キング・クリムゾン
〜1973年〜



『音楽を目新しくするには二通りの方法がある。一つは既存の曲を絶え間なく作り替えてゆくこと。
そしてもう一つはその場でのインプロヴィゼーション。或いは、やっていくうちに作り上げていく
という事である。当時の我々のポリシーは書き下ろしていない曲を2曲はやるという事だった。
当時のイギリスのジャズ界でそれは「フリー」と呼ばれ、クリムゾン用語では「ブロー」だった』
−ロバート・フリップ 1992年−


このフリップの言葉通り、この当時のクリムゾンはステージでほぼ必ずインプロ(ブロー)を
2曲プレイしていて、曲の長さはその日によって長かったり短かったりという差はあったにせよ、
そうする事によって音楽をプレイヤーにもオーディエンスにも真新しく感じさせていました。
またこの時期で興味深いのは、未発表曲と思われる曲の断片メロディーが
インプロの後半で定型的に使われ始めるという点でしょう。
(※ 未発表曲「Guts On My Side」と、後の「Fracture」の原型フレーズの2つ)

「Guts On My Side」は、2011年にアルバム『暗黒の世界 / 40周年記念HQCD+DVD』が
リリースされたことによりタイトルが判明した当時の未発表曲で、73年公演中のインプロで
頻繁に使用されていた定型フレーズです。使用例としてはインプロ演奏中の適当な頃合いを
見計らってこのフレーズを挿入し、そのままコーダを迎えるという使用法が多く、
具体的には4月2日公演のインプロ曲から披露され始めています。
また、「Fracture」の原型フレーズがチラホラと出てくるインプロも結構多く、
3月の公演中(具体的には24日公演)からその様子が確認出来ます。

冒頭に挙げたフリップの言葉通り、
『音楽を目新しくする為に、既存の曲を絶え間なく作り替えてゆく』・・・という作業が
そこかしで散見出来るのが、この73年音源最大の魅力だと思います。





1973年 第一次イギリスツアー(3月16日〜3月25日)
『LIVE IN GLASGOW 16.3.1973』 / (Red Circle RCD-2018)
Live at : Greens Playhouse, Glasgow, UK. / 1973.Mar.16

長くてタフなツアーの幕開けとなる、1973年の第一回目・初日公演の音源。
冒頭は「Doctor Diamond」で始まりますが、当然この曲もこれが初回の
お披露目という訳で、幾分プロトタイプ的な印象が強い演奏です。
ヴォーカルの拍の取り方が随分違っているし、テンポも遅め。
しかも中間部ではギターを散らす箇所(ソロと言うには短い)も含まれていて、
大変興味深い演奏となっています(3分24秒付近〜3分37秒付近)。
反対に「Larks' Tongues In Aspic - Part T」はかなりスタジオ版テイクに近いものに
変化しており、72年後期の演奏とはまるで別物。中間部もウエットンのベースが
前面に出たロングバージョンで、クロスが奏でる後半のヴァイオリン・ソロの
アプローチも出だしが後のものとは違っており、かつ、かなり長めなソロに
なっている点も特筆されると思います。

「Easy Money」はまだプロトタイプ的な面影=72年後期の影が残っており、
ボーカルのアプローチやキメのタイミングなどが若干固まりきれていない様子が
チラホラと伺えます。中間部のインストパートは後の演奏より若干長め。そして
ギターが前面に出てかなり暴れており、椅子に座って上半身を時折揺らしながら
眉間にシワを寄せて弾き狂うフリップの姿が目に浮かぶようです。
そして勿論コーダ部はそのままインプロとなり、いきなり「Fallen Angel」の
フレーズが飛び出してきます。面白いのはクロスが後のこの曲のメロディーラインの
一部を既に弾いている点でしょう。しかし基本的にはまだイメージが固まって
いないようです。そして3分54秒付近からは殆どベースソロ。4分47秒付近から
ギターも絡んできてアンサンブルらしさが戻りますが、曲想を作って全体を
引っ張っているのは明らかにウエットンで、その後徐々にアンサンブルが
拡散して「Exiles」が始まってゆきます。この「Exiles」はかなり
スタジオテイクに近く、殆ど曲が完成している事を伺わせてくれますが、
終曲部でギターが少しメロディを残したまま終わっているのが印象的です。

「Book Of Saturday」は、曲中盤のバックでクロスがエレキ・ピアノ(たぶん)を
奏でているのが確認できます(1分06秒付近〜1分19秒付近)。これなかなか
珍しいシーンじゃないでしょうか。そしてこの曲もコーダがそのまま
インプロとなり、まずギター主導でスタートしています。序盤はやや
イメージ散漫ですが所々で牧歌的なイメージも感じられる楽想で、暫くは
ピースフルなサウンドイメージが綴られてゆきます。ところが
6分01秒付近から一転。口火を切ったのはビルで、直ぐにウエットンも同調し、
リズム隊によるスリリングな展開が始まります。やがてアンサンブルが拡散し、
呪術的なドラムの単音が微かに鳴り出すと、その先に待っていたのは
「The Talking Drum」。ショウはそのまま一気に佳境へ突入してゆきます。

「Larks' Tongues In Aspic - Part U」はアルバム収録版に近い演奏で、
この日は初日ということもあってか音を外さないよう安全運転で
しっかり演奏している感じが僕にはします。とはいえ後半部3分58秒付近から
入ってくるヴァイオリンは強烈で曲にかなりアヴァンギャルドな彩りを与えています。
アンコールの「21st Century Schizoid Man」はこの日なかなかユニーク。
ボーカルのアプローチが他日のものとは結構違っていますし、ビルも
7分57秒付近で面白いオカズを入れています。中間部のインストパートでは
ベースに何らかのトラブルが発生しているらしい箇所があって、
9分46秒付近でベースラインが一旦オフになり、数秒後に復帰すると
今度は10分07秒付近まで同一音のまま音が出っ放しになっています。
これ、こういう演出なのかなぁ?まぁそれはさておき、終曲後は
会場のアナウンスが数秒間聞こえるのも臨場感あって良いです。

音質75点。
ヘッドホンで聴くと音像が若干右にズレているのが難かな。(^_^;)
でも殆ど気にならないレベルです。
また、「Larks' Tongues In Aspic - Part U」の1分06秒付近で
一瞬だけ音飛びがあります。
1CDR。

『ZURICH APRIL 8, 1973』 / (HollyNorth / HN-007-2CD)
Live at :
Disc1〜Disc2-(1) : Musik AuBer-Kontrolle, Volkshaus, Zurich, Switzerland. / 1973. Apr. 8
Disc2-(2)〜(8) : Greens Playhouse, Glasgow, UK. / 1973.Mar.16

Disc2-(2)〜(8)までが、この欄で扱う73年3月16日のグラスゴー公演。
Disc1〜Disc2-(1)は同73年4月8日のチューリッヒ公演なので、そちらは4月8日の欄を参照のこと。

タイトルが『ZURICH APRIL 8, 1973』なのに何故ここ?と思いますが、
ディスク本編で扱われている4月8日のチューリッヒ公演が「Disc1〜Disc2の1曲目まで」と、
一曲だけ("21st Century Schizoid Man"が)Disc2にはみ出してるんですね。なので、
そのDisc2の穴埋めの為にこの欄で扱う73年3月16日のグラスゴー公演が
ボーナストラック扱いで収録されています。とはいえ、Disc2はほぼ丸ごと
3月16日公演が収録されているディスクですから、ボーナス扱いというよりは
2公演がカップリングされた2枚組タイトルと考えるのが妥当かと思います。

・・・という訳で、本作は↑で紹介している
『LIVE IN GLASGOW 16.3.1973 / (Red Circle RCD-2018)』と
同一音源。使用しているマスターも同じものが使用されています。
但し本作は『LIVE IN GLASGOW 16.3.1973』より少し解像度が落ちた
遠めの音で収録されており、音像も若干左側にズレたまま収録されています。

また「Larks' Tongues In Aspic - Part U」の音飛びは本作にもあり、
全く同一の箇所で音が一瞬飛んでいます(本作では00分54秒付近)。

この日は4人編成になっての73年第一回目の演奏ということで、後の73年公演や
72年後期の各演奏と変化を比べる基点にもなっているので、研究・資料的な
意味合いが高い音源だと思います。従って、もし選べるなら少しでも音の良い
『LIVE IN GLASGOW 16.3.1973』を選ぶ方が良いと思いますが、上記した通り
本タイトルのメイン音源は同73年4月8日のチューリッヒ公演なので、
ひとまずどちらも音を聴きたいという人には有難い一枚だと思います。

音質72点。
2CDR。
『THE BUBBLE'S BURST』 / (PF-347D @ PeaceFrog)
Live at :
Disc1〜Disc2-(1)〜(3) : Orpheum Theatre, Boston, Massachusetts, USA. / 1973. Sep. 23
Disc2-(4)〜(7) : Rainbow Theatre, London, England. / 1973. Mar. 18

2枚組のディスクで、Disc2-(4)〜(7)に3月18日公演が収録されています。
Disc1〜Disc2-(1)〜(3)は同1973年9月23日のボストン公演が収録されているので、
そちらは9月23日公演の欄を参照して下さい。

という訳で、ボーナストラック扱いで僅か4曲のみ収録されたこの日の演奏ですが、
陰鬱で湿った印象のあるこの時期独特の「Book Of Saturday」は終曲部分が
そのままインプロヴァイズされるという72年後期〜73年初期の典型的な演奏形。
まだまだジェイミー在籍時の面影を色濃く残しています。
このインプロは冒頭からやや牧歌系・幻想系イメージのアプローチで始まりますが
直ぐにベースがブビバビと主張を始め(^^;)、ウエットン+ビルのリズム隊=混沌系と
フリップ+クロスのメロディ隊=幻想系で音の対話をしている様な印象があり、
どちらが勝つという訳ではないけれどその対話が延々と続いてゆく様子が大変面白いです。
お互いにちょっかいを出し合い、それが反応して次のちょっかいが始まり、次第に
それが形になってゆくという興味深いインプロだと思います。

そのインプロ終曲付近でビルが主張を始めると、途端に曲は「The Talking Drum」へ変化。
コンガ(?)っぽい音で呪術的なリズムを刻み、ベースが呻り始め、ヴァイオリンが絡み、
やがてギターが歌い出す・・・という音の色彩の重ね方がいつもながら見事です。
「Larks' Tongues In Aspic - Part U」は演奏に炸裂感があり、生き生きとしたビートに
乗ってグイグイ進んでゆくような鮮烈なパフォーマンス。曲想を見事に開花させた
優れた演奏だと思います。

