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〜1971年−72年前期〜


1971年〜1972年前期

初期のクリムゾンの中で好き・嫌いが一番分かれるのがこの時期ですよね。
僕個人としては73年〜74年と同じくらいに大好きな時期なのですが、
やはりブルース・ジャズ調のイメージが強いだけにプログレとは括り難い
とっつき難さがあるのかもしれませんが、しかしこれほど美しい旋律を
残していた時期もまた無いと思います。
特に71年冒頭での「Lady Of The Dancing Water」や「Cadence and Cascade」は
筆舌に尽くし難いほど天上の音楽を披露していましたし、「21st Century Schizoid Man」も
69年のオリジナル・クリムゾンの演奏を凌駕している時が多々あると感じます。

また、これらのブートを聴いていると、フリップがクリムゾンのライブ中に
詩的で美麗な優しい旋律を多く弾いていたのは、実はこの72年までだった様な気がしてなりません。
73年からはフリッパートロニクスをステージで導入し始めた事により、かなり実験的なフレーズを
多用するようになりますし、それ以降も2000年以降のミレニアム・クリムゾンに至るまで、
ノイジーで病的な(そしてポリリズムの怪物の様な)旋律ばかりを弾く様になってしまいます。
これに加えて、1971年の12月にはピート・シンフィールドが脱退してしまいますから、
オリジナル・クリムゾンが持っていた文学的で詩的なイメージをフリップが音のイメージとして
継承していたのはやはりこの72年前期までという事になります。

という訳で、ここで紹介しているこれら71年〜72年のブートは、そうしたフリップの心的変化と
技術的発展(これはVCS3やフリッパートロニクスの様な、テクノロジーという意味での技術)によって
文学的で詩的だった初期クリムゾンが侵食され、別の何かに変質してゆく様子を
生々しく捉えている音源だと思います。



1971年 ウォームアップ・ギグ (4月12日〜4月15日 / "Zoom Club, Frankfurt, GERMANY.")
1971年 第一次イギリスツアー (5月11日〜6月2日)


『COURT OF THE '71』 / (BS-56 23974X IFPI L602, BS-57 504836 IFPI L601)
Live at : Plymouth Guildhall, UK. / 1971. May. 11

イギリスツアーの初日音源。
開演前のメロトロンのチューニングから収録されている名盤ブートのひとつです。

「Cirkus」は、この後に続くツアーで演奏されているパフォーマンスとはだいぶ違っていて、
曲の随所でメロトロンが多用されているのが面白いです。メルののサックスがこれにやたらと絡んで、
メロトロンとサックスがかなり前面に出たテイクになっています。個人的には、ライブの回数を重ねた
71年後期〜72年前期のパフォーマンスよりも、本作で聴ける初期バージョンの方が好みです。(^_^)

ここでの「The Sailors' Tale」は、まだ「Formentera Lady」から繋がって演奏される
メドレー形態でのパフォーマンスではなく、単体で演奏されている独特のもの。
曲は導入部とコーダはスタジオ版と同じですが、中間部が全くの別物で、
かなり変幻自在に曲想を変えてゆく魅力的なフリープレイを内包しています。
メインテーマのド迫力なアンサンブルが収まるとメルのフルートがソロで主導権を握り、
まるでお囃子の様な曲想になったり、フリップが奏でるメロトロンの大洪水になったり、
パーカッシヴなドラミングがそれをアヴァンギャルドに盛り立てたりと、
何と14分を超える圧巻のパフォーマンスをこの日は披露しています。

「The Letters」も冒頭にメロトロンを使用したムード溢れる初期バージョン。
中間部のフリー・アプローチも暴走の一歩手前できちんと歯止めが効いていて、
大変引き締まった演奏です。曲の終盤3分54秒〜4分16秒までの約30秒間に渡り
全くの無演奏の中でボズが一人でメロディを歌い上げるシーンと、
それを歌い上げた後にフリップの繊細なギターメロディが入って
静かに終演する様子は鳥肌モノの素晴らしさです。(^_^)

続く「Lady Of The Dancing Water」は当時でも殆ど演奏されなかっただけに
かなり貴重な音源。フリップのギターが大変美しく、スタジオ版以上に幽玄で荘厳な曲想を
晒していて、聴き惚れること間違い無し。曲の途中で「Cadence and Cascade」に違和感無く
バトンタッチをしていますが、この曲もこの日は超絶品の名演奏。
ボズの甘く優しいダンディな声とフリップの極上ギターメロディー、そしてメルのフルートが絡んで
天上の音楽を奏でていますが、こんなのを実際に目の前で演奏されたら体と心が
本当に溶けちゃうんじゃないかなぁ・・・。この演奏を生で観た人が凄く羨ましいです。(T_T)

「Get Thy Bearings」はカット・イン。冒頭の約20秒ほどが失われていますが
この演奏は強烈のひとこと。後半ではお馴染みのVCS3を使ったドラムソロになっています。
あと、この曲でのボズの声は、オリジナルで歌っていたグレッグの声に酷似していて、
最初に聴いたときはグレッグが歌ってるのかと錯覚しました。(^_^;)

そして71年初期の最大特徴でもある「In The Court Of The Crimson King」も見事な演奏。
オリジナルが持っていた文学的な荘厳さと詩的さが見事に継承されている極上のプレイです。
曲中盤の、美旋律でフルートが舞うバックで、フリップが奏でるギターのメロディーが
69年の演奏時と違っているのも特徴でしょう。
続く「Ladies of the Road」も、後の演奏とはかなり様相が違っています。
テンポがかなり速く、常にドラムがビートを刻んでいるのが面白いですし、
ボズがシャウトしまくっているのも面白いと思います。また「Cat Food」の編曲の様な
ベースラインが特に目立つのもこの時期の演奏の特徴ではないでしょうか。
「21st Century Schizoid Man」は、ピッチを考慮してもかなりテンポが速い演奏。
ボズの歌い方はまだ不慣れな感じもしますが、71年後期の様に癖のあり過ぎる
歪みまくった歌い方とは違っているので、そのぶんストレートに愉しめる感じがします。
最後に、「Mars (The Devil's Triangle)」はこの日さほど味付け過多になっておらず、
原曲にそこそこ似た演奏になっているうえにかなりカッコいい演奏になっています。

最後に音質面に少し触れておきますと、
本作はこの時期の録音にしては大変良好な録音状態だと思います。
しかし残念ながらピッチが若干速めに収録されているのが難点でしょうか。
そして本作はノーカット完全収録・・・と書きたいところですが、
実は「Mars (The Devil's Triangle)」のみ、演奏を殆ど終える直前で
カット・アウトになっています。まぁさほど気にはならない程度ですが、
ちょっと残念ではあるカットです。
しかしそれを差し引いても、本作の収録内容は実に素晴らしいと思います。

音質78点。
2CDプレス盤。


『FIRST BRITISH TOUR OF CRIMSO U』 / (DRAGOON-001/002)
Live at : City Hall, Sheffield / 1971. May. 29

「Pictures Of A City」はシンコペーションが目立つ独特の演奏。
ブリッジとなる3分28秒付近の表現もかなりユニークなブレイクで繋いでおり、
まだ若干不安定な面が垣間見られます。しかしながら4分47秒付近から突入してゆく
中間部はそこまでの流れとは一転して非常にスピーディでスリリングなアンサンブルを
披露しており、時折入る誰かの掛け声と一緒に気合の入ったパフォーマンスが楽しめます。
中間部後半のサックスのソロにしてもバックの音(ドラムとベース)が71年春特有の
気だるさを出しているのが興味深いですし、その気だるい曲想が一転する終曲部は
ボズのシャウトで一気に加速して終わってゆく様子が凄まじいです。

この日も単体で演奏している「The Sailors' Tale」は、初めて聴くと別の曲を
やっているのでは?・・・と思わず首を傾げる様な曲想で、中間部ではムード溢れるフリップの
素晴らしいギターソロを含んでいる傑作テイク。途中から絡んでくるフルートがまた良くて、
優しく、美麗な旋律がアヴァンギャルドなドラムとの対比と共に次々と飛び出してきます。
やがてフルートが止むとそこからはメロトロンとドラムの対話になり、壮大かつ分厚い音の
塊に再びフルートとギターが絡んでミドルテンポの凄まじいインプロが展開しています。
14分00秒付近で一旦音が彼方に消えてゆきますが再び静かに立ち上がり、また静かに
彼方に音が沈んで終演しています。この素晴らしいインプロはなんと15分強も続くのですが、
9分13秒付近〜10分29秒付近まで音が割れてしまっているのが非常に残念(ちょうど
メロトロンとドラムの対話の箇所。低音と爆音が凄まじい。たぶん会場で実際に
聴いていたら骨まで響いているはず)です。

そして何といっても「The Court Of The Crimson King」。もうこんなの聴いたら
泣いちゃうよと言うほど見事な演奏で、メロトロンの洪水・洪水・洪水と、
幻想的なフルートの旋律、リリカルなギターのアルペジオが生命感に満ち溢れた
音を綴り上げ、壮大なサウンドドラマが広がっています。
メロトロンが部分的に不安定でフラフラした音程を彷徨ってはいるのですが
そんなのは些細なこと。その音と空気の揺らぎさえもここでは魅力で
満ち溢れています。どんな言葉を重ねても選んでも、このパフォーマンスを
表現するのは陳腐に思えますし、楽曲が持つ魅力と力をこんなに出している
演奏ってなかなか出会えないんじゃないかな。もう反則だよコレ・・・。(T_T)

「The Letters」はこの日も冒頭でメロトロンが付いたバージョン。音圧が凄くて
ところどころ音がつぶれていますが、これもまた些細な事でしょう。素晴らしい
音の綴れ折りが序盤から耳を圧倒してくれます。中盤、インプロヴァイズが強烈に
なる箇所はまだどこか「(Why don't you just) Drop In」の頃の名残が感じられて面白いです。
コーダは初日の演奏を踏襲して無音のままボズのボーカルが歌う→静かなギターで終演
・・・という流れになっています。
「Cadence and Cascade」も素晴らしい名演。ボズの甘く湿ったダンディな声と
温もりのあるポエティックなギターの音色、そして咲き乱れるフルートの息遣いが
それぞれレイヤーを重ねる様に混ざり、色彩が溶け合い、表情と色合いを深めて
ひとつの音像を作り上げてゆく様子は本当に見事。意識がどこかへ連れて行かれそうになる、
妖しく危険な美を感じる演奏です。

「Get Thy Bearings」は恐らく不完全収録。このままでも成り立つ終演の仕方ですが、
7分25秒付近でカット・インする編集跡があり、やや違和感を感じさせる不自然な
終わり方をしています。本当はもう少しドラムソロが続いてからテーマに戻って終曲・・・という
流れだったのではないのかなぁ?(@-_-)しかし演奏自体はグルーヴに溢れた好演奏で、
サックスとドラムが中心となり次々に表情を変えてゆくインプロ部分は聴き処が多いです。
一旦ブレイクを迎えてから始まる6分12秒付近からの展開は人声を含む寸劇めいた一面もあり、
ジェイミー在籍時のインプロ(同72年12月15日のポーツマス公演)に通ずるものがあると思いますし、
69年オリジナル・クリムゾンの演奏にも迫るものが充分あると思います。

この日の「Ladies of the Road」はスタジオ版とは歌詞が違っているテイク。
イアンのドラミングが激しく、ハードな曲想で演奏されている好演奏となっています。
BメロからすかさずAメロに戻るリズミカルでスピーディな展開や、喧騒性よりグルーヴを
押し出した中間部のインプロ・アプローチ(4分46秒付近〜)など、この後の演奏とは
随分違う印象を多々感じさせてくれるパフォーマンスが興味深いです。
この「Ladies of the Road」の終演後、約2分間ほどのやや長尺なフリップのMCシーンが
レコードされているのですが、ここで中国の旋律っぽいもの(チャルメラの音色みたいなイメージ)を
軽くメロトロンでつま弾いていて面白いです。

「21st Century Schizoid Man」はこの日もスウィング気味のサックスが印象的。
特に中間部でのインプロは強烈・凶悪で、かなりハイスピードなテンポを
全力疾走で弾き出してゆくドラムの轟音と、パラノイアックに荒れ狂うサックスが
凄まじいコントラストを描き出しています。この、かなりスピーディな中間部→
やはりスピード感たっぷりのユニゾン→ゆっくり溜めを効かせての歌詞3番・・・という
一気に聴かせる展開も緩急のコントラストが実に眩しく、手に汗握るシーンだと思います。
また、ボズの歌唱はややタイミングをズラして歌っているものの、この後(特に72年春頃)の
アプローチに比べるとまだまだ軽度なズラし方です。ボーカルにはまだエフェクトが
掛けられていない事も確認出来ます。

ラストの「Mars」はもう壮絶。
凄まじくドゥームな音の塊が巡礼・昇天する様子を描いた(かの様な)、鮮烈な
イメージを伴う音絵巻。一定リズムで繰り返されるタムの音(これがまた呪術的で恐ろしい)を
軸に音が彷徨い、これに各楽器が現世の罪や原罪を擦り付けるかの様に音で装飾してゆくうちに
音の塊は徐々に巨大になり、歪みながらもやはり一定リズムで繰り返されるタムの音と共に
ズルズルと行進。後半、手に負えないほど巨大になったドゥーミーな音の塊にメロトロンが
纏わり付くと(6分55秒付近〜)、それは何かが浄化される様に次々と悲鳴を上げ、
やがて少しずつ昇天し(7分53秒付近〜)、そして波の音を残して完全に消え去る・・・という
壮絶なコーダを迎えます。
これはもう音楽による劇、サウンドドラマそのものでしょう。本当に見事ですし、
感動的なエピローグだと思います。"波の音"がこの日は若干長く音を出し続けて
いるのも効果満点で、たった今体験した音による幻視のイメージを
深く会場に残している点も特筆されるでしょう。
・・・それにしてもこの日この時、この素晴らしい「Mars」を更に盛り立てていたであろう
ピートの照明効果と演出は一体どんなものだったのでしょうねぇ・・・。

音質は・・・
まぁ強いて言うなら75〜76点くらいです。
音が完全に割れてしまっている箇所も数箇所ありますが、
でもそんな音質のマイナス面よりも演奏内容の素晴らしさに
終始耳を奪われる至福の音源だと思います。

音質76点−α。
2CDプレス盤。
『SHEFFIELD 1971』 / (PF-297D @ PeaceFrog)
Live at : City Hall, Sheffield / 1971. May. 29

上段↑で紹介している『FIRST BRITISH TOUR OF CRIMSO U / (DRAGOON-001/002)』と
同一音源。使用しているマスターも全く同じものが使われています。

とはいえ音質は上品な湿り気のある音で収録されており、無音部分も自然な無音で、
『FIRST BRITISH TOUR OF CRIMSO U』の様に無音部分で"サーーーーッ・・・"という
テープ独特のザラついた音がしない点は本作の大きな特徴だと思います。
但しそのぶん音が丸く、そして演奏音が若干遠めに聞こえ、
音の粗々しいストレートさにも欠けています。
個人的には多少音像の粒子が粗くても、音の近いストレートな
音像の方が好きなので、ここでは一応『FIRST BRITISH TOUR OF CRIMSO U』を
この日のメイン音源として推してありますが、多少音は丸くぼやけていても
本作の上品な収録音の方が良いと感じる方はきっと多く居られるはず。

・・なのでこれはもう個人の好み次第でしょうし、
プレス盤かCDRかという違いやジャケの好みで差も出るでしょうが、
本作と『FIRST BRITISH TOUR OF CRIMSO U』の収録音とクオリティは
ほぼ互角と言って良いと思います。どちらを選んでも素晴らしい音源で
ある事に変わりありませんし。(^^)

