1982年
AMERICAN TOUR / EUROPIAN TOUR


言うまでも無く、エイジアが始動した年です。
実際には81年初頭から水面下で結成準備・アルバム準備をしていますが、
海面からドラゴンが雄々しくその姿を現して暴れまくったのは1982年4月後半からでした。

82年の公演は、大きくアメリカツアーとヨーロッパツアーに分かれています。
どちらも独特の雰囲気があり、特に当時は未発表曲だった
『Midnight Sun』『The Smile Has Left Your Eyes』の2曲は、
時期を追うにつれて演奏内容が劇的な変化を遂げており、とても面白いです。
また、4月22日〜30日の間に数回しかプレイしなかった映画音楽
『The Man with the Golden Arm』も、素晴らしいテイクが多いです。

この様に、82年音源は様々な点で面白いプレイをしているので、
それに伴って海賊盤の音源も多く、どれも興味が尽きない物ばかりです。


"ASIA" Studio Rehearsals - Early 1981, and more

『THE MAKING OF ASIA』 / (No-label 40569)
Rehearsal and Demo Tracks : 1981 〜 1998


※レビュー作成中です。


1982年 AMERICAN TOUR (82年4月22日〜7月10日)
『THE MAN WITH THE GOLDEN ARM』 / (CURRY CLUB, CC-19820425)
Live Date : Stanley Theater, Pittsburgh, PA, USA / 1982. Apr. 25

自作のプライヴェート・ブートです。
これも缶屋のシーバ様と組んで、海外のテーパーとトレードで
手に入れました。

82年アメリカツアー開始後たったの3日目という、始動したての
エイジアの産声を聴く事が出来ます。
面白いのは、いつもならスティーブのMCが入ってワン・クッション置いて
演奏される『Sole Survivor』が、『Here Comes The Feeling』から続けてそのまま
MC無しで続けて演奏されている点です。
この展開は結構珍しいんじゃないでしょうか?
そしてその『Sole Survivor』の演奏が、82年度中でも屈指の熱演で素晴らしいです。
またこの日は、テープの収録ピッチが狂ってるのではないかと思う程に
超スピーディに演奏されている『Wildest Dreams』が非常に面白いです。
こりゃもう、スラッシュ・ビートですよ。(^_^;)

ただ残念な事にこの音源、ウラジャケのセットリストを見ると分かりますが
前半部分が欠落している不完全収録の音源なんです。内容が良いだけに、
完全収録されているこの日の音源探しも続行したいところですね。

1CDR・自家製盤。
『THE MAN WITH THE GOLDEN ARM』 / (Ayanami−051)
Live Date : Stanley Theater, Pittsburgh, PA, USA / 1982. Apr. 25

Ayanami製のブートです。
冒頭の「Time Again」「One Step Closer」が未収録で、
上に紹介した僕のプライヴェート・ブートと収録内容はおろか、タイトルも全く同じです。
恐らく同じマスターから収録したものと思いますが、一応念の為に、
この音源を提供したのは僕ではない事を強く明言しておきます。

ただ、このリリースされた音質は僕のプラヴェート・ブートと比べて多少の
イコライジング処理が施されており、若干ですが音に重みが加えられている様で、
ベースラインのアタック音等は本作の方がズシッと効きます。
また、スラッシュビートの「Wildest Dreams」は若干ピッチ・コントロールされて、
テンポが若干抑えられて収録されている様にも思いました。

ちなみにここで聴ける「The Man With The Golden Arm」というのは、82年の4月公演のみに
演奏されたカバー曲。オリジナルは1955年の映画『黄金の腕を持つ男』のテーマ曲で、
エルマー・バーンシュタインが作曲したものをカバーしています。

1CDR。
『HARTFORD 1982』 / (No Label, 8813H175856-8813H105731)
Live Date : Woolsey Hall, Yale-Univ, New Haven, CT, USA. / 1982. Apr. 27

ウラジャケに記載されているライブデータを見ると、
『Woolsey Hall, Yale-Univ, Hartford, CT, USA』・・・と
ありますが、正確にはニュー・ヘブンでのライブ。
エール大学はハートフォードに分校が無いからです。
現在は閉鎖してしまいましたが、有名な海外のテープトレーダーのホームページに、
この音源がハートフォードと記載されていたので、これが一般化してしまったのでしょう。

内容ですが、4月27日といえば22日から始まったツアー開始から僅か5日しか過っておらず、
まさに始動したてのエイジアの産声を聴く事が出来る好音源です。オープニングとなる
「Time Again」では序盤のベースラインが結構均一に弾いているのがまず耳を惹くと思います。
ギターの表現もなかなか独特のものがありますし、全体的にも後の演奏で聴けるものとは
似て非なるものというか、一風変わった演奏表現となっていると思います。
「One Step Closer」は軽やかな演奏で、キーボードの装飾音が初期パフォーマンスらしい
音色で鳴っているのが独特。ギターも要所でビシッと決まっているのが良いですし、
軽やかながらも全体的に切れ味が鋭いのがユニークだと思います。「Without You」もまた
初期パフォーマンス独特のテンポ感がありますが、中間部のインストパートはリユニオン後
(2006年以降)の演奏と比べるとテンポに溜めを「効かせない」という無い若々しい解釈で
演奏されているのがよく分かると思います。この違いは重ねた年月の差なんでしょうねぇ。
(※このレビューは現在2012年12月20日に書き直しているので、その差を余計感じます)

「Midnight Sun」は序盤でリン・ドラムの動きが目立つ臨場感のある演奏。まだ演奏慣れ
していないせいかこの日は歌詞2番終了後の展開(2分16秒付近)でミスがあるものの、これは
アーリー・パフォーマンスらしい初々しさがあると思います。また4分25秒付近〜36秒付近まで
ウエットンがメロディラインを変えて歌っているのも非常に特徴的で、ここからメンバーが
持ち場に散ってギター、ドラム、そしてベースが徐々に動き出し、楽曲がダイナミックに
うねってゆく終曲部は鳥肌モノです。「Only Time Will Tell」はピッチの速さが若干影響して
アップテンポ気味ですが、ビート感は実際の演奏でもここで聴けるのと同様に良質なものが
感じられたと思います。尚、マスターテープはこの演奏終了後にテープチェンジをしたらしく、
本作でも終曲後に素早いフェイド・アウト→素早いフェイド・インで次の
「The Smile Has Left Your Eyes」の開演前MC(恐らくスティーヴが喋ってる)に繋いで
いるのが確認出来ます。


この「The Smile Has Left Your Eyes」〜「Sole Survivor」までですが、これは下段↓で
紹介している同日同マスター同内容の音源『EUTHANASIA (S.D.R. RECORDS, SDR CD 316/17)』
の方が音質が優れているので、そちらの欄でレビューすることにします。なので、ここからは
『EUTHANASIA』には未収録のアンコール部分「The Man With The Golden Arm」及び
「Heat Of The Moment」についてレビューを続けます。

・・という訳で「The Man With The Golden Arm」ですが、この日は出だしの
タイミングが合わずリトライしてからのスタート。他日の演奏よりもスリリングで
疾走感も抜群にあり、曲の良さがクローズアップされた素晴らしい演奏を披露して
います。また、演奏前に何やらサウンドチェックをしているのですが、時折鳴る
シンセサイザーの単音がなかなか生々しいですね。終演後に再びサウンドチェックが
入るのですが、どうも何らかの機材トラブルが発生している様です。しかし最後の
「Heat Of The Moment」も見事な演奏で乗り切っており、ここでは前半から中盤へ
移行するブリッジ・パート(1分40秒付近〜)と後半部(3分06秒付近〜)の表現が
非常にダイナミックなスケール感が備わっていて素晴らしいと思います。音を
聞いているとギターワークとベースラインの絡みが目立つけど、ドラムもかなり
パワフルで派手なアクションを入れている点も要注目でしょう。終盤、4分43秒付近
からはショルキーを持ったダウンズが登場して場を沸かせているのも確認出来ますし、
終演後も少しの間は録音が廻り続けているので、エンディングの挨拶が聞けるのも
ポイント高いんじゃないかと思います。

音質75点。
マスターテープの劣化が原因だと思いますが、全体的にピッチが若干速めに
収録されているのがやや難かなぁ。でも演奏は大変良質だと思います。
2CDR。
『EUTHANASIA』 / (S.D.R. RECORDS, SDR CD 316/17)
Live Date
Disc-1〜Disc2-(3) : Uptown Auditorium Theatre, Chicago, IL, USA / 1982. May. 14
+bonus track (Disc2−(4)〜(8)) : Woolsey Hall, Yale-Univ, New Haven, CT, USA. / 1982. Apr. 27

Disc2−(4)〜(8)に、4月27日のニューへヴン公演がボーナス扱いで5曲だけ収録されています。

上段↑で紹介している『HARTFORD 1982 / (No Label, 8813H175856-8813H105731)』と同一音源。
使用しているマスター音源も全く同じです。僅か5曲のみの抜粋収録ですが音質は本作の方が良好で、
演奏音が随分近く感じられる上に各音の解像度もグッと上がっているのが特徴です。内容的に重複
しているので、ここでは上段『HARTFORD 1982』の欄ではあえて書かなかったその重複部分(ショウの
中盤部分)をピックアップして書いてゆきます。

という訳で、収録はショウ中盤となる「The Smile Has Left Your Eyes」からスタート。
この時期御馴染みのウエットン+ダウンズによるボーカル+ピアノの形態です。
この日も相変わらずチャーミングかつ清涼感のあるパフォーマンスとなっていて、
終曲部がまだ完璧には固まっていない様子が伺えます。「Cutting It Fine」には
82年の演奏独特の鮮烈な躍動感があるのですがこの日は更に切れの良さも加わっており、
まさに完璧と言える見事な演奏を聞く事が出来ます。後半のボレロ部分も秀逸ですが、
実は面白いのはキーボードのソロに突入してから。序盤から「おや?」と思いますが、
6分14秒付近からのアプローチがその後のソロで聴けるものとは結構違っているんですね。
これもまた一緒のアーリーテイクというか、まだソロのフォームが細部まで固まりきって
いない様子が感じられる生々しいシーンだと思います。また、終曲後〜次の「Wildest Dreams」
の開始までに何かの機材トラブルに対処しているらしく、MCで若干時間を取り繕っているのも
面白いです。

そしてその「Wildest Dreams」。これ強烈ですよ。この疾走感と若々しいエネルギーの
炸裂は本当に凄いです。他日の演奏とは一線を画すこのスピード感にはいつ聴いても圧倒
されますし、演奏そのものも実にパワフル。間違いなく82年中のこの曲のベストパフォーマンス
のひとつでしょう。後半のドラムソロのパートも最強・最高のアプローチが聴けます。(^_^)
「Here Comes The Feeling」も曲の持つ運動性がよく出ている演奏で、アンサンブルが鳴り始める
序盤00分46秒付近からその違いが分かると思います(※特にベースラインのうねり具合が最高!!)。
まぁ試しに後半2分51秒付近〜3分24秒付近までの表現を聞いてみて下さいよ。冒頭はこの時期らしい
ベースラインの乱れがあるけれど、そこから力強く立ち直って歌詞3番に突入し、ギターが鮮烈な
音の散らし方をする辺りなど涙モノです。ドラムソロはこの日ドラの打ち鳴らしが結構目立ち、
そこから突入する後半の乱れ打ちが強烈。非常に82年らしいドラムソロだけど、これもまた
カールらしくて良いですね。「Sole Survivor」も疾走感のド迫力アンサンブル。この日は
後半4分06秒付近から突入してゆくギターアプローチが非常に大きな魅力を放っており、これに
ウエットンの特徴的なハミング(?)と躍動感に溢れたリズムが絡んで大変力強いパフォーマンスと
なっています。更に言えば、5分03秒付近と同5分11秒付近で2回鳴る特徴的なベースアタックも
この日の「Sole Survivor」を特別なものにしていると思います。

それにしても・・・これだけ良好の音質でマスターを持っているなら、こんなボーナス扱いでなく
ちゃんと別タイトルとしてリリースすればいいのになぁ。(-_-;)

音質(=ここで書いたDisc2−(4)〜(8)のニューヘヴン公演について)は78点。
ちなみに「Sole Survivor」の1分29秒付近で編集跡と思われる箇所(※たぶん編集跡だと思う)が
あるのだけど、演奏が良過ぎるので殆ど気になりません。
2CDR。

※本編となるDisc-1〜Disc2-(3)のシカゴ公演は、5月14日の欄を参照して下さい。
『The Early Performance, 1st AMERICAN TOUR』 / (CURRY CLUB, CC-19820428)
Live Date : Painters Mill Theatre, Owings Mill, MD, USA / 1982. Apr. 28

缶屋のシーバさんに創って戴いたプライヴェート・ブートレッグ盤。
海外のテーパーから入手した音源を使用しています。ただ残念な事に
ショウ途中からの不完全収録音源で、ラストの「Heat Of The Moment」も
後半でカット。この日は演奏が素晴らしいのでこれは痛い・・(^_^;)

という訳で収録は「The Smile Has Left Your Eyes」から始まっており、
ウエットンの甘い声がこの日もダンディに響き渡っています。「Cutting It Fine」は
冒頭のメロディからダイナミックでドラマチックな動きが伝わってくるもので、
この日は何故か一瞬ズレて入るベースの音も、ミスというよりは良い味付けに
なっている感じがします。後半のボレロも秀逸で、この日は低音を強調した
シンフォニックなパート(ドラムみたいな重低音が♪ドドドデンデン、ドデンデン..、と
勇ましく入ってくるアレ)に入る前のピアノの旋律をいつもより長めに弾いていますし、
終曲手前のピッチベンドを多用したキーボードの旋律も際立っています。

「Wildest Dreams」は力強いパフォーマンスで、初期エイジアの凄みが
ダイレクトに炸裂。疾走感にはやや欠けるのだけどビートの躍動感は満点で、
中間部の駆け上がるギターソロや後半のドラムソロ突入付近の表現などは
鳥肌が立ちます。(^^)「Here Comes The Feeling」は重厚感に溢れた演奏で、
このワイルドで甘美な表現は82年ならではのものがあると思います。また
ここではベースラインの音が良く聞こえるのだけど、このうねる様な低音の
動きがじっくり楽しめるのもこの音源の魅力だと思います。途中から突入
してゆくカールのソロは他日とさほど変わりませんが、この日はタムと
バスドラを全体的に多めに入れて中低音のアタックを強調している感じがします。
後半で高速リムショットを入れてるのも聴き処でしょう。

「Sole Survivor」も重厚感に満ちた好パフォーマンスで、歌詞2番の後で
一旦ブレイクした後から切り込んでくるギターの旋律も鮮烈。この日は
終曲部分が独特で、最後の歌詞「♪Sole Survivor, Solitary fire〜〜...」と
歌われた直後に「ヴィンヴィンヴィン・・・」とベースが呻り、アンサンブルが
最後のメインフレーズを出した後、最後の音がずーーーーっと引き伸ばされています。
他日の演奏と比べてもこの引き延ばしが長く感じたので実測してみたところ、
何とこの日は22秒間も最後の音を出し続けています。これなかなか珍しいですね。(^^;)
ウエットンも非常に熱く歌い上げているのが印象的です。
「Heat Of The Moment」は後半最後の歌詞を歌い始めた箇所でカットされて
しまうんだけど、演奏自体は見事なもの。またこの日の演奏で面白いのは
ウエットンが曲の中ほど(歌詞2番が終わった後の"♪Heat Of The Moment"を
繰り返す部分。ギターソロに入る手前)で、アドリヴで音程を変えて歌っている
箇所があるんですね。僅か1フレーズだけなんだけど、これがなかなか新鮮な響きです。

また、こうして「Heat Of The Moment」が後半でカットされているので
この日は「The Man with the Golden Arm」をプレイしたかどうかは不明。
この後に演奏した可能性は充分あると思いますし、この謎を解く為にも
いつかこの日の完全収録盤が聴きたいものです。

音質81点。
1CDR・自家製盤。
↓ オリジナルHIGHLAND盤


↓ VIVA LES BOOTLEGS盤
『ALCHERINGA』 / (HIGHLAND, HL515/516)
Live Date : Orpheum Theatre, Boston, MA, USA. / 1982. Apr. 29

音質良好・内容充実・一公演完全収録という三拍子揃った久々の好盤。
冒頭の「Time Again」から4月独特の荒削りな力強い演奏をしています。
この日のセットで面白いのは「The Man with the Golden Arm」を演奏して
いない事で、これはこの日はたまたまセットから外されているのでしょう。
また、パフォーマンスで素晴らしいのはウェットンのベースラインが良く
聴こえる「Without You」。この日の演奏はこの曲のベストテイクと言っても
過言ではないと思います。「Cutting It Fine」では、カールのドラムが
他の日と比べて非常に軽快でドラミングの手数が多く、後半からのダウンズの
ソロも普段とはちょっと変わったフレーズを弾いているのも特徴です。
冒頭のオープニング・ファンファーレと「Time Again」の出だしが約2秒ほど
切れているのが少々残念ですが、ラストの「Heat Of The Moment」まで一気に
聴き通せる4月公演の好盤です。

また本作はジャケの表と裏に

"LIBERATED BOOTLEG - NOT FOR SALE ONLY FOR FANS -"