音質54点。
2CDR。

※ボーナス扱いで僅か4曲のみの収録なので、当然ですが不完全収録音源です。
『BREATH OF YESTERDAY』 / (PF-282D @ PeaceFrog)
Live at :
Disc1+Disc2−(1)〜(5) : Town Hall, Leeds, West Yorkshire, England. / 1973. Mar. 22
(*Disc2−6〜7) Coliseum, Cape Cod, Massachusetts, USA. / 1974. June. 26

春のツアー初期の様子をよく捉えているタイトル。
Disc1〜Disc2−(5)までがここで紹介する73年3月22日の音源です。

冒頭の「Doctor Diamond」はまだスロー・・・というかミドルテンポ気味。
ヴォーカルの拍も所々奇妙なタイミングで歌っており、聴いていてやや違和感を受ける箇所もあります。
しかしそのウェットンのベースラインは素晴らしく、ベースラインがよく録れているだけに
細かな音の動きが追えて気持ち良いです。
「Larks' Tongues In Aspic - Part T」は強烈。ほぼアルバム通りの演奏ですが、
アンサンブルが見事なうえに演奏にキレがあり、実に力強い曲想で披露しています。
「Easy Money」は中間部の歌詞無しのパートが少し即興によって引き伸ばされていますが、それはまるで
アルバム以上の音の生命力を吹き込んでいるかの様であり、音楽の力強さというものを感じる事が
出来る素晴らしいテイクです。

その「Easy Money」の終わりと同時に雪崩れ込む(5)のインプロはウェットンのベースが
主軸になっている牧歌的な曲想。ベースのチョーキングと和音の見事なラインで
序盤からウエットンがこのインプロをリードしてゆきます。4分台から徐々にクロスのヴァイオリンが
切り込んできて6分20秒辺りから曲想が変化しますが、その途中で人の叫び声(たぶんウェットン)が一瞬入ると、
途端に曲は72年後期の様な混沌としたイメージへ。そしてそんな混沌とした音の彼方から
次の「Exiles」の冒頭メロディーが自然に出てきて、いつしか狂音→流浪の美旋律へと
スムーズに曲が移ってゆく辺りはなかなか聴き応えがあります。

Disc−2に移っても素晴らしい演奏が続きます。
「Book Of Saturday」はメロディの物悲しさがよく伝わってくる73年っぽい演奏。
そのコーダ部がそのまま展開してゆく(2)のインプロは冒頭からフリップのギターが
主軸に進んでゆきますが、彼の手癖なのか69年12月のフィルモア公演でよく聴かれた
初期のフリップ独特のフレーズが冒頭で時折り顔を覗かせています。これにウエットンの
ズビバビと呻るベースラインが徐々に絡んでゆく立ち上がりですが、5分05秒を過ぎた辺りから
クロスとビルの活躍も目立ち始め、4人がそれぞれの出方を見合わせながら爆発しそうで
しないというユニークな展開へ。最終的にはそれが「The Talking Drum」のメロディへ
変化してゆきます。

その「The Talking Drum」はクロスのヴァイオリンが非常にアクセントの強い色彩感を
放っており(特に4:00秒付近から)、「Larks' Tongues In Aspic - Part U」は
序盤からウェットン+ブラフォードのリズム隊とクロス+フリップのメロディ隊が
渾然一体となったド迫力のアンサンブルを披露(3分54秒からのクロスのヴァイオリンは
かなり強烈なインパクトがあります)。このエネルギーはそのまま
「21st Century Schizoid Man」にも引き継がれ凄まじいエネルギーで音楽が爆発。
特にここでのビルのドラミングはこの日最強のパフォーマンス(特に6分59秒〜終曲まで凄いよ)だと
思いますし、4人のアンサンブルも完璧で音の塊がうねる様な生命力が感じられて素晴らしいです。

但し、音質は30〜39点。
演奏が進むにつれて少しずつ改善されますが収録音は基本的にこもっており、演奏音も遠く、
MCも殆ど聞き取れず、しかも困ったことに終始「キュルキュルキュル・・」と、恐らく
録音時のデッキ自身が発していると思われるリールのモーター回転音(だと思う)まで
録音されてしまっているので、これが終始耳障りで音質は最悪の部類です。
しかしそんな劣悪の音質の中から素晴らしい音楽が聴こえてくるのもまた事実で、
音質の悪さと音楽の豊かさは全く関係ないと改めて実感させてくれる一枚だと思います。
2CDR。

『CHAOS IN THE STREETS』 / (PF-179D @ PeaceFrog)
Live at : Winter Gardens, Bournemouth, Dorset, England. / 1973. Mar. 24

フリップやウエットンが少年時代を過ごしたドーセットでのライブ。
地元ということで冒頭の「Doctor Diamond」から伸び伸びと演奏を愉しんでいる様子が
伺えます。この日の「Doctor Diamond」もまだ若干スローテンポで、奇妙な節回しで
披露されているのが伺えます。続く「Larks' Tongues In Aspic - Part T」は
なかなか攻撃的な演奏で、特にベースソロが入る中間部以降の曲想に72年後期のイメージを
色濃く残していると思います。そしてこの(2)と(3)「Easy Money」の間のMCでは
他の公演地よりも長めの、親近感溢れるオーディエンスとのやり取りが聞けて
ちょっと微笑ましい箇所アリ。(^_^)「Easy Money」のウェットンの歌メロは
「Doctor Diamond」同様にこの日ちょっと変わった節回しで歌っているという
珍しいテイクで、初めて聴くとちょっと不思議な感じがすると思います。

そしてこの日最大の聴き処が(4)のインプロ。ベースが終始ミュート気味で奏でられており、
そのミュート気味のベース音が細やかなビートで次々と音に彩りを与えているという
ユーモラスなものなんですが、このインプロ中、ベースのフレーズが激しく静かに
揺れ動きながら出てくるのが何と後の「Fracture」のメインテーマ。
2分29秒付近から少しずつそれっぽくなり始め、3分22秒以降はかなり音形が近くなってきます。
まだまだ断片的で原石の状態ですが、これは非常に興味深いテイクでしょう。
そしてこのまま約8分近くにも渡って「Fracture」の初期形態が披露されています。
ギターのメロディはもちろん、ベースラインもそのまんまのフレーズが荒削りのまま
飛び出してくるので非常に面白いです。そしてこのインプロはいつしか「Exiles」のフレーズに
変形しておごそかに「Exiles」が始まってゆくのですが、これは研究資料として非常に
価値が高いテイクだと思います。勿論、その「Exiles」も素晴らしい演奏です。

そしてDisc2−(2)のインプロでは、何と冒頭で1stアルバム『クリムゾンキングの宮殿』に収録の
インプロ曲「The Dream And The Illusion」に酷似したフレーズが冒頭でちょこっと顔を出します。
その後のフレーズも69年テイストに溢れたインプロヴァイズが展開しており、
特にビルのドラムはマイケル・ジャイルズのスタイルを意識してるのか、そっくりです。
5分05秒付近から曲想が一転し、ギターが目立ってきてファストなフリージャズっぽくなるのだけど、
その間ずーーーっとウエットンがドスの効いたベースを弾きまくっていて非常にカッコイイです。

「Larks' Tongues In Aspic - Part U」は冒頭00分37秒付近で編集作業の痕跡らしきものが
あると思うんですが、これ気のせいかなぁ?(音がズレている様に感じる・・・)
でも演奏そのものは力強い見事なもので、特に中盤以降は非常に聴き応えあります。
ラストの「21st Century Schizoid Man」も強烈。冒頭から凄まじいアンサンブル音の塊で始まり、
ウエットンの声の伸びも素晴らしく突き抜けており、中間部で聴けるギターソロもネジが飛んでて
良い感じで、とてもスケールの大きな音楽を聴かせてくれます。(^_^)

音質ですが、マスターテープ劣化のせいかDisc1-(1)(2)が50〜60点。
それ以降徐々に良くなってDisc(3)〜Disc2終了までが75点〜81点という感じでしょうか。
そして2CDR・・・なんだけど、Disc1が約47分25秒収録で、Disc2が33分11秒。
ギリギリでディスク一枚に収まらなかったみたいですね。

1973年 第一次ヨーロッパツアー (3月30日〜4月9日)

『LARK'S TONGUES IN DUSSELDORF』 / (KC-4173 ※This is a Bonus Gift item 2CDR of a Bootleg CD Shop)
Live at : Rheinhalle, Dusseldorf, West Germany. / 1973. Apr. 1

2013年11月15日(金)〜11月19日(火)の期間に、西新宿の某ブートレッグCD
シッョプでCD2点以上買うと特別ボーナス特典として貰えたギフトタイトルCDR。
これまで長きに渡って1タイトル1ソースしか存在しなかったこの日唯一の記録音源
『LARKS' TONGUES IN PUSSELDORF (※下段↓で紹介)』のリマスター版とも言うべき
内容となっています。

「Larks' Tongues In Aspic Part I」は冒頭の弱音導入部分から収録されており、
曲の立ち上がりのドラマティックな様子がよく伝わってきます。中盤のベースソロ
では楽曲から解き放たれた縦横無尽な旋律が元気に荒れ狂っている様子がよく分かる
と思いますし、そのベースソロ最終音はスライドで音型を下げて締め括られ、それを
引き継いで現れてくるヴァイオリンの旋律の繋ぎ方もこの日独特だと思います。
終曲後にフリップのMCが流れますが、それを聴くとどうやらこの日はオープニング
として「Doctor Diamond」をプレイしていたらしく、この1曲目「Larks'〜Part I」は
本当はこの日のセカンド・ピースとして披露されていた事が伺えます。「Easy Money」
は歌詞1番〜2番の後ろで鳴るギターが控え目で、演奏自体もスタジオアルバムのそれに
かなり近いタイプのもの。これは73年の演奏でたまに出てくるパターンのひとつですね。
中間インスト部のドンヨリしたイメージも独特ですが、5分00秒付近からリズムが一瞬
だけ運動性を増すシーン(※これは74年の演奏で特に顕著)も特徴あると思います。
更にこの日はその後の楽想がうねり始め、やや歪んだイメージを引き摺ったまま
歌詞3番が始まってゆくシーンも印象深いと思います。トラック(4)のインプロは、
約15分もある長大な音楽対話が記録されています。出だしは各メンバーどういう
方向性で行くか少し戸惑っている様なシーンもありますが、軽めのベースソロの様な
フレーズが出てくると徐々に音楽の方向性が姿を現し始め、ヴァイオリンが積極的に
それと絡み出し、暫くはベースとヴァイオリンのツイン・リードで即興が紡がれて
ゆきます。やがてギターが前面に出てくると(※4分39秒付近〜)、リズムも明確に
現れ始めてきますが、ここで非常に面白いのは「Guts On My Side」に移行しそうで
しない、大変もどかしい展開が聴けることでしょう。この約1分半のシーン(※4分39秒
付近〜6分00秒付近)は大きな聴き処だと思います。

