1983年 - "ASIAN INVASION '83"
("INVASIAN '83" - ALPHA TOUR)


「ASIAN INVASION '83」と名付けられた83年夏の米国ツアーです。
しかし何故か当時のTシャツとかバックステージ・パスには「INVASIAN '83」と
書かれており、この"INVASIAN"というのが何なのか意味不明。英和辞書にも出ていません。
でも、恐らくこれは"ASIAN"と"INVASION"を組み合わせた造語なんだろうと思います。
(※ INVASIANにすると、ひとつの単語の中に"ASIA"という文字が
組み込まれているのが分かりますし、英語圏の人にはこれで意味が通じるのかもしれません)
まぁ真偽のほどはともかく、ツアーの正式なフルタイトルとしては
"ASIAN INVASION '83"が正しいようです。

このツアーは2ndアルバム『ALPHA』の発売に合わせたものでしたが
どこの会場もアリーナ・クラスの超大型ステージでプレイしており、
これだけでも当時のエイジアの快進撃の様子が窺い知れます。
しかしバンド内での水面下の対立は着々と進んでいて、
このINVASIAN '83も当初は84年の春頃まで予定が組まれていましたが、
結局は開始早々にバンドそのものが空中分解してしまいます。

という訳で、83年のアメリカツアー自体が短かった為に
音源もそれほど多くはありませんが、セットリストの変化や
日ごとの表現形態の違いが水面下のトラブルに比例して
演奏によく現れており、なかなか興味深い音源が多い時期です。


"ALPHA" Studio Rehearsals - Early 1983

『ALPHA WORKING TAPES : Studio Rehearsals 1983 - 2013 Digitally Remastered Edition -』 / (MDNA-13054)
Rehearsal Tracks : "Le Studio" Quebec, Canada or "Manta Sound" Toronto, Canada. - Early 1983


アルバム『ALPHA』のリリースからちょうど30年後、しかもアルバムリリース時期まで
合わせたかの様に2013年初夏になって初めて姿を現したALPHA製作時のスタジオリハーサル音源。
ジャケに表記は無いものの、恐らくこれが録音されたのはカナダの"Le Studio"だと思います。
どのトラックもギターソロとキーボードの多重録音が施される前のもので、歌詞も幾つかの
曲を除いては「♪ルルルー、ラララー」といったハミングのガイドボーカルで仮挿入されて
います。またコーラスが入っていない点も大きな特徴でしょう。しかしながらこの状態でも
充分に鑑賞に堪える優れた完成度を放っており、いかにエイジアの、或いはウエットン×ダ
ウンズの創る楽曲のスケールが大きなものであるかを伺える非常に貴重な音源だと思います。


《My Own Time (I'll Do What I Want)》
サビ部分以外の歌詞は出来ておらず、ボーカルは全体的にハミングで歌ってます。
コーラスが入ってないので完成版のあの独特な重厚感と浮遊感はさほど感じませんが、
楽曲構成は既に完璧に仕上がってると分かる点が非常に興味深いトラックです。
歌詞一番が入る箇所のメロディラインが僅かに違うのも面白いところですね。
シンプルな印象は確かにあるものの、その反面こんなリハ音源からでも音楽自体の
大きさが感じられる点は特筆されると思いますし、ストレートに響いてくる
未完成のサウンドがむしろ聴く人の胸を打つと思います。

《Open Your Eyes》
シンセのミックス前の為、冒頭の「♪O〜pen Your Eyes..」という部分がギターの
音色だけという点にまず耳を奪われます。所々で出てくる印象的なギターの旋律も未だ
入ってないので(というより、これも別トラックで録音してミックスするのでしょう)、
その点でもシンプルな印象を受けますね。この時点で歌詞はサビの部分と一番の出だしの
部分のみ出来ていた様で、

♪ What on earth are you doing here, in the western world?
Another situation yeah you're a different girl...

・・までは歌ってますが、その先は「♪ラララー」「ルルルー」へ変化。(^_^;)
中間部のブリッジとなるところ(2分02秒〜05秒付近)ではファルセット(裏声)がまだ無いものの、
そこにある「If I could stand with you right now...」から始まる歌詞は既に出来ていた様で
この時点で確認できます。しかし若干節回しが違っており、特にこの部分の最後の歌詞
「♪ ...between the eyes」の「eyes」は節回しと音程が随分違っているのが面白いです。
後半へのブリッジとなる3分52秒付近からの展開もシンセの旋律が少し違っていますし、
同様にここから徐々に目立ってくるスネアのリズムもこの時点では単調なもので、打音に
目立ったアクセントがまだ付いていないのも面白いですね。そしてその後の壮大な
サウンドドラマの展開も特に無いまま、静かにフェイドアウトしているのも興味深いです。

《Never In A Million Years》
これもアルバム版とは随所で細かなアプローチが随分違っています。面白いのはこの曲は
この時点で歌詞が完成しており、最後まで歌詞付きで演奏されている点でしょう。
但しその歌詞はアルバム版とは多少違っており、明らかに別の歌詞で歌っている箇所が
随所で確認出来ます。自分は英語が出来ないので正確には判別出来ませんが、頑張って
違っている箇所を抽出したのが次の通りです。
(※英語分かんないので聴き取りが間違っている可能性大ですが、その点は御容赦下さい)

***********************************

Plain evil, I know what's on your mind
【Never】say you're leaving me behind (←【】が"When" ?になってる)
No trouble, 【get that from the start】 (←【】が後に出てくる歌詞"you knew that from the start"になってる)
You know the cost of loving 【is your】heart (←【】が"was my"になってる)

I would never leave you
I would never go
I would never leave you
Never in a million, never in a million (←"♪ Year〜s"のコーラスがまだ無い)
NEVER IN A MILLION YEARS

【Pure】pleasure, the love that's in your eyes (←【】が"Cool"か"Good"になってる)
【You never give me feelings in】disguise (←【】が"I could never....disguise"となっていて...が判別不能。歌詞が全く違う)
Same fever, 【it comes on all the time】 (←【】が".....time"と歌われていて...の部分が判別不能)
【Always lets me know what's】 on my mind (←【】が"All try..(?)..."となっており、...の部分が判別不能)

Chorus

【Live angel, you come to me and cry】 (←この一説は全部違ってて"Same feeling, ..(?).. time"と歌われている)
【Like tears of joy come raining from the sky】 (←ここもかなり違ってて"All..(?).. to say..(?)...my mind"と歌われている)
I'd never leave you, you knew that from the start
【I'll give it to you straight】from the heart (←【】が"All Look for feeling" (?)になってる)

I would never leave you
NEVER IN A MILLION YEARS
I would never go
NEVER IN A MILLION YEARS...