・・とプリントされた"VIVA LES BOOTLEGS"盤なるものが存在します。
初めて見た時は2ndプレス盤かと思ったのですが、どうやらHIGHLAND製のオリジナルを
更にコピーしたタイトルの様です。ブートレッグCDショップの店頭で一度だけ現物を
手にしたことがあるんですが、以後一度も見掛けません。買っとけば良かった・・(泣)。

一応ネットで見つけたので、ジャケの画像だけ←に含めておきました。
どうもVIVA LES BOOTLEGSというのは無料のブートレッグ音源ダウンロードの
ザービス(?)か何かの様なんですが、サイトが英語で読めないんで分かりません。
前述した通り、自分はショップで見た時に買わなかったので持っていない為、
音質の差とか収録分数の差、使用してあるソース音源の違い、CDケース内の
装丁の違いやディスクのデザインの違いなどについては知りません。

たぶんコピー物だと思うので同じだとは思うのですが、ブートは同じもの
でも収録内容に差があるケースが意外と多いので、実際に買って比べてみないと
こういう時に両タイトルの差が書き辛い・・(T_T)

2CDプレス盤。
『DRAGON MASTER』 / (Virtuoso-107/108)
Live Date : Orpheum Theatre, Boston, MA, USA. / 1982. Apr. 29

上段で紹介している音源『ALCHERINGA (highland-HL515/516)』に使用された
マスター音源を収録したこの公演日の決定盤。
『ALCHERINGA』それ自体でも音質の良い優良音源ですが、
聴き比べてみると本作はその解像度がより一層増しており、
冒頭「Time Again」導入部で既に音の伸びや透明感、
立ち上がりの音揺れの無さが随分と違っている事に気付くと思います。
この音質の優秀さは最後まで持続し、82年の演奏がどれほど
凄まじいものだったのかを知る上で格好の一枚という仕上がりです。

Disc-2にはこの4月29日公演の後半と、その4日前の4月25日の
ピッツバーグ公演からセット同位置の後半部分を収録。つまりは
82年4月公演でのみ演奏された「The Man With The Golden Arm」を
セットに組み込んでいるか否かの差をDic-2は表現している訳ですが、
このボーナス扱いのピッツバーグ公演はほぼ間違いなく
『THE MAN WITH THE GOLDEN ARM (Ayanami-051)』からの部分転用。
但し、その既発盤と本作収録の音質を比べると本作の方が
ややマイルドで上品な音質になっており、ピッチも補正済みで
聴き易くなっているのが特徴だと思います。

ちなみに、メーカーのアナウンスによると
本作のDisc-2冒頭のMCはマスター音源ではフェイドイン処理されて
若干短かったらしく、このMC部分のみ既発盤『ALCHERINGA』からの
転用となっているようです。実際に聴いてみるとかなり巧く繋いで
あるので不自然さは全く感じられなかったし、この修復作業によって
この日の公演がより完璧に近い形で接する事が出来る様になっています。
更に既発盤では「The Smile 〜」の終演後直ぐにDisc-1が終わって
いたのに対して本作ではその後もテープが切れ目無く続いており、
カットされていたウエットンの声とギター(だと思う)のスラップ音が
聞こえるのも嬉しいポイントだと思います。(^^)

2CDプレス盤。
『IN MY WILDEST DREAMS』 / (Asia Project Records Limited, APRL-820430)
Live Date : Capital Theater, Passaic, New Jersey, USA. / 1982. Apr. 30

極少リリースが惜しまれる名音源タイトル。
この日かなりドラマティックなのが「Without You」でしょう。中盤手前のキーボードの
アプローチとタイミングが若干通常とは変わっていて、しかもかなり目立つ音で披露して
います。どっしりとしたこの曲想をこれだけ豊かに深みのある音でプレイ出来たのは、
やはりこの時期のマジックですかねぇ。スティーヴのソロは「Leaves Of Green」で
オーディエンスの反応を伺っているのか、途中でわざとタイミングをズラしてユニークな
プレイもしているのが特徴。相変わらず素晴らしいパフォーマンスで、非常に聴き応えの
あるソロになっています。

「Midnight Sun」はここでも感動的な演奏ですが、5月〜6月の演奏と比べるとまだまだ
曲がテストされている様子が伺えます。タイミングの取り方がぎこちなかったり、
ちょっと変わったキーボードのフレーズを組み込んでいたり、ボーカルのアプローチが
違っていたりしますが、試作段階の生々しい過程を聴けるという点で
これもまた大変興味深い演奏だと言えるでしょう。
「Cutting It Fine」は、曲の冒頭からカールのドラムアプローチが非常にドラマティック。
マスターに起因する問題点なのか、曲中盤で編集作業(??だと思う)の痕跡があるものの、
一曲通して非常に迫力のあるドラミングが堪能出来るテイクです。
「Wildest Dreams」も荒削りさがまだ残る荒々しいパフォーマンスで迫力満点。1コーラス目の
「They Fight, "They Fight!"」のコーラス・プリセットが機能せず、メンバーの生声コーラスが
浮き彫りで聴けるのも面白い点です。(^_^;)

「Here Comes The Feeling」はこの日も絶好調。所々でカールがドラムのタイミングを変えていたり、
曲の要所要所にあるキメの部分のアンサンブルが絶妙だったりで、聴き応えも満点のプレイです。
またカールのドラムソロもいつになく強烈で、ヘヴィメタル的な迫力を兼ね備えた極上のソロを
披露しています。リプライズで戻ってからもシャープに、切れ味鋭い音でコーダを決める様子は
鳥肌モノのカッコ良さがあります。ラストの「The Man With The Golden Arm」は恐らく
現存するのが確認出来る音源中ではこの日の演奏が一番アンサンブルの纏まりが良く、
迫力も一番感じられるテイクだと思います。ウエットンの図太いベースラインが
終始バリバリ響いて非常にカッコいい。これ凄いです。(^_^)

尚、聴き通して音質面で気になったのは以下の2点。
1.「One Step Closer」は、マスターテープの劣化に起因するテープよれが部分的にある。
2.「Midnight Sun」で高音がマスターの劣化で部分的に若干割れてしまっている。
・・・でもまぁ、当時のオーディエンス録音物としては良い音質で収録されていますし、
上記の点にしても殆ど気にならない程度です。

音質81点。
2CDR。
西新宿一店舗のみの特別販売・限定50枚のリリース。
『APRIL 30th 1982』 / (CAN-CAN-BOTTLE, CCB#3-CATALOG No,3)
Live Date : Capital Theater, Passaic, New Jersey, USA. / 1982. Apr. 30

シーバ様と創った自作のプライヴェート・ブートレッグ。上段↑で紹介している
『IN MY WILDEST DREAMS (Asia Project Records Limited, APRL-820430)』と同内容で、
使用しているマスターテープも全く同じです。加えてジェネレーションをかなり重ねて
いるらしく、音質も本作の方が劣っています。ヒスノイズも目立ち気味。
更にオープニングの歓声も約15秒ほど短くカットされていますね。
『IN MY WILDEST DREAMS』が出るまでは結構愛聴してたんですが、
今となってはもう・・うーむ。(^^;)

音質74点。
2CDR・自家製盤。
『AESTHETICISM』 / (CURRY CLUB, CC-19820502)
Live Date : Tower Theater, Philadelphia, USA. / 1982. May. 1 (※...May be)

缶屋のシーバさんに創って戴いたプライヴェート・ブートレッグCD。
戴いた時のライブデータ(※←ジャケ画像参照)では

『Palladium, New York City, USA / 1982. May. 2』

・・・となっていたのだけど、恐らくこれは間違い。何故かと言うと「Time Again」の
終曲後のMCで「Wonderfull, Philadelphia!!」と言っている様に思うからです。82年中の
フィラデルフィア公演と言えば6月22日か5月1日の2箇所しか無いのですが、6月22日は
完全にその日のものと確定している有名な音源があるので、そうなるとこの音源は
恐らく5月1日のもので間違いない様に思います。

またこの日はターニングポイントとなった日でセットリストの変更が確認出来るんですね。
大きな変更点は勿論「The Man With The Golden Arm」がセットから外された事ですが、
この日はもうひとつ、昨日の4月公演まではショウの中盤にあった「Wildest Dreams」が
2曲目に繰り上がっている事です。しかもこの日は「One Step Closer」がセットから外されている
という異例のセット。ただこれはフェイクっぽい印象もあって、実はこの音源は
「One Step Closer」が演奏されている筈の位置でディスク・チェンジになっているのです。
つまり、
*********************************************************

Disc-1
(1). Time Again
(2). Wildest Dreams
(3). Without You
(4). Steve Howe Guitar Solo - The Ancient〜The Clap〜Ram
(5). Midnight Sun
(6). Only Time Will Tell

(※ ←セット変更になった5月10日公演以降は通常この位置(7)にOne Step Closerがある)

Disc-2
(1). The Smile Has Left Your Eyes
(2). Cutting It Fine - Geoff Downes KBD Solo
(3). Here Comes The Feeling - Carl Palmer Drum Solo
(4). Sole Survivor
(5). Heat Of The Moment
*********************************************************
・・となっており、上記した通りディスク1の最後「Only Time Will Tell」と
ディスク2の最初「The Smile Has Left Your Eyes」の間に本当は
「One Step Closer」があったんじゃないの?とも思えるんですね。

そもそもこの時期はアルバムを出して間もない頃(=オリジナルの持ち曲が少ない時期)だからこそ
カバー曲「The Man With The Golden Arm」を入れてショウのボリューム感を出していたのだから、
「The Man With The Golden Arm」だけをセット落ちさせるならともかく、せっかくのオリジナル曲まで
セット落ちさせる必要は無いと思えるんです。だからここに「One Step Closer」がディスクの切れ目で
未収録となっている事に多少の違和感を感じる訳です。

また通常「Wildest Dreams」と「One Step Closer」の演奏位置が本格的に入れ替えれるのは
約一週間後の5月10日の公演頃からです。しかし冒頭で書いた通り、この日のMCでは
「Wonderfull, Philadelphia!!」と言っているのが確認出来るので、これは5月1日公演で
間違いない様に思います。つまり総括すると、この日は約10日後から本格化するセット変更を
先行してまず試しに一度やってみようじゃないか、という特別な日だった様に思うんですね。
そしてその意味(=セットリスト史上初めて試みる、試験的なテコ入れ)として考えると、
この日は本当に「One Step Closer」を演奏しなかった可能性も否定出来ない様に思います。

・・まぁ正直どこまで書いても推測の域を出ない訳ですが、そんな憶測とは裏腹に
この日の演奏が素晴らしいんですね。その、本音源の収録内容についての詳細は
同日・同一音源である下段↓の『JOURNEY TO PAST / (CAN-CAN-BOTTLE, CCB-19820522)』の
欄で書きましたので、そちらを御覧下さいませ。

音質79点。
2CDR・自家製盤。
『JOURNEY TO PAST』 / (CAN-CAN-BOTTLE, CCB-19820522)
Live Date : Tower Theater, Philadelphia, USA. / 1982. May. 1 (※...May be)

缶屋のシーバさんと共同の自作プライヴェート・ブートCD。
戴いた時のライブデータ(※←ジャケ画像参照)では

『Warfield Theater, San Francisco, USA. / 1982. May. 22』

・・・となっていたのだけど、恐らくこれは間違い。何故かと言うと「Time Again」の
終曲後のMCで「Wonderfull, Philadelphia!!」と言っている様に思うからです。つまり
上段↑で紹介している『AESTHETICISM / (CURRY CLUB, CC-19820502)』と同じ内容で、
恐らく5月1日の演奏で間違いない筈。ちなみに使用しているマスター音源も全く同じです。
また「One Step Closer」が欠落している理由も上段↑『AESTHETICISM』の欄で書いた
通りで、本作もまたその部分がディスクの切れ目となっています。

という訳で『AESTHETICISM』の欄では考察と説明文だけになってしまったので、
同日・同一音源の本作でここからこの日の収録内容・聴きどころを書いてゆきます。
(※つまり『AESTHETICISM』もここから記すレビューと全く同じ内容です)

まずオープニングは「Time Again」なんですが、よく聴くと冒頭のコーラス
「♪アーアア〜、アアア...」が始まると同時にパイロが炸裂する音が入っており、
かなり派手な演出がこの日あった事が伺えます。演奏もドライヴを感を感じる優れもので、
これ以上は無いだろうという極上のアンサンブルとなっています。ハウの
コーラス(恐らく)も決まっていますね。そしてセット変更としてこの日から
2曲目に「Wildest Dreams」を披露。スピード感のある曲が冒頭から立て続けに
2つ続く事でショウの構成がグッとドラマチックに変化している事がよく伝わって
きます。中盤のギターソロも強烈な速弾きを完璧にこなしていますし、終盤の
ドラムソロも突入後から加速して強烈です。「Without You」はボーカルの
メロディラインを所どころで音程を変えて歌っているのが面白いですね。
ブリッジとなる中盤のギターソロとアンサンブルの箇所も重厚感と疾走感が見事に
ブレンドされた表現で聴き応えありますし、何よりも演奏音そのものが大変瑞々しい
のが特徴だと思います。演奏中、録音機の周囲で人の往来が激しいらしく1分07秒付近で
「Excuse me!」という声が聞こえて面白い。(^_^;)ハウのギターソロはこの日も秀逸。
華麗な指捌きは勿論なんですが、この日の「The Clap」は他日よりも丁寧に弾いていて、
開放弦の響きやハーモニクスの音がより際立っていると思います。

「Midnight Sun」はウルトラ級の絶品演奏。まさにリン・ドラム版の一つの完成形が聞けます。
ウエットンの熱唱がますます際立ちますが、そのダンディな声に絡みつくキーボードが
素晴らしい響きで高らかに旋律を奏でており、このハーモニーがとても心に残るんですね。
歌詞3番の最後を歌い終えた後も「♪ A〜aah..」と何度もアドリヴでメロディを押し込んで
いるのも素晴らしいですし、持ち場に戻ってから鳴り始めるギターの旋律も素晴らしい。
この演奏、かなり良いですよ。「Only Time Will Tell」はメリハリのある演奏で、要所要所の
キメとドラマチックに盛り立てるドラムのビートが相まって楽曲の輪郭がいつもより鮮明に
感じられます。終盤手前の「♪ Only Time Will Tell...」と何度も繰り返す箇所のムードある
響きも大きな聴きどころでしょう。「The Smile Has Left Your Eyes」はこの日もピアノ伴奏
によるウエットンの独唱版。ディレイ効果無しのストレート勝負な演奏で、変にエフェクトを
掛けていないだけに曲の良さが逆に際立っていると思います。またこの日のコーダはすんなりと
着地しているだけに、最後にピアノの旋律が散ってゆく様子がコンパクトに纏まって聞こえます。

「Cutting It Fine」もまた疾走感に満ちたエネルギッシュな演奏ですが、ここではドラムと
キーボードの見事な音の交差が際立っている様に思います。後半のボレロ部分ではソロに入る
手前から図太い音色でシンセが鳴り始め、重厚感を増してソロに突入してゆく感じが面白いです。
「Here Comes The Feeling」は歌詞2番の後から入る中間部の出だしで、マイクから離れた位置で
「♪ Yeah〜〜!!!」と叫んでいるウエットンが確認出来るのですが、そこから始まる中間部の
演奏も結構特徴的です。またブレイクポイントとなる箇所では相変わらずポカミスをしているの
だけど、これは5月22日のサンフランシスコ公演での同曲の大ミスとよく似たタイプ。でもそれ以外は
非常に深みと奥行きのある演奏となっているのが魅力ですね。カールのソロは定型タイプですが
この日はダイナミックな展開が際立っています。いつも以上に中・低音のアタックが力強くて
ストロークの速さも際立ち、後半で高速リムショットが暫く入るのも特徴でしょう。

「Sole Survivor」ではラウドに歪ませたギターの響きとドラムが目立っていて、全体の
サウンドの重厚感がよく出ていると思います。後半、4分を超えた辺りからのギターソロでは
速弾きとチョーキングをミックスしたこの日ならではプレイをしていますし、引き伸ばされた
後半部で延々と弾きまくられるギターも強烈で思わず耳をそばだててしまう筈です。
ラストの「Heat Of The Moment」ではサビとなる「♪ Heat Of The Moment...」の、"Heat"の
音程を若干変えて歌っているのがユニーク。また後半ではダウンズがショルキーを持って
フロントで演奏を始めた後からギターが高い音色で旋律を奏でていたりしてなかなか面白いです。

音質79点。
「Sole Survivor」と「Heat Of The Moment」の間、アンコール待ちの部分のみにカットあり。
2CDR・自家製盤。
『05-01-82 TOWER THEATER PHILADELPHIA』 / (CAN-CAN-BOTTLE, CATALOG No,9)
Live Date : Unknown

缶屋のシーバさんに創って戴いたプライヴェート・ブートレッグCD。
戴いた時のライブデータ(※←ジャケ画像参照)では

『Tower Theater, Philadelphia, USA. / 1982. May. 1』

・・・となっていたのだけど、上段↑二つで紹介している
『AESTHETICISM / (CURRY CLUB, CC-19820502)』及び
『JOURNEY TO PAST / (CAN-CAN-BOTTLE, CCB-19820522)』がどうやら5月1日の
演奏と思われるので(その理由は『AESTHETICISM』の欄の記事を御覧下さい)、
もともと1日の演奏という事でタイトルも冠されたこの音源が本当は
何日の演奏なのか分からなくなったからです。ただ「One Step Closer」と
「Wildest Dreams」の演奏位置がまだ変更になっていない事と、
「The Man With The Golden Arm」がセット落ちしている事から、
これは5月2日〜10日のどれかなのは間違いないと思います。