この特徴的なシーンの後は再びリズムが姿を消し、混沌から音楽を掴みにゆくシーンが
ありますが、興味深いのはこの後でリズムが現れては消えるというシーンが続くこと
でしょう。具体的にはまず8分58秒付近。ここでリズムが止まると瞬時に音楽がどこかへ
消え、歌っているのはロングトーンで鳴らしているフリップだけとなります。ここは
どこかリズム隊にフリップが遊ばれて晒し者にされている感もあり、「すまんすまん(^_^;)」
という感じで再びリズムが出てきますが、再び9分58秒付近でリズムがブレイクし、
リズムに被っていた音の対話が剥き出しになるシーンが顔を覗かせています。
このブレイクポイントを境にして曲想が急速に混沌化し始め、歪んだメロトロンが
突発的に重なり、楽想が一転して怪奇系のサウンドへ生々しく変質してゆきます。
つまるところ、この部分はこの時期のクリムゾンの核であったリズムの有無によって
音楽が大きく姿を変える様子が報告されているわけで、ここは当時のクリムゾンを
象徴する非常に印象的なシーンだと言えるのではないでしょうか。続く「Exiles」は
歌詞2番が終わってから始まるブリッジ部分(※00分48秒付近〜)で、ヴァイオリンが
ロングトーンで鳴り続くという非常に特徴的なシーンがあり、ここから更に音楽が
高まってゆく中間部は素晴らしい煌きを放っていると思います。後半のギターソロの
旋律や終曲手前で入ってくるハーモニクスも抑制の効いた音でしっかり鳴らされており、
こうした大きな流れの中でも弱音がきちんと表現される全体音の対比にも注目でしょう。

ここからはDisc−2。「Book Of Saturday」は短めで、終曲部のアルペジオが暫く
続いた後にそのままインプロへ雪崩れ込むという72年後期のイメージが色濃く感じ
られるものをこの日も踏襲しています。歌唱の後ろで展開する各楽器の弱音の細かい
動きとコラージュ感は格別な色彩感があり、こうした弱音表現は当時のクリムゾンの
大きな魅力のひとつでしょう。静かな音色の中に際立つ調和が感じられると思います。
トラック(2)のインプロは序盤からヴァイオリンが印象的な旋律を伴って主導権を
握っており、どこか「Trio」に似たイメージがあって面白いですね。やがてそれが
どこかへ消えてゆくとスネアとバスドラムがリズムを主張し始め(※3分37秒付近〜)、
暫くドラムソロの様なシーンが出てくるのですが、これはかなり珍しいシーンだと
思います。この後、ギターが音色をスライド下降させるアプローチを起点
にして(※8分02秒付近)、ベースもそれに合わせて何度かスライド下降させるという
面白いカノン(反復)が出てくるシーンも登場し、これも聴き処でしょう。リズムが
刻み始まる10分11秒付近からはベースが高低で2音を交互にはじき出しますが、突然
ドラムがリズムを刻むのを止めると、この残されたベースの2音が実は"あの旋律"の
動機となっていた事が分かります。そう、「The Talking Drum」の動機となる
あのベースラインの原型だった訳です。このシーンは即興が音楽を産み落とす
興味深いシーンと言えるんじゃないでしょうか。

この「The Talking Drum」ですが、重苦しい序盤からどこか危険な音の香りが漂っており、
冒頭で約10秒間に渡って入ってくるギターの歪んだノイズ(※00分24秒付近〜34秒付近)も
何かの警告音の様に感じられる不気味なイメージを伴っています。そこから引き継がれて
ゆくヴァイオリンも中近東の呪術的な旋律で待っていて、静かな中に従順ではない音楽が
蠢いている感じが非常に印象的です。「Larks' Tongues In Aspic Part II」はこの日
序盤から不響音が色濃く出ている演奏となっており、まるでサウンドが四方の壁にぶつかり
ながらもがいている様な、ゴツゴツした無骨な推進力がこの日の演奏の大きな魅力にも
なっていると思います。コーダで収束した全体音も音楽の大きさが強く感じられますね。
「21st Century Schizoid Man」も全体音のダイナミックな響きと楽曲の推進力が素晴ら
しい相乗効果を上げていると思います。歌詞2番の後であまり溜めを"効かさずに"すんなり
中間部に入ってゆく様子も面白いですね。その中間のインスト部もロングトーンを多用した
攻撃的なギターが終始鳴っていて、濃密な演奏とサウンドの揺れ動きが心地良いです。

音質39点。
この日の音源は、マスターテープ収録時の録音クオリティの低さが本作でも根本的に
残っていると思います。アナログテープ特有のヒスノイズも多めですが、しかしこれを
低減すると余計に音が奥まって聴き辛い音質になりそうな気配が感じられる収録音なので、
たぶんこのソース音源の洗浄と調整は現時点でこれが限界なのでしょう。でもメーカーの
音質改善努力によって既発音源と聴き比べると音質が随分と改善されているのが分かると
思います。既発では終始左寄りだった音像が中央に固定された事で聴き易さが大きく
増していますし、若干低かったピッチが正常に修正された事で音の品質も増しているのは
特筆されるんじゃないでしょうか。また、振り分けが未熟で扱い辛かったチャプターも
きちんと振り分けられているので、ディスクの操作性が増しているのも良いと思います。
2CDR。
『LARKS' TONGUES IN PUSSELDORF』
Live at : Rheinhalle, Dusseldorf, West Germany. / 1973. Apr. 1

Disc−1
1.Larks' Tongues In Aspic - Part T
2.Easy Money〜Improvisation
3.Exiles

Disc−2
1.Book Of Saturday
2.Improvisation
3.The Talking Drum
4.Larks' Tongues In Aspic - Part U
5.21st Century Schizoid Man

※新譜のCDレビュー用に雑誌beatleg編集部から送られてきたコピー音源(CDR)のみを持っているので、
ジャケの画像はありません。この欄に書いてある記事はそのコピー音源を聴いてのレビューですが、
実際の製品をそのままCDRに落としてあるものなので、音質面等は実際の製品と同じです。

上段↑で紹介している『LARK'S TONGUES IN DUSSELDORF (KC-4173)』と同内容。
使用されているソース音源も同一の物が使われています。但し本作は
全体の音像が左寄りに収録されており、ヘッドホンで聴くとサウンドの
バランスの悪さが非常に目立つタイトルで、ピッチも若干低めです。
またチャプターの振り分けも不充分で、「Easy Money」は冒頭にフリップのMCと
チューニングが入っているので実際に演奏が始まるのは何と2分近く経過してから。(^_^;)
しかもその後のインプロもチャプター分けされていない為、このDisc1-トラック(2)
は26分33秒という長大なトラックになってしまっています。

音質も悪く、本作はクリムゾンの全ブートレッグ音源中でも屈指の極悪音質の部類に
入るタイトルです(T_T)。これは基本的な収録音の悪さ・録音技術の低さもありますが、
前記した通りサウンド全体が左寄りに収録されているので、ただでさえ酷い収録音が
より一層聴き辛い音像で聴こえている事が大きな要因になっていると思います。本作や
『LARK'S TONGUES IN DUSSELDORF (KC-4173)』で使用されたソース音源がどれだけの
ジェネレーションを重ねているかは知りませんが、でも恐らく、この音から察するに
オリジナルのマスターテープに収録されている音もそれほど良い音では録れていない筈です。

・・ところで、何故本作のタイトルは『LARKS' TONGUES IN "P"USSELDORF』
なんでしょうか?2013年11月12日にアッパー版として出た『LARK'S TONGUES IN DUSSELDORF』も
何故か『LARK" ' "S TONGUES IN DUSSELDORF』(※カンマの位置がずれてます。正しくは
"LARKS' TONGUES..."である筈)となっていて、不思議です。どちらも単純に誤植なのか、
それとも意味があってそうしているのか、ちょっと謎ですね。

音質15点。
聴き終えるのに忍耐と根性が要る一枚なので、ハードコレクター以外は
手を出さない方が賢明でしょう。(^_^;)
でも音楽は極上です。
2CDR。
『SINDELFINGEN 1973』 / (※ Special Bonus CDR for 1st set of "MOTHER OF DECEIT"(Virtuoso 003))
Live at : Austelungushalle, Sindelfingen, GERMANY. / 1973.Apr.2

74年の項で紹介している『MOTHER OF DECEIT (Virtuoso 003)』の
初回プレス盤に>付属していたボーナスCDR。

冒頭(1)のインプロは途中からのフェイド・イン。恐らく「Easy Money」の
演奏後半から雪崩れ込んでプレイしたインプロと思われます。
お馴染みの定型フレーズ(後の未発表曲「Guts On My Side」)が印象的なんだけど、
この日は何度も何度もアプローチを変えつつこのフレーズを披露しており、
その変幻自在さに驚かされます。一応、曲想が少し変わる箇所でチャプターが
(1)と(2)という様に分けられていますが、演奏はずっと切れ目無く続いていて
合計で約12分間にも渡る極上の即興演奏が収録されています。(2)では
延々と続くギター・カッティングがやたらと目立ってユニークですが、
これといった着地点も定まらないまま次の「Exiles」に繋がってゆきます。

(※↑に書いた定型メロディのフレーズは、2011年にアルバム
『暗黒の世界 / 40周年記念HQCD+DVD』がリリースされたことにより
翌74年の未発表曲「Guts On My Side」であると判明しました。
本作はその「Guts On My Side」の最も初期の形態が聴ける音源です)

「Exiles」は、ウエットンのボーカルアプローチがいまひとつ定まっていない
この時期独特のもの。「Book Of Saturday」も同様で曲のイメージがまだ
イマイチ定まっておらず、浮遊感と不思議な間延び感のある72年後期型の演奏と
なっているのが特徴です。終曲部が不明瞭でそのままインプロに雪崩れ込むという
展開も72年後期型をまだ引きずっている事を伺わせます。

そしてこのインプロですが、冒頭はその「Book Of Saturday」のコーダが
変形してゆく怪奇系のイメージが続きます。途中でクロスのヴァイオリンが
約1分間ほど目立って前面に出てくる箇所があり、そこから他の楽器が次々と
不気味な音とリズムを重ねてゆくという非常に面白いアプローチも聴けます。
このインプロは12分45秒(!)もある壮大強烈なものですが、途中9分55秒付近
からは「Exiles」の主旋律に酷似したメロディーが何度か突然現れては消えて
ゆくという特徴的な箇所もあり、楽曲イメージの集積と拡散方法に72年後期の
イメージを色濃く感じさせるものになっているのが面白いです。

「The Talking Drum」は4分06秒付近でフェイドアウトしそうになってまた
戻るというマスター音源に起因する欠点があります。また極上のアンサンブルと
ビルの即興的なドラミングが随所で炸裂する「Larks' Tongues In Aspic - Part U」も
終演直前の6分07秒付近で突然カット。その上「21st Century Schizoid Man」も
途中からのフェイド・イン収録なのですが、パフォーマンス自体はなかなか
グルーヴ感のある演奏で、結構イケてるのがポイントです。

