OHPトップ > オスマントップ > 2006年10月の日記より
このページは、「OHPの日記から、その月に読んだ単行本の中でオススメのものをピックアップする」というコーナーです。文章の中身は、すべて日記からのコピー&ぺーストです。加筆・改稿等は原則として行っていません。
なお、ここで取り上げる単行本は「その月の日記で取り上げたもの」です。「その月に発売されたもの」ではありません。だから古い本でも入ってくることがあります。ピックアップした単行本は多少分類してますが、これはあくまでページを見やすくするための便宜上の分類です。かなり適当に割り振ってますのであんまり気にしないでください。あとシリーズものの途中の巻は、取り上げないことが多いです。
▼強くオススメ
【単行本】「坂本タクマの実戦株入門」 坂本タクマ 白夜書房 A5 [bk1][Amzn]
これはかなり面白い。そして感心した。坂本タクマがネットで株をやることは知っていたけど、ここまで本格的にやっていたとは思わなかった。といってもその投資している額自体はけして大きくはない。3年半くらいやってて、株による総資産は560万円、儲け幅はそのうちの160万円程度なので、儲けてはいるけど規模は小さめだ。ただ読んでると「この人すごいな〜」とすごく感銘を受ける。何よりその投資の仕方と哲学が徹底してて面白い。
この人の基本はいかに損切りするか、ハマる前に逃げて、リスクを抑えて少しずつ勝ちを増やしていくかということにある。まあそれだけなら別に珍しくないんだけど、それを実現するために、売買の記録をものすごく詳細につけ、それに基づいて自分なりの投資システムを作り上げている。「こうすれば損なく儲かる」というシステムを考え、自分でプログラミングまでしてシステムの検証を行った後、初めてシステムを運用させ始める。自分システムもこの巻が終わるころには、システム1〜3までを稼働させ、状況に応じて使い分けるまでに至っている。
「株やってみました〜」的漫画を描いている人はほかにもいるが、ここまで真剣に株というギャンブルに向き合って、きちんと「儲けよう」としている漫画家さんというのは初めて見た。プログラミング言語「Ruby」まで勉強して、自分で検証用システムを構築しちゃうあたりの努力もスゴい。最初は初心者で適当にやっていた感じだったが、経験を重ねるにつれて株への考え方を変えていき、株価を上下させる「材料」をまったく見ずに、「面白さ」を排除して、株価だけを見てシステムマチックに投資を行うという方向にシフトしていく過程は非常に興味深い。またこういうことやってると、漫画家さんは自分のシステムをひけらかしそうなもんだが、「自分と同じことやる人が増えると自分が儲からなくなる」ということを考慮して、けしてそれを説明しない徹底ぶりも素晴らしい。
そして漫画としてもちゃんと面白い。坂本タクマらしい独特のヘンな勢いがあるし、うんちく部分も分かりやすく説明してくれている。自分システムを開示せずに、ここまで面白く描けているってのは大したもの。ただこの作品で問題なのが、これを読んでると自分も株やってみようかなという気になってしまうこと。プログラミングも面白そうだし……。そこまでやってる時間はどう考えてもないので、こういう気持ちがうずきだしてしまうと甚だ困る。
【単行本】「not simple」 オノ・ナツメ 小学館 B6 [bk1][Amzn]
そういえばコレって以前のバージョンでは完結してなかったんでしたっけか。未収録分172ページを収録し、完全版として復刻。で、通しで読んでみたが、これがすごく面白かった。お話のほうは、幼いころに両親が離婚して以来、ずっとツキのない人生を送ってきた一人の男の生き様を追っていくという物語。お話はこの男が不幸な勘違いによって殺害されるシーンから始まるが、お話が進むにつれて、彼がどんなヤツだったのか、彼を取り巻く家族環境がどうだったのかということがしだいに明らかになっていく。