それと本作は後発でリリースされた為か、『FIRST BRITISH TOUR OF CRIMSO U』では
カット・アウト〜カット・インだった編集跡に多少手が施されており、
フェイドアウト〜フェイド・イン処理されて粗雑さが薄れ、聴いている
時の違和感を低減しています。
具体的には「Get Thy Bearings」の編集跡(本作のトラックタイムでは7分09秒付近)が
フェイド・インになっていたり、ブツ切れて終わっていた「Mars」の終演後も
本作では自然なフェイドアウトでディスクを締めています。
また「Pictures Of A City」〜「The Sailor's Tale」の曲間MCもカット跡が
目立たなくなっている点も特筆されると思います。

音質75点+α。
2CDR。
1971年 単発ライブ (7月15日 / "Town Hall, Watford, UK.")
1971年 第二次イギリスツアー (8月9日〜9月28日)


『LARKS' TONGUES ON THE ISLAND』 / (KC−004)
Live date
(1)〜(5): Marquee Club, London, UK. / 1971. Aug. 9
(6)〜(7): Fairfield Hall, Croydon, UK. / 1969. Oct. 17

ここでの「Cirkus」は、イアンのリズム・アプローチがかなり面白いです。
一音一音を確かめる様に重たく叩いていてとてもユニーク。フリップが殆どギターを弾かず
メロトロンに徹しているのも聴きどころでしょう。
「The Letters」は、ここでも冒頭でメロトロンの前奏が付く初期形態。
終盤でボズがソロで歌う→フリップの軽いギターで終曲・・・という流れも同じです。
しかし5月の公演と比べると曲想が整理され、コントラストがハッキリしているのが分かる演奏です。

そしてこのブートで最大の特筆点が、ここに収録されている「Groon」。
曲の冒頭がフェイド・インしているので、冒頭での「Groon」のメインテーマが失われているものの、
突然「Larks' Tongues In Aspic Part T」のメインテーマがそのまま飛び出て来ます。
フレーズが似ているという事ではなく、まさにそのままのメインテーマが演奏されているので、
これは最初に聴いたら驚愕すること間違いなしでしょう。
しかもそれだけではなく、「Lament」も部分的にあのフレーズがそのまんま出てきます。
どちらかと言うと、この「Lament」のメインフレーズを演奏している時間の方が
圧倒的に長いのですが、いずれにしても『Larks' Tongues In Aspic』は73年の発売ですし、
『Starless And Bibleblack』は74年の発表ですから、既に2〜3年前のこの時期に
この曲のアウトラインが殆ど出来ていた事を証明する決定的な音源です。

この「Larks' Tongues In Aspic - Part T」〜「Lament」の流れが終わると
曲の後半はコリンズが主導権を握ってゆき、いつもながらのフリー・ジャムへ移行。
13分23秒付近で一度ブレイクがあり、イアンのドラムがソロを取り始めてピートがVCS3を
操作し始めるとフェイド・アウト。うーん・・・(-_-;)
たぶんマスター音源には曲の全容が収録されていると思うのですが、
かなり貴重で興味深いテイクなので、いつかノーカットで聴ける音源が登場する事を願ってやみません。

「Ladies of the Road」もまたユニークな演奏。フリップのギター・アルペジオで曲がスタートするのも
面白いのですが、そのフリップが曲の途中でかなりジャズ・ブルース寄りのフレーズを他日よりも
目立つ感じで連発して弾いています。演奏そのものはスタジオ版に近い雰囲気を保っていますが、
ここでのフリップのギター・プレイはかなりの注目点でしょう。
「Pictures of a City」は、とてもノイジーでカッコいい演奏をしています。
スローなテンポから一転してファスト(しかもかなり速い)になる中間部の演奏は圧巻のひとこと。
何色もの絵の具を一気に「せーの!」でド派手にキャンバスにブチまけたような色彩感があり、
この迫力には圧倒されること請け合いです。

トラックナンバー(6)と(7)に収録されている演奏はボーナストラックで、
オリジナル・クリムゾンによる69年10月17日の極上・天上・至高の演奏。
まさに神が奏でているとしか思えないこの名演奏は、69年10月17日の欄を参照して下さい。

音質75点。
残念ながら完全収録ではありませんが、本作はファンなら絶対必携の一枚でしょう。
また本作は1997年に廃盤となっており、現在入手するのは非常に困難な一枚となっています。





『THE GROON BOX』 / (HELP−100, PO-1〜PO-4)
(Disc1〜Disc2−(2)) Brighton Dome, London, UK. / 1971. Oct. 16
(Disc2−(3)〜Disc3−(1)) Clacton Weeley Festival, UK. / 1971. Aug. 28
(Disc3−(2)〜Disc4−(4)) Preston Public Hall, UK. / 1971. Oct. 9
...and Plus one, Date unknown track. (Disc4−(5))

限定600枚プレスの4CDボックスセット。
Disc2後半〜Disc3冒頭に渡って8月28日公演が収録されていますが、ディスク中に
僅か3曲しかこの日の音源が収録されていないため、これが本当にこの日の公演なのかは
疑問が残るところ。しかしここに収録されている演奏は2006年10月現在のところ
この盤でしか聴けないもので、他のブート音源には収録されていません。

という訳で僅か3曲のみではありますが、全体的に音質も良く、
収録内容はなかなか興味深いものです。
Disc2−(3)の「Pictures of a City」は、中間パートのインプロヴァイズが
非常に重苦しいもので、メルとフリップの息詰まるプレイが魅力です。
この時期独特の、比較的スローなテンポで演奏されてはいますが
曲の魅力を充分に生かしたアンサンブルがここでも素晴らしく、
つい聴き惚れてしまうこと請け合いのテイクです。

「The Letters」は、冒頭の導入部にメロトロンが入るというちょっと変わったスタート。
まだ曲をテストしている印象があって、全体的にどこか試作的な演奏をしています。
後半部ではフリップのメロディアスなギターソロが入り、そのまま曲が終演するという
かなり面白いプレイを披露しています。

「The Devil's Triangle」は、いつも通りにジャンクでダークですが、
この日は途中に「キーン」という金管音が鳴る箇所があったり、
VCS3の効果的な使用があったりして、基本の演奏に対する効果音が印象的です。
この曲は、この日もショウのラストで演奏された筈ですが、
この音を聴く限りショウの最後を締め括るパフォーマンスとしては最高のインパクトを
オーディエンスに与えていた事がよく伝わってきます。(^_^)素晴らしい。

音質86点。
ところどころで「ゴソゴソ、ゴソゴソ」という雑音がして、紙袋の中に録音機材を入れて収録
している様なノイズが聴こえますが、音質はクリアですし、各楽器の音も近くに聴こえますし、
この時期の録音にしてはかなり良好の音質だと思います。


『HYDE PARK, LONDON 1971』 / (ZA-89)
Live date : Hyde Park, London, UK. / 1971.Sep.4

「Formentera Lady」は、フリップのギター・アルペジオが終始奏でられているという
興味深い演奏。ピースフルで、詩的で、かなり面白いテイクだと思います。
「The Sailors' Tale」は既に「Formentera Lady」から繋がって演奏されており、
幾つもの複雑なテーマを重ねていた5月の演奏と比べると曲想がだいぶ整理され、
変化してきたのが分かります。曲の後半でフルートがお囃子の様に印象的に鳴り響いているのも
非常に印象的なテイクです。「Pictures of a City」は、この日はかなりテンポが速い演奏。
中間部のアンサンブルもかなりスピーディなのですが、後半のフリーになる部分では
一転してかなりアヴァンギャルドなスローの演奏をしています。

注目の「Lady Of The Dancing Water」は、この日も5月11日の演奏と同様に素晴らしいテイク。
フリップの静かでメロデァスなギターとボズのダンディズムに充ちた甘い声色が絡まって、
大変色彩豊かな曲想になっていまです。また、この曲はこの日も5月11日と同様に「Cadence and Cascade」へと
そのまま繋がって演奏されており、2曲通して極上のパフォーマンス。どちらも静かな曲なので
観客の話し声・笑い声が邪魔ですが、それでもかなり素晴らしい演奏をしている事が音から分かるでしょう。
「21st Century Schizoid Man」は、中間のインプロパートが大変アグレッシヴなテイクです。
フリップのギターソロで一瞬ブレイクが入るというお馴染みの展開を見せつつも
粒の揃ったユニゾンを決めたり、見事なアンサンブルを聴かせたりと、魅力的な演奏を聴かせてくれます。
またこの曲ではイアンのドラミングに迫力があるのも特筆点だと思います。

音質57点。
この日はこれらの曲の他にも「Cirkus」や「Mars (The Devil's Triangle)」、
そしてもしかしたら「Groon」もプレイしていた筈ですが、残念ながら本作には収録されていません。
不完全収録盤なうえに音質もさほど良くなく、観客の話し声が耳に付く音源ですが、
しかし「Lady Of The Dancing Water 〜 Cadence and Cascade」の様な名演奏も含まれており、
なかなか味わいのある一枚だと思います。
1971年 第三次イギリスツアー "AUTUMN TOUR" (10月8日〜10月30日)


『AUTUMN TOUR 2nd NIGHT』 / (18513-A/B)
Live at : Public Hall, Preston, UK. / 1971. Oct. 9 (???...May be.)

秋のイギリスツアー2日目の音源。
冒頭「Pictures Of A City」はかなり重ためのへヴィな曲想でスタート。
中間部のラウドになるインスト部分は一転してこの日も素晴らしくアヴァンギャルドで
ジャンクな様相を炸裂させていますが、ビシッと決めるべきユニゾン部分は完璧な
アンサンブルでピッタリ音が纏まっており、この辺りのコントラストというか
サウンドの立体感は際立っていると思います。

「Cirkus」では分厚い音の壁が終始圧倒的。序盤から完璧な演奏音でカッチリと
曲想を披露しており、表現すべきイメージがバンド全体で完璧に固まっている事が
よく分かるパフォーマンスだと思います。メロトロンの調子も良く、5分45秒付近から
始まってゆく後半のミステリアスな雰囲気が良く出ているのもこの日の特徴ではないでしょうか。
(最後半、8分08秒付近からのうねる感じも素晴らしい!!)

「Formentera Lady」は冒頭、フルートの滑らかな動きとボズの若干硬めの歌唱の対称が
序盤から心地良く、これにギターのリリカルなアルペジオの旋律が絡んで徐々に
音の表情が豊かになってゆきます。中盤でのフルートの旋律が右に左にと舞い散る様子は
ここでも素晴らしいのですが、この日は5分24秒付近からギターが意思を持ってこれに絡んでおり、
フルート+ギターの対話っぽい様子が後半で聴けるのも聴き処でしょう。
そしてその対話が終わると同時に奥から「The Sailors' Tale」の主旋律となるドラムが
聞こえ始め、そのまま「The Sailors' Tale」へ突入。この日の中間部(9分11秒付近〜)は
先ほどの続きとでも言うべきもので、内緒的なギターの旋律×スリリングなフルートの音色
とでもいう感じの対話的要素が強く、非常に興味深い演奏だと思います。そしてその
対話がフッと拡散すると曲は一気にコーダへ向かいアンサンブルが収束。もうホント見事です。

「The Letters」は、イントロでメロトロンが使用されているという非常に珍しいテイク。
また、これまでの公演ではギターの旋律で終演するというコーダ表現でしたが、
ここにきて演奏はまずサックスが前面に出てくる中間部があり→そしてボズの歌唱だけに
なるというこの時期特有の終曲表現に変化しているのも特徴で、これは非常に
シンプルなのに最大の効果をあげていると思います。

「Cadence and Cascade」も絶品。フリップの奏でるリリカルなギターの旋律が
この日もふんだんに放たれており、もう堪りません。(^_^;)フルートの細かな
タンギング(舌と腹筋を素早く動かして短音をなめらかに連発する管楽器の技法)も見事で、
曲想に素晴らしい色彩感を与えています。この時期のこうした詩的な表現って
その後のクリムゾンからは消えてしまいましたが、その耽美でとろけそうな音色の
綴れ折りがじっくり堪能出来るパフォーマンスになっていると思います。
ちなみに演奏前のMCで、ボズが「Cadence and Cascade」ではなく「O'Rafferty's Pig」と
曲紹介しているのも非常に興味深いですね。

「Ladies of the Road」は途中でボズが歌詞を間違えて歌っているものの、
後半部の盛り上がりが大変スリリングな好プレイ。じっくり丁寧に演奏して
いるのも印象的で、気だるいボズの歌声とルーズで芯のある演奏音がここでも
素晴らしい融合を果たしています。終曲部での各音の抜け方、ギターの旋律の
残り方も相変わらず見事だと思います。

「Groon」は冒頭の短いメインテーマ後、この日はサックスのルーズな旋律から
スタート。途中で各楽器が徐々に絡んできますが、個人的に注目したいのは
ボズのベースライン。控え目で、殆どルート弾きに近い印象もあるのだけど、
この日はよく聴いていると「Groon」のラインを少しずつ変えながら弾いているんですね。
4分36秒付近で一度音が拡散し、このベースラインだけが浮き彫りになるシーンが
あるのですが、そこから他の楽器がこの控え目なボズのベースラインを軸に
音を装飾し始めてゆく様子が確認出来て、なかなか興味深いと思います。
6分53秒付近で再びブレイクし、奥から静かにドラムの音が立ち上がってくると
そこからはお決まりのソロタイムがスタート。この日も約10分間にも渡る長尺な
ドラムソロで、10分19秒付近からは何やらパフォーマンスも入れているらしく
オーディエンスの笑いも起こっています。たぶん立ち上がったり
ドラムキット周辺をウロついたりしているのでしょう。
12分12秒付近からはVCS3の効果を入れたパフォーマンスに変化し、ジャンクな
ドラムサウンドが展開。次第にギターやベースもその狂騒音に混ざり、
15分20秒付近からはドラムも鳴り止んでギターだけが残ると、ここからは
フリップのソロが3分近くも続いています。しかし次第にこのギター音が遠くなり、
消えかかったところで再び「Groon」メインテーマが飛び出すと、このフレーズを
1ターンだけ全員で演奏してからストンと終演しています。
それにしてもまぁ・・・無駄に長いインプロですな。(^^;)

「21st Century Schizoid Man」はこの日もボズがタイミングをズラし、
溜めを効かせて歌っているのですが、歌詞1番の部分はなかなかカッコイイです。
中盤のインプロパートは突入直後からギターが荒れ狂っており、
フリップの静かなる狂気ともいうべきものが炸裂。そしてこれに
ドラムの凶悪なリズムが追い討ちをかけ、ギターが鳴り止むとサックスが
すかさずそれを継いでゆくというスリリングな展開が愉しめます。
またこの日はVCS3の効果音(だと思う)を多用しており、他日の演奏では
部分的使用に留めていたこの効果を6分44秒付近でも連続して2回挿入
しているのがユニークです。
「The Devil's Triangle」は、ショウのラストを飾るに相応しい熱演。
ダークでジャンクなのは相変わらずですが、ここでも効果的にVCS3の
効果音(だと思う)を多用しており、他日の演奏より電子音的なイメージが
強く押し出されていると思います。この時期まだピートはバンドに在籍して
いるので、ピートの個性がより強く出ていると言っても良いかもしれません。
アンサンブルは次第に歪み、8分39秒付近で頂点へ。そしてこの日も
メロトロンの効果音(風?波?)と共に彼方へ拡散して終演していますが、
なかなか圧巻のパフォーマンスです。

最後に、音質と編集跡についてのメモを。
まず音質ですが、下段↓4つ分で紹介している他の同日音源と比べると
本作の音質が一番優れていると思います。やや丸みを帯びた音ですが
こもっている訳ではなく自然な収録音ですし、低音の迫力もあると思います。
しかし残念ながら、冒頭のフリップによる挨拶とチューニングの様子が
全長版の『WOLVERHAMPTON SEPTEMBER 10, 1971 / (BLUE-083)』や
『WOLVESCIVIC / (TARANTURA : TCDKC-2-1,2)』、
『MORTAL FLESH / (PF-216D @ PeaceFrog)』と比べると
約1分14秒ほどカットされた状態で収録されています。
更に「Pictures of a City」の3分04秒付近で切り張りの編集跡があり、
その部分で約5秒程度の曲が失われているのも難点です。・・・(-_-;)
音質で選ぶなら本作、マスター音源に近い姿での収録を選ぶなら
『WOLVESCIVIC』でしょうかね。

音質82点。
2CDR。
『WOLVERHAMPTON SEPTEMBER 10, 1971』 / (BLUE-083)
Live at : Public Hall, Preston, UK. / 1971. Oct. 9 (???...May be.)