音質77点。
ショップによる限定配布のボーナスギフトディスク。
1CDR。
『INCREDIBLE SCENES』 / (PF-098S @ PeaceFrog)
Live at : Austelungushalle, Sindelfingen, GERMANY. / 1973.Apr.2

上段で紹介している『SINDELFINGEN 1973 / (Virtuoso-003 Free gift item)』と同内容。
使用しているマスター音源も同じで、本作もショウの中盤から収録されている不完全収録盤です。

但し、本作の「21st Century Schizoid Man」は後半5分10秒付近でフェイド・アウト。
『SINDELFINGEN 1973』は終曲まで収録されています。またこの曲は冒頭も
フェイド・インで途中からの収録となっていますが、このフェイド・インも
『SINDELFINGEN 1973』収録のフェイド・インより約3秒分カットされています。

また「Larks' Tongues In Aspic - Part U」も終曲直前6分05秒付近で
突然カットされていますが、これは『SINDELFINGEN 1973』も同じです。

音質78点。
以上の様な欠点はあるものの、実は『SINDELFINGEN 1973』の収録音より
音像が若干明瞭で近くに聞こえ、透明感もあるのが特徴です。
1CDR。
『RESSIO EMILLIO 1973.4.5』 / (No Label. ※Matrix Number : 5127-IJ-091-LH-20412-B3, 5127-IJ-091-LH-20411-A2)
Live at : Palazzo dello sport, Ressio Emillio, ITALY. / 1973.Apr.5

冒頭「Doctor Diamond」はウェットンのヴォーカルがいつになく
声高らかに歌い上げており、とてもエネルギッシュな演奏をしています。
「Easy Money」はどっしりと腰を据えた演奏ですが、テンポが他日より
遅いうえに中間部のアレンジに手を焼いている印象があります。
「Exiles」冒頭のインプロはなかなか激しいもので、中盤では
ウェットン(だと思う)が自分の弾くベースメロディーに合わせて
"ダッダー、ダラッダー♪"などと口ずさむ箇所もあって面白いです。(^_^;)

また、クレジットはされていないですが「Book Of Saturday」の終演から
インプロが続いていて、この辺りの曲の展開の方法は72年後期と同様です。
このインプロは物悲しいイメージの曲で、クロスが終始寂しげなヴァイオリンを
前面で奏でつつ曲を引っ張り、盛り上げてゆくというもの。但し、急に
フェイド・アウトして終わります。(-_-;)
しかしDisc2−(1)は、恐らくそのDisc1−(5)でフェイドアウトしたインプロの続きが聴けて、
冒頭で直ぐ、後の未発表曲「Guts On My Side」のベース・フレーズが飛び出してきます。
ちなみに2分16秒付近で編集の痕跡あり。

しかしながらこの定型コーダはメロディや進行等が今後の公演中もほぼ全く同じなので、
これはもう即興ではなく、73年初旬のリハーサルで既に作られていた試作曲の断片と
見るのが妥当ではないでしょうか。もしかすると『太陽と戦慄』の収録に漏れた曲だった
可能性もあるし、次の『暗黒の世界』に収録しようとして曲をテストしていた可能性も
ある様に思えます。
※ 2011年、アルバム『暗黒の世界 / 40周年記念HQCD+DVD』がリリースされたことに
より、これは翌74年の未発表曲「Guts On My Side」であると判明。
しかし厳密には、フリップのギター講座の様なビデオ作品
"Careful With That Axe Vol.2 ROBERT FRIPP"の中でも使用されています。

音質29点。
音がモコモコしてこもっているうえに音が少し遠く、曲間のカットも多い一枚ですが、
73年度の公演で披露された数々のインプロの基本骨子がここにある事から、
資料としても研究材料としても意義深い音源だと思います。
2CDR。
『JUMBLE OF LIES』 / (Sirene−120)
Live at : Palatza Delo Sports, Rome, ITALY. / 1973.Apr.6

この日は冒頭から全開。特に「Larks' Tongues In Aspic - Part T」では凄まじいアンサンブルを
聴く事が出来ます。そこから一転して、この日はおとなしい「Easy Money」から繋がるインプロ(5)の
狂的な凄まじさはかなりのレベルに達しています。ウェットンの独特なベースラインが次々と展開され、
後の「Fracture」となる主旋律を随所に散りばめながら凶悪に音を強姦してゆく様子は
筆舌に尽くし難いほどエロティックです。そうしたインプロヴァイズの果てに「Exiles」へ
自然と繋がるこのセンテンスは、恍惚状態になること請け合いのテイクです。

その「Exiles」も実に力強い演奏ですが、中盤から入ってくるギターの印象的なアルペジオが曲の品格を
一層と高めているような印象があります。(8)のインプロは、物悲しいイメージ漂う演奏。序盤はどこか
69年頃のインプロに曲想が似て始まりますが、2分10秒辺りからウェットンの図太いリズムが突然
弾け出し、一気にビート感溢れるお得意の曲想になります。

そしてここでもコーダの纏め方が2日後の4月8日から長く定型化する曲想(詳しくは、
前出の4月5日音源『RESSIO EMILLIO 1973.4.5 / No-Label』の欄を参照を使用し始めて
いますが、この日は昨日の5日同様にギターがまだ散漫な音を騒がしく出していて、
輪郭がハッキリとしていないのが特徴です。
(※2011年にアルバム『暗黒の世界 / 40周年記念HQCD+DVD』で、この定型フレーズが
74年当時の未発表曲「Guts On My Side」という楽曲だと判明。ここではその雛型フレーズが聴ける)
「Larks' Tongues In Aspic - Part U」ではアンサンブルの纏まりがぐっと良くなり、
72年後期のイメージが少しずつ消えてきた事を感じさせてくれる興味深いテイクが収録されています。

音質84点。
2CDプレス盤。
『A BROADER SYMPATHY』 / (217D @ PeaceFrog)
Live at : Palatza Delo Sports, Rome, ITALY. / 1973.Apr.6

Disc−1
1.Doctor Diamond
2.Larks' Tongues In Aspic - Part T
3.Easy Money
4.Improvisation
5.Exiles

Disc−2
1.Book Of Saturday
2.Improvisation
3.The Talking Drum
4.Larks' Tongues In Aspic - Part U
5.21st Century Schizoid Man

※新譜のCDレビュー用に雑誌beatleg編集部から送られてきたコピー音源(CDR)のみを持っているので、
ジャケの画像はありません。この欄に書いてある記事はそのコピー音源を聴いての私的レビューですが、
実際の製品をそのままCDRに落としてあるものなので、音質面等は実際の製品と同じです。

上段で紹介した『JUMBLE OF LIES (Sirene−120)』や、下段で紹介している
『ROME 1973 (5127-IJ-091-LH-22239-A3, 5127-IJ-091-LH-20410-B1)』と同内容。
使用しているマスターも同じです。
本作もまた音質が悪いですが、変にイコライジングを施していない生々しい音なので、
ブート慣れした人ならこちらの音質の方に親近感を抱く人は多いかもしれないですね。
ハードコレクター向けの一枚ではありますが、個人的には好きな音質です。(^_^)

音質76点。2CDR。

『ROME 1973』 / (No Label. ※Matrix Number : 5127-IJ-091-LH-22239-A3, 5127-IJ-091-LH-20410-B1)
Live at : Palatza Delo Sports, Rome, ITALY. / 1973.Apr.6

前出『JUMBLE OF LIES / Sirene−120』や『A BROADER SYMPATHY / 217D @ PeaceFrog』と同内容。
使用しているマスターも全く同じです。しかし本作は極悪なほど音質が悪く、聴き通すには
かなりの根気と勇気が必要。完全にハードコレクター向けの一枚ですな。(^_^;)

ちなみに、Disc1-(3)に「Improvisation - Fracture」というクレジットが見えますが
実際には演奏していません。単にクレジット上のイメージ付けの為の様です。

音質27点。
2CDR。
『VOLKHAUS』 / (Sirene−152)
Live at : Musik AuBer-Kontrolle, Volkhaus, Zurich, Switzerland. / 1973. Apr. 8

非常に興味深い演奏が幾つも収録された73年クリムゾンの大発掘音源。
インターネットのダウロードサイトを介して出現した音源で、
これまではテーパー間でも全く出回っていなかったレア音源です。

この日の「Doctor Diamond」はソツなくプレイ。しかしながら
グルーヴ感に溢れる良いスタートを切っているオープニングです。
「Larks' Tongues In Aspic - Part T」は4人用としてのアレンジがまだ
完成し切っていないこの時期特有のパフォーマンスで、中間部にウェットンの
強烈なベースソロを含んだロングバージョン。曲の冒頭から力強い演奏で
演奏音に芯があり、ウォームアップと呼ぶには過ぎた素晴らしいパフォーマンスで
グイグイ迫ってきます(^^)。フリーフォームな中間部のインプロヴァイズも
実に凄まじいですが、後半のヴァイオリンのメロディとギターのアルペジオが
融合した美しさもまた、この日独特の素晴らしい瞬間だと思います。

そしてこの公演最大の聴きどころが「Easy Money」。フリップのギターが非常に
コミカルでおどけたメロディーを弾いているのですが、あまりのメロディーの
突飛さにウェットンも思わず吹き出してしまい、笑いながら歌っていたりします。
中間部のインストパートでは、今度はウェットンが突飛なメロディーを爪弾くと、
それに呼応してフリップも愉快なメロディでついてゆくといった実にユニークな展開で、
初めてこれを聴いたらこちらも思わずこちらも笑ってしまうこと請け合いです。(^_^;)
しかもこの演奏が見事という他無いほどに素晴らしいものなので、これはファンなら
是非確かめておきたい必聴テイクでしょう。個人的にはこの演奏だけで100点満点です。

この痛快な「Easy Money」から雪崩れ込む(5)のインストは、ヴァイオリンのメロディから
入ってゆく幻想系のサウンドイメージでスタート。しかし3分台を過ぎるとウェットンと
フリップが中心になって進んでゆき、3分20秒付近〜はウェットンの図太いベースソロの
独壇場となり、彼の卓越したメロディセンスとリズムセンスを改めて思い知らされる
瞬間が随所で感じられる展開になります。6分40秒付近から曲想が変わり「Exiles」っぽい
イメージへ変化。やがてヴァイオリンとギターが目立ち始めると10分15秒付近から
グルーヴ感溢れる展開へ移行し、12分00秒付近から「Book Of Saturday」のギター
フレーズがどこからか現れ、そのまま次の「Book Of Saturday」へ突入しています。
このインプロには72年後期の様な陰鬱感は無く、むしろ4人であるからこそ可能な
音の構築を、愉しみながらプレイしているという印象があり、これはまさに
ジェイミーというインスピレーションに溢れた存在を失った彼らが、ようやく
その壁を乗り越え始めたことを音から直に感じられる演奏だと思います。