また、どうして日付の特定が出来ないかと言うと、この音源は「Time Again」の終曲後
「One Step Closer」から音質が変わり、ここからハウのギターソロ終了」まで他日公演が
挿入されているんですね。で、この「Time Again」の終曲後のカット位置が問題で、通常は
大抵この位置で「Thank You,」といった挨拶の後、今ライブをしているその場所への敬意を
込めて「Wonderfull, ○○!! (←"New York!!"とか"Tokyo!!"の様に土地の名前が入る)」と
言うのだけど、その土地の名をコールする直前でカットされているんですね。これはかなり
意図的な気がしますし、この為に直接的にどこの土地でやったライブなのか分からない訳です。

・・まぁそういう不完全な音源ではありますが、演奏内容は凄く良いのです。
までオープニング・アナウンスに導かれドラマチックに始まる「Time Again」は
ドライヴ感に満ちたへヴィな演奏。曲中盤のギターワークが冴えており、
ゴツゴツした骨太のサウンドと切れの良いアンサンブルが耳を惹く
魅惑的なオープニングを飾っています。

その「Time Again」の終曲後「One Step Closer」から音質が変わり、ここから
「Without You〜ハウのソロタイム終了」まで他日公演が挿入されています。
これは間違いなく同82年6月22日のフィラデルフィア公演ですね。恐らく
マスターテープでこの部分が欠損していたので有名ブート音源を使って穴埋め
したのでしょう。数曲分失われているのは残念ですが、次の「Midnight Sun」からは
再びこの日の公演に戻ります。

という訳で、「Midnight Sun」は歌詞1番が終わった付近からのカット・イン。
ムーディな曲想が煌く中、歌うタイミングを僅かにずらしたり音程を変えたり、
時に「♪ Aaahhhh...」という声をアドリヴで入れたりして、微妙にアプローチを
変えつつ歌唱しているウエットンが良い感じ。(^_^)歌詞3番以降、ハウが持ち場に
戻ってからのギターワークも強烈で、この日は切ない旋律の素晴らしいトーンを連発
しているのも印象的です。「Only Time Will Tell」はイントロの演奏からいきなり
ドラマティックで、その後の展開に期待出来る幕開け。勿論その期待は裏切られず、
セカンド・シングルを狙うに相応しい魅力がもうこの時点で至るところに炸裂しています。
曲想を増幅させたかの様にダイナミックで深みのあるアプローチが続き、終曲部も
ボーカルラインにエコーが掛かり、尚且つ最終音もグッと引き伸ばされて印象に残る
演奏です。「The Smile Has Left Your Eyes」はもちろんピアノ伴奏による独唱版。
この日は序盤で歌うタイミングを間違えているのと、終盤の

♪ Now it's too late you realized
♪ Now there's no one can sympathize
♪ Now that the smile has left your eyes

・・という3つの歌詞のアプローチを音程を変えながら何度も繰り返し、
着地点を模索する様に歌っているのが大変興味深いです。他日公演でも似た様な模索の
アプローチが聞けますがこの日は際立っている(=つまりそれだけ不安定)と思いますし、
これもまた未完成でアーリー・テイクな様子が伺える貴重なパフォーマンスの一つでしょう。
「Cutting It Fine」も魅力溢れる演奏で、この日は「♪ Aaahhhh...」というアドリヴの声を
他日公演より多めに入れているのが特徴。そして後半部のボレロもこの日は重厚感があり、
そこから繋がるソロも終盤でピッチベンド操作が目立つ箇所があってかっこいいです。

「Wildest Dreams」も重厚感とうねる様なドライヴ感に溢れる演奏で、中間部以降の
ギターワークと全体音の炸裂感は圧倒的でしょう。またこの日は歌詞3番に入る手前の
「No, not in my wildest dreams」の"dreams"の語尾を「♪ drea〜↓〜↓〜↓〜ms..!!」と、
どんどん音程を下げて歌っているのも面白いです。「Here Comes The Feeling」は開始直後に
ベースのスライドが2回入り、ノリノリの様子が冒頭から伝わってくる熱演。1回目のサビの
歌詞の最後「feeling」を「fee〜li〜↓↓〜ng〜↓〜〜... 」と、音程を下降させながら
引き伸ばして歌っており、前述したこの日の「Wildest Dreams」とのアプローチの類似性を
見出せます。ドラムソロは前半でカットがあり、中盤でも部分カットあり。合計で恐らく
2分間ほどの音が失われているのですが、表情豊かで引き締まったソロ演奏なだけに
これはちょっと残念。(^_^;)

「Sole Survivor」も熱演で、イントロからかなりの気迫が感じられるパフォーマンス。
きめ細かいながらも攻撃的な音色でどんどん絡んでくるギターが目立ち、ズビズビと
呻りまくるベースラインの動きとドラマティックなドラムも曲の運動性を際立たせており
素晴らしい演奏となっています。大歓声の中で始まるアンコールの「Heat Of The Moment」も
ベースの動きとギターワークが魅力的で、インスト主体となる中盤〜後半からは非常に
聴き応えのあるシーンが多いです。終演後暫くテープが廻っているのだけど、ステージの
照明が落とされたのかオーディエンスがブーイングしているシーンもレコードされていて、
当時のエイジアがどれだけ熱狂的に迎えられていたかがよく伝わってくるのも面白いです。

尚、この日からは「The Man With The Golden Arm」を演奏していません。
これ以降の音源のセットリストを見ると分かりますが、昨日(4月30日)の演奏を最後に
正式にセットから外され、ほぼ間違いなくこの5月1日公演から演奏しなくなった様です。
つまり本公演は、カバーはもうやらないという意思の下でショウが構成された最初の公演と
言えるでしょうし、或る意味で本当のスタートを切った公演とも言えると思います。

音質55点。(※他日公演のOne Step Closer〜ハウのソロまでは除く)
2CDR・自家製盤。
『THE AUDITORIUM ADRIB』 / (ROYCD-19820507)
Live Date : Verdun Auditorium, Montreal, Quebec, CANADA, USA / 1982. May. 7

ROY 肥後さんから送って戴いたプライヴェート・ブートです。

この日の演奏は色々と興味深い点が多いです。
まず冒頭の「Time Again」では数箇所で演奏をミスっていたり、
「Midnight Sun」では歌詞の一部分で、いつもとは歌の間の取り方を変えて
歌ったりしています。
また、ダウンズのキーボード・ソロでは、突然のマシン・トラブルの為か
いつもとは全く違うアドリブを弾いています。
ソロの途中ではシーケンサーに組み込んでいた音が
突然メチャクチャなピッチで流れてしまうハプニングもあり、大変面白いです。
まァMIDI規格前の機体も含めかなり複雑で強引な配線+改造をしてシステムを同期させて
いる筈ですから、こうしたトラブルは当然あり得ますよね。(^_^;)

そして本音源で一番興味深いのは、「Heat Of The Moment」の演奏開始前に
約25秒程度の"前奏"がある点です。これは非常にレアな演奏ではないでしょうか。
アドリブの要素が強い『前奏』ではありますが、これがあるだけで聴き慣れたこの曲が
かなり印象の違う新鮮な曲として聴こえるから不思議です。

音質50点→80点。
ディスクスタートから暫くは左チャンネルがほぼ死んでいるので50点くらい。
しかし3曲目「Without You」の後半付近から両チャンネル普通に聴こえる様になり、
その後は後半に進むほど音質も明瞭感も上がって良くなります。

2CDR・自家製盤。
『MASSEY HALL, TORONTO, CANADA. 1982-05-08』 / (CURRY CLUB, CC-19820508)
Live Date : Massey Hall, Toronto, Ontario, CANADA, USA / 1982. May. 8

缶屋のシーバ様と共同の自作プライヴェート・ブートです。

この日はスタンダードにと言うか、それぞれの曲を
アルバム・テイクの通り忠実に再現しているなぁ、という印象を受けます。
良く言えば実に安定した演奏であり、悪く言えば少し迫力に欠ける様な印象です。
しかし、演奏自体は非常に良くて、全体を通してじっくりと聴き込めるという
非常に優れたパフォーマンスを披露しています。
また、この日はスティーブのギターソロがいつも以上に冴えている様に
感じます。それぞれの曲でも、朗々と流れる様にギターを弾いていて、
彼のギター・ワークの素晴らしさを再確認出来るプレイが多いです。

2CDR・自家製盤。
『INTERMISSION』 / (SOILY 003/004)
Live at : Massey Hall, Toronto, Ontario, CANADA, USA / 1982. May. 8

西新宿BLIND FAITH製のブート。
ジャケがビニール・コーティングされており、デザインも非常に丁寧な創りになっていて、
細部までこだわりが窺える傑作ブートです。
音質も大変良く、1公演完全収録ですが『Cutting It Fine』の途中で
部分的にピッチコントロール(または、他日の演奏部分のツギハギ?)が
施されていますが、気になるのはこの箇所のみ。
これは恐らくマスターテープの部分不良によるものでしょう。
気にしなければ気になりませんし、そんなものはこの素晴らしい演奏で
吹き飛んでしまうでしょう。

また、ボーナストラックとしてラジオ放送(IN THE STUDIO)からの
インタビューが収録されており、これはラジオディスクのレア盤
『IN THE STUDIO / ALBUM NET WORK #117 (or #302)』から落とした物だと思います。
#117は1990年放送、#302は1994年の同内容再放送です。
インタビュー途中に流される曲(CM代わりにWildest Dreams、Here Comes The Feeling、
Heat Of The Moment等が流される)はカットされて完全にインタビューのみの収録ですが、
なかなか興味深い音源です。

尚、この日の演奏はブート映像としても残っています。
THANKS OF THE MOMENT』がそれ。
82年の様子を映像でシューティングした中では恐らく最高のブート映像です。

2CDプレス盤。
『LAKE SIDE DRAGON IN ONTARIO』 / (ROYCD-19820509)
Live at : Univ. of Western Ontario, London, Ontario. / 1982. May. 9

ROY肥後さんに戴いた自作のプライヴェート・ブートレッグCD。

「Time Again」は歯切れの良いシャープな演奏。疾走感も充分あり、コーラスの重なりも
なかなかのものがあって好調なオープニングを飾っています。「One Step Closer」は
軽快に弾むリズムが心地良く、2分49秒付近から入ってゆくギターソロと後ろで重なる
ドラムの交差もビシッと決まっているのが良いですね。加えて言えば、曲中で合いの手で
しょっちゅう入るギターの装飾音も綺麗に決まっていると思います。「Midnight Sun」は
ムード溢れる好演奏。前半部のリン・ドラムのパートはたゆたう様な全体音の拡散と
伸びやかなウエットンの声が絶妙に映えていますし、空間に音が散ってはまた新しい音色が
紡がれてゆく様相が何とも素晴らしいです。後半、4分53秒付近からはギターが鳴り始めますが、
トレモロを絡めつつ高らかに鳴るこのトーンも見事に曲を盛り立てていて聴き応え充分です。
「Only Time Will Tell」では冒頭のテーマ音でまず素晴らしいハーモニーが提示され、
曲が動き始めてからのアンサンブルも圧倒的。ここでもギターが素晴らしい仕事をして
いるんですが、この日はやっぱりハウが際立っていますね。鮮烈なトーンワークを完璧に
こなしてゆく様子に心ときめくシーンがここでは特に多いと思います。

「The Smile Has Left Your Eyes」はこの日もピアノ伴奏によるウエットンの独唱版。
他日の演奏でも非常にチャーミングな印象が醸し出されていますが、ここでもそれは健在。
曲の後半で一箇所だけエコーが掛かっている箇所があり、より深いイメージを残しているのも
特徴です。「Cutting It Fine」は相変わらずドライヴ感に満ちた好演奏。ここでは若干
アナログテープ特有のヒスノイズとノイズが目立つんですが、それをものともしない
音楽の力強さが前面に出てくるのでむしろ心打たれます。またこの日は機材トラブルの
為か後半のボレロから繋がるダウンズのソロの繋ぎに不安定さが出ていて、いつもなら
そのタイミングで出ている筈の音が出ていなかったり、出ている筈のプリセット音も
ピッチが狂っていたり速度が適正ではなかったりと、セッティングや電気的な
技術面で何らかの不具合を抱えている様です。「Wildest Dreams」では、最後の
ドラムソロの終了直後から入ってくる歌詞「No, not in this world..」の、
最初の"No,"を伸ばして歌っているのが面白いですね。つまり
「No〜〜〜 not in this world.. No, not in the next...」と続いてゆく訳です。
初めて聴くと妙な違和感があるんですが、でも意外と耳に残るアプローチなので
ここはちょっとした聴き処でしょう。最後に鐘が鳴る箇所でもギターのハーモニクスが
鳴り損なった音が延々と残っており、特徴あるイメージを残しつつ終曲しています。

「Here Comes The Feeling」は82年らしい瑞々しさに溢れる演奏。歌詞1番〜2番へ
向かうブリッジの箇所で若干の機材トラブルが発生しているんですが、全くブレずに
熱演を繰り広げ、そのトラブルさえもワイルドな魅力に変えています。またここから
突入してゆくこの日のドラムソロは先に進めば進むほど寸詰まり感が感じられるという
ユニークなもので、再び「Here Comes The Feeling」にリプライズする箇所もこの日は
どこか不自然。(^_^;)でもそこからのアンサンブルが強烈で、メリハリのあるビートを
炸裂させながらエンディングへ向かう様子は非常に聴き応えあります。
「Sole Survivor」もラウドな曲想がよく出たサウンド・ドラマを形成しており、
ここでもギターワークがいちいち輝いています。特に中間部となる2分53秒付近からの
ギターは鮮烈で、ミュートしたフレーズの粒立ちやドライヴ感には目を(耳を)見張る
ものがあると思います。「Heat Of The Moment」もメリハリのあるサウンドが
耳を惹きますが、面白いのは後半3分51秒付近から入ってくる御馴染みのキーボードの
フレーズがこの日は若干アレンジされていること。コレなかなか新鮮な響きです。

音質79点+α。
2CDR・自家製盤。
『UWO, LONDON, ONTARIO 05-09-1982』 / (CURRY CLUB, 2002 Aug-19820509)
Live at : Univ. of Western Ontario, London, Ontario. / 1982. May. 9

缶屋のシーバさんから送って戴いた自作のプライヴェート・ブートレッグCD。

上段↑で紹介している『LAKE SIDE DRAGON IN ONTARIO (ROYCD-19820509)』と同内容で、
使用しているマスター音源も全く同じ。この音源を入手した当時(確か1998年頃)は
ダウンロードサイトは勿論、まだインターネットもさほど普及していなかったので、
どちらもメールでまず相手とWant Listをやり取りした後でカセットテープによる
トレードが主流でしたから、もしかしたらROYさんもシーバさんも同じ方とテープ交換を
されたのかもしれません。音質もジェネレーション具合も気味が悪いほど似ています・・というか
恐らく全く同じものですね、コレ。(^_^;)

音質79点+α。
2CDR・自家製盤。
『GRAND RAPIDS, MICHIGAN. 1982-05-12』 / (CURRY CLUB, CC-19820512)
Live Date : Grand Centre, Grand Rapids, Michigan, USA / 1982. May. 12

缶屋のシーバ様に創って戴いた自作プライヴェート・ブートレッグ。
音質はちょっとだけこもり気味なものの、演奏は極上。
このページに紹介してある82年アメリカツアー音源中でも
間違いなく5本指に入る演奏です。音質は及ばないけれど、
2つ↓の欄で紹介している翌日13日の演奏
『THE SHAPE OF THINGS TO COME (S.D.R. RECORDS, SDR CD-085/86)』
とほぼ互角と言えばその演奏の凄さは幾分伝わるでしょうか。
実に素晴らしいパフォーマンスが満載の音源です。

本作は「Wildest Dreams」が2曲目に演奏されていて、「One Step Closer」が
ショウの中盤で演奏されています。現存するブート音源で初めてこのセット変更が確認出来るのは
5月13日を収録した『THE SHAPE OF THINGS TO COME / (S.D.R. RECORDS, SDR CD-085/86)』 及び
『DAYLIGHT AGAIN / (LaXious 01-02)』ですが、手持ちのプライヴェート音源では
その前日・5月12日の『GRAND RAPIDS, MICHIGAN. 1982-05-12 / (CURRY CLUB, CC-19820512)』でも
セットの変更(「Wildest Dreams」が2曲目で演奏されている)が確認出来ます。
で、この周辺日付近の移動を見てみると次の様になっているんですね。

9日/オンタリオ(音源確認済み)

10日/オハイオ州(未発掘・未ブート音源)

11日/移動日・オフ

12日/ミシガン州(音源確認済み)

つまり、セットの変更はどうやらカナダ圏を巡った後(=10日か12日)に行われたと推測出来る訳です。

音質78点。
2CDR・自家製盤。
『DAYLIGHT AGAIN』 / (LaXious 01-02)
Live Date : Royal Oak Music Theater, Detroit, MI, USA. / 1982. May. 13
Disc 2 (3)〜(6) : Budokan, Tokyo, JAPAN. / 1983. Dec. 6
Disc 2 (7)〜(13) : Non Album Tracks 1982〜1990