***********************************
・・という感じ。
演奏面もギターのアプローチも細かいところで結構違っていますし、
やはり何と言ってもキーボードの装飾音とコーラスがまだ入ってないので
非常にベーシックな印象があるのですが、それを抜きにしても非常に纏まった
演奏をしているために後の完成版に強く思いを馳せられる音源だと思います。

《Midnight Sun》
82年のツアーで聴けたものより随分シェイプされ、既にこの時点で随分とアルバム版に
近い印象を放っています。ミックス前なのでこのトラックもキーボードの装飾音は入って
いないのですが、歌詞については82年のツアーで既に完成した通り、このリハ音源でも
完成版そのままの歌詞が入って演奏されています。また、曲中でちょくちょく印象的に
出てくるギターのオカズ的なフレーズが入って無いのも特徴的ですし、後半で出てくる
あの名ギターソロもまだ完成していなかった様で、ここではまだソロが入っていません。
更には終曲部の締め方も完成版とは随分違っていて興味深いですね。82年のツアーでは
"♪ Sky, sky, sky..."と発した後にアンサンブルの下降音型を付けて終わっていましたが、
このリハ音源ではその下降音型の部分に"♪ Across the sky..."という明確な歌詞を付け、
下降音型の演奏と同時に歌唱も終わるというアレンジになっています。アルバムに収録
された最終的な完成版は逆に上昇音型で終わってるので、この差は実に興味深いです。

歌詞の面では、サビの部分の最後の歌詞「♪Go skimming Across the sky」の「sky」の
部分が、一回目のサビから語尾を張り上げて歌っており(つまり、2回目以降と同じ
歌い上げを最初からしている)、これはなかなか面白いです。また、その2回目の
サビで入っている「♪sky」の部分では「the sky, the sky...」という繰り返しが
ここではまだ無いのも注目すべきポイントでしょう。

《The Smile Has Left Your Eyes (※ Extended Version)》
驚愕のウルトラレア音源。
前半部をピアノの伴奏+ウエットンの独唱、ブリッジがあって後半にアンサンブルが付くという、
82年秋のヨーロッパツアー中にやっていた2部構成バージョンのスタジオ録音版です。
いやホントびっくり。しかもここまで完成した形でスタジオ録音されていたなんて
驚き以外の何物でもないですよ。楽曲構成は82年ヨーロッパツアーで聴けたものと
ほぼ同じですが、前半終了前のピアノの旋律が82年秋のツアーで披露していたものより
若干整理され、よりチャーミングになっている様に思います。ブリッジ部のギターは
高らかに鳴り響くあの旋律がミックス前でまだ入っていない為、ここではバッキングの
アルペジオだけになっています。後半冒頭のバックのリズムパターンは82年ツアーで
やっていたものと同じで、90年の演奏やリユニオン後にやっていたリズムパターンと
比べると若干控え目ですが、これが基本形なのでしょう。

歌詞もほぼ完全に出来上がっていますが、82年のツアー中(特に4月〜7月の米国ツアーで顕著だった)でも
苦心していた終曲部の歌詞とイメージがこの時点でも定まりきっていない様で(※ ♪Now it's too late..や
♪Now there's no one、♪Now that...等のくだり)、このリハ音源でも前半部の終盤で何度も
似た様な歌詞を約30秒近く連発しています(2分01秒付近〜36秒付近)。また、これも面白いことに
終曲部に付いている筈の「The Smile Has Left Your Eyes...」という最後の歌詞が、このリハ音源
では何故か入っていないのも特徴でしょう。それにしても、この2部構成のバージョンがスタジオ版
としてこのまま完成していたら最終的にどういう感じになっていたんでしょうねぇ。
もしあるならスゲー聴きたい。(T_T)
そしてここまで出来ているのに、何故この案を捨てて最終的にはあの完成版に落ち着いたのか、
その辺りも非常に興味深いところです。

《Daylight》
楽曲はメロディラインも含めてほぼ完全に出来ていますが、これもまた歌詞が
サビ以外出来ておらず「トゥルリ、タ〜ラララ・・・」という仮のハミングのまま
ウエットン君が熱唱しております。(^_^;)
このテイクで面白いのは後半の楽曲構成が一部違っていることで、完成版では終曲部で
出てくるパートがブレイクしながら曲中に一度組み込まれ(2分55秒付近〜3分05秒付近)、
そこから再び曲が動いた上でもう一度完成版の終曲部に繋いで終わっている点でしょう。
この2分55秒付近〜3分05秒付近で入る連続したブレイク部分(約10秒間もある!!)は恐らく
別ソースで収録したキーボードかギターの旋律がミックスされて重なる予定だったと思うの
ですが(※まさかベースソロが入るとは思えないし・・(^_^;)、一体どの楽器でどんな音色で、
そしてどういうメロディを想定していたのか非常に気になるところです。
そしてこのトラックでもうひとつ面白いのは、完成版の中盤で出てくるキーボードソロの旋律を
ウエットンがガイドボーカルで歌ってるんですね。この部分に歌詞を入れる予定だった可能性も
感じられ、これも大変興味深いシーンだと思います。

《The Last To Know》
これもサビ以外は歌詞が無いままメロディラインがハミングで曲が進んでゆきます。
面白いのは、アルバムに収録された完成版には入っていないシンセの装飾音が数箇所で
入っている点でしょう(※ 00分43秒付近ほか)。反面、ギターのちょっとしたアプローチや
シンセの多重録音が入っていないので序盤の楽曲イメージが随分と違って聞こえます。
楽曲後半で出てくる印象的なチェンバロの様な音色のアルペジオがありますが、このバックで
合いの手の様に入ってくるギターの旋律もまだ入っておらず(3分13秒付近〜)、未完成な
ベーシックトラックの印象が滲み出ている点も実に興味深いと思います。

《True Colors》
これもサビ以外の歌詞はハミング。演奏自体も非常にシンプルでここでもまだ
ギターの旋律がベーシックなものしか入っておらず、完成版で聴けるフレーズが
幾つも抜けています。またシンセも別録音の重ねた音が入っていないために
歌詞2番冒頭付近の印象が全く違って聞こえるのも面白いところでしょう。
逆に言うと、歌詞2番冒頭付近のバックはシンセの音色を無くすとこういう
演奏をしていたのかという再発見にも繋がっていてなかなか面白いです。
またこのトラックで面白いのは終曲部で、完成版では「♪ Ah,ah,ah,ah,ah...」と
音型が下降して終わりますが、この段階では最後の「ah...」を半音上げて曲が
終わってるんですね。これはなかなか意表を突かれる展開です・・というか、
この半音上げの締め方も凄く良い!!(^_^)

《The Heat Goes On》
元々アルバムのタイトルトラックになる筈だった曲だけあって、このリハ音源でも
完成度の高さが伺えるトラック。ただ楽曲構成と歌詞は完成版と随分違っており、
アルバム収録された完成版との差が非常に興味深いトラックだと思います。
その歌詞ですが、よく聴くと最終的な完成版の歌詞は、この初期トラックで聴ける
各節の歌詞をブロックごとに組み替えたものだった事が伺えます。
歌詞1番からの流れ、そして歌詞の文言が違っている点は以下の通りです。
(※英語分かんないので聴き取りが間違っている可能性大ですが、その点は御容赦下さい)

***********************************

《歌詞1番》
完成版の歌詞2番がこのリハ音源では歌詞1番として歌われており、最後の一節が
「♪ I know the heat goes on」ではなく「I'll so only(もしくはsorry) wanna see」
と歌われている。

《歌詞2番》
完成版の歌詞3番が2番として歌われており、↓の様に歌詞が部分的に変更されている。
==============================================================================
【Now tell me】, with your hand on your heart → 【】の部分が"I love you"になってる
【That you knew】, you were right from the start →【】の部分が別の歌詞になっているが判別不能
【And you know, you knew it all along...】→【】の部分が"but I know, I know the heat goes on..."になってる
==============================================================================

《歌詞3番》
完成版の歌詞2番が再び3番として現れる。この時、最後の歌詞は《歌詞1番》で示した通り
「I'll so only(もしくはsorry) wanna see」となっている。