そしてこの「Book Of Saturday」もコーダ部がそのままインプロへ変化する72年後期型。
このインストは69年のフィルモア・イーストでプレイしていた、60年代の
物悲しい白黒テレビドラマの様な音を想起させる導入部が印象的です。
曲想が変わると今度はお馴染みの定型メロディー(後の未発表曲「Guts On My Side」)が
顔を出し、そのまま一気にコーダへ向かっているのだけど、インプロ中盤〜終曲まで
殆どベースソロと言っても良いほどにウエットンの超絶プレイが前面に出ていて凄まじいです。
またこの「Guts On My Side」ですが、現存している周辺の音源を聴く限り明確な
サウンド・イメージとして方向性が固まったのはこの8日からだと言えると思います。

そしてインプロはもう一つ、「The Talking Drum」の開始前にも披露されていますが
これはのっけから殺伐としたイメージのもので、4人がお互いを牽制し合う様な
緊張感がある曲想が非常に印象的です。これが何と約5分45秒間近くも続いており、
「The Talking Drum」の導入インプロとして片付けるにはあまりにも豪華で
単体でも通用するインプロだと思います。続く「Larks' Tongues In Aspic - Part U」
も強烈。この日は2分27秒付近で音階を素早く駆け下りるベースラインが聞こえますが、
こうしたアプローチもまたカッコイイです。(^^)コーダ部の音の塊・壁がドカーンと
迫って終わってゆく様子も相変わらず見事です。終曲後、普通ならカットして
しまうであろう「Larks' - Part U」〜「21st..」のアンコール待ちの間も
ノーカット収録されており、これまた好感が持てます。

そんなこの日最後の「21st Century Schizoid Man」ですが、これまた
冒頭の第一音から凄まじい立ち上がり。タフでラウドな素晴らしい
パフォーマンスです。また中間部のインストパートでは何と
5分23秒付近〜6分21秒付近までほぼ1分間(!!!)も続く同一音のアンサンブルが
際立って目立つ箇所となっており、終曲部の音を歪めるアプローチとジャンクさも
オリジナルに近いサウンドイメージがあって、ちょっとした聴き処になっていると思います。

なお、Disc2−(1)「Book Of Saturday」の1分53秒付近で部分的なカットがあります。
これは恐らくマスターテープのテープチェンジに起因する問題だと思いますが、
その間約1分間ほどの曲が失われています。
とはいえ、デジタルノイズも無く音質は非常に良好です。
73年の代表タイトルとも言えるファン必携盤でしょう。(^_^)

音質88点。
2CDプレス盤。
『SWISS MADE - Live In Zurich』 / (Blue Cafe−106A/B)
Live at : Musik AuBer-Kontrolle, Volkhaus, Zurich, Switzerland. / 1973. Apr. 8

本作は↑で紹介している『VOLKHAUS / (Sirene−152)』及び、↓で紹介している
『ZURICH APRIL 8, 1973 / (HollyNorth / HN-007-2CD)』と同内容。
使用しているマスターも全く同じで、どれも同一のインターネット音源を
収録したものです。

音源の詳しい内容は上段の『VOLKHAUS』の欄で書いた通りですが、
ウェットンが吹き出しながら歌う実にコミカルな「Easy Money」、
中間部にウェットンの凄まじいベースソロを擁した曲展開がとてもアグレッシヴな
Disc1−(4)のインプロ、そして恐らくこの日からきちんとした形になり、73年度中にしばしば
使用されてゆくことになる定型コーダを持ったDisc2−(2)など、どれも聴きどころ満載の音源です。
曲をきちんと終わらせずにコーダの音をそのままインプロに繋いでゆく手法や、
「Larks' Tongues In Aspic - Part T」のジメジメとした中間部の展開は72年後期の面影を
まだ色濃く想起させますが、各曲が徐々にスッキリと纏められてゆく過渡期の音源として
これほど多彩な内容のステージもまた珍しいと思います。

マスターの音源が『VOLKHAUS』と『ZURICH APRIL 8, 1973』と全く同一なので
どれを購入するかは装丁のデザインや値段等、各個人の好みでしか無いと思います。
しかしどれを選んだとしてもこの優れた演奏内容には大満足すること請け合い。
名音源です。

音質88点。
2CDR。
『ZURICH APRIL 8, 1973』 / (HollyNorth / HN-007-2CD)
Live at (※Disc1〜Disc2-(1)): Musik AuBer-Kontrolle, Volkshaus, Zurich, Switzerland. / 1973. Apr. 8

Disc1〜Disc2-(1)までが、この欄で扱う73年4月8日のチューリッヒ公演。
Disc2-(2)〜(8)は同73年3月16日グラスゴー公演なので、そちらは3月16日の欄を参照のこと。

本作は上段2つで紹介している『VOLKHAUS (Sirene-152)』及び
『SWISS MADE - Live In Zurich / (Blue Cafe−106A/B)』と全く同内容。
マスター音源の入手経路も恐らく同一のダウロードサイトからのものと思われるので、
音質面は全く差が無いです。

「Book Of Saturday」の途中で部分的なカットがあるのも他の音源と一緒ですが、
アンコールの「21st Century Schizoid Man」はDisc1に収録し切れておらず
Disc2の1曲目に収録されています。

マスターの音源が『VOLKHAUS』と『SWISS MADE - Live In Zurich』と全く同一なので
どれを購入するかは装丁のデザインや値段等、各個人の好みでしか無いと思います。
しかしどれを選んだとしてもこの優れた演奏内容には大満足すること請け合いですし、
本作にはボーナス扱いで(と言うより殆どカップリング扱いだけど)、同73年3月16日の
グラスゴー公演も聴けるので、まぁお徳と言えばお徳なのかもしれないですね。

音質88点。
2CDR。
『THE CAVALRY OF DESPAIR』 / (PF-318D @ PeaceFrog)
Live at : Olympia, Paris, FRANCE. / 1973.Apr.9

第一次ヨーロッパツアーの最終日。
下段で紹介している既発盤『TRILOGY (Moonchild Records 930910+930911)』及び
『THE ULTIMATE PARIS (KC-002)』と同内容ですが、『THE ULTIMATE PARIS』は元々が完全収録盤ではなく、
『TRILOGY』にしても何故かこの日のオープニング「Doctor Diamond」が曲順を替えて収録されていたので、
実質的には本作でようやくこの日のパフォーマンスが通常の形で聴ける様になったと言えます。
ただ、この「Doctor Diamond」は終曲後にフェイド処理されており、本当にこの日の音源か
どうかは疑問の余地が残るところ。個人的には他の収録曲と比べた録音レベルの程度や、
日によってパフォーマンスを変えるウェットンの歌い方(特にこの曲はプレイ時期によって
歌詞を早口で歌う時と普通の時がある)から判断して、恐らく同日の音源で間違いないと思います。
まあブートなので、この近辺の別日演奏からこの曲だけを切り張りして収録したという可能性も
決して捨て切れませんが。(-_-;)

ちなみに、本作で使用しているマスターは『TRILOGY』に使用されたものと全く同じマスターが
使用されています。音質は、イコライジングの成果なのか、ジェネレーションが1つ分くらい若い為なのか、
上記の既発盤2種よりも本作の方が明らかにクリアで音質が良いです。

収録内容ですが、まずDisc1−(2)「Larks' Tongues In Aspic - Part T」は、中間〜後半導入部を
凶暴にインプロヴァイズした12分以上も続く超ロングバージョン。とても力強い演奏なうえに、
後半のクロスのソロ付近では音の後ろでフリップがアルペジオを弾いていたりするという珍しい
テイクでもあり、大変聴き応えがあります。
「Easy Money」も中間部で約4分間に渡ってインプロヴァイズをしているという凄まじい演奏。
フリップが病的なフレーズを延々と弾きまくると、ウェットンもそれに合わせてセンスの良いベースラインを
次々とまくし立て、曲の展開はどんどん激しくなってゆくのですが、この部分は実にスリリングです。
Disc1−(4)のインプロは冒頭からクロスの印象的なメロディを奏でるヴァイオリンに導かれてスタート。
そこにフリップのアルペジオ、単音のベースが絡んでゆくスローテンポのインプロですが、
5分34秒付近で曲想が一転し、ビートが効いたものに変化します。
また終曲付近では4月2日頃から披露し始めたお馴染みの定型フレーズ(※後の
「Guts On My Side」の雛型)で締めているのですが、まだ曲を締め括るサウンド・イメージが
固まっておらず、何度も何度もこの「Guts On My Side」の雛型フレーズを繰り返しているのが興味深いです。

Disc2−(2)のインプロは「Peace - A Theme」がそのまま切れずに続いている72年後期タイプのもの。
曲想としては69年9月のチェスターフィールド公演や、同12月のフィルモア公演で披露していたものと同系列で、
フリップお得意の牧歌的なギターフレーズが心地良くインプロヴァイズされてゆきます。
全く邪悪な曲想にならず、終始ピースフルなイメージで曲が保たれているのは、
これも「Peace - A Theme」の一部であり、後半であり、続きだからなのでしょう。
ウエットンのベースラインが「Exiles」っぽいのも面白いです。

しかしその正反対のインプロがDisc2−(4)。不気味な風の音からスタートするそのイメージは
冒頭から邪悪で、呪術的で、不安定かつ黙示的なイメージで、そのまま7分30秒にも渡って
音楽が激しくレイプされまくってゆきます。序盤から何度も印象的に入ってくる
ビルのドラムや鳴り物のアプローチが怖過ぎる。(^^;)
聴き終えると心地良い緊張感と気だるさが残る73年インプロの名演のひとつだと思います。
「Larks' Tongues In Aspic - Part U」は整合感のある力強い演奏。メリハリが効いていて
時にパースペクティヴでもあり激しんですがその一方で丁寧に演奏している印象が感じられ、
ショウエンドを飾るに相応しい見事なパフォーマンスだと思います。

尚、アンコールでプレイしていてもおかしくない「21st Century Schizoid Man」が何故か
未収録なので、本作が本当に一公演完全収録かどうかは不明。ツアー最終日ですし、
前日もプレイしてますし、オーディエンスだって当然期待している曲ですから、
この曲で本ツアーの最後を締めたと考えるのが自然でしょう。

音質89点。
当然オーディエンス収録ですが、かなり音質良いです。
尚、Disc1−(5)は情感たっぷりの好演奏ですが、4分51秒付近で編集作業があります。
2CDR。
『TRILOGY』 / (Moonchild Records−930910)
Live at : The Olympia, PARIS. / 1973. Apr. 9