82年アメリカツアー音源の決定版とも言うべきマストアイテムです。
どのマテリアルも強烈な演奏が繰り広げられていて、最後まで
圧倒される事間違い無しの演奏が続きます。
面白いのはセットリストに若干の変更が加えられている点で、
『Wildest Dreams』を序盤に持ってくる事によって、オープニングの
『Time Again』からドライヴ感の続く曲が続き、ステージの迫力を
一層と増している点でしょう。これはかなり興奮しますよね。
また、ここで聴ける『Midnight Sun』後半部でのスティーブのギターソロは
絶品。破壊力満点の素晴らしいプレイが聴けます。
一公演完全収録で、音質もオーディエンスながら非常に良く、
ヒットチャート驀進中の当時のエイジアの様子が如実に伝わってくる
一枚です。

また、Disc 2の(7)〜(13)には、アルバム未収録曲や
12インチのみに収録されたリミックステイク等のレア音源も多く
収録されており、これ一枚あればほぼ全てを聴く事が出来るという
凄い内容です。
特に『Prayin' 4 A Miracle』のリミックス・バージョンは激レアで、
プロモ用にプライヴェート・リリースされたシングルに収録されていたもの。
また『Days Like These』も同様に非常にレアなバージョンが収録されています。

そういう訳で、とにかくコレ一枚持っていれば、82年の良好なライブと
レア音源が一度に手に入るというお得なブートです。
エイジアファンならば必携でしょう。

2CDプレス盤。
『THE SHAPE OF THINGS TO COME』 / (S.D.R. RECORDS, SDR CD-085/86)
Live Date : Royal Oak Music Theater, Detroit, MI, USA. / 1982. May. 13

驚愕の一枚。
上段で紹介している82年音源の名盤中の名盤『DAYLIGHT AGAIN (LaXious 01-02)』と同内容
ですが、本作はその決定版。マスターテープ直落としと思われる超優良音質で収録されており、
全盛期のエイジアをフルボリューム最高品質で愉しめるタイトルです。

いやー、それにしてもこの音質の良さは凄い。(T_T)
というか、82年当時のオーディエンス録音でこのハイクオリティは信じ難いですよ。奇跡としか
言えないほどの超優良音質で収録されています。『DAYLIGHT AGAIN』と聴き比べると明確に分か
りますが音圧と音の厚みが全然違っていて、これを聴いてしまうと『DAYLIGHT AGAIN』で長年感
じていた音質の印象がかなり薄くなってしまうと思います。感涙モノですよこれは。よくこんなの
発掘出来たなぁ・・・。当然ですが演奏内容も極上ですし、絶好調のオリジナル・エイジアの凄ま
じさが超極上音質で生々しく伝わってくる一枚です。

この音質で改めて当時の演奏を聴くと、グルーヴ感、アンサンブルの一体感と自然さ、そしてやはり
迫力が2006年のリユニオン・エイジアとは全然違っている事に気付かされます。冒頭「Time Again」
からもう全くの別物ですし、スティーヴのソロにしてもカールのソロにしても奏でている音のキレと
迫力が全然違っています。勿論それは当然と言えば当然の事かもしれないけれど、しかしこの
演奏はどれも別格というか別の次元の音楽といった感じで、見事としか形容出来ません。

4人でリン・ドラムを駆使してプレイした「Midnight Sun」は、ここでもステージ上に集まり、曲の中盤
から一人一人散ってゆく様子がこの収録音から見事に伝わってきます。この日のうねる様な音の
洪水の中を高らかに、朗々と歌い上げるウエットンの熱演は何度聴いても鳥肌モノですし、この
至福の時がこれほど素晴らしい音質で聴けるなんて夢のよう。またこの日の「One Step Closer」は
ドライヴ感たっぷりで群を抜いて素晴らしく、これは82年公演中でも間違いなく3本指に入る名演だと
思いますし、「Cutting It Fine」の抑揚感と音符の空間処理、そして「Sole Survivor」ではアルバム版
とは比べ物にならないほどの色彩豊かな表現力にただただ唖然とし、全てを聴き終わらないうちに
自然と感涙してしまうこと請け合いです。(T_T)

尚、本作も『DAYLIGHT AGAIN』も使用しているマスターに起因する問題点として「The Smile Has...」の
冒頭がフェイド・インしているという欠点が挙げられますが、前曲「One Step Closer」からそのまま
繋げて収録していた『DAYLIGHT AGAIN』に対し、本作ではその欠点をディスクチェンジという
アナログ手段で補っているのも自然で良いと思います。オーディエンス録音とはいえ、各楽器の
かなり細かな音まで見事に収録されていますし、会場の空気と雰囲気も実に生々しく録れています。
これこそブート音源の醍醐味と言えるのではないでしょうか。ファンなら絶対必携の一枚。
ウルトラ級のマストアイテムです。

音質97点+α。
演奏1000000000000点。
2CDR。

たぶんこれ以上の音質・演奏内容を伴った82年音源は出ないと思いますね。
82年音源最強・・というよりも、恐らくエイジアの全ブートレッグCD史上最強盤。
唯一欠点があるとすれば、プレス盤ではないという点のみでしょう。
『LOST NEW YORK CITY TAPE』 (CAN-CAN-BOTTLE, CCB-Unknown-#1/2)
Live Date : Unknown

缶屋のシーバ様と共同の自作プライヴェート・ブートです。
入手した時のデータでは

『Uptown Theatre, Chicago, IL, USA/1982. May. 14』

・・・というイリノイ州・シカゴでのライブとなっていたのですが、
内容をよく聴くとこのデータはどうやら間違っている様です。
というのも、イリノイ州と銘打たれているのに1曲目と2曲目の曲間MCで
『Wonderfull, New York City !!』と叫んでいるからです。
勿論、ニューヨークはイリノイ州ではありません。

また、「Steve Howe Guitar Solo」〜「Only Time Will Tell」までは、
間違い無く同82年6月22日の、アナログブートでも有名なフィラデルフィア公演が
編集されて使われています。
(つまり、少なくともその部分だけは確実にニューヨーク公演ではありません)

ただ、その他の演奏は間違い無く82年アメリカツアー中のもので、
セットリストやThe Smile Has Left Your Eyesの構成から判断して
4月〜7月中の音源である事は確かです。

そんな訳でして、この音源の正確な日付は分かりませんが、
1982年のアメリカツアー中のニューヨーク公演は

Apl. 22 / Clarkson, Walker Arena, Potsdam, NY.
Apl, 23 / Stanley Theatre, Utica, NY.
Apl, 24 / Suny Auditorium, Fredonia, NY.
May, 2 / Palladium, New York, NY.
May. 3 / Kleinmans, Buffalo, NY.
May. 5 / War Memorial, Rochester, NY.
May. 6 / Mid Hudson Civic Centre, Poughkeepsie, NY.
June. 23 / Performing Arts Centre, Saratoga Springs, NY.

・・・という8公演があります。
このうち、僕は5月2日のPalladium公演を持っていますが、
この日の演奏とは全く違うので、この音源は5月2日以外の7公演のうちのどれか、
という事になると思います。
全米ツアー開始日(4月22日)だったら嬉しいんですけど・・・(^_^;)

う〜ん・・・・。
困った音源です。(^_^;)
でも、演奏内容は凄く良いんですけどね。
(特にこの日の『Cutting It Fine』の演奏は破壊力抜群で凄まじいです)

1CDR・自家製盤。
『EUTHANASIA』 / (S.D.R. RECORDS, SDR CD 316/17)
Live Date
Disc-1〜Disc2-(3) : Uptown Auditorium Theatre, Chicago, IL, USA / 1982. May. 14
+bonus track (Disc2−(4)〜(8)) : Woolsey Hall, Yale-Univ, New Haven, CT, USA. / 1982. Apr. 27

2008年に久し振りに登場した82年の新音源。上段で紹介している
『LOST NEW YORK CITY TAPE (CAN-CAN-BOTTLE, CCB-Unknown-#1/2)』とは別音源で、
本作こそが5月14日の公演で間違い無いと思います(つまり『LOST NEW YORK CITY TAPE』の
謎が更に深まった訳ですが)。

この日も冒頭「Time Again」から絶好調で、この時期独特のラフでラウドな演奏が
飛び出してきます。ハイボルテージで突き進む「Wildest Dreams」と、そこから続く
「Without You」の緩急のメリハリも見事。ちなみにこの「Without You」は中盤の
インスト部分の盛り上がりから終曲までの盛り上げ方と曲想表現が素晴らしく、
ひとつの聴き処となっていると思います。ハウのギターソロは瑞々しい清涼感溢れる
音色で、特にこの日は「Ram」が極上のパフォーマンス。手癖だけで弾いていない何かが
存在しており、プレイヤーとしての非凡な彼を再確認させてくれる演奏だと思います。
「Midnight Sun」はこの日、リンドラム競演の時間がやや短めというか、アッサリして
いる印象(僕だけか?)があって、これはなかなか珍しいんじゃないでしょうか。
ウエットンの声の伸びが強烈なうえ、ここではギターも素晴らしい音色で曲を次々と
彩っており、素晴らしい音の広がりと空間表現を披露している好テイクです。

そしてこの日の「The Smile Has Left Your Eyes」なんだけど、面白いことに
ウエットンが終曲手前で「♪The Smile〜 Has...ムニャムニャ」と中途半端に
終わらせているんですね。しかしこの未完成の様子が何とも魅力的な演奏です。
・・・そしてそして。
この日はなんと言っても「Cutting It Fine」に尽きるでしょう。
この躍動感はどう表現したら良いんですかねぇ。アンサンブル、表現力、ビート感など
どれを取っても珠玉のパフォーマンスだと思います。曲の途中2分08秒でウエットンが
ボーカルのタイミングを戸惑っているのも微笑ましいですが、同2分26秒付近で
「♪..Cutting It Fァァァine〜」と、調子を変えて歌っている点もユニークです。
こういう演奏と突発的なアプローチを聴くと、「あー、やっぱり82年の演奏って
格別な趣があるよなぁ」とつくづく感じますねぇ。(^_^)

尚、裏ジャケ記載のクレジット上ではDisc2−(2)で表記されている「Sole Survivor」は
実際には編集が施されています。まず「Here Comes The Feeling」終演後の13分16秒付近で
編集跡があってから「Heat Of The Moment」が始まり、その後に「Sole Survivor」が収録。
つまりジャケの表記と収録されている曲順が異なっており、
実際のディスクの流れは
「Here Comes The Feeling」→「Heat Of The Moment」→「Sole Survivor」
・・・となっています。
但し、82年のほぼ不動のセットリストから考えてこの日も恐らく「Heat Of The Moment」を
ラストのアンコールで演奏していた筈なのでこれはどう考えてもおかしい。本作を初めて
聴いた時に「何故こんな無意味な編集を?他日の演奏を繋いでいるのか?」と感じたのですが、
でも演奏を聴く限り恐らく初出で「Sole Survivor」も「Heat Of The Moment」も、この日の
演奏で間違い無い様に思います。

で、何故こんな編集が施されているのか分からないのですが、推測するにこの日の
「Sole Survivor」では終演後に"Thank you Chicago"だの"Good bye"だの、延々と
各メンバーのMCが入っているんですね。これに対し、何故か「Heat Of The Moment」の
終演後はアッサリ終わっているので、流れとしてこの2つを差し替えた方が
聴後感と余韻が良いと判断したのかもしれません。
いや、もちろん無意味ですけどね。(-_-;)
ちなみにこの日の「Here Comes The Feeling」も後半3分09秒付近からアンサンブルに
奇妙なズレが生じた演奏となっており、なかなか面白いシーンとなっています。

尚、Disc2−(4)からは同82年4月27日のニューへヴン音源がボーナス扱いで収録。
これについては4月27日の項を参照して下さい。

音質は(=ここで書いたDisc1〜Disc2-(3)までのシカゴ公演が)、80点。
マスターテープに起因すると思われるピッチの狂いが序盤の「Time Again」とか
「Wildest Dreams」でやや感じられるうえ、幾つかの箇所で部分的に一瞬だけ切れる
編集跡もあるのですが、特に気にならない程度だと思います。
2CDR。
『ACTINIA』 / (HIGHLAND, HL057/58#AS1)
Live at :
Disc-1〜Disc2-(5) : Warfield Theater, San Francisco, CA, USA. / 1982. May. 21
※Disc2-(6)〜(8) : Budokan, Tokyo, JAPAN. / 1983. Dec. 6

本編となるDisc-1〜Disc2-(5)に、ここで扱う5月21日公演が収録されています。

冒頭「Time Again」はこの日、ダウンズの奏でるキーボードのベースラインに
やや強めのブーストが掛かっている様で、他日より重厚感を感じる演奏です。
「Wildest Dreams」も熱演ですが、中盤の3分24秒付近でウエットンが
「W〜ildest Dreams〜!」と叫ぶ部分で「Drea〜↓ms↓」と
語尾の音程を下げてゆく珍しい展開があり、それに続いて激しく高まってゆく
曲想の高揚感は素晴らしいです。「Without You」は、ここでもダウンズの
シンセのベースラインがかなりブースト掛かっていて、中間部からの展開が
かなりドラマチックな音像になっています。

スティーヴのソロは冒頭の「Mood For A Day」が見事。これ、他日のプレイ
より良いんじゃないかなぁ。「The Clap」にしても、この日は0:45秒〜50秒付近で
同一フレーズを何度もリピートするというアドリブを入れていて、
かなり気持ち良さそうに弾いています。何か良い事でもあったのかな。(^_^;)
このギターソロの終演後、一瞬のカットが入ってスティーヴのMC→「Midnight Sun」スタート
という流れになっているのですが、この「Midnight Sun」終演後にもまた
一瞬のカットが入って「Only Time Will Tell」がスタート。
・・・何でこんなところで一瞬のカットが入ってるんだろ?
この部分だけ他日の「Midnight Sun」を繋いだ様な印象も受けますが、
演奏を聴く限りここで聴ける「Midnight Sun」はこの日の演奏で間違いないと思います。
でも、だとしたらどうしてこういう形でカットが入ってるんだろ?(@-_-)
マスターテープの残りを気にしながら録音していたのかな?

そんな「Midnight Sun」は前半〜中盤で聴こえるウエットンのボーカルラインの
うねり具合がかなり印象的。曲はまだまだ試作段階とはいえ、こうした
ボーカル・アプローチの差によってリン・ドラム版のMidnight Sunは
随分と印象が違って聴こえるから面白いですね。
「One Step Closer」はカールのドラミングと音の粒が軽快でとても耳に心地良く、
2分51秒付近から入ってくるシンセのメロディラインがこれまたブースト掛かった
大きめの音でユニーク。アンサンブルも実に素晴らしく、
終曲部分で音階を駆け上がってスパッと音が切れる箇所など、
鳥肌が立つほど見事な音の一体感と際立ちを感じます。

この日の「The Smile Has Left Your Eyes」はカールの細やかな
シンバル・アプローチが曲を盛り立てており、そこに静かなシンセ音と
ウエットンの甘い声が重なっている様子が音像から明確に伝わってきて感動的。
「Here Comes The Feeling」はスティーヴのギターが目立っていて、
曲の輪郭がより際立った好演奏。後半のカールのドラムソロも
ソロ中間部のタンバリンの入り方が他日と違っており、カウベルも
他日とは違ったところで使っています。しかし残念ながら10分55秒付近で
いきなりカット→Here Comes The Feelingリプライズという編集跡あり。
この日のカールのソロは迫力満点で良いだけにこれは痛い。(T_T)

「Sole Survivor」はスティーヴのギターがグッドパフォーマンスで、
非常に壮絶で迫力のあるドラマチックな曲想になっています。
全編に渡って弾きまくっているのですが、特に中間〜後半に掛けてが
凄まじくて、5分20秒〜34秒で聴ける様な高音のロングトーン+チョーキングの
表現は強烈。いや、この演奏マジで凄く良いですよ。
この一曲で9分超えという点からも、その熱演振りがお分かりになるかと思います。

オーディエンスですが音質はかなり良好で、当時のオーディエンス録音としては
最上級の部類に入ると思います。82年中の音源でも秀逸な一枚と言えるタイトルですが、
当時僕が西新宿の某ショップで聞いた情報では2000年6月中旬に生産が中止された様です。

音質92点。
2CDプレス盤。
『TIME AND TIME AGAIN』 / (Soundstyle Records Limited, SRL-820521)
Live Date :
Disc1 : Date Unknown, 1982.
Disc2-(1)〜(5) : Tower Theater, Philadelphia, USA. / 1982. May. 1 (※...May be)
Disc2−(6) : Backstage Conversation, 1982.
Disc2−(7) : Heat Of The Moment (EP Version)
Disc2−(8) : Only Time Will Tell (EP Version)


僅か30枚のみリリースされた超希少盤。
ボーナストラックとなるバックステージでの雑談模様は素晴らしいんですが、
しかしライブ本編の内容は2つの別公演を組み合わせたフェイク音源です。
まず本作はウラジャケットの表記で

『Warfield Theater, San Francisco, CA, USA. / 1982. May. 21』

・・と記載されており、上段↑で紹介している『ACTINIA / (HIGHLAND, HL057/58#AS1)』と
同じ日の音源だと謳っているのですが、収録された音源を聴く限りこれは間違いなく他日の
音源です。その根拠として、

(a).
『ACTINIA』は、そこに収録されているのがサンフランシスコ公演であるという
何よりの証に「Time Again」終了後のMCでスティーヴ(だと思う)が
「〜〜San Francisco, Thank You!」と言っているが、本作ではMCの内容が全く違う。
※恐らく「Wonderfull, Montreal (or, ○○Hall)」と言っている様に思う。

