2006年〜 ORIGINAL 4 MEMBERS, REUNION !!


2006年5月15日、オリジナルメンバーの4人が再結集。
あの時のエイジアが本当に動き始めました。
このページはそのリユニオン以降のブートレッグ・タイトルを時系列で紹介しています。








2006年〜 ORIGINAL 4 MEMBERS, REUNION !! (2006年8月29日〜)
『WILDEST MOMENT』 / (Sirene-183)
Live Date : Water Street Music Hall, Rochester, New York, USA / 2006. Aug. 29

遂に動き出した、オリジナルメンバーによるオリジナル・エイジアの再結成ツアー初日音源。
非常にクオリティの高いオーディエンス録音で一公演が完全収録されていて、
本音源のマスターは海外のダウンロード・サイトから落とされた音源が元になっており、
音源をアップロードした人のコメントによると、録音機材はSONY MZ-RH1(Hi-MD用のレコーダー)で、
場所はステージ約100フィート後方のジェフ・ダウンズ側寄りだったそうです。

25年振りの初日演奏ということで何から書いていいのか分からなくなってしまいますが、
正直な感想としてはまだ演奏に若干の不安定さが感じられます。しかしこのサウンドを聴いたら、
間違いなく誰もが「25年間待ち望んでいた、あのエイジアの音」だと瞬間的に分かるだろうし、
確実に胸が熱くなる筈です。僕も感涙しました。(T_T)

聴きどころをかいつまんで簡単に見てゆくと、まず驚かされるのは各メンバーのキャリアから
選りすぐったバラエティーに富んだ選曲の多さですが、往年のファンが釘付けになる一曲となるのは
何といってもDisc2−(8)の「Ride Easy」でしょう。これがセットに組み込まれたのは恐らくエイジア史上初の筈。
(ただし、1985年にダウンズが発言している通り、「ライブでは演奏したが、アルバムには入れなかった曲もある」
との事なので、まだ発掘されていない1982年か83年のライブで一度くらい演奏していた可能性も否定出来ないと思う)
1stアルバムに未収録だったこの曲がここにきて何故突然演奏されたのか現時点では僕もよく分からないけど、
ダイナミックでドラマティックだったスタジオテイク版とは違い、アコースティックで厳かな、
静かなアプローチで演奏されているのが大変興味深いです。

また、これと同じくらいにインパクトを持ったサプライズ曲が、バグルスのDisc2−(5)。
これまでのエイジアではダウンズのキーボード・ソロの一部として披露されていましたが、
何とここでは4人による「バンド・バージョン」としてアレンジされていて、
これは初めて聴いたら色んな意味で腰を抜かすこと請け合いです。(^_^;)
実際のステージでは、ウエットンがメガホンを片手に歌っているのですが
これは実際に観たらかなり強烈なインパクトがあるんじゃないかと思います。
他にも、イエスの名曲「Roundabout」をウエットンが歌っているというのはかなり不思議な印象があるし、
ハウがクリムゾンの「宮殿」を弾いているというのも実に不思議な感じがしますが、それぞれの曲にこうした
ファンの夢を満載した様な聴きどころが非常に多く、アッという間に90分近くが経ってしまう一枚です。

初日という事でアンサンブルとしての出来栄えはお世辞にも高いとは言えない(むしろ酷い・・・(^_^;)けど、
再結成した2006年オリジナル・エイジアの再始動の様子を克明に記録した一枚なのは間違いないと思います。

『REUNION TIME AGAIN』 / (Blue Cafe-123A/B/C/D)
Live Date :
Disc1〜2 : Water Street Music Hall, Rochester, New York, USA / 2006. Aug. 29
Disc3〜4 : Grand Cayman Ballroom, Trump Marina Casino, Atlantic City, NJ. USA / 2006. Aug. 31

これもまた他の数タイトルと同一音源。本作Disc1〜2の29日公演は、上段や下段で紹介している
『WILDEST MOMENT (Sirene-183)』『FOUR ACES (CAINOZOIC, CZMCD2-5003)』のDisc2−(6)〜(12)、
及び『TIME AGAIN (CAINOZOIC, CZMCD2-5004)』のDisc2−(6)〜(13)と同じです。
使用しているマスターも全く同じですが実は少し音質が違っていて、『FOUR ACES Disc2−(6)〜(12)』と
『TIME AGAIN Disc2−(6)〜(13)』と本作の3タイトルはエッジが効いた硬質な音で収録されており、
『WILDEST MOMENT』のみが若干角が取れたマイルドな音質で収録されています。

続く本作のDisc3〜4もまた他の数タイトルと同一音源で、
『FOUR ACES (CAINOZOIC, CZMCD2-5003)』のDisc1〜2(5)、
『LIVE AT NJ (Thirteen Records, TTR-046)』、及び
『FANFARE FOR THE REUNION (Sirene-184)』のDisc−1〜2と同じです。但し本作Disc3〜4は
これらの他音源とは別マスターを使用している(本作以外の上記3音源は間違いなく、ひとつの
同じ同一マスター音源からの収録)のが特徴。とはいえ本作Disc3〜4は音が少し遠く、
そのうえ若干こもっており、他の3音源と比べて明らかに音質面で一番劣っています。

4CDR。
『FOUR ACES』 / (CAINOZOIC, CZMCD2-5003)
Live Date :
Disc1〜2(5) : Grand Cayman Ballroom, Trump Marina Casino, Atlantic City, NJ. USA / 2006. Aug. 31
Disc2−(6)〜(12) : Water Street Music Hall, Rochester, New York, USA / 2006. Aug. 29

下段で紹介している『FANFARE FOR THE REUNION』のディスク1〜2、及び
『LIVE AT NJ』と同音源。使用しているマスターも同一で、海外のダウンロードサイトに
アップロードされていたものがマスター音源になっています。

音質はどれもほぼ変わりませんが、本作は音の入力レベルが弱く、
ボリュームをそこそこ上げないと通常の音量では聴けないのが難点。
まぁ、各家庭のステレオの状態でこの辺りは変わるのかもしれないですが、
少なくとも僕が普段使用しているステレオでは音量調節が必要でした。

尚、本作にはボーナス音源としてDisc2−(6)〜(12)に8月29日の音源が収録されていますが、
これも上段で紹介している『WILDEST MOMENT』と同内容。使用しているマスターも
全く同じで、海外のダウンロードサイトにアップロードされたものが元になっています。
もちろん聴き比べてみましたが、音質は全く同一です。
ただし、本作ではこの29日音源はボーナス扱いなので、どうせなら一つのタイトルに
きちんと纏められている上段の『WILDEST MOMENT』の方が嬉しいところです。
ちなみにこのDisc2−(6)〜(12)の続きの演奏は、9月3日公演をメインで収録した
同メーカーのタイトル『TIME AGAIN』(下段の9月3日公演の項を参照)に収録されています。
2CDR。
『LIVE AT NJ』 / (Thirteen Records, TTR-046)
Live Date : Grand Cayman Ballroom, Trump Marina Casino, Atlantic City, NJ. USA / 2006. Aug. 31

上段で紹介してある『FOUR ACES』、及び
下段で紹介している『FANFARE FOR THE REUNION』のディスク1〜2と同音源。
使用しているマスターも全く同じで、海外のダウンロードサイトにアップロードされていたものが
マスター音源になっています。

収録時間もほぼ全く同じ(双方のディスクで±2秒程度の差はあるけど)ですし、
音質も殆ど変わらないです。ただし、『FANFARE FOR THE REUNION』の方が全体的に安定した音質に
なる様に微妙なイコライジング補正が施されているので、本作よりも少しだけ音の耳障りが良く感じます。
しかし逆に、本作はマスター音源の音をダイレクトに直落としているぶん、
音が若干とんがっているというか、シャープナーな音で収録されています。
2CDR。
『FANFARE FOR THE REUNION』 / (Sirene-184)
Live Date :
Disc−1〜2 : Grand Cayman Ballroom, Trump Marina Casino, Atlantic City, NJ. USA / 2006. Aug. 31
Disc−3〜4 : Fox Theatre, Foxwoods Casino, Mashatucket, CT. USA / 2006. Sep. 03

本作のディスク1〜2は、上段で紹介してある『FOUR ACES』、及び『LIVE AT NJ』と同一音源。
また本作のディスク3〜4は、下段で紹介している『TIME AGAIN』と同一音源。
どのタイトルも同一マスターからダウンロードされている為、どのタイトルも音質はほぼ同じですが、
本作は他のタイトルと比べてイコライジング補正による音の安定感が優れていると思います。

という訳で、本作はオリジナル・エイジア再結成ツアーのツアー2日目と5日目を
優れた音質で収録した4枚組CD。両日とも開演直前の会場で流れていたエドワード・エルガー作曲の
「Pomp and Circumstance Marches (邦題 : 威風堂々)」から一公演を完全収録していて、
まるで当日その場の空気までもが封じ込められている様に感じられます。
1stアルバム全曲披露や、多岐に渡るバラエティな選曲は初日と変わらずですが、
僅か2日目なのに早速セットの曲順が入れ替えられているのは面白いですね。

それぞれの音源を簡単に見てゆくと、まずDisc1+2の8月31日では冒頭のDisc1−(1)の出だしから
ハウの演奏ミスが全体的にかなり目立っていて、終盤までかなり危なっかしいプレイをしています。
リハ不足なのか、25年も前の曲をきちんと思い出せていないのかは分からないけど、ハウにとっては
どの曲も随分と久し振りに演奏する筈だから、これはまぁご愛嬌というか仕方の無い事ではあるのでしょう。
1stアルバム全曲に加え、2nd『ALPHA』から数曲、そして過去のキャリアから数曲といったセットの構成など、
3rd『ASTRA』や『THEN AND NOW』からの曲を完全に排除しているのは、こうしたハウの在籍期間に対しての
ささやかな配慮だと思います。ウエットンとしてはアルバム『ASTRA』からの曲もセットに加えたかった筈ですが、
それも今後のハウの様子を見てのことだと思うし、暫くの間はこの1stと2ndからの曲を中心に据えたセットで
やってゆくと思われます。

曲のアレンジに注意を向けると、ダウンズのシンセにそれが目立つのが面白いです。
特に「Without You」では中間部でフルートの音色を加えていたり、
「Cutting It Fine」の後半部でもブラス系の印象的な音色を付け加えて曲の魅力を彩っているのが分かります。
つい最近まで現行形のエイジア(嬉しいことに解散したが)として演奏し続けていた彼は、
或る意味で4人の中で一番深くエイジアの曲を深く熟成させてきただけに、
こうしたささやかなアレンジにもエイジアの曲に対する彼の深い造詣と新しい解釈を与えているのでしょう。

Disc3+4の9月3日公演も、上記した8月31日公演と同様にミスが目立つ演奏が多くて、まだまだ本来の
エイジアとしての力を発揮し切れていないのは正直な感想として否めません。(T_T)
しかし、初日音源を収録した上段の『WILDEST MOMENT』から本作という約1週間の音の変化を聴くと、
少しずつではあるけれど確かに良くなっている印象は感じられ、アンサンブルの安定感が
グッと増しているのが如実に分かります。>僅か1週間でこれだけ音に変化が現れているのだから、
来日公演が実現する頃には現在よりもずっと良くなっている事でしょう。(^_^)

『TIME AGAIN』 / (CAINOZOIC, CZMCD2-5004)
Live Date :
Disc1〜2-(5) : Fox Theatre, Foxwoods Casino, Mashatucket, CT. USA / 2006. Sep. 03
Disc2−(6)〜(13) : Water Street Music Hall, Rochester, New York, USA / 2006. Aug. 29

こちらは別レーベルからリリースされている9月3日公演の単体販売版で、
上段で紹介している『FANFARE FOR THE REUNION』のディスク3〜4と同内容。
使用しているマスターは、両タイトルとも海外のダウンロード・サイトに
アップデートされたものを元にして使用していますが、本作はイコライジング作業が
全くされていないマスター音源通りの素の状態で収録されているので、
音のキレと抜け具合が『FANFARE FOR THE REUNION』よりも良く感じられます。

また本作は同レーベルがリリースしている『FOUR ACES』(8月31日公演収録・上段参照)の
姉妹盤でもあり、『FOUR ACES』のボーナス音源として収録されていた8月29日音源の続きも、
本作のディスク2−(6)〜(13)で聴く事が出来ます。
2CDR。
『RIDE THE WINGS』 / (Sirene-206)
Live Date : Avalon Ballroom, Boston, MA, USA. / 2006. Sep. 7

初日付近のパフォーマンスと比べると演奏がかなり安定してきているうえに、
幾つかの曲では演奏のアプローチに明らかな変化が出てきている興味深い音源。

Disc-1は、「Time Again」と「Wildest Dreams」にまだ若干アンサンブルにズレがあるものの、
ハウのギターがだいぶ安定して曲の纏まりがグッと増しています。また「Wildest Dreams」の
中間部ではギターの音の散らし方が面白いです。
続く「One Step Closer」ではアプローチに明確な変化があり、曲中の
「O〜ne Step Closer〜♪」というサビの部分で"step"の直後にスタッカートが入って
「O〜ne Step, Closer〜♪」となっており、これと同時に演奏も僅かにブレイクするという、
大変興味深いアプローチを聴く事が出来ます。

「Without You」でも冒頭からシンセが単音で鳴り続けているというちょっと変わった様相で
曲がスタートしていて、これによって前半部の曲のイメージがだいぶ違って聞こえます。
「Fanfare For The Common Man」は非常に纏まりのある演奏で聴き応えがあり、
各メンバーのソロを巧く散りばめた構成も功を奏していて、特に中間部での
ハウとダウンズの掛け合いが暫く続く箇所はかなり面白いです。
「The Smile Has Left Your Eyes」は、ハウが曲の随所で素晴らしいメロディーをギターで
散りばめてゆく極上の演奏。オルゴールの様なシンセの音色でチャーミングに
終曲してゆく様子は絶品です。(^_^)

Disc-2では、まず「Here Comes The Feeling」の素晴らしい熱演に耳が奪われます。
ここでのウエットンのボーカルは82年当時に負けないほど力強く、
彼本来の表現力を改めて感じさせてくれるグッドパフォーマンスです。
「The Heat Goes On」では、カールのドラムが絶好調。
ソロ突入部のアプローチも他日とは違っており、シンバルの連打から入るという独特のもの。
2006年版のこの曲の特徴として、妙に長尺なドラムソロにせず、
コンパクトながらも非常にパワフルなドラミングを凝縮して披露するという短縮スタイルに
変化している点はここでも注目でしょう。
「Sole Survivor」も好演奏。初日付近の演奏ではかなり怪しいアンサンブルでしたが、
ここでの演奏を聴くと、25年前の彼等が持っていた勘やフィーリングを着実に
取り戻しつつある事が分かります。
そしてこの日の「Ride Easy」では一際素晴らしい演奏が聴けます。
アンサンブルに若干のバラつきは確かにあるものの、
色とりどりの宝石を夜空にバラ撒いた様な夢想のごとき美しさがここには存在し、
個人的には本作中で一番感動出来たグレート・パフォーマンスです。

音質極上。
一応はオーディエンス録音ですが、サウンドボード級の優れた音質で収録されていて、
各楽器の細かな音も非常に良く録れている好盤です。
また、曲のアプローチを変え始めている様子も良く分かる音源なので、
進化途中の現行エイジアを研究する資料としても価値が高いと思います。
2CDR。
『RIDE THE DRAGON'S WINGS』 / (DRAGON MUSIC LIMITED, DML-060913)
Live Date : Keswick Theater, Philadelphia, PA, USA. / 2006. Sep. 13

演奏がかなり安定してきた事を伺わせてくれる好音源。
オーディエンス録音ですがかなり音質が良く、各楽器の細かな音も良く録れているうえに
会場の空間と空気も生々しく伝わってくる好盤です。

冒頭「Time Again」から素晴らしく息の合ったアンサンブルを披露していて、
続く「Wildest Dreams」でも全盛期の雰囲気と迫力がかなり蘇ってきており、
文句の付け様が無い極上プレイの連発で既に圧倒されそうになります。(^_^;)
また面白いのは「Without You」で、セカンド・ヴァース終了後の中盤アンサンブルが
少しアップテンポになりつつ急激に盛り上がってゆくという大変ドラマティックな
曲想として披露されているのですが、これはかなり聴き応えのあるテイクだと思います。

「Cutting It Fine」ではカールのドラム・アプローチとスティーヴのギター・アプローチが
他日とは部分的に違っており、曲終盤の多重シンセのヴァースでもダウンズが部分的に
違った弾き方で曲を紡いでいます。また違うといえば、スティーヴのギターソロ「Clap」も
中盤のアプローチがかなり違ったユニークな曲想になっている独特の演奏内容になっています。
「The Smile Has Left Your Eyes」は、ウエットンのヴォーカル・アプローチが
部分的に歌詞を繋いで歌っていたりしているというこの日独特のもの。
そして「Here Comes The Feeling」も、溜めとコブシをたっぷりと効かせたウエットンの
ヴォーカル・アプローチがかなり印象的なテイク。まさに"熱演"といった感じの
雰囲気が終始漂っているうえに、中間〜後半の軽やかな曲のテンポがその歌唱表現と相まって
実に素晴らしい効果を出しています。尚、この独特のアプローチは12月のイギリス公演でも
引き継がれていたので、恐らく3月の日本公演でも同じ様に披露されると思います。

「The Heat Goes On」は、90年晩秋のロシア公演に似た演奏スタイル。但し本作で聴けるテイクは
曲本編よりもむしろカールのドラムソロがかなりのド迫力で、ソロに入った途端に強烈な
ドラミングが次々と展開してゆきます。基本的なソロタイムのアプローチと若干違っているのも
ユニークで、ソロ後半の粒の揃ったマシンガンの如きバスドラム超連打は圧巻だと思います。
「Heat Of The Moment」は、この日とても魂がこもった好演奏。音のアタックに説得力があり、
ずっしりとした重厚感と高揚感を伴った素晴らしいテイクを披露しています。

なお本作は、販売していた西新宿の店舗アナウンスでは50枚のみの限定生産盤だったそうで、
2007年1月現在は既に廃盤になっています。
収録内容・音質のどちらも極上の2CDR。
『LIVE AT CARLING ACADEMY LIVERPOOL』 / (20061128)
Live Date : Carling Academy, Liverpool, UK. / 2006. Nov. 28

この公演はオフィシャルブートレグとしてCDRタイトルが会場売りされましたが、
本作はそのオフィシャルブートを丸ごとコピーして作られた国産のブートCDR。
オフィシャルではありません。つまり、収録内容は勿論のこと、ジャケットも、
イギリスの会場で売り出されたオフィシャルブートレッグ盤を更にコピーした最悪のブート盤です。

西新宿の某店舗で売られていますが、これは幾らなんでも酷いんじゃないのかね?
僕も普通ならこういういブートは絶対に買わないですが、2007年3月に雑誌beatlegで
大々的なエイジア特集記事を執筆しなければならなかったので、内容確認の為に一応この本作一枚のみを
買ってみました。もちろん、内容はオフィシャルブートと何も変わりません。
実はこの店舗、本作の他にも12月1日のウォルバーハンプトン公演、3日のロンドン公演という
オフィシャルブートで出ていた全ての音源をこの様に再コピーして販売しており、
しかもその店頭価格は驚く無かれそれぞれ5200円。
人を馬鹿にするのもいいかげんにしろよと言いたくなります。

一応内容を記しておきますと、この日はショウの後半で若干ミスが目立つものの、
スティーヴが勘をかなり取り戻した事でそれぞれの曲に一層の安定感も感じられる公演です。
ウエットンはソツなく万事をこなしているという感じもしますが、「One Step Closer」や
「Here Comes The Feeling」ではいつもながらかなり熱の入った歌唱を披露していて、
湿ったベース音がかなり心地良いです。またアコースティックバージョンの「Don't Cry」は
カールのタンバリンをマイクが拾い切れていないものの、曲の良さを巧みに引き出した好演奏となっています。

また「The Heat Goes On」は途中でウエットンが何かに笑って吹き出しながら歌っている箇所がありますが、
演奏自体も4人が実に愉しそうな雰囲気があって秀逸。また「Sole Survivor」でのスティーヴの
中盤ソロ〜後半はかなり極上のギタープレイを披露しています。「Heat Of The Moment」は後半でジェフの
Keytar(ケイター。ショルダーキーボードの愛称。ジェフの愛用機で、現在はローランド製AX-7をよく使っている)の
調子が悪く、なかなかステージ前面に出て行けないというトラブルが発生しているものの、それを補って余りある
力強いグッドパフォーマンスの演奏でショウを締め括っています。

それにしても、オフィシャルブートCDを更にコピーして本作の様なコピー
タイトルを作るとは本当に酷い。久し振りに怒りを覚えたブートです。
こういうのって、実際に会場に行けない多くの人は勿論のこと、
PCで英語のページでしか買えないというおじさん世代の弱みを突いている訳で、
会場限定売りとかPCで英語のページでしか買えないというストレスとハンデをクリアする意味でも、
通常のCDショップで手軽に買える様に正式なリリースをして欲しいところです。
2CDR。
『HEAT OF THE REUNION - UK 2006』 / (Blue Cafe-138A/B/C/D)
Live Date :
Disc−1〜2 : Wulfrun Hall, Wolverhampton, UK. / 2006. Dec. 01
Disc−3〜4 : Shepherd's Bush Empire, London, UK. / 2006. Dec. 03

2006年12月公演を2公演分完全収録した素晴らしい4枚組CDR。
秋のUSツアーと比べてもセットリストに大きな変動は無いですが、
演奏が格段に良くなっています。拙い演奏ミスや、アンサンブルの酷いズレが
殆ど無くなっているうえに演奏の纏まりに全盛期の一体感が蘇っていて、
いよいよオリジナル・エイジアの本領が発揮されてきた感が満載の素晴らしいプレイを
聴く事が出来るアイテムです。
また、スティーヴのギターソロがUSツアーでの「The Clap」から
「Mood For A Day」に変更されているという点も注目すべきところでしょう。

Disc−1と2のウォルバーハンプトン公演は冒頭から強烈な演奏が炸裂。
お馴染みとなったオープニングの"威風堂々"から収録されていますが、
「Time Again」の立ち上がりからUSツアーでの演奏とはひと味もふた味も
違ったアンサンブルの凄みに気が付くでしょう。続くDisc1−(3)では
ウエットンの声と演奏力が本来の力強さで復活しているし、(6)では82年当時の
エイジアにかなり近い、重苦しくも荘厳な躍動感が復活しています。
また後半のDisc2−(6)ではスティーヴが全体的にカッティングを多用したユニークな
プレイで引き通しているのも興味深いです。
そしてこの日は何といっても「Ride Easy」。この演奏が悶絶するほど絶品で、
夢想の如き儚い幻燈が夜空に次々と消えゆく様な感覚を、
音で耳から体験出来る感じの極上テイクになっています。

Disc−3と4に収録されているのはDisc−1.2の二日後の公演ですが、
僅か二日間でこれだけ変わるのかというぐらい演奏が更に飛躍的に良くなっていて、
部分的には全盛期の82年〜83年頃と比較しても全く遜色無いレベルにまで
高まっているのが分かります。特にDisc3−(7)の後半でのスティーヴのギターの絡め方や、
Disc4−(4)(8)でのアンサンブルなど、まさに80年代のあのエイジアが出していた音
そのものではないでしょうか。これを聴けば往年のファンは嬉しさで
ステレオの前を転げまわってしまう筈です。(^_^;)
また、エイジア以外の曲の纏まりもかなり良くなってきていて、
中でもDisc1−(9)の堂々たる演奏の力強さとスティーヴの奇抜なギターアタックは、
1日・3日どちらの公演も特筆に価するものがあると感じます。

音質はどちらの公演も良好のオーディエンス録音で、1日の音源は
カチッとしたシャープな音質でシューティングされており、
シンバル系の金管音が心地良いです。3日の音源はワイルドでストレートな音質で
収録されていて、全体的に音に迫力があります。どちらの公演も大変聴き易く、
エイジアの演奏力を余すところ無く伝えてくれる好盤だと思います。
4CDR。
『BRITISH REUNION』 / (Sirene-214)
Live Date : Shepherd's Bush Empire, London, UK. / 2006. Dec. 03

こちらは単体売りの12月3日公演。
ただし『HEAT OF THE REUNION (Blue Cafe-138A/B/C/D)』のDisc3.4とは
使用しているマスターが違っており、ライブ開始前の"威風堂々"も本作では
ほぼ全長版で収録されているうえに、ライブ終演後のSE音まで収録されているという
完璧な完全収録盤になっています。音質は『HEAT OF THE REUNION』と比べると本作は
上品な音質といった感じで、ややダイレクトさ・ストレートさに欠ける気もしますが、
この辺りの感覚は個人の好みでしょう。でも音質は決して悪くなく、
むしろかなり上質のオーディエンス録音の部類に入ると思います。

尚、本作はオーディエンス録音ですが、本公演が行われた12月3日は会場で
ライン録音されたオフィシャルCDRが会場のみで販売されています。
しかし実際に僕の手元にあるそのオフィシャルCDRと聴き比べてみると、
本作の方がぐっと温かみのあるブート独特の音質で収録されており、
音としても妙に機械的に尖っていないぶんこちらの方が聴き易い印象があります。
正直な話、オフィシャルのライン音源よりも本作や『HEAT OF THE REUNION』の方が
出来が良いのではないでしょうか。(^_^;)
少なくともブート慣れしている人ならば、こちらの2タイトルの方が耳によく馴染む筈です。
しかしそれにしても、本作はやはり一公演完全収録の全長版であるという点が嬉しいですね。
ちなみに収録時間も、オフィシャルCDRより本作の方が長く収録されています。
2CDR。
『BRITISH RE-DEBUT』 / (Dragon Music Limited, DML-061203)
Live Date : Shepherd's Bush Empire, London, UK. / 2006. Dec. 03

これも単体売りの12月3日公演。
もうゲンナリ・・・。(-_-;)

しかし本作は、『BRITISH REUNION (Sirene-214)』や
『HEAT OF THE REUNION - UK 2006 (Blue Cafe-138A/B/C/D)』とは
使用しているマスターが更にまた別のもの。本作は、同時期にネット上に出現した
ブート映像から音だけを拾ってCDにしたものです。実際に各音源を聴き比べてみると、
本作の音質は他の2枚と比べても明瞭さ、音圧などが一聴して分かるほどに差があり、
明らかに録音マイクが他の2音源よりも高い位置(つまり、音を遮る障害物が殆ど感じられない)に
あることが分かります。これは肩の位置ぐらいにある固定のハンドカメラで画も音も収録している
からでしょう。その為に音質も本作が一番聴き易く、ストレートな音で収録されています。

2CDR。50枚のみの限定販売盤。
2007年 日本初来日ツアー (2007年 3月4日〜3月11日)
『LOOKS CERTAIN』 / (Sylph, SY-0843)
Live Date : OSAKA KOSEINENKIN KAIKAN, Osaka, JAPAN. / 2007. Mar. 05

来日公演二日目となる大阪公演。
この日は控え目に聴いても非常に優れた演奏が多く、
かつこの日のみの独特な表現を幾つもしていて、聴きどころが多い音源てす。
Disc1から聴いてゆくと、まずこの日の「Time Again」の立ち上がりは他日より重苦しく、
重厚感に充ちていながらも、曲に突入するとファストな疾走感に溢れてゆくという
大変スリリングで独特なもの。演奏も安定していて大変秀逸なオープニングを体験する事が出来ます。
「Wildest Dreams」では曲中のジェフのアタック音が印象的。終盤で演奏にミスが目立つものの
それを吹き飛ばしてしまうほどの色鮮やかなイメージを次々と炸裂させています。
「Without You」は曲中のウエットンのベースが独創的。濡れた様な太い音でベースを連打する箇所があり、
力強いあの頃のエイジアを追体験出来る音になっています。「Cutting It Fine」はギターのアプローチが魅力で、
基本に忠実でありながらもラウドで魅惑的なフレーズを連発しています。「Don't Cry」はウエットンの
歌い回しがかなり独特。バックで鳴っているジェフとスティーヴの音の重ね方も実に見事です。

Disc2では、「In The Court Of The Crimson King」が図抜けて良い出来。途中でウエットンが歌の入りを
ミスしていますが、このアンサンブル、この曲表現、どれも大変秀逸です。カールのドラミングもまた見事で、
この演奏はこの日一番ではないかと思います。「Here Comes The Feeling」も強烈。この4人でしか成しえない
色彩感豊かな音のイメージが随所で花開いています。リズムとメロディーの調和と膨らみも素晴らしく、
音の構築とはこういうものだというお手本の様な演奏です。「The Heat Goes On」は大変興味深く、
曲の前半部が83年の"ASIA IN ASIA"の時の演奏と酷似しています。あの日、グレッグの代わりに
ウエットンが歌ったらこんな感じになっていたのではないだろうか?という感じです。
「Only Time Will Tell」はカールのドラミングとジェフのピアノの絡みが見事です。

2CDR。
SYLPHレーベルが出したこのシリーズ中では、本作が内容と音質で一番のお奨め。
でもこのジャケのセンスは最低ですな。(-_-;)
『GUARANTEED』 / (Sylph, SY-0844)
Live Date : TOKYO KOSEINENKIN KAIKAN, Shinjuku, Tokyo, JAPAN. / 2007. Mar. 07

東京公演初日。
Disc1-(2)「Time Again」は序盤から素晴らしいアンサンブルで決めています。
重厚感のあるウエットンのベースラインが響いて心地良く、演奏もかなり安定しています。
「Wildest Dreams」は落ち着いた演奏でありながら、飛び跳ねる様なリズムがベースラインと一緒に
軽快にうねるというコントラストの効いた秀逸な演奏。そしてこの日特に良いのが「Roundabout」。
中盤でスティーヴとウエットンとカールが音を絡め合う箇所は非常に緊張感があり、曲を大いに
盛り立てています。「Without You」は、この日は意外とスタンダードな演奏。中盤でカールのドラミングが
ドラマティックに盛り立てているのが印象的です。「Fanfare For The Common Man」はジェフとスティーヴの
掛け合いがスリリングで、音のせめぎ合いが凄まじいです。アコースティックの「Don't Cry」は、
同じアコースティックの「The Smile Has Left Your Eyes」よりも出来が良く、
静かな音の中に小宇宙を感じる珠玉の演奏をしています。

Disc2では、何と言ってもこの日は「Here Comes The Feeling」だろう。ここでの演奏は82年時の高揚感と
殆ど変わらず、それどころかここでの表現の方がむしろ良いのではと思わせる極上の演奏だ。
「Only Time Will Tell」では、この日もコーダ部でジェフが奏でている印象深いキーボードの
フレーズが大変良く、この曲をより色彩豊かなものにしている。また凄まじい迫力を内包した
「Sole Survivor」のアンサンブルではその音の粒が揃った一体感がたまりません。(^_^)
アンコールの「Ride Easy」では再びスティーヴの指先が冴え渡っています。
硬めの音で綴られてゆくその音のイメージは、夜の漆黒の闇に吸い込まれてしまいそうな
魅力溢れるグッドパフォーマンスです。またあまり目立たないですがが、カールの静かなアプローチも
ここでは他日の演奏以上に冴えていると思います。

