海賊盤のページ
〜1969年の追憶、そして失われた音への眺望〜








ブートレッグDVD

『MASTERS OF MUSIC U / 音楽の巨匠たちU 〜ファンタジーと神話をロックの前衛で表現した錬金術師たち〜』
Untra Rare Japanese TV Programme of King Crimson Special(Broadcasted in 1988)
PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx. 26min. (※This is a Bonus Gift item DVDR of a Bootleg CD Shop)

フジテレビの深夜枠(JOCX-TV2)が1988年の秋に製作・放映した、キングクリムゾンの
ヒストリー番組をノーカット収録しているDVDタイトル。この番組は『音楽の巨匠たちU』
という30分間の音楽番組で、クラシック・ロックの良き時代をそのアーティストの写真や
フィルムに合わせて文字テロップだけで振り返るDJ不在の音楽番組でした。
深夜の2時とか2時30分頃に30分枠でひっそりやっていた大人向けの音楽番組でしたが、
本作はこれのクリムゾンの放送回が収録されています。

当時のフジテレビの深夜枠と言えば"JOCX-TV2"という名称が出来た頃。
「どんばんわ。夜中んばって」のキャッチコピーと共に人気番組『やっぱり猫が好き』や
『IQエンジン』、『JOCX-TVフィラー』などがありましたよね。個人的には仕事柄、
『レモンエンジェル』を毎週チェックしていましたが、後に『カノッサの屈辱』とか
『とぶくすり』、『カルトQ』といった人気番組も出たあの深夜枠です。
但し1988年当時のこの深夜枠は関東圏のみでのローカル放送だった為、
この『音楽の巨匠たちU』も関東圏のみで放映された番組でした。
ちなみに番組スタート時(1988年4月)は『音楽の巨匠たち』というタイトルで、
主にジャズやクラシックの巨匠プレイヤーを取り上げる番組だったのですが
10月の秋の番組改編後に『U』となり、ロックのレジェンドを毎週取り上げる
30分番組になった訳です。

しかし何と言っても面白いのは、この番組が放送されたのが1988年という事でしょう。
ディシプリン・クリムゾンが解散して丸4年、次のスラック・クリムゾンが始動するのは
まだ6年も先の話で、クリムゾンが姿を消した時期でも特に中途半端な時期なんですね。
でもだからこそこの番組内容が興味深い訳です。しかもここで観られる番組はその殆どが
69年のデビュー〜74年の解散時期までを追っている(※番組終盤の約3分程度で81年〜84年に
ついても駆け足で触れている)というツボを抑えた内容構成になっており、「宮殿」「Epitaph」
「Moonchild」「Easy Money」「Starless」ほか、初期キングクリムゾンの名曲の数々が当時の
バンド写真や映像と共に流れる中、字幕テロップがそのバンドの歴史を静かに綴っている訳です。
アルバム『太陽と戦慄』を『アイランド』として紹介しているのは御愛嬌だけど、しかし
番組制作者のキングクリムゾンに対する想いが画面に滲み出ており、観ていて胸が熱くなる
シーンが多々あります。特に番組終盤でクリムゾンの過去と現在(88年当時)、そして未来に
対する祈りの様な言葉が淡々とテロップで綴られてゆくシーンがあるのだけど、それらは
非常に感動的な言葉で綴られているだけでなく、胸を締め付ける素晴らしい言葉と余韻を
残してエンディングを迎えており、番組鑑賞後の感動と興奮もひとしおだと思います。

尚、メーカーのアナウンスによると本ディスクに使用されたマスターの
ビデオテープはSONYの上位クラスのベータテープ(Master-HG)を使用して
βUモードで録画されているとのこと。若干のゴーストは入っているものの、
番組の冒頭から終了までノーカット収録されているのは特筆されると思います。

画質(=録画状態・保存状態)、88点。
1DVDR。
西新宿の某ブートレッグショップが2012年11月の第一週に週末限定で配布したボーナスDVDR。

『ROCK KODAN - KING CRIMSON / ロック講談 キング・クリムゾン 〜暗黒の宮殿、ただ一度の開門〜』
Radio Special In The Style Of "KODAN", Traditional Japanese Storytelling.
Broadcasted On 1986. Jan. 2
(※This is a Bonus Gift item CDR of a Bootleg CD Shop)

ロックバンドの歴史を講談で語りながら綴ってゆくという、他に例を見ない
非常に面白い切り口のラジオ番組を収録した一枚。
元の音源になっているのはNHK-FMが昭和61年(1986年)の新春1月2日に放送した
『ロック講談』シリーズで、これはそのキング・クリムゾンの回が収録されています(約47分)。

語っているのは今や人間国宝となった講談師、六代目・一龍斎 貞水(※いちりゅうさい・ていすい)さんで、
その見事な滑舌と語り口に惹き込まれながら、あれよあれよという感じでクリムゾンのバンドの成り立ちが
テンポ良く語られてゆきます。台本があったのか御自分でロックが好きでバンドの歴史を調べられたのか
分かりませんが構成も良く出来ており、フリップがロンドンのフルハムパレスロード・カフェでジャイルズ
兄弟と出会うところを皮切りにして、有名な印税16%・16万ポンドの契約金の話、初代プロデューサーだった
トニー・クラークとの確執、ライブの拠点をイギリスからアメリカへ広げた意味などが貞水さんの軽妙な
語り口で矢継ぎ早に繰り出される様子は大変聴き応えがあります。途中、「Red」や「宮殿」といった
代表曲が講談に挟まれる形で数曲挿入されるのですが、番組のメインに据えられているのはあくまでも
講談という点もユニークです。

ただ残念ながらこれ、マスターテープが番組の最後まで収録できなかった様で、本作も不完全収録。
アルバム『ポセイドンのめざめ』を製作する直前の辺りでフェイドアウトして終わっているんですね。
これが非常に残念。放送枠が1時間の番組だったとすると残りそんなにないと思うのですが、
人間国宝・貞水さんがどのような語り口でこのロック講談・・もとい、クリムゾンの歴史物語を
締め括っていたのか非常に気になるところです。