(b).
「Wildest Dreams」の開始直前に、本作ではダウンズがキーボードの和音を
ミスして(恐らく、肘か掌が誤って触れてしまったのでしょう)発した直後から演奏が
始まっているのに対し、『ACTINIA』ではそんなミス音は入らず普通に演奏が始まる。

(c).
本作では「Here Comes The Feeling」の中盤でウエットンとスティーヴが大きなミスを
やらかしているが、『ACTINIA』にはその様なミスは無い。

・・・等など、ちょっと聴き比べただけでも明確に分かる違いがあるからです。

しかしこのうち(c)については、5月1日のフィラデルフィア公演を収録した音源と
完全に一致します。念の為に本作のDisc2-(1)〜(5)と5月1日の音源をPCに
取り込んで音をリンクさせ聴き比べてみたところ、思った通り同一音源でした。
なので、本作のDisc2-(1)〜(5)については5月1日で間違いないと思います。
でも(a)と(b)については5月1日の音源とは明らかに違っているんですね。つまり
本作のDisc-1については5月1日でもないし、『ACTINIA』に収録されている5月21日の
公演でもない訳です。

次に(b)ですが、手持ちの82年音源を全て(つまり、このページにある音源全ての
Wildest Dreams)を一枚一枚調べてみましたが、残念ながら他に合致する音源は
ありませんでした。但し、本作では「Wildest Dreams」と「One Step Closer」の
セット位置が変更になっている事が確認出来ますので、少なくとも本公演は
5月10日〜11日以降〜6月21日迄の82年音源である事は間違い無いと思います。
(※ところが、2009年夏に7月4日の音源とされる『MIDNIGHT DREAM』がリリースされ、
そこでは6月22日で変更が確認出来たセットが7月に入ってまた5〜6月に使用されていた
セットに再び変更していたらしい事が確認出来る為、本音源も6月23日〜7月7日までの
可能性も出てきた。んも〜・・・(-_-;)
詳しくは7月4日の欄で紹介している『MIDNIGHT DREAM』の項を参照して下さい。

そのうえ、本作では「The Smile Has Left Your Eyes」が未収録なので、これが
アメリカツアーなのかヨーロッパツアーなのかが簡単に判別出来なくしてある辺りも
意図的・作為的なものが感じられてかなり腹立たしいですね。
(※以上、2009年9月26日、及び2008年11月14日、2012年12月26日に追記補足)

・・・という訳で、収録内容の表記がフェイクなので前振りが長くなってしまいましたが、
ここからは収録されている内容をレビューしてゆきます。
本作の特徴は何といってもこの公演があった当日のバックステージの様子が
収録されている事でしょう。メンバーが歓談している様子が数分間に渡って
収録されており、これが非常に生々しい内容になっています。

冒頭「Time Again」はスローテンポ・・・というよりはちょっとピッチが遅いのかな、これは。
「Without You」もピッチ遅いですが、それを度外視しても4月後半の公演に比べて
表現に更なる深みが出てきているのが分かります。
スティーヴのソロは、この日は大変興味深いことに「The Clap」終演後にインプロを交えた
"The Clap - Take 2"とも言える感じのオマケ演奏を再度繰り広げているんですが、これ
彼のソロアルバムからの曲とか、或いは何かのカバー曲なんだろうか?まぁいずれにしても
他日では聴けない非常に充実したソロタイムとなっているのは確かです。
「Midnight Sun」は5分13秒付近で一瞬(約2秒間ほど)カットあり。
「Only Time Will Tell」は、この日妙にまったりしている印象。曲の冒頭が
かなり静かな様相のまま進んでゆく点も他日の演奏とは一風変わっていると思います。

「One Step Closer」は、マスターテープに起因する欠点として曲の途中で突然ブツ切れて終了。
更にはこれに続いて演奏されていた「The Smile Has Left Your Eyes」も丸ごとカット。
まぁ、マスターがそうなっているのでしょうから仕方の無い事とはいえ、ここまでくるともう
公演日付のデータを更に分かり難くする為の意図的なフェイク・カットとしか思えません。
("The Smile Has Left Your Eyes"の演奏形が、アメリカツアーとヨーロッパツアーでは全く
違う為、これがカットされているというのはかなり意図的な感じがする訳です)。

「Heat Of The Moment」は、曲の途中4分11秒付近で突然カット。
そして即座にバックステージでのメンバー同士の会話が始まります。僕は英語が分からないので
何を言ってるのかはさっぱり分かりませんが、途中から女性の声が入ってきてウエットンが
ちょっとしたインタビューを受けている様なシーンもあり、更には「大阪(オーサカ)」
「東京(トーキョー)」といった単語がウエットンから数回飛び出し、それに対して
「Ahhhhhhhhg....!!!」と大きく共感しているカールの声が印象的です。単なる雑談の様にも
聞こえますが、これはもしかしたら83年来日公演の事を言っている可能性もあるのでは
ないでしょうか?このバックテージでの会話シーンは約6分30秒間に渡って収録されており、
英語が分かる人ならばかなり面白い発見が幾つもあると思うのですが、僕の様に断片的で
簡単な単語しか分からない人には宝の持ち腐れかもしれません。
マジで誰か翻訳して下さい・・・。(T_T)

音質77点。
2CDR。
西新宿の某老舗ショップで限定30枚のみリリースされたタイトル。
『THE SOLITARY FIGHTER』 / (No Label, A9L07QH1S-APAL/APAX)
Live Date : Civic Auditorium, Santa Cruz, California, USA / 1982. May. 25

これもなかなか充実した一枚。
「Time Again」は、曲中盤でスティーヴがギターソロを少しミスしたり、部分的に
ハウリングが聴こえたりと、ウォームアップやサウンドチェック面がそれほど整っていない
様子が少し伺えますが、大変な重厚感を感じる演奏。音に説得力があり、のっけからグイグイと
引き込まれてゆきますが、ここから続いてゆく「Wildest Dreams」も音の塊といった感じで
物凄い迫力。強烈です。「Without You」はこの日ややテンポが遅めで演奏されていて、
情感溢れる曲想が巧く惹き出されていると思います。「Midnight Sun」はこの日、
ドラマチックさを控え目にした、大変落ち着いた演奏。本作の収録音では
リン・ドラムがあまり目立って聴こえてこないせいかもしれないけれど、
こうした控え目なストレートな演奏も雰囲気があって良いと思います。
ビート感・グルーヴ感たっぷりの「One Step Closer」も見事なパフォーマンスで、
82年時の演奏マジックともいうべきこの表現力に圧倒されること必至でしょう。

「The Smile Has Left Your Eyes」は冒頭3秒ほど失われた状態でスタート。
恐らくテープのリバース点だったのでしょう。それはさておき、
この日は「♪So don't come crying, back to me...」の部分(1分18秒〜24秒付近)が
ほんの少し早口で歌われており、また同部分やサビの「Now it's too late,」の箇所で
この日もディレイ(リヴァーヴ?)が浅めに使用されているのが確認出来ます。
一転して「Cutting It Fine」は再び電光石火の如き凄まじい演奏。特にこの日は
曲後半から繋がってゆくダウンズのソロパートが強烈で、終演間際の
ドラマチックな音の置き方・重ね方は他日のソロとは間の置き方を変えて
いるのが興味深いですね。

「Here Comes The Feeling」も素晴らしい一幕を披露していますが、
この日はカールのソロが更に激しく、ソロ後半〜リプライズ部分では
他日のソロではあまり記憶に無いフレーズを幾つも叩いています。
そして何と言ってこの日の「Sole Survivor」は別格。この色彩感、迫力、
切れ味の良さは何でしょうか。全体的にややテンポアップ気味に演奏
されているので疾走感とドライヴ感もあり、抜群の聴き応えがあります。
その勢いを引き継いだままショウは最後の「Heat Of The Moment」へ。
これまた物凄い迫力で、中盤以降のウエットンの図太いベースラインが
跳ね回る様子とスティーヴのギターの絡み、そこにダウンズの
ショルダーキーボードが入ってのアンサンブルは絶妙です。
そのダウンズは終曲部分でピッチベンドを揺らしながらスティーヴや
ウエットンと同程度の音量でアルペジオをゆっくり奏でており、
彼の音がこれだけ前に出た曲の締め方もなかなか珍しいと思います。

音質面ですが、再生ボタンを押して約1〜2分間、大体Disc1-(1)「Time Again」の
前半くらいまで収録音が遠めに感じますが、その後は随分と持ち直して良くなります。
それとDisc1−(3)「Without You」の中盤でマスターテープ劣化の為と思われる
音揺れが少しありますが、これも40秒〜50秒程度で正常に回復します。
という訳で、82年当時の録音としてはまずまず良好と言っても良いと思います。
2CDR。
『AGAIN - santa monica 82'』 / (Platinum & Gold, PG820529, PG-7301-17/26)
Live Date : Civic Centre, Santa Monica, California, USA. / 1982. May. 29

28日、29日と連日行われたサンタモニカ公演の2日目の音源。
この2日間の公演はLAのラジオ局"KLOS 95.1/2"が後援しており、
この両日のみ販売されたサンタモニカ公演限定販売のTシャツもありました。
こんなやつ。↓

それはさておき、この日も82年らしい躍動感が感じられる素晴らしい内容です。
演奏が安定・充実して円熟味を増しているのが分かるステージです。
冒頭「Time Again」はスティーヴのギターが実に鮮烈で、グルーヴ感満点。
終曲手前でウエットンが最後の歌詞「Time Again」の処を
「A〜〜〜〜〜〜〜〜gain」と、溜めを効かせて朗々と歌い上げているのも印象的です。
間髪入れずに始まる「Wildest Dreams」も瑞々しさに溢れたパンチ力溢れる演奏。
この日の演奏は同月5月21日の演奏と同様に、曲中盤(3分22秒付近)でウエットンが
「W〜ildest Dreams〜!」と叫ぶ部分を「Drea〜↓ms↓」と音程を下げて歌っており、
なかなか面白いです。スティーヴのギターソロも相変わらず見事で、この日の「The Clap」は
中間部で情感たっぷりにつま弾いているシーン(5分20秒〜6分15秒付近)があり、
大変聴き応えがあります。

「Midnight Sun」は、曲の前半でいつもは音階を駆け上がってゆくシンセ音が、
この日は↓↑と、一度音が下がった後にグイーッと駆け上がってゆくピッチベンド効果の
珍しい展開があります(1分41秒付近)。これは翌月6月21日のMidnight Sun演奏中でも
同じ様なアプローチが確認出来ますが、この時期ダウンズがこの曲の可能性をテスト
していた痕跡なのでしょう。スティーヴの切れ味鋭いギターワークも冴え渡っていて、
見事な一幕を垣間見る事が出来る一曲です。
「One Step Closer」も瑞々しさに溢れた好演奏で、跳ね廻りながらもうねるリズム、
軽やかで華やかな音色のアンサンブル、流れる様なグルーヴと、82年音源の醍醐味とも
言える初期エイジアの魅力が炸裂していると思います。

「The Smile Has Left Your Eyes」は(今だから一層そう感じるのだと思うけど)
ウエットンの声が若々しく艶やかで、思わず聴き惚れてしまうテイク。
他日の演奏でも稀にある様に、この日もボーカルラインに軽くディレイが
掛けられている箇所が部分的にあり、また歌詞の最後で
「The Smile, Has Left, Your E〜〜〜〜〜〜〜〜yes...」と、
引き伸ばして締め括っているのも特徴的です。
そしてすかさず始まってゆく「Cutting It Fine」は、強烈なビートとスピード感が
炸裂した凄まじいまでのグッド・グッド・パフォーマンス。前半のそうしたビート感と
後半のボレロ部分の対比が素晴らしいです。「Here Comes The Feeling」も
色彩感溢れる演奏なのですが、ここでは何と言っても後半のカールのドラムソロが凄まじく、
彼独特のストロークの異常な速さと手数・音数の多さが他日のソロより明らかに際立っています。
まさに72年〜73年頃のEL&P時代を彷彿させてくれる強烈なソロです。
「Sole Survivor」もビート感たっぷりの見事な演奏。ただ、この日は中盤以降に
いつもならもう少し長めにフィーチュアされているスティーヴのギター・タイムが
やや短めで、「えー、もう終わっちゃうの?もう少し聴かせてよ」という余韻を残したまま、
5月の演奏としてはやや短めの演奏時間で終曲しています。
その反面、締め括りの「Heat Of The Moment」は大迫力で、これほどエネルギッシュな
プレイは他日の演奏でもなかなか聴けないんじゃないでしょうか。音のパンチ力と
曲想のアタック感は目を見張るものがあり、終曲部分でも溜めを効かせながら
最後の一音を振り絞って出していて、大興奮のままショウが終わってゆきます。

ところで、この時期(1982年頃〜83年アメリカツアーまで)の、
ダウンズのキーボード・セッティングですが、
比較的鮮明なブートの画像や資料を見比べてみると、
大体次の通りの様です。

(1)Prophet-5(2)Mini Moog(3)Fairlight CMI U X(4)Poly Moog(5)Novatron
(6)Prophet-10(7)Solina Strings(8)Honer Clavinet D-6(9)Fender Rose Stage 73
(10)Yamaha CP-70

この他にあと2・3台ある様に思えるのですが、ちょっと判別出来ません。
(2)のMini Moogは、2台を繋いだツイン・タイプに改造してある特別仕様機です。
(9)の『Fender Rose Stage 73』と、(10)の『Yamaha CP-70』については、
イエス時代から愛用しているお気に入りの様です。
また、(5)のNovatronに関しては、シンフォニー系の音色のみインプットしてある様で、
82年ツアーだと、あのオープニング・ファンファーレや『Wildest Dreams』のアタック音などで
使用していました。

・・・という訳で、こうしたシンセ系からの見方でこの時期の音源を聴いてみるのも
なかなか面白いと思います。

尚、本作の音質についてですが、Disc1冒頭の2曲は演奏音がやや遠めで収録されていますが、
録音位置を変えたのか3曲目の「Without You」の2分09秒付近から急に音像が近くなり、
演奏音もクリアで聴き易くなります。そのままその音質でずっと続くのですが、
終盤の「Here Comes The Feeling」で、ドラムソロに突入した後の
5分38秒付近〜6分14秒付近までの約40秒間だけ、再び急に音が遠くなります。

それと、これはマスターテープのリバース点だと思いますが、
Disc1−(6)と(7)の曲間がカット編集されています。また、Disc2−(4)と(5)の曲間も
カットした痕跡がありますが、これはアンコールまでの間をカットしてあるだけでしょう。
どちらも曲間の部分的カットなので、聴いていても特に違和感は感じないと思います。
2CDR。
『AMERICAN TOUR 1982』 / (CURRY CLUB, CC-19820615)
Live Date : Pine Knob, Clarkson, MI, USA / 1982. June. 15

缶屋のシーバ様と共同の自作プライヴェート・ブート。
音源のコピーは出来ませんので御了承下さい。

この日の「Wildest Dreams」は前半でスティーヴがギターのトーンを長伸ばししている
箇所があり、中盤のソロ部分もやや溜めを効かせて弾いているのが印象的。
またこの日も曲後半、ウエットンは4分04秒付近で「♪Wildest, Dre〜〜↓ams↓」と
音程を下げつつ歌っています。またこの曲の終曲後、ウエットンかスティーヴが
「Thank you very much, CLARKSON」とMCを入れるのだけど、ここでスティーヴが
簡単なアドリヴ・メロディーをつま弾いているのも面白いです。

スティーヴのソロもかなりの熱演ですが、この日は珍しくソロ終演後、
スティーヴ(だと思う。ギターのフレットをスライドさせる音も聴こえるので)が
ややはしゃぎ気味に1分以上も何かを喋り続けています。次は「Midnight Sun」なので
ギターを置いてすぐステージ中央に登っていかなくてはならない筈ですが、
そういう状態で暫くステージ前方に留まっている様子がちょっと珍しいですね。
リンドラムかキーボードのセッティングに何かテクニカルな問題が
発生していた為の時間延ばしなのでしょうか?
しかしその「Midnight Sun」は珠玉の演奏。曲中盤でウエットンがフレーズと音階を
変えて歌っている箇所(5分21秒〜35秒付近)があり、これもまたこの日独特の雰囲気が
あります。「Only Time Will Tell」はギターの伸びが通常より1フレーズ程度長い部分が
3・4箇所あり、その音色がまた非常に艶やか。終曲手前でウエットンがアドリヴで
声に捻りを加えている様子も独特です。

「One Step Closer」はややスローテンポな演奏。他日の5月公演ではもう少し速い
テンポで演奏される事が圧倒的に多いので、これはこれでなかなか珍しいと思います。
「The Smile Has Left Your Eyes」はこの日非常に安定感があり、終曲部分でウエットンが
たまにやるメロディのフラつきもこの日は無く、最後まで芯の通った曲想で披露しています。
「Cutting It Fine」は冒頭からドライヴ感たっぷりの好演。後半のボレロ部分は
低音にいつも以上のブーストが掛けられている様で、かなり分厚い音で
ボレロ→ソロ→ボレロ・リプライズという一連のサウンドドラマが展開しています。
また、このボレロ→ソロにかけてのブリッジと、リプライズでの終曲部分で
アドリヴのキーボードフレーズが聴けるのも特徴的です。