2CDR。
ジャケ最低。つくづく思うけど、こんなジャケよく採用したよね。かなり損してると思う。
『ALWAYS PUSHING』 / (Sylph, SY-0845)
Live Date : TOKYO KOSEINENKIN KAIKAN, Shinjuku, Tokyo, JAPAN. / 2007. Mar. 08

東京公演二日目。この日は5日の大阪公演同様になかなか演奏が良いです。
Disc1ではまず「Wildest Dreams」でその見事に纏まったアンサンブルとグルーヴに
圧倒されます。ウエットンのボーカルの間の取り方や、ジェフの攻撃的なアクセント音も強烈です。
「One Step Closer」ではこの曲のスタンダードな魅力を引き出す様な演奏で、
曲の後半で溜めのアプローチに面白い箇所があります。ウエットンのボーカルに長めのエコーが
掛かっているのもユニークです。「Without You」はこの日コーラスがとても印象的。
アンサンブルの一体感も見事ですが、硬質なカールのドラム音が時折り曲に鮮烈なインパクトを
与えている点も非常に魅力的です。「Cutting It Fine」も面白い。キレの良いカールの
ドラミングに支えられながら、ジェフとウエットンが矢継ぎ早に曲想を彩ってゆきます。
「Don't Cry」も珠玉の演奏。ウエットンのボーカルアプローチも素晴らしいですが、
終曲前に前面に出てくるジェフのキーボードワークがかなり秀逸です。

Disc2では「Here Comes The Feeling」が非常に安定して深みのあるアンサンブルで、
曲想にも不思議な彩りが感じられるテイクです。しかもウエットンのボーカルが強烈で、
一度聴いたらずっと記憶に残る様な鮮烈な声を聞かせてくれるのも特徴です。
「Video Killed The Radio Star」はいつになく軽快な演奏で、
ジェフのサンプリング・アプローチが殊のほか良く、
「"Video,Video,Video..."」・・・と、立て続けに連発させているのもユニーク。
「Only Time Will Tell」はカールの金属音がとてもよく録れていて、その細かなアプローチが
色鮮やかに分かるのですが、「あぁ、この部分でこんな繊細な音を出していたのか!」という感じで、
これは新鮮な発見があると思います。「Sole Survivor」もかなりドラマティックな演奏で、
ウエットンのボーカルに強めのエコーが掛かった面白い演奏が聴けます。アンサンブルも極上なうえ、
ここでもジェフの「"Sole,Sole,Sole..."」というスクラッチ気味のサンプリング・アプローチが
あって大変面白い演奏になっています。

2CDR。
ジャケ最低。最低。最低。
『SEE THINGS』 / (Sylph, SY-0846)
Live Date : TOKYO KOSEINENKIN KAIKAN, Shinjuku, Tokyo, JAPAN. / 2007. Mar. 09

東京公演3日目。
Disc1は「Time Again」でカールが時折り印象的な金属音を入れており、
曲に新しいアクセントの彩りを与えています。「Wildest Dreams」は
ウエットンのボーカルにエコーが掛かっていて一味違う曲の印象を与えて
いるのが興味深いです。「Without You」はここでもカールのドラムが素晴らしく、
中盤ではジェフもキーボードの鮮やかな旋律で前面に出てきて曲に彩りを与えており、
全てのアンサンブルが静かに消えてゆく様子は圧巻です。「The Smile Has Left Your Eyes」も
この日はかなり秀逸。静かな曲想の中をウエットンが朗々と声高らかに、そして
優しく歌い上げる様子は絶品です。更に「Don't Cry」では曲の終盤でジェフが
エレキピアノで他日では聴けない印象的なフレーズを弾いているのですが、
これがまた彩り見事な絶妙のフレーズで、こちらも聴き逃せないポイントでしょう。

Disc2で先ず注目したいのは「Here Comes The Feeling」でのウエットンの艶やかな声。
演奏はミスが若干目立ちますが、それをカバーして余りある力強いボーカル・アプローチが秀逸です。
「The Heat Goes On」はこの日ビートが大変気持ち良いテイクで、曲の随所で絡んでくる
ジェフのキーボードがまた大変味わい深いです。後半のカールのドラムソロも他日以上にフレキシブルで、
手数の多いその匠の技と迫力にはこの音からだけでも充分に凄みが伝わってくると思います。
「Ride Easy」はこの日かなりナチュラルなイメージの曲想で、どこか押し殺したような
静けさがある独特のもの。曲の後半で聴けるジェフとスティーヴのメロディの絡みが、
ここでは他日以上に美しく儚い様相を呈しています。「Heat Of The Moment」はこの日も大団円。
演奏は安定しており、そして軽やかで、愉しく演奏している様子が伝わってきます。
曲の後半、バンドと観客の声の掛け合い中にウエットンは何度も「Thank You!」を連発していますが、
演奏がまだ終わっていないうちにこうして御礼を何度も言うのはなかなか珍しい光景だと思います。

2CDR。
安易にCG効果のみを多用してジャケを創るのはいかんよ。
せっかくの素晴らしい収録内容が泣いています。(-_-;)
『MESSING 'ROUND』 / (Sylph, SY-0847)
Live Date : C.C.Lemon Hall(a.k.a, Shibuya Kokaido), Shibuya, Tokyo, JAPAN. / 2007. Mar. 11

来日公演最終日。
この日は序盤でスティーヴのギターミスが目立ちますが、「Roundabout」ぐらいから演奏に纏まりが現れ始め、
「Without You」でほぼ完全に立ち直り、音に確かな手応えが感じられる様になります。
「Cutting It Fine」では後半のジェフのソロでプリセット・ミスにより音のタイミングが半拍ズレて
いますが巧く誤魔化しており、これはこれで面白い効果を生み出していると思います。
また「Fanfare For The Common Man」も大変熱の入った演奏で、パフォーマンスにバラつきが目立った
2006年秋の公演と比べると別物の様です。また序盤で酷かったスティーヴのギターアプローチも
この曲では絶品の輝きを見せています。

そしてこの日一番の出来と思えるのが「The Smile Has Left Your Eyes」。
演奏が図抜けて良く、夢想の如き煌きを放つウエットンの熱唱が素晴らしいです。
「Here Comes The Feeling」はここでもスティーヴのギターにオリジナルの凄みが感じられ、
彼のこのギター音でないと曲がしっくりこない事を改めて感じさせてくれるグッドパフォーマンスです。
「The Heat Goes On」では曲の前半でスティーヴが面白いアプローチでギターを鳴らしています。
「Only Time Will Tell」は曲の後半でジェフが効果的にシンセ音を入れているのも興味深く、
コーダではリードのメロディを弾いてから終わるという独特のアプローチが聴けます。
「Sole Survivor」も大変力強い曲想で演奏しており、その表現力に底知れぬ凄みを
感じさせてくれます。

2CDR。
ホントどうにかならなかったのかねぇ、このジャケは・・・。
せっかく内容が良いのに勿体無いですよ、こういう安易なデザインのジャケは。
SYLPHレーベルに専属デザイナーか居るのかどうか知りませんが、
もう少し購買欲をそそる様な、或いはコレクターズアイテムとして嬉しく思える様な
センスの良いジャケにして欲しいものですよね。(-_-;)
『LAST NIGHT IN TOKYO』 / (AFOMOA-2007A/B)
Live Date : C.C.Lemon Hall(a.k.a, Shibuya Kokaido), Shibuya, Tokyo, JAPAN. / 2007. Mar. 11

東京公演最終日。
同一の既発タイトルとして、上段で紹介している『MESSING ROUND (Sylph, SY-0847)』が
ありますが、本作は別マスターを使用しています。音質は『MESSING ROUND』とさほど変わらない程度の
良質な音で収録されていますが、厳密に聴くと本作の方が僅かに音が遠いです。但し、シンバル等の
金物系の音は本作の方が良い音で収録されている事を特記しておきます。

しかし、本作の目玉はなんと言ってもDisc2−(8)〜(12)にボーナストラックとして収録されている、
最近話題のモニター・ミックス音源でしょう。今回の日本公演ではウエットンのイヤー(耳)モニターが
無線で配信されていて、その無線用電波を民製の受信機で傍受しオーディエンス録音とミックスしたものが
このDisc2−(8)〜(12)に収録されています。ちなみに収録されているのは、本作のDisc−1から収録されている
同3月11日公演の冒頭5曲。これはウエットン自身がこの日の公演中に耳で直に聞いていた音なので、
その意味でも興味深いと思います。

という訳で、本作はエイジアのブートとしては初となるモニター・ミックスの音源ですが、
演奏中のメンバーに対して無線で飛ばされた音を盗聴して収録するという行為の是非については
賛否両論あると思いますが、しかしながらこれはファンなら一度は聴いておきたい重要音源である事は
間違いないと思います。またこのモニター音源はさすがに音質が良い為、「Time Again」の冒頭では
ウエットンがベースをスライドさせて音にアクセントを付けている様子がDisc1−(2)以上に
生々しい音で確認できたり、オーディエンス録音では若干分かり辛い細やかなヴォーカル・アプローチを
数多く決めているシーンも聴けて、5曲のみの収録とはいえ面白い発見と驚きが幾つも詰まった
驚愕の流出音源です。

2CDR。
2008年4月23日、25年振りのニューアルバム『PHOENIX』リリース(国内盤)。
それに伴う2008年"PHOENIXツアー"からの音源。
『TURNING STONE 2008』 / (BEAT SHOT RECORDS, BSR-070/071)
Live Date : Turning Stone Resort & Casino, Verona, N.Y, USA. / 2008. Apr. 15

2008年の日本公演直前に行われたニューヨークでのライブを
サウンドボード収録した音源。Disc1−(3)では、サウンドボードの醍醐味
としてカールの細やかなドラム捌きが明瞭な音で愉しめますが、
(4)でも終曲手前の鐘が鳴る音の後ろでこんなに繊細なシンバル音を出して
いたのかと、再度カールの手腕に驚かされると思います。
(7)はハーモニーとリズムに弾力感とスピード感が混在したスリリングな曲想で、
会場の席で聴いたらかなりカッコいい演奏だったのではないかなぁ。
熱唱が胸を打つ(10)及びアコースティックの(11)は、卓音源のせいか
ウエットンのソロが続いている様な印象があります。しかしながら(12)は
卓音源ならではの各楽器の繊細な音が耳に大変心地良く、その宝石を
ばら撒いた様な美しいハーモニーに格別のリスニングタイムを過ごせます。(^_^;)
(13)もウエットンのダンディで力強い熱唱に心奪われますが、曲後半の
歌詞が無くなってからの熱っぽい音の綴れ折りもこの日は実にドラマチックです。

中盤以降のDisc−2に移ると、まず(2)のやや溜めを効かせた重厚感溢れる表現が
印象的。(3)での各楽器のデリケートな音の出し方も卓音源ならではの興味深さがあると思います。
(6)はこの日なかなかの好演奏。面白いのは、それまでは前面で目立った音で弾いていたハウのギターが、
3分54秒付近から始まるジェフのキーボードのソロ部分から控え目な音で目立たないコードを弾き始める点。
ドラムソロ終了直後からは再び目立つリードメロディーを弾き始めてゆくのですが、
こうした細やかな音量分配の様子が明確に分かるのもサウンドボードならではだと思います。
アンコールの(9)は、(3)と同様にこの日はやや溜めを効かせたズッシリした雰囲気があって
聴き応えのあるパフォーマンスとなっているのですが、残念なことに曲終演手前、
ハウのギターソロの途中5分13秒付近でフェイドアウトして終わっています。
うーむ・・・。(+_+)

ステレオサウンドボード音源なので音質面は特に不満を持つ事は無いと思いますが、
唯一Disc2−(3)の3分12秒付近で一瞬だけ音飛びがあります。
ウエットンのベース音がやや小さめの収録ではあるが、演奏そのものを愉しむには
なかなか良い一枚だと思います。
2CD-R。
『BRIGHTEST WINGS WEST』 / (Sylph, SY-0930)
Live Date : KOUSEINENKIN HALL, Osaka, JAPAN. / 2008. May. 09

2008年5月の日本公演2日目、大阪公演の音源。オープニングSEに続いて始まる
冒頭(2)は僕が観に行った初日の博多公演よりスムーズな流れで、
なかなか良好なショウの滑り出しとなっています。(4)は最近の演奏に感じるリズムの
モタつきがやや目立ちますが、カールのドラムソロの後、キーボードで風の音の様なSEが
入っているのは珍しいと思います。(6)はリズム隊に低音のパンチが効いた演奏でありながら、
キーボードの高音が序盤で変に目立っている箇所があり、サウンドチェックの甘さが少し
垣間見えたりする面も。(^_^;)しかし曲終盤手前では、ハウがコードでリズムを刻んでいるという
ちょっと珍しいアプローチが聴ける事は特筆されると思います。(7)は一転して見事な演奏で、
曲本来が持っている鮮やかな躍動感を存分に発揮したパフォーマンスを披露。
(10)のウエットンのソロは、この日少しカントリー調に歌っているのが実に興味深いです。

ショウ後半のDisc−2では(1)(2)と、立て続けに素晴らしい演奏が続いてゆきます。
特に(2)は前日の博多公演を観ても感じた事ですが、ここにきてひとつの完成形を
呈しているかの様な好演奏。(7)はモタつきの無いスムーズな演奏で、弾力感のある
アンサンブルが魅力的です。カールのドラムソロに移る箇所も、トーンのピッチを下げてから
始まってゆくという非常にカッコいい演出がここではバッチリ決まっています。(^_^)
アンコール(11)では2時間演奏し続けてきたというのに目が覚める様な鮮烈さが音に宿っていて、
最後までボルテージを上げ続けるこの演奏は強烈。これは凄いです。

音質面で付け加えておくと、Disc−1の数箇所でマスター音源に起因する音割れが
生じている箇所があるものの、全体としては聴き易い及第点の音質だと思います。
2CD-R。

『OSAKA 2008 - IN FRONT OF HOWE』 / (※This is a Bonus Gift item CDR of a Bootleg CD Shop)
Live Date : KOUSEINENKIN HALL, Osaka, JAPAN. / 2008. May. 09

西新宿某ショップでお馴染みの、2タイトル同時購入すると貰えるギフト盤。
2008年5月9日・大阪での演奏をフル収録した音源なのですが、この録音最大の
特徴は何と言っても大阪厚生年金会館大ホール最前列・ハウのド真ん前にある席
(※A列20番台)からの録音となっている点でしょう。ギターが直に鳴るアンプから
出る生音を遮断物一切無しの状態で記録しているだけにハウのギターが終始"オン"
の状態で聴こえるという、大変ユニークな音像が魅力です。

録音は開演前の場内SEから始まりますが、このDisc1-(1)冒頭の00分28秒付近で場内
スタッフから「お座り戴けますか?後ろの方に迷惑ですので・・」と注意を促されて
いるシーンが含まれています。これは本作を録音したテーパー、西日本最強さんによ
ると「最前列から率先して盛り上げようと立ち上がったら注意された為」との事ですが、
しかしこの「後ろの方に」という最前列ならではのひと言が、これから始まるサウンド
を開演前から高めてくれます(^_^;)。ショウはこの日も「Daylight」から始まる当時
らしい異例のオープニングとなっており、クッキリ浮き出たギターの出音を中心に
中〜低音域に厚みを感じる最前列特有のサウンドがシャープに立ち上がります。ギター
が浮き出ているぶん他の楽器やボーカルの出音が若干弱めではありますが、それでも
満足出来るレベルで録れているんじゃないでしょうか。少なくともブート慣れした
方なら充分聴けるレベルだと思いますし、「Only Time Will Tell」の冒頭や中盤の
アコースティック・セット(※特に「Ride Easy」は極上です)などの静かな部分
ではギターがやや引っ込むぶんサウンドバランスが良好になるので、見通しの良い
クリアな音像が楽しめると思います。

それとこの録音が面白いのは別ソースとの聴き比べが出来ることでしょう。例えば
「Wildest Dreams」の開始直前では付近のオーディエンスがバンドかウエットンに
向かって「お帰り!」と叫んでいるシーンが聴こえますが(00分00秒)、この声が
Sylph盤の『BRIGHTEST WINGS WEST (Sylph, SY-0930)』(ひとつ↑の項参照)でもやや
離れた位置から聴こえており、両録音の位置関係がぼんやり伺えるのも面白いトピッ
クスです。本作は録音位置やや左側から「お帰り!」が聞こえるのに対し、上記の
Sylph盤はやや後方頭上方面(?)から聞こえている印象があるため、1階席と2階席の
ディフ・ソースの違いから来る面白い音像差が伺えます。また「Time Again」の
終曲後に「ジョ〜ン! ジョ〜〜ン!」「カ〜〜ル!」と録音機付近で叫んでいる観客の
声(5分01秒付近〜09秒付近)が目立って聴こえますが、これも先の「お帰り!」と同様に
Sylph盤でも聴こえており、ディフ・ソースの音像差が分かる面白いシーンです。

「Roundabout」もギターが大変目立つ間近な音で収録されていますが、ここはエイジア
によるイエスの楽曲演奏というよりも "プログレ歴戦のメンバー3人を従えてリードする
ハウ" という構図がその音像から感じられ、味わったことの無い新鮮な感覚に陥るんじゃ
ないでしょうか。「Time Again」も中音域の肉厚で豊かなレンジの重みが感じられる音像
となっており、そのサウンドの中をぬいながら本来のオリジナルなギター響きが魅力的な
旋律を弾き出してゆく様子が絶品です。そしてハウのソロタイムや「Voice Of America」
からのアコースティック・パート以降はギターを持ち替えた為か全体音のバランスが特に
良い透明感溢れる音像に変化するのですが、中でも「Ride Easy」は微細な弱音まで見事に
拾った極上の音で記録されているので、ひと時も耳を離せません(^_^)。「Open Your Eyes」
では随所で頻繁に行われるギタートーンのスイッチングによる音色の切り替えの様子(※
リズムを刻む・メロディを響かせる)が綺麗に録れており、この辺りは後のサムによるハード
タッチ一辺倒のギター・アプローチと比べると改めてその表現差に驚かされます。

一方「Without You」の様なゆっくり動いてゆく中音域の重厚な響きも、音割れする事無く
完璧に捉えていますし、「The Court of the Crimson King」では4人のコーラス・ハーモニー
がしっかり聴こえる点にも注目です。GRAVITASツアー日本公演では「Valkyrie」冒頭で入る
コーラス等を、予め録音されたコーラスにウエットンとダウンズの2人だけが声を乗せてやり
過ごしていましたが、ここでは4人が生コーラスできちんとハーモニーを重ねている様子が
克明に聴いて取れるので、ウエットンがこのバンドに常々求めていた「歌えるギタリスト」
としてのハウ、そしてエイジア・サウンドの在り方を08年当時の演奏から改めて理解する事が
出来るんじゃないでしょうか。逆に言えばあの頃のエイジアがショウの目玉としていた「宮殿」
や「Roundabout」は、ハウがしっかり歌えるギタリストだからこそ演奏可能だったと気付かせ
てくれる録音とも言えるでしょう。

当時のツアー・タイトルが"The All Four Original Members of ASIA Japan Tour"だった様に、
リユニオン・エイジアの目玉は何と言ってもハウが居た事だったと思います。しかし何故か、
ウエットンのベースや声にスポットが当たるタイトルはあっても、ハウにクローズアップした
タイトルは当時のどの既発盤にも例がありませんでした。それだけにこの録音は非常に興味深い
ものだと思いますし、ファンなら一聴の価値大だと思います。

音質89点+α。
2CDR・ボーナスギフト盤。
『KEEP YOUR EARS FOR THE WETTON』 / (SEE NO EVIL RECORDS inc, SNE-026〜029)
Live Date :
(Disc1〜2-(9)) : INTL FORUM TOKYO, Kanda, Tokyo, JAPAN. / 2008.May.12
(Disc3〜4-(10)) : C.C.LEMON HALL (a.k.a, Shibuya Kokaido), Sibuya, Tokyo, JAPAN. / 2008.May.13
(Disc2-(10〜14)+Disc4-(11〜13)) :
CHUKYO UNIVERSITY CENTER For CULTURE & ARTS (AURORA HALL), Nagoya, JAPAN. / 2008. May. 11

2008年来日公演音源の決定版。
東京で行われた2公演を完全収録した4枚組のタイトルがイヤー・モニターミックスで収録されているのですが、
どちらもウエットンが使用していたイヤー・モニター・ソースを使用しており、
一音一音が鮮烈明瞭な超高音質で収録されています。
あまりの生々しさ+収録音のクオリティの高さにブッ飛ぶよ、コレ。(^_^;)

Disc−1を掛けると、冒頭(2)からいきなりモニター音源特有の鮮烈な音が耳を襲います。
しかしそれ以上に演奏レベルがこの日は他日と桁違いで、アンサンブルのズレが微塵も無い事に驚かされます。
新曲(5)は音質以上に素晴らしい演奏で、この瑞々しい躍動感に満ちたプレイは一度聴いたら
忘れられない鮮烈なアタックを内包していると思います。(10)のウエットンのソロは、
アコギの繊細で小さな音までがバッチリ収録されているのだけど、これに彼の歌声が明瞭な音で
被さっているので、会場で実際に聴いたもの以上に生々しく感じられるんじゃないかと思う。
(13)は後半4分33秒からの展開が圧倒的。まさに83年の続きというか、あの頃のポテンシャルと
寸分違わぬ演奏がここで繰り広げられており、これは僕と同様に往年のファンであればあるほど
一聴の価値ありの演奏だと思います。

続くDisc−2では、(4)でこのイヤーモニター音源の醍醐味が感じられます。
まず冒頭でウエットンが使っているメガホンですが、これのスイッチを
ウエットンが指先で入れていると思われる音が0分13秒〜14秒に入っていたり、
実際にウエットンの耳(或いは、彼の周囲1メートル以内)ではこんなふうに聞こえて
いるのかというメガホン使用中の、ステージから会場に向かう音の響き方は興味深いです。
(9)は熱演で、ウエットンの弾力性のあるベースラインが跳ね回りながら耳に響いてきます。
(10)〜(14)は、前日5月11日の名古屋公演中から抜粋された音源。
Disc−4の後半(11)〜(13)にも同じく名古屋公演からの音源がボーナスとして抜粋収録されているので、
これについてはまとめて後述します。

Disc−3と4は、日本公演最終日を完全収録。下段の別枠で紹介しているタイトル
『BRIGHTEST WINGS EAST (Sylph SY-0931)』と同一の音源ですが、
本作は勿論イヤーモニター音源なので、全く別物と考えた方が良いです。
音質面で特筆されるのは、Disc−1と2で聴けるほどのウエットンとの至近間が無くなり、
全体の音像バランスが良くなっている事でしょう。つまり、ウエットン以外の楽器が
Disc1・2以上に明瞭に(或いは、近く)聴こえます。収録内容は同じなので、
この13日の収録分に関する詳しい事は下段『BRIGHTEST WINGS EAST』の欄を参照して戴くとして、
ここでは本作のイヤーモニター音源ならではの特筆点を幾つか挙げようと思います。

まずショウ前半のDisc−3ですが、(3)のウエットンの歌い回しの細やかなニュアンスが、
この音質で聴くとより明瞭に聞こえるのが愉しいです。(7)は各楽器の音が透明感が素晴らしく、
低音もさほど濁らずにパンチが効いた音で収録されていますが、この(7)以降、CDにする際の
イヤーモニター収録とオーディエンス収録のミックス配分が少し変えられているのか、
ショウが終わるまで音が少しウエットンに近くなる印象があります(・・・僕だけか?)。
これにより彼のソロ(9)、及びアコースティックで披露されるこの後の(10)もウエットン独特の
声の色彩感が一層ダイレクトに感じられる音像になっているのも特徴かと思います。

1stアルバム完全再現を収録したDisc−4では、ベースラインの音の弾け方と
シンセのストリングス系のクリアさ、ヴォーカルラインの明瞭さなど、
トータルで聴く音の解像度が相変わらず素晴らしいです。中でも(4)と(5)、
そして(7)でのベース音でしょう。打弦の際に発生するうねりみたいな音の伝播の迫力が
この音源で聴くと圧倒されると思います。歌詞の一部を「Shibuya!」と変えて歌う(6)では、
カールの迫力あるドラム音がより明瞭な音で収録されていて気持ち良いです。(^_^)

ボーナストラックについて触れると、Disc2−(10)〜(14)、及び
Disc4−(11)〜(13)は5月11日・名古屋中京大学文化市民会館オーロラホールから
の演奏が抜粋収録されています。これもかなりハイレベルな超優良音質ですが、
イヤーモニター録音をメインに使用しつつも高品質のオーディエンス録音をミックスしてあり、
バンド音全体を重視したDisc−3・4の音像に近いものがあります。
Disc2−(10)〜(14)では、まず(10)の他日公演に負けないド迫力の演奏に胸が熱くなりますが、
やはりここでもウエットンの声の魅力が炸裂した(11)〜(13)のパフォーマンスが強烈です。
(14)はこの日ストレートな曲想表現が大変魅力的ですが、残念な事にオーディエンスの一人が
手拍子を叩いている音が終始入っていて、これが意外と耳障り。(+_+)
Disc4−(11)〜(13)では(12)でのカールのシンバル音、そしてハウのスチール・ギターの
艶やかな音が綺麗に収録されています。(13)はこの日ややスローテンポな演奏ですが、
中間部突入前の2分42秒から始まるベースの鮮烈なアタック音が終曲まで鮮明でカッコいいです。

2公演の完全収録に加えてボーナスも8曲入った大ボリュームであるばかりでなく、
イヤーモニターの極上音質に加えて演奏も文句無しという、もう何も付け加える
事の無い強烈なタイトルだと思います。ファンなら絶対必携でしょう。
・・・但し、これだけ優良な収録内容であるにも関わらず、ジャケ裏のクレジットには
日付けの間違いや曲表記の忘れ等、かなり初歩的でお粗末なミスがあるという点も
念の為に付記しておきます。(+_+)
4CD-R。
『BRIGHTEST WINGS EAST』 / (Sylph, SY-0931)
Live Date : C.C.LEMON HALL (a.k.a, Shibuya Kokaido), Sibuya, Tokyo, JAPAN. / 2008. May. 13

1stアルバムをライブで完全再現する事で話題になった2008年日本公演最終日の音源。
特別プログラムの為にセットリストも特別なものになっており、
大変聴き応えのある内容になっています。Disc−1冒頭(2)ではいきなり見事なアンサンブルで
スタートしており、スムーズに流れてゆくその曲想にはちょっとした違和感さえも感じさせてくれます。
新曲(3)も格別に引き締まったグルーヴ感と抑揚感があって、これまた今回の日本公演では
一番のパフォーマンスと言えるんじゃないでしょうか。カールの定番MCが一切入らず、
唐突に始まってゆく(4)が終わるとようやく最初の「コンバンワ」という挨拶が入りますが、
ここまで一気に駆け抜ける様な流れで続いているのもこの日の特徴でしょう。
(6)もまた音の粒が揃ったパンチのある演奏で、(7)にしても一体どうしちゃったの?と思うほどに
際立つ色彩感を伴った曲想表現で驚かされます。(13)もスピード感のあるプレイで、
他日の様に妙にダレたモタつきが無い好演奏。ドラムソロ突入時の全体音のシフト処理もこの日はユニークで、
ここもまた聴き処のひとつだと思います。

そしてDisc−2は1stアルバムの完全再現というこの日のスペシャル・プログラム。
(2)は珍しく冒頭でウエットンのヴォーカルにエコー処理が施されています。
(4)は2008年から基本のライブセットから外されましたが、久し振りの演奏にも関わらず
弾力性に富んだプレイは健在。(5)は冒頭のアンサンブルから妙に歯切れの良い演奏で、
他日とは一風変わった印象を感じると思う。ウエットンの強烈なベース・アプローチと、
ハウの鮮烈なギターサウンドのハーモニーがこの日独特のインパクトを与えています。
(6)では歌詞の一部を「Shibuya!」と変えて歌っており、曲後半のカールのドラムソロも
ブレイクを挟む点以外はアルバムにほぼ忠実な叩き方をしている事に注目。
(7)もいつになく絶品で、特に2分55秒付近での急にファストになる盛り上がりは
溜息が出るほどカッコいいです。(^_^)コーダ部でささやかに鳴るシンセ音の処理も聴き処でしょう。
(8)も久し振りの演奏ですが、アルバム収録順の妙というか、この位置でこそこの曲が
一番惹き立つという感慨深さの様なものがあり、それはウエットンの声量と声質の魅力が満載の(10)で
締められる事でアルバムとしてもライブとしても最高の興奮と余韻を残しています。
個人的に残念なのはここで続けて「Ride Easy」が披露されなかった事ですが、その代わりに
1990年のパット・スロールを配した来日公演以来、実に18年振りに(10)でセットを締めている点に
バンド側のささやかな意図を感じます。

音質はオーディエンス録音としては文句無く素晴らしいです。各楽器のバランスも申し分なく、
Disc−1ではウエットンのベースラインが特に良く聞こえて実に気持ち良いです。
・・・しかしながら、上段で紹介している同日13日を収録したイヤーモニター音源タイトル
『KEEP YOUR EARS FOR THE WETTON (SEE NO EVIL RECORDS inc, SNE-026〜029)』には
どうしても音質が一歩劣ると言わざるを得ません。(+_+)
でも、ブート音源が本来持つ「あの音の質感」として耳に馴染むのは、
間違いなく本作である事も特記しておきます。
・・・というか『KEEP YOUR EARS FOR THE WETTON』が凄過ぎるんだけど、
イヤーモニター音源ってやっぱりちょっと反則だよねぇ・・・。(+_+)

2CDR。
『LUZ DE DAS』 / (LIMITED DISCS, LTD-015A/B/C)
Live Date : LUZ DE GAS, Barcelona, SPAIN. / 2008. May. 19

日本公演を終えた僅か数日後、5月19日のスペイン・バルセロナで行われたショウを収録した
2CDR音源と1DVDR映像付きの豪華パッケージ。どちらのディスクも同日19日の模様を捉えていますが、
別マスターからの収録(つまりDisc−1・2はDisc−3の映像落としではない)です。
「Book Of Saturday」が披露され、「Ride Easy」がセットから外されている点も興味深いショウです。