《歌詞4番》
↑の《歌詞2番》で示した初期版の歌詞が、【】で示す様に一部変更されて歌詞4番になっている。
================================================
I love you, with your hand on your heart
【You got feeling】, you were right from the start
but I know, I know the heat goes on...
================================================

《中間部の歌詞》
「♪ Times to decide, times that I’ve lied...」で始まる中間部の歌詞は
この時点ではまだ存在せず、ハミングで流している

《再び歌詞2番、そして更に変更された歌詞4番が続く》
再び完成版の歌詞2番に戻るが、相変わらず《歌詞1、3》同様に最後の歌詞だけ
「I'll so only(もしくはsorry) wanna see」となっている。
しかし続けて歌われる一節は《歌詞4番》で一部変更を受けた歌詞が更に変更され、
完成版の3番に入っている歌詞【】が一部出てきて↓の様になっている。
================================================
I love you, Lalala..(※ハミングで歌ってる)
You got feeling, 【but I know that you're cool】
but I know, I know the heat goes on...
================================================

***********************************
・・・という感じです。
また後半のキーボードソロもこの時点で完成版とほぼ同じメロディが完成しており、
その様子が聴ける点も注目でしょう。終曲部では最後の歌詞「I know the heat goes on」の
「On」を「On-----------------------.....」と、非常に長く伸ばして歌唱を終えている様子も
大きな聴き処です。

・・とまぁ長かったですが、最後にひとつだけ聴いていて気付いた事をメモしておきます。
本作はスタジオから流出したマスターテープの音源を完全ノーカットで収録していますが、
このマスターテープ、各トラック毎に演奏が終わると暫く無音部分が存在しています。そして
本作はその無音部分まで完全ノーカットで収録しているのですが、この無音部分、よく聴くと
非常に薄っすらとスタジオ内の様子が僅かに聞こえるんです。つまりこれは録音スイッチを
切ってテープ止めているのではなく、ラジオ局の放送スタジオにあるカフ(※)の様にテープは
廻したまま、装置のスイッチを押して「無音部分を作っている」のだと思います。

(※カフ = 主にラジオ局の放送スタジオ等に設置されている装置で、アナウンサーやDJが
手動でスイッチを入れると、入れている間だけ無音状態を作る事が出来る装置。放送中、咳や
くしゃみの様な突然の異音を電波に乗せない為のもの)

この為、特に「Midnight Sun」の終曲後の無音部分ではスタジオ内で誰か(恐らくウエットン)が
誰かと演奏上の確認をしているらしい様子と声が薄っすらと入っており、それが確認
出来るのも本作の隠れた魅力になっているんですね。更にこの部分、次のトラック
「The Smile Has...」の演奏開始までウエットン(だと思う)が何かを喋り続けているのだけど、
喋り続けながら演奏開始直前でカフのスイッチを元に戻したらしく、無音部分でか細く聞こえて
いた声が「The Smile Has...」の開始直前で急に大きく聞こえてくる様子が確認出来ます。
(※ちなみに「Open Your Eyes」の無音部分でも何か喋っているのが聞こえる)

音質ですが、もともとプロ用のスタジオで収録したサウンドボード・テープですし、
基本的な音質は良好だと思います。しかも本作はそれを更に現代のデジタル技術で
リマスタリングした上で収録してあるので音質に関しては文句無いでしょう。
リマスタリングしていない、オリジナルテープの素の状態の音質をダイレクトに
収録してあるのがひとつ下の欄↓で紹介している同音源
『ALPHA BETA Studio Rehearsals 1983 / (HIGHLAND PROJECT HLP-097)』ですが、
それと比較すると本作で聴ける音はワイドに広がる空間性と透明感がグッと向上しており、
非常に聴き易い音質になっています。また、アナログテープ特有のヒスノイズも丁寧に
除去してあり殆ど聞こえません。難を言えば、サウンド全体が若干軽い印象があるくらい
でした。でもやはり本作は、各トラックの無音部分まで完全ノーカットで収録してある点が
最大のポイントだと個人的には思います。

ちなみに↓は西新宿某ブートCDショップの収録内容テキスト付きプライスカード(値札)。
どの店でも各ディスクの前面に大抵貼られている、ブート店では御馴染みのカードですね。
説明文が分かり易くて良かったので、購入時に撮影許可を戴いてレジ机の横で撮らせて戴きました。


(↑クリックすると大きくなります)

音質96点。
1CDR。


『ALPHA BETA Studio Rehearsals 1983』 / (HIGHLAND PROJECT HLP-097)
Rehearsal Tracks : " Le Studio" Quebec, Canada. or "Manta Sound" Toronto, Canada. - Early 1983

上段↑で紹介している
『ALPHA WORKING TAPES : Studio Rehearsals 1983 - 2013 Digitally Remastered Edition - /
(MDNA-13054)』と、ほぼ同内容。
「ほぼ」と書いたのは、本作ではトラック毎の無音部分がカットされているから。
でも無音部分に"話し声"が収録されているのは上段の欄で書いた通りです。

本作の面白いところは、オリジナルのリハテープに収録されていた素の状態の音を
そのままダイレクトに収録してあること。多少のイコライジング処理はしてあるのかも
しれませんが、恐らくオリジナルテープにかなり近いであろう音質が聴けるのは本作なワケで、
これがなかなかバカに出来ないわけです。

実際両音源を聴き比べると、本作は湿った重たい音質で音の抜けもそんなに
良く無いです。しかし英国ロックの音にそれがむしろ合っているという感じが
どうにも否めないんですね。「サーーーッ・・・」というアナログテープ特有の
ノイズも全体的に若干目立つのですが、それもまた生々しくて良いと思います。
そういうのが不要で少しでも透明感のある音質でノーカットで聴きたいという
人には『ALPHA WORKING TAPES』でしょうけど、サウンドクオリティではなく
収録音の生々しさを求めるなら本作も決して無視出来ないと思います。

・・でもカットがあるんだよなぁ・・勿体無い。(+_+)
メーカーもちゃんと確認せずに勝手な判断でカットするのはいかんですよ。
実際には無音ではないのだし。

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同音源なので音質比較や収録内容については以上ですが、ここからは
本作『ALPHA BETA Studio Rehearsals 1983』及び『ALPHA WORKING TAPES』に
共通する"収録曲順"について、このリハ音源の個人的な推察をもう少しだけ
書いてみようと思います。

本作は無音部分がカットされている事は既に触れましたが、しかしながら収録曲の
曲順はいじられていません。つまり本作も『ALPHA WORKING TAPES』も、収録されている
曲順はオリジナルのリハテープと同じワケです。しかしこの
"「My Own Time (I'll Do What I Want)」で始まって「The Heat Goes On」で終わる"・・という
曲順はアルバム収録順をある程度想定してこの曲順になっているのか、もしくはテキトーに
配置してこうなっているのかは大変興味深いところだと思います。更に言えば、
1stシングルカットとなった「Don't Cry」がここに含まれていないのも不思議ですし、
同様に「Eye To Eye」が入っていないのも不思議です。

ところで、ここにファンには御馴染みの有名な一枚の写真があります。
これは1983年の『ALPHA』製作当時(2月〜5月)、そのレコーディングに使われたカナダの
ケベック州にある"Le Studio (ル・スタジオ)"内で撮影された貴重な写真です。
(※本リハ音源もまず間違いなくそこで収録された音源でしょう)
写真の内容は録音されて保管されているマスター・リールテープの箱の様子ですが、
そこには「Don't Cry」の文字(或いは、テープの箱)が見当たりません。


