山本直樹
君といつまでも
光文社 全1巻
ISBN:ISBN4-334-80223-0 C9979 価格:本体757円
初版発行:94/05/31 判型:A5 2色カラー含む
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作者の解説によると、「君といつまでも」はホラーを描こうと思って始めたものらしいが、怖いかといわれるとそれは人によりけりだろう。何が現実で、何が非現実なのか、それが非常に曖昧でふとした拍子にそれがすり変わる。曖昧模糊としてつかみどころのさい世界。そんなことを怖いと感じる人にはすごい怖い話だと思う。
ストーリーは酒に酔っ払ったところに薬を飲まされ変態に監禁された妹、そして「食人鬼」という噂のある友人の友人に会いその幻影に日々脅かされている兄、この二人を取り巻く風景が並行して進行する。しかし、一方の現実が一方の現実を包含し、また一方が一方の幻想を否定する。そんな虚実定かでない世界に読者は翻弄されることになる。非常に奇妙でテクニカルな仕掛けの施された物語だ。
もう一編は内田百ケンの「山高帽子」をモチーフに描かれた「眠り姫」。淡々とした日常を過ごすうちに、周りのものがすべて薄っぺらなものに見え出した女教師が主人公。いくら眠っても眠り足りない。彼女は時間があれば寝て過ごす。人と会っているときにふと聞こえる何者かの声。自分が発した声なのか違うのか。寝床の脇に置いてあった水が自分で飲んだ記憶はないのに量が減っている。自分で自分が制御できなくなりつつあるのか、それとも他者に見張られているのか。なんとも、気持ち悪い雰囲気をはらみつつ物語は進む。しかし、もちろん解決は示されない。気持ちの悪い世界は気持ちの悪いままだ。これも見る人が見れば怖い漫画ではある。
●収録
・「君といつまでも」
(初出:コミックBE! 93年4月16日号〜10月18日号)
PART1 監禁男
PART2 人喰い女
PART3 スナップ
PART4 静美
PART5 人喰い女の夢
PART6 おしまい
・「眠り姫」
(初出:ヤングチャンピオン 94年1月11日号〜2月8日号)
その一〜その三