まずDisc−1では(2)の冒頭0分14秒〜17秒で音質のレベル変化がいきなり発生。
これは恐らく録音機材の収録位置を変えた為でしょう。0分19秒付近から音質が安定し、
以後そのままややこもり気味の音質(布か何かをマイクの上に一枚被せた様な音質)で続いてゆきます。
(4)後半のドラムソロは、日本公演終盤からアルバム版にほぼ忠実なこの叩き方
(しかしブレイク部は残したまま)を続けている事が確認出来ます。(7)はやや速めの曲想。
ウエットンのヴォーカルにも所々でエコー処理が施されており、また中間部のギターソロでは
パックに図太いシンセ音が目立っていて、他日とは一味違うカッコ良さで曲が進んでゆきます。
(10)のウエットンのソロでは、この日は何と「Book Of Saturday」を披露。コーダ部が90年代の
ソロ時代に披露していたものとは少し変わっているのが面白いです。(11)はここでも曲の後半で
ウエットンのヴォーカルがエコー処理されていて、幻想的なイメージが強調された曲想になっています。
(12)は、本来なら「Ride Easy」が演奏される位置ですが、この日はセットから外されて
「Open Your Eyes」をプレイしており、ウエットン独特の甘くてダンディズムに
溢れた熱唱が随所で炸裂しています。

Disc−2では、(1)のインタープレイがますますスリリングな展開で、ここでは
カールとハウの掛け合いに加えてジェフのシンセが時折り印象的な音色で
うねっているのが面白いです。そしてこの日は(4)が絶品。音質、或いはクラブと
いう会場の狭さのせいかもしれないですが、不思議な浮遊感とマジックが曲全体に
漂っていて、これは一聴の価値ありだと思います。(7)はDisc−3の映像を観なくても
違和感を感じると思いますが、後半でジェフのショルダー・キーボードの音が
なかなか出ないという機材トラブルが発生しています。アンコール(8)はハウが大活躍。
スチール・ギターの音の伸びが終始良く、演奏もリズミカルなうえ、
曲間の細やかなアプローチが決まっていて気持ち良いです。オマケに、終曲手前でジャカジャカと
フレーズを掻き鳴らす一幕もあるので、ここもまた聴き処でしょう。
(9)はこの日、ウエットンの歌唱表現が随所でかなり力強いです。終曲手前での
カールの暴れっぷりも凄まじいものがあり、ハーモニーの強烈な余韻を残して終曲しています。

Disc−3は同日の模様を収録したDVD映像。カメラは中央やや左寄り(ハウのほぼ正面ぐらい)で、
会場はスタンディングではあるが大体15列目ぐらいの位置からシューティングしていると思われます。
デジタル映像特有のコマ落としの様な少しカクカクした動きに加え、カメラが固定されていない為に
終始手ブレで動いているという、いわゆる"船酔い映像"です。(+_+)
(1)は曲の中盤から収録。(2)は冒頭の30秒ほどがカットされており、
1コーラスと少し進んだところでまたカット。曲の中盤に飛びますが、
演奏後半に差し掛かった辺りでまたカット。(3)は曲のかなり後半から収録がスタートして、
そのまま終演まで続きます。(4)は冒頭20秒程経ってから映像が始まり、暫くはそのまま続くものの、
後半の歌詞が無くなってインストになる付近でいきなりカット。(5)は殆ど開演直後から映像が
スタートしていますが、なんとAメロの1フレーズ目が終わるか終わらないかのうちにカットという
僅か40秒程度の収録。これは萎える・・・。(+_+)
(6)は曲の中盤から始まって終演まで続き、ここからショウが終わる(12)までノーカットで
収録されているものの、唯一(9)のドラムソロ部分のみがほぼ丸ごとカットされています。
Disc−2の音源のみを聴いても違和感がある(10)後半のショルダー・キーボードのトラブルも
ここにバッチリ映っていますが、不思議な事にジェフ本人は音が出ていると思っているらしく、
ローディが後ろから出てきて音が出る様にするまで何事も無い様に笑顔でフロントで弾き続けるという
奇妙な光景も鑑賞出来ます。

本作のタイトルにもなっている『LUZ DE GAS』というのはこの映像で観ても分かる通り
それほどキャパが大きくないスタンディング・クラブなので、本作Disc1〜2での収録音も
小さな箱ならではの至近感が強く感じられます。3枚のディスクとも音質は良好の部類に入ると思いますが、
その親密さを感じさせる音の距離感こそがこの音源の最大の魅力でもあると思います。

2CDR+1DVDR。
2009年 / PHOENIX TOUR continued...
『ASIA AGAIN』 / (Blue Cafe - 213A/B)
Live at : Kantine, Cologne, GERMANY. / 2009. March. 29

セットから「The Smile Has Left Your Eyes」が外され、代わりに
「Heroine」を披露していた時期の音源。フェニックス・ツアー後期の様子を
捉えた演奏充実のタイトルです。

「Only Time Will Tell」はのっけから素晴らしい立ち上がり。アンサンブルもよく
纏まっており、曲想が満開に花開いているようです。途中2分58秒付近からボーカルに
エコーが深く掛けられているのもユニークです。「Wildest Dreams」ではリズミカルな
ドラムと歌唱表現に加えてギターがブレずに安定したトーンを出しており、キメの
ギタートーンもこの日は大変冴えていると思います。「Never Again」も同様で充実した
演奏をしているのですが、1分40秒付近〜2分02秒付近まで奇妙な雑音(ギター?をアンプ
直結で爪弾いている様な音)が混じっています。これ恐らく会場の音ではなく、たぶん
この盤に落とす際に紛れ込んだ音なんじゃないかなぁ。雑だなぁ・・まったく。(-_-;)
「Roundabout」も演奏音に良質のケミストリーが感じられ、演奏し始めた初期の頃と
比べると別物のよう。「Time Again」も一体どうしちゃったの?というくらい
ビート感に溢れたパフォーマンスで、曲の持つ運動性が実に良く出ていると思います。
これかなりかっこいいですよ。その後のダウンズのソロもドラマティックで秀逸です。

定番のアコースティックタイムでは、この日もハウのギターソロが素晴らしいのだけど、
この日それ以上に際立っているのがウエットンのソロ。「Book Of Saturday」を
アコースティックで披露しているのですがこれがもう絶品。たっぷりと溜めとフックを
効かせた演奏で、まさにアメイジングのひと言です。続く「Don't Cry」も繊細な
音色の煌きが魅力的で、ギター(これはハウ)のアプローチとピアノの対旋律が
際立って綺麗です。そしてこの日は「The Smile Has Left Your Eyes」がセットから
外され、代わりに「Heroine」を披露。ピュアな曲想がロマンチックに鳴り響き、
それを朗々と歌い上げるウエットンが何とも耳に心地良いです。中盤で録音機の周辺に
居るらしいオーディエンスの声が急に目立つ部分(3分22秒付近)があるんだけど、でも
その箇所以外は目立つ雑音もお喋り声も無く素晴らしい「Heroine」を満喫出来るのが魅力です。
「Open Your Eyes」も序盤から極上のパフォーマンスで、壮大なスケール感を感じさせる
ドラマチックな演奏に言葉を無くすほど。ここも大きな聴き処でしょう。

そして「Without You」がもう極上の演奏。この日は全体的に演奏レベル高いですが、
その中でもこれがこの日最高の演奏ではないかと感じます。音の表情の付け方、テンポの
緩急を巧みにコントロールしたサウンドドラマの盛り立て方、アンサンブルのシャープな
切れ等、これはそれらが渾然一体となった素晴らしいパフォーマンスです。
「An Extraordinary Life」も安定感抜群の引き締まったプレイ。3分48秒付近から始まって
ゆくギターの瑞々しい音色も見事ですが、あまり目立たないけれどもサウンド全体に的確な
表情を付けているドラムのアプローチも聴き処だと思います。終曲部でオーディエンスが
「♪...An Extraordinary Life」と、合唱で余韻を創っている様子もこの日ならではでしょう。
一方この日の「The Heat Goes On」は若干淡々としているのだけど、キーボードの装飾音と
アプローチに大胆なものがあってなかなか興味深いです。そこから突入してゆくドラムソロは
この日もおおよその定型タイプ。但し5分40秒付近から金物系のアプローチが目立ち始めており、
その後のオメガツアーでのソロで聴けるソロスタイルへの変化の兆しが感じられます。
ブレイクに入る直前で聞ける8分36秒付近〜46秒の表現も珍しいですね。

尚、本作はDisc-1のクレジットにお粗末なミス表記があるという困りモノ。(-_-;)
まず本来Disc-1のトラック(3)で演奏されている「Wildest Dreams」が未表記なうえ、
ダウンズのキーボード・ソロが何故かトラック2つぶんでクレジットされているので
その間のジャケ裏のクレジットが奇妙なズレ方をしています。
ディスクに記録されている実際の流れは以下の通り。
--------------------------------------
Disc-1

(3)Wildest Dreams
(4)Never Again
(5)Roundabout
(6)Time Again
(7)Geoffley Downes KBD Solo

※トラック(8)からは正しく表記されている
---------------------------------------
また、この音源の目玉でもある「Heroine」も【halloween】と表記されていて、
エイジアに興味も関心も愛着も無い人が盤を創ったことが伺えますのも残念なところ。
そして何と言っても文中でも書いた通り「Never Again」の1分40秒付近〜2分02秒付近で
入っているお粗末な雑音・・(-_-;)。収録内容は文句無く良いのだけど、メーカーの
そうした粗雑な仕事が目立って凄く損をしているタイトルだと思います。

最後に、収録音のクオリティはまずまず。音像もそこそこ近いですし、
透明感もまあまあ。可も無く不可も無い及第点のオーディエンス録音ですかね。
「Open Your Eyes」終曲後に録音機の位置を変えたのか周囲の人の位置が
変化したのか分かりませんが音の明瞭感が急に増し、暫くその音質で聞こえる様に
なります。しかし徐々に低下してゆき、ものの一分程度で元の音質まで戻ります。(^^;)

音質86点。
2CDR。
『TO BE OVER』 / (Amity-110)
Live Date : Gibson Amphitheater, Universal City, Los Angeles, CA, USA. / 2009. July. 07

エイジアとイエスのカップリング公演として話題となった2009年夏の音源。
エイジアの公演時間はほぼきっちり1時間で、単独公演のセットと比べると
駆け足気味のプログラムになっています。
これに加え、1時間枠なのにエイジアの曲以外のものが3曲も含まれており、
エイジアを観に来た人をというよりは、ショウを観に来た人を
愉しませようというショウマンシップが強く感じられる公演です。
演奏自体もこの日はソツなくこなしており、短い時間でこれだけ
幅広いレパートリーが鑑賞出来るなら、会場に来たフツーのお客さんは
大満足ですよね。反面、熱心なファンにはかなり物足りないと思いますが。(^_^;)
でも、もともとエイジアというバンドはターゲットをプログレファンではなく
一般の音楽ファンに向けていたのだし、ディープな音楽ファンや
エイジアマニアにとっては物足りないと感じるこの程度の軽いプログラムが、
バンド側にしてみればその理念に合ったものなのかもしれません。

Disc2と3は、このエイジアの公演後に行われた同日のイエスのショウ。
エイジアのページなのでイエスの公演内容についてアレコレ書くのも
どうかと思いますが、聴いていて感じた事を幾つか書いておきます。

まず何と言ってもボーカルですが、昨年後半のツアーに引き続き、
ジョン・アンダーソンの代理としてベノワ・デヴィッドがボーカルを務めています。
しかし去年公演時よりもずっとバンドの音に馴染んでいますし、
これだけジョンの声質=イエスというサウンドイメージが再現出来れば
充分ではないでしょうか。また、クリスがどれだけ大きい存在かも再確認
させられる内容で、名曲「Siberian Khatru」など、やはりこの人の
ベースがあの強烈な音で鳴っているからこそだと改めて感じます。

ハウは当然ここでもエイジアに続いてステージに参加していますが、彼の場合やはり
イエスの中での演奏の方が格段に良いパフォーマンスをしています。
「And You And I」での、この日の朗々と伸びのある鮮烈なギターワークはどうでしょう。
現在のエイジアでの、どこか表面的なプレイとは雲泥の差がある様に思います。
そんな彼がこの日突然披露したのがDisc2−(7)で聴ける「To Be Over」の
アコースティック・ソロ。これはなかなか珍しいプレイだと思うのですが、
これひとつ取ってみても、ここがエイジアではなく、イエスというホームグラウンド
だからこそ出来た余裕の表れなのではないかと思えてなりません。

ディスク3枚通して聴くと、エイジアは大衆娯楽のお祭りステージ、
イエスは国立劇場での舞台公演という感じがしますが、これは曲想の差と
バンドの理念に拠る処が大きいと思います。どちらにも良さがあるから、
どちらを否定・肯定する訳でもありません。しかしながらこの差は芸術と商業を
どう結び付けて考えるかという命題にもなっていて、それをフルボリュームで
聴ける本作は現代に於けるロック音楽のあり方を根本的に問うている様でもあります。
尚、Disc1のエイジア公演のみ(10)の冒頭から急に音がこもり気味になりますが、
それ以外は非常に音質良好のオーディエンス録音です。
勿論、どちらの公演もノーカット完全収録です。

3CDR。
『EXTRAORDINARY TRAVELLER』 / (Amity-114)
Live Date : South Shore Music Circus, Cohassett, Massachusetts, USA. / 2009. July. 25

エイジア+イエスという夢の競演終盤、ツアー19公演目の音源。
エイジアのショウはここでもきっちり1時間のショートプログラムで、
セットリストも完全に固定。クレジットを観た途端、もう聴き慣れたし
先の展開が読めるよとタカを括って聴き始めたのですが、演奏が始まって直ぐに
息を呑みました。久々に、ちょっと驚くほど優れた演奏内容だったからです。
音の表情に昨今あまり感じられなかったメリハリと艶があり、中でも(2)(3)(10)(11)の
鮮烈な演奏には改めて襟を正される様な聴き応えを感じると思います。
ウエットンの泣きを入れた歌唱も随所で光るものがありますが、
やはりバンド音としての説得力がこの日は決定的に違っている様に感じます。
間延びして退屈さを感じる時もある(9)もこの日は終始強烈で、
一体どうしてしまったのかと驚くはず。その(9)の途中に挟まれたカールのソロは
開始後直ぐに一度ブレイクが入るという珍しい展開もあり、これも意表を
突かれるポイントでしょう。
2006年以降のエイジアのライブに飽きてきた、先の展開が読め過ぎてつまらんと
お嘆きのハードリスナー(僕も同様)にこそ、是非聴いて戴きたい音源です。
聴き終えると、最近忘れていたあのエイジアの興奮が甦ってくる事を請合います。(^_^)

Disc2と3はイエスの公演。
上段で紹介している『TO BE OVER (Amity-110)』の7日公演と比べても、
相変わらず上質で格調高いパフォーマンスを安定して披露している様子は
流石という感じがします。唯一、この日の「Heart Of The Sunrise」で
予期せぬ演奏の乱れがありますが、そんなものは些細なこと。
ベノワにしても、この布陣をバックにしてサウンドイメージを崩さずに
奮闘している様子が実に素晴らしく、ここでも見事にジョンの代役を務めています。
バンドの一体感も良好で、「Tempus Fugit」など約30年前のDRAMAツアーの時と
殆ど変らない若々しさを感じてしまいました。

どちらの公演も音質は超優良。両公演ともオーディエンス収録ですが、
この収録音の良さはちょっと驚くと思います。

3CDR。
『UPPER DARBY/JACKSON JULY 2009』 / (Chooh LaLa : CLL-239-2CD 1/2)
Live at
Disc1-(1)〜(10) : Tower Theatre, Upper Darby, Pennsylvania, USA. / 2009. July. 28
Disc1-(11)〜Disc2-(7) : Northern Star Arena, Jackson, New Jersey, USA. / 2009. July. 26
Disc2-(8)〜(13) : South Shore Music Circus, Cohassett, Massachusetts, USA. / 2009. July. 25

2枚組・3公演が収録されたタイトルの中から、ここではDisc2後半、トラック(8)〜(13)に
収録されているマサチューセッツでの公演音源について触れています。
異例のショートセットながらも見事な演奏が聴ける好音源です。

「Wildest Dreams」はのっけからビート感溢れる鋭いアンサンブルが際立っています。
序盤でちょっとだけ演奏が崩れる箇所があるものの、曲の運動性がよく出た良好な
グルーヴが炸裂している様子は鳥肌モノでしょう。ウエットンもところどころで歌い方の
アクセントにやや変化を付けて歌っているのがユニークですし(※冒頭の歌詞第一節
"♪ all the generals"のところで既に分かる)、演奏面でも「Fly Away〜!!」の後から
入ってゆく後半の突入部は絶品です。5分38秒付近ではドラムが目立つアクセントを
放っていて凄くカッコイイ。(^_^)「Only Time Will Tell」もこの日はとても軽快かつ
伸びやかに曲想が花開いており素晴らしいですね。テンポも良いし文句無しの好演奏です。

「An Extraordinary Life」では周囲に居る女性の笑い声と会話がやや目立って
いますが、演奏はドラマティックで見事なもの。こんな良い演奏してるのに
それに全く耳を傾けず平然と会話したり笑ったりする外国人の感性を疑うよ。(T_T)
「Fanfare For The Common Man」もスピード感のあるスリリングなパフォーマンス。
中盤で入ってくるベースソロ→ギターソロ→キーボードソロの応酬の箇所は
ここでもかなり白熱していますが、この曲ホントに2006年〜2007年頃の
ガタガタ・ヨレヨレだった演奏に比べると格段に良くなりましたよね。メリハリも
効いているし、それでいてEL&Pではなくちゃんと「エイジア・サウンドとしての
庶民のファンファーレ」になっていて素晴らしいです。

「Sole Survivor」もメリハリが効いた躍動感のある演奏で見事。全体のアンサンブルも
実に小気味良くまとまっており、82年当時の表現とは明らかに違う魅力が炸裂していると
思います。曲の終盤、5分14秒付近から始まるドラムのミニマム的な繰り返しアプローチが
また非常に効果的な具合で曲の印象を強めており、カールの表現力とアプローチの巧みさが
よく出ている気がします。「Heat Of The Moment」では中盤の静かな部分(1分57秒付近)で
艶やかに鳴るキーボードの音色に注目。女性のコーラスっぽいサンプリングが施されており、
これが伸びやかに鳴り響いて何とも言えない浮遊感を演出しています。

・・ところでこの公演、セットリストを御覧になるとお分かりの通り
他日ではショートプログラムでもセットに入っている「Video Killed Radio Star」、
「The Court of the Crimson King」「The Smile Has Left Your Eyes」「Don't Cry」
というショウ半ばで通常ならやっている筈の4曲が演奏されていません。
本音源はこのタイトルの中ではボーナストラック扱いですし、ひょっとして
カットされているのかとも思うのですが、「An Extraordinary Life」の終演後から
「Fanfare For The Common Man」開始までの間にカットした編集跡が見当たらず、
ひょっとしたらこの日は本当にこの6曲のみという異例のセットだったのかもしれません。

しかしながら、そうして時間枠がタイトに決められているにも関わらずそれを
目一杯使い、素晴らしいショートセットを披露している様子は見事なもので、
どれも非常に聴き応えのある好演奏・好音源になっています。前記した通り、
この音源は本タイトルの中ではボーナストラック扱いの音源ですが、2009年初夏の
エイジアを見事にシューティングした名音源のひとつだと思います。

音質89点。
2CDR。
『UPPER DARBY/JACKSON JULY 2009』 / (Chooh LaLa : CLL-239-2CD 1/2)
Live at
Disc1-(1)〜(10) : Tower Theatre, Upper Darby, Pennsylvania, USA. / 2009. July. 28
Disc1-(11)〜Disc2-(7) : Northern Star Arena, Jackson, New Jersey, USA. / 2009. July. 26
Disc2-(8)〜(13) : South Shore Music Circus, Cohassett, Massachusetts, USA. / 2009. July. 25

2枚組・3公演が収録されたタイトルの中から、この欄ではDisc1〜2に跨いで収録
されているニュージャージーでの公演音源について触れています。
この日も時間枠がタイトに決められたショートセットのプログラムとなっており、
収録音が若干遠めなのが難と言えば難ですが、演奏そのものはこの時期らしい
パフォーマンスの安定感がよく出ていると思いますし、2009年にしか出せなかった
エイジア・サウンドの魅力も備わっていると思います。

ショウの立ち上がりとなる「Wildest Dreams」は、やや収録音が遠めなせいかサウンドが
のっけから痩せて聞こえますが、でも実はよく聴くとその演奏はかなり熱いものを披露
している事が伺える筈です。「Only Time Will Tell」もよく纏まったアンサンブルが
鳴り響いており、近くで聴いたら思わず体が動いてしまいそうな良質のグルーヴで充ちて
いると思います。そして同時に、パフォーマンスの安定感も抜群じゃないかな、コレ。
「An Extraordinary Life」ではウエットンの熱い歌唱が印象的。幾つかの箇所でボーカル
ラインにエコーが掛けられていて、前日の演奏とはまた違った魅力が出ていると思います。
ロマンティックでドラマティックなアンサンブルにも注目でしょう。

「The Court of the Crimson King」では演奏前にカールが出てきてオーディエンスを
盛り立てるという御馴染みのシーンが確認できますが、長尺なフルセットならともかく
こうしたショートセットでもそうした演出をやるというショウマンシップが微笑ましいですね。
中盤を過ぎた歌詞3番以降から音質が透明感を伴うものに少し変化し、神秘的な曲想がより
格調高く響いているように感じます。アコースティックの「The Smile Has Left Your Eyes」は
カントリーっぽい感じのギターアプローチが2009年ぽくて大変魅力的。各楽器が静かに
重なり合う繊細なアンサンブルも大きな聴き処でしょう。終曲手前で落ち葉が舞い散るように
ギターの音色が下降する様子も素晴らしいと思います。同様に「Don't Cry」でも
カントリーっぽいギターのアプローチがたまらない魅力を発しています。あまり目立ち
ませんが、ピアノの音色が淡く装飾されているのも良い感じじゃないかなぁ。

「Fanfare For The Common Man」も相変わらずの軽快なグルーヴが心地良く耳を
くすぐってきます。前日ほどの抑揚感は無いと思いますが、全員が愉しんで
演奏している様子がこの音からだけでもリアルに伝わってきますね。(^_^;)
「Sole Survivor」も力強い印象を前面に出していますが、この日はハウの好
パフォーマンスが目立って良い感じです。中盤2分57秒付近からの鋭く駆け巡る
アプローチはきちんとリズムに乗って着地していますし、終曲手前の
アプローチ(5分44秒付近)もドラマティックでなかなかのものだと思います。
「Heat Of The Moment」も磐石で安定感のある堂々としたいつも通りの演奏で
見事にショウを締めており聴いてて愉しくなってしまいます。4分14秒付近から
始まるスタッカート気味に刻むギターも心地良いです。

音質78点。
演奏音が若干遠め。一階席の後方で聴いてる様な感じです。
2CDR。
2009年 イアン・マクドナルド参加公演
『UPPER DARBY/JACKSON JULY 2009』 / (Chooh LaLa, CLL-239-2CD 1/2)
Live at
Disc1-(1)〜(10) : Tower Theatre, Upper Darby, Pennsylvania, USA. / 2009. July. 28
Disc1-(11)〜Disc2-(7) : Northern Star Arena, Jackson, New Jersey, USA. / 2009. July. 26
Disc2-(8)〜(13) : South Shore Music Circus, Cohassett, Massachusetts, USA. / 2009. July. 25

2枚組・3公演が収録されたタイトルの中から、この欄ではDisc1-(1)〜(10)に収録
されているペンシルヴァニアでの公演音源について触れています。この日は
イアン・マクドナルドが演奏に参加した数少ない公演日のうちのひとつでした。

さて、この日の「Wildest Dreams」も完成度の高い見事な演奏でショウがスタートして
います。グルーヴ感とスピード感溢れるパフォーマンスはまったくもって素晴らしい。
この音源ではドラムのシンバル音が割と目立つ印象的な音で収録されてるんですが、それが
逆に良いアクセントになっている気もします。「Only Time Will Tell」も大きな楽想が
ダイナミックにうねる様な演奏で聴き応えがあり、良質のパフォーマンスに聴いていて
浮き浮きするでしょう。同様に「An Extraordinary Life」も引き締まったアンサンブルが
魅力。この日もボーカルラインのキメでエコーが掛かっていますが2箇所のみで、近辺の
演奏(特に26日)と比べると曲想がストレートな印象に戻されている様に思います。中間部の
ギターとベースの絡み合いも生き生きしていて良いですね。「Video Killed Radio Star」も
相変わらず元気一杯の演奏。出だしでメインテーマが流れ出すと大きな歓声が上がって
おり、この楽曲セレクトがオーディエンスに歓迎されているのがよく伝わってきます。

そして「The Court of the Crimson King」。演奏直後に最初のフルートが入るシーンで
会場が沸いていますが、これ本当に特別な瞬間ですよね。演奏も完璧・・というか、
イアンの音が演奏に加わるだけで音がグッとクリムゾンらしくなるのは本当に不思議です。
中間部のフルートのソロもこの日限りの即興性に富んだ極上の旋律で、会場に居たら鳥肌が
立っているでしょうねコレは。もう聴いているだけで涙が出てきます。(T_T)
そのイアンに曲紹介されて始まる「The Smile Has Left Your Eyes」も実に見事な演奏で、
やはりここでもカントリー調のギターの調べが効果的に響いています。何てチャーミングで
切ない旋律なんでしょうこれ。続く「Don't Cry」もそうなんですが、ギターの音色が変わる
だけでこれほど大きく曲の印象が変化するって本当に面白いと思います。

「Fanfare For The Common Man」は冒頭で鳴るキーボードの旋律の終わりが他日よりも
長めに響かせての満を持してのスタート。切れの良いサウンドアタックが出だしから
全面に滲み出ており、熱いパフォーマンスが終始繰り広げられています。中間部での
各楽器のせめぎ合いもこの日は強烈で、この部分はこの公演の大きな聴き処でしょう。
「Sole Survivor」は前半ちょっと演奏に難アリなものの中間部付近からは本来の
持ち味を出した素晴らしいプレイをしており、3分07秒付近の鋭くかけ巡るギターの
旋律を皮切りにして後半部のアンサンブル(4分37秒〜)などは前半と同じ人達が演奏
しているとは思えません。(^_^;)「Heat Of The Moment」もイアンが再び参加しての
演奏ですが、ここでは音を合わせているだけでさほど目立ってはいません。

最後に収録音についてですが、どうやらマスター音源の録音位置が会場の左側(※或いは、
アンプの左側に居たのかもしれない)だったようです。このため、収録音像全体がセンターに
無く、サウンドがやや右側から聞こえてくるのが特徴です。でも音質もそれなりに良いし
一公演ノーカット収録です。

音質80点。
2CDR。
『ASIA with IAN McDONALD, WESTBURY JULY 31 2009』 / (ChoohLaLa, CLL-242-1CD)
Live at : Capital One Bank Theatre, Westbury, New York, USA. / 2009. July. 31

イアン・マクドナルドが参加した事で話題になった公演日(・・のうちのひとつ)。
但し全曲ではなく、「The Court Of The Crimson King」と「Heat Of The Moment」の
2曲のみでのゲスト参加です。予想通り"宮殿"でのプレイは感涙モノ(T_T)。

「Wildest Dreams」は疾走感溢れる演奏で、相変わらずウエットンがこの時期独特の
節回しで歌い上げているのが印象的。「Only Time Will Tell」もスピーディな演奏で、
メリハリの効いたビートアタックが良い感じ。スタジオ版が持っていた、グヌーッと
飴が伸びた様な曲の輪郭が、運動性を増した事で引き締まった様な演奏だと思います。
「Video Killed The Radio Star」はこれまで以上にテンポ良く進む展開が印象的。
ギターの装飾音も自然に曲に溶け込んでいるし、バンド音のスタッカートの切れ心地も良く、
軽快感と運動性がグッと上がっている様に思います。

そしていよいよイアンが登場しての「The Court Of The Crimson King」。
この5人・・・つまり仮面ライダー大集合というかプログレオールスター総進撃でこれが
演奏されているというだけでとてつもなく凄いことですが、やはりイアンの存在感はこの音
からも分かるほど大きく思います。冒頭で鳴るメロトロンはサンプリングした音を
キーボードで出しているのも彼だと思うんですが、やはり4分46秒付近から聴ける
本人が奏でるフルートのパートは別格です。彼ならではのレガートが効いた旋律の滑らかさ、
音の輝き、そして音色から溢れる息遣い。もうため息が出るほど素晴らしいですし、これの
バックを務めているのがエイジアだなんて信じられないほど豪華でサプライズな事だと思います。
終演後、彼は熱狂するオーディエンスに応えて挨拶と何かのコメント(僕は英語分からないので)を
言った後、次の「The Smile Has Left Your Eyes」の曲紹介をしてからステージを去ってるんですが、
彼がエイジアの曲紹介をしているというこのシーンだけで僕には感激ですし、実際に会場に居たら
信じられない喜びで卒倒している様な気がします。

そうして始まってゆく「The Smile Has Left Your Eyes」はウエットンの魅力的な湿った声と、
その後ろで奏でられているカントリー調のギターサウンドがベストマッチしている素晴らしい演奏。
この曲の新しい解釈と表情付けにただただ驚嘆してしまいますが、その更に後方で蔭ながら
サウンドに立体感を持たせているカールの細かいドラムにも注目したいところです。
「Don't Cry」も同様ですが、アコースティックで表現してきた表情付けがここでも
素晴らしく開花していると思います。

「Fanfare For The Common Man」は各メンバーのソロパート(勿論メインはカールだけど)が
組み込まれた好パフォーマンス。演奏もフックの効いた見事なもので、これにより曲の構造が
より際立ち、より立体的になっていると思います。「Sole Survivor」はかつての様な重厚感が
ますます薄れたアプローチが個人的に気になりますが、しかしそれと引き換えに注入されたかの
様なスピーディなビート感は魅力的。ウエットンのベース・アプローチも凄くかっこいいし、
部分部分で歌詞の語尾をヒネって歌い上げるボーカル・アプローチも魅力に溢れていると思います。
「Heat Of The Moment」はショウの締め括りに相応しい快活で軽快な好パフォーマンス。
他日の公演でもそうですが、オーディエンスに感謝の言葉を述べつつ盛り上げる→
半音上げて終曲・・という流れは本当に感動的ですね。また、ここでもイアンが
参加しているのだけど、ちょっと分かり難い参加の仕方かな。せっかくだから
彼の活躍できるパートを少し作って組み入れたら良かったのに。(^^;)

ショウはこれで終わりなんですが、本作はこの後トラックナンバー(11)〜(14)に
この同日のショウを収録したオルタネイト・レコーディング(別マスターから収録した音源)が
ボーナストラック扱いで入っており、録音条件(位置・機材)の違いによる空気感と空間差を
楽しむことが出来る様になっています。たった4曲分の別マスター収録ですが
こちらも本編(1)〜(10)同様になかなかの音質で収録されていて、音の質感と響きの
微妙な違いが楽しめました。

