・あらすじ
月刊少年ジャンプ連載。中学生の湯沢篤は、異性に興味を持つ年頃なのに、悪友連中とは違って今ひとつスケベなことに興味が持てない。そんな篤の家の隣に、早瀬涼美が引っ越してくる。涼美は、バレーボールに夢中になっている美少女で、篤と同じく異性に興味を持つことができず、やはりクラスでも部活でも浮き上がってしまう。
そんな二人が考えたこと……それは「ためしに恋愛してみる」ということ!
こうして、お互い好きでも何でもない二人は「たぶんこういうものが恋愛なんだろう」と思いながらシミュレーションをすることになるが……。
・感想
これは傑作でしょう!!
本作が描かれた87年と言えば、青年雑誌にしろ女性雑誌にしろ、「恋愛マニュアル」がたくさん書かれた時期ですよ。今でもそういう記事はあるけど、80年代というのは70年代よりずっとそういう情報が氾濫していたんじゃないかと思うんだよね。
そのときに、いちばん性に興味がある中高生が読む月刊少年ジャンプに本作が載ったということに感銘を受けてしまった。
むろん、同時期には映画の「パンツの穴」とかもあったし、思春期の男の子向けの「青い性」をテーマにした作品は超歴史的にいつの時代にもあるものだけど、そういう場合は異性に興味アリアリの子が主役っていう場合が多いと思う。
が、本作では「異性に興味がないから浮き上がってしまう男女」が主人公で、わざわざ恋愛をシミュレーションしてみよう、って考えるってことは、作者が、氾濫する恋愛や性の情報を客観視してた、ってことなんじゃないかと。
「世間の動向に振り回されるのではなく、自分だけの体験を取り戻そうとする」っていうテーマは、毛野楊太郎にもあったはずだけど、こういうテーマを描くマンガ家って少ないんだよねえ。「攻殻機動隊」まで言っちゃうと話が大きくなりすぎてピンと来ないけど、要は自分の喜びとか悲しみとかといった感情が、本当に自分のものか? って問い直すことが大切だから。
人間はぜったいに、テレビや映画の中には入れないから。それらは「現実以上」のことを見せて、人を煽るんだよね。でもそうじゃないだろ、っていう。
そういうことなんじゃないかと思う。
(10.0110)
内容は基本的に同じだと思う。
巻末には二人の10年後を描いたおまけマンガが載っている。
(10.0110)
ここがいちばん下です