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・「パート退魔(タイマー) 麗」全1巻 (2002、リイド社)




・「パート退魔(タイマー) 麗」全1巻 (2002、リイド社) [bk1] [amazon]

パート退魔(タイマー) 麗

「コットンプレイ」1巻2巻(完結)の続編。同作連載中に掲載誌「ボナンザ」が休刊してしまい、新創刊した「リイドコミック爆」で仕切直しの新連載として始められた。

不慮の事故で「電脳幽霊(サイバーゴースト)」となってしまった琴美は、自分の姿が見える松田武彦にまつわりつく。
梅近麗美は、松田の職場の先輩で彼のことが好きな女の子である。彼女には微妙に霊能力があり、琴美の存在もなんとなくわかるため、彼女をお祓いしてしまおうと日々追いかけ回している。

で、本作では主役が琴美と松田から麗美に交替。自称「前世紀最大の退魔師」である謎の老人から後継者として見初められた麗美は、霊能力を受け継ぎパワーアップ。だが、同時に今まで封印されていた数々の淫魔をも解放してしまう。
こうして、淫魔を退治しつつ琴美を祓ってしまおうと追いかけ回す、麗美のパートタイム・退魔師の生活が始まったのであった。

前作が面白い作品だったので、同じ世界でも主人公が移行して違うお話が始まるのはちょっと残念だったが、もともとマジモンの退魔ものを描いていた作者だけあってパロディ作品として楽しめる。ただ、どうしてもそれまでの設定が複雑だったため、その説明に手間取っている感じは少し、した。

特筆すべきは、厳しい性慣習の時代に人々を堕落させ、快楽のみのセックスにおぼれさせてきた淫魔・アナクロス。彼は現代に復活はしたものの、乱れきった日本の性に嫌悪感をもよおしてサッパリ人間から精を吸い取ることができない(ここらあたりはラストの伏線にもなっている)。

私の読んだサンプルが少ないかもしれないが、現在Hマンガは中間的なものも含めてこと陵辱モノにおいてはそのパターンをくつがえそうと思ったら「男→女」の関係を逆転させるか、より過激化させるか、あるいは「男→女の陵辱」という方向からまったく背を向けて、やおいとかボーイズラブ方面に行くしかないように思われる。
が、「陵辱とはいったいどんなタブーを犯すものなのか」についての考察が取り入れられることはほとんどないのではないか。それは必然的に読者の視点を客観化させざるを得ず、Hマンガとしてのパワーをダウンさせてしまう可能性があるからだろう。

「倫理とか慣習の侵犯」ということを考える場合、とことん相対化して完全にギャグにするか、あるいはそのことに触れないかしかないのだろうか。本作はここらあたりのことをコメディタッチで扱っていて、実は案外希少性のある内容なんではないかと思う。

そんな本作も、掲載誌が休刊したために「大急ぎ」な感じで終わってしまったのが残念である(最終回は単行本書き下ろし)。

読みきり「Candy Game」を同時収録。
99年、リイドコミック掲載。見習い占い師のりぶらちゃん(本名:神無月みか)が、先生の代わりに「カノジョをセックスでイカせたい」という男性を占うことになって……というエロコメ。個人的に「たぶんこの人といいフンイキになるんじゃないか」と思っていた青年が、まったくの脇役だったのに驚いた。
それにしても女の子キャラがカワイイです。(02.0930)

ここがいちばん下です
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