音質は、本編の(11)〜(14)が85点。別マスターの(11)〜(14)が83点。

本編の方が少しだけ解像度・透明度が高いですが、どちらもブートらしい臨場感があって
良好な部類だと思います。但し録音者がレコーダーの位置を時々変えているらしく、稀に
その際のゴソゴソ音が鳴る時あり。中でも「Don't Cry」演奏中はしょっちゅうレコーダーに
触っているらしく、そこでのゴソゴソ音は結構耳障りです。(+_+)

1CDR。
2010年 OMEGAツアー日本公演
『NO FEELING』 / (JOKERMAN, JM-029)
Live Date :
Disc1〜Disc2−(5) : C.C.Lemon Hall (a.k.a "Shibuya−koukaido"), Shibuya, Tokyo, JAPAN. / 2010. May. 13
Disc2−(6)〜(13) : ColosSaal, Aschaffenburg, GERMANY. / 2010. May. 2

2010年オメガ・ツアー来日公演の初日音源。冒頭のオープニングSEは19世紀後半〜20世紀前半に
当時世界最高のオルガニストとして名を馳せた作曲家・サン=サーンスの交響曲第3番
「オルガン付き」で、この第2楽章第2部(後半部)の冒頭部分です。この選曲は恐らく、
オルガニストだった父の影響を受けて育ったダウンズのアイデアではないでしょうかね。
冒頭の「I Believe」が始まった瞬間、会場でどれだけのファンが身震いし、鳥肌を立てた事でしょう。
今回のオメガ・ツアーでのライブの迫力と魅力の要因は一新されたこのセットリストにあった様に思いますし、
これまでの様に「プログレ懐古趣味のお祭り騒ぎ」ではなく、現在のエイジアがエイジアの楽曲
だけで組んだセットリストだからこそ、本作で改めて耳にする初日第一曲目の感動がこれだけ深い
様に思います。「Holy War」での鮮烈なドライヴ感はどうでしょう。「End Of The World」の重厚な
この響きは何でしょう(^_^;)。やや極論ですが、ほぼ全ての楽曲をアルバム『OMEGA』と『PHOENIX』から
セレクトしても良かったのではないかと思えるほど、これら新しい楽曲群が初日から素晴らしい
迫力と興奮に満ち溢れていると思います。また、各自のソロタイムを最小限に抑えた構成も
功を奏している様に思いますし、その一方で旧い曲であればあるほど演奏に当時の迫力が
宿っている様にも感じられる素晴らしい公演です。中でもこの日の「Time Again」は
特筆すべき演奏でしょう。終曲手前で少しミスしているものの、そこに至るまでの
音の一体感(というより、曲が30年前に持っていた勢いや息使いの様な生々しい感覚)は
この再結成後の4年間の中でも格別なものが感じられますし、ショウ後半で披露される
この日の「The Heat Goes On」と「Sole Survivor」に至っては、83年アルファ・ツアーの
続きを聴いている思いさえしました。

更に本作はボーナストラック(・・・と言うには長尺だけど)として、この日本公演初日の約10日前に
行われた5月2日ドイツでの公演も抜粋収録されています。2年振りのアルバム『OMEGA』発売直後の
ライブという意味では、ドイツのオーディエンスは日本より10日も早くそのホットな興奮に接していた
訳で、そんなオーディエンス達に極上のアンサンブルを届けているエイジアの姿が微笑ましく
伝わってくる音源です。しかもこのドイツ公演では今回の日本公演ではセットから外された
「Here Comes The Feeling」が演奏されており、この曲が聴けるのは注目に値するでしょう。
曲後半から入ってくるウエットンの強いボーカル・アクセントも健在で、これによってこの日も
曲想に独特の装飾が施されている訳で、これはファンなら聴き逃せない演奏だと思います。

録音データとしては本編の日本初日公演、及びドイツ公演ともオーディエンス録音で、日本公演は
やや遠めの収録音。ウエットンのMCやスティーヴのギターソロなど、静かでアコースティックに
聴かせるシーンでは若干音量を上げないと聴き取り辛い部分はあるのですが、アンサンブルは
きちんと演奏音が聴こえるので、個人的に音質面ではさほどの違和感を感じませんでした。
一方、ドイツ公演は音が近く(会場がそんなに大きくないのかもしれない)、オーディエンス収録
独特の臨場感もあって大変聴き易い音で収録されています。

2CDR。
『SHINING AND SPIRIT RISING』 / (TOTONKA RECORDS, TOTONKA-016)
※ Recorded & Exective Produced by SEE NO EVIL Records.
Live at : C.C.Lemon Hall (a.k.a "Shibuya−koukaido"), Shibuya, Tokyo, JAPAN. / 2010. May. 14

東京公演二日目の音源。
一聴してすぐ気付くのは、前日13日よりもウエットンの声に力が漲っており、
深く艶やかな伸びが感じられる点でしょう。しかしそれ以上に素晴らしいのは
何と言ってもバンドの演奏。中でもこの日の「Open Your Eyes」は群を抜いていて、
その一音ごとに迫り来て立ち上がっては消えてゆく圧倒的な音の洪水に思わず
絶句してしまいました。新作からは実に6曲も披露されており、中でもとりわけ
「An Extraordinary Life」〜「End Of The World」の流れは舌を巻く極上パフォーマンス。
メドレーアレンジで演奏される「Heat Of The Moment」のドライヴ感も強烈です。

音質ですが、本作はこのレーベル最大の特徴とも言えるイヤーモニター音源を使用していて、
そのモニターソース音源と極上オーディエンスソースとをフルマトリックス編集したものが
収録されています。このレーベルは過去にも
『KEEP YOUR EARS FOR THE WETTON (S.N.E-026/027/028/029) ※上段2008年音源の項で紹介※』という、
2008年フェニックス・ツアー日本公演の決定版とも言うべきモニター落としの名盤をリリースしており、
それを聴いた事がある方なら本作に収録されている音がどれだけハイクオリティな音質であるかも
容易に御想像戴けるでしょう。べつに僕はモニター収録という行為を推奨している訳ではありませんが、
しかしながらモニター収録音源ならではの力強いパンチのあるフレキシブルな音の迫力と、
圧倒的なまでの透明感を持つ音の解像度は、既にブートの域を超えたスーパークオリティを
誇っているのもまた事実だと思います。これが特に痛感出来るのはここでの「The Heat Goes On」で、
カールが叩く金物系の繊細な打音と質感がここまで詳細に収録されている事に驚きを隠せませんし、
スティーヴのソロにしても見事な質感でギターの音色が捉えられています。
また通常そこまで聴こえないメンバーの声、例えば「Time Again」の開始直前にカールが
カウントダウンを発しているのだけど、これもリアルに収録されていて驚かされます。
全編まさに極上の音質ですが、しかし本当に肝心なのはこのウルトラ級の極上音質で収録された
天上の調べとも言えるアンサンブルの素晴らしさでしょう。

最後に、本作を聴き終える寸前に気が付いたどうでもいいトピックスをメモしておきます。
本作は開演前の場内アナウンスから収録され、オープニングSEとしてサン=サーンスの
交響曲第3番「オルガン付き」第2楽章・第二部の冒頭が流れます。ショウが終わり、
ここでまたエンディングSEとしてサン=サーンスの同交響曲が鳴り、終演を告げる女性
アナウンスが流れてディスクは終わってゆきます。ところがこの日はこのエンディングのSEが
オープニングSEと同じ、第2楽章・第二部の「冒頭」なのですね。他日の音源を聴くと
分かりますが、他日でのエンディングSEは同交響曲の第2楽章・第二部の「後半」部分です。
恐らくC.Cレモンホールのスタッフが間違えて、エンディングでもう一度オープニングSEを
流してしまったのでしょうが、そんなお茶目な一幕も収録されている音質極上の一枚です。

音質100点。
2CDR。
『TIMEPIECE』 / (No-label. Free bonus gift item CDR)
Live at : C.C.Lemon Hall (a.k.a "Shibuya−koukaido"), Shibuya, Tokyo, JAPAN. / 2010. May. 14

『SHINING AND SPIRIT RISING / (TOTONKA RECORDS, TOTONKA-016) ※上段で紹介※』とは
全く別のマスターから収録されている音源。イヤーモニター音源ではないし、
適度な空気感し臨場感は感じさせるオーディエンス収録ではあるのだけど、しかし
信じられないほど優れた音質で収録されているのが特徴。これ、音を聴いたら
びっくりすると思います。なまじブートに慣れた耳を持っている人には本作の方が
すんなり耳に馴染むうえ、驚きも大きいんじゃないでしょうか。

残念なのは、本作は開演前のアナウンスが若干短いこと。『SHINING AND SPIRIT RISING』には
収録されている「お待たせ致しました。まもなく開演致します。席をお立ちのお客様は・・・」
という開演前のアナウンスが本作では聴けないんですね。
しかしそれ以外はほぼ互角・・・というより、反則技とも言えるイヤモニ音源とPC上で
同時再生して音を聴き比べても殆ど差を感じないというのはむしろ凄いと思いますし、
本作の収録音がどけれだけクオリティが高いかを物語っていると思います。
音像は終始安定しているし、音の解像度も高いし、とても無料配布の
ギフトディスクとは思えない仕上がりです。

という訳で、モニター音源との比較になってしまうのでここではどうしても
『SHINING AND SPIRIT RISING』をメインディスクに挙げていますが、個人的には
本作の収録音の方が好きですし、オーディエンス収録としての驚きもあると思います。
また別マスターなので当然ですが、プログラム終演後の周囲の話し声も違いますし、
出口へ誘導する会場スタッフの様子が聴ける点もまた別の余韻が楽しめて面白いです。

音質97点。
2CDR。西新宿の某ショップで配布されたボーナスギフトディスク。
『IN MY END IS MY BEGINNING』 / (TOTONKA RECORDS, TOTONKA-017)
※ Recorded & Exective Produced by SEE NO EVIL Records.
Live at : Kanagawa Kenmin Hall, Yokohama, JAPAN. / 2010. May. 15

来日公演3日目。関東地区でのライブとしては最終日となった
神奈川県民ホールでの公演が完全収録された極上のタイトル。
本作も上段で紹介している『SHINING AND SPIRIT (TOTONKA-016)』と同じく
イヤーモニター収録した音源をマスターに使用していて、驚愕の極上音質で
全編が収録されているのが最大の特徴でしょう。冒頭「I Believe」の第一音から
その透明感溢れる音のしぶきに息を呑むと思いますが、「Only Time Will Tell」は
そのモニター音源の本領が更に炸裂。カールが叩くシンバル音の粒がかなり
細かいところまで収録されていて、曲の輪郭と表情が驚くほど豊かに収録されています
終曲時のシンセによる主題のリプライズが掛かる箇所も透明感があって凄いです。

そしてこの日一番のトピックス+ハイライトでもある箇所は、何といっても
スティーヴがギター・ソロで「Sketches In The Sun」を演奏している点でしょう。
彼がエイジアのメンバーとしてこの曲を日本で披露するのは"ASIA IN ASIA"以来
27年振りのこと。当然ながら当時はまだGTRが結成される前ですから、この曲は
ASIA IN ASIAでもスティーヴのソロタイムで"未発表・ノンタイトルのギター曲"として
披露されただけで、"Sketches In The Sun"という正式な曲名はまだ冠されて
いませんでした。そんなこの曲がASIA IN ASIAで披露された直後にスティーヴはバンドを去り、
以来27年間ここ日本でエイジアの舞台でこの曲が披露される事は無かった訳で、
それがこの日再びエイジアの舞台上で披露された訳で、当時を知る往年のファンであれば
あるほどこれは感無量の瞬間だと思います。(T_T)←感涙

またモニター音源の魅力として、ここはどうしてもこの日の「The Heat Goes On」に
ついて書かなければならないでしょう。周知の通り、このオメガ・ツアーからカールの
ドラムソロはソロ突入時とソロ後半〜リプライズ時のアプローチが少し変わっています
(日によって多少のインプロヴァイズがなされている様ですが)。この日はソロに入る
部分からやたらとシンバル・アプローチが目立つプレイとなっていて、その繊細な
金物系の音の立ち上がりと粒立ちがこの音源で聴くと大変鮮やかで驚かされます。
これと同時に当然ダイナミックなドラミングも展開していますが、それらの打音も
素早いストロークの一音一音をこのモニター音源は見事なまでに収録しています。
リプライズ後に聴かれる終曲手前の無数のシンバル音の粒が拡散してゆく様子は
特に感動的なので、これは是非本作でその様子を確かめて戴きたいところです。

というわけで本作は超極上音質のイヤーモニター音源+開演前のアナウンス〜終演後の
アナウンスまでノーカットで完全収録された5月15日公演の究極のメモリアルと
言って過言ではないでしょう。モニター収録行為を奨励・賞賛する訳では決してないけれど、
しかしホント凄いよ、この音質。

音質100点。
2CDR。
『MOMENT BY MOMENT : Omega Live In Yokohama』 / (JUSTIN' / JS-001A/B)
Live at : Kanagawa Kenmin Hall, Yokohama, JAPAN. / 2010. May. 15

これも来日公演3日目・神奈川県民ホールでの音源。上段で紹介した
『IN MY END IS MY BEGINNING (TOTONKA-017)』と同日音源ですが、本作は
別マスターを使用している音源です。ただ、確かに収録内容は全く同一なのだけど、
マスターが違うとこれまた違った印象を持っているから不思議。更に言えば、
本作は『IN MY END IS MY BEGINNING』の様なイヤーモニター音源ではなく、
コンプ処理も殆どされていないオーディエンス録音なので(とはいえ、なかなか秀逸な
ステレオ録音)、むしろブート慣れした耳をお持ちの人は本作の音質の方が
落ち着いて聴けるのではないかなぁ。まぁこれは個人差でしょうけど。(+_+)

『IN MY END IS MY BEGINNING』と同日の音源なので重複しない様に収録内容を書くと、
まず「The Smile Has Left Your Eyes」はこの日、バンドアンサンブルとなる後半部での
キーボードの出音がやたらと大きく目立っており、どうもダウンズの機材についての
ボリューム調整が万全ではなかった事が伺えます。この様子はモニター音源の
『IN MY END IS MY BEGINNING』でも分かりますが、本作の方がよりその状況が
生々しく伝わってくると思います。そして「Open Your Eyes」。この惹きこまれる様な
凄まじい興奮は何でしょうかね(T_T)。前日の東京公演2日目でのパフォーマンスも
素晴らしいものがありますが、この神奈川公演での演奏も筆舌に尽くし難い魅力を
放っていると思います。続く「Finger On The Trigger」も他日よりグルーヴ感がある演奏だし、
軽やかでありながらも実にドラマチックな演奏が楽めます。そしてこの日、スティーヴが
27年振りにエイジアの舞台で披露した「Sketches In The Sun」とは別に、もうひとつの
トピックスとして挙げたいのが「Sole Survivor」の演奏でしょう。これはもう、
はっきり言って82年公演の再来ではないでしょうかね。当時の演奏と聴き比べても
全く遜色無いと思うし、良質なエネルギーが炸裂した素晴らしいパフォーマンスだと思います。
そして「Go」はこの日、後半部でウエットンが搾り出す様に「Get Up And...」「Get Up And...」と、
何度も何度も繰り返して歌声を張り上げているのがとても印象的です。

そんな本作ですが、レビュー用にbeatleg編集部から回送されてきたメーカーアナウンスによると
収録は会場2階席からの録音だそうで、更に本作の表ジャケやウラジャケ、そして内ジャケにも
使用されているショットは本音源を収録したその2階席から撮影した実際の5月15日の
ライブショットだそうです。確かに、音質だけ考えればモニター収録の
『IN MY END IS MY BEGINNING』に圧倒的な軍配が上がるのは仕方の無い事ですが、
ブートらしい収録音とジャケ写真で当日をメモリアルに愉しめるのは本作なのかなぁ。
やっぱモニター収録の音質と通常録音の音質を比べるのはキツいよ。(+_+)

2CDR。
『OMEGA DRIVE IN OSAKA』 / (Nothen Dancer, ND-004)
Live at : Osaka Kokusai Kaigijo (a.k.a "Grand Cube−Osaka"), Osaka, JAPAN. / 2010. May. 17

2010年オメガ・ツアー大阪公演。前日16日が移動日でしたので、公演回数としてはこれが4回目。
この日も冒頭から凄まじいパフォーマンスが炸裂しています(^_^)。
移動日だったとはいえ、前日16日に一服入れているせいか程好く肩の力が
抜けた「I Believe」はこの日は一段と高らかに、かつ流れる様に情景が展開してゆく
演奏で、色彩感溢れる鮮やかさを伴いながら素晴らしいオープニングを飾っています。
「Only Time Will Tell」はサビメロに入る1分40秒付近でウエットンがタイミングを
わざとズラし、溜めを利かせた歌い方をしているのが面白いです。同様に2分57秒付近でも
一拍溜め、タイミングをズラしてボーカルラインを繋いでいて、いつもとは違う引っかかりの
あるユニークな曲想で披露しているのが実に興味深いです。「Holy War」は東京・神奈川公演と
比べて全体的にほんの少しアップテンポで演奏されている様に感じますし、これに伴って
中盤のドラムソロもEL&P時代を想起させる熱いドラミング・シーンが繰り広がっており、
ここは序盤の聴き処だと思います。同様に「Open Your Eyes」と「Time Again」も
ややアップテンポ気味ですが、この日はどちらもかなりハードロックしていてかなり
ドラマチックな曲想になっています。一方、メロウで重厚なもので言えばこの日の
「End Of The World」。ここで終曲時に聴かれるギターとキーボードの絡み合いは
一聴の価値ありだと思います。

そして「Go」ですが、これは関東3公演よりもアンサンブルの一体感が強く感じられました。
とはいえこの曲は、スティーヴと他の3人の解釈と熟練度の違いが明確に伝わってくる
鬼門の曲でもあると思います。この日を含め、来日公演中に聴けたアンサンブルはまるで
2006年に逆戻りしたかの様な、3人の(長年エイジアの楽曲に魂を注ぎ続けた)熟練達と、
長年そこから離れてアプローチに戸惑っている不慣れなギタリストがセッションしている様な
危うい印象が(少なくとも僕には)あります。でもこうしてスティーヴ不在時期の楽曲を改めて
この4人が演奏する事で、"アルバム『ASTRA』を含めてエイジアなのだ"というバンド側の
想い(或いは、アルバム発表後25年越しのウエットンの想い)が伝わってくる様な気がするし、
そのアプローチをスティーヴ自身も了承し、理解し、そしてこの様にアンサンブルで実行
している様子はファンとして大変嬉しいことだと思います。
まぁそれはさておき、この「Go」終曲部から「Heat Of The Moment」に繋ぐ箇所はこの日も
実に見事で、その「Heat Of The Moment」は序盤部分でカールのカウベル(だと思う)を
使用したリズムの取り方が他日と比べてとても心地よく、軽快かつダイナミックに
ショウを締め括っています。

最後に音質面ですが、本作の収録はオーディエンス録音ではあるものの、かなり優良な
録音状態で収録されています。アンサンブルの音も近く、アコースティックで静かなシーンでも
音像の解像度が高いので音質面での問題はまず感じませんでした。残念ながら
終演アナウンスまでは収録されていませんが、それを補って余りあるほどの
演奏内容に僕自身は大満足の一枚でした。(^_^)

2CDR。
『HORIZON GLOOMING』 / (Sylph, SY-1048)
Live at : Osaka Kokusai Kaigijo (a.k.a "Grand Cube−Osaka"), Osaka, JAPAN. / 2010. May. 17

2010年OMEGAツアー大阪公演(5月17日)を収録した一枚。同17日を収録した
既発盤として上段で紹介している『OMEGA DRIVE IN OSAKA (Nothen Dancer, ND-004) 』という
タイトルがありますが、収録音を聴いてみると分かる通り、本作はそれとは別のマスターを
使用している収録盤です。
という訳で改めてこの日の演奏を聴いてみると、「Only Time Will Tell」はウエットンが
サビメロに入る1分40秒付近でタイミングをわざとズラしているうえ、同様に2分57秒付近でも
一拍溜めてタイミングをズラしつつボーカルラインを繋いでおり、いつもとは違った
引っかかりのある曲想で披露しているのが興味深いのですが、但しそれを本音源で聴くと、
もしかすると突発的な機材トラブルか何かがウエットンに起こっていたのではないかとも
想像出来ました。これ、実際にこの日の大阪公演を御覧になっていた方にお話を伺ってみたい
ところですねぇ・・・。(+_+)
そして何と言っても、やっぱりこの日は「End Of The World」。ここでの終曲時に聴ける
ギターとキーボードの眩い絡み合いは別格ではないでしょうか。他日での演奏を
凌駕する素晴らしい瞬間が炸裂していると思います。

収録はオーディエンス録音で、音が近過ぎず・遠過ぎずという程好い距離感が
感じられる音で収録されており、これは既発盤『OMEGA DRIVE IN OSAKA』も
ほぼ同様です。但し、録音位置の差なのか、それともイコライジング処理の成果なのか、
両タイトルを交互に聴き比べた個人的な感想としては『OMEGA DRIVE IN OSAKA』よりも
本作の方が音に重みがあり、全体音の解像度も高く感じられました。
また細かい事ですが、終演後の収録時間も本作の方が約30秒ほど長い点も
特筆されると思います(※但し『OMEGA DRIVE IN OSAKA』と同様に
本作も終演後SEと終演アナウンスまでは収録されておらず、既発盤より終演後の
収録時間は長いものの途中でフェイドアウトして終わってゆく)。

2CDR。
『OMEGA DRIVE IN NEW BED FORD』 / (HSD-009)
Live Date : Zeiterion Performing Arts Center, New Bedford, Massachusetts, USA. / 2010. Aug. 02

盛夏8月初旬のアメリカ公演での様子を収録した一枚。幾つかのシーンでやや夏バテ気味の
演奏というか、OMEGAツアー開始直後のパワー全開だった日本公演時期とは明らかに様子の
違ったパフォーマンスも垣間見えてなかなか興味深い内容だと思います。Disc1はまず冒頭の
「I Believe」で力強いオープニング。ますます楽曲に磨きが掛かっているのがいきなり
伝わってくる熱演です。「Only Time Will Tell」もこの日は伸びやかなアンサンブルが飛び
出してきますが、後半3:50秒付近からは音質の良さも相まってカールの細やかなシンバルの
アプローチが曲に絶妙な表情を付けている様子に耳を奪われると思います。メロウな
「The Smile Has Left Your Eyes」は或る程度スタンダードな演奏だと思いますが、この日
も前半部終了間際と後半部終了間際でウエットンが少し調子を変えて歌い上げています。
この箇所の表現は日によってまちまちなので、聴く側としても愉しみなチェックポイント
ですね。「Finger On The Trigger」は0:57秒付近から1:09秒付近の間でマイクトラブル
なのか、ウエットンのボーカルラインがやや途切れ気味になる箇所があります。しかし
瞬時に状況を見極めて捌き、結果的には実に見事な演奏になっている様子は流石ですねぇ。

Disc2はいきなり「Time Again」が聴きどころ。前半のヨレた演奏と後半の凄まじい
パフォーマンスとのコントラストが強烈で、特に中盤〜後半の生々しい盛り上げ方は一聴の
価値大だと思います。終曲後にオーディエンスも「いま何か凄いものを観た・聴かなかった!?」
とばかりに他の曲とは別格の拍手と盛り上がりを見せているのも印象的。いや、この演奏は凄い
ですよ。(^_^)「The Heat Goes On」はこれまた日本公演時とは一風違ったイメージで曲が
進んでおり、ボーカルラインのディレイの掛かり方に不安定さがあったり、少しバラついた
音の纏め方でドラムソロに移行したりと、この日はどこか慌しい印象があります。

「Sole Survivor」は中間部からのギターワークと盛り上がりが非常にドラマチック。先述の
「Time Again」と同様にこの日屈指のパフォーマンスだと思います。そして「Go」はここに
きてより一層の異彩を放つ一曲に変貌。導入部から全体を覆うミステリアスな曲想はオリジ
ナルとどんどん掛け離れるばかりか、日本公演から僅か3ヶ月でここまで変化した事に改めて
驚かされるんじゃないかなぁ(※いろんな意味で(^_^;)。終曲部分で「Get Up And...,Get Up And...,
Get Up And...」と繰り返す箇所も、最後の「...Go!!」を言わなかった日本公演時とは違い、
最後まで「...GOooooo!!!」と力強く言い切ってから大団円の「Heat Of The Moment」に突入
しており、この展開も鳥肌モノだと思います。

収録はオーディエンスですが、マスターが大変良好な音質で収録されているうえレーベル
独自の自然なリマスタリングが施された事で各パートのバランスも申し分ない仕上がりに
なっている様に感じました。4月からの精力的なツアーで『OMEGA』からの新曲達が試され続け、
この夏に来て実が生り始めている様子が伺える一枚だと思います。

2CDR。
『OMEGA IN ALEXANDRIA』 / (No-Label ※Bonus Gift item DVDR of a Bootleg CD Shop)
Live at : Birchmere, Alexandria, Virginia, USA / 2010. Aug. 03

2014年2月後半に、西新宿の某ショップで2タイトル以上買うと貰えたギフト
DVDRタイトル。この日の映像はyoutube等でも鑑賞出来たものですが、本作に
収録されているのは最近その存在が明らかになった別マスターからの極上映像。
映像最後のエンド・クレジットを見ると恐らく中国のファンがシューティングに
関わっていると思われ、テーパー間のみに流通するようにしていたものが今回
何らかのルートを介してショップに流れ、本作となった様です。

という訳で収録はAUD収録の映像なんだけど、その画質と音質は驚異的。しかも
収録者が恐らく楽曲をよく知っているらしく、要所要所でその主軸となる楽器に
スポットを当て、楽曲の流れに適した動きでカメラを動かしているので、視点に
明確な意図が感じられるのが大きな特徴となっています。またそのカメラも三脚等
で固定されているらしく、左右に振ってもズームしても全くブレない非常に安定
した映像を最後まで維持していることも特筆されると思います。シューティングの
位置は会場10列目付近の中央やや右寄りで、ステージ全体を俯瞰しつつ、アップを
多用しながらシューティングしています。↓はメーカー発表の収録映像のサンプル画像。
omegainalexandria-u2.jpg(51553 byte)
また驚くのは画質だけではなく、その収録音の質もとびきり極上の収録音で捉えられて
いるんですね。かなり微細な音までよく拾っており、例えば「Only Time Will Tell」
出だしのハイハットの微細な打音もキラキラとした粒立ちの良い音で拾っていますし、
「End Of The World」の様な重厚な響きが綴れ合いながら拡散してゆく様子も極めて
高い精度で捉えており、音だけ抜き出しても別の極上CDタイトルが普通に成り立つ
ほどのクオリティを保っているのも特徴です。

各メンバーのデリケートな指先の動きや大胆なタッチが曲の流れに従ってスムーズに
クローズアップされるのもこの映像の魅力で、各楽曲でギターが目立つ部分では
ギターを、鍵盤が目立つシーンではその流麗な旋律を、そしてドラムがヒーローに
なれるシーンではそのスティック捌きを大写しで、各マエストロの高度な技術を至近
距離で堪能できるのが素晴らしいです。ギターソロは勿論ですが、特に特徴的なのは
カールがアップでよく映る点でしょう。他のブートレッグ映像は勿論ですが、正規版の
映像でもなかなか見られないカールのショットが多数出てきます。激しいストロークの
手元の動きは勿論ですが、リズムを打ち込みつつ見せる、まるで哲学者の様な表情の変化
が数多く克明に捉えられています。またその一方でユニークなシーンも見逃しておらず、
例えば「Holy War」開始前には曲後半の激しいソロに備えてカールが椅子から離れ、ドラム
キットの調整(バスドラの調整?)をするシーンがあるのですが、MC中に後ろでゴソゴソと
何やらやっているカールに気付いたウエットンが「?」と苦笑いするという微笑ましい
シーンも克明に記録しており、これもちょっとした見どころとなっていると思います。

演奏面の見どころも多く、「Open Your Eyes」ではハウが音色と響きを変えるため別に
用意された固定のサイド・ギターを手持ちのギターと交互に奏でるシーンが克明に捉え
られているのですが、2つのギターを使って響きの特性を最大限に導き出そうとする様子は
なかなか興味深いと思います。「An Extraordinary Life」ではドラマティックな広がりも
聴き処となっており、その伸びやかでダイナミックな歌唱シーンも見応えがあり、ここでは
しなやかな指捌きが至近距離で映し出される中盤のギターソロも大きな見どころでしょう。
「The Heat Goes On」ではギターが特徴的なカッティングを多用するシーンがあり、リユニ
オン後のそうした音楽的なボキャブラリーが演奏中に増えたことも伺わせてくれる映像です。

また映像のオープニング(チャプター【1】)では開演前の会場入り口付近の様子も映っており、
これもメモリアルな映像資料としての価値を高めていると思います。そして「Open Your Eyes」
の終曲後 〜「Finger On The Trigger」導入部までの間と「Sole Survivor」終曲後 〜「Go」の
歌詞2番付近までの間には再結成後の各メンバーの画像がスライド挿入してあり、曲間の所々で
そうした見飽きない配慮がなされた丁寧な創り込みも特徴です。

画質97点 / 音質97点。
COLOUR NTSC Approx.108min. / AUD-SHOT
1DVDR・ギフトタイトル。
2011年 THE OMEGA TOUR, Continued...
『INFINITY』 / (SPIDER‐0063/64)
Live at : Infinity Hall, Norfolk, CT, USA / 2011. May. 10

オメガツアー後半の様子が収録された貴重な音源です。この時期は
精力的なツアーの中でライヴを繰り返す中、セットにちょっとずつテコ入れを
していた時期だったと思いますが、このタイトルもその片鱗が伺える音源です。
なんとこの日は「Days Like These」を演奏(!!!)しているんですね。

ショウはエニグマ変奏曲のイントロに続いてこの時期定番の「I Believe」からスタート。
これがもうのっけから素晴らしい演奏で、スケール感と力強さに溢れた初期エイジアらしさを
彷彿させるパフォーマンス。「Only Time Will Tell」もなかなかの演奏で、どこか82年らしい
雰囲気を内包していると思います。「Holy War」も2分44秒付近〜ドラムソロの部分が
素晴らしいです。この部分、ハウのギターが流れる様に歌い、それに導かれて凄まじい
ドラムへ突入してゆくシーンですが、その高揚感と力強さ、切ない表現力は秀逸です。
「The Smile Has Left Your Eyes」は全体的に若干スローテンポですが、後半で
ジョンが「♪...Has Left, Your Eye〜s」の部分を毎回凄まじい迫力で熱唱しており、
この部分は圧倒されること請け合いです。その熱唱は「Open Your Eyes」にも受け継がれ、
極上の熱演と融合して素晴らし過ぎる名演奏を披露。まるで魂を鷲掴みにされる様な表現力で、
ここはエイジアの真の実力が出ていると思います。