ライブデータはおろか、このタイトルもデタラメ。
『WOLVERHAMPTON SEPTEMBER 10, 1971』・・・と銘打ってはいますが
これもまた10月9日の公演で間違いないでしょう。
混乱の要因は英語表記にあり、たぶんオリジナルのマスターテープには

9. 10. 1971
10. 9. 1971

・・・のどちらかで明記されていたのだと思います。
でもこれでは9月10日なのか10月9日なのか分かりません。
通常、海外での日付表記は日本の表記とは逆で
「日・月・年」の順で表されると思うのですが、
人によっては「月・日・年」で書く人もしばしば居ます。
また、これがダビングされて日本人の手に渡るうちに表記が逆になり、

1971. 9. 10
1971. 10. 9

・・・という、やはりどちらの月日とも取れる表記で伝播してきた為、
今となっては本当はどちらの日付が正しかったのか分からなくなったんじゃ
ないでしょうかね。

しかしながら本作のセットリストは71年度の
第二次イギリスツアー(8月9日〜9月28日)のセットよりも
10月から始まる第三次イギリスツアー(10月8日〜10月30日)の
ものとの符合が多いですし、そもそもクリムゾンの公式ライブデータには
9月10日付けでの公演は記載されていない為、この音源は10月9日の公演で
ほぼ間違いないと思います。

(でも一応念の為に、↑の日付クレジットには「1971. Oct. 9 (???...May be.)」
としてあります)

そしてこれは収録音を比較してみても明白で、↓の紹介している
他の同一日の音源と聴き比べても本作は間違いなく10月9日の演奏と
同一のものです。
つまり、上段で紹介している

『AUTUMN TOUR 2nd NIGHT / (18513-A/B)』、
及び、下段↓4つ分で紹介している
『WOLVESCIVIC / (TARANTURA : TCDKC-2-1,2)』
『MORTAL FLESH / (PF-216D @ PeaceFrog)』
『COMPLETE WOLVERHAMPTON / (ZA-57,58)』
『THE GROON BOX / (HELP−100, PO-1〜PO-4)』のDisc3−(2)〜Disc4−(4)

・・・は、全て同じマスター音源からルート違いで流出した
同一音源のジェネ違いです。

音質面について付記しておくと、本作は元のマスターテープの収録音に
イコライジング処理を施して収録してあるようで、無音部分・演奏箇所を問わず
昔のテープ特有の「サーーーッ・・・」という音が終始軽く鳴っています。
音像はストレートでシャープなのだけどトゲトゲしくも感じられる収録音
なので、気になる人には気になるかもしれないですね。(個人的には
補正されたが故に角が取れて丸くなった音よりも、むしろ無補正でサーッ・・と
ノイズが鳴っている音の方がシャープさが失われていないぶん好きなのですが)

しかし本作は開演前の収録時間が約1分14秒ほど長く収録されていて、
フリップによる「Good Evening,〜」という挨拶からノーカットで
聴ける点は特筆されるでしょう。更に言えば、『AUTUMN TOUR 2nd NIGHT』で
唯一の難点である「Pictures of a City」の3分04秒付近で起こる音の欠落も
本作には無く、ノーカットの自然な状態で聴けるのも大きなポイントだと思います。


・・・しかしホントいいかげんだな、外国の日付表記って・・・。(-_-;)
日本人である僕からすると、日付を記すときには必ず「○月×日」と、
"月"と"日"を入れるのか当たり前の感覚ですが、海外の方は
その辺りの感覚が希薄なんでしょうかねぇ・・。
だから混同しないよう、僕のサイトでは必ずSep(tember)とか
Oct(ober)の様に、月を英語で表記しています。

音質79点。
2CDR。

『WOLVESCIVIC』 / (TARANTURA : TCDKC-2-1,2)
Live at : Public Hall, Preston, UK. / 1971. Oct. 9 (???...May be.)

TARANTURA盤が堂々と9月10日のライブ日付で出したので、これこそ新発見の
ウォルバーハンプトン公演かと期待したのですが、やはり他の既発盤と同じく
10月9日のプレストン公演でした。
7800円返して・・・。(T_T)

・・・とゆーワケで、上段↑2つで紹介している
『AUTUMN TOUR 2nd NIGHT / (18513-A/B)』、
『WOLVERHAMPTON SEPTEMBER 10, 1971 / (BLUE-083)』
及び、下段↓で紹介している
『MORTAL FLESH / (PF-216D @ PeaceFrog)』
『COMPLETE WOLVERHAMPTON / (ZA-57,58)』
『THE GROON BOX / (HELP−100, PO-1〜PO-4)』のDisc3−(2)〜Disc4−(4)

・・と同内容。
使用されているマスター音源も同じですが、本作はオープニングの
「Good Evening,..」というフリップの挨拶からノーカットで収録されているので、
『WOLVERHAMPTON SEPTEMBER 10, 1971』や『MORTAL FLESH / (PF-216D @ PeaceFrog)』と
同じルーツを辿ってきたマスターが使われています。但し、音質は本作の方が若干良いかな。
装丁もTARANTURAらしい紙ジャケで丁寧かつ美麗な創りですし、ブートレッグ・アイテム
としての所有の喜びは非常に大きいんだけど、でもやっぱり危惧した通りライブデータが
不正確なのが痛いなぁ。

クリムゾンの音源コレクターにとって、この日のライブデータが怪しいというのは基本中の基本の筈。
たぶんメーカーはマスターテープに記載されていたライブデータをそのまま信じて記載したか、
もしくは他のブートの公演日をチョイと参考にして本作を製作したんじゃないでしょうか。
ちなみにDisc1-(9)のMCで、ボズが「Cadence and Cascade」ではなく「O'Rafferty's Pig」と
曲紹介しており、それをちゃんと裏ジャケのクレジットで記載してあるのも非常にポイント高いんですよね。
だからこそ余計にライブデータをちゃんと調べて、最初からプレストン公演としてリリースすれば
もっと本作の価値が高まっただろうに・・と思うワケです。

尚、「Ladies Of The Road」〜「Groon」の間と「Groon」〜「21st Century Schizoid Man」の間、
更に「21st Century Schizoid Man」〜「The Devil's Triangle (Mars)」の間にフェイド・アウト〜
フェイド・インの処理あり。この部分、『AUTUMN TOUR 2nd NIGHT』ではノーカットです。

音質79点+α。
2CDプレス盤・紙ジャケット仕様。
『MORTAL FLESH』 / (PF-216D @ PeaceFrog)
Live at : Public Hall, Preston, UK. / 1971. Oct. 9 (???...May be.)

本作もまた、"9.10.1971"の日付が混同して誤記されたタイトル。
正しくは10月9日のプレストン公演です。
※(詳しくは上段の『WOLVERHAMPTON SEPTEMBER 10, 1971 / (BLUE-083)』の欄を参照して下さい)
・・・という訳で、本作も上段↑3つ分で紹介している

『AUTUMN TOUR 2nd NIGHT / (18513-A/B)』
『WOLVERHAMPTON SEPTEMBER 10, 1971 / (BLUE-083)』
『WOLVESCIVIC / (TARANTURA : TCDKC-2-1,2)』
及び、下段↓2つ分で紹介している
『COMPLETE WOLVERHAMPTON / (ZA-57,58)』
『THE GROON BOX / (HELP−100, PO-1〜PO-4)』のDisc3−(2)〜Disc4−(4)

・・・と全く同一の音源。
使用されているマスター(但し、オリジナルのマスターから派生した
孫か、ひ孫テープくらいのジェネレーションだと思う)も同じですが、本作は
『WOLVERHAMPTON SEPTEMBER 10, 1971』や『WOLVESCIVIC / (TARANTURA : TCDKC-2-1,2)』で
使用されたテープと同じルーツを辿ってきたテープから収録されており、
収録内容も一点を除き『WOLVERHAMPTON SEPTEMBER 10, 1971』と完全に同じです。
その一点とは、本作は何故か「Cadence and Cascade」が未収録なんですね・・・。

しかしながら本作の収録音はなかなか良く、
音像は丸みを帯びているもののしっとり湿った感じの上品な収録音となっています。
多分これ、オリジナルのマスターテープの収録音に近いんじゃないでしょうか。
でもその反面、やはりジェネレーションを重ねている為か音像のストレートさと
シャープさには欠けている気もします。

まぁ音質の好みは個人個人で違いますが、でもその一方で本作も
『WOLVERHAMPTON SEPTEMBER 10, 1971』と同様に開演前のフリップによる
「Good Evening,〜」という挨拶から収録されており、この開演前の様子が
約1分15秒ほど長くノーカットで収録されています。
でもそのぶん、「Cadence and Cascade」が未収録なんだよねぇ・・・。

音質79点。
2CDR。


『COMPLETE WOLVERHAMPTON』 / (ZA-57,58)
Live at : Public Hall, Preston, UK. / 1971. Oct. 9 (???...May be.)

ジャケに記載されている日付けはデタラメ。
正しくはこの10月9日のプレストン公演です。

(その理由については二つ上段↑で紹介している
『WOLVERHAMPTON SEPTEMBER 10, 1971 / (BLUE-083)』の欄を参照して下さい)

・・・という訳で本作もまた上段↑4つ分で延々と紹介している

『AUTUMN TOUR 2nd NIGHT (18513-A/B)』、
『WOLVERHAMPTON SEPTEMBER 10, 1971 / (BLUE-083)』、
『WOLVESCIVIC / (TARANTURA : TCDKC-2-1,2)』、
『MORTAL FLESH / (PF-216D @ PeaceFrog)』、
及び、下段↓で紹介している
『THE GROON BOX / (HELP−100, PO-1〜PO-4)』のDisc3−(2)〜Disc4−(4)

・・・と、全く同じ音源。
全て同じオリジナルマスターから派生した
ジェネレーション違いの同一内容です。

音質はそこそこ良いのですが、本作は『AUTUMN TOUR 2nd NIGHT』と
同じルーツを辿ってきたテープを使用しており、ディスク冒頭の
開演前のMCが殆どカットされた状態で収録されています。
うーむ・・・(-_-;)

音質79点。
2CDプレス盤。





『THE GROON BOX』 / (HELP−100, PO-1〜PO-4)
(Disc1〜Disc2−(2)) Brighton Dome, London, UK. / 1971. Oct. 16
(Disc2−(3)〜Disc3−(1)) Clacton Weeley Festival, UK. / 1971. Aug. 28
(Disc3−(2)〜Disc4−(4)) Preston Public Hall, UK. / 1971. Oct. 9 (???...May be.)
...and Plus one, Date unknown track. (Disc4−(5))

限定600枚プレスの4CDボックスセット。
Disc3−(2)〜Disc4−(4)に10月9日公演が収録されています。
収録内容は、上段4つ分で延々と紹介している

『AUTUMN TOUR 2nd NIGHT (18513-A/B)』
『WOLVERHAMPTON SEPTEMBER 10, 1971 / (BLUE-083)』
『WOLVESCIVIC / (TARANTURA : TCDKC-2-1,2)』
『MORTAL FLESH / (PF-216D @ PeaceFrog)』
『COMPLETE WOLVERHAMPTON (ZA-57,58)』

・・・と同一で、使用している音源も元は同じオリジナル・マスターから
派生した流出ルート違い・ジェネレーション違いのものが使われており、
全て同一内容となっています。

本作はその上記同一タイトルの中で一番音質が悪いのですが、
その代わり本作もまた『WOLVESCIVIC / (TARANTURA : TCDKC-2-1,2)』及び
『MORTAL FLESH』、『WOLVERHAMPTON SEPTEMBER 10, 1971』と同様に冒頭の
開演前のMCを完全収録しており、マスター音源に近い形を保っている音源です。

音質68点。
4CDプレス盤。
『CLUTCH SAILOR'S WORDS』 / (PF-317D @ PeaceFrog)
Live at : Winter Gardens, Bournemouth, Dorset, England, UK. / 1971. Oct. 15

冒頭「Cirkus」はこの日どこか溜めを効かせたへヴィな演奏。
ドラムも所々で一風変わったアプローチをしているほか
メロトロンも奇妙な響きを連続して鳴らしているなか(4分44秒付近)、
不気味なサウンドイメージがどんどん歪み、巨大で立体的で
分厚いものに変化してゆく様子はのっけから強烈です。
終曲後、MCを挟まず直ぐに始まる「Pictures Of A City」も
力強く不気味な立ち上がりで冒頭から魂を持ってゆかれそうに
なります。2分22秒付近で聴ける奇妙で不安定なブリッジも
この時期らしさが出てますし、5分12秒付近から始まる中間部も
サックスにVCS3(だと思う)の"ピュゥゥゥーーーン・・・"という
効果音が絡んでゆくシーンがあったりと、なかなか聴き処の
多いパフォーマンスをしています。

「Formentera Lady」は高い完成度を誇った演奏。この日も
冒頭にフルートの短い前奏が付いてのスタートで、その後も
淡々とした牧歌的リズムに合わせて小気味よくフルートが旋律を
散らし、装飾してゆく動きがとても有機的で生命力に溢れています。
さほど目立ちませんが、ギターも地味ながら曲を湿った音色で支えて
いるのが良い感じですし、5分34秒付近から入ってくるサックスも
次へ曲への布石というか、予感めいたフレーズを軽く出していて
面白いです。そうして始まってゆく「The Sailor's Tale」は
やはりサックスが大暴れしていて、ドラムのアプローチと絡んで
かなりラウドな導入部が聴けます。後半ではフリップがノイジーに
かき鳴らしていたギターを置いてメロトロンを奏でているのも面白いですし、
イアンのドラムも全体のリズムを引き締めるインパクトあるプレイをしています。
そしてこの間ずっと奥でベースラインが蠢いているのが不気味で、
これがまァ何度聴いてもカッコいい。(^^;)

「The Letters」はこの日、全体音が入る箇所(1分21秒付近)で
切り裂くような凄まじい轟音から入っています。中間部の歪め方も
かなりアヴァンギャルド・・というよりジャンクなサウンドで、
この日は手紙というよりは恐怖新聞の様なイメージがあります。
でもそれがやがて彼方に消え、最後はボズの歌声だけで締められるという
お馴染みの描写はこの日も鳥肌が立つほど鮮烈です。

そして何といっても「Islands」。冒頭の静かな立ち上がりからもう
素晴らし過ぎて言葉が出てきません。導入部のリリカルで幻想的な
サウンドイメージ、漂う様なボズの声、そして厳かに入ってくる
メロトロンの温もりに充ちた響き。これらが相互に絡み合い、
聴覚と脳内視野が刺激されて音が立体的に組みあがってゆく恍惚感。
この布陣だからこそ成し得たひとつの到達点でもあったと思いますし、
フリップ+シンフィールドが居た初期クリムゾン最後の輝きでも
あったと思います。実際に自分がこの会場で聴いていたら涙が
止まらないんじゃないかと思えてなりません。

「Ladies Of The Road」はなかなかリズミカルなスタート。
この日は導入部から何だか楽しそうですし、実際2分37秒付近では
ボズが何かに笑ってオーディエンスから拍手も受けており、
その歌声や演奏や場の空気から和やかなムードが伝わってきます。
アンサンブルの纏まりも綺麗ですし、フリップのギターも
どこか楽しそうなアルペジオを奏でていたりします。(^^)