(↑クリックすると大きくなります)

この写真と本作音源となる当時のリハテープから推測できるのは、恐らく「Don't Cry」は
シングル用の"売れる一曲"としてこのリハテープの製作後に遅咲きで曲が誕生したか、
もしくはシングル用に別のトラックで別個に録音を進めていたんじゃないかという事です。
このリハ音源に「Don't Cry」が入っていない理由もそれなら説明が付くと思うんですね。
そして何故かこのリハ音源には、「Eye To Eye」も含まれていませんが、この2曲、
LPを思い出して戴ければ分かりますがどちらもA面(Alphaサイド)の一曲目と
B面(Betaサイド)の一曲目です。どちらも重要な曲である筈なのに、どうしてこの
リハテープにはこの2曲が無いのでしょう?そのうえ、最終的にはアルバムの収録から
外されてシングルB面曲となった「Daylight」が、何故か当たり前の様に入っています。
これは注目すべき点ではないでしょうか。

もちろんマスターテープの箱はこれだけではなかったでしょうし、リハ音源も
この一本だけではなかった筈です。しかしながらアルバムのセールスを大きく
左右する1stシングル用の曲や、B面の一曲目といった重要な位置に入る曲が
何故かここには入っていないという理由の裏側を読んでゆくと、本音源の製作時期や
製作意図がぼんやりと見えてくる様に思うんですね。もちろん個人的な推察ですけど。

前掲したスタジオ内のマスターテープの写真を眺めつつこのリハ音源を聴き、リハ音源の
ウラ側に見え隠れするものに推理を馳せるのも本作『ALPHA BETA Studio Rehearsals 1983』
及び『ALPHA WORKING TAPES』両タイトルをより愉しく聴く方法だと思います。

音質92点。
1CDR。

1983年 "INVASIAN '83" (83年7月24日〜9月10日)
『07-31-83 SARATOGA PERFORMING ARTS CENTER SARATOGA SPRINGS, NEW YORK』
/ (CAN-CAN-BOTTLE, Catalog No.10)
Live Date : Saratoga Springs Performing Arts Center, Latham, N.Y / 1983. July. 31

自作のプライヴェート・ブートです。
7月31日というアメリカツアー開始直後の音源で、面白いのは『Without You』を
プレイしている事です。これは個人的に82年のツアーでしかプレイしていないと
思っていただけに、聴いた時はびっくりしました。
すぐ後日の音源(・・・と思われる)『BETA LIVE at MONTREAL 1983』では、このセット位置で
『The Last To Know』をプレイしていますし、やはり83年7月後半〜8月始めの
アメリカツアー開始直後というのはセットリストが完全に固定しておらず、
幾つかの興味深い曲をプレイしている様です。また全ての演奏内容もどこなく荒削りで、
まだまだリハ不足の不慣れな面も時折り表面化しますが、
しかし逆にそれが大変生々しい音源でもあると思います。

他の83年7月音源も聴きたいなぁ・・・。
『BETA LIVE at MONTREAL 1983』 / (TRADE MARK OF QUALITY, TMOQ 7B27C2-74)
Live Date : Montreal Forum, Quebec, CANADA. / 1983. Aug. 5 (?)

アナログ・ブートLP時代からある有名な音源で、同一音源も幾つか存在します。
アナログ時代は『Love Of Science Vol. 1』『Love Of Science Vol. 2』というタイトルで、
1公演を2枚に分けて出ていたが、曲順がメチャクチャに入れ替えられていました。
また、他の同一音源では、アメリカ製のブートCDで『Arabia』というタイトルで
リリースされています。更に、この日の音源は『Montreal 83』というタイトルの
ブートビデオも存在し、本作『Beta Live At Montreal 1983』は、このブートビデオ
『Montreal 83』から落とされた音源だと思われます。ただ、何故か不完全収録で、
実際にはこのCDの1曲目『Time Again』の前には『Wildest Dreams』を演奏していて、
Disc 2の最後が『Sole Survivor』で終わらず、当然アンコール曲の『Heat Of The Moment』
を演奏しているのがビデオで確認出来ます。
そういう訳で、この日の音源が完全収録されているのは

Love Of Science Vol. 1
Love Of Science Vol. 2
Arabia

・・・の3タイトル(Love Of Scienceは2枚で1公演なので、実質的には2タイトル)ですが、
いずれにせよ、こうした複数の同音源が存在する事自体、83年音源の古典と
言えると思います。

さて、この日の演奏自体は比較的落ち着いた内容ですが、2ndアルバムのマテリアルが
加わった事により、一曲一曲の新旧のフラグメントの組み合わせがショウ全体の構築、
つまりエイジアの世界を一層と際立たせている様に感じます。
それぞれの曲を聴いてみると、まずどうしても気になるのが、82年のヨーロッパツアーで
2部構成になっていた「The Smile Has Left Your Eyes」の完成形態でしょう。
2部構成の大曲とは全く逆の、美しい小曲にアレンジされて、まるで少女が口紅をひく様に、
ショウの合間のちょっとしたアクセントとして位置づけされた事は大変興味深いと思います。
また、同じく82年当時は未発表曲だった「Midnight Sun」も、リズムボックスの使用を
やめた事によりダイナミズムさを抑え、しっとりと落ち着いた女の様なアレンジを
施されている事にも注目したいですよね。ただ残念な事に、ここでは曲後半がカット
されてしまっています。この曲は、83年アメリカツアーを通して演奏された曲ですが、
たまに演奏されない日もあったりするので、要チェックですよね。
更に、もう1つの特筆点としては『The Last To Know』を演奏している事です。
83年アメリカツアー後半のセットリストと比較すると分かりますが、ツアー後半では
『Daylight』を演奏しているセット位置に、ツアー前半ではこの『The Last To Know』を
演奏しています。つまり、ツアー途中からこの曲が『Daylight』と入れ替えられている訳で、
結果として『The Last To Know』は、アメリカツアー前半でしか演奏されなかった曲
という事がここから窺い知れると思います。

さて、こうした素晴らしい公演ではありますが、謎なのがこのライブの日付けです。
CDのクレジットには83年8月5日のモントリオール公演になっていますが、
ブートビデオ『Asia Uk & History '80-85』を観てみると、
MTV出演中のウェットンが、エイジアのツアー日程を宣伝する場面があって、
そこでは

83年
7月31日/8月1日 Saratoga Springs, NY / Performing Arts Ctr
8月9日 Buffalo, NY / Memorial Aud

・・・となっているのが確認出来ます。
つまり、8月1日の後は9日までライブが無いんです。
この「83年8月5日のモントリオール公演」という日付は、同音源のアナログブートLP
『Love Of Science Vol. 1』『Love Of Science Vol. 2』にも記載されていますが、
ひょっとしたら、このブートLPに記載された日付がそもそもデタラメで、その後
10年以上過ぎて発売された後発ブートCD『Beta Live At Montreal 1983』や『Arabia』が、
そのLPのジャケ裏に表記されていた日付をそのまま記載してしまった為に
一般化したのかもしれないし、もしくはこれは本当に83年8月5日のモントリオール公演で、
MTVの宣伝がその箇所だけ抜け落ちていたのかもしれません。しかし、そのMTVの中での
ツアー日程宣伝は、全てウェットンが
「ツアー場所が書かれたパネルを見せながら読み上げている」ので、
とても間違いとは思えないのですが・・・。
ただ、セットリストから考えても、アメリカツアー初期の音源である事は間違い無いです。
『ARABIA』
Live Date : Montreal Forum, Quebec, CANADA. / 1983. Aug. 5 (?)