ジャケに記載された日付は間違い。正しくは4月9日の音源です。2枚組みの豪華限定ボックスセットで、
Disc1及びDisc2−(3)までが73年音源。ただし編集作業によって曲順がかなり入れ替えられており、
セット通りではありません。マスターは、上段で紹介している『THE CAVALRY OF DESPAIR / 318D @ PeaceFrog』と
全く同じものを使用していますが、音質は本作の方が明らかに劣っています。

音質87点。
なお、Disc−2の4曲目以降は83年のスタジオアウトテイク。
2CDプレス盤。
『TRILOGY (...continue)』 / (Moonchild Records−930911)
Live at :
(Chapter 1〜3) The Olympia, PARIS. / 1973.Apr.9
(Chapter 4〜8) STUDIO OUTTAKES, 1983

上段で紹介してある『TRILOGY (Moonchild Records−930910盤)』の続き。
2枚組みではなく、当時はこうしてvol.1とvol.2がそれぞれ単体で売られていた訳です。
・・・うーむ・・・。(^_^;)

音質87点。
2CDプレス盤。
『THE ULTIMATE PARIS』 / (KC-002)
Live at :
(1)〜(6) The Olympia, PARIS. / 1973. Apr. 9
(7)〜(11) O.R.T.F.TV, PARIS. / 1974. Mar. 22

73年の音源はトラックナンバー1〜6まで。
音源自体は、前出の『THE CAVALRY OF DESPAIR / 318D @ PeaceFrog』や『TRILOGY』と同一です。
しかし本作は使用しているマスターに別のマスターを使用していて、
「同じ会場の違った位置で収録」された音質で愉しめるのはちょっと面白いかもしれません。
しかし本作は「ショウの途中から収録の不完全音源」なので、
これもまた完全にハードコレクター向けの一枚と言えるでしょう。(^_^;)
音質も本作の方が悪いです。

音質76点。
1CDプレス盤。
1973年 第一次アメリカツアー/前期(4月18日〜5月22日)
『THE ALLEYWAY INFANTRY』 / (PF-256S @ PeaceFrog)
Live at : Kinetic Playground, Chicago, Illinois, USA. / 1973. Apr. 20

冒頭「Doctor Diamond」はかなり曲想が固まってきた感じで、グルーヴ感も良く
素晴らしいオープニングを飾っているのが印象的。「Larks' Tongues In Aspic - Part T」は
冒頭でビルの激しいドラミングが印象的なロングバージョン。中間部もかなりアヴァンギャルドで、
大変聴き応えのあるパフォーマンスです。またこの日はこの「Larks' - Part T」と、次の
「Easy Money」(3)の間で通常入るMCとチューニング作業が無く、続けてそのまま即座に「Easy Money」を
演奏しているという珍しい展開を聴く事が出来ます。ここではアンサンブルが素晴らしく、
73年らしい魅力的なプレイが炸裂しているのが印象的です。6分12、15、18秒付近で聞ける
ザクザクとグルーヴ感溢れる4人のユニゾンサウンドも素晴らしいですね。

(4)のインプロではこの日も後半で後の「Fracture」となる曲の原石を磨いている様子が確認出来ますが、
この日の「Fractureとなる曲の原石を磨く作業」はさほど長くしておらず、このインプロの大部分は
ウェットンの奏でるドスドスと重たいビートに溢れたベースラインを基本にしながら次々と
曲想が展開してゆきます。コレが実にかっこいい。7分30秒付近からはフリップのギターも
積極的に絡み始め、10分00秒丁度付近から急に「Fracture」っぽくなる。シビレる名演です。(^^)

「Peace - A Theme」の終曲部から雪崩れ込んでく(7)のインプロは、どこかまだ
72年後期の様相をまだ残している様に思います。しかしここでも4月5日から披露され始めた
定型メロディー(※後の未発表曲"「Guts On My Side」"のヒナ型)を終盤で使用し、曲が冗長になる
一歩手前で巧みに曲を締めくくっているのが印象的です。また、この"Guts On My Side"の
部分は他日より若干アップテンポ気味で演奏されているのもこの日の特徴だと思います。

「Book Of Saturday」は、牧歌的アルペジオを奏でるフリップのギターが終曲部を
若干長めにインプロヴァイズしているのがとても魅力的。このコーダ部から続く(9)の
インプロという展開も72年後期を想起させますが、ここではあくまでも「The Talking Drum」に
繋ぐ短い架け橋としての即興になっているのが特徴。とはいえ、ビルが鉄板等を激しく叩く
この導入部は呪術的な印象があり、短いながらも非常にインパクトのあるインプロです。

その「The Talking Drum」も強烈で、導入直後から音と曲想の歪め方が凄まじいのですが、
終曲部を引き伸ばさないやや短めの構成になっているのも実に興味深いところだと思います。
「Larks' Tongues In Aspic - Part U」及び「21st Century Schizoid Man」は
どちらも楽曲のベーシックな演奏の中に力強さを求めた感じの演奏。
特に「Larks' - Part U」中盤でのクロスのソロは凄まじいメロディーで、
非常に迫力のあるインスピレーションをこの曲に与えていると思います。

それにしてもDisc-1序盤の「Larks' - Part T」〜「Easy Money」付近では
録音機の近くでオーディエンスが何かを言い合って口ゲンカしているらしく、
これが終始うるさい。ちゃんと音楽聴けよ・・・こんなに素晴らしい演奏なのに。(T_T)

音質面でひとつ付記すると、これはヘッドホンで本作を聴くと分かるんですが、
聴こえてくる音像が最初から最後までほんの僅かに右側にズレています。
ステレオ+スピーカーで聴く分には全く気になりませんが、
ヘッドホンを着けて近い音で聴いていると若干気になるので
一応付記しておきました。
まぁ、ブートに音の品質を求めるのは全くナンセンスですけどね。(^^;)

それとちょっとマニアックな事ではありますが、
本作及び下段で紹介している『CHICAGO 1973』では実は曲間にカットがある事が判明。
巧く繋いであるので気付きませんし、その部分には観客の声しか入っていないので
べつに無くても演奏を愉しむ上では何の問題も無いのですが、
本作収録の「Larks' Tongues In Aspic - Part T」終演後〜「Easy Money」開始までの"間"と、
「Larks' Tongues In Aspic - Part U」終演後〜「21st Century Schizoid Man」開始までの"間"は、
実は編集されており、それぞれ合計で約3分半ほどの間がカットされています。
これについての詳細は、二つ↓の欄で紹介してる同日音源タイトル
『CHICAGO / SAN DIEGO 1973 (BLUE-179)』のコメントを参照して下さい。

音質80点。
1CDR。
『CHICAGO 1973』
Live at : Kinetic Playground, Chicago, Illinois, USA. / 1973. Apr. 20

Disc−1
1.Doctor Diamond
2.Larks' Tongues In Aspic - Part T
3.Easy Money
4.Improvisation (incl - "Fracture")
5.Exiles
6.Peace - A Theme

Disc−2
1.Improvisation
2.Book Of Saturday
3.Improvisation〜The Talking Drum
4.Larks' Tongues In Aspic - Part U
5.21st Century Schizoid Man
6.Improvisation−Final* (RythmBox Improvisation 1973)

※新譜のCDレビュー用に雑誌beatleg編集部から送られてきたコピー音源(CDR)のみを持っているので、
ジャケの画像はありません。この欄に書いてある記事はそのコピー音源を聴いての私的レビューですが、
実際の製品をそのままCDRに落としてあるものなので、音質面等は実際の製品と同じです。

前出の『THE ALLEYWAY INFANTRY / 256S @ PeaceFrog』と同内容。マスターも
全く同じものを使用しています。音質もほぼ全く同じですが、本作の方が僅かに録音レベルが高く、
ほんの少しだけ基本の収録音が大きな音で収録されているのが特徴です。
なお、Disc2−(6)はボーナストラックで、リズムボックスを使用した73年度のインプロが収録されています。
明確な日付はちょっと不明ですが、これは確かに聴いた事がある演奏なので、
いずれ時間がある時に聴き比べをしたら日付が特定出来ると思いますし、
リズムボックスを使用し始めた9月19日公演以降の73年音源である事は間違いないと思います。

音質80点。

『CHICAGO / SAN DIEGO 1973』 / (BLUE-179)
Live Data (Disc-1) : Kinetic Playground, Chicago, Illinois, USA. / 1973. Apr. 20

2枚組みのブート。
Disc-1にこの欄で扱う4月20日の公演が収録されています。
Disc-2には同1973年6月15日のカリフォルニア公演が収録されていますが、
それはこのページ↓の6月15日の欄を参照して下さい。

という訳でこれもまた4月20日公演を収録したタイトルでして、
上段で紹介している『THE ALLEYWAY INFANTRY / (PF-256S @ PeaceFrog)』及び
『CHICAGO 1973』と同内容。使用しているマスターテープも同じです。
収録音は音揺れ・音割れが結構激しい(特に「Doctor Diamond」)んですが、
音の近さという点では他の2タイトルより本作が一番近く聴こえるのもまた事実。

そしてこれは本作最大の特徴でもあるんですが、
上記他の2タイトルではカットされていた"間"が2つ収録されているのも嬉しいポイントでしょう。
まず一つ目は「Larks' Tongues In Aspic - Part T」終演後〜「Easy Money」開始までの"間"で、
この間約2分程度の"無演奏・無MCの間"が収録されています。
この2分間は観客の声しか聞こえないんだけれども、音を聴いているどうやら
軽い機材トラブルが発生しているようで、本作トラック3(Easy Money)の
0分47秒付近や1分33秒付近でメロトロンかヴァイオリンで軽くチューニング
している音が微かに聞こえます。

二つ目の間は「Larks' Tongues In Aspic - Part U」終演後〜「21st Century Schizoid Man」の
開始までの間。この間も上記2タイトルでは約1分間ほどカットされていて、こちらも同様に
観客の話し声・悲鳴・わめき声しか聞こえないのですが、アンコール待ちの臨場感は
こちらの方が遥かに高いです。

この他にも曲間のそうした僅かな間のカットがあると思うのですが
目立って大きくカットされているのは上記2つの箇所です。
更に付け加えると、トラック(1)で「Doctor Diamond」開始前にSEで会場に流れている
「No Pussyfooting (だと思う)」の音がほんの僅かに確認出来るのも本作のみです。

冒頭に記した他の同日音源2タイトルと比べ、本作は確かに
序盤の音揺れや「ショワショワショワ・・・」という
アナログテープ特有ののヒス音・劣化音が一番聴こえます。
しかしながらそれは特に何も収録音をいじっていない・補正していない
という証拠でもあるわけで、恐らくマスター音源に一番近い音は
実は本作ではないかと思います。
序盤に音揺れや音割れ、テープの劣化音が目立つとはいえ、
よりマスターに近いオリジナルな状態で聴けるという点こそ
本作が評価されるべきポイントでしょう。
劣化音も「Easy Money」付近からは随分解消されますし、
慣れればそんなに気にならないです。