最も彼を愛した姉からは遠ざけられ、アル中の母親によってこき使われ、児童売春までさせられ……という彼の人生は、最後までツキがない。そしてラストに至る過程で、それまで語られた出来事がすべて結びついていく様子は、物語として非常に見事。人の世の無常、そしてちょっとした人間の優しさというものが、なんとも心に浸みてくる泣けるお話に仕上がっていて、これは実に完成度が高い。男の人生は死ぬまでツキがなかったが、最後の回で彼が出会ったちょっとだけいいことの思い出が語られ、それがまた啼かせる。純粋で、他人に優しくあり続けた男が浮かべた不器用な笑顔は、読む者の心に強く焼き付く。人のぬくもりがとても恋しくなる、切なくて悲しくて、そして読後感は暖かい、たいへん良い作品です。
【単行本】「真・異種格闘大戦」1〜3巻 相原コージ 双葉社 A5 [bk1][Amzn]
最近すごく面白いので単行本揃えることにした。地上最強の生物を決めるべく、動物たちが格闘トーナメントを戦っていくという物語。ライオンやらゴリラやらカバ、サイ、シマウマ、スイギュウなどが登場して、ガチンコバトルを繰り広げる様子がたいへん面白い。作品としてはずっと動物たちが戦っていて、全体としてはシュールであったりするんだけど、ギャグもしっかり織り交ぜているし、格闘シーンが盛り上がってくるとけっこう燃える展開にもなる。とくにスイギュウvs.マウンテンゴリラ、土佐犬vs.オオカミの戦いあたりはかなりアツい。あと面白いのが、最初にヒトの中で最強の格闘家が登場して、カバに歯が立たずアッサリ負けちゃうあたり。人間は地上最強だのいろいろいってるけど、実際に素手で戦ったら大したことないんだぜー、ってのをいきなり示してて思わず笑ってしまう。連載のほうも最近また大ネタをかましてくれたし、今後どういう戦いが繰り広げられていくのかすごく楽しみ。
【単行本】「君に届け」1〜2巻 椎名軽穂 集英社 新書判 [bk1][Amzn]
にゅーあきば.comのレビューでも取り上げてます。本作は、日本人形みたいな長い黒髪、引っ込み思案な性格が災いし、「貞子」というあだなをつけられ不気味がられていた女の子・黒沼爽子ちゃんが、恋に友情に、一生懸命頑張っていくという学園ストーリー。貞子の良さにいち早く気づいたクラス1の爽やか少年・風早くんの支えもあって、貞子がだんだん前向きになり、それが周囲にも認められていく。そんな成長物語を、笑いあり、トキメキあり、感動ありで、非常に楽しく展開している作品。
本作の最大の魅力はやっぱり貞子のかわいさ。見た目は呪いの人形みたいだけど、「今どきこんなピュアな女の子いねー」ってくらいに純粋で、何事にも健気に取り組んでいく姿勢がたいへん好ましく、見てると応援したい気分になってくる。あと友情物語としてもなかなかいい感じで、とくに貞子が、クラスのヤンキー娘コンビ、矢野さん・吉田さんとだんだん仲良くなっていく様子は微笑ましい。また3人が相手を思いやる姿は、いかにも青春、友情って感じで思わずほろっと来たりもする。
風早くんとの関係の進展もときめきたっぷりで心ときめくものが。貞子と風早くんが見つめ合って、顔を真っ赤にしている姿は初々しいったらない。貞子のピュアすぎる性格は、あんまり強調しすぎるとだんだんウザったく思えてくるかもしれないなーという気はしないでもないけど、とりあえず2巻までの時点では、たいへん良い感じで来ていると思います。
▼一般
【単行本】「HR〜ほーむ・るーむ〜」1巻 長月みそか 芳文社 A5 [bk1][Amzn]
中学2年生の女子、天然系のドジ娘・素子と、元気者の千夜、黒幕的な周到さの持ち主のハナ。彼女たちの平凡だけど楽しいスクールライフを、かわいく楽しく、ときに甘酸っぱくつづった4コマ漫画。これはなかなかかわいらしくっていいですね。女の子たちの生活が非常に微笑ましく描かれているし、その中で彼女たちのかわいらしい恋愛模様がほのぼのと描かれていったりして、とても甘ったる〜い気分にもなれる。