それにしても、ブートもこういうのが出るとより幅が広がって面白いですね。
音質・・というか電波の受信状態も良好で、若干混線した他の局の放送音が聞こえるものの
録音状態はなかなかのもの。クリムゾンの、或いはブートとしてもかなり異質な内容ですが、
ファンなら一度は聴いておきたい音源だと思います。

音質(受信・録音状態) 93点。
1CDR。
西新宿の某ブートレッグCDショップが2012年12月に限定配布したボーナスCDR。
ブートレッグCD / 1969年音源
『GET THY BEARINGS』 / (sc 102/1, 102/2)
Live Date :
Disc1〜Disc2-(1) : Victoria Ballroom, Chesterfield, UK / 1969. Sep. 7
Disc2-(2) : BBC Radio Show - Top Gear - Maida Vale Studio / 1969. Aug. 19 (※This Track is ON AIR Ver, : 1969. Sep. 7)
Disc2-(3) : BBC Radio Show - Top Gear - Maida Vale Studio / 1969. May. 6 (※This Track is ON AIR Ver, : 1969. May. 11)
Disc2-(4) : BBC Radio Show - Top Gear - Maida Vale Studio / 1969. Aug. 19 (※This Track is ON AIR Ver, : 1969. Sep. 7)
Disc2-(5)※Same=Disc2-(3) * Disc2 - All BBC Track Radio DJ : Dave Symonds

Disc2-(3)に収録の「21st Century Schizoid Man」が5月6日音源。
BBCのラジオ放送音源です。
ただこの5月6日というのはこの演奏が収録された日で、放送日は11日。
その11日の放送された音がここに収録されています。

現存するクリムゾン最古の演奏ですが、同日に演奏された
「The Court of the Crimson King」同様に既に曲が完成しているのが
興味深い点だと思います。アルバム収録前の生々しい演奏がたまりません。(^^)

音質80点。
2CDプレス盤。


『DEAD FUCKING BOLLOCKS − aka − KING CLIT The Motel 1969 −』 / (KC-1710)
Live date :
Disc1〜Disc2-(1) : Victoria Ballroom, Chesterfield, UK / 1969. Sep. 7
Disc2-(2) : BBC Radio Show - Top Gear - Maida Vale Studio / 1969. Aug. 19 (※This Track is ON AIR Ver, : 1969. Sep. 7)
Disc2-(3) : BBC Radio Show - Top Gear - Maida Vale Studio / 1969. May. 6 (※This Track is ON AIR Ver, : 1969. May. 11)
Disc2-(4) : BBC Radio Show - Top Gear - Maida Vale Studio / 1969. Aug. 19 (※This Track is ON AIR Ver, : 1969. Sep. 7)
Disc2-(5)※Same=Disc2-(3) * Disc2 - All BBC Track Radio DJ : Dave Symonds

上段↑で紹介している『GET THY BEARINGS (sc 102/1, 102/2)』と同じく、
Disc2-(3)に収録の「21st Century Schizoid Man」が5月6日音源。
BBCのラジオ放送音源です。
ただこの5月6日というのはこの演奏が収録された日で、放送日は11日。
その11日の放送された音がここに収録されています。

音質80点。
2CDプレス盤 / 紙ジャケット仕様。


『PANDEMONIUM』 / (WPOCM 0290 D 046-2)
Live date
(1) : BBC Radio Show - Top Gear - Maida Vale Studio / 1969. May. 6
(※This Track is ON AIR Version, : 1969. May. 11 * BBC Radio DJ / Dave Symonds)

(2)〜(6) : Plumpton Festival, Plumpton Race Course, UK / 1969. Aug. 9

トラック(1)のBBC音源「In The Court Of The Crimson King」が
この欄に該当する5月6日の演奏。クリムゾン最古の音源です。
放送は11日で、ここではその放送された11日の音源が収録されています。

後に公式盤『EPITAPH 〜エピタフ 1969年の追憶〜 Vol. 1』が出たことで
この音源も殆ど価値が無くなってしまいましたが、しかし冒頭と終りの部分に
新人バンド・キングクリムゾンを紹介するDJのトークが被っているのは
実際の放送音源らしい生々しさがあると思います(※前述の公式盤で聴ける
この曲は、BBCのマスター原盤から落としたものが収録されている)。

トラック(2)〜(6)は同69年8月9日のプランプトン・フェス音源なので、
それは↓の8月9日の欄を参照して下さい。

という訳で、トラック(1)の音質は91点。
1CDプレス盤。
『ASTRAL NAVIGATION』 / (KC-90-8077)
Live at
(1)〜(7): Community Theater, Berkeley, California, USA. / 1973. June. 16
(8)〜(9) : BBC Radio Show - Top Gear - Maida Vale Studio / 1969. May. 6

これもまた同日の音源。トラック(8)〜(9)にボーナス扱いで
「Epitaph」と「The Court of the Crimson King」が収録されています。
まぁ今更ありふれた音で有難くも何とも無いという人が大多数だろうけど、
でもこれを聴いて夢膨らませていた時期があってこその現在だと思うんですね。
改めてもう一度聴いてみるとその安定した収録音に驚かされます。

という訳で、トラック(8)と(9)の音質は89点。
1CDプレス盤。


『IN SUPPORT OF THEIR SATANIC MAJESTIES』 / (SCORPIO ILSC-9110)
Live date
(1)〜(5) : "Hyde Park Free Concert", Hyde Park, London, UK / 1969. July. 5
(6) : Plumpton Festival, Plumpton Race Course, UK / 1969. Aug. 9
(7) : Marquee Club, London, UK / 1969. July. 6