後半のスタートとなる「Time Again」でも、序盤から「・・デスメタル?」と思う様な
強烈壮大な音の厚みがスケール感を伴って襲ってくる様子にゾクゾクします。(^_^;)
ちなみにこの「Time Again」終曲後、MCが入って少しすると突然「ブツッ!!」と変な
音がするシーンが出てきます。恐らくベースのプラグが抜けたらしいのですが、
ジャックを繋いだ後に試し弾きとして再びウエットンが「Time Again」のフレーズを
軽くつま弾くシーンも収録されています。「An Extraordinary Life」はこの日、
ヘヴィさと繊細さが同居した熱い演奏。特に中盤のギターソロが高らかに旋律を
歌い上げているのが印象的です。「The Heat Goes On」では要所要所でボーカルに
エコーが掛けられているシーンが目立ちますが、それ以上に随所で楽曲に切り込んで
くるギターと、的確なオカズがいちいち眩しいカールのドラムが強烈。ドラムソロ
突入後も信じ難いほど速いストロークとツーバス連打の猛烈なドラムアクションで
場を盛り上げており、金物系のコミカルなアプローチも随所で忘れずに光っています。(^_^;)
「Sole Survivor」ものっけからデス・ドゥームメタル系の凄まじい音の壁が耳を襲ってきて
圧倒されっ放し。若干スローテンポの様な気もしますが、伸びのあるウエットンのタフな美声と
重戦車の様なリズムが交錯する中、随所で絡んでくるギターがまた素晴らしいです。特に一旦
ブレイクしてから曲が動き出す3分13秒付近からは絶品。上昇音形と共に高らかに鳴り響く
ギターに載せ、曲が大きくうねってゆくこの中盤〜後半部分は興奮の一言に尽きるでしょう。
まさに全盛期の82年〜83年を彷彿させる熱い演奏です。

そしてアンコールとしてまず披露されるのが驚きの「Days Like These」。
オリジナルを弾いたパット・スロールの華のあるメタリックな音と比べるとハウの
バッキングは不思議な感じがしますが、しかしソロの部分などそれっぽくきちんと
弾いていますし、後半〜終曲部の締めのアプローチもかなりサマになっていると思うんですね。
「Go」ではマンディの、そしてここではパットのという具合に、自分の後任ギタリスト達が
バンドに貢献してきたフレーズをオリジナルのハウが弾いているというのは非常に興味深い
シーンだと思います。ただ、ハウがこうしたハードロック・メタル寄りのアプローチが
好みではない為か、オメガツアーでもこの曲は僅かな期間しかセットインしませんでした。
しかしこれ、あの1990年にもしハウがバンドに居たらこういうサウンドになっていたという
幻のシーンが現実として聴ける訳で、それだけでも最高の瞬間だと思うんですね。
この「Days Like These」は僅か3分半の演奏ですけれど、長くブートを聴き続けて良かった、
長くエイジアが好きで良かった・・そんなふうに感じる3分間だと思います。

音質91点-α。
音圧が高く、所々で音割れが若干生じている箇所もあるのですが(※ それで−αしてます)、
各楽器やボーカルラインもよく聞こえますし演奏音も近め。基本的に良好な音質だと思います。
もちろん演奏内容は極上・100点+α。
オメガツアーを収録したブートの中では個人的にトップ3に入る名音源だと思います。

2CDR / ピクチャーディスク仕様(※ カラーラベル貼り付け)。
2012年 XXXツアー日本公演〜



WEYFEST 2012のフライヤー
『WEYFEST 2012』 / (Blue Cafe - 308)
Live at : Weyfest Music Festival, Farnham, Surrey, UK. / 2012. Sep. 2

XXXワールドツアー開始に先立って、日本公演の前に唯一行った本国イギリスでのライヴ。
たぶんウォームアップの意味合いも兼ねていたのでしょう。ロックフェスでのライヴなので
各バンドに割り振られた時間枠が決められているため収録されている演奏時間も約1時間と
短めのショウですが、なかなか良い音源だと思います。またフェス用のセットなので
代表曲のオンパレードとなっているのですが、この時点で既にオープニング曲として
「Only Time Will Tell」がセレクトされているというのも興味深いです。

この日の演奏全体で気になったところをメモしてゆくと、まず「Wildest Dreams」は
この日さほどアンサンブルにグルーヴが無く、後半のカールのソロだけが目立って
いる様な気がします。久し振りのライヴでちょっとカンが狂ったというところでしょうか。
しかし直ぐに立ち直り、次の「Time Again」からはメリハリの効いた素晴らしい
パフォーマンスを展開しています。面白いのは「Time Again, Time..」というシンセの
サンプリングが歌詞1番のサビのウラで割と目立って鳴っているんですね。しかも若干
ところが2番以降のサビの部分では微かにしか聞こえなくなっていて、この差がなかなか
ユニークな雰囲気を醸し出しています。「The Smile Has Left Your Eyes」は短い時間枠で
ありながらもちゃんと2部構成のフルバージョンで演奏。この日は後半アンサンブルが
なかなか良く、最後の歌詞「Now that the Smile, Has...」の箇所ではエコーが掛け
られて素晴らしい余韻を残しているのも魅力です。「Sole Survivor」もメリハリの
効いた好演奏ですが、面白いのは既にこの公演から中間部にブレイクが加えられて
いる点でしょう。正直まだ若干ぎこちなさも感じますが、ここではアレンジのテストを
兼ねてオーディエンスの反応も伺っている様な気がします。

またトラック(7)に「In Your Eyes」という見慣れない曲名がクレジットされて
いますが、実際に演奏されているのは「Open Your Eyes」。メーカーの
フェイクなのかクレジットミスなのか分かりませんが、なんでこんな表記に
なってるんだろ? ただこの演奏がこの日最高とも言える素晴らしいパフォーマンスで、
各部の表現や色彩感に冒頭から圧倒されてしまう出来映え。特に中盤〜終曲にかけての
アンサンブルはこの4人にしか出来ない鳥肌モノの演奏と言えるでしょう。
しかもここでの演奏は後半で非常に面白い展開が聴けるんですね。曲が一旦静かになって
盛り上がってゆく後半4分20秒付近でダウンズが下降の旋律をミスするのですが、
それを修正しようとしてこの日独特の旋律が約20秒間、4分41秒付近まで続いています。
これがまた非常に切ない旋律で良いんですね。確かにキッカケはミスから始まっているの
だけど、結果的には楽曲の表現と解釈を広げた素晴らしいリカバリーだと思います。
またこの曲ですが、この位置(Sole SurvivorとHeat Of The Momentの間)で演奏されて
いるのは極めて珍しいと思います。これもまたフェス用セットの特別なシーンと
言えるんじゃないでしょうか。ラストの「Heat Of The Moment」も元気一杯の演奏で、
素晴らしいショウエンドとして全体を締めくくっています。

音質90点。
全体の演奏音もなかなかよく録れていると思いますし、端正で聴き易い音質だと思います。
またウエットンのベースが近くに聞こえる為、あの独特のベース音がブビバビと終始よく
響いて良い感じです。・・・それにしてもこのWEYFEST 2012のフライヤーに描かれている
ミツバチ、可愛い・・(^_^;)
1CDR。
『THREE DECADES LATER...THE LEGACY CONTINUES!』 / (Amity-297)
Live at :
Disc-1〜Disc-2 : Shibuya−koukaido, Shibuya, Tokyo, JAPAN. / 2012. Sep. 24
Disc-3〜Disc-4 : Shibuya−koukaido, Shibuya, Tokyo, JAPAN. / 2012. Sep. 25
Disc-5〜Disc-6 : Sankei Hall Breeze, Osaka, JAPAN. / 2012. Sep. 26

結成30周年アニヴァーサリー・ワールド・ツアーのスタート地となった2012年の
来日公演から、初日の東京2days(24日・25日)+大阪(26日)の3公演をカップリング
した強烈な6枚組タイトル。残念ながら最終日の名古屋公演(27日)は含まれていませんが、
各日でセットリストをそれなりに変えてプレイしていた為、それぞれのディスクで
バラエティに富んだ公演内容を楽しめるのが特徴となっています。

まず何といっても「My Own Time (I'll Do What I Want)」。これは今回の来日では
24日・26日のみで演奏された超目玉曲。かつてWETTON-DOWNESとしては演奏された事が
ありますが、この4人での演奏はバンド史上初。どちらの演奏も不安定さがやや目立つ
ものの、メロウな音が揺らぎながら29年振りに披露される様子は感動的です。
「One Step Closer」と「Without You」は今回の日本公演では25日のみで聴けたレア曲。
どちらも一回限りというのが勿体無いほど魅力的な演奏で、各楽器のサウンドと装飾音が
リニューアルされ曲の印象がアップグレードしているのが実に面白いと思います。特に
「Without You」はその度合いが色濃く出ており、この日本公演中屈指の名演奏だと思います。
「Ride Easy」はファンが30年間待ち望んだバンド演奏版。これは25日と26日で聴けますが、
やや不安定さを残しながらも30年振りに元の姿で披露される様子に胸を打たれること請け合い。
「Wildest Dreams」は後半のドラムソロで奇妙なブレイクが入らなくなったのは大きいですね。
つまるところ82年〜83年のスタイルに戻されている訳ですが、これもまた「Ride Easy」と
同様に原点回帰を意図して元のイメージに戻してるんじゃないかと思います。

「Time Again」は26日の演奏が強烈。他日のも良いですがこの日は非常に
ワイルドで疾走感に溢れており聴き応え抜群です。曲中のピアノ+シンバルが
目立つ箇所(1分56秒付近〜2分05秒付近、ほか)もブルージーで曲のメリハリが
際立つ様になったし、コーラスも見事。「Cutting It Fine」は本作では25日で
のみ聴けますが、この後の名古屋公演(27日)でも披露されました。この曲もまた
シンセの装飾音がリニューアルされて斬新な印象を放っていますが、後半の
ボレロ部分の鮮烈さもオリジナル以上に鮮やかにグレードアップした事で
大きな聴き処となっています。また"第二のWildest Dreams"とも言うべき
「Holy War」も24日・26日共に素晴らしいアクションで耳を駆け抜けて
ゆきますが、面白いのはどの日も「ドラソロが単体で披露」されていること
でしょう。これはバンド史上例の無い初の試みです。特に特別プログラムの
25日は「Cutting It Fine」の後にスタートというレアシーンとなっており、
他日には無いユニークな流れが堪能出来ます。

「Open Your Eyes」はキーボードがやや過剰とも思えるほど前面に出てくる
スタイルへ変化。特に25日はPAのミスなのか意図的なのか分かりませんが
耳をつんざく様なシンセサウンドが中盤〜後半で強烈に鳴り響いていて、
オリジナルの持っていた繊細でドラマチックな曲想とはまた違った次元へ
押し上げているのが面白いです。一方「Sole Survivor」も序盤から
サウンドイメージが一新されており、こちらはオリジナルの持つ魅力が
より鮮烈になったと思います。特にギターの音色が素晴らしく、どの日も
オリジナルを重視して練り直されたサウンドに思わず唸ってしまう筈
です(中でも25日は格別の名演奏)。中間部へ移る箇所でシンセの音が
なかなか出てこないシーンも非常に印象的です。
「Heat Of The Moment」もマイナーチェンジして練り直されている感があり、
特にダウンズがショルダー・キーボードを持たなくなった事によって
オリジナルのスタジオ版に近いスタイルになっています。
(※27日の名古屋公演のみショルキーを持った)

・・実は本作を聴いて強く感じたのですが、「英国」というのが
2012年エイジアの隠れたキーワードになっている様に思えます。
『XXX』という原点回帰もどこか意味深で、このバンドは4人の
英国人によって成り立っているという事をこのSEでさり気なく
アピールしていたのではないでしょうか。特にウエットンは
1990年頃のインタビューで、80年代以降のキングクリムゾンについて
こんな事を語っています。

「(クリムゾンの)メンバーはイギリス人で固めるべきだよ。僕の持論だけどね」

彼はこれと同じ事をエイジアにも考えている様な気がするんですね。
ちなみに『ASTRA』時のメンバーだったマンディ・メイヤー(現UNISONIC)はスイス人、
90年のエイジアでギターを弾いたパット・スロールはアメリカ人。
だから今回のセットでは『ASTRA』からの曲が完全に消えているし、
同じ理由で「Days Like These」も最初から選択肢には無かったのでしょう。
「My Own Time (I'll Do What I Want)」が演奏されたのもオリジナルの
4人が在籍していた時期の作品でありながらも4人のライブとしては
披露してこなかった曲を積極的に取り入れてゆくという意思の現れでしょうし、
「Ride Easy」がバンド演奏に戻されたのも演奏方法を戻すこと=4人の
英国人がバンドの原点に回帰する姿の隠喩になっている様にも思えます。

そう考えると幾つかの曲(特に1stアルバムの曲)に原点回帰的な演奏音の
再考と練り直しが念入りに施されている理由も分かるだろうし、それに
よって今回の日本公演の内容がまた違った角度で感じられるのではないでしょうか。
まぁ完全に「僕の持論」ですけど。(^^;)

音質は、
24日を収録したDisc-1〜Disc-2が91点。
25日を収録したDisc-3〜Disc-4が91点。
26日を収録したDisc-5〜Disc-6が90点−α。
どの日も演奏音がほんの僅かに遠いのが欠点かなぁ・・・。
Disc-5〜Disc-6の大阪公演に"−α"としてあるのは、
録音マイクに服か何かの一部が触れているらしいノイズが時折
入っており、これが少し耳障りなのでその分を差し引いてあります。
しかしながら、3公演全てがノーカット完全収録されているのは
2012年12月現在のところ本作のみなので、
そこは評価されるべきだと思います。
6CDR。
『THREE DECADES OF LIFE - XXX IN TOKYO -』 / (MINDWARP - MWCD-084/085/086/087)
Live at :
Disc-1〜Disc2-(6) : Shibuya−koukaido, Shibuya, Tokyo, JAPAN. / 2012. Sep. 24
Disc-3〜Disc4-(5) : Shibuya−koukaido, Shibuya, Tokyo, JAPAN. / 2012. Sep. 25
※Disc2-(7)〜(13) : ※Recorded Taken From John Wetton's IEM Materials / 2012. Sep. 24
※Disc4-(6)〜(12) : ※Recorded Taken From John Wetton's IEM Materials / 2012. Sep. 25

2012年の来日公演から、初日と2日目の東京公演2DAYS(9月24日・25日)を
ノーカット完全収録した4枚組タイトル。両日ともメーカーが誇る24bit録音の
オーディエンス収録でシューティングされていて、更にボーナス・トラック
として同日にウエットンがステージ上で使用しているイヤー・モニター音源を
各公演終了後に7曲ずつ追加収録してあるのが特徴となっています。
ちなみにこの東京2DAYSは異なるセットリストになると事前に告知
(ウドー音楽事務所とウエットンのwebsiteによる)がありましたが、
24日は新曲を3曲入れた2012年スタイルの基本的なプログラムとなっており、
バンド史上初披露となった「My Own Time (I'll Do What I Want)」をプレイ。
25日は順不動ながらも告知通りに1stアルバム全曲演奏+「Ride Easy」の
バンド演奏版というユニークなプログラムで、「One Step Closer」と
「Without You」が披露されたのも今回の日本公演ではこの25日のみでした。

演奏面ですが、24日はやはり「My Own Time (I'll Do What I Want)」でしょう。
確かにややリハ不足な面は否めないですが、しかし何と言っても世界初演。
26日の大阪での演奏も魅力的だけど、どちらかと言えばこの24日の初演での方が
緊張感があるぶん曲想が引き締まっていると思います。
3つの新曲も瑞々しい印象を放っていて、これはさすがにリアルタイムの曲なので
演奏に纏まりがありますが、同時にやや固さも感じられるのが面白いです。

24日分のボーナスとして収録されているイヤモニ音源(Disc2-(7)〜(13))は
ショウ前半〜中盤の7曲分をセレクトして収録。ここでは会場では聴き取れなかった
であろう極めて微弱な声や息遣いまでもがレコードされており、生々しい彼の
ブレスの様子が分かって興味深いです。ちなみにイヤモニ音源の「Never Again」の
終演後(Disc2-(8)と(9)の間)に何やらメンバー同士で確認している様子を聴く事が
出来ますが、これは当初この24日の「Never Again」は「The Smile Has 〜」の
後に演奏される予定だったからで、変更されてこの位置での披露となっている為です。
つまり曲の確認をしているメンバー間のやり取りらしきものがここにレコード
されている訳ですが、これは本編Disc-1の同じ箇所では何を言っているのか殆ど
確認できません。まさにイヤモニ音源の実力の一端を垣間見られるシーンでしょう。

25日は順不同ながらも1stアルバムを全曲やるという特別プログラム。
ここでは何といっても「Ride Easy」のバンド演奏版=世界初演の様子を
聴けるのが大きな目玉でしょう。また「One Step Closer」と「Without You」が
披露されたのもこの25日のみ。特に「Without You」はギターとキーボードの
音作りが修正され、原曲に忠実なアプローチと新解釈のアプローチ、そして
終曲部の音の散らし方も大変興味深いです。「One Step Closer」もオリジナルの
音色とアプローチをもう一度検証し直し、スポイルされていた箇所を引き締め、
そして原曲をより高めるよう練り直されたと思われる演奏内容で音色が新鮮。
そしてこれは「Cutting It Fine」「Sole Survivor」、及び「Open Your Eyes」
にも同じ事が言えて、どの演奏もサウンドイメージの原点回帰と新しいアプローチ
(特にギターとキーボード)に驚かれると思います。中でもこの日の
「Sole Survivor」は必聴屈指のベストプレイ。そして25日のイヤモニ音源は
ショウ全体から美味しいところを抽出していて、特に上記した
「Ride Easy」「One Step Closer」「Without You」が別ソースから
聴けるメリットは非常に大きいと思います。

音質は、24日を収録したDisc-1〜Disc2-(6)が92点。
25日を収録したDisc-3〜Disc4-(5)が93点。
24日を収録したDisc-1〜2は若干の音割れがしているのに加え、
ヘッドホンで聴くと音像が僅かに左寄りで収録されています。
また、イヤモニ収録分に関してはDisc2-(7)〜(13)が91点で、
Disc4-(6)〜(12)が89点。オーディエンスの音とミックスされて
いないので全体音のバランスはあまり良くないですが(特にDisc-4)、
しかしミックスされていないぶんウエットンが当日実際に耳にしていた
音が素のまま収録されている為、その意味ではかなり生々しい音で
録れていると思います。
4CDR。
『THREE DECADES OF MOMENT - XXX IN OSAKA -』 / (MINDWARP - MWCD-088/089)
Live at :
Disc-1〜Disc2-(6) : Sankei Hall Breeze, Osaka, JAPAN. / 2012. Sep. 26
Disc2-(7)〜(8) : Zepp Nagoya, Nagoya, JAPAN. / 2012. Sep. 27
※Disc2-(9)〜(13) : Sankei Hall Breeze, Osaka, JAPAN. / 2012. Sep. 26
(※Recorded Taken From John Wetton's IEM Materials From Osaka)

2012年来日公演のうち、大阪公演のみを収録したタイトル。
収録はオーディエンス録音ですが、メーカーが誇る極上24bit録音による
秀逸な超優良音でノーカット完全収録されているのが特徴となっています。
またボーナストラックとして翌27日の名古屋公演からも「Cutting It Fine」と
「Here Comes The Feeling」が収録されており、大阪ではプレイしなかった
楽曲の補填もされているのが特徴です。そして更なるボーナスとして、
ウエットンがこの大阪公演で実際に使用していたイヤー・モニター・ソースから
直接音を拾った5曲分が収録してあり、2枚組みながらもディスク収録時間を
目一杯使ったバラエティに富む収録内容が楽しめるタイトルになっています。

収録内容ですが、この26日・大阪公演はセット自体は東京初日(24日)と
ほぼ同じではあるものの、やはり「Never Again」に代わって
「Ride Easy (バンド演奏版)」が組み込まれているのが特徴と言えるでしょう。
同様に「My Own Time (I'll Do What I Want)」が聴けるのも嬉しいポイント。
どちらも今回の来日公演では2回しかプレイされなかったうえ、そのうちの
1回がどちらもこの24bit録音で(そしてボーナスのイヤモニ音源としても)聴ける
本作の意義は非常に大きいと思います。またこの音質が更に際立っているのが
「I Know How You Feel」や「Open Your Eyes」といった空間性とドラマを
感じさせてくれる曲で、無音部分が大変綺麗に録れているので力強く
立ち上がってゆく演奏音がより深みを持っており、かつ切れ味鋭いシャープな
音でより際立って聴こえてくるのが好感度大です。そしてそれは即ち、
ハウのソロや「Don't Cry」の様なアコースティック系の静かな楽曲で
披露される演奏音も芯のある透明感抜群の音で楽しめるという事なので、
そこもまた本作の魅力でしょう。

ボーナストラック#1(Disc2-(7)〜(8))の27日・名古屋公演からの2曲も良好な
オーディエンス録音で収録。「Cutting It Fine」は冒頭の出だしにやや
不安定さがあるものの、リニューアルされて原曲のイメージがより色濃く出た
音作り(特にシンセサイザー)にも注目だし、終盤のボレロ部分の表情と
色彩感も抜群です。そして何と言っても「Here Comes The Feeling」。
何故これが大阪でセット落ちしたのか分かりませんが、全日程でやっても
良かったのではと思うほど力強い演奏だし、ウエットンの表現力と声の
伸びは名古屋でも格別だった事が分かると思います。

そしてボーナストラック#2(Disc2-(9)〜(13))はイヤモニ音源。演奏自体は
本編ディスク中で聴けるものと同じですが、ウエットンのマイクから音を直接
拾っているので彼の声が圧倒的に近く、当日の彼がステージ上で実際に耳に
していた音を聴けるという興味深い音源です。拍手がやや遠めに聴こえ、
彼の声が耳元の直ぐ近くに聴こえるので、目を閉じて聴いていると自分が
ウエットンになってステージ中央に居る錯覚に陥るのも面白いです。(^^)
バンド演奏となった「Ride Easy」を、そして「My Own Time (I'll Do What I Want)」を
ステージの中央で、しかもウエットンが耳元で歌う姿で聴けるというのは
通常のオーディエンス録音では体験出来ない別次元のサウンドトリップでしょう。

音質は、大阪公演収録分のDisc-1〜Disc2-(6)が92点。
名古屋公演収録分のDisc2-(7)〜(8)が93点。
そしてイヤモニ収録分のDisc2-(9)〜(13)が94点。
イヤモニ音源はオーディエンスの音とミックスされていない
素のままでの収録ですが、本文中で記した通り透明感があって
ウエットンの声もかなり近く聴こえ、良い感じで収録されています。(^^)
2CDR。

『OSAKA 2012』 / (※ Special Bonus CDR for limited stickered edition of 『LIVE IN JAPAN 2014』"Vol.1+Vol.2")
Live at : Sankei Hall Breeze, Osaka, JAPAN. / 2012. Sep. 26

別枠で紹介している『ASIA - LIVE IN JAPAN 2014 VOLUME 1』及び『VOLUME 2』を
同時購入すると特典として付いてくる2枚組ボーナスCDR。何故今回の2014年来日公演
タイトルのボーナスが2012年の大阪公演なのかと言えば、これの『VOLUME 1』で見事
な録音を提示した"西日本最強テーパー"氏が録音・提供したものという繋がりからの
様です。彼が録音した音源と言えば2012年XXXツアーでの名古屋公演を収録した傑作タ
イトル『LIVING A LEGACY (Virtuoso-143/144)』(※ひとつ↓の項参照)がありますが、
彼は当時名古屋だけでなくこうして大阪公演も録音していたという記録ですね。

ちなみにこの2012年9月26日大阪公演を収録したタイトルには
『THREE DECADES LATER...THE LEGACY CONTINUES! (Amity-297)』(※3つ↑の項参照)
という、東京・渋谷公会堂の2DAYSと大阪をカップリングした6枚組が同メーカーから
リリースされていましたが、これの大阪公演収録部分(※ディスク5と6)よりも本作
録音の方が圧倒的に優れています。当時、この6枚組タイトルのリリース後に西日本さん
からメーカーに音源提供があったのか、もしくは同時期にリリースされた名古屋公演
『LIVING A LEGACY』よりは音質が劣るので採用を見送られたのか、真相は僕も知りません。
でももしあの当時この音源が『THREE DECADES LATER...』のディスク5と6に収録されていたら
このタイトルの評価もグッと上がっていただろうにと思います。何故なら、『THREE DECADES
LATER...』のディスク5と6は録音マイクに服かバッグの一部が触れているらしいノイズが時折
入っており、これが若干耳障りな録音だったからです。しかしいずれにせよ同2012年の暮れに
(株)ワードレコーズからこの時の日本4公演全てが公式サウンドボードとして完全収録され
『30周年記念スーパー・プレミアムBOX』の中に8枚組として含まれた事で、2012年日本公演を
収録した全てのブートは駆逐されてしまった訳ですけども。(^_^;)

そこで本作。オーディエンス録音なので決してサウンドボードの様に透き通った音ではないです。
しかしここにはあの日、熱気で震える会場の空気の中を伝わってきた何も手を加えられていない
手応えのある音がしっかり息衝いています。西日本氏がメーカーに寄せたコメントによると、録音
した座席はM列(13列目)の中央とのことで、収録マイクは臨場感やホールの鳴りをそのまま再現
するものを使用したそうですが、これを聴くとあの当時ブートのファンが求めていた音が今になっ
てやっと出てきた様な気がします。ボーナス扱いですがマニアなら聴いておきたい一枚です。

音質90点。
2CDR・ボーナスタイトル。
2014年7月4日リリース。
『LIVING A LEGACY』 / (Virtuoso-143/144)
Live at : Zepp Nagoya, Nagoya, JAPAN. / 2012. Sep. 27

日本公演最終日・27日の名古屋公演を収録。
おごそかにスタートする「Only Time Will Tell」は全公演中最高の出来栄えで、
肉厚なサウンドを提示しながら非常に安定感のあるパフォーマンスを披露。同様に
「Wildest Dreams」もきっちり演奏しているのが印象的です。細かなスタッカートの
表現も綺麗ですし、曲想がハードに変化し始める中間部でのギターも素晴らしいですね。
「Face On The Bridge」もゴツゴツしたサウンドの中を滑らかに漂うコーラスの響きと
ウエットンの声がとても心地良く、ヒューマンボイスが鳴る箇所(4分48秒付近〜)も
大変ドラマチックです。そこから始まるギターの展開も素晴らしいですし、コーダ部で
「ヴィ〜ン、ヴィ〜ン」と何気ないベースのスライドが鳴っているのもカッコいいです。(^^)
「Time Again」も強烈で、ここにきてこの曲は82年〜83年時の熱気ある演奏を越えつつ
あるんじゃないでしょうか。リズムの弾け方も実に素晴らしいし、シンバル+ピアノに
なる箇所(1分57秒付近ほか)のブルージーな表情も見事としか言えません。ウエットンの
切なく捻りあげる歌唱や、疾走感のあるサウンドの中をブビバビと唸りながら駆けてゆく
ベースラインも非常に魅力的です。

スティーヴのソロは新曲「Solitaire」からスタート。これがまたアメイジングで、繊細かつ
華麗な指捌きから紡ぎ出される芯のある弱音の綴れ織りが実に見事です。「The Clap」でも
珍しいアドリヴをさり気なく入れていて(2分02秒付近)、この日も素晴らしいソロタイムを
披露しています。しかしここでの「Solitaire」、会場で生で観た人、生音を間近で聴いた人が
本当に羨ましい。(^^;)「The Smile Has...」は前半から後半へ繋ぐブリッジが非常に安定
しており(たぶん今回の来日公演中で一番しっかり表現出来ていると思う)、後半の
アンサンブルも一際感動的。メロウな響きの中を音階がユニゾンで一気に駆け上がる
箇所(1分10秒付近)の鮮烈さも大きな聴き処でしょう。

25日の東京公演から一日開けて披露された「Cutting It Fine」はここでも原点回帰的な
サウンド表現の練り直しが際立っています。ウォームアップ代わりに「Holy War」を披露
してから始まるカールのソロは、この日が全公演中で一番面白いアクションだったのでは
ないでしょうか。特にシンバルアプローチがこれだけ延々と続くのは非常に面白いですし、
時折入るバスドラムとの対比もユニークです。ストロークの速さにも相変わらず驚かされ
ますが、ドラマーとしての彼の良いところは決してマッシヴなアクションだけで終わらず、
こうして弱音のアプローチも繊細に出来る事だと思います。25日の東京公演以来となる
「Here Comes The Feeling」は的確に見直されて原点回帰を図ったサウンドが名古屋でも
高らかに響いている様子が克明にレコードされています。後半で何度も入ってくる独特な
ギターアプローチもこの日は素晴らしいです。

「Open Your Eyes」はこの日、ウエットンが音程を変えて歌っている箇所があり(3分04秒付近)、
これが独特のアクセントになっているのも魅力でしょう。後半部では他日公演同様にキーボードが
かなり前面に出てきており、そこから引き継ぐギターアプローチが非常にスリリング。その後ろで
たたみ込む様に激しく暴れ回っているエキサイティングなドラムにも大注目でしょう。
「Heat Of The Moment」はこの日、導入部のギターの後ろでベースが目立って鳴っているのが
面白いです(00分30秒付近〜)。またこの日は来日公演中で唯一、ダウンズがショルダーキーボードを
担いでフロントに出てきており、最後の最後で聴けるこのシーンはなかなか新鮮です。(^^)

音質92点+α。
演奏音もなかなか近く、音の解像度も思った以上に高く鮮明で、
透明感と重厚感のある音で収録されています。
2CDプレス盤。
『THE DAY OF REGENCY』 / (Amity - 304)
Live at : Regency Ballroom, San Francisco, CA, USA / 2012. Nov. 7

現行エイジアの動向をステレオ・サウンドボードで収録した最新音源。
この日のライブは米国AXS TV(※旧・HDNet。2012年夏に開局した米国のテレビ局で、
ライブ・エンタテインメントに特化したチャンネルらしい)で放送された為に、
20分の休憩を挟んで2部構成で行われるという特別プログラムとなっています。
本作はDisc-1にその前半となる第一部、そしてDisc-2に後半の第二部が完全収録
されています。