基本的にお話はほのぼのかわいらしく学園コメディとして展開していくけど、ラブコメ的にもなかなかいい味わい。回を重ねていくにつれ千夜と同じクラスのバスケ部男子・北沢くんの距離が縮まっていったり、恋愛ムードも濃厚に。ハナも同じクラスの背のデカい男子といいムードになっていったり、別の男子も千夜のことが好きであることが描かれていったり。素子だけは今のところ恋愛方面の話が少なめだけど、彼女は学校の先生とか、年上の男性に憧れちゃうタイプなのかな。まあこっちのほうの展開も期待したい。
あー、それにしても長月みそかの絵はいいですな。つるんとした質感は見てて気持ちがいいし、4コマにした場合でも適度な省略が効いてて見やすく、かつ萌えるモノもある。あとこの人はカラー絵もうまいんですよね。表紙とか、カラーイラストの絵なんかも、たいへんにいい感じです。
【単行本】「○本の住人」1巻 kashmir 芳文社 A5 [bk1][Amzn] 作者HP
ネットではけっこうおなじみなんではないかと思います、kashmirの待望の初単行本。小学4年生・蓼科のり子ちゃんと、なんだかイカれた絵本を描いているロリ系なオタの絵本作家である兄、それからのり子のおともだちの生活を面白おかしく描いていく4コマ漫画。表紙も中の絵もかわいく、分類上は「萌え系4コマ」に分類される作品ではあるけれども、ネタのヒネり方が非常にユニーク。
ちょっとブラックだったりオタク的であるネタを、さらりと作品の中に溶かし込んでくる。その呼吸がごく自然なので嫌味になることがないし、扱われているネタも珍味で味わい深い。下ネタとかやっても下品にならないし、オタク的なネタをやってもベタベタしない。そのおかげでのり子の変態兄の活躍とかも、カラッと後くされなく楽しめる。どういう種類のギャグかといわれるとなかなか表現しにくかったりはするタイプのギャグなんだけど、この絶妙なくすぐり感覚は、この人にしか出せない珍味だなあと思います。
【単行本】「14(ジューシー)」 作:朝田光+画:亜桜まる 白泉社 A5 [bk1][Amzn]
ヤングアニマル嵐での連載作品。にゅーあきば.comでも紹介したけど、お話のほうは学校で運動部のマネージャーをやっている3人の女子を中心とした、ほのぼの学園生活漫画。亜桜まるは現在では「090〜えこといっしょ〜」が有名だけど、こちらの作品もかわいくて、読んでて楽しい。何よりいいのは、作風がカラッと明るくてて、まったく影がないこと。女の子たちの表情もみんな邪気がなく、彼女たちがボケまくる様子を素直に楽しめる。とくに大きなストーリーがあるわけでもなく、マネージャー娘さんたちが戯れているだけなんだけど、その姿がやたらと微笑ましい。ギャグに小賢しいところがない点も評価したい。この能天気さは独特のもんがあるなーと思います。
【単行本】「ふたばの教室」1巻 八神健 白泉社 B6 [bk1][Amzn]
「密・リターンズ!!」「ななか6/17」の八神健の最新作。23歳だけどちびっこで、小学生にしか見えない新任教師のふたば先生が、小学5年生のクラスを担任することになり、さまざまなトラブルを乗り越えつつ、生徒たちとともに頑張っていくという学園モノ。お話のキモは、小学生にもナメられがちなちびっこなふたば先生が、生徒たちと真っ正面から向かい合う健気で一生懸命な姿。ロリロリ先生だけど萌えという感じではないかな。でもその姿、頑張りようは見ていて微笑ましいものがある。
第1巻の段階ではお話はちょっと地味めな感じもするけど、丁寧に一歩一歩お話を進めてはいる。ふたば先生は、容姿的に子供に警戒感を持たせないという特徴を持っているので、それを生かしてどこまで子供たちの事情に突っ込んでいけるか、またそういう先生でないと見えてこない教育の問題みたいな部分を掘り下げていけるかが、今後のカギとなってきそうな感じ。