トラック(1)〜(5)がここで扱う7月5日の音源。つまり伝説のハイドパーク公演の
パフォーマンスが収録されています。本作がリリースされた時は「いよいよ出たか!」
という待望の音源でした。後に直ぐDGMがアッパー版として公式盤をリリースしましたが、
往年のファンにとって本作の登場は衝撃でしたし、ファンの間で話題にもなったものでした。
後にEL&PのDVD作品『Beyond the Beginning』が出た時(2005年)にこの時の演奏風景が
映像で出てきた時も衝撃でしたが、こうして実際の音としてその時の演奏が聴けるというのは
本当に凄いことだと思います。

今更内容について書いても仕方無いですけれど、ここで聴けるものは現存する他の
どの69年公演とも異質の演奏内容です。理由の大きな要因は、複数のバンドが
出演するコンサートという事で、バンドに割り振られたステージングの持ち時間が
短かったこと(約40分間だった)でしょう。このため、楽曲構成の練り直しを
した訳ですが、結果的にそれがウルトラ・レアテイク満載の濃厚な内容と
なっている訳です。

まず「Epitaph」は何と歌詞3番(!!)からスタートしており、この日限りの
特別な短縮版となっています。そのうえ終曲部が「Mantra」となり、
そのまま「Travel Weary Capricorn」が続けて演奏されているのも衝撃です。
また通常だと約8分〜長くて10分弱掛かる「The Devil's Triangle (Mars)」も
この日は僅か3分という異例の短縮版演奏となっており、これも恐らくこの公演
以外ではまず無かったと思われる驚きのアレンジだと思います。
またこの日はグレッグの歌唱も特徴的で、この日のパフォーマンス以外では
聴いた事が無い独特のアクセントの付け方や節回しで歌っており、シャウトの
タイミングや位置が違っている箇所が幾つか確認出来るのも面白いところです。

残念ながら「21st Century Schizoid Man」の0分55秒付近で一瞬カットがある事と、
「The Devil's Triangle (Mars)」でも1分22秒付近で一瞬の音切れがありますが、
この特別プログラムが堪能出来る事を考えればそんなのは極些細なことでしょう。
尚、ボーナスとしてトラック(6)には8月9日のプランプトン公演から、
トラック(7)には本ハイドパーク公演の翌日、7月6日のロンドン・マーキー公演からの
演奏がそれぞれ一曲ずつ収録されていますが、それはそれぞれの日付の欄を参照して下さい。

音質79点。
1CDプレス盤。
『THE LURKING FEAR』 / (KC 010S)
Live Date : Marquee Club, London, UK / 1969. July. 6

リリース後にDGMのコレクターズ・ボックス1に緊急収録されたいわく付きの1枚。
「21st Century Schizoid Man」はカット・イン。歌詞1番の後半から切れていますが
演奏そのものは強烈。冒頭から凄まじいボルテージで曲がグイグイ加速してゆく様子は
もう圧倒的。(^^)中間部のユニゾンもアンサンブルが完璧に合っており、怒涛の流れの
まま歌詞3番へ突っ込んでゆくシーンは鳥肌が立つと思います。
「(Why Don't You Just) Drop In」もカット・イン。これもやはり歌詞1番の冒頭が
失われています。また残念ながら1分35秒付近〜1分42秒付近までの約7秒間、音が抜けて
無音部分となっているのですが、でも演奏が良過ぎて殆ど気になりません。この日は
ムーディな曲想が終始心地良く、ジャイルズの的確なドラミングがとても良いアクセントに
なっているのが特徴でしょうか。後半で乱れ舞う凶悪なサックスもイアンならではの
アプローチで、後のコリンズのアプローチとはやはりひと味違っていると思います。
そして何と言ってもグレッグの素晴らしい歌唱。これに尽きます。素晴らしい!!

「I Talk To The Wind」もまた見事なパフォーマンス。グレッグが非常に特徴的な、
ひねり上げる様なアクセントで歌っているのだけど、これ2010年にリリースされた
『クリムゾンキングの宮殿 / 40周年記念盤完全ボックス』のDisc-2 / ボーナス
トラック(7)に収録されているBBCセッションでのアプローチに非常に似ていると思います。
たぶんどちらも収録時期が近いから似てるんでしょうね。(^^;)
まぁそれはさておき、この曲では軽やかに、そしてさり気なく入ってくるドラムの
アプローチもまた絶品です。フリップもそれなりにアルペジオとかハーモニクスで
聴かせてくれるんですけど、他のメンバーの演奏が凄過ぎて影が薄い印象もあります。
3分04秒付近で一瞬だけテープヨレの劣化音が発生していますが全く気になりません。
この「I Talk To The Wind」終演後にカット・アウトがあり、
「Get Thy Bearingsの一部(?)」→チューニングと、イントロクイズ
みたいなカット・イン / アウトを経て「Epitaph」の中間部から「Epitaph」が
最後まで収録されているのだけど、こういうメチャクチャな部分収録であるにも関わらず
演奏の魅力が全く失われていないのは驚異的ではないでしょうか。

「Travel Weary Capricorn」は、クレジットはされていないけれど厳密には
冒頭部分の約7分30秒付近まではフリースタイルの定型曲「Mantra」のパート。
そのパートを越えて本編に入ると一転して凄まじくなり、フルートの細かい音と
ドラムのきめ細かな打音、そしてビートの効いたリズムラインの弾け方が強烈です。
中間部のインプロヴァイズは他日でも御馴染みの展開となっていますが、
相変わらず不明なのは14分51秒付近から始まるコメディタッチのメロディ。
このメロディ、69年のライブでは頻繁に聴けますが後の71年・72年の「Groon」の
演奏中にも時々出てくるんですね(※例えば71年10月15日公演のボーンマス公演、
72年3月19日(?)のサンタモニカ公演ほか)。オーディエンスにも受けているので
間違いなくこれの元ネタとなっている曲があると思うのですが、不勉強ながら
僕はこれが何のメロディなのか分かりません(※たぶん当時のイギリスで放映
されていたテレビCMの曲とかコメディドラマの主題曲等だと思うのだけど・・)。
・・まぁそれはともかく、
静かに舞い散るフルートの音色が一転して激しい展開になる部分(20分30秒付近)や
イアンからグレッグに主導権が移る部分などは大変スリリングですし、その喧騒が
一瞬のうちに静かになってドラムソロへ移行したりと、起伏に富んだ後半の展開も
実に魅力的だと思います。