「Groon」は短いメインフレーズの後、フリップのコミカルな
ギターからスタートという珍しいオープニング。ここでも
笑いが起こっており、サックスの音色もどこかおどけていて、
これはこの曲としては珍しい展開ではないかなぁ。しかも
3分45秒付近で一旦ブレイクすると、今度は何とブルース(!!!)
が始まります。フリップの音色はこういうタッチも似合いますねぇ。
しかし5分30秒付近からたたましいドラムのアプローチが入り、
ヌルい曲想を一転(^^;)。ここからいつもの曲想に戻りますが、
ひっきりなしにドラムを連打するイアンにどう絡んで良いやら
戸惑っている様にも感じます。途中、6分29秒付近からホイッスル
の様な音色も聞こえるのだけど、これはVCS3の効果音なのか
実際にイアンがホイッスルを鳴らしながら叩いているのか、
ちょっと判別つきません。また8分15秒付近からは
"キンキンキンキン・・・"という何かを叩いている音が
数回入ってくる箇所もあったり(誰が叩いているのか不明。でも
フリップではなさそう)、11分03秒付近では奇妙な声を入れていたりと、
後のジェイミー・ミューア的なアプローチが大変興味深いです。

(この11分03秒付近の声がイアンや他のメンバーではなく、単に観客の奇声
だったとしても、その偶然性も含めてのインプロだろうと僕は思います)

そしてVCS3効果は11分26秒付近から本格的になり、この日も強烈な
ノイズ・ショウがスタート。この日は聴き応えのある
パフォーマンスをしており、15分42秒付近で一度ブレイクを迎えると
大歓声に包まれています。しかしこれで終わらず、再び16分44秒付近
から再開するのですが、今度はエフェクターで声を電気的に歪ませての
人声からのスタートで、たぶんボズが声を発しているんじゃないかと思います。
ここからは様々なアプローチで音を歪ませ、テストし、時に遊んで
いる様にも感じられますが、徐々に楽器が絡み始めると
19分37秒付近からはファズ・ギターを用いたフリップのソロへ移行。
序盤はフリップ節で混沌としていますが、22分07秒付近で突然コミカルな
メロディへ移り、大歓声に包まれながら終演しています。
このコミカルなメロディですが、これが始まると皆一斉に拍手と
手拍子を贈っているので、恐らく当時のイギリスでは有名な
何かの曲(TVのコメディ番組とかCM曲とか)だったのでしょう。

ラストの「21st Century Schizoid Man」は相変わらず
バイオレンスに充ちた攻撃的なもので、序盤から危険で
凶悪なサウンドイメージで満ち溢れています。(^^;)
中間部のインプロヴァイズはもうノイズと音楽の境界線を
彷徨っている感じの凄まじい演奏で、その混沌の音の渦の中から
リズムとメロディが徐々に現れ、ユニゾンをビシッと完璧に決め、
歌詞3番に突入し、そして狂的な爆音を残して終曲する様子はもう、
重爆撃機に持てる全ての爆弾を一斉投下された後の、一面ガレキと
化した街に居る感じです。コレ本当に凄いよ。

最後に、聴いていて気付いた音質面についてのメモを。
まず「The Sailor's Tale」は5分24秒付近〜28秒付近まで
左チャンネルの音が消え、右チャンネルのみになっています。
「Islands」では終曲直前の6分23秒付近で急激に音質が変わり、
そこだけ音がシャープで妙に明瞭になっています。この部分、
他日の音源を切り貼りしているのか、或いは単にテープの劣化で
こうなっているのかちょっと判別出来ませんが、いずれにしても
サウンドの流れは途切れていませんし、音楽を損なわない程度の
ものなので、個人的にはそれほど違和感を感じませんでした。

また本作の収録は「21st Century Schizoid Man」で終わっていますが、
この日付前後のライブでのセットを考えると「Mars (The Devil's Triangle)」を
演奏していても不思議では無いので、本作がこの日のライブを完全収録
しているのかどうかは個人的に疑問が残っています。

音質78点。
2CDR。


『ISLANDS LADY』 / (IL-01 602762X IFPI L602, IL-02 602798X IFPI L602)
Live at : Bournemouth Winter Gardnes Concert Hall, England, UK. / 1971. Oct. 15

上段↑で紹介している『CLUTCH SAILOR'S WORDS / (PF-317D @ PeaceFrog)』と
同一音源。両タイトルで使用しているマスターも全く同じものが使われています。
但し、本作は編集跡・カットがあるのが難点。

まず何といっても「Islands」でしょう。この日は実に素晴らしい演奏なのですが、
終演直前の6分49秒付近で突然ブツ切れて終わっています。これは酷い・・・(T_T)
また「21st Century Schizoid Man」でも7分10秒付近で音がブツッと一瞬
途切れている箇所があり、これも聴いていてやや違和感を覚えると思います。

音質は『CLUTCH SAILOR'S WORDS』と比べて収録音全体の解像度が劣り、
低音のパンチと重みに欠けたやや軽めの音像。ブート慣れした人なら
フツーに聴ける音ですが、さすがに両音源をPC上でリンクして聴き比べると
それなりの差は感じられました。

音質76点。
2CDプレス盤。


理由は分かりませんが、ブートCDの中古市場の様子を見ると
本作は結構なレア盤になっている様です。実際いつも高値で取引されていますし、
僕自身、海外のコレクターから「売ってくれ」とメールを貰った事が数回あります。
でも本作はさほど収録音も良くないし、上記した通りブツ切れてる箇所もあるため、
何故そんなレア盤扱いされているのか正直よく分かりません。
プレス盤で、流通した枚数が極少で、『CLUTCH SAILOR'S WORDS』がリリースされる
までこの日が聴ける音源はこのタイトルのみだったから・・・でしょうか?

『SCHIZOIDS』 / (K-71-C1, C2)
Live at : Brighton Dome, London, UK. / 1971. Oct. 16

16日音源の決定盤。
同一の音源として、下段で紹介してある『THE GROON BOX』と
『LOST ISLANDS - U.K. 1971 〜 "LIZARD IN ISLAND'S SUN" 〜 (MPH CD−07)』が
ありますが、全体的な音質では本作が一番良く、そのうえこの日の模様を
オープニングのMC部分から完全収録している唯一のタイトルでもあります。
この日は何といっても「Islands」を超極上の名演奏で披露している事で有名ですが、
その他の曲のプレイも大変素晴らしいものが詰まっていて、聴きどころの多い音源です。

冒頭の「Cirkus」はフリーに走らず纏まった演奏をしているのが特徴。
ボズの熱唱も熱いテイクですが、曲の終盤でイアンがバスドラムをドコドコと
連打するアプローチも迫力があって良いです。
MC無しで演奏が始まる「Pictures of a City」はこの日も中盤からフリースタイル。
メルのサックスとイアンのドラムが迫力満点のパフォーマンスです。

「Formentera Lady」は絶品。他日のプレイよりも一段と詩的なムードに溢れており、
イアンの細かなシンバル音とボズの甘く優しい声色、そしてメルのフルートが絡んで
天上の音楽を披露している極上のテイクです。曲の終盤でメルがサックスに持ち替えると
曲が妖しくインプロヴァイズされ、そのまま「The Sailors' Tale」になる展開は
いつも通りですが、10分36秒付近で突然ブツ切れ。とはいえ直ぐにトラックナンバーが変わり
その続きが始まりますが、この間約1分間ほど曲が失われています。
うーむ・・・(-_-;)
変わって「The Letters」も強烈。他日とはアンサンブルのタイミングとアプローチを変えて
演奏しているのが印象的で、曲の開始後、一度目のサビを終演した直後から激しく
インプロヴァイズされて全く違う曲と言っても過言ではない程に曲想が激変します。

そしてやってくる「Islands」。上記してきた様に他の演奏も決して悪くなく、むしろ
他日よりもずっと良い好パフォーマンスを連発しているのですが、この曲の演奏は
それらがかすんでしまう位に超極上のもの。これを言葉で説明する事なんて出来ないよ。(T_T)
手持ちのブートを聴く限り、この日の「Islands」の演奏こそが71年の頂点だったのではないかと
思えるほどに優れた天上の名演奏です。

「Groon」は、約25分弱も続く壮絶なもの・・・と言えば聞こえは良いですが、
殆どがVCS3を使ったイアンのドラムソロ。25分中、約18分はこのドラムソロが続きます。(-_-;)
しかし一転して「21st Century Schizoid Man」はド迫力の素晴らしい演奏。
中間部での凶悪なまでに歪んだ音像は一聴の価値ありだと思います。
ラストの「The Devil's Triangle」は演奏にに入る前にボズが変な声で約1分半ほどおちゃらけていますが、
これ何を言ってるのかなぁ・・・。かなり下品で低俗で下らない事をワメき散らしているの
だと思うのですが、僕は英語が分からないので詳細不明。
その後、フリップが紳士らしく丁寧に曲の紹介らしきアナウンスを入れていますが、
こうした下らないパフォーマンスをするボズに対し、かなり心中穏やかではなかったと思います。
しかしその「The Devil's Triangle」は大変力強い演奏で、一度聴いたら悪夢に襲われそうな
凄まじい個性を爆発させているテイクです。

音質86点。
マスター音源に起因する問題点として、「Cirkus」の4分13秒〜4分35秒に渡り
ところどころで音がカスれていますが、それ以外は概ね良好です。
また、本作にはブートにしては珍しく4ページ分のブックレット(英文・カラー写真付き)が
封入されているという点も特筆される点でしょう。





『THE GROON BOX』 / (HELP−100, PO-1〜PO-4)
Live date :
(Disc1〜Disc2−(2)) Brighton Dome, London, UK. / 1971. Oct. 16
(Disc2−(3)〜Disc3−(1)) Clacton Weeley Festival, UK. / 1971. Aug. 28
(Disc3−(2)〜Disc4−(4)) Preston Public Hall, UK. / 1971. Oct. 9
...and Plus one, Date unknown track. (Disc4−(5))

限定600枚プレスの4CDボックスセット。
16日の演奏は、Disc1〜Disc2−(2)までの2枚に渡って収録。
実はセットの内容を一番細かく表記してあるのが本作(←の画像をクリックして参照して下さい)なの
ですが、残念ながら「21st Century Schizoid Man」が未収録な為、完全収録ではありません。

本作は低音にパンチが若干欠けた"軽い音"で収録されているのですが、
しかしながら音の安定感と自然さという意味では本作が一番優れていると思います。
ただし、全体の音の迫力や一公演完全収録という意味ではやはり『SCHIZOIDS』でしょう。
補足ですが、使用しているマスター音源は上段で紹介している『SCHIZOIDS (K-71-C1, C2)』も
下段で紹介している『LOST ISLANDS - U.K. 1971 〜 "LIZARD IN ISLAND'S SUN" 〜 (MPH CD−07)』も
そして本作も全て同一のマスターを使っています。

音質84点。
4CDプレス盤。


『LOST ISLANDS - U.K. 1971 〜 "LIZARD IN ISLAND'S SUN" 〜』 / (MPH CD−07)
Live date : Brighton Dome, London, UK. / 1971. Oct. 16

ブートCDの黎明期から存在したタイトル。
上段で紹介してきた2作品『SCHIZOIDS (K-71-C1, C2)』及び
『THE GROON BOX (HELP−100, Disc1〜Disc2−(2)』と同内容ですが、
マスター原音にかなりブーストが掛けられている音質で、
曲順がかなり入れ替えられている上に曲ごとのカットが目立ちます。

しかも「Formentera Lady」「The Sailors' Tale」が
別の日の71年公演(日付不明)に差し替えられているという困りもので、
「Groon」は後半がフェイドアウトしてカットされていますし、
MCもほぼ全部カットされている為に臨場感もありません。
更には最初から最後まで全部モノラルで収録されています。(-_-;)

本作はリリース当時からそうでしたが、現在でもハードコレクター向けの一枚でしょう。

音質79点。
1CDプレス盤。


『SHEFFIELD CITY HALL '71』 / (BS-61 601744X IFPI L602, BS-62 601740X IFPI L602)
Live date : Sheffield City Hall, England, UK. / 1971.Oct.19

「Cirkus」はスタジオ版に近い演奏。曲後半でのメロトロンが機材不調でかなり不安定な為に
アンサンブルがズレているところもありますが、演奏表現はかなり完成形としてイメージが
固まってきた事が分かります。「Pictures of a City」はカット・イン。冒頭で5秒間ほどの曲が
失われています。この日は他日と比べてもかなり砕けた感じのフリーなスタイルで演奏していて
ちょっと面白いテイクです。終演後にカットがあり、ボズがまた馬鹿げたMCパフォーマンスを
披露していますが、どうにかならなかったのかなぁ、こうしたパフォーマンスは・・・(-_-;)
「Formentera Lady」はとても落ち着いた素晴らしい演奏。中間部でのメルのフルートが
非常に美しいメロディーを奏でていて、曲を一層と色彩感溢れるものにしています。
「The Sailors' Tale」は、既に「Formentera Lady」から繋がるメドレーとして定着した感があり、
5月公演頃の演奏と比べるとかなり音符が整理されているのが分かる演奏だと思います。
メルがメロトロンを弾き、フリップがファズ・ギターを弾くというスタジオ版通りの演奏スタイルに
なっている点も注目点でしょう。

この日の「The Letters」はイアンのドラミングとメロトロンの爆音が大変印象的な怪演奏。
中間パートではサックスも絡んでかなりアヴァンギャルドな様相を呈しています。
「Ladies of the Road」では、冒頭でボズのヴォーカルをメインに据えた静かなスタートを
しているのが面白いです。しかしメインテーマのアンサンブルが始まると曲想は途端に
いつも通りハードなものへと変化。この辺りのコントラストの付け方がまた71年独特の
カラーを出していて良いと思います。

「Groon」はフェイド・イン。ここでもまた曲のイメージを残しているのは冒頭の部分のみで、
インプロとドラムソロが支配する混沌とした曲想です。いつもながら冒頭のメインテーマ終了後に
メルの奏でるサックスが曲をリードしてゆきますが、この日はメロトロンとベースがとても
雰囲気のあるバッキングをしていて印象的。その後に絡んでくる力強いドラムとギターが
曲をますます盛り立ててゆきますが、面白いのは5分00秒付近からVCS3でピートもこれに
参加している点でしょう。この展開はなかなか珍しいと思います。
「21st Century Schizoid Man」はイアンのドラミングが凄まじい圧倒的な演奏。
ボズがわざと音程とタイミングを外した歌い方をしているのもユニークです。またこの日は
中間部のフリー演奏でブレイクを挟まずにプレイしている事と、その中間部後半のユニゾン終了後に
ピートがVCS3で電子音を挿入しなくなっている事も注目すべき変化でしょう。

続く「Lady Of The Dancing Water」は単体で演奏されているというかなり異例のテイク。
これは非常に珍しいと思います。ただ「21st Century Schizoid Man」と、この
「Lady Of The Dancing Water」の曲間にはカットがあり、この曲がこの日本当に
この位置で演奏されたかどうかは不明。71年のセットを考えてもなかなかこの位置で
この曲を、しかも単体でプレイするかどうかは疑問が残るところですが、しかしこれが
単体でプレイされているという事そのものが驚きだと思います。
「Mars (The Devil's Triangle)」はメロトロンの調子がイマイチ。そのせいで
他日ではプレイしていない奇怪なコードを終始かき鳴らしていますが、しかしこれが
怪我の功名というか、非常に雰囲気満点の面白い味付けになっているテイクです。

最後に収録内容の付記を。
まず本作は殆どの曲と曲の間でMCカットの編集作業があり、果たして本当にこのセットの順番で
演奏したのかどうかは疑問が残ります(最大の疑問は「Lady Of The Dancing Water」の位置ですが、
しかしセット全体の大まかな流れは恐らく合っていると思います)。
また唯一、「Groon」の12分39秒付近で曲中の編集カットがあります。

音質69点。
2CDプレス盤。
1971年 アメリカツアー (11月10日〜12月11日)