アメリカ製のブートです。
持っていません。
内容は、アナログブートLP『Love Of Science Vol. 1』『Love Of Science Vol. 2』及び、
上で紹介したブートCD『BETA LIVE at MONTREAL 1983』と同内容です。
『AUGUR』 / (CURRY CLUB, CC-19830819)
Live Date : Centrum, Worcester, Massachusetts, USA / 1983. Aug. 19

缶屋のシーバ様と共同入手した音源で、自作のプライヴェート・ブートです。
音源を入手した時のマスターには『8月22日』と表記されていたのですが、
正確には8月19日の演奏の様です。

まだ付近の音源が揃っていないので暫定的ですが、
どうやらこの日は『The Last To Know』が演奏された最後の日だった様です。
バッファロー公演(下段に紹介してある『19830824(?)』)からは、同じセット位置で
『Daylight』が演奏され始めています。

演奏内容は極上で、全ての曲が非常に力強いのですが、その中でも特に
『The Heat Goes On』『The Smile Has Left Your Eyes』、
そして『Open Your Eyes』『Here Comes The Feeling』が実に、実に実に素晴らしいです。
25日のNew Jersey公演(下段紹介の『GEOFFLY 'S BIRTHDAY PIRTY』)と
並んで、この日は83年8月公演の中でも突出したステージの一つだと断言出来ます。

また、オーディエンス録音ながらも超・高音質で一公演完全収録されており、
この時期のエイジアの生々しい姿を如実に感じ取れる音源です。
これ程の音源を聴くと、この8月後半というのは、
83年エイジアが一番力強かった時期だった様な気がします。
『A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM』 / (Ayanami−054)
Live Date : Centrum, Worcester, Massachusetts, USA / 1983. Aug. 19

Ayanami製のブートです。
上に紹介してある僕とシーバ様の『AUGUR』と同マスター・同音源の様ですが、
若干のイコライジング作業が施されている様です。
ここでも強く言っておきますが、音源提供をしたのは僕ではありません。

この日は本当に凄いです。
やはり、冒頭で聴ける『The Heat Goes On』『The Smile Has Left Your Eyes』
そして『Open Your Eyes』『Here Comes The Feeling』は凄まじい破壊力です。
また、この日で演奏を終えた『The Last To Know』も実に感動的なプレイで、
25日・New Jerseyの様な8月後半時期のエイジアの凄まじさを
生々しく伝えている一枚だと思います。
また、スティーブのソロ『The Clap』も素晴らしいです。

余談ですが、本作のタイトル『A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM』は、
去年Ayanamiでリリースする予定だったがお蔵入りになってしまった、
初期キング・クリムゾンのブートに使用していたタイトルです。
この時は僕がジャケを描いたのですが
(この時の未使用・お蔵入りのジャケは、『麻理果のお部屋』に載せてあります)、
結局このブートは他に同音源が見付かったのでリリースされず、
改めて別音源に変え、タイトルも『FALLEN ANGEL』に変更して
リリースされました。

しかし、やはりこのタイトルはこのブートに取っておいて正解だったと思います。
まさに8月後半時期の『真夏の夜の夢』を聴く人に視せてくれるでしょう。
『THE SMILE HAS LEFT THEIR FACE』 / (CURRY CLUB, CC-19830820)
Live Date : Forest Hills Tennis Stadium, Forest Hills, N.Y, USA / 1983. Aug. 20

缶屋のシーバ様と共同入手した音源で、自作のプライヴェート・ブートです。
このマスターは、テーパーの間では音ヨレがヒドイ事で有名な音源でして、
以前、何人かのコレクターからも「あー、この日のマスターテープは最低だよ」
という話を伺った事があります。
今回、シーバ様と共同入手したこの音源も音ヨレがヒドかったのですが、
シーバ様が厳正にピッチ修正+イコライジング作業を施してくれて、
これは全く違和感無く、普通に聴ける様に収録し直してあります。

収録内容は素晴らしいもので、83年らしい見事なショウが収録されています。
残念ながら「Don't Cry」の冒頭が切れていますが、それ以外は完全収録です。
全編に渡って非常に力強いドラマティックな演奏をしていて、
聴いているだけで体がウズウズとしてくる程です。(^_^;)
その中でも僕が個人的に良かったのが「The Smile Has Left Your Eyes」
「Eye To Eye」でしょうか。凄まじいサウンドドラマが炸裂する好演奏です。
『19830824(?)』 / (CURRY CLUB, CC-Unknown#2)
Live Date : Memorial Auditorium, Rochester, N.Y, USA / 1983. Aug. 24
   (※...or, Memorial Auditorium, Buffalo, N.Y, USA / 1983. Aug. 9)

缶屋のシーバ様と共同入手した音源で、自作のプライヴェート・ブートです。
音源を入手した時のマスターには『(8月23日』と表記されていたのですが、
入手したツアーデータによると23日はライブが無く、翌日24日に
Rochesterという場所でライブをやっているのですが、Memorial Auditoriumという名の
会場は8月9日にBuffaloでもやっていて、しかもどちらもニューヨーク州にあり、
ここに収録されているのはどちらなのかよく分かりません。
ただ、今まで「The Last To Know」だったセット位置に「Daylight」が
組み込まれており、「Daylight」は8月後半からセットリストに組み込まれた事が
判明しているので、恐らく8月24日で間違いないと思います。

さてその「Daylight」ですが、前後の日付の音源のセットと比べると、
暫定的ですがこの日が恐らく初演の様です。
初演だけあって、後の日の演奏と比べると、若干ギクシャクしているのが伺えます。
この曲は、最後の最後の部分で、曲の冒頭部分と同じメロディーの
シンセ音流れて曲が締めくくられますが、そこでカールのドラムロールが
入っているのもこの日の「Daylight」の特徴です。

全体的には落ち着いた演奏を繰り広げていて、どこかスタジオテイクに忠実な
演奏をしているなぁ、という印象を受けます。
しかしそれはまた、翌々日(25日・New Jersey公演)に爆発する為に必要な
"嵐の前の静けさ"だったのかもしれません。

『GEOFFREY'S BIRTHDAY PARTY』 / (Virtuoso 133/134)
Live at : Meadowlands Arena, East Rutherford, New Jersey, USA / 1983. Aug. 25

ひとつ↓の欄で紹介している古典の名盤タイトル、
『GEOFFLY'S BIRTHDAY PIRTY / (No Label, 7613E1-74)』に代わって登場した上位音源。
『GEOFFLY'S BIRTHDAY PIRTY』とは別の、新発掘のマスターから収録された音源です。

オープニング「Wildest Dreams」は冒頭から疾走感が炸裂する素晴らしい立ち上がり。
伸びやかなギターの音色と共に芯の太い音でグングン突き進む様子が楽曲本来の力強さを
惹き立てており、これから始まるショウの期待をグッと高めている気がします。
後半のドラムソロの箇所でもカウベル(?)を所々で挿入したアプローチが楽しいです。
「Time Again」も図太い音の芯が跳ね回る好演奏。ギターがミュートカッティングを
していたり(00分58秒付近)、トレモロを多めに入れていたり(2分14秒付近)と、
ハウの装飾音がいちいち効いています。
ウエットンも歌詞2番「I have to say that's how you did it all along♪」の
最後の部分を「...all alo〜〜〜、〜〜ng♪」と、メロディラインをグイグイ押し込んで
いる様子が印象的。終曲部で全ての音がレイヤーを重ねる様に収束し、それがひねる様に上昇し、
メインフレーズをリプライズしてバン!と終わる爽快感も抜群です。
「The Heat Goes On」はメリハリの効いた演奏で、メインフレーズに入る直前(00分29秒付近)で
ギターがスライドしているニクい演出も聴き処。この日はウエットンが歌詞3番を適当に
デッチあげているのも注目したいところです(笑)。また中間部のキーボードソロでは
序盤でスタジオ版とは少し違うアプローチで弾いているのも特徴でしょう。