そして最後の「Mars」は冒頭で楽器同士による何かの会話めいたシーンが
あるのですが、これはなかなか珍しいと思います。また、誰の声かは
分かりませんが3分32秒付近で「AAhーーーーhg!!!」という人声・悲鳴が
入っており、不気味さを更に増しています。(^^;)そして最後はいつもの様に
サイレンの様な下降音を残しつつ終曲。まさに初期クリムゾンが当時評されていた
「ドゥーム・ロック」というものを実感出来るパフォーマンスだと思います。

尚、ここからは付記ですが、このブートは製作された枚数が少なく、
リリース当時は発売1週間ほどで店頭から在庫が消えた事でも話題になったブートです。
もう閉店してしまったけれど、当時これを仕入れていた知り合いのブート屋さんに
聞いた話では製作枚数は初回の300枚と追加の100枚のみで、その後の再プレスは
一切しなかったそうです。かく言う僕もリリースされた当時は買えなかった一人でして、
後日オークションでどうにか手に入れました。(^^;)

音質73〜79点−α。
69年当時の録音にしてはかなり良質の録音状態だと思いますが、
「Epitaph」の辺りからグッと音が近くなり、更にダイナミックな
音像に変化します。全体的に音が若干割れているので「−α」という
差し引いた表記にしていますが、圧倒的かつ素晴らしいパフォーマンス
なので、正直カットや音割れは全く気にならないと思います。
1CDプレス盤。


『IN SUPPORT OF THEIR SATANIC MAJESTIES』 / (SCORPIO ILSC-9110)
Live date
(1)〜(5) : "Hyde Park Free Concert", Hyde Park, London, UK / 1969. July. 5
(6) : Plumpton Festival, Plumpton Race Course, UK / 1969. Aug. 9
(7) : Marquee Club, London, UK / 1969. July. 6

ボーナス収録されているトラック(7)が、ここで扱う7月6日の演奏。
前日のハイドパーク公演での演奏に衝撃を受けて追いかけてきた人、
噂を聞いて駆けつけたファンも居たであろうこの公演から、本作は
「I Talk To The Wind」が収録されています。

当然ですが、演奏は上段↑で紹介している『THE LURKING FEAR (KC 010S)』で
聴けるものと同一。音質も変わらず、PC上で相互の音をリンクして聴き比べても
差が無いうえ、3分09秒付近で一瞬だけ入るテープの劣化音も全く同じなので、
間違いなく同一のマスターを使用していると思います。もしかすると
『THE LURKING FEAR』からこの曲だけコピーして収録しているのかもしれません。

という訳で、トラック(7)の音質は77点。
1CDプレス盤。


『THE COURT OF THE SCHIZOID MAN』 / (Wild Bird Records - WBR CD 890905)
Live date : Plumpton Festival, Plumpton Race Course, UK / 1969. Aug. 9

アナログ盤ブートの時代から存在する有名なプランプトン・フェスの音源です。
クリムゾンのアナログブートでも『DEAD FUCKING BOLLOCKS』と並ぶ古典音源でしたが、
本作はそのCD版。同内容のブートに下段↓で紹介している『PRISM SHIP (KC-011)』
『PANDEMONIUM(WPOCM 0290 D 046-2)』等がありますが、本作が一番エッジの利いた
最良の音で収録されていると思います。数ある69年プランプトン音源の代表音源ですね。

この日は演奏が素晴らしく「21st Century Schizoid Man」も冒頭から強烈です。
また「Travel Weary Capricorn」中間部のインプロヴァイズも他日公演以上にムーディで
グルーヴ溢れる展開が聴けるのも魅力。また楽曲冒頭で聴ける導入部の「Mantra」も
素晴らしい表現力で曲を誘っています。

音質84点。
1CDプレス盤。


『PANDEMONIUM』 / (WPOCM 0290 D 046-2)
Live date
(1) : BBC Radio Show - Top Gear - Maida Vale Studio / 1969. May. 6
(※This Track is ON AIR Version, : 1969. May. 11 * BBC Radio DJ / Dave Symonds)
(2)〜(6) : Plumpton Festival, Plumpton Race Course, UK / 1969. Aug. 9

本編となるトラック(2)〜(6)がここで扱う69年プランプトン音源。
上段↑の『THE COURT OF THE SCHIZOID MAN (Wild Bird Records - WBR CD 890905)』及び
下段↓で紹介している『PRISM SHIP (KC-011)』と同内容。
後に公式盤『EPITAPH 〜エピタフ 1969年の追憶〜 Vol. 2』が出たことで
殆ど存在価値が失われましたが、しかし面白いことに本作には
「同内容・同タイトルの別ジャケット・2ndプレス盤」が存在していました
(※ここに載せてあるのはオリジナル1stプレス盤です)。
ブートのリイシューは珍しいですが、前記した公式盤が出る前は
それだけ売れた人気タイトルでもあった訳です。

音質70点−α。
ヒスノイズとテープ劣化の音揺れ・歪みが結構目立ち、
低音のパンチに欠けた軽い音で収録されています。
演奏音もちょっと遠く感じるのも難かな。
1CDプレス盤。


『PRISM SHIP』 / (KC-011)
Live date : Plumpton Festival, Plumpton Race Course, UK / 1969. Aug. 9

今は無き、西新宿IKO IKO製のブート。
上段↑で紹介している『PANDEMONIUM(WPOCM 0290 D 046-2)』及び
『THE COURT OF THE SCHIZOID MAN (Wild Bird Records - WBR CD 890905)』と
同内容。まぁ数ある69年プランプトン音源の一つですが、収録内容が
秀作『THE COURT OF THE SCHIZOID MAN』に準じたものとなっているのが
特徴でしょうか。音質が良い点も引き継いでいます。