『MARSBOUND』 / (KC−005)
Live at
(1)〜(7): Massey Hall, Toronto, CANADA. / 1971. Nov. 11
(8): Fairfield Hall, Croydon. / 1969.Oct.17

71年公演の代表音源のひとつ。
音質はそんなに良くは無いけれど、演奏内容が良いです。

冒頭「Cirkus」はカット・イン。冒頭の約20秒ほどが失われています。
しかし演奏内容は強烈。他日よりも静と動のコントラストが効いており、
後半のアンサンブルも非常に秀逸で、何よりもボズの熱演が素晴らしいです。
「Formentera Lady」では後半部でメルのフルートとフリップのリリカルなギターが
リードを取りつつ静かにインプロヴァイズしてゆきますが、この日ちょっと面白いのは
ボズが「アァ〜、ァアァァァ〜♪」と歌声でそのインプロに彩りを与えていること。
インプロヴァイズされたまま終曲になるのも独特だと思います。
「The Sailors' Tale」もドラマティックな好プレイですが、この日は曲の後半で
イアンのドラムソロが入っていて、7分45秒付近からはVCS3を使用したソロを披露しています。
コーダ部ではそのドラムソロにフリップのギターが絡み出し、
「おぉぉ、ドラムとギターでここからどう展開するのかな?」と思わせ始めた直後に
不思議な余韻を残したまま終曲。イギリス人らしいアンバランスな感覚だなぁ・・・(^_^;)

「21st Century Schizoid Man」はこの日一番の演奏。喧噪に溢れ、知的で、そして下品で、
どういう形容詞を当てはめてもなかなかこの日の演奏を表現する言葉には足りません。
曲中間のインスト部分を締め括るユニゾン終了後に、恐らくVCS3を使った電子音が
アクセントとして2度ほど鳴っているのですが、ピートが操作するこの変な音のセンスがまた
この当時のクリムゾンの魅力でもあったと再確認させてくれる怪テイクです。(^_^;)

「The Devil's Triangle」ですが、たぶんこの日はアンコール曲として披露されていると思れます。
相変わらず破壊的・悪夢的な演奏ですが、この演奏ではメルかピートが操っていると思われる
奇妙な変圧電子音がやたらと耳に付くテイク。これはこれで迫力がある好演奏ですが、
ヘッドホンで聴くとかなり耳がやられる様な感じがしますのでご注意を。(^_^;)
そしてそんな陰鬱な曲の果てにこの日のラスト飾ったのは「Cadence and Cascade」。
冒頭部分がちょっと聴こえ辛い音質ですが、しかしよく聴くとかなり秀逸な
プレイをしているのが分かります。フリップのチャーミングなギターと、メルのフルートの
絡み合いが終始絶品で、スタジオ版よりも色彩感溢れる曲想になっていると思います。
それを優しく歌い上げるボズの歌声も素晴らしいです。(^_^)

音質76点。
1CDプレス盤。

気になる特記事項として、(1)〜(7)までの公演は何故か演奏終了ごとに一旦カットがあります。
とはいえ、音のレベルから判断して(1)〜(7)までは恐らく同日の演奏だと思いますし、
少なくとも他のブートでは聴けない、本作だけで聴ける音源である事は確かです。
本物のマスターは恐らくノーカットで収録してあると思うのですが、
いつかそれが発掘される事を切に願いたくなる一枚です。(^_^)

尚、トラックナンバー(8)はボーナストラック。
69年のオリジナル・クリムゾンの演奏が収録されています。
但し1分58秒付近で一度音飛びあり。
詳しくは69年10月17日の欄を参照のこと。


『TORONTOBOUND』 / (※ Special Bonus CDR for 1st set of "RAINBOW 1973 (Sirene-229)")
Live date : Massey Hall, Toronto, CANADA. / 1971. Nov. 11

RAINBOW 1973 (Sirene-229)』の初回配布分のみに、オマケとして付属したボーナスディスク。
同一音源の既発盤として、上段で紹介している往年の名盤タイトル『MARSBOUND (KC−005)』が
ありましたが、本作もそれと全く同一のマスターテープから収録されています。
なので、音質は『MARSBOUND』とさほど変わりませんが、本作は余計なイコライジング作業が
施されてされていないぶん、アナログテープ独特の温もりのある穏やかな音像で収録されている為、
マスター音源本来の音により近い音質で愉しめるのが特徴です。

尚、気になる特記事項として既発『MARSBOUND』も本作も(1)〜(7)まで何故か演奏終了ごとに
フェイドアウト〜フェイドインの一時的なカットがあります。既発も本作も音の
レベルから判断して全て同日の演奏だと思いますが、内容が良いだけに今後の完全な
マスター音源の発掘が待たれるところです。(^_^;)

音質76点。
1CDR。
尚、「Cirkus」はカット・インで冒頭の約20秒ほどが失われている点も既発盤と全く同じです。


『ACADEMY OF MUSIC』 / (Sirene-192)
Live at : Academy Of Music, New York City, New York, USA. / 1971. Nov. 24

71年11月24日の模様を収録した中では最高品質を誇る決定盤タイトル。
この71年11月24日はクリムゾンの他にもイエスとプロコル・ハルムが出演し、
『イエス→クリムゾン→プロコル・ハルム』の順で演奏されたという記録が
残っています(※これらの様子は下段↓で紹介している
『PROCOL HARUM, KING CRIMSON, YES - DIZZINESS (AYY-171/172CD)』で
ほぼ全て聴く事が出来ます)。
本作はかなりマスターに近い音源(或いはマスターからダイレクトに落として
いるのかもしれない)を使用しているらしく、他の同一音源タイトルと比べても
はっきり頭一つ抜け出た優良な音質で聴けるのが特徴です。もちろんノーカットの
完全収録で、冒頭のMCから聴けるのも嬉しいところ。

冒頭「Cirkus」は中間部3分18秒付近から入ってくるサックスの表現が魅力的。後半部の
壮大かつ異様なサウンド・ウォールも強烈ですが、それが一瞬にして去りギターの音
だけがポロロン、ポロロンと無垢な音で残される終曲部の表現も大変秀逸だと思います。
「Pictures of a City」はやや重ためのへヴィな曲想。中間部となる5分16秒付近からの
展開もこの日は非常にカオスで、他日の演奏より病的な印象があると思います。いや、
もちろんそれがまた魅力なんですけどね。(^^;)

「Formentera Lady」では冒頭2分06秒付近から入ってくるギターが印象的。他日の演奏
ではあまりこういう絡み方をしていない様に思います。そしてそれはフルートとの対比も
面白いことを意味していて、この序盤のシーンは大きな聴き処だと思います。やがて
メルがサックスに持ち替えると徐々にインプロの様相を呈し始めますが、ここでも
フリップが独特のギター旋律で動機付けを創っており(6分49秒付近)、それを起点にして
「The Sailors' Tale」がスタートしてゆきます。ドラムソロは相変わらずアレな感じで、
中盤からはVCS3全開モード。そこから抜け出て歪んだギターにノイズが引き継がれてゆく
箇所(18分37秒付近〜)はなかなかスリリングです。そして最後は定番のコメディタッチの
メロディ。他の欄でも何度か書いているけれど、このコメディタッチのメロディは絶対に
元ネタがある筈なんだけどなぁ。「21st Century Schizoid Man」はさすがにアルバム
『EARTHBOUND』収録直前とあって、あれと似たアレな雰囲気が感じられる怪演。(^^;)
ボズの歌唱やサックスの絡み方、荒れ狂うドラム、病的なギター、そしてボーカルに
エフェクト処理が施される歌詞3番など、凄まじくラウドでネジが5・6本外れた魅力が
炸裂しています。

尚「Cirkus」の6分10秒付近に音飛びがあり、「Pictures of a City」の8分01秒〜04秒
までの約3秒間に渡ってマスターに起因すると思われるテープ劣化の音揺れが若干あります。
また「The Sailors' Tale」の後半(11分34秒付近)でも一瞬の音飛びあり。まぁどれも
ほんの僅な音飛びと歪みですし、音楽を損なう程のものではないので許容範囲内かと思います。
但し、「The Devil's Triangle (Mars)」の00分38秒付近の編集跡はちょっと違和感あり。
左チャンネルの音抜けもあり(1分34秒付近〜2分30秒付近で復帰)
また、奏自体はほぼ終わっているものの終曲部も半ば強引なフェイド・アウトで
ディスク・エンド。そんな訳でこの「The Devil's Triangle (Mars)」だけは難アリですね。
でもそれ以外は素晴らしい音質と演奏だと思います。

音質90点。
1CDプレス盤。2006年10月リリース。



『PROCOL HARUM, KING CRIMSON, YES - DIZZINESS』 / (AYY-171/172CD)
Live at : Academy Of Music, New York City, New York, USA. / 1971. Nov. 24

この日アカデミー・オブ・ミュージックで公演を行った3バンドの演奏をほぼ
完全収録したタイトル。「ほぼ完全収録」というのは、クリムゾンとイエスは
完全収録ですがプロコル・ハルムはダイジェスト収録となっているからです。
使用されている大元のマスター音源(※クリムゾン収録部分)は上段↑で紹介している
『ACADEMY OF MUSIC (Sirene-192)』及び、下段↓で紹介している
『CIRKUS (Scorpio, I.C.P−SC 103)』と根本的に同じものが使用されていますが、
細かく聴くとどうやら途中で枝分かれしたものをマスターとして採用している様です。

というのは、本作は『ACADEMY OF MUSIC』同様に
(1)「Pictures Of A City」後半の音揺れ(本作だと8分02秒付近)、
(2)「The Sailors' Tale」の音飛び(本作だと11分17秒付近)、そして
(3)「The Devil's Triangle (Mars)」の左チャンネルの音抜け
(本作だと1分36秒付近〜2分30秒付近で復帰)はありますが、
『ACADEMY OF MUSIC』では欠点として残っている

(a)「Cirkus」の6分10秒付近にある音飛び
(b)「The Devil's Triangle (Mars)」の00分38秒付近での音の欠落

・・の二つが本作には無く、どちらも完全な形で聴けるからです。
音質が大きく勝る『ACADEMY OF MUSIC』がもし同じルートを辿った
マスターから落とされているならば、上記した(a)と(b)も完全な形で
聴ける筈です(※音も良いのだし、わざわざ音を欠落させて商品に
する理由も無いでしょう)。しかし両タイトルに(a)と(b)の差が明確に
あるという事は、マスターは同じだけど違うルートで枝分かれしてきた
別個の同一音源がそれぞれのマスター音源として使用されている為でしょう。
これは大きな特筆点として挙げられると思います。

まぁ残念ながら音質は『ACADEMY OF MUSIC』よりも少し劣っていますが、
それでもかなり優良な収録音なのは確かですし、透明感もあり、音像も近いし、
オーディエンス録音とはいえステレオ収録なのも嬉しいところです。
他の2バンドもこれと同様に音質良好ですし、資料的にも価値ある一枚でしょう。
イエスもプロコル・ハルムもこの日は非常に素晴らしいライブをしており、
そのままエンドレス・プログレ大会として繰り返し何時間でも掛けっ放しに
しておきたくなる秀逸なタイトルです。(^^)

音質87点。
2CDR。


『CIRKUS』 / (Scorpio, I.C.P−SC 103)
Live at : Academy Of Music, New York City, New York, USA. / 1971. Nov. 24 (Late Show)

ブートCD黎明期からある古典音源の一枚で、上段で紹介している
『PROCOL HARUM, KING CRIMSON, YES - DIZZINESS (AYY-171/172CD)』や
『ACADEMY OF MUSIC (Sirene-192)』がリリースされるまではこの日の模様を
伝える唯一のブート音源でした。

使用しているマスター音源は上記2タイトルで使用されているものと同じですが、
音質は本作の方が格段に劣っています。今やもう完全にハードコレクター向けの
一枚でしょう。お疲れ様という感じです。(^_^;)

音質76点。
1CDプレス盤。
1972年 アメリカツアー (2月11日〜4月1日)


『DETROIT 1972』 / (Red Circle RCD-2011)
Live at :
Ari Crown, Detroit, Michigan, USA. / 1972. Feb. 17(???)
...or,
Grande Ballroom, Detroit, USA. / 1972. Feb. 18(???)


1972年度のクリムゾン始動直後の音源・・・である事は間違いないんですが、
日付がどちらが正しいのか不明。というのは、ひとつ下の段↓で紹介している
『FEEL YOUR FENDER / (PF-140S @ PeaceFrog)』と同一の音源だから。
本作のジャケットに記載されている日付は72年2月18日で、
『FEEL YOUR FENDER』は17日と明記されており、果たしてどちらが
正しいのか分かりません。
しかしながら収録曲数は本作の方が一曲多い事と、音質も本作の方が若干良い事から、
本作を(このどちらかの日の)代表音源としてレビューしています。

「Pictures of a City」はズシリと重たく攻撃的な演奏。
パフォーマンスも大変安定しており、演奏すべき音のイメージが
メンバー全員に明確に見えている様子が分かります。とはいえ
5分09秒付近から入るユニゾンの、強音→弱音へ移行する丁寧な音の変化や
中間部のサックスの控え目な様子(5分40秒付近〜8分11秒付近)など、
どこか基本に戻った印象もあります。既にこの時期バンド内の
確執はかなり表面化していた筈ですが、こういうのを聴くとリハーサルは
きちんとこなしていた事が伺えるんじゃないでしょうか。
コーダの締め方・音の纏め方も見事です。

「Formentera Lady」は冒頭から幻想的。優しい曲想が滑らかな音で綴られ、
ボズのダンディな声とメルのフルートが素晴らしくマッチングした詩的な
イメージが耳を惹きます。所々で入ってくるドラムが(単純ではあるけれど)良い
アクセントになっていて曲の構造を改めて見つめさせてくれる様に感じますし、
やはり何よりも他日の公演以上にそこかしこで美しい旋律を撒き散らす
フルートの動きが魅力的です。
4分59秒辺りからフリースタイルのインプロヴァイズになり曲想が一転しますが
この日はドラムが印象的なリズムで全体を支えているのも注目すべき点では
ないでしょうか。後半はそのまま「The Sailors' Tale」へと繋がっていますが、
この日はとてもアヴァンギャルドで前衛的。この印象はサックスが狂的に荒れ狂って
いますが、途中から引き継がれるギターも凄まじくノイジー。バックがベースラインに
合わせて少しずつ動き出し、コーダで音が収束→ギターだけがかき鳴らされるという
パターンはこの日も見事に決まっています。

「Cirkus」はテンポにじっくり溜めを効かせた、重たくてスローな演奏。
ここまで重たいイメージで演奏している様子ってなかなか無いんじゃないかなぁ。
かなり珍しいパフォーマンスだと思います。サックスも印象的で、
3分09秒付近で聴けるお決まりの箇所もわざと投げやりに・コミカルに演奏している
感じがまたユニーク。メロトロンもこの日は一段と壮大に鳴り響いているのが特徴で、
6分47秒付近から入ってくるアプローチをその後何度も入れていたりします。
ややもすると下品になってしまうパフォーマンスですが、それを巧く(或いは強引に)
表情付けする事で、この終曲部は音楽の生々しい生命力が滲み出ている気がします。

「Ladies Of The Road」は冒頭からいきなりギターが絡んでくるのがユニーク。
トレモロでアクセントを付けたり、奇妙なフリップ節で彩りを与えています。
ボズの歌唱も強烈で、所々では殆ど絶叫しています。(^^;)
そしてこの日面白いのは、この曲の途中で何やらハプニングが起こっている事でしょう。
2分35秒付近で急にボズが歌うのを止め、演奏が一時中断(約8秒間ほど)しています。
この2分35秒の直前に強めのハウリング音が確認できるので、これは恐らく
それを気にしてボズが音を(或いは演奏を)遮断したのかもしれません。
3分37秒付近からはミュートを効かせたギターのアルペジオが突然入ってきたり、
何かをフッ切る様にボズが更に熱唱・絶叫していたり、終曲部の
ギターもディレイ(リバーヴ?)をかけて音を残したりとなかなか
ユニークな展開があり、大変興味深いパフォーマンスになっています。

「21st Century Schizoid Man」は歌詞1番からボーカルラインに
エフェクターを掛け、歪んだ電子ボイスで歌唱。3番からエフェクト処理
しているシーンはこの後の3月19日や21日の公演でも確認できますが、
1番から既にエフェクトを掛けているのは珍しいと思います。
中間のインストパートはこの日も激しく、出だしから暫くは
耳を劈く様なギターが強烈なパフォーマンスを展開しています。
4分50秒付近からはサックスにバトンタッチし、管楽器による
アヴァンギャルドな装飾が鮮やかに広がるのですが、この間、ビートよりも
リズムの溜めに主眼を置いたドラミングも面白いです。
歌詞3番に突入すると、歪んだ電子ボイスにケンカを売るが如く
のっけからサックスが執拗に絡み付いてくるのもこの日ならではのシーンで、
この「歪んだ電子ボイス+メチャメチャに暴れるサックス」という対比が
なかなか新鮮な驚きを感じさせてくれる終曲部となっています。

音質79点。
全体を通してやや音像が右寄りにズレていますが、
音の解像度はそこそこ良いと思います。
1CDR。
『FEEL YOUR FENDER』 / (PF-140S @ PeaceFrog)
Live at :
Ari Crown, Detroit, Michigan, USA. / 1972. Feb. 17(???)
...or,
Grande Ballroom, Detroit, USA. / 1972. Feb. 18(???)