「Here Comes The Feeling」は、歌詞の1番と2番の後半部分で「♪Next to me〜」と
歌われる箇所がありますが、この日は「to me」の部分のウエットンのボーカルに
かなり過剰なエコーが掛けられていて、ちょっと奇妙な雰囲気になっています。
また曲後半でも「♪Now I can see you」の「you」の部分に今度は過剰なディレイが
掛けられて「♪Now I can see you (you, you, you, you...)」となっており、
以降の歌詞が部分的にかき消されたまま曲が進んでゆきます。
「Sole Survivor」は凄まじいサウンドドラマ。この日の特徴は何と言っても
スティーヴのギターアプローチでしょう。曲後半、ギターが延々と鳴り響くシーンが
ありますが、この日は他日の演奏では聴いた事が無いアドリヴフレーズが
次々と飛び出してきて、非常にスリリングな展開になっています。

音質は演奏音がやや遠め(1階の後方席付近で聴いている様な感じ)ですが、
細かい音も聴こえますし、まぁ当時のオーディエンス録音はこんなもんでしょう。(^_^;)
尚、ジャケのクレジットでは「Heat Of The Moment」がクレジットされていますが、
残念ながらこの音源は「Sole Survivor」終演後、フェイドアウトして終わっています。
つまり、アンコールで演奏した筈の「Heat Of The Moment」は未収録。
演奏が良いだけに残念・・・。(T_T)

音質75点。
2CDR。
『MIDNIGHT SUN』 / (ACQUA LIGHT, AL003/4)
Live Date
Disc1〜Disc2−(3) : Poplar Creek Music Theatre, Hoffman Estates, IL, USA / 1982. June. 17
Disc2−(4) : Wetton−Downes.
Disc2−(5) : Interview 1982, in "RADIO−1"

アメリカツアー中期の魅力あるステージが満載の好音源。
冒頭「Time Again」は、ヴォーカルにやや溜めを効かせたテイク。
終曲手前の一番最後の歌詞「Ti〜me Again!」にエコーが掛かったまま終曲してゆくのも
一風変わっていて珍しいと思います。「Without You」は、丁寧に演奏していながらも
ダイナミックさがきちんと兼ね備わっているという聴き応えのあるもので、
特に中間インスト部以降からの色彩豊かな表現力はこの日も素晴らしいと思います。

「Midnight Sun」の演奏は、かなり円熟味を帯びてきたうえに音に渋い深みも加わっており、
ここにきてひとつの完成形を創り出している演奏だと思います。
特にこの日はスティーヴのギターの色彩感溢れる音の伸びと艶が大変素晴らしく、
その艶やかなギター音を曲に絶妙に絡めてゆく見事な様子を聴く事が出来ます。
また「Only Time Will Tell」は曲冒頭で主旋律となるダウンズのシンセ音に
ディレイが掛かっており、一風変わったスタートで始まっているのもユニーク。
これと同じく「The Smile Has Left Your Eyes」でもウエットンのボーカルに
部分的なディレイが数箇所掛かっていているほか(9分25秒付近・10分09秒ほか)、
続く「Cutting It Fine」でも冒頭からキーボード・シンセ類に妙なブーストが掛かっていて
他日とは一風変わった音を発しています。マスターテープの劣化のせいか、
この「Cutting It Fine」は音割れが酷いですが、演奏そのものは
かなり良いプレイをしているので、部分的な音質劣化にめげず聴きたいところです。(^_^;)

そしてこの日最大の聴きどころとも言えるのが「Here Comes The Feeling」。
ウエットンとハウは互いに溜めを効かせながら朗々と高らかに声とギターで歌い上げ、
カールはドラマティックに低音を響かせ、ダウンズは壮大に音の洪水を注ぎ続けてゆくという、
かなり素晴らしい熱演を披露しています。これはまさに絶品テイクのひとつでしょう。
同じく、この日の「Heat Of The Moment」も音のメリハリが大変効いた絶妙のテイク。
タイミングをわざとずらして溜めを効かせて歌うウエットンのボーカルも見事ですが、
中間〜後半のパートで聴けるウエットンの跳ね回るベースラインとスティーヴの軽快かつ
艶やかなギターワークの絡みがもう絶品です。(^_^)

オーディエンス録音ですが音質は大変良好。
残念なことに「One Step Closer」の途中でフェイドアウトがあるために不完全収録ですが、
その他の曲はきちんと最後まで収録されています。あと、ディスクの欠点としてDisc−1は
チャプターマークがきちんと付けられておらず、トラックナンバー6(Only Time Will Tell)以降は
Disc−1の最後まで"1曲"として扱われています。・・・う〜む。(-_-;)

尚、ボーナストラックとして収録されているDisc2−(5)は、1982年にイギリスBBCラジオで
放送されたインタビューが、約23分間に渡って延々と収録されています。
こちらは放送ディスクから直落としした音源ではなく、放送をリアルタイムで録音したテープが
マスターになっているのですが、録音状態は良好です。
このインタビューで面白いのは、このインタビューを「メンバーが4人その場に居る」状態で
受けている事です。翌83年になると、「その場にスティーヴが居ない3人」でインタビューを
受ける事が多くなり、こうして4人でインタビューを受けている様子が収録された音源は
実は意外と少ないんですよね。

・・・とはいえ、僕は英語が分からないので何を会話してるのかさっぱり分かりませんが・・・。
(-_-;)

2CDプレス盤。
『HOFFMAN ESTATES, IL, JUNE 17th 82』 / (CAN-CAN-BOTTLE, CCB-19820617)
Live Date : Poplar Creek Music Theatre, Hoffman Estates, IL, USA / 1982. June. 17

自作のプライヴェート・ブートです。
上段で紹介している『MIDNIGHT SUN / (ACQUA LIGHT, AL003/4)』と同内容ですが、
『MIDNIGHT SUN』がリリースされる前にシーバさんと創り、
当時は大変聴き込んだ一枚でした。
個人的に懐かしいアイテムです。(^_^)

2CDR。
『COLUMBIA JUNE 21, 1982』 / (BLUE 172)
Live Date : Merriweather Post Pavillion, Columbia, Maryland, USA / 1982. June. 21

2008年にリリースされた82年の初登場音源。
個人的には下段で紹介しているROY肥後さんから戴いた音源『ATTITUDE IN PAVILLION (ROYCD-19820621)』を
所有していたので音は知っていましたが、本作も同一のマスター音源を使用しています。
但し音質は本作の方が若干良く、MCのカットも無く、音の解像度も少し鮮明なので、
ジェネレーションが1つか2つほど若い音源を使用している様です。

スタートボタンを押して僅か00分30秒付近で一瞬音飛びがありますが、まだオープニングで
本格的に演奏が始まる前なので特に問題無いでしょう。(-_-;)
「Wildest Dreams」は、ドラムソロの後半でダウンズが鍵盤にミスタッチしたのか、少々間抜けな単音が
確認出来るものの、グルーヴ感溢れる好演奏です。「Without You」では、ウエットンが歌詞の語尾を
若干引き伸ばして歌っているのがユニーク。中間部も5月の演奏ほどはグルーヴを弾かず、重厚感溢れるものに
変化している点も特筆されると思います。
スティーヴのギターソロはこの日大変珍しいことに「Meadow Rag」を演奏しているうえ、「The Clap」も
中間部に「Surface Tension」を組み込んでいるという豪華なソロセット。この部分だけでもかなり
聴き応えのある内容です。(^_^)

「Midnight Sun」は、1分59秒から入るメロディ音がいつもと違う点に注目。通常ならここで
音階を上がるメロディが入りますが、この日は音階が下がるアルペジオに変更されているのが確認出来ます。
またこの日の演奏は3分27秒付近から4分07付近まで暫く入ってくる不思議な2連音符の和音も特徴的で、
誰がこの音を弾いているのか分からないけれど(でもたぶん、カールかスティーヴの様な気がします。
鍵盤にあまり慣れていない、たどたどしい弾き方・音の出し方に聴こえるので)、これがまた
曲に不思議な彩りを与えています。
またそのキーボードの変わった音使いとして、続く「One Step Closer」の冒頭00分37秒付近から
突然入ってくる1オクターヴ高いメロディラインも大変特徴的。演奏そのものも他日より
落ち着いたものになっていて、中間部2分42秒〜47秒で音の粒を揃えながら落ち着いて着実に音を
キメているのも実にカッコいいです。しかしながら、3分53秒付近で一瞬音飛びがあります。(+_+)
4月〜5月の演奏と比べて随分と曲想が固まってきた「The Smile Has Left Your Eyes」もこの日
ムード溢れる表現で良いのですが、残念ながらここでも1分13秒付近で一瞬音飛びがあります。

「Cutting It Fine」も以前より荒々しさが薄らぎ、テンポも少し落ち着いた曲想に変化していますが、
この曲に関して言えば、その後83年12月の初来日公演まで続くこの独特の滑らかな曲想が
一番早く表れているのが、この82年6月の演奏の醍醐味と言えるんじゃないでしょうか。
「Here Comes The Feeling」も落ち着いたテンポの演奏ですが、カールのドラムソロが
相変わらずパワフル。(^_^;)この日は背後のドラを叩いてからリプライズで曲に戻るまでが
他日より若干長く、愉しそうに叩いている様子が目に浮かんでくる様なソロになっています。
オーディエンスの反応も凄まじく、それに応えるかの様に終曲後暫く経って「Sole Survivor」を
開始する前、ちょっとしたリズムを軽く叩いている様子も確認出来ます。
またその「Sole Survivor」はこの日かなり長い演奏で、なんと8分超えのパフォーマンス。
いつもながらの中間部〜終曲までの曲想の引き延ばしが主な理由だけど、この日はスティーヴの
素晴らしいギターワークと、6分36秒〜37秒付近で聴けるカールのちょっとしたオカズの叩き回しが
非常にカッコいいポイントになっていると思います。
唯一「Heat Of The Moment」はこの日、ややモタついた冗長な演奏に僕は感じますが、
まぁこの曲は皆で歌って一体感を増して大団円を迎える為のオマケみたいな感もありますから、
これはこれで良いのかもしれません。(^_^;)

各楽器の音もしっかり聴こえますし、当時のオーディエンス収録としては音質も及第点だと思います。
上記してきた通り、幾つかの曲ではこの日ならではの珍しい展開も聴けるので愉しい音源です。
2CDR。
『COLD』 / (Dragon Music Limited, DML-820621)
Live Date : Merriweather Post Pavillion, Columbia, Maryland, USA / 1982. June. 21

上段で紹介している『COLUMBIA JUNE 21, 1982 / (BLUE 172)』と同音源。
使用しているマスター音源も同一ですが、ディスクごとの収録分数も全く同じなうえ
音質も全く差が無く、ピッチまで同一である事から、もしかするとどちらかがどちらかを
コピーした物なのかもしれません。いずれにしても収録内容は完全に同じなので、
僕の様に収録内容は同じだと分かっていてもマスターが違うかもしれないと思い一応買う
おバカなコレクターでなければ好みのジャケの方か値段で選ぶのが良いかと思います。
※ちなみに、僕が西新宿でそれぞれ購入した2008年11月と12月の値段は
『COLUMBIA JUNE 21, 1982』が3500円ぐらい、『COLD』は4000円でした。

本作が売られていた某店舗のメーカー・アナウンスによると
「この日はウエットンが絶不調!まるで風邪(COLD)をひいたような声です」と
なっていた(だからこのタイトルになっいてるらしい)のですが、そうかなぁ。(+_+)
確かに所々で「そう言われてみればこの日は少しイガラっぽい声かな?」と感じる箇所は
ありますが(例を挙げるとTime Againの後半など)、決して「絶不調」では無いと思いますし、
例え声の調子がイマイチな箇所があったとしても、バンド全体のアーティスト気運が
上昇気流にあったこの時期の見事な演奏をそこまで悪いと僕は感じません。

2CDR。
『ATTITUDE IN PAVILLION』 / (ROYCD-19820621)
Live Date : Merriweather Post Pavillion, Columbia, Maryland, USA / 1982. June. 21

ROY 肥後さんから送って戴いたプライヴェート・ブート。

上段で紹介している『COLUMBIA JUNE 21, 1982 / (BLUE 172)』及び
『COLD (Dragon Music Limited, DML-820621)』と同内容ですが、
その2タイトルでは演奏中に一瞬だけ音飛びのある「One Step Closer」と
「The Smile Has Left Your Eyes」が音飛び無しの完全演奏で収録されているうえ、
スタートボタンを押して僅か00分30秒付近で一瞬ある音飛びも本音源には全くありません。
しかしながら「Wildest Dreams」と「Without You」の曲間MC、及び
「Only Time Will Tell」と「One Step Closer」の曲間MCがカットされています。

まぁ、どちらの音源も欠落している部分をカバーし合っているので、
この6月21日の公演はこれ2つで完全音源ですな。(^_^;)
ちなみにこの音源もマスターは上記2タイトルと同一のものが使用されています。

2CDR。
『ASIA IN N.Y 1982』 / (asteroid, AR-12,AR-13)
Live Date : Spectrum Sports Arena,Philadelphia,Pennsylvania,USA. / 1982. June. 22

アナログブート『ONLY TIME WILL TELL』から落とされたブートCD。
同音源でこの下に紹介している『TIME AGAIN』というブートもありますが、
この『ASIA IN N.Y 1982』の方が音が良いです。
昔からよく知られている音源だけに聴きどころも多く、非常に充実した
演奏が収録されていて愉しめる一枚です。
中でもこの日特に素晴らしいのが「The Smile Has Left Your Eyes」。
この曲の初期形態最高峰の演奏を披露しています。曲の終盤、ウエットンが
ハミングで「Hmm〜mmmmn〜♪」と締める辺りはまさに極上・絶品です。

また本公演の注目点としては、セットリストがアメリカツアー最初期のセットに
戻されている事で、これによって再び緩急のバランスが取れたステージ構成になっています。
曲間MCもノーカットの一公演完全収録で、オーディエンスながら
音質も非常に良好な一枚です。

また、このブートにボーナス・トラックで収録されている
『The Smile Has Left Your Eyes』は、MTVでウェットンが司会を務めた時の
アコースティック弾き語りバージョンです。
この時の様子は、ブートビデオ『Asia Uk & History '80-85』及び『ASIA - SPECIAL
で観る事が出来ます。詳しくはそちらのレビューをどうぞ。
『TIME AGAIN』 / (SONIC ZOOM, SZ 2009/2010)
Live Date : Spectrum Sports Arena,Philadelphia,Pennsylvania,USA. / 1982. June. 22

これもアナログブート『ONLY TIME WILL TELL』から落とされたブートCD。
上で紹介したブート『ASIA IN N.Y 1982』と同内容ですが、この『TIME AGAIN』は
MCのカットが目立ち、ツギハギ感があって全体的に聴きづらいです。

ただ、ジャケがビニール・コーティングされた非常に美しいペーパージャケットに
なっていて、赤の色調が映えて結構カッコイイです。
アイテムとして持っている分には良いかもしれませんね。
『DEPARTURE』 / (Ayanami-074)
Live Date : Spectrum Sports Arena,Philadelphia,Pennsylvania,USA. / 1982. June. 22

ジャケウラに記載されているデータでは5月2日公演になっていますが、
これは完全に誤記・・・というかフェイク。
正しくは6月22日公演が収録されています。

使用しているマスターも上段で紹介している『ASIA IN N.Y 1982 (asteroid, AR-12,AR-13)』及び
『TIME AGAIN (SONIC ZOOM, SZ 2009/2010)』と同一のものですが、本作はピッチが少し早く、
高音に抜けが良いものの低音に若干パンチが足りない音質で収録されています。
しかしながら、『ASIA IN N.Y 1982』と同様にノーカット収録なのが嬉しいところ。
でもまぁ音質でこの日の公演を選ぶなら、やはり『ASIA IN N.Y 1982』か一番安定していて
良いと思います。

2CDR。
『MIDNIGHT DREAM』 / (Blue Cafe-221)
Live at : Starlight Theatre, Kansas City, Missouri, USA. / 1982. July. 04 (May be...)