音質78点。
1CDプレス盤。


『DEBUT AT HYDE PARK' 69』 / (No-Label. ※Matrix Number : BS-55 504282 IFPI L601)
Live date : Plumpton Festival, Plumpton Race Course, UK / 1969. Aug. 9

タイトルには『DEBUT AT HYDE PARK' 69』と書かれていますがこれはデタラメ。
実際には8月9日のプランプトン・フェスの音源が収録されており、しかも
「21st Century Schizoid Man」が未収録というプランプトン音源中でも
群を抜くゴミタイトルです。わははは。(^^;)リリース当初から怪しい一枚でしたが、
今となっては本当に無価値な一枚。完全にハードコア・コレクター向けの
タイトルですねぇ。ただ、音質的にはそんなに悪くないです。

念のためですが一応書いておくと、内容は上段↑で紹介している『PRISM SHIP (KC-011)』、
『THE COURT OF THE SCHIZOID MAN (Wild Bird Records - WBR CD 890905)』及び
『PANDEMONIUM(WPOCM 0290 D 046-2)』と同内容で、そのうえ「21st Century Schizoid Man」が
収録されていないゴミでございます、という事です。これを当時、内容確認の為とはいえ
3800円で買ったのだから僕も相当のゴミでございますな。わっはははははは。

音質77点。
1CDプレス盤。


『IN SUPPORT OF THEIR SATANIC MAJESTIES』 / (SCORPIO ILSC-9110)
Live date
(1)〜(5) : "Hyde Park Free Concert", Hyde Park, London, UK / 1969. July. 5
(6) : Plumpton Festival, Plumpton Race Course, UK / 1969. Aug. 9
(7) : Marquee Club, London, UK / 1969. July. 6

ボーナス収録されているトラック(6)が、ここで扱う8月9日のプランプトン公演での演奏。
当然ながら演奏自体は上段↑で紹介してきた数種の同日音源と同じものですが、
音質が非常に良好・・というか、上記してきたタイトルを全て投げ捨てたくなるほどの
優れた音で収録されています。

冒頭で聞こえるギターのハーモニクスや軽いカッティングの音からして全く別物の音質で、
音の空間と奥行きが感じられるうえ透明感も増している事に驚かされます。
恐らく別マスターか、かなりマスターテープに近いロウジェネレーションのものから
収録されていると思われるのですが、上記してきた既発盤を聴き慣れた人であるほど
「え、何コレ?」と、驚きを隠せないんじゃないでしょうか。僅か1曲のみの収録
(・・とはいえ約30分もあるけど)ではありますが、69年のオーディエンス録音でこの
解像度、音の近さ、透明感のある収録音は正直かなりびっくりすると思います。

という訳で、トラック(6)の音質は89点+α。
1CDプレス盤。

『IN CONCERT』 / (TARANTURA, TCDKC-15-1,2)
Live at : Jazz Club, Victoria Ballroom, Chesterfield, England, UK / 1969. Sep. 7

TARANTURA盤のチェスターフィールド音源。
音源自体は下段↓で紹介している『GET THY BEARINGS (sc 102/1, 102/2)』や
『DEAD FUCKING BOLLOCKS − aka − KING CLIT The Motel 1969 − / (KC-1710)』
及び『TALK TO THE WIND / (OIL WELL - RSC 045 CD)』と同じですが、決定的に
違っているのは本作は未編集のステレオ・マスター(※たぶん)を使用している点。

"たぶん"と書いたのは、聴いていて何となくフェイズ・シフトっぽい擬似ステレオにも
感じられた箇所があるからで、個人的にやや疑心暗鬼な印象を拭えないからです。第一、
元々のオリジナルマスターがリアル・ステレオ収録なら、そこからコピーされて広まった
他の同日音源=過去の既発盤タイトルが何故全てモノラル収録なのかも疑問。更に言えば、
本作は部分的にモノラルとステレオ(たぶん)が編集・合成作業によって混在している箇所が
結構目立つのも不思議です。

裏ジャケ左上にも、わざわざ「Stereo / Mono」と表記がある。

これは僕の勝手な想像なんですが、このオリジナルのマスター音源は確かに
ステレオ収録だけど、部分的に収録が欠落しているとか、或いは部分的にテープが
経年劣化して聴くに堪えない箇所が発生しているんじゃないでしょうか。本作はそれを
モノラルや擬似ステレオの別ソース(他のブートか、オフィシャル『EPITAPH -1969年の追憶-』)から
合成・補填している様な気もしますし、既発盤はその手間が面倒なので初めから終りまで
あえてモノラルに変換して音質を統一していた・・という事かもしれません。
まぁ詳細は不明ですけど。

ちなみに、聴いていて音質変化が気になった箇所は↓の通り。
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「21st Century Schizoid Man」・・・5分20秒付近と8分13秒付近。
「Why Don't You Just Drop In」・・・1分09秒付近、5分26〜28秒、5分38秒付近。
「Travel Weary Capricorn」・・・0分55秒〜3分55秒の3分間と、4分31秒〜33秒、同4分41秒〜44秒付近。
「Disc2-(4)のインプロ」・・・3分50秒付近で一瞬の音質変化。9分47秒付近でまた変わる。
「Mars」・・・前曲インプロの9分47秒付近で変化したものがこの曲の1分02秒付近で再びステレオへ。

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・・という感じですが、
しかしながら音の明瞭感は他のタイトルより明らかに優れていて、演奏音も
グッと近くなっているのは特筆されるんじゃないかと思います。
特に「Mars」では、既発盤では冒頭の「Aaahhhhhh.....Aaahhh...」と繰り返されるメンバーの
恐怖の絶叫(或いは、嘆き声)による多声パートが殆ど潰れて聴こえませんでしたが、本作では
バッチリ聴けるのが良いです。あと、終演後の歓声とメンバーの短いひと言(※何と言って
いるのか分からないが)が収録されているのも特徴で、これは他のブートでは未収録です。