上段↑で紹介している『DETROIT 1972 / (Red Circle RCD-2011)』と同内容。
使用しているマスター音源も全く同一です。
『DETROIT 1972』の欄でも書いていますが、本作の裏ジャケ記載の日付は
72年2月17日で、『DETROIT 1972』には18日と明記されており、
果たしてどちらが正しいのか分かりません。
しかしながら収録曲数は本作の方が一曲少なく、音質も本作の方が
若干解像度に欠けているため、正式にはどちらの日の公演か不明ではあるものの
本作をサブ音源タイトルとしてここに置いてあります。

・・・という訳で本作は「21st Century Schizoid Man」が未収録な訳ですが、
この曲が入った『DETROIT 1972』でもディスク全体で約51分50秒という
収録時間です(※本作の収録時間は僅か41分35秒)。
もう一曲、この後に「The Devil's Triangle」か「Cadence and Cascade」を
やっていても不思議ではないと思うので、『DETROIT 1972』でさえ全長版か
どうか怪しいところです。

音質は『DETROIT 1972』とさほど変わりませんが、実際にPC上でリンクさせて
比較すると本作の方が全体の収録音が丸くこもっており、音像の明瞭感と
シャープさに欠けた音質で収録されているのが分かると思います。
これはもうハードコレクター向けの一枚でしょうねぇ。(^^;)

音質78点。
1CDR。


『MIAMIBOUND』 / (ZA-50)
Live date : Miami(Malibu) Beach, Florida, USA. / 1972. Feb. 25

「Formentera Lady」はフリップの優しいギターメロディーが前奏として曲の冒頭に付く様になり、
途中のアンサンブルの様子も71年の演奏と比べると激変しているのが分かるプレイ。
メドレーで繋がる「The Sailors' Tale」という形式は変わらないですが、この曲もまた
71年の演奏と比べるとアンサンブルの纏まりがずっと良くなっている感じで、
イアンのバスドラムがドコドコと強烈なのも印象的です。
「Cirkus」は、ここでも粒の揃った印象的なイアンのスネアドラムが素晴らしいアクセントになっていて、
メルの効果的なサックスとフリップのメロトロンの絡み合いが非常に優れた極上の演奏になっています。

「Ladies of the Road」も圧巻の名演奏。フリップが面白いフレーズを弾きまくっているのが
魅力的で、後半でのボズのシャウトも大変力強いアクセントになっています。
「Groon」はフェイド・イン。72年になっても冒頭のテーマ部だけが固定されたインプロ大会なのは
相変わらずなのですが、この日のプレイは凄まじいプレイが炸裂しまくる好演奏です。
曲のスタートから4分56秒付近までの展開は特に強烈。5分00秒辺りから曲想が少し一変しますが
直ぐに元の激しい曲想に戻ります。しかし非常に残念なことに7分39秒でフェイド・アウト。(T_T)
演奏が物凄く良い極上プレイなだけに、これは痛いよ・・・(T_T)
フェイド・アウトが明けると、フェイド・インして後半のイアンのドラムソロからまた始まりますが、
この間、恐らく3分間程の音楽が失われていると思います。イアンのドラミングは相変わらず力強いものですが、
3分45秒付近からはお馴染みのVCS3を使用した展開になっていて、聴いていると少々ダレます。(^_^;)

「21st Century Schizoid Man」は、冒頭に短いドラムソロが付いているというかなり珍しいテイク。
演奏がまた非常に優れていて、特にフリップのギタープレイがブッ飛んでいて強烈です。
中間のフリー部分でもメルとフリップがフロントで延々と狂的なサウンドイメージを
展開し続けていますが、イアンの芯の入った図太いドラミングが曲想を引き締めている点も
聴き逃せない点だと思います。

「Miamibound」と銘打たれた曲は、たぶんこの日のアンコールで披露されたインプロ曲。
メルの飛び回る美麗なフルートをメインに進行してゆくもので、
フリップはワウを効かせたギターで絡んでいます。時折り強いアタックで入ってくる
ボズの単音ベースが良いアクセントになっていて、そのボズが中盤からは
即興でシャウトしたヴォーカルを聴かせている点も聴き応えがあります。
このインプロ曲は6分11秒ほど続いた後、その演奏の余韻を残したまま次の「Cadence and Cascade」に
メドレーで繋がってるのですが、この「Cadence and Cascade」がまた絶品!!
こういう天上の演奏を聴かされてしまうとなかなか言葉でそれを説明するのは難しいですが、
ここでもフリップのギターが冴えまくっていて、メルのフルートとイアンのドラムにそれが絡んで
言葉を失う程の音世界を紡ぎ出しています。

音質79点。
1CDプレス盤。


『STRANGE TALES OF THE SAILORS』 / (DYNAMITE−911802)
Live date : KFL Summit Studio, Denver, Colorado, USA / 1972. Mar. 13 (or, 12 ?)

ブートCD黎明期からあったタイトル。
下段↓で紹介している『DARK KINGDOM / (TARANTURA - TUDCD 001)』より先にリリースされて
いた事もあって、発売当時(1993年頃だったと思う)は3rdプレスまで重版を重ねた人気の
タイトルでした。 収録内容は『DARK KINGDOM』と同じでマスターも同じものが使用されています。
元々がラジオ放送用に録音されたスタジオライブなので一応はサウンドボードですし
音質面はそれなりに良いのですが、ただスタジオライブという理由からなのか演奏内容は
他日のパフォーマンスよりも落ち着いているというか、安定路線の着実な演奏をしているのが
なかなか興味深い音源だと思います。

「Pictures Of A City」はのっけから他日とは違う印象を放つ重ための演奏。序盤は
それほど弾けていませんが、これほどへヴィな印象を放つこの曲も逆に珍しいと思います。
しかし中盤を過ぎるとサックスが暴れ始めていつもの狂的なイメージを炸裂させており、
かなり迫力のあるゴツゴツしたサウンドが襲ってくる様相が興味深いです。
「Cadence and Cascade」も非常にゆったりした演奏で、フリップの前奏ギターも他日で
聴けるものと比べて1フレーズ長く、ボズの歌い方もかなり溜めを効かせています。
ボズの声の後ろで優しく舞っているイアンのドラムも曲のコントラストをよく出して
いる好プレイですし、スタジオ版と同様にきちんと終曲部まで曲を再現しつつ演奏されて
いるのも珍しいと思います。

「Groon」はこの日も冒頭のテーマだけが定型しただけのインプロナンバーになっていますが、
これも他日の演奏と比べると抑制を効かせたやや大人しい演奏になっているのが面白いですね。
この日も途中からVCS3を使ったドラムソロが展開されていますが、既にピート・シンフィールドが
脱退していた事もあって他日よりもダラダラと退屈な展開をし続けず、或る程度のところで
きちんと終曲している点も特徴だと思います。主題部が終わった00分46秒付近からの
展開と、サックスが主導しながら徐々に各楽器が絡み合ってゆくアンサンブルはなかなかに
スリリングで聴き応えがあると思います。

「21st Century Schizoid Man」もこの日は少々迫力不足。テンポもスローで
危なっかしいプレイもしておらず、特に中間部のフリーな部分はかなり退屈。
失敗をしない様に丁寧に演奏している感じがしてあまり面白い演奏ではありません。(-_-;)
「Earthbound」はアルバム『Earthbound』に収録されていた同曲と比べるとその差が
なかなか面白く、また元々の基本的な骨組みが或る程度あったフリースタイルの(=或いは、
Groonタイプの)曲だった事がよく分かります。曲の後半、8分30秒付近からフリップの
優しいギターが奏でられて終演してゆきますが、この箇所はなかなかの聴き処でしょう。

トラック(7)の「King Crimson Experiment」というのは曲間のちょっとしたパフォーマンス。
相変わらずボズが馬鹿げたMCをやっていますが、こうした箇所でフリップがギターで
音を出して参加しているのはなかなか珍しいんじゃないでしょうか。「The Sailors' Tale」は
前奏としてリムスキー・コルサコフ作曲の「熊蜂は飛ぶ」がギターで奏でられてから始まる
という珍しい演奏。終曲部でフリップがギターを掻き鳴らして終演しているのも面白いです。

音質は、本作はサウンドボード音源ではあるものの残念ながら低音が割れているのが難点。
基本的には良い音質だと思うんですが、気になる人にはそれが少し気になるかもしれません。
また本作は1stプレスと2ndプレス、そして極少数ながらも3rdプレスの3種類がリリースされました。
1stプレスはジャケが見開きポスター仕様になっていて、2ndプレスはジャケが通常のCDサイズに
なっています(←に画像を載せた僕の所有しているバージョンは2ndプレス)。
そして3rdプレスは1stプレス同様にジャケが見開きポスター仕様になっていますが、
CD盤面中央のマトリックス・ナンバーが1stプレス盤とは違っているようです。
3rdプレスのリリース当時、当時あった西新宿のブート屋「Iko Iko」の店員さんに
聞いた話では、3rdプレスは大体150枚程度しか創っていない筈との事でした。

音質87点。
1CDプレス盤。

『DARK KINGDOM』 / (TARANTURA - TUDCD 001)
Live at : KFL Summit Studio, Denver, Colorado, USA / 1972. Mar. 13 (or, 12 ?)

ブートCD黎明期から存在する有名なtarantura盤。
本作はブートでは珍しい24金ゴールドディスク仕様という特別な仕様でTARANTURAが
リリースした為にコレクターには特に印象深いタイトルだったと思います。
収録内容は上段↑で紹介している『STRANGE TALES OF THE SAILORS / (DYNAMITE−911802)』と
同じですが、残念ながら本作はカットが目立つ不完全収録盤というのが最大の難点。
具体的には

1.「Groon」終曲後、ラジオ局KFLのアナウンスに続いてメンバー紹介が始まる様子 (※ 約2分)
2.「21st Century 〜」の終曲後にあるメンバーのイントロダクションや楽曲紹介 (※ 約1分30秒)
3.「Earthbound」終曲後のKFLアナウンスと、それに続くおちゃらけた様子 (※ 約4分30秒)

という3つのシーンが丸ごとカットされています。
どれも音楽と演奏には被らない曲間MCだけど、しかしこうブツブツと編集でカットされていると
聴いていて気になるなぁ。ディスクの収録分数も問題ない筈なのに、どうしてこれをカットしたんだろうと
不思議で仕方無いです。どのカット部分にもKFLのアナウンスが入っているのでそれが理由なのか
とも思うんだけど、個人的には全く意味不明のカット・編集痕に思えてなりません。

また音質についても、なるほどマスター音源を何も修正せずダイレクトに収録した
『STRANGE TALES OF THE SAILORS』に比べるとそれなりにきちんとノイズ(チリチリした
アナログ特有のヒスノイズ)が低減されているのが随所で確認できますが、しかし
そのぶん奥まった丸みのある(或いは若干こもった)収録音になってしまっており、
音像のシャープさには欠ける印象があります。聴き易い音質ではあると思いますけども、
でも個人的にはチリチリしたヒスノイズが入っててもシャープでストレートな音像の方が
好みだなぁ。

音質88点。
1CDプレス盤 / 24金ゴールドディスク仕様・変形紙帯付き。
『SANTA MONICA MARCH 19, 1972』 / (BLUE-047)
Live date : Civic Auditorium, Santa Monica, California, USA. / 1972. Mar. 19(???...May be.)

「Pictures Of A City」は第一フレーズ目から音楽が炸裂しており、
のっけから「・・あ、これ凄いな」と直感出来るパフォーマンスです。
日によって違う2分17秒付近の独特なブリッジもこの日は一層奇妙で
面白い表現ですし、中間部に突入してからの気だるいジャンクな表情
(5分00秒付近〜)もこの日は大変秀逸。サックスとドラムの対比がとても
良いと思いますし、その重苦しい曲想から音をひねり出すように
出てゆく終盤への繋ぎ(7分07秒付近)も絶品です。
「Cirkus」も強烈な演奏。一音一音押し込む様に表現する様子は
非常に強い説得力が感じられ、メロトロンもこの日は芯のある圧倒的な
音像で楽曲全体を包んでいます。緩急のタイミングと細かい音の重ね方
(5分51秒付近から徐々に入ってくるシンバルの表現など見事!!)も秀逸ですし、
何といってもメロトロンと全体音の融合が最大の魅力ではないかと思います。

「Ladies Of The Road」は冒頭ギターの絡み方が独特で、序盤00分43秒付近で
聴けるコミカルなアプローチはフリップらしくて思わずニヤリとさせられます。
中間部でも2分32秒付近でのアルペジオや3分28秒付近から始まってゆく
ミュート奏法など、この日特有のアプローチが耳を惹きますし、終曲部でも
他日とは違うフレーズで曲を締めています。このフリップの動きだけを
追っても聴き処の多い深い一曲でしょう。ボズの熱唱もこの日は
ブルージーな歌い上げが目立つのも特徴だと思います。

「Groon」はメインフレーズを2ターン繰り返してからインプロへ。
この日はゆったりした幻想的な音色をバックにサックスが舞い、徐々に
ドラムがビートを効かせてゆくというプロローグ。これがジャジーで
大変聴き応えがあるパフォーマンスとなっており、他日の混沌とした
インプロ表現よりも分かり易さ(←コレ重要)と演奏能力の高さが前面に
押し出されていると思います。4分57秒付近で一旦ブレイク。曲想が一転し、
ボズがおもむろに「The Sailor's Tale」のフレーズを弾き始めると、
このフレーズを基軸にしたインプロがここから展開してゆきます。
リズムが変化し、それに伴ってギターのアプローチも変化し、サックスが加わり、
表情が次々と変わってゆく様子(特に6分10秒付近〜10分15秒付近までの約4分間)は、
このインプロ最大の聴き処だと思います。

またこの部分で興味深いのは「Larks' Tongues In Aspic - Part T」の
リフの原型らしきものが披露されていることでしょう(8分13秒付近〜45秒付近)。
これは前年1971年8月9日の演奏(※『LARKS' TONGUES ON THE ISLAND (KC-004)』の
項を参照)ほどのものではありませんが、この当時既にこのフレーズを
ライブで何度か試していたという生々しい痕跡に触れられるという点で
大変興味深いシーンだと思います。後半はお馴染みのドラムソロで、
14分20秒付近からはVCS3効果も入っていつも通りのノイジーな展開となり、
終盤でサックスが少し絡んで終演しています。