2009年夏に、久し振りに発掘・リリースされた82年音源。
しかもアメリカツアー終盤直前の7月音源が出るのは初めてなので
イの一番に即買いしたのですが、本作のセットを見て「あれ?」と思ったのも事実。
何故か再び5月12日〜6月21日までのセットに戻ってるんですね。

エイジアの82年アメリカツアーは、「One Step Closer」を2曲目に持ってくる
ツアー最初期4月22日〜5月9日頃のセット(仮にセットAとする)と、
「Wildest Dreams」を2曲目にした5月12日〜6月21日のセット(仮にセットBとする)
の2タイプがありますよね。
しかしこのセットBの最終日の翌日、つまり6月22日のフィラデルフィア公演を聴くと、
約1ヶ月間続けたセットBをやめて再びセットAに戻しているのが確認出来ます。
そしてこの22日公演は2009年夏に本作が出るまで82年アメリカツアー最後半の音源
でもあったので、僕はその後もツアー最終日の7月7日までセットをAに戻したまま
アメリカツアーを終えているのだと思っていました。
でも本作は「7月公演なのにセットB」なわけです。

という事は、6月22日でセットAに戻した後、本作7月4日までの
約2週間の間に再びセットをBに戻した事になりますよね。
僕はこのバンドは短期間にコロコロとセットを変えたりしない様に思えるので、
この唐突なセット変更を見てちょっと疑問を感じたワケです。
それに、通常なら「Time Again」と「Wildest Dreams」の間、
そして「Wildest Dreams」と「Without You」の間でする筈のMCが両方ともカット
(大抵はこのどちらかで"Thank you, NEW YORK"など、土地名を挙げて謝辞と挨拶をする)
されているのも作為と不信を感じるところです。

本当にこれ、7月公演の音源なのかなぁ?(+_+)
まぁ、本作は「The Smile Has Left Your Eyes」や「Here Comes The Feeling」、
または「Heat Of The Moment」冒頭でちょっと特徴のある演奏をしているので、
セットBの期間中の他日音源と聴いて調べればこの日付クレジットがフェイクなのか、
或いは他日のセットB音源のコピーかどうかも分かると思うのだけど、
残念ながら今これを書いている時点では時間とヒマが僕に無いので、
クレジットを信用して暫定的に7月4日の音源としてここに本作を配置しました。

※・・・でも、翌83年は僅か1ヶ月ちょっとの間に3回ほどセット変えてるから、
82年もこの流れで合ってるのかなぁ?うーん・・・(+_+)

・・・という訳で、前置きが長くなりましたが本作の音源内容は以下の通り。

冒頭「Time Again」から全開フルスロットルで飛ばしていて、このグルーヴとスピード感は
やはり82年公演ならではだと思います。「Wildest Dreams」もこの調子でスピード感溢れる
演奏で飛ばしているのですが、この日は終曲して間髪入れずに次の「Without You」を
情感たっぷりに演奏していて、このファスト→思いきりスローというスピード感の
コントラストと流れがまた絶品です。「One Step Closer」は、この日の跳ね回るリズムと
グルーヴに素晴らしいものがあり、かなり良い演奏をしています。

「The Smile Has Left Your Eyes」はこの日も中間部〜後半の数箇所で一時的に
ボーカルラインにディレイ(リヴァーブ?)が掛けられています。82年公演中、この曲は
こうしてディレイ効果を時々試しているものが幾つか確認出来ますが、どれも微妙に
その箇所と長さ、そして深さが違っていて、大変興味深いですね。
「Here Comes The Feeling」も安定したアンサンブルで纏まりの良い音を出していますが、
曲が深く彩りを増してゆく2分40秒付近からの展開が絶品。ウエットンの伸びのある
ハミングっぽい声がアドリヴで何度も入っており、ダウンズも他日とは少し違う
アプローチ(これはハモンドの音?金切音の様な歪んだ音色を何度も繰り返して出している
のは珍しいと思う)で終曲部分を締めており、なかなか興味深い演奏内容になっています。
「Sole Survivor」は4分55秒以降の展開が強烈。ウエットンがアドリブで声を引き伸ばして
いる部分にスティーヴの凄まじいギターが次々と被り、かなり緊張感のある演奏です。

定番の終曲「Heat Of The Moment」もこの日は迫力満点。曲のスタート前にウエットンが
「Heat Of The..Heat Of The....What? What Say???」とオーディエンスを煽ると、
オーディエンスもそれに応えて「Mo〜me〜〜nt!!!」とコールしてから始まる独特のスタートを
切っていて、これがなかなか面白い。(^^;)またエンジニアがボリュームをしくじったのか
冒頭のギター音がかなり大袈裟に鳴ってスタートしますが、熱演のまま最後まで走り切って
素晴らしいパフォーマンスを堪能させてくれます。

当然オーディエンス録音ですが、音像もかなり近いですし(特にスティーヴのギターソロは
目の前で弾いているかの様です)、録音状態も当時としてはかなり良質の部類に入ると思います。
また、冒頭部分で述べた「Wildest Dreams」と「Without You」の部分以外に、
「Only Time Will Tell」終演後と「One Step Closer」開始前の曲間でも編集の痕跡が
あるのですが、これはマスターテープのリバース点だったのでしょう。曲が切れている
訳ではありませんし、この部分は特に問題ないと思います。

・・・という訳で、やはりセットBに戻している点のみが不思議。
何か判明したら、また修正文を追記で載せたいと思っています。

音質88点。
1CDR。

『KANSAS CITY JULY 4, 1982』 / (Holly North, HN-049-1CD)
Live at : Starlight Theatre, Kansas City, Missouri, USA. / 1982. July. 04 (May be...)

上段↑で紹介している『MIDNIGHT DREAM (Blue Cafe-221)』と同一音源。
使用しているマスター音源も全く同じ(恐らく、ネット上にアップされた同じ
音源を使用している)です。

なので音質も全くと言って良いほど変わらないのだけど、2つの音源をPC上で
リンクさせて聴き比べてみると、僅かながら本作の方が音圧が弱く感じます。
つまり、少しだけ音が軽く聞こえる。そして僅かに音の角が取れて丸み掛かった
音質で収録されています(=言い換えると、『MIDNIGHT DREAM』の方ははもう少し
尖ったシャープな音質で収録されている)。
たぶんそれぞれの製作者がディスクに収録する際に施したであろうイコライジングの差
なのでしょうけど、個人的には本作よりも『MIDNIGHT DREAM』に収録されている音の方が
サウンドに厚みとシャープさが感じられるぶん好みですね。

但し、ラスト「Heat Of The Moment」終演後のオーディエンスの歓声は本作の方が
7秒ほど長く収録されているんですね。『MIDNIGHT DREAM』は最終音が鳴り終わると
僅か2秒ほどでフェイド・アウトして直ぐにディスク終了しています。つまり、
読後感ならぬ"聴後感(※或いは、聴き終えた余韻)"は本作の方が長く残るぶん良いので、
この点は特筆されると思います。

・・と、一応感じられる音質差は書いてみましたが、でもまぁ正直殆ど変わりません。
両タイトルともピッチがやや速めな点は無修正ですし。(^^;)

音質87点+α。(←「Heat Of The Moment」終演後が長めに収録されているので+αしました)
1CDR。
1982年 EUROPE TOUR (82年10月4日〜10月28日)
『10-06-1982 VREDENBURG, UTRECHT, HOLLAND. 1st EUROPEAN TOUR』 / (CURRY CLUB, CC-19821006)
Live Date : / Vredenburg, Utrecht, HOLLAND. / 1982. Oct. 6

自作のプライヴェート・ブートです。
ヨーロッパ・ツアー開始後2日目の音源で、全体的にスロー・テンポで
演奏しているのが印象的です。
音質も比較的クリアで、なかなか重厚感があって良く、
一公演完全収録です。

「The Smile Has Left Your Eyes」は2部構成ですが、まだ慣れてないのか
どこか1部と2部の繋ぎがぎこちなく聞こえるのは気のせいでしょうか?(^_^;)
また、この日は「Time Again」と「One Step Closer」がとても軽快で
楽しい演奏をしているのも特徴です。

音質79点。
2CDR。
『PAS DE DEUX』 / (EXPOSURE, EX-001-2AS)
Live Date : Pavillion Baltard, Paris, FRANCE. / 1982. Oct. 7

これも面白い音源です。
ヨーロッパツアー開始3日目の音源で、スタート直後のヨーロッパツアーの様子が
非常に生々しく収録されています。
特徴としては、セットリストがアメリカツアー中期のセットに戻されている事で、
ヨーロッパツアーを開始するにあたってアメリカツアー時のセットを考え直した時、
どうやらこのセットが一番シックリときたのでしょうね。

演奏はどれも素晴らしく、特に後半の『Cutting It Fine』からの流れは圧巻だと
思います。また、『The Smile Has Left Your Eyes』も当然2部構成ですが、
この曲が2部構成で演奏されたのは、このヨーロッパツアー以外では8年後に
再結成した1990年の1年弱しか無いので、なかなか興味深い演奏です。
ただ、1990年当時の日本のファンにとっては、このアレンジが8年前に
既に完成していたという事実にとても驚いたものでした。
特にここではオリジナルのスティーブ・ハウが演奏しているのですから、
ファンにはたまりませんよね。
オーディエンス録音ですが音質は非常に良く、一公演完全収録です。
『DUSSELDORF 1982』 / (No Label, 8422K128362-8401H151074)
Live Date : Philipshalle, Dusseldorf, GERMANY. / 1982. Oct. 9

ジャケ裏の日付では10月3日のステージとなっていますが、
82年のヨーロッパツアー中、デュッセルドルフでプレイしているのは
10月9日のみなので、ジャケ表記は誤記です。

演奏は、ズッシリと腰を下ろした様な重厚感のある演奏が続き、それが故に
『Without You』『Only Time Will Tell』等の曲が、いつも以上の説得力を
持って聴く者を捉えます。82年のヨーロッパツアーは短いので、その辺りを
その他のヨーロッパツアー音源と聴き比べてみても面白いと思います。

2CDRで、音質もそんなに悪くなく良好ですが、残念ながら完全収録では無く、
アンコール曲の『Heat Of The Moment』が、まるごとカットされてしまっています。
当時大ヒットしたこの曲を演奏しなかったとはとても思えないので、これは恐らく
録音したマスターテープの分数が足りず、収録し切れなかったのでしょうね。




1982年バージョンの
Midnight Sunを演奏中。
『BOLOGNA 1982』 / (No Label, 8626G132075-8626G187001)
Live Date : Palazzo dello Sport, Bologna, ITALY. / 1982. Oct. 18

この日も凄いです。
個人的に、82年ヨーロッパツアーで一番素晴らしいステージなのではないかと
思っています。全編に渡ってアップテンポな演奏が繰り広げられており、
強烈な破壊力のある名演奏が続きます。
特に「Time Again」〜「Wildest Dreams」の流れは圧倒的で、この当時の
エイジアの持つ音の力を120%引き出しているのではないでしょうか。
また「One Step Closer」「Only Time Will Tell」の出来も絶品。
新アレンジの「Midnight Sun」「The Smile Has Left Your Eyes」も強烈です。
特に「Midnight Sun」は、このヨーロッパツアーのベストテイクのひとつではないかなぁ。
大変素晴らしいです。またこの「Midnight Sun」についてですが、
1985年に出版された”ロック・キーボード”というシンコー・ミュージックから発売された本の中で、
ジェフリーが『リン・ドラムの使用法について』という質問に対して次の様な事を言っています。

『去年(1982年)、カールがこれを「Midnight Sun」という曲で使った。
そして全員でキーボードを弾いたんだ。(←左の画像参照)
すべてのパターンをリンにプログラムしておいて、
カールはそれに合わせ、フィンガー・ドラミングを見せた。
もちろん、すべてショー・アップのためだったけど』

リン・ドラム(Linn Drum)というのは、ロジャー・リン(Roger Linn)という人が作った
PCM音源のドラムマシーンで、この当時最高級のスペックを誇った機械です。
独特のザラツキ感と音圧がある楽器なのですが、それは現在のハイテク楽器とは違う
12bitだからで、具体的な音はヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの『SPORTS』や、
フィル・コリンズ『III(ノー・ジャケット・リクワイヤード)』等で聴く事が出来ます。
また、同じ頃活躍していたハワード・ジョーンズも、OberheimのDMXを使っていた様です。
DMXもリン・ドラムと同じ様な、サンプリングした音を鳴らすリズムマシンですが、
この時代はこうした楽器がシーンで非常に目立ち始めた時代でもありました。
エイジアも決して例外ではなく、むしろジェフリーはそういった新しいシステムには
非常に敏感な人なので、出て直ぐに取り入れたのでしょう。
82年に演奏した「Midnight Sun」の音を聴くと、特にこのヨーロッパツアーで
目立っている様です。

それと、このブートで注目したいのが「Cutting It Fine」から繋がる
ダウンズのソロパートです。いつも以上に煌くその演奏は、まさに至高の
デジタルエロスの時間を与えてくれます。
やはりエイジアの世界は、こうしたジェフリーの貪欲なまでのシンセサイザーの音構築と、
アナログ的なプログレの手法を駆使し、極限まで高められた楽器演奏との
融合だったとも言えるのではないでしょうか。

一公演完全収録で、音質もオーディエンスとしてはかなり良好です。
82年ヨーロッパツアー屈指の名盤と言えるでしょう。
2枚組CDR。
『MILAN 1982』 / (Blue-012)
Live Date : Teatro Tenda, Milano, ITALY. / 1982. Oct. 19

2009年4月現在、本作が10月19日音源の決定版。
冒頭「Time Again」はヨーロッパツアー開始時から妙に重苦しいスローテンポでの演奏が
続いていましたが、この日は一転してグルーヴ感とスピード感が加わった素晴らしい演奏が
飛び出しています。「Without You」ではカールのドラミングが随所で印象的。中でも
1分20秒〜28秒付近で聴ける叩き方は他日の演奏とは一風変わっていて面白いです。
そしてこの音源で特徴的なのがDisc1−(4)〜(7)で聴けるスティーヴのギターソロでしょう。
「Mood For A Day」「Ram」「The Clap」と通常のソロをフルで披露しているうえに、
この日はその3曲の後に続けて「The Four Seasons」を演奏しています。これはかなり珍しいですし、
2009年時点で現存している82年の音源でこの曲の演奏が確認出来るのはこの日だけじゃないかなぁ。

続く「Midnight Sun」では、序盤でウエットンのボーカルラインが不安定(マイクのトラブル?)
ですが、ここでもリン・ドラムによるデジタルイメージが大胆かつ荘厳です。特にこの日は
4分47秒から絡んでくるスティーヴのギターワークが最後まで絶品で、これはこの公演でも
指折りの聴き処になっていると思います。続く「One Step Closer」はこの日どこか軽やかな演奏。
音の粒も揃っていてどこか可愛らしく、ストレートなスティーヴのギターと、
時折り前面に出てくるジェフのキーボードメロディが交錯する様子は絶品です。また、終曲部分の
ユニゾンで音階を駆け上がるところも一音一音が綺麗に纏まっていて好印象です。(^_^)

ディスクが変わってDisc−2ですが、この日の「The Smile Has Left Your Eyes」は
ウエットンの歌メロに一本ピンと筋が入ったような、真っ直ぐなイメージがあると思います。
「Cutting It Fine」は攻撃的で、図太いアンサンブルが魅力的。そしてそれだけに、
後半の静かなボレロ部分との対比が眩しいテイクになっています。尚、ボレロ後半から
インクルードされているキーボードソロの繋ぎ部分が他日と少し変わっているのも特徴的です。
「Here Comes The Feeling」はややスローテンポというか、タメを効かせてずっしりとした
演奏スタイルが印象に残るテイク。ウエットンの歌い方もそれに合わせ、
溜めを効かせた力強いものになっていて、これはなかなか面白いなぁ。
曲はこの後、定番通りカールのドラムソロに移行してゆきますが、ソロ終盤〜曲にリプライズ
してゆく12分39秒〜46秒の部分がマスターテープの起因で劣化しています。

「Sole Survivor」は、2分48秒から始まってゆく緊迫感のあるミュートカッティングした
スティーヴのギターの入り方が素晴らしいです。終曲付近ではウエットンのベースラインと
そのギターが複雑に絡み合うシーンがあり、これは手に汗握るものがあります。
最後の「Heat Of The Moment」はスタンダードでストレートな演奏なんだけど、
この日は勢いがあって瑞々しく、曲の魅力を最大限に出していると思います。
そしてここでもやはりスティーヴのギターが光ってますねぇ。曲の後半、ダウンズが
ショルダーキーボードで出てくるまでの間、殆どギターソロ状態になってます。(^_^;)

尚、本作は下段で紹介している『MACARONI INCIDENT (EXPOSURE, EX-005-2AS)』及び
『DREAMS AGAIN / (BS 22/23)』と同音源なのですが、本作で使用しているマスター音源は
『MACARONI INCIDENT』に使用されたものと同一のもの。しかし『MACARONI INCIDENT』を
そのまま落としたものではありません。ピッチ補正やテープのヨレ、そして音の明瞭さなど、
様々な面で本作は『MACARONI INCIDENT』を凌駕しています。MCカットもありませんが、唯一
ショウ本編が終わる「Here Comes The Feeling」の終曲後から、アンコールを待つ「Sole Survivor」
までの間がカットされています。でもこれはもう一公演完全収録と言って良いでしょう。
2CDR。
『MACARONI INCIDENT』 / (EXPOSURE, EX-005-2AS)
Live Date : Teatro Tenda, Milano, ITALY. / 1982. Oct. 19

上段で紹介している『MILAN 1982 (Blue-012)』及び、下段で紹介している
『DREAMS AGAIN (BS 22/23)』と同内容ですが、本作で使用しているマスターは
『MILAN 1982』と同一のもの。
但し本作は全体的にマスターテープの音がヨレて目立つ部分が結構あり、
左右のレンジが若干フラつく部分も目立つうえ、ピッチも不正確な箇所が目立ち、
スティーヴのソロ後の曲間MCでは部分的なカットも確認出来ます。
音質は決して悪くないですし、臨場感もあるのですが、いかんせん同一マスター使用の
グレードアップ版『MILAN 1982』がリリースされた現在となっては、
ハードコレクター向けの一枚と言わざるを得ません。(+_+)

尚、本作のウラジャケには"10月15日"と表記されていますがこれは誤記で、
ミラノで演奏したのは19日の1回しか無い為、正しくは10月19日の演奏です。
2CDプレス盤。
『DREAMS AGAIN』 / (BS 22/23)
Live Date : Teatro Tenda, Milano, ITALY. / 1982. Oct. 19