という訳で本音源の個人的評価は、
音質80点+α。
2CDR。(・・・のうちの、本音源はDisc1、一枚分です)

『OKLAHOMA 1973』
Live at : State Fairgrounds, Oklahoma City, USA. / 1973. Apr. 24

1.Doctor Diamond
2.Larks' Tongues In Aspic - Part T
3.Easy Money
4.Improvisation
5.Exiles
6.Book Of Saturday
7.Improvisation
8.The Talking Drum
9.Larks' Tongues In Aspic - Part U
10.21st Century Schizoid Man

※新譜のCDレビュー用に雑誌beatleg編集部から送られてきたコピー音源(CDR)のみを持っているので、
ジャケの画像はありません。この欄に書いてある記事はそのコピー音源を聴いての私的レビューですが、
実際の製品をそのままCDRに落としてあるものなので、音質面等は実際の製品と同じです。

音質はあまり良くないですが、素晴らしい演奏が詰まった公演です。
この日はオープニングの(1)と(2)が非常に素晴らしいテイクです。迫力ある強烈なアンサンブルで、
実に攻撃的な演奏をしているのが特徴。特に(2)は4月公演中のベストテイクだと思います。
(4)はウェットンの図太く見事なベースラインが終始跳ね回る中を、フリップのユーモラスなギターと
クロスのヴァイオリンが絡んでゆく壮観なもの。曲の終盤は、ここでも4月5日から披露され始めた
定型メロディーでコーダを締めくくっていますが、この日は何度も何度も不時着を繰り返しているのが
大変面白いです。

(5)はこの日も情緒に溢れる素晴らしい演奏。(7)のインプロは、クロスの半音階を使った印象的な
ヴァイオリンのメロディーがどんどんインプロヴァイズされてゆくという、不気味でヘヴィな曲想です。
はやし立て、煽る様なビルのドラミングとウェットンのベースも実に効果的で、後半でのメロトロンの
相乗効果も相まって曲を一層とミステリアスで攻撃的なものにしているのが分かると思います。

尚、ジャケには記載されていないのですが、(8)の次は(9)として「Larks' Tongues In Aspic - Part U」を
ちゃんと演奏しています。しかしその「Larks'- Part U」はフェイドイン→フェイドアウトでの収録。
冒頭の約5秒程度が失われており、中間部のインプロヴァイズが終わる5分17秒付近でフェイドアウトして
しまいます。曲中で見事なノイズ・アンサンブルを披露しているだけに、これはちょっと残念です。(-_-;)

音質68点。

『THE MINCER 〜 From N.Y. To Detroit 〜 』 / (KC-002)
Live at :
(Disc−1) Academy Of Music, New York, USA. / 1973. Apr. 28
(Disc−2) Masonic Temple, Detroit, USA. / 1973. May. 8

ディスク1に4月28日のニューヨーク公演が収録されています。
73年の名演奏が2音源入ったブートCD創生期の名盤です。
プレス数も少なく初回生産分だけで打ち切った様で、現在では
全く見掛けないレアブート。音質はどちらも良好で、73年の
オーディエンス録音としては上質の部類に入るのではないでしょうか。
という訳で、ここでは4月28日のニューヨーク公演の模様を下記します。
(Disc−2のデトロイト公演については5月8日の欄を参照して下さい)

「Doctor Diamond」は、バックで奏でるフリップのギターが良いアクセントになっています。
「Larks' Tongues In Aspic - Part T」の演奏は見事なもので、本作は音質が非常に良いので
各楽器の細かな音がよく分かり、ビルが滑らかに奏でる鉄琴や、クロスが囁く様に奏でる
ヴァイオリンがよく聴こえる分だけ、その興奮もまた一段と強いと思います。
また、その「Larks' Tongues In Aspic - Part T」と「Easy Money」の合間のMCで
『いま演奏した曲は、ニューアルバム『太陽と戦慄』からの曲です』と
フリップが挨拶するや否や、会場から大喝采の拍手が起こるのですが、これは当時いかに
この新しい73年クリムゾンと『太陽と戦慄』のサウンドがオーディエンスに歓迎されていたかが
如実に分かるひとコマだと言えるでしょう。

「Easy Money」は後半がインプロヴァイズされており、妖艶な曲想が続きます。
ただし12分07秒付近でフェイドアウト。(4)はそのインプロヴァイズの続きなのですが、
チャプター開始後の冒頭でお馴染みの定型メロディが出てきており、
この演奏でコーダに向かう途中である事が分かるので、(3)「Easy Money」と(4)の間には
少なくとも約2〜3分ほどの時間が過ぎていた事が分かります。
「Exiles」はこの日独特の大変美しい導入部が付けられており、序盤から天上の音楽が奏でられています。
これは素晴らしいテイクです。また、ジャケに表記はされていませんが「The Talking Drum」の導入部で
約2分程度のインプロが入っており、中近東っぽいメロディのヴァイオリンと相まって
「Larks' Tongues In Aspic - Part U」を一層ムード溢れる展開にしています。ラストの
「21st Century Schizoid Man」はビルのドラミングが非常にドラマティックで、
ステージ終盤を最高に盛り上げる好演奏てす。。

音質92点。2CDプレス盤。廃盤。
尚、本作は所々でアナログLP盤特有のスクラッチノイズが入っており、このDisc−1の音源は明らかに
アナログ盤をマスターにしていると思われるのですが、僕はこの日の様子を収めたアナログブート盤
のタイトルが現在も分からないので、マスターにしたブートLPは不明です。また幾つかの曲で
トラックマークが曲の途中に付けられており、そのトラックマーク部分で音が一瞬だけ途切れる事も
付記しておきます。

最後に、Disc−2に収録されているデトロイト公演は、公演日である5月8日の欄に詳細を書いたので
そちらを御覧下さい。
『ORPHEUM'S DIAMOND』 / (※ Special Bonus CDR for 1st set of "NIGHTMARE" (Sirene-175)
Live at : Orpheum Theater, Boston, USA. / 1973. May. 4

73年11月12日の公演を収録した『NIGHTMARE (Sirene-175)』の、初回プレス分に付属していた
ボーナス・ディスク。同一音源の既発盤として、下段で紹介している
『LIVING IN TRILOGY (HIGHLAND HL013#KC1)』というタイトルがあります。
本作も『LIVING IN TRILOGY』も、使用しているマスター音源は全く同一のものですが、
本作の方が明らかにジェネレーションが低い、質の良いマスターを使用しています。
加えて、本作ではその既発盤で難点だったピッチが完璧に補正され、音像が更に明瞭に
なっているうえに音のアタックも本作の方がパンチが効いていて迫力があります。

「Doctor Diamond」の冒頭や後半の「Improvisation〜The Talking Drum」で
音の定位が時々不安定になるのは既発と同じですが、音像が豊かになったことで
イマイチ不鮮明だったインプロ(7)が本来の魅力通りに息を吹き返したのは
特に嬉しい点だと思います。また、細かな音が既発以上に聴き取れる様になった事で、
「Trio」もまた同様にその魅力を再確認出来るのも個人的に嬉しいところでした。

しかし本作で最高の聴きどころとも言えるのは、何といっても「Exiles」でしょう。
この日の流れる様に紡ぎ出されるウエットンのベースラインは極上です。
「Larks' Tongues In Aspic - Part U」での強烈にパーカッシヴなビルのプレイもまた圧巻。
熱気と迫力に充ち溢れたそのドラミングは、この曲を更に高い次元へ押し上げて
特別なものにしている事が一聴して分かります。

最後に、ジャケに記載されているチャプターは途中からズレていて、
セット表記と実際のチャプターは合っていません。
ディスクに記憶されている正しいチャプターによるセットは以下の通りです。

1.Opening
2.Doctor Diamond
3.Larks' Tongues In Aspic - Part T
4.Fripp's MC
5.Easy Money
6.Trio
7.Exiles
8.Improvisation
9.The Talking Drum
10.Larks' Tongues In Aspic - Part U
11.21st Century Schizoid Man

『LIVING IN TRIOLOGY』 / (Highland − HL 013#KC1)
Live at : Orpheum Theater, Boston, USA. / 1973. May. 4

ウラジャケに記載されている日付はデタラメ。
セットリストの組み方や「Larks' Tongues In Aspic - Part T」のアレンジの度合いからみても
74年の演奏である筈が無く、正しくはこの73年5月4日のものです。
上段で紹介してある『ORPHEUM'S DIAMOND (Sirene 175 - Bonus Disc)』がリリース(・・・というか、
配布ですね(^_^;))されるまでは本作がこの日の定番アイテムでしたし、
73年音源を収録したブートの中でもなかなか人気が高かった一枚だったと思います。

『ORPHEUM'S DIAMOND』が配布されてしまった事で、今ではその価値も少し下がってしまいましたが、
しかしそれも限定配布でしたから、本作はまだまだブート屋さんで需要のある一枚なのかもしれません。

・・・ところでこのブートのタイトルですが、
「TRILOGY (三部作)」ではなく『TRIOLOGY』となっていますが、
これはわざと創った造語なんでしょうか?
それとも、単にスペルの誤記なんでしょうか?
謎です。(^_^;)

『KING CRIMSON - MONTREAL 1973』 / (Bonus DVDR - "AMSTERDAM 1973 : JAPANESE BROADCAST")
Live at :
※Movie - Montreal Forum, Montreal, QC. Canada. / 1973. May. 5
※Sound - Audio dubbed from previous night Orpheum Theatre, Boston, USA. / 1973. May. 4
COLOUR NTSC Approx.3min.
Special Bonus DVDR for 1st issue of "AMSTERDAM 1973 : JAPANESE BROADCAST"

『AMSTERDAM 1973 : JAPANESE BROADCAST (No Label)』の初回80枚分に
付属していたボーナスDVDR。このレーベルを扱うショップでは2012年9月にも
同一タイトル・同一内容で週末限定のギフトアイテムとして配布された事が
ありましたが、今回はボーナスDVDとしての再登場でした。

さて、ここに収録されているのは2012年8月末にyoutubeにアップされた映像
『King Crimson - 8mm Silent Footage (1973)』が元になったもの。
ただそれは3分間程度のサイレント・カラーフィルムで、その手元の動きから
「21st Century Schizoid Man」を演奏しているのが分かるものでした。
コメント欄には
「Very rare silent footage of King Crimson performing at the Forum, Montreal 1973」
・・と記されていた為、この無音映像に前日・5月4日のボストン公演の音を
パッチ収録したものがここで鑑賞出来る映像となっているようです(※映像の
5月5日の音源は現時点で存在しない為の処置)。尚、使用された5月4日公演の
ディスクは2つ上段↑で紹介している『ORPHEUM'S DIAMOND (Sirene 175 - Bonus Disc)』
からの収録となっている様です。ちなみにメーカーのアナウンスによると
実際はフィルムが間延びしているらしく、それに音を合わせようとすると
音楽のピッチを下げなければならない為にここでは音程を優先し、映像の
動きをピッチの合った演奏音に合わせて調整したそうです。つまりこの映像は
「正しいスピードでの動き」で鑑賞出来るよう微調整された映像なんですね。
この為、演奏音自体は確かに前日の公演だけど音と映像の動きは完璧に
シンクロしています。

