プラスチックよ、宇宙を超えろ

一気に下まで行きたい

・「ガンプラ武蔵」 岩本佳浩(2003、講談社、コミックボンボン6月号特別付録)(感想文執筆03.0520)NEW!
・「プラモ天才 エスパー太郎」全3巻 斎藤栄一(1983〜84、小学館)(感想文執筆00.1027)
・「ガンプラ甲子園」(1) 帯ひろ志(1999、講談社)(感想文執筆99.0106、0517)
・「ガンプラ甲子園」(2) 帯ひろ志(1999、講談社)(感想文執筆00.0221)
・「ガンプラ甲子園」(3)〜(4)(完結) 帯ひろ志(2000、講談社)(感想文執筆00.0221、021111)
・「プラモウォーズ」全7巻 今木商事(1995〜98、講談社)(感想文執筆99.0629)
・「魔神英雄伝ワタル2 魔神開発大決戦」全2巻 青木たかお(1990〜91、小学館)(感想文執筆99.0303)
・「特攻!! ゾイド少年隊」 全2巻 青木たかお(1989、小学館)(感想文執筆99.0929)
・「新プラモ狂四郎」(1) やすい尚志、やまと虹一(1987、講談社)(感想文執筆99.0207)

(以下の解説は、暫定版)
プラモデルマンガの嚆矢としては80年代初頭、「プラモ狂四郎」(やまと虹一、クラフト団)が「コミックボンボン」で連載を開始。主人公がシミュレーションマシンに乗り込み、あたかも自作のプラモを操縦できるような感覚が味わえる。そして敵とさまざまなヴァーチャル空間で戦うのだ。その改造の出来やプラモの特性が勝敗を決するという設定は、当時のガンプラブームの火付け役の一端を担った。
また、「シミュレーションマシンを使っておもちゃに乗り込む」という最初のパターンを確立したものと思われる。
その後、コロコロコミックでも「プラモ天才エスパー太郎」(斉藤栄一←ダイナミックプロ関係のヒト)や「3D甲子園プラコン大作」(たかや健二、テクニカルアドバイザー:十川俊一郎)などの作品が続き、「プラモと自分を同化させる」というマンガは現在でも続いている。
コロコロ・ボンボン系「プラモマンガ」を語るには、やはりガンプラブームをはじめとしたアニメモデル人気の確立をヌキにはできないのだが、その辺は市販の関連図書を見てみてください(なにせ門外漢なもので)。(99.0907、滑川)



・「ガンプラ武蔵」 岩本佳浩(2003、講談社、コミックボンボン6月号特別付録)(感想文執筆03.0520)
(プラモデル)

ガンプラ武蔵

コミックボンボンの別冊付録。約50ページの小冊子。
勝武蔵は、「大人になったらガンダムのパイロットになる!」という夢を抱いているガンプラ大好き少年。ある日、父親に連れていってもらった「G(ガンダム)・ミュージアム」で、細かい改造技術などを知っている少年・氷室小次郎に自分のつくったガンプラを「きたない」とけなされる。
怒った武蔵は、G・ミュージアムでバンダイが開発した「プラモ狂四郎のバーチャシミュレーションを現実化した」、「ガンプラバーチャバトラー」(←これをクリック)で小次郎と対戦することになる。
それは「Gスキャナー」(←これをクリック)という、リング内にある18個のカメラでガンプラをスキャン、そのデータを元に完成度・改造度を数値化してステージ中央のバトル空間の画像の中にガンダムをCGモデルで映し出すというもの。
バトル空間に乗り出していった武蔵と小次郎のガンダムだったが、そこで「ミスターG」という謎の操縦者が操る「シャアの紅のRC-78(要するにシャア専用ガンダム)」が現れて挑戦してくるのだった!