さすがにライン録音なので音質は良く、「Wildest Dreams」では曲の随所
(全てではないところがミソ)でボーカルラインに弱めのエコーが掛けられて
いるのですが、これも鮮明に聞こえます。恐らく他日の公演でも似た様な
ニュアンスで掛けられているのだと思うけど、オーディエンス収録では潰れて
確認出来ないこうした繊細なエコー音の拡散の様子もくっきり聴けるのは
ライン録音ならではでしょう。中間のブレイクとなる2分25秒付近〜37秒付近の
音の散らし方も他日公演より繊細で完璧ですし、後半のドラムソロではスネアを
長めに連打するシーンがあったり、リムショット気味のアプローチを出している
箇所もあって聴き応えあります。「Time Again」では楽曲後半4分12秒付近で
シンセボイスが一瞬だけ「OOPS!!」といった感じの変な音で鳴っており、たぶん
ミスタッチか機材トラブルなんだろうけどこれがなかなか面白い。(^^;)
「Tomorrow The World」はスピード感のある曲想がこの日も良く出ていますが、
ここではそれ以上にウエットンの歌唱・・というか歌唱する際の発音の入り方や
言葉の切り方が大変シャープで心地良く聞こえます。これは「I Know How You Feel」
でも同様なんだけど、無音部分が綺麗な為に肉声の温もりがダイレクトに伝わって
くるんですね。これはまさにライン録音ならではの魅力でしょう。
ハウのソロで披露されている「Pyramidology」はクリス・ローリーのカバー曲で、
「The Golden Mean」は2008年にリリースした自身のソロ作品からの曲。どちらも
普段殆どやらない大変珍しい曲だと思いますし、ソロ終了後に楽曲の紹介を
しているのも珍しいですね。「I Know How You Feel」では曲中の3箇所ほどで
電圧が落ちたような立ち上がりの悪いシンセ音が聴こえますが、ウエットンはその間も
全くブレずに歌唱し続けているのが印象的です。そしてThe Smile Has...」の終演後、
ウエットンが
「...We gotta take break now for 20 minutes. And see you later, thank you」
と告げて第一部、Disc-1が終了します。

Disc-2は後半の第二部を完全収録。
幕間に流れていたらしいBGM後半からカット・インし、暫くして「Cutting It Fine」が
スタート。翌日の公演以降で聴ける奇妙なテンポの遅さが既に感じられますが、
この日はまださほど違和感を感じる程ではありません。ドラムソロは「Holy War」の
コーダの旋律がまだ残っているうちにシンバルの連打が既に始まっており、そこから
切れ目無く突入。もはや日本公演の時の様にドラムソロ単体で披露する形では無くなり
つつある様です。また「An Extraordinary Life」は冒頭でライン録音の特徴がよく出て
おり、各楽器の音色の重なりがとても鮮烈。ここにウエットンの声が重なってゆく様子も
絶品なんですが、ここでは更に各メンバーのコーラスも非常に魅力的なトーンで響いて
おり、このコーラスの妙技が秀逸な音で聞ける点も本作の大きな聴き処でしょう。

「Here Comes The Feeling」は音色の炸裂感に満ち溢れたこの日一番の演奏。
アンサンブルの安定度もピカイチですが、ここではこの音源の特徴でもある
キーボードの出力バランスが大きく出ている点も特徴で、深めで鋭いエフェクト
処理が楽想を更に魅力溢れるものにしていると思います。「Sole Survivor」では
中間部でブレイクする箇所の音の散らし方(2分46秒付近〜)に注目で、タッチではなく
スイッチをオフにして消音しているらしい様子が確認出来て生々しいです。ラストの
「Heat Of The Moment」はギターのスライドからスタート。翌8日の演奏ではこの部分を
クロマティック・ランにしてスタートしており、この時期のハウは導入部に何らかの変化を
付けたかったのかもしれないですね。この曲もまたボーカルラインに深めのエコーが掛けられ、
キーボードのエフェクトも深めで曲のスケール感が一層増して聞こえるのが特徴です。

音の分離、透明度、音圧、そして完璧なノイズレスの音像は殆どオフィシャル級の
パーフェクトな音質だと思います。でも一番驚くのはその演奏の良さでしょう。
さすがにテレビ放送されるという緊張感が演奏面にもプラスに作用している様で、
この日は演奏そのものが良質だと思います。ライン音源という特質上、恐らく全ての曲が
実際のPAアウトとは違う音像で聴こえている事は否定出来ませんが、でもそれを差し引いても
音質と演奏の両方が高次元で融合した秀逸なタイトルだと思います。

音質98点。
2CDR。
『THREE DECADES OF DREAMS』 / (MINDWARP, MWCD - 090/091)
Live at : Regency Ballroom, San Francisco, CA, USA / 2012. Nov. 7

上段↑で紹介している『THE DAY OF REGENCY (Amity - 304)』と同日の音源。
使用しているマスター音源も同じで(※恐らくどちらもネット上にアップされた
同一の音源を使用している)、パッと聞く分には殆ど差がありません。しかし実際に
PC上でリンクさせて音を聴き比べてみると、どの曲もほんの僅かですが本作の方が
明瞭感に欠けているのが分かります。たぶん両メーカーが商品にする際に施した
リマスタリングの差だと思うんですが、本作は僅かに音が沈んで鮮明さに欠けるのが
難ですね。でも前述した通り、パッと聞いただけでは分からない程度の僅かな差です。

でも大きく差があるのは、収録されたトラック配分。

←に載せた裏ジャケの画像を見て戴いても分かりますが、本作のDisc-1には
トラック(1)のオープニングSEから、(12)の「The Smile Has...」までクレジット
されています。しかし実際にディスクを聴いてみると、実は(11)の「Don't Cry」
までしか収録されていないんですね。「The Smile Has...」は、実際にはDisc-2の
トラック(1)に収録されています。従って、ジャケに記載されているクレジットと
実際のトラック配分が違っている訳です。

というワケで、本作は実際には次の様に収録されています。
------------------------------------------
Disc-1

(1)「Enigma Variations: Nimrod」(←第一部開演)

この間は同じ

(11)「Don't Cry」

******************************************
Disc-2

(1)「The Smile Has Left Your Eyes」(←第一部終了)
(2)「Cutting It Fine」(←第二部開演)

この間は同じ

(9)「Heat Of The Moment」(終演)
------------------------------------------
こんなふうにDisc-1は表示されている曲数より一曲少なく、
Disc-2は表示されているクレジットより一曲多い訳なんですが、
でもこれは致命的なミスだと思います。

というのも、本公演の最大の特徴は前半60分+後半60分という2部構成である事なので、
第一部の終わり「The Smile Has...」と第二部の始まり「Cutting It Fine」が
同一ディスクに入ってしまっているのはこの特別プログラムの醍醐味をパーにして
いるのと同じです。前半と後半はどちらもほぼ1時間の公演ですし、ディスクの
収録時間から言っても余裕で入る筈ですから第一部の終りと第二部の始まりを
一緒のディスクに入れる意味は全く無い筈。何でこんな奇妙な配分で収録を
したのか分かりませんが、でもまぁジャケにもディスク盤面にもDisc-1には
トラック(12)として「The Smile Has...」が明記されているので、これはもう
メーカーの凡ミスなのでしょう。

音質98点−α。
2CDR。
『NO SURVIVOR FROM THE CASINO』 / (Amity - 302)
Live at : Samala Showroom, Chumash Casino, Santa Ynez, CA, USA / 2012. Nov. 8

日本公演終了後に行われた北アメリカツアーからその後のエイジアの動向を追える一枚。
また、カジノという場所柄なのかこの日はどうやらさほど大きくないと思われる会場で
演奏しているらしく、オーディエンスとの距離も近しくてフレンドリーな感じがします。
冒頭「Only Time Will Tell」は出だしから若干アンサンブルが怪しい事を伺わせていますが
直ぐに持ち直してこの日はまぁまぁのスタートを切っています。「Wildest Dreams」では
後半のドラムソロに早くも変化が見られ、カツカツとリムショットを入れるという面白い
アプローチを聴く事が出来ます。しかもこの曲のキメとなるあのドラムソロなのにさほど
「激しくない」うえ、終曲部の鐘の音色の散らし方も妙に散漫。明らかに変化の兆候が
聴いて取れる興味深い箇所だと思います。一転して「Time Again」はなかなかのグルーヴ。
曲中で一旦ブレイクし、ジャジーな雰囲気になってまたメインテーマに戻る一連の表現は
この日も秀逸で、日本公演時よりも艶が出て磨きが掛かった気がします。この日は終曲部で
ギターを一瞬スライドさせているのも珍しいですね。

この日のハウのギターソロは「Goin' Down The Road Feelin' Bad」「Gloriana」という
古いカントリー曲を立て続けに披露。これはたぶん土地柄・場所柄に配慮した選曲なんだと
思います(※カジノがある場所では昔からカントリー音楽が盛んなのだそうです)。演奏後、
ハウが簡単に今弾いた曲の紹介をしているというのも異例ですね。またアコースティックの
「Don't Cry」では終曲部に変化が見られ、「Thank You So Much, ha,ha,ha!!」と笑いながら
途中で歌うのを切り上げる展開になっているのが確認出来ます。「Cutting It Fine」は
この日かなりスローテンポ。一瞬ピッチがおかしいのかと耳を疑ってしまうほど不思議な
演奏ですが、グルーヴ感にこれだけ欠けるパフォーマンスは或る意味レアテイクですね。
しかし不安定ながらも曲のメリハリはちゃんと出ているのだから不思議なものです。

カールのソロはこの日もシンバルと金物系を主軸に置いたもので、9月27日の名古屋公演の
ソロ構成が更に発展した感じです。途中で笑いを誘うアプローチ(3分33秒付近ほか)をして
いるのもその流れの延長線上にあるのでしょう。「Holy War」はこの日はどこか安全運転な
様子が滲み出ていて、日本公演で聴かれた様な危険で荒々しい感じがやや希薄に感じます。
さすがに後半のドラムソロの箇所はそれなりに迫力があるものの、どこか淡々と演奏して
いる感じは否めないんじゃないでしょうか。「Heat Of The Moment」は冒頭でギターの
クロマティック・ランから入ってゆくという珍しいスタート(終曲手前の6分25秒付近でも
一瞬やっている)。なかなか白熱した演奏で、もう何百回もやっているパフォーマンスを
全くブレずにやり切っているショウマンシップはさすがでしょう。つい見過ごされがち
だけど、やはり元々はプログレの人達がこういうショウビジネスをしっかりやれる姿って
のは本当に凄いと思います。特にこの日は場所がカジノだけに余計そんな感じがするのかも
しれませんね。

尚、この日のアンコールはこの曲のみで、「Sole Survivor」を演奏していません。
恐らく会場で割り振られた時間配分が短かったのだと思いますがMCも控え目ですし、
ややショートプログラム的な構成になっているのもこの公演の特徴でしょう。

最後に音質面について特記しておくと、本作はまさにサウンドボード級の音質で収録
されているのが最大の目玉だと思います。演奏音も近く、透明度も高く、音圧も文句無し。
まさにオーディエンス収録としてはほぼパーフェクトと言える極上の収録音です。(^_^)

音質96点。
2CDR。
『AGOURA HILLS 2012』 / (Amity - 301)
Live at : Canyon Club, Agoura Hills, CA, USA / 2012. Nov. 9

上段↑で紹介している『NO SURVIVOR FROM THE CASINO (Amity - 302)』 の翌日の公演が
収録されたタイトル。昨日のショートプログラムからフルセットに戻されており、いつもの
通常公演が楽しめる音源となっています。オープニング「Only Time Will Tell」は昨日より
安定感が増していますが、中盤2分15秒付近でギターにトラブルが発生している模様。
3分14秒付近で再びギターが入ってきますがこの間の約一分間はトリオ演奏となっていて、
これはこれでなかなか面白い演奏となっています。「Time Again」は曲の持つ運動性が
よく出た好パフォーマンス。演奏のもたつきもさほど感じられず、昨日の公演同様に
なかなかのアンサンブルだと思います。曲の後半(3分49秒付近〜)ではカールが奇妙な音で
リズムを刻んでいるのですが、これもなかなかユニークな表現になっています。
バンド演奏に戻された「Ride Easy」は日本公演時よりスムーズなアンサンブルが聴き処。
ゴツゴツした感じが若干取れて曲想にレガートが感じられる様になり、ブリッジとなる
2分22秒付近〜47秒付近の繊細な音の表現もグッと説得力が増した様に思います。
「Don't Cry」は昨日の公演同様に終曲部を途中で歌い止めて「Thank You, ha,ha,ha...」
とする展開。ここ数日間の演奏で聴ける形態ですが、これはなかなか面白い変化だと思います。
「The Smile Has Left Your Eyes」も前半と後半コントラストが素晴らしく出た演奏。
ブリッジの表現もかなり安定してきましたが、なんと言っても後半部の表現力は
82年ヨーロッパツアー時と比べても遜色無いどころか、過去最強の表現力に達していると
思えてなりません。素晴らしい演奏です。

「Cutting It Fine」は前日同様に若干スローテンポ。どうしてこういうスタイルに
変えたのかよく分かりませんが、一方でギターが結構良い感じで絡んでいるのも事実で、
今後の楽想変化に不安と期待が入り混じる演奏です。セットに戻された
「Here Comes The Feeling」は歌唱表現が見事。歌詞3番で聞けるコブシを効かせた
「♪Oh God where were you, when I needed you」の恒例の表現もこの日も鳥肌が立ちます。
ただ2分52秒付近から入る筈のキーボードのアルペジオが何故かオフ気味だったりギターが
不安定だったりで、その見事なボーカルワークを支えきれていない凡ミスが残念なところ。
でも一転して「Open Your Eyes」は素晴らしい演奏力が炸裂するパフォーマンスとなっており、
歌詞2番から3番へのブリッジとなる2分16秒付近からの絶妙なアンサンブルは目を(耳を)見張る
ものがあると思いますし、徐々にハードなイメージへ移行する後半部の表現も見事です。

アンコールは前日ではセットから外されていた「Sole Survivor」が復帰。
冒頭部からベースラインがメリハリのある音で鳴っているのが心地良く、
サウンドもゴツゴツしていてなかなかカッコイイです。また日本公演同様に
中間部での引き伸ばしパートがここでも健在で、不思議なアクセント付けとして
かなり定着している様子が伺えます。後半で延々と熱く弾き続けているギターも
見事なもので、ここは聴き処のひとつでしょう。終曲後、そんなサウンドの
抑揚感を保ったまま間髪要れずに「Heat Of The Moment」がスタート。
オーディエンスの反応も良く、終盤の一旦ブレイクしてからリ・スタートする付近
ではカール(たぶん)もオーディエンスを一瞬煽っていて、素晴らしい興奮に包まれ
ながらショウを終えています。この「Open Your Eyes」〜「Heat Of The Moment」と
続く最後の3曲は間違いなくこの日最高のシーンでしょう。見事なショウ・エンドです。(^^)

音質93点。
2CDR。
2013年 サム・コールソン加入後〜
『HEAT & WILDEST : FIRST 2 STAGES WITH SAM』 / (Amity - 313)
Live at
Disc1+2 : The Stables, Milton Keynes, UK. / 2013. June. 5th
Disc3 : Sweden Rock Festival, Norje, Sweden. / 2013. June. 7th

サム・クールソンを擁してようやく動き始めたエイジアの、初演を含む2公演分を
収録した3枚組。本作に先行して同系列のレーベルから『MILTON KEYNES 2013』という
ギフトタイトルがリリースされていましたが(・・持ってない。泣)、本作はそれとは
別のオリジナルDATマスターを使用した音源です(※「MILTON KEYNES 2013」はネットの
アップロード音源から落とされていたらしい)。こういう音源ではどうしても交代した
ギターについ耳を奪われがちなんですが、しかし本作で注目なのはそうしたサムの
ギタープレイやスタイルだけでなく、彼が加入した事によって若返った(※ 或いは
"更新された"と言っても良い)エイジア・サウンド全体の輝きだと思います。

まず初演となったミルトン・キーンズ公演(Disc-1と2)ですが、冒頭
「Wildest Dreams」からハウとは違うギターのアプローチが早くも耳を
くすぐってきます。「Time Again」はギターが若干スタッカート気味で
サウンドが"跳ねて"おり、聴き慣れた曲が初めて顔を覗かせた新しい
魅力が見えるようです。「Open Your Eyes」は中間部で聴けるギターと
鍵盤によるユニゾンの輝き、そして後半〜終盤で高らかに鳴り響くサムの
サウンドが良い感じです。また「Heroine」や、ここにきて初めてセットイン
した名曲「Ever Yours」の静かなギターのアプローチも聴き処でしょう。
静かなイントロに導かれてゆく「My Own Time (I'll Do What I Want)」は
2012年の日本公演で披露した時より曲の輪郭がハッキリしており、元来の
楽曲の良さがより惹き出された演奏だと思います。

「Days Like These」は久々のセットイン。オメガツアーをやっていた
2011年5月以来、約2年振りのプレイだと思います(※ このページ内にある
『INFINITY (SPIDER‐0063/64)』の項を参照のこと)。当時はセット落ちした
「Go」の代わりとしてセットインしていましたが、ハウがこうしたハード
ポップ調のギターアプローチを嫌ったのか非常に短期間でセットから外されて
しまいましたが、サムが音を出す事で楽曲本来の輝きを取り戻していると思います。
「Holy War」は終曲部にアレンジが施されてドラムソロが単体で演奏されなくなり、
流れを途切らせずにソロへ繋げている事にも注目です。

Disc-3には初演から2日後のスウェーデンでのロックフェスの模様が収録されて
いますが、メーカーのアナウンスによるとこちらはネットにアップロードされた
マスターから収録している様です。まず演奏面で特記したいのは「Don't Cry」で、
この日は終曲部で音の着地点を一瞬見失いない、即興で他日とは違った着地をして
いるのが印象的です。「An Extraordinary Life」も初日同様にメリハリの効いた
ハードな演奏が耳を惹きますが、これを聴くと必ずしもサムのギターだけがそう
なっているのではなく、アンサンブル全体がより力強くなっている事に気付くと
思います。個人的な感想ですが、もしかするとウエットンは本来こうしたハードな
曲想を想定して曲を書き、それが今になってやっと具現化しているのではないで
しょうか。続く「Open Your Eyes」や「Face On The Bridge」もそうで、サムが
ハウとは段違いのへヴィな音色でアプローチする事によりサウンド全体が明らかに
若返っていると思うんですね。余計なMC一切為し、ソロも省略、一曲終わるとほぼ
間髪入れずに次の曲へ・・と、持ち時間をフルに使ってエイジアの魅力を凝縮した様な
ショウですが、時間的余裕があるフルセットと比べると曲数も分数も短いのに、
聴き終えて心地良い疲労感を覚えるのはむしろこの7日公演の方だと思います。

長くエイジアのサウンドと接し続けてきて感じるのは、意外とエイジアにはこの手の
へヴィで華のあるギターサウンドが合っていると思える事です。本作に収録された
音源を聴く限り、セッション不足なのか解釈の甘さなのか練習不足なのかは分かり
ませんが、サムのギターにはまだアプローチの甘さやプレイミスが散見されます。
しかしアプローチのミスなら82〜83年当時のエイジア全盛期のハウだってタップリ
やっていたし、89年のホルガー・ラリッシュ、90年のパット・スロールにしても同様
でしょう。でもそれら当時のギタープレイヤーのミスがさほど気にならなかったのは、
それが情熱的なミスであったからだと思うんですね。

反面、2006年〜2012年までのエイジアに於けるハウのギタープレイは"壊れた骨董品"
という感じだったと思うのです。勿論良い時も沢山あったけど、良くないプレイも結構
目立ったのはここ数年聴いてきた人ならお分かりでしょう。しかしエイジア・サウンドが
元来求めていたのはそうした技巧崩れのミストーンではなく、例えミスしても情熱が
感じられる華やかなギターサウンドだったのではないでしょうか。本作は、そうした
エイジアサウンドの根幹とは一体何なのかという事を改めて我々に問い直してくる
興味深い音源だと思います。

音質は、Disc-1と2のミルトン・キーンズ公演が90点。
Disc-3のロックフェス音源が92点・・といった感じでしょうか。
どちらも透明度の高い優れた音質で収録されています。
3CDR。
『MILTON KEYNES 2013 / SWEDEN ROCK FESTIVAL 2013』 / (Joker Man, JM-150)
Live at
Disc1+2 : The Stables, Milton Keynes, UK. / 2013. June. 5th
Disc3 : Sweden Rock Festival, Norje, Sweden. / 2013. June. 7th

上段↑で紹介している『HEAT & WILDEST (Amity 313)』と同内容。
収録されている公演内容もDisc-1+2にはミルトン・キーンズ公演が、
Disc-3にはスウェーデン・ロックフェス公演がそれぞれ収録されています。
但し本作のミルトン・キーンズ音源は別マスターからの収録となっており、
これが両タイトルの大きな差となっているんですね。このマスター違いの
音源については、同時期にリリースされていた『MILTON KEYNES 2013』という
某ブートレッグショップで配布されたギフトタイトルCDと同内容の可能性があります。

「可能性がある」としか書けないのは、残念ながら僕は『MILTON KEYNES 2013』
を持っていないから。この為、両音源のマスターの比較・確認が出来ません。
とはいえ、マスターが違っていることで両タイトルの音質には大きく差が
生じており、ミルトン・キーンズ公演は本作の方が『HEAT & WILDEST』よりも
演奏音が近く、5歩ほど手前に出た解像度の高い明瞭な音像で聴こえるのが
最大の特徴でしょう。

しかし残念な事に、本作は収録内容とクレジット表記に問題を抱えているんですね。(-_-;)
具体的にはDisc2-(6)に表記されている「Time Again」ですが、これがまず曲目上の
表記はあるのに未収録となっています。しかもこの「Time Again」は実際には
「Days Like These」の次に演奏されているので、曲目表記の順序も間違って
いるというお粗末さ。「Days Like These」の終演後にも明確なカットの痕跡が
残っています。この根本的な原因は音源のアップローダーがマスター音源を
ネット上に上げた時、間違って「Time Again」と「Go」を逆の順番で上げて
しまった為ですが、恐らく本作のメーカーはこの点をきちんと確認しないまま
パッケージにしてしまったのでしょう。という訳で本作に収録されている
ミルトン・キーンズ公演は不完全収録音源です。

またDisc-3に収録されているスウェーデン・ロックフェスの音源ですが、
こちらのマスターは『HEAT & WILDEST』のDisc-3に収録されているものと
全く同じものが使われています。しかしこれも何故か音質には明確な差があり、
本作は若干奥まった音で収録されているのが特徴。そんなに悪い音質ではないの
ですが、比べてしまうと演奏の明瞭感と音像のパンチの点で『HEAT & WILDEST』の
Disc-3に一歩譲っているという印象は否めないと思います。

音質は、Disc-1と2のミルトン・キーンズ公演が92点。
Disc-3のロックフェス音源が・・うーん、89点ぐらいかな。
3CDR。
『DARMSTADT 2013 - The Final Night Of German Tour 2013』 / (Bonus CD : Free Gift Item)
Live at : Centralstation, Darmstadt, GERMANY. / 2013. Sep. 03

西新宿の某ブートレッグCDショップでCD2点以上買うと貰えたギフトタイトル。
5日間だけ組まれた8月末から9月頭にかけて行われた短いドイツ・ツアーの
最終日が、開演前〜終演後まで完全フル収録されている一枚です。

ショウはオープニングSEの"前"から収録されていて、バンドを紹介する
アナウンスが暫く入ってからオープニングSEが始まります。
「Only Time Will Tell」は初っ端からシンセの出音が不安定で、
明らかに機材トラブルを抱えながらジェフが奮闘しています。でも
逆にそのおかげで他では聴けないフレーズを突発的に多々弾いており、
なかなかレアなパフォーマンスとなっています。「Wildest Dreams」は
全体的にテンポ遅め。出だしなど何かの間違いではというくらいに遅い
ですが、本編に入って鍵盤が和音を刻み始めてからは少し持ち直して
います。たぶん意図的にテンポをスローダウンしているのだと思うけど、
どうしてこういうテンポに変更したのかちょっと不思議ですね。

「Face On The Bridge」はこういうハードタイプの曲想が弾き易いのか
ギターも全体音に馴染んでいるのがよく分かる一曲。後半のギターソロ
など終曲までかなり伸びやかに弾きまくっていますし、ハウではこうは
いかなかったでしょう。これはサムに代わって吉と出た一つの好例じゃ
ないかなぁ。序盤で鍵盤のテンポが乱れる箇所はあるものの、リズムを
溜め込む様に進んでゆく全体の流れはなかなかのものがあると思います。
「Don't Cry」もなかなか爽快感があるパフォーマンスで、ウエットンも
気持ち良さそうに歌い上げているのが印象的。この曲でも終盤でギターが
前面に出て歌っている箇所が出てきますが、全く違和感無くサウンド
イメージに溶け込んでいて良いですね。「An Extraordinary Life」も
出だしの部分でミュート気味に刻んだギター(00分39秒付近〜)が曲に
彩りとインパクトを与えており、曲の期待感を高めています。この曲は
ハウ時代のイメージも良かったですが、サムのアプローチも決して
捨てたものではないと思います。

「Open Your Eyes」はクラシックな楽曲イメージがモダンに生まれ変わって
いる極上の演奏。2コーラス目の後で出てくるブリッジの部分(1分58秒付近〜)
でピアノの旋律が廻っているのも素晴らしいですし、曲の中盤で「Aaahh...」と
何度も旋律を繰り返してゆく箇所が新たに盛り込まれているのも大きな聴き処
でしょう。そこから後半へ向かって音楽が大きく動き出してゆく様子はとても
鮮やかで、これまで以上に快い変化に富んだ音になっていると思います。
小曲「Heroine」と「Voice Of America」はこれまでアコースティック版の
「Don't Cry」と「The Smile Has 〜」がツートップで担っていた役割を見事に
引き継いでおり、ショウの中のアコースティックタイムを新しいイメージで
再構成している様です。特に「Voice Of America」は終曲部の締め方が
随分すっきりしており、89年〜90年に披露していたものとは随分違っている
のが印象深いですね。そしてショウはこの「Voice Of America」の後に
約15分間のブレイクタイムが入ったようで、ここで第一部が終了しています。

第二部の開始となったのは「My Own Time (I'll Do What I Want)」。
これがなかなか素晴らしい演奏で、出だしの部分からギターのアルペジオが
効果的に鳴らされていますが、ハウの旋律をサムが巧みに自分の物にしている
様子が伺えます。シンセとピアノがそのフレーズを引き継いでゆくのも見事
ですが、コーラスが弱いのがちょっと難点かな。(^_^;)ハウの良かった
ところはコーラスも見事にこなせた事だと思うんですが、ここではシンセの
不調も相まって生コーラスが剥き出しになっている箇所が幾つかあり、その
コーラス面の貧弱さが表面化しているのが残念。でも演奏自体は決して悪く
ないと思います。「The Smile Has Left Your Eyes」は前半と後半を繋ぐ
ブリッジのギターフレーズをサムが健闘しており、曲想をより高めながら
後半部が大きく動き出してゆく様子が見事です。アンサンブルも纏まって
いて、時折dンセが目立った音で彩りを与えているのも気持ち良いです。

「Time Again」はハードなイメージが良く出た演奏で、若干テンポ抑え目
ながらも生きの良いサウンドが繰り出されています。ここは割とコーラスの
安定感が感じられるのも特徴で、中盤で聴けるギターソロも速弾きを含めた
切れ味の良い旋律が良く廻っていて気持ち良いです。次の「Days Like These」
も見事なもので、抑制の効いたハードなギターが良い感じで曲に馴染んでいる
のが耳に心地良く伝わってきます。またこの曲はキーボードのアプローチも
6月公演から変化を遂げており、更に積極的にメロディラインを挟んでくる様に
なっているのも注目でしょう。「Holy War」はこの日も素晴らしいグルーヴを
伴っており、「♪Ooohh...Holy War!!」のコーラスも随所で見事に決まっていて
楽曲が持っているドラマ性が良く出ていると思います。ドラムソロは前半から
中盤にかけてカールのコミカルな打音センスが色濃く出ていますが、単に
面白い音を出してるのではなくて、ここは打楽器の演劇的な効果に注目すべき
ではないでしょうか。これは僕個人の見解ですけれど、彼がこうした打音表現
をするのは、シュトックハウゼンとかリゲティの様な、ストイックでありながらも
どこか奇妙なユーモアを含んだ現代音楽に学んで来た事が大きかったんじゃないか
と思うんですね。そうした前衛的・先鋭的な打音慣れ親しんできたからこそ、
それに対する彼なりの答えと問い掛けとして自然とこうした打音のアプローチが
出ている様な気がします。

「Go」は出だしで「?」と感じる箇所もありますが、なかなか上質な
グルーヴが感じられる演奏。中盤でシンセが前面に出て荘厳な演出を
する箇所は流石ですし、ウエットンも押し込んだ様な、絞り込んだ様な
歌唱を随所で打ち出していて、演出面で面白いシーンが散見出来る
パフォーマンスになっています。「Sole Survivor」はハードなギター
サウンドが楽曲をよりタフにしており、90年にパット・スロールが
取っていたアプローチともまた違ったイメージで進んでゆくのが興味
深いです。また曲の中盤で観客にコーラスさせてから再び曲へ戻る
という展開も面白いですし、終盤のギターもサム独特のハードな
味付けで絡んでいながら決して安っぽいギターサウンドになっていない
点は特筆されるんじゃないでしょうか。「Heat Of The Moment」は
いつも以上に幸福感がある音で、ウエットンもいつになくハッピーな
声色で歌唱しているのがひしひし伝わってきます。「danke schon!」
以外は何と言っているかは分かりませんが、終盤の観客との掛け合い突入
から終曲"後"までやたらとドイツ語を連発しているのも印象深いです。
そしてそうした幸せな音の余韻を残す様に、エンディングSEが約2分近くも
延々と収録されている点も見逃せないポイントです。

音質92点。
2CDR。
2014年 GRAVITASツアー

『MALVERN 2014 -1ST SHOW OF GRAVITAS WORLD TOUR-』 / (Amity - 324)
Live at : Forum Theatre, Malvern, Worcestershire, UK. / 2014. June. 11

2014年6月の来日直前の6月11日に、地元イギリス・マルヴァーンで行われたGRAVITAS
ワールドツアーの初回公演を完全収録したタイトル。ここに使用された音源はイギリス人
の現地テーパーが収録したオリジナル録音を使用しており、トレーダー間やネット上には
一切出回っていない録音物となっている点が特徴でしょう。音質も独特で、この日は当日
のPAが関係しているのかショウ前半(Disc-1)はベースが若干大きめに出力されており、
ウエットンのファンには嬉しい音像となっています。中盤のアコースティック・パート以降
は透明度が際立つ音像となり、休憩を挟んだ後半(Disc-2)からは大変バランスの良い、質感
溢れるサウンドに変化するのも特徴でしょう。更にこの初日は(当然ですが)新作アルバムから
初披露された2曲の世界初演の様子が聴けるうえ、来日公演では何故かセットから外された
「My Own Time (I'll Do What I Want)」が聴けるなど、初日特有のレアな雰囲気が満載に
なっている点も見逃せません。