【単行本】「メイド諸君!」1巻 きづきあきら+サトウナンキ ワニブックス B6 [bk1][Amzn]
こちらはガチのメイド喫茶ストーリー。とあるアクシデントがきっかけでメイド喫茶で働くことになった女の子が、メイド喫茶の厳しい内面や、そこで働く女の子たち、それから通うお客さんたちの気持ちなど、さまざまな物事を目撃・体験していくという感じのお話。「華やかな世界に見えるけど、実はいろいろタイヘン」という点を描いているのはスタンダードな作りだが、そこに切り込む語り口が鋭く、けっこうエグい点はいかにもきづき+サトウコンビらしいところ。
作品全体としては、メイド喫茶という空間における、客とメイドの間のファンタジーの共有、現実との線引きをどのように行っていくか、というテーマが作品の背骨となっていく感じかな。その中で客とメイド、あるいはメイド同士の関係、メイド個人としてのキャラ作りなどといった点が語られていくのでありましょう。
ただ第1巻については、ちょっと短い間にいろんなものを描こうとしすぎてるかなあという感じて、なんだか読んでてせわしない。メイドさん、お客さんと登場人物が多く、それぞれの事情を語っていくのでもう一つ焦点がボケ気味になりそうだし、各キャラの印象も薄くなってしまう。とりあえず最初の段階では、主役のおねーちゃんと、あと店を仕切ってるねーちゃんあたりに的を絞って、まず中核キャラだけでも強く印象づけたほうが良かったかも。脇キャラやお客さんについては、ある程度お話が落ち着いてから、少しずつ掘り下げていけばいいと思うし。とまあ不満点も書いたけど、鋭いモノを持ったコンビではあるし、今後の展開にはやはり期待してはおります。
【単行本】「ガチ博士のヤンキーラボラトリー」1巻 真右衛門 双葉社 A5 [bk1][Amzn]
「G組のG」の真右衛門の最新作。ヤンキーなのに科学系である学生たちが集う学園で繰り広げられるギャグ漫画。4コマ。舞台は変わってはいるものの、ノリは「G組のG」と変わらず。飄々としていながらたいへんキレの良いギャグをかましていて、読んでいるとしばしばツボにハマってしまう。ヤンキーと科学ネタの取り合わせが珍妙で味わいがあるし、ネタのヒネり方も絶妙。真右衛門は頭の切れる作家さんだなあと感心する。
【単行本】「アマレスけんちゃん」 若杉公徳 講談社 B6 [bk1][Amzn]
いやー、売れるって素晴らしいですな! 「デトロイト・メタル・シティ」がヒットしたことにより、それ以前に若杉公徳が講談社系雑誌で描いていた作品群までが単行本化。この単行本には、2004年にヤンマガアッパーズで連載された「アマレスけんちゃん」全9話と、2005年に別冊ヤンマガに掲載された「おしえてっプチョコフ」全3話、そして1998年にヤンマガ増刊赤BUTAに掲載された「僕の右手を知りませんか?」を収録している。
「アマレスけんちゃん」と「おしえてっプチョコフ」は、ともにかつてアマレスのオリンピック代表だったが、試合中にウンコを漏らしてしまったことで引退して教師をやってる沼田プチョコフ先生がからんでくるお話。両方の作品で主人公となる学生さんは違うが、基本的にはプチョコフ先生に巻き込まれてアマレスをやることになった学生さんの日常を、うだうだ描いていくという感じのコメディとなっている。プチョコフ先生は身体中から剛毛が生えてて、顔もたいそうな間抜け面の濃いキャラだが、「アマレスけんちゃん」のときは比較的影が薄くて、主人公少年のパンクっぽいけど情けない少年がメイン。「おしえてっプチョコフ」のほうが先生のキャラは立っている感じ。
また「僕の右手を知りませんか?」はデビュー作かな。メジャーになることを目指すギター野郎の青春物語……という感じだが、途中までかなり青臭く進めて、最後で一気に落とす。一発ネタ勝負だが、身もふたもないネタでまずまず笑える。このころの作風は今よりもだいぶ荒削りで、絵柄的にはちょっと古泉智浩チック。単行本全体でいえば、DMCほどの爆発力はないんだけど、濃いキャラがいろいろ出てきて、独特のまったり感もあり、DMCにつながるものは見られるし、まあまあ楽しく読める。