「Eye To Eye」は切ないドラマチックな曲想がよく出ている演奏で、
各歌詞の最後("to go〜♪"、"on thin ice〜♪"、"no more time〜♪"等)を
ファルセット気味で歌い上げる様子も他日より際立っていると思います。
「Only Time Will Tell」はメインテーマを鳴らすシンセ音が序盤00分20秒付近から
暫く継続して鳴っており、何らかのトラブルが発生している模様。1分31秒付近から
入ってくる同じ音もタイミングが少し遅れ気味なので、これはたぶんこういう
アプローチで弾いているのではなく何らかの機材トラブルだと思います。
しかしながら演奏自体はこの日も鮮烈なイメージを放っており、硬質なベース音が
良いアクセントとなりながら滑らかなサウンドイメージを見事に表現していると思います。

そんなダウンズのソロはこの日も壮大なデジタルサウンド絵巻が全開。
1分36秒付近の入り方が他日と少し違って切れ味の良いものになっている他、
曲想が変わる3分02秒付近でもリズムマシンのテンポを急に上げているのが確認出来ます。
ハウのソロでは、やはりこの人は格が違うというか、冒頭の「Beginnings」から
見事過ぎる指捌きと絶妙なタッチが潤沢に耳を潤してくれます。この後の
「Valley Of Rocks」や「Clap」もそうなんですが、多くのフレーズで
音色やアプローチを変幻自在に変えて演奏しているのも特徴でしょう。

そして何といっても「Open Your Eyes」。
既発盤『GEOFFLY'S BIRTHDAY PIRTY / (No Label, 7613E1-74)』ではゴッソリ
カットされていた冒頭〜中盤の約4分間が完璧な姿で収録されているのは感動モノ。
想像していた通りの素晴らしい名演で、冒頭のシンセとボーカルの静かな導入から
力強いアンサンブルへ引き継がれる様子はとても強いインパクトを放っています。
一音一音が鮮烈で、レガートの効いた流れの中を芯の太い音が潜り抜けてゆく様子は
まさに絶品。そして、こうした序盤の流れがあった上で既発盤『GEOFFLY'S BIRTHDAY PIRTY』で
聴けた後半部に繋がっていたのかと思うと、その感動と興奮は何倍にも感じると思います。

セットリストに加わって間もない「Daylight」は瑞々しい音の煌きを感じるパフォーマンス。
2分14秒付近から始まってゆくギターとキーボードの対話も音のバトンタッチがスムーズで、
これはリユニオン後、2008年のフェニックス・ツアーで久し振りに披露された
ぎこちない曲想の「Daylight」とは雲泥の差があると思います。またリズム隊と
メロディのコントラストもこの日は眩しく、終曲部ではウエットンが音程を
意図的に一定に保ったまま最後の歌詞を歌っているのも印象的です。
「The Smile Has Left Your Eyes」は繊細なドラミングの技巧が映えた演奏。
中でもBメロからAメロに戻る直前、1分39秒付近から入ってくる連続した
細かな打音表現は素晴らしいですし、後半で何度もメロディが
押し込まれ・重なってゆく2分34秒付近〜59秒付近までの打音表現も小気味良い
リズムをキープしつつ美味しいオカズをさりげなく盛り込んでいて見事です。

「Don't Cry」はこの日も序盤のアプローチがいささか不安定。また、
相変わらず1番と2番を混同させた適当な歌詞をワメき散らしているウエットンも
色んな意味で魅力的であります(笑)。

しかし一転して「Here Comes The Feeling」はスタートから見事に引き締まった
演奏をしており、疾走感を伴った纏まりのあるアンサンブルがキラキラと
印象的なピアノの音に装飾されてゆく様子は素晴らしいと思います。
そして突入してゆくドラムソロはこの日もパワフル。しかしこの日は他日より
コンパクトに纏めているのが特徴で、後半のスネア連打→怒涛の乱れ打ちへ
雪崩れ込んでゆく展開を短縮し、アッサリと「Here Comes The Feeling」へ
リプライズしています。「Sole Survivor」はリズミカルさを前面に出している演奏。
いつもは各楽器がマッシヴに交錯する後半部の引き伸ばし演出も控え目で、
歌を主眼に置いた楽曲本来の持ち味を出すパフォーマンスになっていると思います。

そして始まってゆく特別な瞬間がディスク2-(8)。"♪Happy Birthday, To Geoffrey〜♪"と
ウェットンが歌い、他のメンバーやオーディエンスからも祝福されている様子が
収録されている非常に微笑ましいシーンです。但し、残念ながら00分20秒付近で
カットの痕跡。本来ならウエットンが「It's, Geoffrey downes Birthday!!!」と
叫んでいる重要なシーンがカットされています。既発盤『GEOFFLY'S BIRTHDAY PIRTY』では
この部分がノーカットで聴けるだけにこれは痛い・・・(泣)

この部分の既発盤と本作の比較は下段↓で紹介している『GEOFFLY'S BIRTHDAY PIRTY』の
欄に記しておきましたので、詳細はそちらを参照して下さい。

そんなサプライズ後に始まるラストの「Heat Of The Moment」は、穏やかで温かい演奏。
ウエットンも2分41秒付近で「フフゥ♪」とハッピーな声を入れているのが印象的ですし、
3分28秒付近から暫く入ってくる仄かなシンセの音色(この部分、他日の演奏では
もっと目立った音で鳴っている)も楽曲を素晴らしく装飾していると思います。
そして何と言っても『GEOFFLY'S BIRTHDAY PIRTY』ではフェイド・アウトしていた
この曲の後半が、本作では終曲まで完全収録で聴ける意義は大きいと思います。
そして終曲後も暫く録音が廻り続け、会場の余韻までレコードされている点も
特筆されるでしょう。

音質78点→95点。
ディスク1冒頭の「Wildest Dreams」は音揺れの目立つ箇所があったり、
収録音もややこもっていてそれほど良い音ではありません(78点)。
しかし次の「Time Again」からグッと良くなり(83点)、ダウンズのソロで
飛躍的に音が改善し(91点)、ハウのソロが終わる頃にはサウンドボード並の
素晴らしい収録音(95点)になり、その極上音質を維持したまま最後まで収録されています。

2CDプレス盤。
初回プレス50枚分にはナンバリング・ステッカーが付属。
(※その後増えて80枚分までナンバリング・ステッカーが付いているらしい)
『GEOFFLY'S BIRTHDAY PIRTY』 / (No Label, 7613E1-74)
Live at : Meadowlands Arena, East Rutherford, New Jersey, USA / 1983. Aug. 25

『GEOFFLY'S BIRTHDAY PIRTY』です。
『GEOFFREY'S BIRTHDAY PARTY』ではありません。
"ジェフリー"と"パーティ"のスペルが誤記された往年の名盤です。

