン女子の表情も何気にけっこうかわいい。「No!No!No!」「敵はツンデレ」あたりのツンデレ系ヒロインは、「忍者松本」シリーズのドジっ娘の漫画家志望くノ一さんとかも素直に萌えられるモノを備えている。

 とはいえ、この人の最大の特徴である、ついついギャグ要素をぶち込んでしまう習性は健在。読む人を選ぶうんちく、ヒネリきかせすぎじゃろー的なネタの数々は、分かる人はたいへん面白いんだけど、そこでエロ一辺倒になっていた頭をクールダウンさせてしまうので、抜きを阻害する要因にもなる。しかしそういうものを入れずにはいられないのがこの人の性であり持ち味なんで、まあそこらへんは承知の上で読むべきでしょう。まあ表紙絵が普通にカワイイねーちゃんっぽいので、作風知らん人はダマされるかもしれないけど、それもまた一興。

 一時期、あんまり商業誌に作品が載らなくなってたんでどうしたのかなーと思ったりしましたが、最近のギガロックを見る限りではピンピンしてそうな感じで一安心(まあギガロックの先行きがどうなるかは別として)。最近のエロ漫画界ではめっきり少なくなったクセ者的作風ながらも、ちゃんとヌキに使えそうなルック&フィールな画力もある作家さんなんで、ちゃんと単行本出してくれる出版社が出てきたのは何はともあれめでたいです。

【単行本】「夜ノ懴悔室」 草津てるにょ エンジェル出版 A5 [Amzn]

 てらてらとしたツヤがあって、かつむっちり吸いついてくるような肉感のある女体がいつもながらエロい、草津てるにょの最新単行本。いちおうタイトルにあるとおり、最初の話は普段は貞淑そうにしているけど、肉欲が押さえきれないエロシスターのマリア先生が、懴悔室の窓から差し出された肉棒に興奮して行為に及んじゃう……という内容だが、その後のストーリーはバラバラ。「懴悔室」ってタイトルなのに、2話めはいきなり「宇宙戦艦ヤマト」のパロディだし、その後も人妻モノあり、ファンタジーモノあり。

 そんなわけで一貫性はなく、ストーリー面では適当な部分も多いのだが、この人の作品はそれでもなんだかエロいから強い。前戯から始まり、じょじょに性感を高めていき、いやよいやよも好きのうちでクライマックスに至る過程はしっかりヌケるものとなっている。よく見ると個々の描写自体はそれほどボリュームがなく、パイズリにしろフェラチオにしろ一つ一つのプレイは簡潔だったりするんだけど、それぞれがちゃんとエロいから十分実用的。感じてるときの表情が色っぽいってのも強い。あとはちんちんの描き込みがもう少ししっかりしてればなあといったところ。

【単行本】「未成熟しょうじょ図鑑」 ねんど。 茜新社 A5 [Amzn]

 タイトルどおりロリ系の本。ねんど。といえば、以前はもう少し年齢層低めの幼女系の作品が多かったが、今回はちょっとだけ年齢を上げてきた。それとともに絵のタッチもまたいじっている。幼女系の作品を描いているときは、女の子をあえてお人形さんっぽいタッチで描いていたけど、LOに掲載誌を移すとともに絵をより萌え系にシフト。手足も長細く描くようにしてきている。以前のタッチも完成度が高くかわいかったが、個人的には今の絵のほうが萌え度が高くて好きかなー。幼女系を描き始めたときもすごい絵柄のチェンジがあったねんど。だけど、掲載誌、内容に合わせてこれだけ絵柄を変えられる器用さは大したもの。

 お話のもほうもラブラブなものを中心に悪くない印象。とくにこの単行本の収録作品の中では、主人公が同い年のイトコの女の子の家にお泊まりすることになって、家ではメガネをかけている彼女にドッキドキ……という「ひこうきぐも」が、甘ったるくて萌え度も高めで良かった。

【単行本】「HAPPINESS!」 天太郎 コアマガジン A5 [Amzn]

 なかなか派手な絵柄で巨乳ばいんばいんな作品を描く。描線はシャープでキレも良く、甘ったるさもあり。大暮維人、鬼ノ仁といったところを思い起こさせるような表情の絵とかもあって、最近のトレンドをどんどん取り込んでいこうとしている姿勢が感じられる。乳はたいへん豊満で見ごたえがあるし、華やかでかわいい絵柄のわりに、ちんこまんこはしっかり描き込んでいるところも今風。お話のほうはちょいと鬼畜系のもあるが、基本はラブラブで甘ったるく、間口は広め。そんなわけで全般的に良い感じではあり、ヌケそうでもあるものの、お話自体はもう一つ弱いかなあ。エロシーンの描写自体はかなり派手でいいんだけど、もう一押し淫靡さが出てくるとさらに良いかなと思います。

【単行本】「パニックまっしゅROOM!」 猫玄 コアマガジン A5 [Amzn]

 いつもながらキュートな絵柄で手堅く高水準。横暴な姉によって女装させられて、女学校の寄宿舎に放り込まれたカワイイ少年が、そこで女の子たちにさんざんいじられまくり、エロエロな日々を送るという作品。この少年は見た目はすごくかわいくて小動物的ではあるんだけど、いざエロとなるとたいへんに高性能。半立ち状態でもナリに似合わず十分ちんこは立派だが、快楽が増してくるとさらに大きさが増すという二段階変形という特徴を持っている。そのちんこを駆使して、実の姉(なんだけど実家にいるときと髪型とかが違うので弟は気づかない)、ラノベ研究会の女子たち、ルームメイトの女の子などとサカりまくる。

 まあそんなわけで、かわいい女装少年の魅力や、巨乳から貧乳まで幅広い女子、それからハードなエッチと抜かりなく楽しめるし、賑やかな雰囲気も楽しい。ただ舞台設定や道具立てはとても魅力的なわりに、ラストへ向けてのまとめ方はもう一歩。途中までは主人公が男の子だと知ったラノベ研究会の女子と楽しくエッチしまくるのがメインなのだが、最初のほうに出てきて途中まで存在感皆無だったルームメイト女子が、中盤で唐突に重大な存在になってしまう。前半で主人公が彼女を強く意識しているという前振りがきちんとなされていれば、後半のシリアス展開ももっと生きてきたと思うんだけど……。

 でもまあ基本的な雰囲気はすごくいいし、ハッピーエンドなラストも多幸感があって、後味自体は良好。読んで損はない手堅い出来となっている点は、やはりここまで生き抜いてきたベテランならではの力量を感じさせてくれます。


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