「プラモ狂四郎のシミュレーションを現実化した」というコトで、シミュレーターの設定がちょっと細かいというか今風になっているのがミソかな。それにしても、巻末に当然マンガの設定どおりではないものの、バンダイが「Gスキャナー」を開発した(←これをクリック)と書いてあるんだけど、実際どの程度のものなんでしょうね。
(03.0520)



・「ガンプラ甲子園」(1) 帯ひろ志(1999、講談社)
(プラモデル)

ガンプラ甲子園

コミックボンボン連載。ガンプラ(ガンダムプラモ)の魅力に取り憑かれた少 年タクミが、ガンプラづくりの世界で頭角を現していくストーリー。ガンダム そのものを主人公にしたり、シミュレーション世界へ飛んでいきガンプラに乗 り込むのではなく、生粋の「プラモ品評マンガ」である点、珍しい。私の知るかぎり「3D甲子園プラコン大作」、「ディオラマ大作戦」、そして「ガレキの翔」の3作しかないところに、この「ガンプラ甲子園」が名を連ねることになった。

「プラモの出来を競う」、すなわちグルメマンガにテイストはかぎりなく近いのだが、「美味い」のとは違い「プラモのすごさ」を表現するのは非常にむずかしいと思う。本作は「審査員が『ほぎっ!!』などと叫んで涙を流しながら、タクミの作品によってガンダムの世界を強烈にイメージする」という手法で「すごさ」を伝えている。

まあおそらくアニメ「ミスター味っ子」の影響が大なんだろうけど、でももともと胡散臭いのが多い「グルメマンガ」の、さらに方法論だけを取り入れた「プラモマンガ」として滑川的には注目したいスね。

女の子をもっと出してほしいですねオヤジ読者のわたくしとしては(笑)。(99.0106、0517、滑川)



・「ガンプラ甲子園」(2) 帯ひろ志(1999、講談社)
(プラモデル)

コミックボンボン連載。第1巻のレビューで「女の子をもっと出してほしい」などと書いたら、本巻から藤咲優香というガンプラ好きの美少女登場。彼女が涙を流しながら「そうだ−−わたしは……わたしは!! ガンプラが好きなのよー!!」と叫ぶ名シーンが見られる。

また主人公・タクミたちは「第7話 クラブ結成! 仲間がいればパワーもアップ」でガンプラ同好会を結成。さまざまな勝負に挑む。
しかし書いておくべきは、この話で「ガンプラを楽しむことの幅の広さ」に言及されていることだろう。シロートを斬り捨てていって、前人未踏の世界を目指すだけが能ではない、というところがホビーマンガの、通常のスポーツマンガなどとは決定的に違うところだ。
とくにプラモデルは、「だれでも同じ素晴らしさを体験できる」ことに意義があるので、凝った改造にも、単純な素組みにも、それなりの楽しみがあるのだ。
(00.0221、滑川)



・「ガンプラ甲子園」(3)〜(4)(完結) 帯ひろ志(2000、講談社)
(プラモデル)

コミックボンボン連載。この頃になると個々のキャラクターもどんどん立ってきて、顔はゴツいがイイやつ黒田、気が弱いが五分の魂ハセ、アウトロー的な鞍馬、ガンプラにはやたらうるさいタクミの父・あばしり幽平などがそれぞれイイ味を出している。
そして最終巻では、いよいよガンプラ同好会の面々がガンプラコンテストにエントリー!! さてどうなる!?
(00.0221、02.1111、滑川)



・「プラモウォーズ」全7巻 今木商事(1995〜98、講談社)
(プラモデル)

コミックボンボン連載。プラモ大好き少年・創 勇斗(つくる・ゆうと)が、バーチャシミュレーションバトル(VR技術による、ガンプラに搭乗しての戦い)に挑むガンプラマンガ。
基本設定は「プラモ狂四郎」とほぼ同一。プラリーガー(「プラリーグ」という大会にも出るプラモデラー)の魂「プラリーガーハート」で、てごわい敵・あくどい敵に立ち向かってゆく。

連載当初はアニメ「Gガンダム」が放映されていたらしく、敵チーム「ゴッドハンズ」のメンバーはドモンそっくりの「怒門恭一」をはじめ、地保出(チボデー)、有悟(アルゴ)、嶺院ミカ(レイン)というふうに「Gガンダム」のキャラクターを模している。
その後ガンダムWが始まったせいか、怒門は旅に出て、地保出はなんとなく出なくなる。有悟と嶺院は勇斗の友達となり、作品レギュラーになっていく。

かなり奇抜なオリジナル・ガンプラが登場するが、あまりにも何でもありありの「Gガンダム」、さらに別の意味でありありの「ターンエー ガンダム」を通過してしまった現在、ことさら驚きまくるような感じではない。
しかし、終盤近くなって登場する「ガンマジン」(バーチャシミュレーションの中でのみ生息する、ガンプラのデータを食って成長し続ける「究極のガンダム」。人間のデータを取り込んで最強となる)などはやはり宇宙感覚なシロモノではある。