この、他音源では未収録のパートが他にもあって、例えば「Why Don't You Just Drop In」の
終演後にメンバー紹介のMCが入っており、これも他の既発盤タイトルではカットされていたシーン。
ちなみにこのメンバー紹介のMC、恐らくイアンが喋ってるんじゃないかなぁ(※違ってたらごめんなさい)。
でもフリップやグレッグの声ではない様に思います。同様に「Get Thy Bearings」の終曲後にも次の
「I Talk To The Wind」の曲紹介をしている箇所が暫くあって、これも既発盤タイトルでは
カットされている初登場シーンです。

またその「I Talk To The Wind」の終演後では興味深い箇所があり、グレッグが
「Thank You Very Much, Indeed!!」と発した後に直ぐ次の
「The Court of the Crimson King」が始まりますが、ここの部分既発盤で聴くと演奏が
始まる直前からカットインで切り貼りされているのが分かると思います。
つまりこう↓なってる。

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(既発盤)

「I Talk To The Wind」が演奏終了

グレッグが"Thank You Very Much, Indeed!!"と言う

そう言い終った直後に「The Court of the Crimson King」が
演奏開始直前からカットインでスタート。


この「The Court of the Crimson King」の演奏スタート時、
観客の拍手が前曲終演後から途切れずに鳴っていることに注目。

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しかし本作は違っており、次の様になっています。

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(本作)

「I Talk To The Wind」が演奏終了

グレッグが"Thank You Very Much, Indeed!!"と言う

その後約3秒間テープが廻っており、ギターのタッチ音が
一瞬入ってカット。直ぐに無音状態からカット・インし、
約2秒後に「The Court of the Crimson King」がスタート。


この「The Court of the Crimson King」の演奏スタート時、
観客の拍手が無いことに注目。

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上の※で示した通り、既発盤では「宮殿」の演奏スタート時に
観客の拍手が前曲終演後から途切れずに鳴っていますが、
この拍手が「宮殿」スタート後にフェイド・アウトっぽく消えているのが
本作を聴く事で気付くと思います。つまり既発盤はこの箇所(=使用した
マスターテープの前半終り部分と後半スタート部分)の音をレイヤーを2つ重ねる様に
合成処理して繋いでいたらしい事が伺えるんですね。しかし本作ではこの部分も
未編集なので、オリジナル収録通りにブツ切れ状態で聴けて興味深いです。

また、あれもこれもとオマケで他日音源を入れずこの日の音源だけで勝負している点も
個人的に大変好感が持てるところでした。しかし、イコライジング処理のせいかブースト
を上げて音が僅かに割れている箇所も幾つかあり、更にはアナログテープ特有の
ヒスノイズが終始「サーーー・・」と目立っているのはネガティヴな特徴でしょうか。
でもそれらを差し引いても、本作は既発盤タイトルと比べて明らかに音の明瞭感と
演奏音の近さが増していると思います。まぁこのマスターがリアル・ステレオか
どうかの件は置いておくとしても、昔から定番のチェスターフィールド公演を収録した
ディスクとしては久々に納得出来るアップグレード盤かなと思いました。

音質82点+α。
2CDプレス盤 / 紙ジャケット・ピクチャーディスク仕様。
『GET THY BEARINGS』 / (sc 102/1, 102/2)
Live at :
Disc1〜Disc2-(1) : Jazz Club, Victoria Ballroom, Chesterfield, England, UK / 1969. Sep. 7
Disc2-(2) : BBC Radio Show - Top Gear - Maida Vale Studio / 1969. Aug. 19 (※This Track is ON AIR Ver, : 1969. Sep. 7)
Disc2-(3) : BBC Radio Show - Top Gear - Maida Vale Studio / 1969. May. 6 (※This Track is ON AIR Ver, : 1969. May. 11)
Disc2-(4) : BBC Radio Show - Top Gear - Maida Vale Studio / 1969. Aug. 19 (※This Track is ON AIR Ver, : 1969. Sep. 7)
Disc2-(5)※Same=Disc2-(3) * Disc2 - All BBC Track Radio DJ : Dave Symonds

アナログ盤時代から知られていた有名なチェスターフィールド音源が収録されています。
同内容のブートに上段↑で紹介している『IN CONCERT / (TARANTURA, TCDKC-15-1,2)』と、
下段↓で紹介している『DEAD FUCKING BOLLOCKS (KC-1710)』及び
『TALK TO THE WIND (OIL WELL - RSC 045 CD)』があります。
公式盤『EPITAPH 〜エピタフ 1969年の追憶〜 Vol.2』が出たことで今では
音源的な価値は殆ど無くなってしまったけれど、でもブートCD黎明期からの
ファンには本作の音で聴く方がしっくりくる人も多いのではないでしょうか。
しかも本作はイコライジング修正されていないので、当時の雰囲気をそのまま
伝えているという意味合いからも貴重な音源資料ではないかと思います。

また、Disc2-(2)〜(5)に収録されているBBCラジオ音源も、"放送版"として
聴けるのは魅力だと思います。特に「Epitaph」は公式盤
『EPITAPH 〜エピタフ 1969年の追憶〜 Vol.1』のトラック(4)で
聴けるものは放送用原盤からの収録なので、その差が楽しめるのも
魅力かなぁと思います。まぁマニアックな差ですけど。(^^;)

それにしても、何度聴いても凄いのがDisc2-(1)の長大な流れ。
まず「Mantra」から入り、それが「Travel Weary Capricorn」になって
次第にインプロへ変化し、それがいつしか「The Devil's Triangle」で
凄まじい音の塊となって崩壊してゆく。30分にも渡る凄まじいメドレーは
聴き終えるといつも本当にグッタリしますが、でもこの日のメドレーは
かなり聴き応えあると思います。「Travel Weary Capricorn」の後の
インプロも初期クリムゾンのアヴァンギャルドな側面が他日公演以上に
良く出ていますし、年に一度はディスクを取り出して聴きたくなる演奏です。
・・やっぱり病気ですかね?(^^;)