【単行本】「芸能グルメストーカー」 泉昌之 コアマガジン A5 [bk1][Amzn]
意外と面白いというのが率直な印象。お話は、泉昌之漫画ではおなじみのトレンチコート男・本郷が、アイドルが雑誌などで「行きつけ」と語った飲食店に行ってみて、そこのメニューを食してみるという内容。各アイドルさんたちに対するうんちくを織り交ぜ、「こんなものを好むとはこのアイドルはこういう人に違いない」などと、やたら想像をめぐらせながらモノを食べていく様子はまさに泉昌之節。あと食った後、その食物からアイドルに対してわりと好意的な解釈を下しているのも良いところ。「こんなもん食うなんてロクなもんじゃない」とかケチをつけるんではなく、あくまでアイドルに対する妄想を補強するアイテムとして用いている感じ。それにしても本郷さんのメシの食いっぷりは相変わらずイイ。うまいものは実にうまそうに、マズいものはたいへん微妙な表情で食う。「夜行」とか「かっこいいスキヤキ」とか「嵐のカツ丼」とか好きな人は、この作品も押さえておくとよろしいかと思います。
【単行本】「カテキン」1巻 オジロマコト 講談社 B6 [bk1][Amzn]
現在ヤングマガジンで連載中。勉強だけが取り柄の中学2年生男子・白井幸くんが、すごく色っぽい美人家庭教師・ナナ先生の色香に惑わされてドキドキしまくる……というちょいエロコメディといった感じのお話。オジロマコトは非常に絵が達者。ナナ先生の美貌とグラマラスな肢体は、たいへん鮮烈なイメージ。目に色気があるのも良い。ただこの作品自体は軽いエロコメとなっていて、読切で描いていたころと比べるとフツーかなあという感じがしてしまう。本連載の前に描いていた読切作品のほうが、爆発力があって、個人的には惹かれるものがあった。短編作品もけっこう本数はあるので、機会があれば「カテキン」続刊に併録するなり短編集を出すなりしてってほしいもんですが。
【単行本】「ゴーゴー♪こちら私立華咲探偵事務所。」1巻 渡辺航 新潮社 B6 [bk1][Amzn]
すごくやる気バリバリで探偵事務所に入社した小金田一耕太郎青年だが、その事務所の女性所長は全然やる気なし。派手な依頼しか受けたがらない彼女に、耕太郎が振り回されるドタバタ探偵コメディといったところ。「制服ぬいだら♪」「電車男」を手がけた渡辺航の最新作で、連載はコミックバンチ。相変わらずこの人の描く女性キャラは、チャキチャキしたのからおっとりしたのまでしっかりかわいい。お話のほうは1巻の段階ではもう一つゴチャゴチャしてるかなーという気もするけど、連載で読んでる限りでは、キャラが立つに従ってだんだん賑やかさが増して面白くなってる印象。独特のノリを持った人なんで、今後の展開にも期待したいところ。
【単行本】「土星マンション」1巻 岩岡ヒサエ 小学館 B6 [bk1][Amzn]
地球全体が保護地域となり、人間が地球の上空3万5000メートルを回る、リング状の建造物で暮らしている未来世界を舞台にした物語。主人公は、父の跡を継ぎ、そのリングの窓拭きをする仕事を始めた少年・ミツ。なかなかSFチックな設定だが、展開されるお話はとても優しい。窓拭きの仕事の仲間や、窓拭きを依頼する人たちの心情を丁寧に描写し、ほの暖かい気持ちになるようなお話を丁寧に紡ぎ出している。作画面でも岩岡ヒサエならではのまとまりの良い、暖かさと懐かしさを感じさせる絵柄が、ほのぼのしているようでけっこう切なくもあるこの独特の世界観によく合っている。なかなかに素敵なファンタジーだと思います。
【単行本】「兄帰る」 近藤ようこ 小学館 A5 [bk1][Amzn]