他にも和風お嬢様・桜小路綾香が搭乗する「ミコさんガンダム」(巫女さんをベースにしたデザイン。膝関節の付いた袴がカワイイ)や、
「サディスティック・ミカ・クイーン」(ちょいSM女王様入った、ムチを操る嶺院搭乗のガンダム。もはや「ガンダム」の名すら付いていない!)、
「ニンキョウガンダム」(ヤクザの跡取り息子が乗り込む)、「桃園漢龍頑駄無(ピーチドラゴンガンダム)」(三国志のキャラそっくりのチームが合体する)などが楽しい。

また嶺院は、他の「Gガンダム」からのキャラクターとは違い「レイン」とは似ても似つかない元気っ子で、ストリート系ファッションがオシャレ。現在、作者はボンボン誌上で「ビーストウォーズ」を描いているが、登場人物が全員ロボットである。この作者の描く女の子が見れないのは、多少残念。(99.0629、滑川)



・「魔神英雄伝ワタル2 魔神開発大決戦」全2巻 青木たかお(1990〜91、小学館)
(広義のプラモデルマンガ)

ワタル

アニメ「魔神英雄伝ワタル」のおもちゃ、タカラの「プラクション」を改造してシミュレーションマシンに乗せ、戦うバトルもの。
シミュレーションマシンの設定も、後の展開も「プラモ狂四郎」と酷似している。しているんだが、考えてみりゃ本来の読者 層であるガキんちょで、そうまでシミュレーションモノにこだわっているのはいないと思うので、そういうことは「よけいな指摘」かもしれない。
……でしばし考えたところ、本作を「プラモ狂四郎」を知らないで読めば、非常によくまとまっているのではないかと思いました。
ちなみに「ワタル」世界では「モビルスーツ」に相当するコトバは「魔神(……と書いて「マシン」と読ませる)」、「プラモ魂(スピリッツ)」、「ビー魂」に相当するコトバは「魔神魂(マシンスピリッツ)」です。(99.0303、滑川)



・「特攻!! ゾイド少年隊」 全2巻 青木たかお(1989、小学館)
(メカ生体ゾイド)

ゾイド少年隊

「プラモ狂四郎」で初登場した(と思われる)「子供がおもちゃに乗って戦える」VRマシンはいくつかのパクリやオマージュ? を生んだ。本作はトミーから発売された「メカ生体ゾイド」に乗って戦う話である。

(「ゾイド」は、現在、おもちゃとして復活し、そのファンタジックな世界観は「機獣新世紀 ZOIDS」(上山道郎)としてコロコロ誌上でコミカライズされている。アニメにもなっている。)

■さて本作の内容だが、前半はどうしてもパチモノ感がぬぐえず、戦闘シーンもどうにも大味なのだが、後半即座に路線変更がなされ、単行本購読者には意外な展開になっていくのであった。

■シミュレーションマシンの開発で、おもちゃに乗って戦う疑似戦闘が可能になった。主人公大和タケルは、森田ひとみクマゴローなどとともに「ゾイド共和国軍」として「帝国軍」の少年たちとシミュレーションバトルをするというのが大筋。
シュミュレーション編では、「改造ゾイドバトルトーナメント」でタケルは帝国軍と対決。「共和国軍の中にスパイがいる」という緊張感とともに、話が進んでいく。
■最終的には敵も味方もないサワヤカな友情の雰囲気をつくり出すタケル。しかし
後半急展開
イキナリ「1分の1のホンモノの動く生体ゾイドが完成した!」
ときた。
ひとみのお爺さん森田博士が開発したのだ。ホンモノゾイドの「ゴジュラス」に、「メカに乗り込んだら暴走し続ける」ビョーキの男が乗ってしまったのでさあ大変。街を壊しながら暴走するゴジュラスをくい止めるため、1分の1ゴールドライガーに乗り込むタケル・・・ってすごい展開の早さだよな。

■これって第1部が面と防具を着けた剣道の話で、第2部が日本刀で真剣勝負する話になっちゃうのと同じじゃないの? それとホンモノのゾイド開発ってトミーが金出してるの? トミーはそっちで儲けないの? とにかく超兵器に利用するためゾイドを奪おうとする「死の商人」ギルバート大佐と対決するタケル。最後は何か(忘れた)に特攻を覚悟したタケルを勝手に脱出させ、戦場に散るゴールドライガー。ここは特撮の方の「ジャイアントロボ」最終回を思い出しながら読もう。
(98.1230、99.0929、滑川)