音質79点→75点。
ショウの後半になるほど音がこもって悪くなります。
2CDプレス盤。


『DEAD FUCKING BOLLOCKS − aka − KING CLIT The Motel 1969 −』 / (KC-1710)
Live at :
Disc1〜Disc2-(1) : Jazz Club, Victoria Ballroom, Chesterfield, England, UK / 1969. Sep. 7
Disc2-(2) : BBC Radio Show - Top Gear - Maida Vale Studio / 1969. Aug. 19 (※This Track is ON AIR Ver, : 1969. Sep. 7)
Disc2-(3) : BBC Radio Show - Top Gear - Maida Vale Studio / 1969. May. 6 (※This Track is ON AIR Ver, : 1969. May. 11)
Disc2-(4) : BBC Radio Show - Top Gear - Maida Vale Studio / 1969. Aug. 19 (※This Track is ON AIR Ver, : 1969. Sep. 7)
Disc2-(5)※Same=Disc2-(3) * Disc2 - All BBC Track Radio DJ : Dave Symonds

アナログブートLP盤時代から知られていたチェスターフィールド音源を、
2CD・紙ジャケット仕様で復刻したディスク。タイトルもジャケットデザインも
アナログブートLP盤をそのまま再現・復刻しており、アイテムとしてなかなか
凝った創りになっています。

収録内容は上段↑で紹介している『IN CONCERT / (TARANTURA, TCDKC-15-1,2)』及び
『GET THY BEARINGS (SC 102/1, 102/2)』と全く同じですが、本作は曲順と
Disc-2に収録されているBBC音源もそのまま同位置で収録されている
『GET THY BEARINGS』のコピーか、或いは元ソースを同じくするブートLPか
ファンテープの丸写しなんじゃないかと思います。特にDisc2-トラック(5)に
収録されているDisc2-トラック(3)と同一音源の再収録まで踏襲しているのも
極めて特徴的です。また音質についても両タイトルをPC上でリンクさせて聴き
比べると気持ち悪いほど酷似しています。
(※各トラックタイムもほぼ同一。数曲だけ1〜2秒差で僅かに違っている)

僕の記憶では本作のリリースは確か1991年か92年で、前述した
『GET THY BEARINGS』よりも数ヶ月遅れてリリースされた記憶があります。
これを鑑みて収録音を比べてみても、本作は数ヶ月前にリリース済みだった
『GET THY BEARINGS』のディスクを丸ごとコピーして落としたか、もしくは
全く同一のマスターを使用した別のタイトルと考えるのが妥当な様に思います。
もし仮に両方ともオリジナルのアナログブート盤から落とされているとしても
再生環境や収録機によって双方の収録音に僅かな差が出る筈なので、それが
感じられないという事は上記したどちらかだろうと思います。

でもまぁ、どちらであろうともオリジナルのアナログブート盤を再現した
ジャケ装丁は魅力ですし、公式盤『EPITAPH 〜エピタフ 1969年の追憶〜 Vol.2』が
あるとはいえ、アナログ盤に親しんできた往年のファンとしてはアイテムとして
所持している嬉しさはまだ失われていないと思います。

音質79点→75点。
ショウの後半になるほど音がこもって悪くなります。
2CDプレス盤 / 紙ジャケット仕様。


『TALK TO THE WIND』 / (OIL WELL - RSC 045 CD)
Live at : Jazz Club, Victoria Ballroom, Chesterfield, England, UK / 1969. Sep. 7

上段↑で紹介している『IN CONCERT / (TARANTURA, TCDKC-15-1,2)』、
『GET THY BEARINGS (SC 102/1, 102/2)』及び
『DEAD FUCKING BOLLOCKS (KC-1710)』と同内容音源ですが、
「21st Century Schizoid Man」が未収録の不完全盤。
使用されているマスターも同一のものが使用されているのですが、
ディスクの収録時間の関係で全曲収録は無理だったのでしょう。

またウラジャケには"Cheltenham, Feb. 9. 1967"・・という
とんでもない表記がありますが、もちろんこんなのデタラメです。
完全にハードコア・コレクター向けの一枚。確認の為とはいえ
こんなの買う自分もどうかしているよ。(^_^;)

でも実は本作、収録音は透明感があって良いんだよねぇ。
ロージェネのテープを使用しているのかもしれませんが、
いずれにしても不完全収録なのが痛い・・。

音質80点+α。
1CDプレス盤。



『CROYDON 1969』 / (No Label)
Live at : Fairfield Hall, Croydon, UK. / 1969. Oct. 17

珠玉の未発表曲「Trees」が聴ける事で有名なクロイドン公演の音源。
ショウ途中からの不完全収録なうえ、音質も決して良いとは言えませんが
素晴らしい演奏が聴けるタイトルです。

「Epitaph」は歌詞3番の後半付近からフェイド・イン。
確かに断片収録なんだけど、しかしこれだけでも充分にこの日の演奏の
ダイナミックなスケール感と幻想性が伝わってくるから凄いと思います。
伸びのあるグレッグの歌声はいつもの様に甘くダンディズムに満ち溢れていますし、
ジャイルズのシンバルもなかなか目立って聞こえます。コーダに向けて楽曲が動く
0分44秒付近からの展開も非常にドラマチックです。

珠玉の名曲「Trees」は後にDGMのコレクターズ音源(DGM CLUB 1)でもボーナス収録
されましたが、そこでの「Trees」は完全収録ではなく部分収録。この演奏はその後
「Pictures Of A City」中間部の「42nd At Treadmill」に続く展開があるのにその
手前でカットされており、曲の全体構造は本作及び、下段↓で紹介している
『LARKS' TONGUES ON THE ISLAND (KC−004)』のトラック(6)でしか聴けないのが
特徴でしょう。しかも音質は本作(及び『LARKS' TONGUES ON THE ISLAND』トラック6)
の方が良いです。