結婚式を前にある日突然失踪してしまった青年。3年間まったく家族にも婚約者にも音沙汰がなかった彼だが、ある日突然、彼が交通事故で死んだという知らせがもたらされる。しかしその状況に釈然としないままだったその家族と婚約者が、彼が3年間の空白期間に何をしていたのか、またなぜ突然いなくなったのかを探っていくという物語。お話は基本的に静かに進むけれども、男の婚約者、妹、弟、母親らが、男が失踪中に滞在した場所を訪れていって、少しずつ彼が失踪した理由の断片をつかんでいく展開には緊張感がある。また心理描写も丁寧。そして最後にいちおうの答えをそれぞれがつかんだ後に残る感慨はとてもしみじみ。派手な作品ではないが、完成度が高くてしっかり読ませる物語となっている。
【単行本】「時間救助隊タイマー3」 能田達規 講談社 B6 [bk1][Amzn]
平凡な小学生であったはずの主人公・田中鉄雄くんが、おとなりに住んでる初恋のおねーちゃん・児玉のぞみと一緒に、マッドサイエンティストである祖父が残した発明品を使って頑張って人助けをしていくというお話。
この作品で面白かったのは発明品。「時間を3分間だけ前に戻せるタイムマシン」と、「100倍速く思考し動くことのできるパワードスーツ」という、「時間を前に戻すアイテム」と「自分以外の時間をゆっくり進ませるアイテム」を同時に駆使するという着想。どちらも能力的には凄いけど制約もけっこうあるため、毎回ハラハラするようなアクションが展開される。その躍動感はなかなか見るべきものがある。あと鉄雄ののぞみちゃんに対する想いとか、鉄雄の同級生である女の子・桐島さんもけっこうかわいい。
といったわけで基本的には面白いんだけど、読切シリーズとして掲載された作品だけあって、1話1話でお話をまとめるため、いろんな要素を詰め込みすぎになっちゃってる感じがするのはちと惜しいところ。キャラも設定もなかなか良いので、毎号連載でじっくりやったらもっといろんなことが描けたはず……という気がしてしまう。例えば同級生女子・桐島さんとのラブコメ話とかも盛り込めたろうし、タイムマシン・パワードスーツの2大アイテムについてももっといじれたと思う。できればどっかで続き描いてくんないかなとは思うものの、能田達規は現在コミックバンチで「オーレ!」を週刊連載中なんでちょっと難しいかな。
▼エロ漫画
【単行本】「おとなになるまえに」 関谷あさみ 茜新社 A5 [Amzn]
関谷あさみ2冊めの単行本。相変わらず絵が実にかわいらしいですのう……。丸顔でくりっとしたおめめ、あどけない表情のロリロリ少女たちが、愛くるしくエッチなことをする短編をいろいろ。とくにこの人の場合、女の子のちんまりしたルックスもあって、後輩女子やら妹やらといったキャラを描くときに、その持ち味を最大限に発揮している。なんだか頭をなでなでしたくなるような、甘く乳くさい香りの漂うような、かわいらしい女子ばかりでたいへん好ましい。それでいながらちゃんとエッチシーンではおちんちんとかをきっちり描いてたりするのも今風。お話的には今のところ長いのはないものの、それぞれのお話が破綻なくきっちりまとまっている。一般誌だとコミックハイ!とか似合うかもしれませんなー。
【単行本】「黄泉のマチ」 町田ひらく 茜新社 A5 [Amzn]
同じくロリ系ではあっても、こちらは関谷あさみとか、現在の美少女漫画の主流っぽいロリとは激しくテイストが異なり、とにかく苦い。甘ったるさやヌルい展開などは全然ないし、救いも希望もありはしない。ただし極端な破滅もなく、ただただゆるやかで出口のないぼんやり絶望的な日々が続いていく。