ショウがスタートすると「Sole Survivor」の出だしから低音域に図太い迫力を感じま
すが、この音像の中からパット・スロール在籍時のそれに近いハードな演奏が立ち上がり、
ぐんぐん駆け抜けてゆく様子はなかなか気持ち良いです。「Face On The Bridge」は本来
のテンポを取り戻し、ギター表現が若々しくなったことでサウンドがよりタフになって
いる様子が伺えます。ギターソロの終わりではフレーズを速弾きしたり、コーダでチョー
キングを入れるなど、サムによって刷新された"新しい解釈"も聴きどころでしょう。
リードトラック「Valkyrie」は当然ながら観客の前で披露する世界初演の演奏風景です。
初演特有の力強さと同時にまだ噛み砕かれていない初々しい表現が魅力となっており、
これは同6月の日本公演で披露したパフォーマンス以上の雰囲気を持っていると思います。
「My Own Time (I'll Do What I Want)」はその来日公演でセットから外されていた一曲。
しかも2012年のXXXツアーではエレクトリック・バージョンで披露されていたのに対し、
このGRAVITAS初日公演ではアコースティック版として生まれ変わっていて、これが非常に
素晴らしい効果を生んでいるんですね。曲の根底にある優雅な瑞々しさを見事に再構成し、
まるで滑らかな絹が耳元をスッと通り過ぎてゆくかの様な高い表現が魅力で、何故これが
日本公演でセットから外されたのか不思議でなりません。この名演が聴けるだけでもこの
録音は貴重でしょう。そしてこの付近から収録音のバランス(低音域がややラウドだった)
が改善され始め、澄んだ演奏音がウエットな質感を伴って再生されてゆきます。「The Sm
ile Has...」は中間のブリッジ部分でベースの音が数秒間出なくなるトラブルが発生して
いますが、ベテランらしくソツなく乗り切っている様子も見事です。

Disc-2はショウ後半で、第2部開演前のカールの挨拶から終演までを完全収録しています。
来日公演の時とは違い、こうして中盤でショウに休憩を挟んでいる様子が音で確認出来る
点も要チェックですね。収録音は前半Disc-1より更に良くなり、全体音のバランスの良さ
もグッと向上しています。さてそんな第2部でまず興味を惹かれるのが「Gravitas」で
しょう。もちろんこれも「Valkyrie」同様にこれがワールドプレミアとなる世界初演の様
子です。まだ音が完全に組織化されていない様子が伺える点もユニークですし、曲中に僅
かに埋め込まれたギターソロではサムがオリジナルの響きを遺憾なく発揮しているので、
新曲が観客の目の前で命を吹き込まれてゆく様子が存分に感じ取れると思います。「Go」
ではマンディ・メイヤーの良さを巧い具合にサムが継承している様子が伺えますが、ギタ
ーソロでは自分の持ち味を出したオリジナルのフレーズで弾きまくっている事に注目です。
というのも、この後の日本公演ではここまで自由には弾いていなかったからで、これもまた
日本公演との違いが感じられる興味深いシーンでしょう。また久々にエレクトリック版で
蘇った「Don't Cry」再披露の瞬間が記録されているのも聴き逃せません。楽曲が本来持っ
ていたストレートなポップロック感が堂々の復活を遂げ、若干音のズレはありますが新旧の
音のぶつかり合いの中に新しい響きが感じ取れる名シーンになっていると思います。
「Open Your Eyes」は歌唱パートの後ろや楽曲進行の合間で合いの手のように出てくるギ
ターの音色が独特で、ウエットンの熱唱も大きなトピックスでしょう。「Heat Of The Mom
ent」は初日らしい一面が顔を覗かせており、3分57〜58秒付近でカールが妙なアプローチに
チャレンジしてテンポが一瞬おかしくなっている箇所が出てきます(※録音ミスによる音飛び
にも聴こえますが・・)。まぁいずれにせよ、ここは初日でハッスルし過ぎたカールが苦笑い
している様子が目に浮かんでくる様ですね。(^_^;)

Disc-3はDVDRディスクとなっており、この初日のカールのドラムソロ"のみ"が約8分間収録
されています。映像の出所はyoutubeだと思いますが、本作リリース時にこの初日の映像は
これしか無かった為のボーナス収録でしょう。ドラムソロだけという断片映像ではあります
が、初日公演の様子を垣間見られるちょっとした資料映像となっています。

音質84点→87点(ショウが進むにつれ徐々に音質改善されます)。
2CDR+1DVDR。
発売日 / 2014年6月27日

『LIVE IN JAPAN 2014 - VOLUME 1』 / (Virtuoso 179/180/181/182)
Live at :
Disc1+2 - Zepp Nagoya, Nagoya, JAPAN. / 2014. June. 17
Disc3+4 - Sankei Hall Breeze, Osaka, JAPAN. / 2014. June. 18

新生エイジアの2014年の日本ツアーより、その前半戦となった6月17日の名古屋
公演と18日の大阪公演を極上音質のオリジナル・オーディエンス録音をマスター
にして終演後のアナウンスまで完全収録したタイトル。 両日共にマッシヴなサウ
ンドがレンジの広い透明な音域の中から耳元にどんどん攻め込んでくる魅惑の収録
音となっており、ハードタッチな音に変わった新生エイジアの魅力を最高値で届け
てくれる素晴らしい内容となっています。恐らくAUD録音としてはこれ以上望めない
ほどの超高品質サウンドを誇っており、見事な透明度を伴いながら幅広い音域をパー
フェクトに捉えたこの音像は驚きだと思います。ライブハウスならではのデッドな
響きも心地良く、2階席でありながら距離的なロスが一切感じられない演奏音の近さ
はビックリです。恐らくこれ以上の音質や音の近さを求めるならサウンドボードか
イヤモニ音源くらいしか無いと思いますが、AUD録音なのに正規盤と聴き間違うほど
のこの音質こそが"事件"と言えるんじゃないでしょうか。

しかもそのディスク1の名古屋公演は開演5分前(!!)を告げる場内アナウンスから収録
されており、「1812 Overture」のSEが流れ出すまでの待ちの時間まで楽しめるという
パーフェクトな記録っぷりです。「Sole Survivor」はよく聴くと歌詞1番にだけボー
カルに軽めのエコーが掛けられているのが確認出来ますが、日本公演の前に行った英国
マルヴァーン公演(※GRAVITASツアー初日・ひとつ↑の枠で紹介)ではこの部分にエコー
が掛けられておらず、これはさほど日が開いていない本国と日本のライブで表現に早くも
変化があった事が分かるシーンとなっています。「Time Again」はハードタッチの好シー
ンが続出し、中でもピアノの上昇音型の後から突入する中間部(3分02秒付近〜)のエネル
ギッシュな展開は、恐らく今回の日本公演中に演奏した同曲で最高のものだと思います。
「Valkyrie」は終曲部の最終音でダウンズがグリッサンドを入れていますが、これは2014
年の日本公演中の同曲で唯一のシーンとなっている点も注目でしょう。

ディスク2の「An Extraordinary Life」は各楽器が出す出音の分離感の良さが目立ち、
複数の音が同時に進行する響きの豊かさがサウンドボード級の解像度で飛び出してきます。
またウエットンが終曲間際の一節でオリジナルには無い歌詞を挿れて歌っている箇所も
あり(※4分50秒〜51秒)、これも聴きどころです。「Gravitas」は濡れそぼった湿り気の
ある音色が耳元で広がり、重たい演奏であるにも係わらず滑らかな曲想と音色で記録され
ているのもトピックス。「Only Time Will Tell」は曲のイメージを大切にしながら進んで
ゆくのが印象深く、これぞ"エイジアサウンド"というものが滲み出ている好演奏となってい
ます。「Open Your Eyes」ではギターとキーボードの出音が大きく出てサウンドのコントラ
ストが際立っているほか、ウエットンも喉を震わせながら絶唱するシーン(6分20秒付近〜終
曲)が眩しいですね。アンコール「Heat Of The Moment」の終演後は場内SEが流れ、終演を
告げる場内アナウンスも完全収録しています。このアナウンスではこのエイジア2014年
名古屋公演の主催、後援、特別協力をした各会社名が読み上げられており、資料音源と
しての価値とドキュメンタリー性をグッと高めているのが嬉しいところです。

ディスク3は翌18日、大阪公演の前半を収録。こちらもディスク1と2同様に質の高い録音
ですが、それもその筈、ここで聴ける大阪公演の録音位置は1階席2列目の真ん中、何と
ウェットンのド真ん前にある席からの収録なんですね!! つまりファンなら誰もが一度は
座ってみたいと憧れる"神席"からの録音となっている訳ですが、これも音を聴けば納得で
しょう。フロント席特有の高い音圧、そして前方ならではの綺麗で籠もりの一切ないブラ
イトな収録音はなかなかのものです。各楽器の音もアンプからの生音をダイレクトに拾っ
ているのですが、この"神席"はその恩恵として録音位置の目の前にあるベースアンプからの
生音を一番よく拾っているので、ライブ全編に渡ってウェットンの図太いベース音をリアル
かつ生々しく聴くことが出来るというこれ以上望めない狂喜乱舞の音像が耳を襲います。

「Sole Survivor」が始まると、固めのゴリゴリしたあのベース・サウンドが非常に目立ち、
実は後ろで見事な仕事をしているカールやサムの事などついつい忘れてしまいがちです。
また面白いのは、他日の演奏ではこの曲の最終音からカールのカウントが始まって次の
「Wildest Dreams」へと雪崩れ込むのに対し、この日は両曲に間を少し設けてから曲が
スタートするという変わったスイッチングになっている点でしょう。終曲後に入るMCでは
ウエットンが開口一番「マイド〜!! (※まいど・毎度)」と、大阪公演らしい挨拶をするの
もトピックスで、たぶんこの大阪弁の挨拶はこれが初めてじゃないかなぁ?(※ウエットン=
ダウンズの大阪公演ではやってたのかもしれないけど、聴いたことないので)。「Time Again」
もまたバリバリ・ゴリゴリと鳴るあのベースが圧倒的なまでに大きく録れており、ここも
"神席"の恩恵に触れられるシーンです。やかましく響きまくるベース音と伸びのある熱唱が
満載のこの5分間は、ウエットンのファンであれば失神間違い無しですね。(^_^;)

ディスク4は大阪公演の後半で、「An Extraordinary Life」のベース音の浮き立ちに冒頭
から嬉しい悲鳴をあげると思います。トラック(3)のキーボードソロは前日の名古屋公演には
無かったシーンで、これは「Cutting It Fine」後半のボレロ部分を抜き出したソロとなって
います。「Open Your Eyes」もこの録音は特徴的で、ベースラインが強調されている為に
他日以上に肉厚のドライヴ感が備わっている感じがします。特に後半ではカラフルに彩る
メロディラインとキーボードの広がりのある音色が重たいリズムに絡んで眩しく反応し、
そこにギターがより音楽性を高めてゆく様子が克明に捉えられていて、もう鳥肌モノです。
終演後はこの大阪公演もエンディングSE、そして公演終了を告げる場内放送まで完全収録
しており、この大阪公演を主催した放送局と協力スポンサーに関するアナウンス等が含ま
れています。ディスク2の同部分と同じく、ここもまた資料性の高さとドキュメンタリーな
魅力が際立つシーンです。ブートを長く聴いていると、こういうの凄く重要だと思います。

という訳で、ショウの内容を開演前〜終演後の様子までパーフェクトに捉えたドキュメン
タリー性の高さ、素晴らしい演奏の数々、そして何よりこの見事な録音は様々な面で非の
打ち所が無いタイトルだと思いますし、AUD録音で収録したものとしては2014年名阪2DAYSを
代表するタイトルだと思います。

音質は、
17日・名古屋(Disc1+2)が88点。
18日・大阪(Disc3+4)が93点。

4CDプレス盤。ピクチャーディスク仕様。
初回プレス分はナンバリングステッカー付き。
発売日 / 2014年7月4日

『LIVE IN JAPAN 2014 - ONE NIGHT IN OSAKA』 / (JM-208)
Live at : Sankei Hall Breeze, Osaka, JAPAN. / 2014. June. 18

2014年来日公演から、前半戦2日目となる18日の大阪公演のみを収録した2CDRタイトル。
別枠で紹介している『ASIA - COMPLETE TOKYO NIGHT (JM-203)』の姉妹盤と言えるもので、
こちらもレーベル自慢の24bitデシタル・オーディエンス・レコーディングで完全収録した
音質極上の一枚です。それもその筈、本作はデジタル録音の超高級マイクで有名な、
ゼンハイザー製の「MK4」を使用しているからなんですね。録音に興味ある方ならこれが
どの様な名機かは御存知と思いますが、簡単に紹介すると低音域から豊かな中音域、そして
グッと立つ高音域が録れる秀逸なマイクです。しかも予期しない突発的な大音量もレンジの
破綻を起こさず確実に記録し、そのうえ場の空間性も維持するという優れもの。しかし
テキトーに設置するだけで良いサウンドが録れる訳ではないし、或る程度の結果を出すには
それなりの経験や勘や技術も求められる訳ですが、このサウンドを聴けば間違いなく
「うん!」と頷かれるでしょう。まさに最強のデジタル生録サウンドが結実しています。

音の出だしから丸ごと収録された「1812 Overture」SEが終わると、低音域に明瞭なパンチ
が効いた「Sole Survivor」が勢い良く飛び出してくるのですが、この冒頭から各楽器の
分離感が良い事に気付きます。特にウエットンのゴリゴリ・ブリブリと唸りまくるベース
が鮮明な音で、しかも強烈なラウドさを伴いながら録れているんですね。またボーカルラ
インの透明感も抜群で、この日も名古屋公演同様に軽めに掛けられた歌詞1番のエコーが
鮮明に聴こえている点も要チェックです。またドラムも非常に解像度の高い鮮明な打音で
拾っており、ウエットン+パーマーが出す凄まじいリズムの運動性が最高値で伝わってく
る点も聴き逃せません。「Wildest Dreams」終演後の「マイド〜!!(※まいど〜!・毎度〜!)」
の挨拶も物凄く近い音で聴こえるし、「Face On The Bridge」と「Time Again」両曲の冒頭
ベースラインの質感溢れるラウドな響きは、初めて聴いたら失神するんじゃないでしょうか。
ギターの出音も見事なものがあり、随所で良い仕事をするサムのパフォーマンスも一音一音
つぶさに追える事も特記されると思います。「Valkyrie」では冒頭のサンプリング・コーラ
スに乗せたダウンズの声出しがまだ不安定である事をこの録音は克明に暴いているし、「Vo
ice Of America」は4人がそれぞれ出す弱音の分離が完璧に記録され、アコ版に編曲された
ことで際立った楽曲構造の美しさがパーフェクトな音像で掛け抜けてゆきます。

「An Extraordinary Life」では冒頭00分38秒から出てくるギターの近さと、1分00秒から
カールが出す金物系の打音の近さに驚かされます。その後ろで巧みに動くベースと歌唱ライ
ンの対比も眩しく、所々でボーカルに軽めに掛かるエコーもこの録音は見事に拾ってます。
イヤモニ収録でもないのに一体どうしてこんなに微細な音まで拾っているのか本当に不思議
ですが、これもMK4マイクの実力なのでしょう。「Gravitas」は中音域のタフで豊かな音像に
釘付けになる筈です。ベースとギターが同時にリズムを刻んでいる様子が高い解像度で記録
されてますし、伸びやかに後ろで鳴るキーボードやドラムの出音もバランスが良く心地良い
音で耳に届いてきます。「Go」はこの解像度の高い音像で聴くと、曲の出だしで感じられる
キーボードの出音不良が非常に生々しいですね。図太いリズムの刻みの要所要所でピアノと
ストリングス系の音がカラフルな音色を枝葉の様に伸ばしてゆく様子も色鮮やかな音像で
記録されているし、リズムの刻みを止めたギターが後半で妖艶に旋律を歌い出すシーンも
極めて明瞭な音で記録しています。「Only Time Will Tell」もまたこのMK4の実力が感じ
られるシーンとなっていて、歌詞1番が始まってからの浮き出るハイハットの打音とボーカル
の後ろにあるリッチな無音空間、やがて入ってくるアンサンブルの運動性とファンファーレ
の様なキーボードの伸びのある出音など、無音部分から高音域まで幅広く音が飛び交う広域
レンジを驚くほどの余裕と解像度で記録しています。同様に「Open Your Eyes」も序盤の
静かなシーンから突然現れるタフなアンサンブルが完璧な音像で飛び出てくるのも凄いです。
随所でメタリックな音色で彩りを与えるサムのアプローチが近い音で追ってゆける音像にも
びっくりしますが、ややもすると潰れて一つの音の塊になりがちな、こうした中音域に集中
する出音の数々がこれほどの分離感を伴って記録されている点に、最新機材の質の高さと
録音者の技術が滲み出ていると思います。アンコール「Heat Of The Moment」で聴ける、
浮き出る様なリズムと表情豊かな旋律の輪郭も特筆されるでしょう。トータルな印象として
(音質の良し悪しではなく)楽曲の運動性がこれほど見事に記録されたエイジアの録音物は
なかなか思い当たりませんし、2014年の大阪公演を不滅のものにした好盤だと思います。

音質93点+α。
2CDR。

『LIVE IN JAPAN 2014 - VOLUME 2』 / (Virtuoso 183/184/185/186)
Live at :
Disc1+2 - Shibuya kokaido, Tokyo, JAPAN / 2014. June. 19
Disc3+4 - Shibuya kokaido, Tokyo, JAPAN / 2014. June. 20

2014年の来日公演から、日本ツアー後半戦となる19日・20日の東京2DAYS、渋谷
公会堂での模様をパーフェクト収録したタイトル。ツアー前半の名阪2DAYSを極上
音質で収録した『LIVE IN JAPAN 2014 VOLUME 1』(別枠参照)の姉妹盤です。その
『VOLUME 1』同様、この東京2DAYSの本作に使用された録音も両日共に素晴らしい
オリジナル録音ソースが使用されているのですが、これを収録したテーパーさんは
『VOLUME 1』のテーパーである西日本最強さんとは別人物の様です。しかし本作も
見通しの良い透明感のある音像と音抜けの良さ、響きの深さが見事に出た録音と
なっていて、特に最終日20日の録音は19日以上に幅と奥行きを感じさせる音の密度感
があり、低音域の威力ある出音から高音域の豊かな伸びを巧く捉えていると思います。
録音者からメーカーに寄せられたデータを見ると19日の録音位置は「センターブロッ
ク4列目左寄り」、20日は「右ブロック5列目」となっていて、位置は異なれど両日共に
ステージ5列目以内という至近距離で生録したサウンドとなっています。

まずはディスク1の19日・東京初日ですが、「1812 Overture」のSEが鳴り終わると
広がりのある端正な音の質感で「Sole Survivor」がスタートします。3分41秒〜57秒
付近で聴けるキーボードとギターのリードでは17日・18日の名阪2DAYSと同じくギター
が音を細かく刻むハードタッチのアプローチがあり、これも魅惑の音像で再生されて
ゆきます。「Wildest Dreams」は後半ドラムソロの最後でリズムが"途切れない"もの
に変化しており、これは"途切れ途切れ"だった名古屋公演やイギリスのマルヴァーン
公演(※別枠を参照)と違って音の連続性が終曲まで維持されているぶん、聴き終えた
後の印象がかなり違っているのが分かりますね。「I Know How You Feel」はややも
すると単に静かな曲として右から左へと流れてしまいそうだが、静かな中にも厳しい
旋律の浮き沈む様子がこの日の演奏ではよく出ています。ディスク2まず「Gravitas」
に注目でしょう。密度の濃い演奏がより濃淡を感じるサウンドで飛び出し、その洞察力
に富んだパフォーマンスが胸をえぐります。「Go」ではギターのバッキングが安定して
いることでウエットンが安心して歌唱している様子が伺え、これもまたハウ時代とは
異なるポジティヴなシーンではないでしょうか。後半で入ってくるギター(3分51秒付近〜)
もサム独自の解釈で弾いており、これとツインリードを決めてゆくキーボードの旋律も
楽想の幅を広げています。「Open Your Eyes」は導入部のサウンド(00分39秒〜)が鮮烈
な音で出音し、そこからまさに瞳を開き、盲を払う様な鮮やかな音色で演奏が弾け出て
ゆきます。中音域の安定した音像が耳を駆け抜ける中、展開部(2分19秒〜40秒)ではキー
ボードの鋭い旋律がグッと浮き立ちながら楽曲を牽引してゆく様子が伺え、これも見事
ですね。「Heat Of The Moment」も一体感のある素晴らしい演奏でショウ・エンドを迎え、
終演後も場内に流れるエンディングSEや座席付近の様子を余すことなく記録しています。

ディスク3と4は最終日・20日の渋谷を完全収録。こちらはディスク1と2以上に質の高い
音質で収録されているのが特徴です。冒頭「Sole Survivor」の立ち上がりで、音像の
レンジの広さや豊かな音の艶も魅力です。安定したマイルドな音像の中に漂う低音域の
粒立ちの良さも特筆され、5分23秒付近からの展開もサム以上に若々しく攻撃的なウエッ
トンのベース・アプローチが素晴らしい解像度で耳に飛び込んできます。「Wildest Dre
ams」は昨日同様に歌詞の一部を"Sibuya !"と変えて歌うなど現地お約束のシーンがあり、
演奏のドライヴ感も高いです。「Time Again」は各楽器のダイナミックな音の筆致が重な
って優れた演奏力を生み出している様子が完璧に捉えてます。ギターソロではパット時代と
双璧を成す見事な旋律を入れているのも特筆されるのではないでしょうか。「Valkyrie」
では曲の表情が変わる3分21秒付近〜終曲にかけての展開が見事で、一音一音に込められた
濃密な演奏描写が眩しく、ここは書かれた音符がどれほど雄弁な表現力を持っているかが
生演奏によって初めて分かるアンサンブルだと思います。「Voice Of America」も昨日と
同様に極上の演奏で、アコ版として低音部が無くなった事で得られる浮遊感が見事に花開き、
丁寧に編曲された優しい音創りの中に美しく震える旋律が随所で伺えると思います。
「The Smile Has...」は前半のボーカルの要所でやや遠目のディレイが掛かり、歌唱表現を
更に印象深くしているのが興味深いです。ブリッジから後半部での芯のある表現も見事ですね。
「An Extraordinary Life」ではカラフルなサウンドの中に時折り顔を覗かせる切ない旋律が
爽やかに駆け抜ける様子が克明に記録されており、その一糸乱れぬ音の綴れ折りが見通しの
良いサウンドで耳に届けられます。「Days Like These」はこの最終日も絶好調で、コンパク
トに纏めながら飛翔するダイナミックな演奏が心地良いです。表現のストレートさも全く曇り
が無く、バンドの非凡な演奏力の一端が垣間見られるシーンではないでしょうか。「Open Your
Eyes」は昨日同様に極上の音楽的魅力を発揮しており、訴える力に溢れた表現が随所で感じ取
れるものとなっています。4分53秒付近から突入するキーボードとギターのパートも快い変化に
富んだものとなっており、それが溜めて吐き出すドラムの疾走感と相まって真っ直ぐにこちらへ
ぶつかってくる様子は見事です。

確かイヤモニ音源と比べると聴き劣りする部分は否めないと思いますが、それでもこの録音の
魅力は会場で実際に耳にした音をほぼ最高値で届けてくれるAUD録音の魅力が詰まっている点
だと思うので、それを味わいたい方にはマストなタイトルではないでしょうか。

音質は、
19日(Disc1+2)が91点。
20日(Disc3+4)が90点。

4CDプレス盤。ピクチャーディスク仕様。
初回プレス分はナンバリングステッカー付き。
発売日 / 2014年7月4日

『TOKYO 2014 - LIVE IN JAPAN』 / (No-label)
Live at :
Disc1+2 - Shibuya kokaido, Tokyo, JAPAN / 2014. June. 19
Disc3+4 - Shibuya kokaido, Tokyo, JAPAN / 2014. June. 20

これもまた東京2DAYSを完全収録したタイトル。各メーカーがそれぞれこぞってリリースして、
最終的に別ソースで一体何タイトル出るんだか・・(T_T)。2DAYSで合計ほぼ4時間ですし、それ
ぞれのタイトルを交互にザッピングしながら違いを聴き比べするだけで心底疲れ果てますが、
しかしこれもまた別ソースならではのオリジナルな音像が楽しめるタイトルとなっています。

聴き比べの基本としたのは『LIVE IN JAPAN 2014 - VOLUME 2』(※ひとつ↑の欄を参照の
こと。以降『Vol.2』と表記します)で、自分なりに感じた音像の差をざっと書くと以下の
様になるかと思います。

************************************

19日
『Vol.2』の19日と比べると本作の方が中音域が太めで肉厚感があります。しかしハイハット
等の金物系の響きは『Vol.2』よりも沈んで聴こえており、透明感も僅かに劣る印象があります。
しかしトータルで考えると両タイトルの19日はほぼ同レベルでしょう。どちらにも良い所と
イマイチなところがあって、甲乙付け難いです。

20日
これはもう本作より『Vol.2』の方が圧倒的に音質良いです。決してダメな収録音ではないの
ですが、本作は全体的にやや奥まった音像+各楽器の出音の分離感があまり感じられず、全体が
ひとつの音の塊として鳴っている感じです。なので解像度とサウンドの見通しの面でどうしても
『Vol.2』に一歩譲ってしまう印象が否めないと思います。

************************************

・・という訳で20日の収録音はいまひとつですが、19日の方は『Vol.2』と比べても遜色ない
どころか中音域の豊かな音色が曲の運動性と重量感をしっかり伝える良好なサウンドで記録
されている点は特記されると思います。終演後のエンディングSEと場内アナウンスも本作の
19日の方が『Vol.2』の19日より長く収録されているのも◎でしょう。というか、『Vol.2』の
19日は場内アナウンス部分が丸ごとカットされてますし、20日の終演後も『Vol.2』の20日
よりも本作の20日は長く収録されていますので、これもアドヴァンテージだと思います。収録
時間を気にして途中でスイッチを切るのかもしれませんが(※或いは、商品化する段階でフェ
イドアウトで消すのかもしれませんが)、こういうシーンって録音のドキュメンタリー性を
ぐっと増すので、個人的には重要だと思うんですよね。ですからその意味でも本作の録音は
捨て難いと思います。

音質は、
19日(Disc1+2)が91点。
20日(Disc3+4)が87点。
4CDR。

『COMPLETE TOKYO NIGHT - GRAVITAS JAPAN TOUR 2014』 / (JM-203)
Live at :
Disc1+2 - Shibuya kokaido, Tokyo, JAPAN / 2014. June. 19
Disc3+4 - Shibuya kokaido, Tokyo, JAPAN / 2014. June. 20

これもGRAVITASツアー日本公演より東京2DAYS、6月19日と20日をコンプリート収録した
タイトル。収録内容としては↑2つの欄で紹介している『LIVE IN JAPAN 2014 VOLUME 2
(Virtuoso 183/184/185/186)』及び、1つ上の欄で紹介している『TOKYO 2014 - LIVE
IN JAPAN (No-label)』と同内容の別ソースですが、本作もまた魅力的なサウンドで記録
されている一枚です。本作の特徴はJokermanレーベルお馴染みの24bitで収録されている
点ですが、これがまた素晴らしい音像で演奏を届けてくれる訳です。『LIVE IN JAPAN
2014 VOLUME 2 (※以下、"VOL. 2"とします)』も良好のサウンドでシューティングされ
ていますが、両タイトルをよくよく聴き比べると録音位置の違いからくると思われる差と、
製品化の際にどちらのメーカーも多少は行っているであろうマスタリングの印象に若干
違いが感じられる箇所があったので、自分なりに気付いた点を書いておこうと思います。

まず19日。冒頭「Sole Survivor」の歌詞に入る前の前奏でサムが独特のトリルを入れて
いる箇所がありますが(※00分26秒付近と00分35〜36秒付近)、ここのギターの出音が本作
は若干弱く奥まっているのに対し『VOL. 2』はハッキリ聴こえてます。ちなみに00分44秒
付近から急にギターが大きくなりますが、これは『VOL. 2』も同様に音が大きくなるので
恐らくPAが出力を上げたか、サムがボリューム・ノブを上げたのでしょう。しかし歌唱が
入って演奏が進むと、全体音の印象は『VOL. 2』よりも本作の方が端正に纏まった上品な
音で聴こえている事に気付き始めると思います。これは次の「Wildest Dreams」で一層
明確になり、違いの理由はどうやら両タイトルに収録されたベース音の音像の違いから
きている様です。『VOL. 2』はベースがベシャベシャとやや平たいサウンドで音を拾って
いるのに対し、本作はズンズンと塊のある音で鳴っているんですね。ただ少し丸みのある
角の取れた音としてズンズンと鳴っている為、シーンによってはバスドラムやタムの音と
一緒に低音域のひとつとしてベースが埋もれてしまっている印象もあります。しかし「Va
lkyrie」や「An Extraordinary Life」では24bitらしい優れた音圧を伴うレンジの広さが
全開で花開き、ダイナミックな音の筆致が次々と耳元へ運ばれてくるのは◎です。(^_^)

同様に中音域に関しても特に問題無く、無音部分の透明感も優れているので、ここで聴ける
「The Smile Has...」は前半と後半の静と動のコントラストが見事に浮き出た音像で再生
されるのも注目でしょう。しかし高音域の出音ではシンバルの響きに違いがあり、本作は
まろやかな音で出音しているのに対し『VOL 2』は粒の立った、直接的な金属の響きがスト
レートに出ています。一方キーボードの音色と広がりも本作は湿った音で色濃く出ており、
これは「Wildest Dreams」の1分00秒付近ほかで入ってくるストリングス系のサウンドや
「Open Your Eyes」「Gravitas」、そして何より「I Know How You Feel」等で聴ける音色
で顕著です。またサウンド全体の迫力・音圧の点も本作はとてもナチュラルで、派手さの
無い整った音像が終始持続する点は特筆されるんじゃないでしょうか。但し終演後の収録
部分に関しては『VOL. 2』の方が長く、本作はエンディングSEが流れ始めるとおもむろに
フェイドアウトしてディスク終了となってしまいますが、『VOL. 2』はSEの最後までパー
フェクト収録しています。更に言えば『TOKYO 2014 - LIVE IN JAPAN』は場内アナウンス
まで聴けるので、その点ではそれらのタイトルに一歩譲ると思います。

20日の音像は19日以上に甲乙付け難い・・というより、両タイトルとも優れた音で録れて
いるので優劣など付けられない感じです(^_^;)。でもそれを抑えて敢えて言うなら、
自分なら20日は本作を取ります。その理由は、音像がよりパーフェクトに録れているから
です。前記した19日の部分でも書きましたが、本作の19日は端正で音像に整いが感じられ
るのだけどマスタリング作業の影響なのか収録位置のせいなのか若干音が丸く、サウンド
のシャープさと迫力が少し欠けています。しかしこの20日はどのシーンを意地悪くあら捜し
しても19日の音源に感じられたそうした欠点が見当たらないんですね。レンジの広さ、音の
解像度、透明感の高さに加え、19日のウイークポイントだった音像のシャープさと出音の近さ、
そして中〜低音域のド迫力と各楽器の分離感の良さが完璧に備わっていて、広範囲の音域を
使うエイジアの各楽曲の特性がよく出ていると思います。唯一欠点を挙げるなら、終演後の
アウトロー部分(※ディスク4-(9))の冒頭で音ヨレ(音切れ? 00分01秒付近〜03秒付近)が
一瞬生じていることと、その先のエンディングSEが最後まで入っていない点でしょう。