・「新プラモ狂四郎」(1) やすい尚志、やまと虹一(1987、講談社)
(プラモデル)

コミックボンボン連載。「プラモ狂四郎」の続編。「大日本造形学園」とい う、クリエイター&技術者養成学校に転校してきた新(あらた)京四郎が、学 園内でつまはじきにされているプラモ部に入部し「アーマードバトル」の謎を 解こうとするもの。長編「プラモ狂四郎」の後のタネ切れ感もなく快調なすべ り出しなんだけど、続きを古本屋で見つけるのがたいへんだわ……。(99.0207、滑川)



・「プラモ天才 エスパー太郎」全3巻 斎藤栄一(1983〜84、小学館)

プラモ天才 エスパー太郎

月刊コロコロコミック連載。プラモ大好き(とくにバルキリー)だが、組立てはあまりうまくない小学生・茂寺太郎(もでら・たろう)は、実は「プラモイン」という、特定のプラモの中に入り自由に動かすエスパー能力を持っていた。

一方、プラモ屋の息子・魔仁塔烈(まにとう・れつ)は強力なエスパー能力の持ち主で、その力を悪のために使おうとしていた。彼の親友で同じくプラモイン能力を持つ高橋信五は、他のエスパーたちと手を組んで「プラモ戦隊」を結成、太郎もここに入って、毎回魔仁塔とのプラモによる戦いが繰り広げられる。

近年、ガンダム20周年関連で刊行されたガンプラ(およびリアルロボットプラモ)のムックなどを見ると、実際のプラモの特性や改造したときのポイントがバトルに忠実に反映される作品「プラモ狂四郎」以外のプラモ関連作品は、それほど高い評価を得ていないと思う。
実際、本作にはプラモの製作・改造テクなどは皆無で、プラモ同士のバトルもむしろプラモとは無関係と言える。
しかし、読まなければわからないもので、本作は
めっぽう面白いのである。

エスパー能力者は特定のプラモにしかプラモインできないとか(たとえば太郎はバルキリー、信五はスパルタン、耕也はトマホーク)、それぞれがプラモイン能力の他にサイコキネシス、透視能力、テレポーテーションなどの能力をひとつ身に着けているとか、プラモイン能力しかない者も、能力がレベルアップすると同時に能力が付加されていくとか(能力は個人によって発現するものが違う?)の設定がおもしろい。
また、単行本第3巻になると、太郎の能力が増大しすぎて戦闘中にエスパー能力がバルキリーの耐性を超えると分解してしまうため、MAXパワーに達するとバルキリーの目の部分(専門用語でなんというのか?)のゲージが点滅、レッドゾーンになると報せてくれる(改造バルキリーは、MAXパワーになっても30秒経たないと分解しない)。つまり、戦いに制限時間ができて緊張感を煽るわけだ。

個々の戦いについても、水中でムギ球の電気を使って敵を感電させるとか、敵の大破したプラモの中にサイコキネシスで土を入れ、それを振り回す「バルキリー星雲ハンマー投げ」とか、とくにプラモとは関係ないが豪快な技が炸裂する。

敵側も、自分のコンプレックスから魔仁塔の仲間になり裏切られて捨てられる黒田実や、正々堂々と戦うことだけを望む雲野大吉など、子供マンガながらシブい設定のキャラクターが多い。

そう、ここまで読んでいただければわかると思うが、本作は「プラモマンガ」というよりは、マジンガーZやゲッターロボなどの系譜に正統に連なる、「ロボットプロレスマンガ」(この場合の「ロボットプロレス」はむろんいい意味)なのである。本作ではプラモはプラモとして扱われておらず、むしろ「ロボット」なのだ(この正反対に、あくまでプラモ的な側面にこだわったのが「プラモ狂四郎」と言えるだろう)。

単行本ではプッツリと終わっているがどうも全3巻らしい。本誌でどうなっているかはまだ未確認。

コレは権利関係でいろいろめんどくさいとは思うが、ぜひ復刻してほしい作品だ。とにかくリクツのいらない楽しさを持ったマンガなのである。(00.1027、滑川)

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