今回のメインとなっている「たんぽぽの卵」シリーズは、少女を犯すためだけに存在する集まりに、少女たちが流されて来て、男たちの相手をさせられる様子を描いた連作。たいへんインモラルな光景ではあるが、それを描く町田ひらくのタッチは、いつもながらクールでドライ。薄い肉付きそのままに幸薄げな少女たちが、薄汚い大人たちによって陵辱され続けていくさまを、実に冷たく、突き放した視点で描き続ける。可憐で儚い女の子たちが犯されていく様子は、胸をキュッと締めつけるとともに淫靡でもある。「大人ってひでえことするよなあ」という想いと同時に、「まあ現実ってのはこんなもんかもしれませんなあ」「そしてこのままどうにもならないんだろうなあ」という諦念みたいなものもこみ上げてきて、実に複雑な気持ちを呼び起こしてくれる。
町田ひらくは以前からロリ系、いやエロ漫画全体の中で異彩を放っていた作家さんだったけれども、すっかり萌えと実用オンリーになってしまった今のエロ漫画だと、よりその特異性は際立つ。こういう文芸臭の感じられる作風は、エロ漫画の主読者層にはウケないかもしれないけど、やはり稀有な才能であることは間違いないので、COMIC LOほかには、ぜひ今後も掲載し続けていっていただきたい。
【単行本】「電気夢想花」 しろみかずひさ モエールパブリシング A5 [Amzn]
作画面、ストーリーともにオリジナリティにあふれたエロを描くしろみかずひさの久々の単行本。2004年3月の「化粧くずし」以来。単行本のメインとなるのは表題作である「電気夢想花」。人工の光を浴びると体が痙攣し、そのままにしておくと死に至るという厄介な体質の女性・麻理果と、彼女と一緒に暮らし、守り続けようとするヤクザの組長。二人の悲痛な純愛が、電気の街・秋葉原の片隅で、ひっそりと花開き、そして散っていくまでを描いていく。
しろみかずひさの作風は、画風がかなり独特だし、上半身下半身ともボリューム感のある女体描写は、昨今の「萌え」「実用」オンリーになってしまったエロ漫画界ではことさら特異に映るかもしれない。しかしペンタッチ、肉体描写、それからしろみかずひさがずっと描き続けてきた「麻理果」なる者への執着など、この人ならではの美学に貫かれていて、時代に迎合することのない一本スジがビッと入ったスタイルはカッコ良くさえある。また「電気夢想花」の二人の、お互いを守り続け最後まで添い遂げようとする濃密な愛も、心に響くものがある。
まあ今のエロ漫画界においてはけして売れ線な作風ではない(といっても昔も売れ線ではなかったが)。でもこの人にしか描けないモノを持っている人なので、こういう人が描いていける雑誌はどこかに残っていてほしいところではあります。ところでこの「電気夢想花」は、作者ホームページによるとアニメDVD化される予定とのこと。これは意外な展開だったのでびっくりした。2007年の1月か2月ごろ、全2巻で発売予定とのこと。
【収録作品】「電気夢想花」「しくだい」「ヤドリギ」「球根栽培−continue−(Flagment2+3)」
【単行本】「巫女と野獣」 氏賀Y太 三和出版 A5 [Amzn]
いやあ、なんかスカッとしますね! 本作は「デスパンダ」と呼ばれる人間を殺戮しまくるパンダと、それを退治しようとする巫女さんの戦いをメインに展開されるわけだけど、まあそこは氏賀Y太。デスパンダの殺戮シーンはもう血やら内臓やらがぐっちょんぐっちょん飛び出て、たいへん激しい。第1話からして人気チャイドルグループのコンサート会場にデスパンダが突如現れて、チャイドルたちをめっためたにしちゃうし。
てなわけでグロ描写が多いので、そういうの苦手という人には向かないけど、それがオッケーな人には楽しめるんじゃないかと思う。というのはこの作品、人体破壊だけに止まらず、全体だとギャグ風味もけっこう強くて、ストーリー面でも意外と読ませるものがあるから。単行本カバー折り返し部分には「このマンガはラブコメです。」なんぞといけしゃあしゃあと書いてあったりするけど、全部読むとけっこう納得できる。お話の半分くらいまでは巫女さんやその他の人々がヒドい目に遭ってて凄惨なストーリーだったりはするんだけど、そこを乗り越えれば氏賀Y太独特のユーモア感覚が見えてくると申しますか。この人のグロ漫画は、意外とグロだけに終わらないものを残してくれるのがイイところだと思います。