上段で紹介している『MACARONI INCIDENT (EXPOSURE, EX-005-2AS)』及び
『MILAN 1982 (Blue-012)』と同内容のブート。但し、収録音を注意深く
聞き比べると分かりますが、本作は上記2タイトルとは使用されている
マスターテープが違っているのが特徴です。

両音源で確認出来る同一のオーディエンスの声や悲鳴の聴こえ具合から推測すると、
本作と上記2タイトルの録音者はそれぞれどちらもステージ(或いはスピーカー)からの距離は
同程度の位置に居ると思われ、お互いおよそ50メートルほど離れた位置で収録されている様に思います。
但し本作はDisc−1冒頭のオープニング・ファンファーレが約25秒間失われてのフェイドイン・スタート(+_+)。
しかしながら本作の音質には透明感があり、時に『MACARONI INCIDENT』及び『MILAN 1982』よりも
音質が良いと思える箇所があったりするので、これはこれで決して捨てたものではありません。
但し、全体的に本作は演奏音が上記2タイトルよりもほんの少しだけ(ほんとに少しだけ)遠めです。

2CDプレス盤。
『DRAGON FLEW OVER GERMANY』 / (Virtuoso 135/136)
Live at : Carl-Diem-Halle, Wurzburg, Germany / 1982. Oct. 23

2012年9月21日に久し振りにリリースされた82年の発掘音源。
定番のオープニング「Time Again」はのっけから82年らしい
ドライヴ感があり、中音域〜低音域のメリハリの効いたサウンドアタックが気持ち良いです。
ウエットンも時折気合の入った声を上げており、終曲部の最後の歌詞「A〜〜gain!!」を
力強く発した後、ザクザクした全体音(←これがまた82年のエイジアサウンドっぽい)が
ゆっくりと収束してゆく様子は非常にスリリングです。

間髪入れずに始まる「Wildest Dreams」もワイルドな好演奏。一回目の「They Fight!!」
の後にミスタッチで変な音を出しているダウンズも相変わらずで、これは他の公演でも
何度か同様のミス音を聴けますが、よっぽど肘が触り易いところに鍵盤があるのかなと思います。
しかし演奏自体は瑞々しい魅力を放っており、中間部を越えた辺りからドライヴ感を
増してゆく様子も素晴らしいものがあると思います。終盤のドラムソロではこの日も
カウベルを組み込んだ打音で構成しており、ハッスル(←古い?)しているカールが目に浮かぶようです。
「Without You」は2分47秒付近から高まってゆく中間部が聴き処。ゆったりした曲想だけに
この日のアンサンブルの切れ味がどれほど深いかがよく分かる部分だと思います。

ハウのソロはこの日、弱音の高速ハンマリングから入ってくる「Valley Of Rocks」という
非常に珍しいもの。僕はイエスは詳しくないけど、少なくともエイジアのステージで
こういう入り方をしている彼のソロは聴いたことがありません。「Clap」もまた
生命力に溢れる瑞々しいパフォーマンスで、そのうえ一音一音が本当に綺麗。
ギターのボディを叩いておごそかに始まる後半の流れも表現力抜群です。
「Midnight Sun」は導入部のドラム(リン?)アプローチが物凄く82年ぽくて素敵。(^^)
浮遊感漂うミステリアスな曲想はここでも素晴らしいサウンドドラマを構築しています。
特にこの日は5分39秒付近(トレモロを鳴らしている辺り)からのギターの旋律と展開が独特で、
これはなかなかの聴き処になっていると思います。
「Only Time Will Tell」は一音一音押し込んでゆく様な丁寧な演奏で、サビの部分で
高らかに鳴るギターと、細かい打音で装飾しているカールが素晴らしい仕事をしています。
また終曲部もキーボードが珍しい展開で弾いており(何と旋律が上がってゆく!!)、非常に
独特の余韻を感じるのものになっています。

Disc-2はハウの曲紹介MCからカット・インでスタート。そこから元気良く始まってゆく
「One Step Closer」は曲の息遣いを感じさせる優れた演奏で、冒頭の音階が駆け上がる
ところから躍動感に充ちた演奏力にワクワクすると思います。2分39秒付近で一拍溜めて
続いてゆくこの時期ならではの表情の付け方もバッチリ決まっていますし、終曲部での
楽しそうなアンサンブル(一瞬カウベルが鳴るのも面白い)も素敵です。
「The Smile Has Left Your Eyes」は、82年ではこのヨーロッパツアーでのみ披露された
独特の2部構成。この日は前半と後半を結ぶブリッジがスムーズに繋がっているばかりでなく、
後半の非常に力強いアンサンブルに打ち震えること必至のパフォーマンス。朗々と歌い上げる
ウエットンと高らかに鳴り響くギター、そして肉厚な音の粒が刻まれながらジェット機の
轟音と共に拡散してゆくドラマチックなサウンドは圧倒的です。

「Cutting It Fine」でもそのサウンドドラマは炸裂し、エネルギッシュな音の塊が
右に左にと立体的に揺れ動く様子は強烈。ハードにうねり、躍動感に充ちたサウンドを包む
シンセの鮮やかな音色と動きも魅力的ですし、それが更に色彩感を増しながら走馬灯のように
イメージが広がってゆく後半のボレロ〜ソロ部分も相変わらず見事です。
「Here Comes The Feeling」は途中、何故かギターが引っ込んで不思議な引っ掛かりを
感じさせる箇所(2分28秒付近〜36秒付近。4分20秒付近〜26秒付近も同様。PAかハウの
ボリュームミス?)がありますが、それが結果的にウエットンの歌声を一歩前に押し出す為の
演出にも感じられ、なかなかユニークな味付けになっていると思います。
そして突入してゆくドラムソロもこの日は他日であまり入れない音やリズム(1分27秒付近〜)を
前半部でいきなり入れているのが特徴。ソロ全体もそこそこコンパクトに纏めており、
すんなり「Here Comes The Feeling」にリプライズしてスッと終曲しているのも
面白いと思います。

「Sole Survivor」は重厚感のある演奏。中間部に入る手前(3分05秒付近〜)の、ミュート気味の
ギターが素早く駆け抜ける表現も絶品。キーボードが前に出てくる箇所では、一瞬溜めてリズムに
アクセントを付けているドラム(3分27秒〜29秒付近)も印象的です。・・・しかしまぁこの日の
オーディエンスの凄いこと。(^^;)サビの歌詞「So〜〜le Survivor, Sole Survivor♪」の
大合唱には圧倒されますし、バンドもそれに応える素晴らしい熱演をしている様子がビリビリ
伝わってきます。「Heat Of The Moment」はダイナミックな演奏で、曲の持つスケールの
大きさを前面に出すような堂々とした表現が印象的。後半ではギターも唸りまくってますし、
跳ね回るベースラインもよく聴こえて良い感じです。終曲部の最後の歌詞を「Eye〜♪」と
伸ばす82年独特の表現は、この日ちょっと変わった音程で伸ばしているのも特徴的です。

最後に音質や気になった点を付記しておくと、
収録は大変良質なオーディエンス録音で、音もなかなか近いし中音〜低音域にも
それなりに迫力があって聴き易い音です。カット・編集跡は文中にも記した通り
Disc-2の冒頭がハウのMC途中からカット・インしている事と、
「Sole Survivor」終演後〜「Heat Of The Moment」開始前のアンコール待ちの
間に2回あるだけですが、どれも曲間の間がカットされているものなので
それほど気にはなりませんでした。
唯一「Heat Of The Moment」の00分43秒付近で、マスターテープの劣化なのか
メーカーがピッチ補正をした痕跡なのか判別の付かない音質変化が一瞬だけありますが、
これもべつに音楽が損なわれている訳ではないですし、殆ど気にならないと思います。

音質87点。
2CDプレス盤。初回50枚分にはナンバリング・ステッカーが付属。
(※その後増えて80枚分までナンバリング・ステッカーが付いたらしい)
『BRITISH DEBUT』 / (Ayanami−013)

Live Date :
Disc-1 / Wembley Arena, London, UK. / 1982. Oct. 27
Disc-2 / Wembley Arena, London, UK. / 1982. Oct. 28

82年公演の最終日前日と最終日の2公演がほぼ完全収録された4枚組ディスク。
他のバンドでもそうですが、こうしたツアー最終日の音源というのは、
そのツアーでの経験や魅力が凝縮されているので、非常に興味深いものです。
特に28日はヨーロッパツアー最終日というだけでなく、
1982年に行われた全公演の締めくくりでもあるので、
事実上、82年オリジナル・エイジアの残した最後の音でもあります。
28日の「Sole Survivor」演奏前に、スティーヴ・ハウがプロモーターの
ハーヴェイ・ゴールドスミスやブライアン・レーン等の関係者の名前を
列挙して謝辞を述べている箇所もあり、82年エイジアが全てのプログラムを終了し、
眠りに就く前のひと時が余す処無く収録されている音源です。

聴き処は満載ですが、まず27日は全体的に大雑把なタイム感を残しつつも
なかなか洗練された演奏を聴く事が出来ます。オープニングの
「Time Again」から力強いプレイで伸び伸びと演奏しているのが分かりますし、
「Wildest Dreams」「Cutting It Fine」も丁寧かつ力強い演奏です。
しかもヨーロッパツアー初期の頃の演奏と比較すると非常に余裕を持って
プレイしている様な印象があります。
この日の「The Smile Has Left Your Eyes」も当然2部構成ですが、
90年エイジアで演奏された時の演奏と非常によく似ているのがユニーク。
オリジナルのスティーヴの音色と、パットの重たい音とではサウンドに
違いがあるのは当然ですが、それなのにこれを聴くとどこかで通ずる部分が
ある様に思えるのは非常に面白いと思います。
後半で聴けるカールのドラムソロ中、これでもかとばかりにドラを
乱打する様子も大変凄まじいです。

翌28日の演奏も全ての曲を非常にどっしりと、一曲一曲丁寧に
噛み締める様に演奏しているのが印象的です。
「Only Time Will Tell」「One Step Closer」、そして
「Here Comes The Feeling」からそれが如実に伝わってきますが、
特にこの「Here Comes The Feeling」は82年に演奏したこの曲としては
ベスト5に入る名演奏だと思います。
また「The Smile Has Left Your Eyes」も素晴らしい名演で、
個人的にこの日の演奏こそが2部構成としてのこの曲の最高完成形だと思います。
スティーブのギターも素晴らしく曲に絡んでいて、27日とは全く違った
曲に聴こえてしまうから不思議です。
続く「Cutting It Fine」も圧倒的で、ウェットンがエキサイトしているのが分かる
素晴らしい演奏。曲後半のインスト部分などは他日の演奏と比べても
ズッシリと説得力を持った演奏が繰り広げられており、丁寧に、そして
噛み締める様に演奏しているのが実に印象的です。

また、この日は前日27日同様にカールのドラムソロが迫力満点。
90年のライブビデオ『LIVE IN MOSCOW 1990』の中でカールは

『ドラムソロは後半でやった方がいい。車と同じさ。
充分に温まってから叩いた方がいいんだ』

と言ってますが、まさにこの言葉を具現化している様なプレイです。
さすがに空手をやっているだけの事はありますよね。
パワフルと言うか、スタミナ満点と言うか・・・。(^^;

また、このブートで興味深いのは、最後の「Heat Of The Moment」終演後、
メンバーがステージを去った後も暫くの間テープが廻り続けている事です。
つまり、全プログラム終了後の会場の様子が暫く収録されている訳なんですが、
これが非常に生々しいんですね。特にこの日は82年エイジアが最後に行った公演だけに、
その最後の姿がどういうものだったのかを窺い知れる最高の資料とも言えます。
セットリストは27日と全く同じですが、両日共にこれだけ演奏表現に
幅があるというのも面白いと思います。

余談ですが、このブートCDはたった15枚のみプレスされた
『幻の1stプレス盤』が存在します。現在流通されているこのブートの
裏ジャケには、このヨーロッパツアー時に使用された『BRITISH DEBUT』の
チケットのコピーが左側にプリントされていますが、1stプレス盤には
このチケットのコピーがプリントされていません。更に、ライブデートが
『10/28/83』と誤記されていて、書体も変更されています。

#  画像に1stプレス・2ndプレス両方の裏ジャケを載せてあります。
左のジャケをクリックして、その差を確認してみて下さいね。


4枚組CDR。
『BRITISH DEBUT : MASTER EDITION』 / (Amity-266)
Live Date : Wembley Arena, London, UK. / 1982. Oct. 27

オリジナル・エイジアによる1982年の最終公演2daysのうち、
初日の10月27日公演をアップグレードした音源。2012年7月リリース。
上段で紹介している『BRITISH DEBUT (Ayanami−013)』の
27日公演分と同一音源です。
聴き比べてみると使用しているマスター音源も全く同一なのですが、
決定的に違っているのはその音質。本作の方が圧倒的にジェネレーションが若く、
メーカーのリリース・インフォによると録音者から提供された
マスターテープを使用しているそうです。しかしマスターに
しては音質が劣化(テープ伸び)している印象も多少あり、
個人的には2ndジェネくらいのものではないかと推察しています。
とはいえ、音が遠くて軽かった上段の既発盤とは段違いの
図太い音圧と透明度を実現していて、聴き易い音像になっているのは確かです。

一方、デメリットと言えば上段既発盤収録の冒頭のファンファーレが
カットインながらほぼ完全収録されていたのに対し、本作では
ファンファーレ後半の僅か6秒分からカットインしている点。
しかも何故かこの冒頭ファンファーレ、既発盤と本作をPC上で
同期して比べると、本作には入っていて既発盤には入っていない
「フォウッ!!」という観客の声があり(※カールのスネアが入ってくる手前。
本作では00:06秒付近、既発盤では00:24秒付近がそれ。でも収録音は間違いなく同一)、
ジェネ違いでも確認出来そうな声なのに既発盤では聴こえません。不思議。
まさかこの冒頭ファンファーレのみ別テイクで入れているとも思えないのですが・・・。

また最大のデメリットとして、既発盤では若干速かったピッチが
本作では大幅に修正されているのだけど、このピッチがやや修正過剰で
全体的にスローテンポに聴こえてしまう点が挙げられると思います。
これちょっとやり過ぎじゃないかなぁ。
たぶんマスターテープの劣化(テープの伸び)を全体的に一様に修正してるのが
原因だと思うんだけど、このマスターテープ、よく聴くとテープの伸びが
不定期に、しかも随所で散発的に表面化してるんですね。
つまり全体的にピッチが遅い・速いならば全体を遅く・速くする修正で
全体のピッチが一様に修正されるけど、マスターが部分部分で多様に劣化
しているみたいなので、今ここは正しいけど数秒後には変になったりという
のを繰り返していて、メーカーもそれを完全には修正しきれていない為に
全体のピッチバランスに少々違和感を感じます。

というわけで全体的にスローテンポでグルーヴ感が殺がれており、例えば「Without you」では
中間部(2分26秒〜45秒付近)でピッチにかなりの違和感を感じますし、Disc1で
聴けるハウのソロにしても奇妙なほどゆっくり弾いていて、どうにも違和感を感じる
瞬間が多々あります。同様に「Only Time Will Tell」や「One Step Closer」も
どこか間延びした、しまらない印象が個人的にします。
(※とはいえ、「One Step Closer」終曲手前3分56秒付近でウェットンが
声を伸ばしているのは珍しい)

しかしながら既発盤と比べ本作で音像は格段に良くなったので、
それによって浮かび上がってきた演奏面について幾つか触れておきたいと思います。
まず、この日はカールの「Here Comes〜」でのソロ中、1分12秒〜30秒付近に
他日ではやっていないアクションを若干入れているうえ、3分04秒から
(及び4分02秒付近からも)始まるドラの連打・乱打が82年公演中でも
最強・最長の壮絶な乱れ打ちをしているのが面白いです。
ドラムソロはなかなか本腰を入れずに聴き飛ばしがちな箇所だと思いますが、
ここは82年度を締め括る本公演の大きな注目ポイントだと特記しておきたいです。
また「Sole Survivor」ではダウンズが随所に印象的なメロディを入れていますし、
「Heat Of The Moment」ではシンセにディレイ処理が効いておらず(2分21秒、28秒付近)、
ちょっとした機材トラブル(或いは設定のインプット・ミス)が生じている様子も伺えます。

また「The Smile〜」では第1部から2部へと繋ぐブリッジ部分で、
ハウとダウンズが絶品のクロス・アンサンブルをしているのですが、
残念ながらマスターテープに起因する欠損が4分14秒付近で生じており、
恐らく約10秒間程度のプレイが失われています。ちなみにこの部分の欠損は
上段紹介の既発盤『BRITISH DEBUT (Ayanami−013)』でも全く同じです。
尚、音の欠損について補記しておくと「Sole Survivor」終演後〜アンコールの
「Heat Of The Moment」開始までの幕間もカットされていますが、これはまぁ
よくあるカットなのど想定内というか御愛嬌でしょう。

さすがに「母国初日の凱旋公演にして82年度最終公演」という緊張感があったのか、
この日の演奏は序盤で若干ぎこちなさが感じられる場面があるものの、
こうして聴き処の多いライブでもあり、一音一音をきちんと演奏している
印象があります。ピッチの問題で所々でスローテンポにも聴こえますが、
しかし他日公演以上にゆっくりと丁寧に演奏しているのも確かなので、
じっくり聴くとなかなか聴き処の多い公演だと思います。

2CDR。