音質は、
19日(Disc1+2)が88点。
20日(Disc3+4)が92点。
4CDR。

『DON'T CRY, STEVE』 / (TARANTURA : TCDASIA-1-1,2)
Live at : Shibuya kokaido, Tokyo, JAPAN / 2014. June. 19

2014年来日公演は各メーカーから色々出ましたけど、そんな中で自分が「え?」と
思ったのがこれ、TARANTURAレーベルが出した2014年エイジア来日公演(6月19日・
渋谷公会堂)です。TARANTURAのエイジアってどんなのだろう?と思って購入してみた
のだけど、聴いて仰天。まさに真打ち登場でございます。(^_^;)

まず驚かされるのがドキュメンタリーとしても完璧な収録内容。
←のサムネイル画像をクリックして裏ジャケのクレジットを見て戴くと分かりますが、
通常Disc1-(1)にクレジットされている事が当たり前のオープニングSE「1812 Overture」
が、何故か(5)曲目にあるんですね。ではその(1)〜(4)は何が収録されているかというと
「1812 Overture」が鳴り始めるまでの場内アナウンス、係員の注意と呼び掛け、周囲の
オーディエンスの声という、開演前の最前列周囲の様子が収録されているのですが、その
トータルタイムがなんと20分以上(!!)もあるのですからビックリ。つまりは開演20分前
から録音がスタートしてるんです。しかもこの(1)〜(4)までの場内の音像が既に透明感と
レンジの奥行き・幅が感じられる高品位なもので、この前フリを聴くだけで本編の演奏は
一体どんな凄い音で収録されているのかと心躍ると思います。また大きなトピックスと
して本作の収録位置は東京・渋谷公会堂の最前列、「1階1列18番」からという非常に
好位置からのシューティングとなっているのですが、興味深いのはトラック(2)の7分29秒
から最前列席の人達にのみ向けた注意事項が係員から呼び掛けられるシーンが含まれ
ている点でしょう。なるほど、或る意味特権とも言える席ではこういう特殊な注意事項が
促されるのかと、当日の最前列ならではの様子が分かる面白いシーンになっています。

さてそんな開演前の20分間が終わって開演を告げるブザー(※トラック4)が鳴り、いよいよ
「Sole Survivor」が始まると、その圧倒的な音像に仰天させられます。太く厚みのある
中音域が一気に鋭い音像で立ち上がり、フロント・ロウ特有の音圧感が肌感覚で伝わって
きます。各楽器の音の近さやボーカルラインの近さは今回各メーカーが出した6月19日の
音源中では群を抜いているのが瞬時に分かるんじゃないでしょうか。「Wildest Dreams」
では駆け抜けるサウンドのドライヴ感が直接的に襲い掛かり、曲中の歌詞の一部を
「♪From Washington across to (※←for?にも聴こえる) "Shibuya"!」と変えて歌っている
様子やギターソロのワイルドな出音が極上のサウンドで耳を駆け抜け、凄まじい興奮に
身を包まれること確実だと思います。「Face On The Bridge」もまた導入部から濃密な音
で野太いサウンドが走り出し、サウンド全体が心地良いドライヴ感と共に周囲の空気を
ビリビリと振動させているのが伝わってきます。「Time Again」も序盤からパンチの効いた
強烈なサウンドで録れており、ゆっくり立ち上がるあの特有の導入部から現行エイジアの
ハードタッチな音色が色彩感満開の状態で花開きます。曲中の所々で入るブルージーな
表現も、この音像で聴いてこその本質的な凄みがある様に思います。

「Valkyrie」は3分37秒付近から半音ずつ下げてゆく特徴的なシーンと、そこから抜け出
るギターソロが高らかに旋律を描いてゆく様子に注目でしょう。曲に大きな変化をもた
らすこのシーンが極上の音色で記録されているので、ややもすると一辺倒で表情に乏しい
この曲が、ここでは他日の演奏以上に輝いて聴こえると思います。「I Know How You Feel」
では歌詞冒頭の出だし「♪Mi〜〜dnight...」のところからKOされます。何でしょうか
この歌唱ラインの近さと迫力は(^_^;)。「ジョン・ウエットンという良い声を出す楽器」
がこれほど直球で伝わってくるブートレッグ録音は滅多に無いんじゃないかなぁ。また
その魅力的な声を包み込むように絡んでくるキーボードの響きも最高値の音色で録れて
いて、これら二つの音色が溶け合ってゆくブレンド感がたまりません。「Voice Of Ame
rica」は繊細なアコースティック・セットの醍醐味がパーフェクトに伝わってくる名シ
ーンとなっています。イヤモニ・マトリックスでもないのに、各楽器の弱音の綴れ合い
がこんなに近い音で録れているのも珍しいと思います。「The Smile Has...」では前半
のウエットン=ダウンズのデュオが潤いのある見事な音で耳一杯に響き渡り、後半では
ベースのバリバリと響くあのウエットン特有のタッチが目立つ中、ギターとキーボード
の旋律が見事に重なってゆく様子が完璧なサウンドで記録されています。

Disc-2も冒頭の「An Extraordinary Life」から圧倒的。ここも序盤からベースのズビ
スビ、キュルッという野太くて鋭い響きとスラップ音が期待値を高めているのだけど、
これらのさりげない音ですら実のある音として聴こえるのが凄いと思います。この日は
若干アンサンブルにズレがあるけれど、でもウエットンの歌唱も熱が入っていて見事な
表現力がありますし、曲が持つ可能性が自然と掴み取れる音の感触に驚かされるん
じゃないでしょうか。「Gravitas」では重厚な音楽がダイナミックに動いてゆく様子が聴い
て取れ、この録音がハードで快活な音だけでなく低音域のレンジにも豊かな威力を持っ
ていると実感出来るシーンの連続でした。特にギターソロが入る付近の音の膨らみなど
聴きどころじゃないでしょうか。次のダウンズのソロも非常に音が近く、鋭くて伸びの
あるサウンドが次々に出てきてビックリします。シンセの分厚い洪水と後半のピアノの
澄んだ音色の対比がパーフェクトに録れていて強烈です。「Days Like These」も密度
の高い演奏がダイナミックに動く様子が良く録れていた実に気持ち良いです。短いなが
らもストイックに決めたこの日のギターソロもシャープな音色で録れています。「Go」も
導入部のオルガンの力強い響きがギターに引き継がれてゆく様子がブレ・揺れの無い
サウンドで報告されています。この部分、下手な録音だと音像に一瞬歪み・揺らぎが出
来てサウンドレベルが一瞬落ちるケースがよくあるんだけど、ここでは強音から弱音の
シフトでも全くブレません。ギターソロ後、4分19秒付近から終曲までの若干フリースタ
イルな展開が見通しの良い音で耳に届いてくる様子も特筆されるんじゃないかな。

「Don't Cry」では素早い筆致で綴られる曲想を見事に拾っており、バンドスタイルで蘇っ
た楽曲本来の快活さがとても良く伝わってきます。本作のタイトルではないけれど、これ
は本当にハウではなくハードな音を的確に出せるサムやパット・スロールの様なギタリスト
がやってこそ伝わるものがあると再認識出来るシーンになっています。次のカールのドラ
ム・ソロもクラッシュシンバルやタム、スネア等の音がとても近く、Vドラムのシーンも異様な
ほど迫力があってビビります(^_^;)。彼のストロークの速さや打音による演劇的効果が立体
感を伴って聴こえてくる印象もあり、じっと聴いていると打音の洪水に飲み込まれてゆく様で
心中ザワめく感じがしました。「Only Time Will Tell」では冒頭のキーボードによる主題旋律が
グワッと立ち上がり、切り裂くような集中力と非常に力の篭った重量感のある演奏が耳を通
り過ぎてゆきます。「Open Your Eyes」では曲の特徴とも言える空間性が見事に花開いた音像
に圧倒されました。ダイナミックに音楽を推進させるリズム隊と、伸びやかに綴り上げる旋律
のブレンド感が魅力的なサウンドで結実しており、これにウエットンの熱唱が重なる事でこの
日の演奏の真の魅力に触れられると思います。個人的な欲を言えば2分45秒、52秒、59秒
付近でハウの様に旋律をもっと歌わせて欲しい=合いの手の旋律を入れて欲しいのですが、
そんなもどかしさをいつも以上に感じてしまうのもこの録音が優れている為でしょう。ラストの
「Heat Of The Moment」も起伏に富んだメリハリのあるサウンドで記録されています。2分25秒〜
33秒で聴けるこの日特有の歌い方も、この音質で聴くとより親近感を覚えちゃいますね。(^_^;)
終演後の様子も約3分半ほど録音が回り続けており、場内アナウンスが流れる様子が最後まで
バッチリ捉えられている事も本録音の大きな特徴です。ここで非常に面白いのは、最前列から
通路を上がって会場の外へ出るまで録音が回り続けている点でしょう。即ち、場内アナウンスが
最後まで聴けるうえ、場外にある当日の物販コーナーの活気ある盛況振りまでもが完璧に収録
されているんですね。これは実況録音盤としてのドキュメンタリー性を大幅に底上げしていると思
います。不要と判断されカットしてしまいがちなこの部分も含めた点はメーカーの英断でしょう。

音質97点→98点+α。
※基本で充分過ぎるほど優良音質なのに「Time Again」付近から更に良くなります。凄い。(^_^;)
2CDプレス盤・紙ジャケット仕様、リーフレット付き。 : 限定100セット シリアルNo入り
発売日 / 2014年7月24日

『GRAVITAS U.S. TOUR 2014』 /
(※ Special Bonus DVDR for limited stickered edition of " GRAVITAS IN AGOURA HILLS【Virtuoso - 205/206】")
Live at :
Infinity Hall, Norfolk, CT, USA. / 2014. Sep. 11
Bergen Performing Arts Center, Englewood, NJ, USA / 2014. Sep. 27
The Canyon Club, Agoura Hills, CA, USA. / 2014. Oct. 19

下段↓で紹介している『GRAVITAS IN AGOURA HILLS』の初回ナンバー入り
ステッカー付きに付属しているボーナスDVDR。9月11日以降のGRAVITASツアー・
2ndレグの米国公演から3公演が部分収録されており、驚くことにそのひとつは
サム・コールソン自身がネット上にアップした、複数カメラによるミックス
映像が目玉でしょう。

まずチャプタートラック(1)〜(7)までは9月11日(2ndレグ初日)のコネチカット公演。
ショウ中盤からの映像ですが、スタートボタンを押すと「Voice Of America」の豊
かなアコースティック旋律が美麗な映像と共に飛び出してきます。 ロバート・フリ
ップよろしく椅子に座って12弦アコースティック・ギターを弾くウエットンも印象的
です。隣には6弦アコースティック・ギターを弾くサムも映っているのですが、よく
観ると10月18日のに使っているギター(※下段の別枠で書いているDVDRタイトル
『GRAVITAS IN BEVERLY HILLS』で弾いているもの)とは別のギターを使っています。
即ち、同一曲でも使用ギターの違いによる響きの違いが楽しめる訳で、ここは両日の
ギターから出てくる音色の差に注目でしょう。「The Smile Has...」では前半パート
で熱唱するウエットンの後ろで、細めのマレットを使って微細な打音装飾をしている
カールが居るのですが、これは普段何気なく耳を通り過ぎてゆく打楽器からの繊細な
味付けを眼で追える面白いシーンだと思います。「Go」はこの2ndレグ初日ではまだ
中間部で転調を" 入れていません "。これは言い換えるとリニューアル前の、通常
演奏のほぼ最終形が楽しめる訳ですね。終曲手前で「♪Woo, ooo...」と何度も情感
豊かに叫ぶこの日ならではの歌唱表現も特徴あるものとなっています。「Only Time
Will Tell」は前半の途中が若干が編集で省かれていますが、各プレイヤーが実の詰
まった音をぶつけ合うタフなハーモニーが見どころ・聴きどころだと思います。

トラック(8)の「Open Your Eyes」は本編ディスク『GRAVITAS IN AGOURA HILLS』と
同じ10月19日公演の映像です。収録位置は会場左側後方からですがズームを多用した
非常に近い映像となっており、しかもかなり鮮明な映像で記録されているのが特徴で
しょう。どのくらい鮮明かと言うと、ダウンズのキーボード類の上に置かれている
モニター画面の波形の様子がくっきりと分かり、シャーベル製のサムのギターヘッド
にプリントされている" Charvel "の文字が普通に読み取れるほどと書けば伝わるでし
ょうか。会場の中列後方くらいからの収録でこの鮮明度は特筆されますし、演奏音を
しっかり拾っているのもこの映像の特筆点だと思います。見どころは何といっても
曲終盤のギターの弾き込みとリズムの見事な融合でしょう。小指までしっかり使った
サムの素早くて粒の揃った細やかな運指がつぶさに追えるうえ、後ろではそんなサム
を時折り見ながらその素早いギターの一音一音と完璧にシンクロさせた粒揃いのドラ
ミングで曲想に鋭さを効かせるカールのコンビネーションがあり、この様子は必見で
す。尚、メンバー全員が前日18日(※『GRAVITAS IN BEVERLY HILLS』で鑑賞出来るもの)
と同じ服を着ていますが、この事から彼らは同じ衣装を複数枚持って移動しているか、
或いは服は毎日クリーニングしているらしい事が伺えるのも面白いところです。

トラック(9)の「Heat Of The Moment」は9月27日・ニュージャージー公演からの映像。
1曲だけではあるのですが、驚くべき事にこの映像はサム本人がYoutubeにアップした
ものとなっています。 同日の観客が携帯電話かデジカメで撮影し、動画サイトに投稿
した映像をサムが編集ミックスしたらしいのですが、なかなかの観応えが感じられる
"作品"になっているのが面白いところです。カメラは会場後方ほぼ中央から撮影され
た2台に加え、会場やや左側・5列目くらいから撮影された至近距離映像を映し出すもう
1台のカメラをミックスした3種類で構成されていて、4人が1画面に収まるステージ全体
の様子から至近距離での優れた各映像が非常に鮮明に映し出される優れモノです。自身
が大写しになる中盤のギターソロ中ではウエットンがサムに笑顔で何かを語り掛けてい
る印象的なシーンも含まれており、1曲ながらも充実した映像作品になっています。
gravitasustour2014-pic.jpg(105445 byte)

映像の画質は、
トラック(1)〜(7)が96点。
トラック(8)は98点+α。
トラック(9)は89点〜93点。

音質は、
トラック(1)〜(7)が91点。
トラック(8)は98点+α。
トラック(9)は90点〜92点。(ややバラつきがあります)

1DVDR・ボーナスディスク。

『HARTFORD 2014』 / (※ This is a Bonus Free Gift Item CDR of a Bootleg CD Shop)
Live at : Infinity Music Hall & Bistro, Hartford, CT, USA. / 2014. Sep. 14

2014年の北米ツアーから、その4回目となる9月14日・米国ハートフォードでのショウを良好
なAUD録音で封じ込めたギフト盤タイトル。本公演の大きな特徴は2点で、まずひとつは
この北米公演から幾つかの楽曲で新しい最新アプローチが確認出来る事と、もうひとつが
2012年以来久々にセットインした「Finger On The Trigger」が聴ける事でしょう。

そのアップデートされた演奏内容ですが、まずは「Wildest Dreams」の終盤に出てくるドラム
ソロが2014年・秋バージョンとも言える中低音を重視したラウドな打音表現に変わっています。
この辺りは聴き込んでいないと分からないと思うけど、英国公演と日本公演の時とは表情付け
が明らかに違っているんですね。本編もドライヴ感を更に重視したパフォーマンスになってい
るので、この終盤ドラムパートが強い印象を残すショウスタートとなっています。「Time Again」
の終曲後にはそのカールが突然単独でドラムを叩き始めたかと思うと突然止まり、場が笑い
に包まれる箇所が含まれているのですが、これは一つ先の曲として披露される「Finger On The
Trigger」の出だしをカールが次にやると勘違いして叩き出した事によるハプニング・シーン。
ウエットンも「おいおいカール、それは別の曲だろ?」という感じの和やかな笑いと共に場を
仕切り直しており、セット変更にまだ慣れない様子も微笑ましいところです。しかし2曲後に
仕切り直して始まるその「Finger On The Trigger」はフレッシュな演奏力が耳を惹き、久々の
セットインにも拘らずメンバーチェンジや時間経過を感じさせない聴き応えのあるパフォーマン
スとなっています。セットの流れを間違うほど意気込んだカールのリズム運びもダイナミックで、
ハウが奏でていたオリジナルのギター表現を守りながらも僅かに独自の表現を忍ばせて現行
型のアプローチを響かせるサムの味付けにも注目でしょう。

ディスク2は約15分の休憩の後に始まるショウ後半。このインターバル中に録音者が収録位置
を若干変えたのかディスク1よりも音の解像度が増し、演奏音の近さが更に際立つ音像になっ
ています。「An Extraordinary Life」ではギターソロの後でボーカルラインにやや深めのエコーが
掛けられている(※4分20秒付近〜終曲)様子が耳を惹きます。これに合わせてなのかウエットン
も大変力強い歌唱をしているのが印象的です。「Gravitas」は微妙にアンサンブルがズレる・揺れ
る前半の演奏と、後半の楽想の輪郭がクッキリ際立つタフな演奏とがブレンドされたユニークな
演奏ですし、「Days Like These」はギターの出音を若干抑え、歌唱をより前面に出したスタイル
になっているのも印象深いです。

そして何と言っても特徴的なのがこの日の「Go」でしょう。中間部の展開(※2分22秒付近〜)が
これまでとは違っており、ギターのアプローチが計6ターンと長い(※通常4ターン)うえ、その後半
の2ターンは何と転調を加える(!!)という驚きの演奏となっています。最初聴いた時はウエットンの
機材トラブルか何かでサムが同一フレーズを繰り返す事で時間合わせをしているのかなと思った
のですが、よく聴くとギターと一緒にキーボードも同位置で転調している為、これはこういうアプロ
ーチに変えたと見るのが妥当でしょう。そして「Don't Cry」もこの日は歌唱の伸びが特徴的で、
ウエットンの喉の調子が絶好調である事が伺えます。実際これはここ最近の同曲演奏中ではトップ
クラスの艶やかな声の伸びでしょうね。「Only Time Will Tell」はダイナミックな音の筆致が極めて
良く出た名演で、要所で出てくるコーラス(※サンプリング音)が効果的に使われる事でメロディの
質感と輪郭の印象がこれまでとは大きく違っているのも大変面白いです。同様に「Open Your Eyes」
冒頭の「♪O〜pen Your Eyes..」というサンプリング音もそのサウンドイメージがデジタル+シャープ
なものに若干変更されており、曲の出だしから変化と期待を感じさせてくれる演奏になっています。
「Heat Of The Moment」もリズミカルさが強く出た好演奏で、中間部のギターソロではリユニオン後
のハウやパット・スロールも成し得なかった曲の本質を見事に掴んだ表現が炸裂し、この名曲を新た
な次元へ押し上げている気がします。終演後はこの日、エンディングのSEが"流れず"に司会者の
アナウンスでショウが締められており、この様子が1分40秒近く含まれています。

音質は、
Disc-1が88点→89点。
Disc-2が91点。
(※基本的に音質良好ですが、ショウ中盤の休憩タイムで恐らく録音位置を若干変えている様で、ショウ
の後半を収録したDisc-2の方がDisc-1よりも演奏音が近く聴こえ、音像全体の透明度も上がってます)

2CDR・ギフト盤。
リリース日 / 2014年9月26日

『GRAVITAS IN BEVERLY HILLS』 /
(※ Special Bonus CDR for limited stickered edition of " GRAVITAS IN AGOURA HILLS【Virtuoso - 205/206】")
Live at : Saban Theater, Beverly Hills, CA, USA. / 2014. Oct. 18

下段↓の枠で紹介している『GRAVITAS IN AGOURA HILLS』の初回納品分に
付属しているボーナスDVDR。同ディスクに収められた公演の前日、2014年
10月18日にビバリーヒルズで行われた公演を美麗映像で収録したタイトルで、
この日も翌日同様にショートプログラムとなった公演を映像面から追える
のがポイントでしょう。映像の収録位置は会場5列目くらい・ほぼ中央から
のもので、画質も音質もすこぶる良好です。撮影慣れしているのか手振れも
殆ど無く、AUDショットとはいえかなり安定した映像となっています。
gravitasinbeverlyhills-pic.jpg(98985 byte)
「Sole Survivor」はカット・イン。最初ウエットンとカールを中心に撮影
していますが、曲中に挟まれる観客とのコール後から引いた映像に変わり
サム以外の3人(=オリジナルメンバーを中心に)曲を追ってゆきます。終曲
部では翌日(※本編2CD『GRAVITAS IN AGOURA HILLS』)と同様、ここでも終曲部でカールが
打音の押し込みをしていたり、サムがチョーキングで繋ごうとアプローチを
試みているのも確認出来ます。「Wildest Dreams」はウエットンをアップに
して進みますが、ギターが目立つところではカメラがサムに寄るので彼の
ソロ中の指捌きがバッチリ確認出来る点も見逃せません。しかしこの曲最大
の見どころと言えば、やはり曲終盤に入るドラムソロの変化が目で追える点
にあるでしょう。本編CDの音からでも分かりますが、EL&P時代を髣髴さ
せる超速ストローク全開の様子は必見です。「Time Again」ではカメラが初
めて4人を見渡す様に左右に映像が振られ、サウンドの膨らみもそのワイドな
視点と共に御実感戴けるでしょう。ギターソロ中ではカールが激しい連打で
暫く叩きまくる箇所もあるなど、曲中盤で見応えあるシーンが連発します。

アコースティックで唯一フル演奏される「Voice Of America」は12弦アコー
スティック・ギターを弾きながら朗々と歌い上げるところにサムがソロを入
れてくる(※そちらは通常の6弦アコースティック・ギター)シーンが見どころで、
ギター旋律の交錯が鮮明な映像と音で迫ってきます。「The Smile Has...」は
ブリッジからギターに導かれて自然に後半のアンサンブルに入ってゆく様子が
絶品です。ぎこちなく浮いた状態で後半に繋ぐ事が多かったリユニオン後の
ハウのギター演奏とは全く違っている事を改めお感じになるでしょう。ダウ
ンズのソロ「Bolero」では情感のこもった濃密な弾き込みが魅力です。最近の
ソロとしても群を抜いている感があり、定型のソロとはいえ映像が伴っている
事で伝わってくるものが多いシーンとなっています。「Go」ではやはり、リニ
ューアルされた中盤の転調シーンが映像で追える点に注目です。時折り前列の
人影が被さって見え辛くなる箇所もあるのですがタフな演奏はしっかり伝わっ
てきますし、本編CDで聴ける翌日の演奏よりも熱い叩き込みをしている様子が
伺えます。「Don't Cry」の後半からシフトするドラムソロも翌日の演奏とは
アプローチが結構違っており、中盤のシンバル系の細かな、そして信じ難い
ほどの超速ストロークのシーンが長いうえ、ベルを強打でチーン!と鳴らして
の一瞬のブレイクもこの日は入れていません。またVドラムのシーンもこの日
はアッサリしていて、翌日の同シーンとは随分と印象が違っています。「Only
Time Will Tell」は映像も鮮明ですがハイハットやシンバルの音が明瞭に録れ
ている点も特徴で、曲がダイナミックに動く様子が視覚と聴覚でじっくりに追
ってゆけるのがポイントでしょう。「Open Your Eyes」ではウエットンが終盤
突入時に何度も" ♪ Open Your Ey〜〜〜〜es!! "とコブシを入れて熱く歌い上
げてる印象的なシーンがあり、それがこの日の演奏独特の個性ともなっています。

映像の画質は94点。
音質は若干バラつきがありますが、平均して88点くらいかな。
時折り音が潰れたりするのだけど、基本的には良い音だと思います。

1DVDR・ボーナスディスク。
オリジナルチャプターメニュー付き。

『GRAVITAS IN AGOURA HILLS』 / (Virtuoso - 205/206)
Live at : The Canyon Club, Agoura Hills, CA, USA. / 2014. Oct. 19

2014年GRAVITASツアー・2ndレグ終盤の一夜をノーカット完全収録したタイトル。
9月11日から再開されたこの2ndレグでは一聴して分かるほどリニューアルされた
演奏内容が多く含まれており、6月の日本公演で聴けた演奏とは受ける印象が随分
違っている点が面白いところです。「Sole Survivor」では導入部から着実に進歩
が感じられる力強い演奏が際立ち、中盤にある挨拶代わりのコールもレスポンスも
スムーズです。またこれまで以上のドラムの叩き込みやギターのチョーキング音を
残して次へ繋ぐ終曲部など、ショウのアップデート感にも注目でしょう。ただ4分
42秒付近〜54秒付近、及び終曲手前でサンプリングコーラスと歌唱にズレが生じて
おり、若干奇妙な感覚を受けるのも否めないところでしょうか。そして驚かされる
のが次の「Wildest Dreams」でしょう。曲中盤からの演奏がエネルギー漲る力強さ
を伴っているのも要因のひとつなのですが、最たる点は終曲手前にあるカールのド
ラムソロの劇的な変化です。2006年のリユニオン後から時折り見られた、このシー
ンでのビートを切る・一瞬ブレイクを入れるスタイルを完全に拭い去っており、
82年北米ツアーでの叩き方や70年代のEL&Pを髣髴させるような、驚くべき超速スト
ロークで手数を入れまくるスタイルに変化しています。9月14日のハートフォード公演
『HARTFORD 2014 (※2つ↑の枠で紹介しているもの)』でもその片鱗は少し伺えまし
たがそれが更に進化しており、グッと高められた疾走感を最高値でショウアップする
ドラミングに耳を奪われること請け合いです。更に曲の終わりの鐘の鳴る箇所でも
シンバルで細かな装飾音を散らしていて、これら打楽器による演出効果からも曲が
見違える様な生命力を呈しています。「Time Again」も導入部が一音一音確かめる
様に曲が動くスタイルに変化しており、スピーディにリズムが動き出した後半との
コントラストが大きく強調されています。曲の途中にあるギターフレーズの印象的
な散らし方や中盤にあるギターソロもいよいよ板についてきた感が増しているのだ
けど、これも4分25秒で入るサンプリングされたコーラスと演奏が若干ズレているの
が惜しい感じです。「Valkyrie」では3分30秒付近から突入する展開部の数箇所で
ウエットンが印象的な歌唱の押し込みと旋律の伸ばしを入れており、ややもすると
表情に乏しくなりがちな曲想を歌唱面から変化させようと試みている様子が伺えます。

さてここからがショウの中盤...というところですが、セットを見ると通常この位置に
入る「Finger On The Trigger」と「I Know How You Feel」がこの日は無くなってい
ます。これは恐らく時間の都合でセットから外されている様で、この日は他にも通常
約15分間ほど挟まれるショウ中盤のブレイクタイムもありません。それゆえここでは
ショウ中盤に入るアクセントとしてアコーステックで一曲だけ「Voice Of America」が
披露され、「The Smile Has...」終演後にカールがお馴染みのMCを入れた後は直ぐに
「An Extraordinary Life」が始まるという、やや短縮形のショウ構成で進んでゆくのが
特徴となっています。しかし演奏自体はよりヒートアップしている感があり、例えば
前述の「The Smile Has...」では後半部の演奏でウエットンがこの日最高とも言える
熱い歌唱を炸裂させています。「Days Like These」では快活な音のぶつかり合いに
新しい響きが感じられますが、1分13秒付近と1分57秒付近ではここでもサンプリング
されたコーラスと生の歌唱が若干ズレているのが残念なところでしょう。「Go」では
冒頭でギターが一風変わった入り方をしており、また最初の歌サビに入る手前でもカ
ールが印象的なタムの連打を入れています。でも最大の特徴はやはりこの日も前述の
9月ハートフォード公演と同様に曲中盤(2分50秒)で驚きの転調を入れている事でしょう。

「Don't Cry」でこれまで以上にクイックでシャープなイメージで演奏している様子が
伺え、終曲部では「ねぇ、もういい?やっていい?やるよ?やるからね!!」・・という
感じで何度かバスドラムを踏み鳴らし、次のソロをやるのが待ち遠しくてたまらない
カールにも注目です(^_^;)。このドラムソロも中盤で出てくるVドラムのシーンが木琴(?)
の様なサンプリング音を使って旋律を歌う感じものに変化しており、その後に入る銅鑼
の打ち鳴らしも含めて一層演劇的な効果を狙ったソロに変化している点もチェックです。
「Only Time Will Tell」ではウエットンが曲中盤以降の数箇所で特徴的な歌い伸ばしを
試みているのが印象的で、今までの歌唱表現の先にあるアプローチを探ろうとしている
様子が聴いて取れます。ただここでも、サビの殆どでサンプリングコーラスと歌唱のズレ
が目立つのが難かな(^_^;)。「Open Your Eyes」は歌唱に仄かな変化が聴いて取れ、これ
までに無かった艶やかな歌い伸ばしが強く印象に残る筈です。終盤で入るギターソロも
いよいよサムらしいエイジアサウンドとして馴染んでおり、血の通った力強いアンサン
ブルが魅力となっています。終曲後、殆ど間を置かずに「Heat Of The Moment」が披露
される事から、やはりこの日は何らかの時間的な制約があったものと推察されますが、
しかし時間に追われても全く手を抜かないタフな演奏を残しているのが嬉しいところです。

音質は基本的に良好なのですが、時折り以下の様なシーンが含まれていることもメモ
しておきます。

「Sole Survivor」
・00分49秒付近〜1分00秒付近に、右側の出音がやや弱まる感じがある。
・3分台〜4分台にも微妙に音が揺れる。

「Wildest Dreams」
3分16秒付近〜29秒付近で、音が少し右にズレる。

「Time Again」
1分29秒付近〜33秒付近で音が軽めに左右に揺れる。

「Voice Of America」
時折り、ボツボツと奇妙なノイズが目立つ。

「Days Like These」
・1分05秒〜08秒で音像が左側に傾く。
・1分20秒付近〜26秒で右側に若干傾く・右側の出力が弱まる。
その後も50秒付近まで微妙に揺れる。

「Go」
・1分01秒付近〜05秒(音像がやや右に傾く)
・4分54秒〜55秒(右に一瞬だけ傾く)

・・などなど。
これだけ音像が揺れる・微妙に安定しないという事は、もしかしたら録音者が
ワイヤレスマイクを頭部の帽子などに仕込んでいて、ステージの様子を見る為に
視線を移動させると(=頭を動かす・首を動かすと)、その度にマイクが左右に
振られて音像が微妙に揺れるのかもしれません。あくまでも仮説ですが。

音質86点。
2CDプレス盤。
ナンバリングステッカーが貼られた初回プレスには2タイトル分のボーナスDVDRが付属。
発売日 : 2014年11月4日