【単行本】「桃色保健室」 東鉄神 富士美出版 A5 [Amzn]
東鉄神の絵ってエロくなりましたねー。ってなわけで購入。通常はコンビニ売りエロ漫画誌のほうが多い人だけど、これは成年マーク付きってことで、消しも少なめだしエロさもアップしてます。内容のほうは、単行本タイトルどおりの保健室のエロエロ女医先生シリーズ4本と、あとは読切短編。絵柄的には整理されてて完成度が高く、華やかで艶がある。洗練されているんだけど性器描写もちゃんとやってるし、汁気もたっぷりでコンスタントにしっかりエロく、完成度がとても高い。萌えもでき、かつ艶めかしい雰囲気も出せるし、表情などのバリエーションが豊富で押し出しも強い。ソフト路線、ハード路線どっちもオッケーな人で、どのエロ漫画雑誌でも描けそうなタイプだが、この単行本の収録作品はラブラブエッチおよびドタバタ調が基本で、後味の悪い作品もなく、安心して読める。
個人的な好みとしては、乳を大きくするため弟に揉んでもらうのを日課としている巨乳姉のお話「あねぱい」、シスコンの姉が妹を守るべく妹彼氏とエッチしちゃう「上手な姉妹の使い方」、あとはラブラブ姉弟のエロ話である「お姉ちゃんは俺の彼女」あたりが好み。とくに「上手な姉妹の使い方」の妹さんのフェラシーンは、亀頭に吸いついたままで首を左右に振ってぐりゅぐりゅするあたりとかがエロかった。どの話も女の子たちの体が瑞々しく描けていて、むっちり吸いついてくるような質感があるのがいいです。
【単行本】「放課後少女」 上乃龍也 オークス A5 [Amzn]
上乃龍也の絵はエロくて良いなあ。この人の女体描写は、肌に光沢感があって、つやっつやぷりっぷりしてて、張りと瑞々しさがすごくある。光沢感があってもゴムとかビニールみたいな感じじゃなくて、きちんと柔らかそうな、吸いついてくるような質感も出せている。性器はもちろんのこと、おくち、おっぱいなども、みっちりとくっついてくるかのような感覚があって実にエロ心をくすぐられる。また男側でもちんこがてかてか。これは快感のためにぱっつんぱっつんになっている感じがして、とても気持ちが良さそう。
お話のほうは鬼畜路線なのは少なめ。途中までは陵辱っぽくても、最後は後味が悪くないようにまとめてくる。基本はラブラブエッチか、もしくはちょっといたずらっぽい味を効かせてくる感じ。お話的にすごく読ませるというタイプではないけど、とくに破綻はないので、それがヌキの邪魔になることはない。女の子キャラは身体に目が行きがちだけど、顔のほうも何気にけっこうかわいいと思う。今回の収録作品の中では、巻頭作の「LOVE×3」前後編がとくにいい。彼女ができたのをきっかけに姉との関係を断ち切ろうとする弟に対し、姉が強引に迫ってくるという内容。彼女さんとの初々しいエッチと、お姉さんのテクニシャンぶり、双方が楽しめる。とくにお姉さんのフェラチオシーンはねちっこくてビンビンきます。あとは「Sisters Who Try」。主人公が彼女と、その妹にそれぞれ迫られるという内容で、巨乳妹のパイズリシーンがエロかったです。
ところで作者後書きによると、この人はむしろつるぺた好きだったらしい。これだけいい巨乳を描くのに、ちと意外だなあ。まあ今では巨乳も好きらしいですが。
【単行本】「天然素材少女」 小林王桂 コアマガジン A5 [Amzn]
以前はヒメクリとかで描いてて、最近はコミックメガストアなどで活躍中の小林王桂の2冊目。ちょっとサバサバしたキュートな作画が特徴。あんまり汁気のある絵柄ではないけく、エロはあっさり目な印象だが、細めの女の子を中心に描く絵柄は独特の味があり、なかなか気になる人。イタズラっ気のある、楽しい作品が多い。エロはしっかりやりつつも、あまり下品にはならない作風なので、普段エロ漫画になじみのない人でも読みやすいんじゃないかと思います。