この誤記スペルが正され、カットも補填され、ほぼ完全収録を誇るタイトル
『GEOFFREY'S BIRTHDAY PARTY / (Virtuoso 133/134)』(上段↑の欄参照)とは
全く別のマスターから収録されているのが特徴ですが、その『GEOFFREY'S BIRTHDAY PARTY』
がリリースされた事で旧マスター使用の本作はもうお役御免になった・・・・かと言うと、
さにあらず。

その理由は、この日の目玉であるジェフリーの誕生日祝福シーンが、
本作ではほぼノーカットで聴ける点にあります。
新リリースとなった『GEOFFREY'S BIRTHDAY PARTY』はこの箇所に重大な欠落があり、
本来ならウエットンが「It's, Geoffrey downes Birthday!!!」と紹介している箇所が
何故か未収録なんですね。
(※ この「It's, Geoffrey downes Birthday!!!」の直後からカット・インしている)

これは恐らくマスターテープ録音者がアンコール待ちの間に録音を一時中断していたから
だと思うんですが、上記した通りウエットンが突然
「It's, Geoffrey downes Birthday!!!」とアナウンスした事で、慌ててその直後から
録音が再開されているフシが『GEOFFREY'S BIRTHDAY PARTY』の収録音からは読み取れます。

・・・という訳で本作と『GEOFFREY'S BIRTHDAY PARTY』、それぞれの収録音の
流れを比較してみると次の様になります。
-----------------------------------------------------------------
『GEOFFLY'S BIRTHDAY PIRTY』(本作)の流れと、マスターテープ録音者の動き


(1).「Sole Survivor」終演後、約1分20秒間ほど録音が廻り続けてカット

(2). しかし直ぐに録音を再開。

(3). ウエットンが「○○〜〜、It's, Geoffrey downes Birthday!!!」と叫ぶ

(4). 大歓声

*****************************************************************
『GEOFFREY'S BIRTHDAY PARTY』の流れと、マスターテープ録音者の動き


(1).「Sole Survivor」終演後、約30秒間ほど録音が廻り続けてカット

(2). 録音を停止したまま暫くステージの様子を見ているらしい。

(3). ウエットンが「○○〜〜、It's, Geoffrey downes Birthday!!!」と叫ぶ
のを聴いて、その直後から慌てて録音を再開

(4). 大歓声

-----------------------------------------------------------------

・・・とまぁこんな感じですが、この肝心の(3)の部分がきちんと聴ける点で
本作の意義はまだまだ大きいと思うのです。

尚、上の表中に記した本作(1)〜(2)の部分、つまりカット〜直ぐに録音再開の部分ですが、
ここは仮に録音を一時停止していなくても単にオーディエンスの歓声しか
入っていなかったと思います。
重要なのはやはり(2)の部分、つまり本作の録音者は早めに録音を再開している事で、
これが幸いしてウエットンのMCがきちんとレコードされている点は非常に大きいと思います。

しかしその一方、本作には最大の欠点として「Open Your Eyes」の
大半が失われた状態で収録されている点が挙げられるでしょう。
何と曲のほぼ最後半からカット・インしており、かなり無残な状態で収録されています。
また「Heat Of The Moment」も演奏途中の5分37秒付近でフェイド・アウトしており、
煮え切らないままディスクが終わっているのも難です。(-_-;)

とはいえ、やはりこの臨場感と興奮は並々ならぬものがあるのも事実。
新しくリリースされた『GEOFFREY'S BIRTHDAY PARTY』に一歩譲ってしまった
感は否めませんが、どちらも83年音源の決定盤であるのは間違いないでしょう。
今後、幾つかの83年音源がリリースされてもこれ以上の興奮が
収録されているかどうか疑問に感じる程の名音源だと思います。

音質87点。
2CDR。
『LIVE GOES ON』 / (Blue Cafe-61A/B)
Live Date : Poplar Creek Music Theatre, Hoffman Estates, IL, USA / 1983. Sep. 4

テーパー間では昔からよく知られた音源です。
オーディエンス録音ながらかなりマスターに近いと思われる
低ジェネレーションの音源から収録されており、
大変良好な音質で一公演が完全収録されています。

内容としては、この日のライブではダウンズの不調と回復が
キーポイントになっていると思います。序盤「Time Again」の冒頭で
既にシンセ音に異変がある事に気付かされますが、続く「The Heat Goes On」の
コーダ部でダウンズの機材が不調なのかタイミングミスするのを初め、
次の「Eye To Eye」でも途中までアンサンブルが完璧だったのに、
後半で他愛の無いミスを連発していたりします。
そうしたダウンズの不調もあっての事で、序盤の数曲はいささかお茶目な演奏が
目立ってしまいますが、各曲の演奏は中盤から安定し、
「Open Your Eyes」辺りから素晴らしくなってゆく印象があります。
(これは恐らく、シンセ類の機材不調等をハウのソロタイム中に改善した為だと思う)。

続く「Daylight」も、オリジナルメンバーの演奏で愉しめるのはこの北米ツアーだけですが、
スタジオ版とは一風変わったヴォーカルラインでウェットンが歌っているのは興味深いです。
間髪入れずに続く「The Smile Has Left Your Eyes」も、82年ツアーでアレンジを重ね
紆余曲折を経てようやく出来た完成形が、オリジナルの4人によって見事な演奏として
披露されています。しかし中でも特に、この日は「Sole Survivor」が圧巻。
この力強いパフォーマンスを聴いて体が打ち震えないファンは居ないんじゃないでしょうか。
なかなかの名盤だと思います。

音質80点。
2CDR。
『HOFFMAN ESTATES, IL, Sep.4th.83』 / (CAN-CAN-BOTTLE #2)
Live Date : Poplar Creek Music Theatre, Hoffman Estates, IL, USA / 1983. Sep. 4

自作のプライヴェート・ブートです。
上記『LIVE GOES ON』発売前から持っている音源でしたが、
聴き比べてみるとやはり同内容で、使用しているマスターも同じものでした。
2CDR。

『CLEAR BLUE LIGHT』 / (PF-185D @ PeaceFrog)
Live Date : Pine Knob, Clarkston, Detroit, Michigan, USA / 1983. Sep. 9...or,10

オリジナルメンバーでの最後のステージ・・・かもしれない音源。

というのは、長い間オリジナル・エイジアの83年ラストライブと思われてきた
タイトル『LAST ORIGINAL / (HIGHLAND, HL149/50#AS2)』(※9月10日の音源。
一つ下↓の欄を参照)に収録されていた音と、本作の収録の音が全く同じだからです。
(本作のクレジットには9月9日と記されている)
PC上でリンクさせて両音源を聴き比べてみると使用されているマスター音源も
全く同じものが使われており、どちらかの日付が間違っているようです。
(※勿論、どちらもフェイクという事も充分有り得るけどね)

この音源中、「Time Again」の終曲後のMCで「○○〜、Detroit!!」と
喋っているのでこの演奏をしている場所はデトロイトで間違いは無いと思いますが、
オリジナルメンバー最後となったこのデトロイト公演は83年9月7日〜10日までの
4日間、同一の場所でプレイしているため、これが何日目の演奏なのか
僕には分かりません。「Sole Survivor」の開演前にハウが何やらベラベラと
喋っている箇所があり、ひょっとするとそこに何日目かを特定するヒントが
あるのかもしれないけど、僕は英語が分からないので不明です。
(誰かヒアリングして何言ってるのか教えてください・・・泣)