「21st Century Schizoid Man」はこの日もボズが溜めを効かせた歌唱で披露。
特にここでは歌詞2番での節廻しが独特ですが、何といっても中間のインストパートを
抜けた後に出てくる歌詞3番でのボーカルパフォーマンスでしょう。これは三日後の
3月21日公演でも同様ですが、この日もボズはボーカルラインに凶悪なイコライジングを
施した電子ボイスで歌っており、これのインパクトがもう強烈です。
中間部のインストパートも相変わらずラウドで、後半に進むに従って殆ど
ノイズに近い歪み方をしていますが、一方この日は後半部で
"ピュイイィィィーーーン"というVCS3による(と思われる)効果音が
入っていないのも特徴でしょう。
・・・しかし残念ながら、終曲手前の8分14秒付近で突然カット。
この後にあるメンバー紹介では後半でフリップが紹介される時に
彼がコミカルなフレーズをギターで弾いているのだけど、これは
前年の1971年10月15日公演の「Groon」の中で披露していたものと同じもの。
やっぱり当時のTVのコメディ番組のテーマとか、CM曲なんじゃないかなぁ、これ。

そしてこの日の「The Letters」はアンコールとして披露。
通常この時期のアンコール曲は「Cadence and Cascade」の筈なので、
これはなかなか珍しいと思います。ここでの「The Letters」の演奏は
曲の冒頭にメロトロンが付かなくなった演奏ですが、このメロトロンが
冒頭に付かなかった「The Letters」は僅かな期間しか演奏されず、
現存する音源では僕の知る限りで1971年10月15日・16日・19日のみ。
つまり「何故ここ(72年3月)にきてこの曲を、しかも冒頭にメロトロン
無しのバージョンで演奏してるの?」・・・という疑問も立つわけです。
ちなみに本作での「The Letters」の演奏は上記15日・16日・19日のどれとも
違っており、唯一、15日のブライトンドーム公演での演奏に酷似しているのですが、
1分50秒付近から始まるメルのフリーフォームのバックで暴れるドラムのアプローチが
違ううえ、録音機付近に居るらしい目立つ観客の様子やレコードされている
臨場感・演奏音に違和感を感じない為、恐らく別公演の演奏=この日(72年3月19日)に
たまたまプレイした「The Letters」で正しいのだろうと推察しています。

まぁ推察はその位にしてその演奏ですが、冒頭からイギリスらしい湿った
雰囲気のある曲想で披露されていてムード満点。2分57秒付近から始まってゆく
中盤の展開もサックスを主体にしたものが延々と続いており、この引き伸ばし作業は
71年時には無かったものなので新鮮です。7分27秒付近でブレイクし、おもむろに
後半が始まりますが、ここでもサックスとシンバルによる弱音での装飾が見事。
そして遠くから静かにレトロ・メルヘンなテイストのギターのメロディが
さりげなく奏でられて静かに終演しています。コレなかなか良い感じですよ。

最後に音質について少し触れておきますと、
収録はオーディエンス録音なのですが素晴らしい音でシューティングされています。
透明感と解像度も抜群なうえ演奏音も近くてキレが良く、低音に迫力もあるという
素晴らしい音質で収録されています。ただ一点残念なのは、文中にも書きましたが
「21st Century Schizoid Man」の終曲手前、8分14秒付近で突然カットがある点のみ。
恐らくマスターテープの不備によるものだと思いますが、演奏が良いだけにこれは痛い(-_-;)。
でもそれ以外は音質も演奏も素晴らしい収録内容だと思います。

音質87点。
1CDR。

『EARTHBOUND OF A CITY』 / (Blue Cafe - 166)
Live at : Civic Auditorium, Santa Monica, California, USA. / 1972. Mar. 19(???...May be.)

上段↑『SANTA MONICA MARCH 19, 1972 / (BLUE-047)』及び、下段↓で紹介している
『EMERALD FIRE / (Sirene-276)』と同内容。使用されているマスターも全て同一ですが、
本作は『SANTA MONICA MARCH 19, 1972』に使用されているものと全く同じソースが
使用されています。ただこれは『SANTA MONICA MARCH 19, 1972』をコピーしたというよりは、
出し直したものなんじゃないかなぁ。レーベルも同系統ですし。

よって、本作は『SANTA MONICA MARCH 19, 1972』と音質も収録内容も全く同じ。
「21st Century Schizoid Man」の後半で音がブツ切れる点(※本作では8分17秒付近)も
全く同様です。ただ細かいところで言えば、両タイトルはトラックごとの分数が各曲で
少し違っており、本作では各トラックが曲のすぐ出だしから始まっているのに対して
『SANTA MONICA MARCH 19, 1972』は数秒の間を持たせてから曲が始まるという
若干の余裕を持たせたトラック配分が各曲になされています。

まぁどちらが良いかは個人の好みでしょうね。(^_^;)

音質87点。
1CDR。


『EMERALD FIRE』 / (Sirene-276)
Live date : Civic Auditorium, Santa Monica, California, USA. / 1972. Mar. 19(???...May be.)

上段↑で紹介している『SANTA MONICA MARCH 19, 1972 / (BLUE-047)』及び
『EARTHBOUND OF A CITY (Blue Cafe - 166)』と同一音源。
使用しているマスター音源も同一のものが使われています。
但し、本作に収録されているソースと音質は上記2タイトルとは
少し違いがあり、本作の音像は丸みを帯びた、温もりのある音で
収録されているのが特徴です(=シャープさにはやや欠ける)。

「21st Century Schizoid Man」は終曲直前の8分15秒付近で
カットがありますが、これは上記2タイトルでも全く同様です。
たぶんオリジナルのマスターテープがこうなっているのでしょう。
しかし本作ではこの曲のみ音が若干奥まって聞こえるうえ音揺れもあるのが難点。
もうひとつ、これは細かいことですが本作は「Groon」の00分21秒付近から
終曲付近まで、音像がほんの僅かに右側にズレて聞こえる事も付記しておきます。

音質83点。
1CDプレス盤・100枚限定のリリース。
『THE BATHROOM』 / (AYY-211CD)
Live at : Winterland Ballroom, San Francisco, California, USA. / 1972. Mar. 21
...and Bonus Track (※Robert Fripp): The Midnight Special, NBC TV, Burbank, California, USA. / 1979. Oct. 5

「Pictures of a City」では、前半部でボズのベースとボーカルが奮闘。
特にボーカルは力強く歌い上げていて大変エネルギッシュです。(^^)
全体的には基本に忠実なスタジオ版同様のプレイをしていますが、
6分20秒付近から始まる後半のフリー・プレイでのサックスは
強烈に吹き荒れていますし、その後ろでバタバタと暴れている
ドラムも素晴らしくアヴァンギャルドで、見事なオープニングを飾っています。

「Formentera Lady」は、この日も冒頭でフルートの前奏が付いてのスタート。
浮遊感が漂うとても優しいタッチの演奏で、暫くピースフルなムードが
場を支配しています。タンバリンの入れ方も絶妙で、まるで曲が深呼吸しているよう。
後半のフリーに入る付近から終演まで再びサックスが吹き荒れますが、
アヴァンギャルドながらも非常にムードあるメロディーで曲を装飾しています。
突然現れる「The Sailors' Tale」の主旋律となるベースラインも絶妙なインの仕方で
スリリング。曲もこの時期になるとほぼ完成形で不安定なイメージが影を消しており、
とても生命力を感じるテイクになっていると思います。

「Cirkus」はこの日もリズムに少し溜めを効かせてのパフォーマンス。
ここでもメルのサックスが至る所で楽曲に色彩を与えていますが、
バックの腰を据えたアンサンブルも立体的な音作りをしており、かなり耳を惹きます。
「Ladies of the Road」は、かなり砕けた調子の愉しい演奏。序盤でボズが笑いながら
歌っていたり、熱っぽくシャウトしたりする箇所もあり、他のメンバーもそれに合わせて
肩の力を良い感じで抜いたプレイをしているが好印象。終曲部で全体音が散る中、
ギターだけが残って旋律を爪弾いているのもカッコイイと思います。

この日の「Groon」は序盤はミドルテンポの中でやや混沌としたイメージがしますが、
3分28秒付近から目立ち始めるフリップの静かなギターメロディーが入ってくると
それまでの混沌としたイメージから詩的な音世界になり、やがて静かに終曲してゆく様子は見事です。
ここで曲は一旦ブレイクし、再び静かな導入を伴ったインプロが始まりますが、直ぐにジャンクな
狂騒が場を支配。この辺りの音の変化というかコントラストはなかなか絵画的な色彩感が感じられる
パフォーマンスではないでしょうか。2分13秒付近から突入するドラムソロ(VCS3効果も含む)は
この日も延々とプレイ。似た様なフレーズとアプローチが続くのでやや退屈に感じる箇所もありますが、
ベースとサックスが入ってくる終盤の音の纏め方はなかなか手に汗握るシーンだと思います。

「21st Century Schizoid Man」は絶品の演奏。この日もボズはタイミングをわざとズラして
歌っていますが、しかしそれはとても力強く芯のある歌唱で心に響くもの。
中間パートでは69年のオリジナル・クリムゾンに迫る壮絶なプレイを展開しており、
音の塊がそこかしこで炸裂。曲想が躍動感でうねり、暴れ回る様子は強烈です。
このグルーヴ感こそこの布陣でしか成し得なかったサウンドですよね。
正直何度聴いても痺れます。(^^)
そしてフリーの部分が終わり、メインテーマに戻ってからのドラミングもここでしか
聴けない変わったリズム(このアプローチは珍しいと思う)で叩かれているだけでなく、
歌詞3番に突入したボズのボーカルには狂的なイコライザーが施され、歪んだ声のまま絶唱し、
一気に終演を迎えます。この部分、初めて聴くとあまりの狂騒と恍惚感で泣いてしまう
かもしれませんよ。マジで凄いです。

ラストの「Cadence and Cascade」は非常にムード溢れる好演奏。
スタジオ版よりゆったりしており、かつとても内緒的・個人的なイメージで進み
ボズの甘い声とフリップの印象的な美旋律のギターが絡み合う素晴らしい名演です。
ドラムも目立たないながらも細かな装飾で演出しているのがニクいですし、
中盤から入ってくるフルートの旋律も凶悪なまでに甘美で幻想的。
コーダではスタジオ版とは少し違ったアプローチで曲を締めているのも面白いです。
これはまさに、この布陣でしか出せなかったクリムゾンの吐息と温もりでしょう。

ここからは音質や編集面についての付記。
まず「Cirkus」の終演直後〜「Ladies of the Road」の開始前に
判別困難な編集跡のようなもの(8分21秒付近)が確認出来ます。
この部分は音のレベルが急に一瞬だけ下がっており、編集跡の様にも思えるけど
単にテープのヨレでその箇所だけ音が劣化しているだけの様にも聞こえ、イマイチ
僕には判別が付きません。もしかしたらノーカットかもしれないし、
もしかしたら切り貼りしてるのかもしれませんが、いずれにしても曲間の
オーディエンスの歓声の部分ですし、演奏そのものは(編集跡の前も後も)この日の
演奏である事は間違いないです。
しかしその一方で「Groon」の終演後〜「21st Century Schizoid Man」開始前に
切り貼りした編集跡があり、この部分で約15秒分のオーディエンスの歓声が欠落しています。
(下段↓で紹介している『A TALE OF TWO TREATIES / (Sirene-001)』ではこの部分ノーカット)

尚、この日のライブデータについて少し補足をすると、
本作に記載されている「1972年3月21日」という日付けは
クリムゾンの公式ライブデータには記載されていません。
しかし、この日のライブに実際に足を運んだという往年のファンの証言が現在も
数多く残されており、この日にライブがあった事はどうやら間違いない様です。

最後に、本作にボーナストラックとして収録されているのは
フリップが1979年10月に出演したアメリカのテレビ番組からの演奏。
フリッパートロニクスを使用したギターが数分間収録されており、
いつもながらのサウンドイメージで音を丹念に綴っている様子が
そこそこ良い音質で収録されています。

音質80点。
1CDR。


『FRISCO SPACER』 / (KC−013)
Live date : Winterland Ballroom, San Francisco, California, USA. / 1972. Mar. 21

上段で紹介している『THE BATHROOM / (AYY-211CD)』と同一のマスターテープを使用した音源。
但し本作はカットが目立つ不完全盤で、開演前のチューニング風景がバッサリ切られ、
「21st Century Schizoid Man」はカットイン。しかも曲の中盤(歌詞3番に入る手前)でフェイドアウトして
そのまま終わっている=「Cadence and Cascade」は未収録・・・という非常に不満が募る一枚です。(-_-;)

本作はブートCD黎明期に存在した名門KCレーベルから出ていた一枚でしたが、
上記の様な理由から今となっては完全にハードコレクター向けのタイトルと言えるでしょう。
音質はなかなか良いのですが、所々で音割れ・片チャンネルになったりする箇所があるのが難です。

音質78点。
1CDプレス盤。


『A TALE OF TWO TREATIES』 / (Sirene-001)
Live date : Winterland Ballroom, San Francisco, California, USA. / 1972. Mar. 21

↑の2段分で紹介した『THE BATHROOM / (AYY-211CD)』及び『FRISCO SPACER / (KC−013)』とは
別のマスターから収録されている同日音源。
録音機付近で聞こえるオーディエンスの声が明らかに違っており、
カットの位置や収録時間も違っています。

まず本作は開演前の収録時間(チューニング等をしている)が『THE BATHROOM』より
約40秒ほど長く収録されており、ラスト「Cadence and Cascade」の終演後は
逆に約3秒間ほど本作の方が短く収録されています。

また「Cirkus」の終演直後〜「Ladies of the Road」の開始前に
フェイド・アウト〜フェイド・インしている箇所があるのですが
これも処理が違っており、フリップのMC途中からフェイド・インするという
やや雑な切り貼りで繋げられています。「Ladies of the Road」は
5分35秒付近で一瞬の音飛びがあり、音像の揺れも激しいです。
しかしその一方で『THE BATHROOM』では切り貼りされている
「Groon」の終演後〜「21st Century Schizoid Man」開始前の編集跡は無く、
本作はこの部分ノーカットで収録されています。

音質77点。
音像は一応センターにあるものの使用したマスターテープの劣化のせいか
全体的に音揺れが激しく、演奏音も若干遠め。
「Cirkus」は特に音質劣化が目立ち、聴き辛い部分が数箇所で発生しています。

2CDプレス盤・・・のうちの、Disc-1。
Disc-2にはメル・ボズ・イアンの3人がこのクリムゾン脱退後に
アレクシス・コナーの下に集結して始動したバンド、SNAPE(スネイプ)の
ライブ音源が収録されています。ウラジャケ記載の日付を見ると分かりますが、
この日のクリムゾンのライブからジャスト4ヵ月後の様子です。クリムゾンでは
ないのでここでは詳細を書きませんが、このライブ結構良いですよ。(^^)
※(SNAPEについてのデータは←の画像をクリックしてウラジャケを参照のこと)



『FORMENTERA MEMORIES』 / (ALL OF US, AS 33)
Live date : Orpheum Theatre, Boston, Massachusetts, USA. / 1972. Mar. 27

下段↓2つ分で紹介している『CELEBRATION OF THE LIZARD (Gold Standard / KC-21-94-05)』及び
『TRAVELLERS STRUM (KC−011MUSIC 514944 IFPI L601)』と同内容。
演奏前の挨拶で入ってくる奇妙なノイズ(※本作だと00分35秒付近〜。
他の2作では00分33秒付近〜)も全く同じですし、「Formentera Lady」の10分21秒付近で
一瞬入るノイズ(たぶんテープのヨレ)も他の2タイトルで全く同じ位置でヨレる音が確認
できますので、使用している大元のマスターは3タイトル全て同じで間違いないでしょう。
・・但し、
本作だけはマスターから収録する際にリマスタリングされているらしく、
本作だけ音質が格段に良いです。解像度が高くて透明感があり、音圧も適度に
高くてパンチも感じられ、音質が最初から最後まで安定して優秀です。
という訳で、この27日の公演を収録したタイトルとしては現在(2013年8月)のところ
本作がベストでしょう。