まぁそれはさておき、この未発表曲「Trees」は本当に素晴らしいですね。
こんなにコーラスが美しい曲も珍しいですし、何故『ポセイドンのめざめ』に未収録
なのか不思議でなりません。しかも前述した通り、全体を聴くとこの曲はこの後
「Pictures Of A City」の中間パート(="42nd At Treadmill")へと展開し、その後
14分18秒付近からは再び「Trees」にリプライズする訳だから、楽曲の導入部として
付けていたコーラス部分(Trees)がカットされたというよりは、2つのくっつけていた
アイデアを切り離したと考える方が自然でしょう。では何故この「Trees」の部分を
使わずに「Pictures Of A City」として創り直したのかと言えば、それはたぶん
オリジナル・ラインナップ以外の布陣ではこの時のコーラス表現・音楽的表現が
難しいとフリップが判断したからではないかと僕は思います。

そして「Trees」が目立つ為につい忘れられがちだけど、この
「Pictures Of A City(※42nd At Treadmill)」のパートをこのオリジナルの
ラインナップが演奏しているというのも特筆されるんじゃないでしょうか。
途中からはそのまんま「Pictures Of A City (※=この場合は"A Man A City"と
言うべきかな)」のリフが出てきますし、終盤のアヴァンギャルドな展開もよく
聴くと決してフリープレイでやっている訳ではなく、ブレイクの入れ方も含めて
コーダまで構成がきっちり創られた上で演奏しているのが明白です。特に最後の音
なんかバッチリ合っていて非常に驚かされます。

ちなみに、裏ジャケのクレジットでは「Trees」と「Pictures Of A City」は別個の
トラックとして扱われている様な表記(つまり全5曲としての扱い)になっていますが
実際にはトラック分けされておらず、全体で19分17秒の一曲扱いになっています。
この為、トラック数では全4曲です。

「The Court Of The Crimson King」は更に極悪の音質で収録されており、
完全に音が割れ、所によりテープヨレもありますが、しかしそれでも演奏自体の
素晴らしさが伝わってくるのだから驚異的と言わざるを得ません。でも集中して
よく聴くと、グレッグの美声とラウドな音のうねりが歪んだ音像からも力強く
聳え立つのが分かりますし、中間部のフルートの美旋律(ここはよく聴こえる)が
リリカルに舞い散るサウンド・ロマンスとなり、この日限りの絶妙な音世界を創り上げて
いるのが分かります。そして終曲部のコーラスによる静かな音の拡散も非常に秀逸。
この布陣でしか成し得なかったマジックが確かに息衝いているのが実感出来るでしょう。
確かに音は悪いけれども、演奏そのものは間違いなく極上です。

最後の「The Devil's Triangle (Mars)」もヒスノイズと音割れが激しいですが、
非常に迫力のある演奏が聴けます。前半暫くは比較的音質良いですが、
メロトロンが悲鳴をあげるパフォーマンス中盤以降は音質極悪(^^;)。でもね、
ジョワジョワ・ゴワゴワ・ボコボコした音の中からでも当時の演奏の凄みははっきりと
伝わってきますし、終盤で曲が息を引き取る辺りの壮絶な表現はこの音質でも(或いは、
この音質だからこそ)その凄まじさに耳を奪われます。また、曲の終わりで残る筈の
サイレンの下降音がこの日はハウリングと化しており、その為かアッサリしている
のも特徴でしょう。

音質は
「Epitaph」が69点、
「Trees」が77点+α→71点、
「The Court of the Crimson King」が38点 (※部分的に73点)。
「The Devil's Triangle (Mars)」が15点 (※冒頭1分30秒付近までは70点)。

・・・まぁ音質はさておき、これぞまさに"1969年の追憶"でしょう。
例え音質は悪くても音楽の良さは伝わるという格好の音源だと思います。
1CDR。
但し、オリジナルはプレス盤CDでした。
当時買い逃してしまい、未だに大後悔しています・・(T_T)


『LARKS' TONGUES ON THE ISLAND』 / (KC−004)
Live at
(1)〜(5): Marquee Club, London, UK. / 1971. Aug. 9
(6)〜(7): Fairfield Hall, Croydon, UK. / 1969. Oct. 17

ボーナストラックとして収録されているトラック(6)と(7)、つまり「Trees」と
「The Court of the Crimson King」がクロイドン音源。使用されているマスターは
上段↑で紹介している『CROYDON 1969 (No Label)』で使用されているものと同じです。

若干ヒスノイズは目立ちますが、音質補正されていないぶん音がストレートに収録
されているのが特徴。個人的には補正されて音の角が取れた丸みのある音質より、
粗々しいがシャープな本作の音質の方が好みなので、↓の点数も
『CROYDON 1969』より1点加算しています。でもまぁこれは個人の好みなので、
補正された丸い音が好きな人は本作で聴ける音より『CROYDON 1969』で聴ける音の
方が好きだと思います。

という訳で、音質は「Trees」が78点+α→72点、
「The Court of the Crimson King」が39点 (※部分的に74点)。
1CDプレス盤。


『MARSBOUND』 / (KC-005)
(1)〜(7): Massey Hall, Toronto, CANADA. / 1971. Nov. 11
(8): Fairfield Hall, Croydon, UK. / 1969. Oct. 17

ボーナストラックとして収録されているトラック(8)
「The Devil's Triangle (Mars)」が、この69年10月17日のクロイドン音源。
上段↑で紹介している『CROYDON 1969 (No Label)』で聴けるものと同じで、
間違いなく同一のマスター音源から落とされています。

尚、ディスクのトラック番号としては(8)が割り振られていますが、
実際には(7)の「Cadence and Cascade」の終演後から収録されており、
それがトラック(8)にまたがるようにトラック2つ分で演奏が進行しています。
また、そのトラック(8)の1分58秒付近〜2分00秒付近までの約2秒間だけ、
無音状態で途切れています。

という訳で、トラック(7)後半〜(8)「The Devil's Triangle」の音質は
13点−α。
前述した通りトラック(8)の1分58秒付近〜2分00秒付近で音が途切れている為に
クオリティ面を差し引いてマイナス評価にしています。
1CDプレス盤。