しかしまぁいずれにしてもセットリストに「The Last To Know」が無く、
代わりに「Daylight」が組み込まれているという事は8月24日〜9月10日のどれかで
ある事は間違いない筈なので、83年オリジナル・エイジアによるほぼ最後期の
演奏であることは確かでしょう。

・・・という訳で本題。
「Wildest Dreams」はなかなかどっしりと腰を落ち着けたオープニング。
グルーヴ感もあり、演奏にも円熟味が感じられるものになっています。
後半のドラムソロの箇所も非常にエネルギッシュで、一曲目を締めるには
最高の演出・パフォーマンスをしている点にも注目したいところでしょう。
MCや挨拶を入れず直ぐに始まってゆく「Time Again」も凄まじいテンションで、
まるで音の塊が立体的に動く様な見事な演奏。歌う様に駆け巡るギターサウンドが
また素晴らしく、ハウとリズム隊のコントラストが鮮烈なイメージを放っています。

「The Heat Goes On」もグルーヴとサウンドが終始炸裂している瑞々しい
パフォーマンスで、中間部の入り口(2分06秒付近)で聞ける溜めの表現も
この日は素晴らしい間合いで決めていると思います。その直後から入ってくる
キーボードはミスタッチも含めて面白い表現になっているのも注目したいところ。
ウエットンも随所でアドリヴの叫び声を入れており、緊張感と熱気を増幅しています。
このウエットンのアドリヴによるボーカルのアプローチは「Eye To Eye」でも聞かれ、
特に1分秒47付近から2回入ってくる"♪Woo〜WoOoo〜♪"というのは珍しいと思います。
またこの曲もダウンズのタッチミス(1分01秒付近)がありますが、この部分、彼は
他日の音源を聴いててもたまにミスしますよね。たぶんこのフレーズを弾いた後、
すぐ別のキーボードに手を移してゆくから、腕の(或いは上半身をひねる)素早い
移動の時に指が当たってしまうのかもしれないですね。演奏後半は強烈なグルーヴが
スペイシーなメロディーの後ろで次々に展開し、極上のイメージを描いています。

「Only Time Will Tell」はこの日、たゆたう曲想が雄大に舞うドラマチックな演奏。
ゆったりと、ふくよかに曲想を描いているのが印象的で、まるで黄金のシルク生地に
原色のインクをサーッと振り撒く様な鮮烈さとなめらかさを感じる名演だと思います。
ダウンズのソロはこの日も壮大なサウンドドラマが展開しており、80年代初頭を感じる
あの頃特有のシンセサイザーサウンドが全開。この日はショルダーキーボードに
持ち替えた後、5分33秒付近のアプローチが他日と少し変わっていて面白いです。
ハウのソロタイムもまた鮮烈。この人のソロタイムは毎回本当に安定していますが、
この日は「Beginnings」の00分47秒付近〜1分07秒付近を初めとして幾つか
細かく・そして大胆にアプローチの変化を出しているのも興味深いところです。
「The Clap」の中盤なんか凄いですよ。

「Open Your Eyes」はじっくり腰を据えた感じのテンポが83年ぽくて良いです。
90年の若干スピーディでビート感のある曲想とは明らかに違う、このメンバーでしか
出せなかったミステリアスな音の粒が広範に進むにつれどんどん表情豊かになってゆく様子が
素晴らしいと思います。曲中何度も出てくる、引っかかる様な独特のアプローチでピッキング
される印象的なギターの旋律(3分33秒付近ほか)もハウが居てこその音の装飾でしょう。
歌詞が途絶えて始まってゆく楽曲中盤〜終盤のドラマティックな盛り上がりも見事で、
そこかしこで極上のサウンドが炸裂しています。

そしてドラマチックといえばこの日の「Daylight」も同様。芯のある力強いアンサンブルが
グイグイと前面に迫ってきてはシンセのサウンドに包まれ、スッと彼方へ消えてゆく音の
綴れ折りが強烈です。コーダ部のしっかりと溜めを効かせたアプローチも壮絶。まるで
音楽が喜びと感動で見事に飛翔した姿を、しっかり地に足を付けて見送るようです。
「The Smile Has Left Your Eyes」はもうこの時点で完成形(スタジオテイク)が
一人で次のステップに歩き始めたかの様な、壮大かつ自信に満ち溢れている演奏です。
若干アップテンポ気味でプレイしているのも特徴で、それがまた曲想をより
ドラマチックにしている気がします。

「Don't Cry」は出だしでややミスがあったり、歌詞が怪しいウエットンらしさも出た
不安定なプレイはこの日も相変わらず(笑)。しかしどこまでも伸びて歌うギターが
それらを払拭し、軽快なドラミングで次々と弾き出されるビート感が心地良いです。
しかし一転して「Here Comes The Feeling」は素晴らしい安定感を見せ、
ウエットンはここでもアドリヴでボーカルアクションを数箇所入れていますが、
特に2分55秒付近で聴ける「♪..mmM,Here Comes...♪」という力のこもった
アプローチは当時としてはなかなか珍しいと思います(※2008年のリユニオン時では
よくこういうアプローチをしていたけど)。

中盤から突入するドラムソロは、序盤でカウベル(?だと思う)の細かな金物系の音を
素早く差し込むアプローチ。他日の公演を聴いているとたまにあるアプローチだけれど、
そのスティック捌きがこの日も見事に決まっています。ドラを鳴らした後に聞こえてくる
ティンパニ(?)の打音とシンセドラムの交錯するシーン(10分50秒付近〜)がまた鮮烈で、
その後の打音の多さと多彩さ(スネアの端で細かな音を演出したりもしている)には
驚かされること請け合い。そのラウドさとドラマチックな構成力は本当に見事だと思います。
そして「Sole Survivor」はエネルギッシュなサウンドパワーが結実した名演。
一音ごとにパンチがあり、かつメリハリも効いている力強い音の爽快感は
手に汗握るものがあると思います。またいつもの様に4分43秒付近から始まる
引き伸ばされた後半部もこの日は特に凄まじいものがあり、このマッシヴな
音のぶつかり合いを置き土産としてオリジナルメンバーによる最後の
演奏は終わっています。再びこの曲が同一メンバーで再現されるのは、
この瞬間から実に25年もの月日が経った後でした。

そして本来ならこの後、アンコールで「Heat Of The Moment」を
プレイしていた筈なのですが、残念ながらまるごとカットされています。
但し、海外のテーパーが所持しているこの日のセットリストを見ると
最後に「Heat Of The Moment」を演奏しているのが確認出来た事も付記しておきます。

音質79点。
2CDR。
『LAST ORIGINAL』 / (HIGHLAND, HL149/50#AS2)
Live at : Pine Knob, Clarkston, Detroit, Michigan, USA / 1983. Sep. 9...or,10

上段↑で紹介している『CLEAR BLUE LIGHT / (PF-185D @ PeaceFrog)』と
同一の音源で、使用しているマスター音源も全く同じものが
使用されています。

但し音質は若干本作の方がこもっており、透明感に欠けているのが難点。
そして『CLEAR BLUE LIGHT』の欄でも書いた通り本作もまた
「Heat Of The Moment」が未収録で、両タイトルとも恐らく不完全収録
だと思われます。

本作は長らくオリジナルメンバー最後の演奏を収録した音源として
コレクターに親しまれてきたタイトルでしたが、『CLEAR BLUE LIGHT』が
リリースされた事によりその役目を終え、そして同時にライブデータの
真偽性が問われてしまった一枚です。

音質78点。
2CDプレス盤。