演奏もこの日は同時期のものと比べて秀逸です。
「Pictures Of A City」はラウドな喧騒感とアヴァンギャルドな魅力が色濃く
出ている名演。出だしの上昇音型の部分から非常にストロングなアタックが
ビシビシ伝わってきてカッコイイです。(^_^;)ボズの声もこの演奏音に
非常に良くマッチしており、ギターとサックスの絡みも抜群の安定感を
伴っていてアンサンブル全体で曲の持つ運動性が最良の形で引き出されて
いると思います。

しかしこの日最高のパフォーマンスは何と言っても「Formentera Lady」でしょう。
これ絶品です。
冒頭の前奏がこの日はフルートではなくフリップの静かなギターで始まっているのも
かなり珍しいですし、メルのフルートも非常に効果的なメロディーを奏でていて、
中盤から再び奏で始めるフリップのギター・アルペジオと絡み合って曲を一層透明感
溢れるものにしています。この曲想表現かなりヤバいですよ。間違いなく
この曲としては史上屈指の最高の演奏のひとつでしょう。曲の後半部分でのジャムは
他日よりも長めに演奏されていて、この日のメンバーの調子をお互いがテストし
合っている様にも感じられる好パフォーマンス。フリップが奇妙なフレーズを入れてくる
6分26秒付近からの展開も痛快で、ここから続く「The Sailors' Tale」も
その高テンションを保ったまま凄まじくスリリングな演奏を繰り広げています。

「Cirkus」はボズのボーカルの後ろで鳴っているエレキピアノが大変印象的。
メロトロンもこの日は機械の調子が良く、曲の随所で活躍していて、曲想を大いに盛り立てています。
曲の終盤付近ではベースのスライド音を効果的に入れていたり、スタッカートで
メロトロンを入れていたりと、実に色彩感に溢れた音色で曲を演奏しています。
「Groon」はこの日とてもブルース色が強いテイク。メルのサックスが前面に出て曲を
引っ張っていますが、ボズのベースラインも終始アクの強いフックを放ちながら
影で曲の主導権を握っている様でもあり、とても聴き応えのある演奏をしています。
尚、イアンのドラムソロが始まってから少し経過した10分10秒付近で曲は静かになり
つつ自然と終わっている様に聴こえますが、これはフェイドアウトによる編集作業でしょう。

「21st Century Schizoid Man」はこの日も絶好調。中間のフリー部分でフリップのギターが
陰鬱+病的に鳴り響き続けているのがとても印象的。イアンの叩くドラムのリズムが
途中で何度も途切れつつ叩いているのも大変面白いですが、特に異例なのは
この中間部でメルのサックスが一度も出てこないという点でしょう。フリーが終わって
ユニゾンになる部分で始めてサックスが出てきますが、フリーの箇所では一音たりとも
サックスを吹いていません。これはかなり珍しいと思います。逆に言うと、これは他の楽器が
そこにズカズカと割り込む余地など無いほどにフリップの陰鬱+病的なギターが圧倒的だったという
何よりの証でもあったと思えます。

「Earthbound」もこの日は凄まじいです。相変わらずブルース調のジャム・セッションといった
様相ですが、全体の主導権を握っているのはメルのサックス。これがまたかっこいい。後ろで
控えめにカッティングを続けていたフリップが途中から印象的なフレーズでギターソロで
雄弁に語り出しているのが面白いです。やがて静かに曲想を変えてゆきつつ再びギターが
前面に出てくると、そのまま「Cadence and Cascade」へとスムーズに移行しているのですが、
この「Cadence and Cascade」がまた極上の演奏でフルートとギターの絡みが素晴らしい
化学反応をしています。終曲部も綺麗に、そして大変チャーミングに着地していて、72年に
披露したこの曲の演奏としては屈指のものでしょう。


音質88点。
演奏100点+α。
1CDプレス盤。
『CELEBRATION OF THE LIZARD』 / (Gold Standard / KC-21-94-05)
Live Date : Orpheum Theatre, Boston, Massachusetts, USA. / 1972. Mar. 27

上段↑で紹介している『FORMENTERA MEMORIES (ALL OF US, AS 33)』 及び
下段↓で紹介している『TRAVELLERS STRUM (KC−011MUSIC 514944 IFPI L601)』と同内容。

音質も決して悪くは無いのですが、本作最大の欠点はトラックナンバーとジャケウラの
曲表記がメチャクチャなことでしょう。曲順は基本的には合っているのだけど、
2曲が1曲として扱われていたり(トラック4)、そのせいで曲表記がズレて完全に違う
曲名になっていたり(トラック5、6、7)と、表記面がかなり酷いです。

プレス盤だし、音質もそんなに悪くは無いのだけど、やはり『FORMENTERA MEMORIES』と比べると
格段に落ちますね。今となっては完全にハードコア・コレクター向けの一枚ですな。(^_^;)
でも演奏は大変良いです。

音質83点。
1CDプレス盤。


『TRAVELLERS STRUM』 / (KC−011MUSIC 514944 IFPI L601)
Live date : Orpheum Theatre, Boston, Massachusetts, USA. / 1972. Mar. 27

上段↑2つ分で紹介している『FORMENTERA MEMORIES (ALL OF US, AS 33)』
及び『CELEBRATION OF THE LIZARD (Gold Standard / KC-21-94-05)』と全くの同内容。
ただ音質面で比較すると本作は恐らく『CELEBRATION OF THE LIZARD』をまるごと
コピーしているんじゃないかと思います。デジタルコピーの為か、音質も同レベルで
音質も全く同じです。

そして本作もまた『CELEBRATION OF THE LIZARD』同様にウラジャケの曲目表記がテキトー。
ハードコアなコレクター向けのゴミタイトル。リスクを分かって購入する以外では手を
出さない方が良いでしょうね。(^_^;)
でも演奏は大変良いです。

音質83点。
1CDプレス盤。


『SLIDING MYSTIFIED』 / (KC−012)
Live date : Municipal Auditorium, New Orleans, Louisiana, USA. / 1972. Mar. 31

「Pictures of a City」は、冒頭からメルのサックスがかなり異例のメロディを異例の箇所で
奏でているという珍しいテイク。中盤以降もサックスが曲の主導権を握っていて、
どこかヒステリックな音の余韻を残したまま終曲しています。
「Cirkus」はイアンのドラムのタイミングとメルのサックスのタイミングが少し噛み合っておらず、
かなりリズムがモタついた印象がある演奏。中間部でもイアンがリズムを溜め過ぎている感があり、
フリップのメロトロンが少々演奏し辛そうです。(^_^;)しかし後半は持ち返して
通常通りに問題無くコーダを迎えています。

「21st Century Schizoid Man」は冒頭からかなり音質が劣化。直ぐに少し持ち直しますが、
この辺りから音が聴き辛くなってきます。演奏はこの日もとてもパワフルで、ボズが相変わらず
タイミングをズラした歌い方をしています。中間のフリーの部分では、フリップの後ろで弾いている
ボズのベースがアタックの強い音を出していてちょっと刺激的。また4分18秒付近ではフリップの
ギターソロの途中でイアンが突然ドラムのテンポを変え、フリップが弾き辛そうにしている箇所が
あってちょっと面白い展開が聴けます。その後直ぐにまたドラムのリズムが戻って激しいアンサンブルが
続きますが、6分29秒付近で切り張りの編集作業があり、突然終曲前の辺りまで突然飛んでいます。(-_-;)
この間、約1分30秒程度の音が失われています。

「Earthbound」と銘打たれた4曲目は、3月13日の演奏と同系統のインプロ曲。
フェイド・インからスタートしており、冒頭で少し音が失われています(インプロなので、
どのくらいの音が失われているのかは不明)。音質の劣化が激しいですが、
フリップのギターが主導権を握るスローテンポのインプロですが、面白いことに
ボズのベースが割と目立つインプロでもあり、73年のウエットンほどでは無いにしろ
そこそこ味のあるフレーズを弾いているのが特徴です。そうした中でアンサンブルは
順調に進んでゆきますが、6分36秒付近で突然「Cadence and Cascade」に変化。
この突然の曲想変化の部分ですが、事前の打ち合わせとリハーサル通りに自然と変化している様でもあり、
しかし巧みに編集されている様でもあって判別し辛く、僕にはどちらなのか分かりません。(-_-;)

そしてクレジットはされていませんが、実はこの「Cadence and Cascade」の後に
シークレット・トラックとしてもう一曲、14分弱にも渡るインプロ曲が収録されています。
4曲目のインプロとは違ってこちらはなかなか激しいハード・ブルース調の曲想のもので、
時にボズがシャウトしたり、時にフリップのファズ・ギターが印象的なメロディーでソロを取ったり、
後半ではイアンのソロが含まれていたりと、なかなか魅力的な内容になっています。
しかしこの曲もフェイド・インで収録されており、
冒頭で(どの程度の長さかは不明ですが)音が失われていると思われます。

音質75点〜59点。
使用したマスターテープの劣化のせいだと思いますが、後になればなるほど音質が悪くなってゆきます。(-_-;)
また、こうして音質がさほど良くないうえに数箇所で切り張りやフェイド・インの編集跡がありますし、
更には収録されている曲数がかなり少ない為、これがこの日のライブを完全収録しているのかどうかは
ちょっと疑問が残るところだと思います。
1CDプレス盤。


『SANTAMONICA, CIVIC THEATRE 1972.3.19』 / (Red Circle RCD-2030)
Live date : unknown

演奏日不明。
一応ジャケとタイトルには1971年3月19日のサンタモニカ公演と記されていますが、
他のサンタモニカ3月19日公演(※『EMERALD FIRE / (Sirene-276)』や
『SANTA MONICA MARCH 19, 1972 / (BLUE-047)』)と聴き比べると、
本作は明らかに別の演奏が収録されています。
その『EMERALD FIRE / (Sirene-276)』の発売時、メーカーも本作との収録音の違いに
気付いていたようで、当時このメーカーが発表したHP上のアナウンス(及び、雑誌beatlegの
レビュー用として僕に回送されてきたディスクに挟まっていたメモ書き)には次の様な事が
記載されていました。

『本作(『EMERALD FIRE』)で聞こえる観客の喋り方は間違いなくカリフォルニア・アクセントなので、
この音源(『EMERALD FIRE』)こそがサンタモニカ3月19日公演である可能性が高い』

・・・と。
この他、本作(『SANTAMONICA, CIVIC THEATRE 1972.3.19』)ではピートが過剰に
操っていたVCS3の効果がさほど感じられなくなっている為、ここで聴けるものも
ピート脱退後の演奏ではないかと個人的に感じます。
そうなると本作収録の演奏は必然的に彼が脱退した後のアメリカツアーという事に
なるので、これは72年2月11日〜4月1日のどれかの演奏という具合に範囲が絞り込まれます。

また、このセットリストと演奏内容(※冒頭でフルートの前奏が付く「Formentera Lady」や
ミュートを効かせたギターが中間部で入っている「Ladies Of The Road」など)から
推察しても、これは恐らく1972年・春の演奏で間違いないと思うのですが、
本当のところはどうなのか僕にもよく分かりません。
そんな本作はカット・イン〜カット・アウトだらけなうえ、収録時間も僅か37分という
不完全収録音源ですが、しかしその反面、貴重で面白いプレイが聴ける一枚でもあります。

カット・インで始まる「Pictures of a City」は重ための曲想ながらも
時折リズミカルな面を感じさせる演奏。中間部はなかなかスタジオ版に近い
イメージでプレイしていますが、サックスが前面に出てくる4分56秒付近からは
いつも通りのアヴァンギャルドな一面も覗かせています。5分24秒付近〜34秒付近まで
続くロングトーンも大変印象的。終盤の締め方もソツなくこなしていて、やはり
スタジオ版に近い印象があると思います。

「Formentera Lady」もカット・イン・・・(^_^;)
それはさておき、冒頭でフルートの前奏が付いているテイクです。
優しくリリカルな曲想に乗せてそこかしこでフルートが舞い散る様子はこの布陣での
クリムゾン独特の表情を感じます。3分40秒付近、及び54秒付近で入ってくるボズの
ハミングも効果的(^^)。そして聴きどころはその後に入ってくるサックスと
ドラムの掛け合いで、曲想がブルース調の激しくスピーディなインプロへと展開して
ゆく様子は絶品。凄くスリリングでカッコいいです。(^^)そしてその掛け合いが
終わると同時に「The Sailors' Tale」へ雪崩れ込み、この曲らしいラウドで
アヴァンギャルドなパフォーマンスが炸裂。後半の騒々しいイメージを巧く出しながら
音楽が一点に収束し、拡散する終曲部はノイジーなギターを残して終演しています。

「Cirkus」もカット・イン・・・(-_-;)
まーそれはさておき、序盤でのドラムのアプローチが大変リズミカルで小気味良く、
各楽器もそのイメージを崩さないよう巧みに弱音を重ねているのが印象的です。
2分52秒付近から入ってくるサックスの定型フレーズはこの日、ゆらゆらと揺れながらも
速弾き(この場合は速"吹き"ですかね)でキメているシーンがあり、なかなかの聴き処です。
曲中盤のメロトロン+フルートが綴る静かなパートではドラムがそのイメージに立体感を
添えているシーンがあり(4分44秒付近〜5分04秒付近)、これも印象的なシーンでしょう。
6分30秒付近からメロトロンが不安定になり始めますが、終盤めげずにどうにか強引に終曲まで
演奏し切っているのも凄いです。

そして「Ladies of the Road」もカット・イン・・・(-_-;)
マーそれはさておき、ここではイアンのドラミングが力強く曲想をグッと惹き立てています。
曲の後半ではミュートを効かせたギターが曲想を豊かにし、ボズのシャウトが曲を盛り立てて
いるのも注目すべき点でしょう。この辺りのパフォーマンスは72年春公演の典型例かと思います。
・・・そして最大の聴き処は終演部分のパフォーマンス。この日は曲の締め方が大変変わっており、
5分18秒付近でフリップのギターが目立って前面に出てくると突然木の葉が舞い散る様に
フレーズが散り始め、静かに、そしてコミカルなフレーズでそっと残して終曲しているんですね。
このアプローチはかなり珍しく、本作でしか聴けない貴重なテイクだと思います。

そして「Groon」もカット・イン・・・(-_-+)
しかもメインフレーズが終わり、これから曲が展開し始めるという
僅か1分57秒付近で突然のフェイド・アウト。音質も最高潮に達し、
ギターの高音トレモロアプローチに導かれ、サックスのゴキゲンな旋律が
鳴り響く中でのフェイド・アウトですが、まぁソレハサテオキ・・・いや、
もうさておかねーよ!!!まったく・・・何だこの途切れ方は。(T_T)

恐らくオリジナルのマスターテープではノーカットで普通に収録されて
いるのだと思いますが、こうまでカット・イン〜カット・アウトばかりだと
ゲンナリしますな。まぁブートに音質や品質を求めても意味無いし、
音が聴けるだけでファンとしては嬉しいものなのは百も承知しているけれど、
しかしもー少しどーにかならなかったのかな、コレ・・・。

音質42点〜87点。
冒頭の「Pictures of a City」はテープのヨレが目立ち、
音質の劣化がかなり激しいのですが、2曲目の「Formentera Lady」では
かなり改善され、ここでもう79点ぐらいに回復しています。
最後の収録曲「Groon」では解像度・透明度・パンチなど
音質全体が優れた品質に達しているのだけど、上記した通り
無残なフェイド・アウトで収録そのもの不完全なまま終わっています。

・・・とゆーワケで、
どなたかこの音源の正確な日付が分かる方、是非教えてください。(T_T)
1CDR。