シューティング位置はステージ向かって左側からで、手ブレの殆ど無い
安定した画面で鑑賞出来るのが特徴。経年劣化のせいか画質は僅かに
滲んでいますが、しかし40年前(!!)の民生機で録画した8mm映像としては
保存状態良好だと思いますし、僅か3分間ながらも大変見応えのある映像に
なっていると思います。念のためですが演奏は歌詞2番終了後から突入する
インストパートの途中まで収録されており(ギターソロが始まる付近で
フェイド・アウトしている)、そこまでの4人全員の動きがまんべんなく
捉えられています。時折画面を引いているのでステージ全体の様子も
確認出来るし、インスト部で演奏に絡むタイミングを伺っているクロスの
様子も映っていて興味深いです。

画質79点。音質85点。
1DVDR / ボーナスディスク。
『NEURO-SURGEONS』 / (KC-009)
Live at : Palace Theater, Waterbury, Conn, USA. / 1973. May. 6

冒頭の「Doctor Diamond」は、やや不安定な演奏。この日は立ち上がりがイマイチだった事が伺えますが、
一転して「Larks' Tongues In Aspic - Part T」からは非常に引締まった演奏をしています。
かなりアルバム版に近い演奏ですが、曲の後半でビルのドラムがアルバムとは比較にならぬほど
激しく炸裂するのが印象的です。(^_^)
「Easy Money」は、他日とはベースラインと歌い方が一風変わった珍しいテイク。中間部では若干の
インプロヴァイズ作業が行われていて、ビルのドラムも要所要所で粒の揃った細かな
アクセントを入れており、クロスのメロトロンも相まって実に力強い演奏になっているのが特徴です。
(4)のインプロは、ベースのアルペジオから始まる定形型。クレジットには『Trio』と書かれていますが、
正確には『Trioタイプの曲』といった方が良いかもしれません。コード進行も似ているので、
これも基本の骨組みが或る程度作曲されていた「作曲途中の曲・組み立て途中の曲」かもしれないですね。

「Exiles」ではギターソロにファズが掛けられていて面白いです。中間部からはメロトロンが前面に出て、
曲を更に味わい深いものにしているのもユニークな演出だと思います。尚、この曲は3分29秒〜32秒付近で
マスターテープに起因する音揺れが一瞬あります。(6)のインプロは、クロスのヴァイオリンが
曲を引っ張ってゆくタイプのもの。フリップは最初からメロトロンを弾いていますが、やがてクロスも
メロトロンに変え、2台のメロトロンによる音の洪水が空間を支配してゆきます。また、ここでの
ビルのドラミングが実に素晴らしく、ウェットンのやかましいベースと絡みながら曲はドラマティックな
様相をますます膨らませてゆきます。しかし、「スタジオ版・Easy Money」でも使用されていた
"笑い袋"が笑い始めると曲想は一転し、急激に不安なイメージへと暗転。この辺りの
見事な音の色彩感は、この当時のクリムゾンならではのものでしょう。コーダは、同73年4月8日
チューリッヒ公演や、6月25日セントラルパーク公演の即興でも披露していた定形のフレーズで
締められています。

ショウの最後を飾る「Larks' Tongues In Aspic - Part U」と「21st Century Schizoid Man」も、
この日はかなり強烈な演奏です。「Larks'- Part U」でのリズム隊の即興的なオカズとその音構築は
実に見事なものだし、「21st Century Schizoid Man」はこの第一次アメリカツアー中でも
間違いなく3本指に入る極上パフォーマンスだと思います。

音質85点。1CDプレス盤。廃盤。

『HALFCUT DIAMOND』 / (Highland HL160/61#KC8)
Live at :
(Disc1〜Disc2−(3)) Palace Theater, Waterbury, Conn, USA. / 1973. May. 6
(*Disc2−(4)〜(11)) Civic Auditorium, Santa Monica, CA, USA. / 1973. Oct. 15

ジャケに記載されているデータは間違い。正しくはこの5月6日の演奏です。
本作で使用している音源は、前出の『NEURO-SURGEONS (KC-009)』及び、
後出の『LIVE LARKS (Moonchild Records 930809)』と全くの同内容。
使用しているマスター音源も恐らく同じものです。3タイトルを聴き比べて、
個人的に一番音質が良いと感じたのは『NEURO-SURGEONS』と本作『HALFCUT DIAMOND』
で、正直なところこの2タイトルは音質面で差が無いと思います。

なのに何故本作ではなく『NEURO-SURGEONS』をこの5月6日公演の代表タイトルにしたかと言うと、
『NEURO-SURGEONS』は1CDなのでディスクチェンジをする必要が無く、一公演をそのまま通して
聴けたという点が大きいからです。そのうえ、ジャケの日付けデータにもミスが無かったので、
説明し易く分かり易かったという点も大きいと思います。
しかし、音質はどちらもほぼ同じ(当社比・・・というか、自分比)です。(^_^;)

ブートの世界ではこういう偽装工作がよくあるんだけど、
あんまりいーかげんで面倒くさい編集作業ってしない方が良いよ、メーカーさん。
フェイク作業は多くのファンに嫌われるだけです。(-_-;)

音質85点。2CDプレス盤。廃盤。

『LIVE LARKS』 / (Moonchild Records 930809)
Live at : Palace Theater, Waterbury, Conn, USA. / 1973. May. 6

前出した『HALFCUT DIAMOND (Highland HL160/61#KC8)』及び『NEURO-SURGEONS (KC-009)』と
同じマスターを使用していますが、音質は本作が一番悪く、更には最後の
『21st Century Schizoid Man』が未収録です。(T_T)

僕の記憶では、確か本作が他の2作品よりもリリースが早かったと思うし、
この音源を当時ファンに広めたという意味では本作に一番大きな功労があったと思うのですが、
今となっては残念ながらハードコレクター向けの一枚になってしまいました。

音質83点。1CDプレス盤。廃盤。

『DISINFECTANT』 / (SCKC-7305CD)
Live at : Masonic Temple, Detroit, Michigan, USA. / 1973. May. 8

冒頭「Doctor Diamond 〜 Larks' Tongues In Aspic - Part T」は、3月頃の公演と比べると
表現したい事がきちんと整理された曲想になっているのが如実に分かります。
曲がかなり自分達のものとして消化され、体に吸収されてきたという印象が音から伝わってくる感じです。
この日の「Easy Money」は他日と違って随分と重々しくプレイしており、聴くのに少々体力が要りますが
しかし中間部から後半にかけてのビルとフリップのプレイには煌くものがあり、
終盤の二人の音の絡みはとても印象的です。
また、ジャケにクレジットはされていないのですが、この「Easy Money」の後には
実は約13分近くもあるインプロが続いています。このインプロはフリップ主導で
イメージが創られながら進んでゆくものですが、序盤で聴かれる彼のギターとクロスのヴァイオリンとの
絡みが大変美しいです。印象としてはこの時期特有の"Trioタイプの曲"ですが、後半にビルの
ドラムソロ的なパートがあったりするのが面白いです。

また、コーダ部の演奏はここでも4月5日から披露している定形メロディーのインプロで、
この日もそれを使ってコーダを締めくくっています。(5)のインプロは曲の繋ぎといった感じで、
約3分程度の短いもの。しかし小品ながら創意に溢れたこの即興をショウ後半のスタートとして、
ラストの「21st Century Schizoid Man」までを一気に登りつめてゆきます。
「Larks' Tongues In Aspic - Part U」終盤でのフリップとウェットンのプレイも力強く、
それを維持したまま「21st Century Schizoid Man」の演奏になるのですが、
こでのビルの手数の多いオカズは終始気持ち良いです。

最後に、(1)の「Doctor Diamond」はモタつく印象がかなり無くなり、ようやく通常よく耳にする
この曲っぽくなっているのですが、(2)「Larks' Tongues In Aspic - Part T」との間にカットがある事と、
他のこの日のブート音源では冒頭に「Doctor Diamond」が収録されていないので、
これが本当にこの日の演奏なのかはちょっと謎です。
でも、(2)の演奏後のMCでフリップかウエットンが「Doctor Diamond」と曲を紹介しているので、
ここに収録されているものがこの日の演奏かどうかはともかく、この日も冒頭で
「Doctor Diamond」を演奏していた事は間違いないと思います。

尚、(9)と(10)は日本で限定発売されたCD『A YOUNG PERSON'S GUIDE TO KING CRIMSON』に
収録されていたテイクをそのまま落としています。つまり、(9)はジュディー・ダイブル版です。

音質79点。
1CDプレス盤。
『THE MINCER 〜From N.Y to Detroit〜 』 / (KC-002)
Live at :
(Disc−1) Academy Of Music, New York, USA. / 1973. Apr. 28
(Disc−2) Masonic Temple, Detroit, Michigan, USA. / 1973. May. 8

ディスク2に5月8日のデトロイト公演を収録。
73年の名演奏が2音源入ったブートCD黎明期の名盤です。
上段で紹介している『DISINFECTANT (SCKC-7305CD)』及び、
後述の『GREAT BIBLE (Highland-HL112/13#KC5)』と同内容。
使用しているマスターも基本的には同じ物が使用されています。
(※根本は同じなのだけど、途中で枝分かれした別のテープが
使われているんじゃないかと思います)

しかし本作は冒頭「Doctor Diamond」がカットされており、
「21st Century Schizoid Man」も中盤に差し掛かったところでフェイド・アウト。(-_-;)
また「Book Of Saturday」の冒頭も、ほんの僅かですが本作の方が短かめに
収録されてしまっているのも難です。この辺りの微妙な差は、オリジナル・マスターから
ダビングされたテープが人の手に渡ってゆくうちに生じてきた瑕・劣化、そして
その時その時の持ち主が施してきた編集跡の残滓なのでしょう。

ただし音質は『DISINFECTANT』より本作の方が明瞭(粗々しいけれど)です。
『DISINFECTANT』はノイズ低減の為にイコライジングしたせいか
妙に奥まった角の取れた音で収録されているけれど、
本作は(アナログテープ特有のヒスノイズがあるにせよ)音の輪郭が分かり易く、
粗削りな迫力が備わった音で収録されています。

プレス数はさほど多くなく、噂では初回生産分だけで打ち切った様なので
現在では滅多に見掛けないタイトルになっていますが、もし本作が
完全収録盤だったら間違いなく73年公演のマストアイテムの一つに
挙げられるタイトルになっていたんじゃないかなぁ。
個人的にはブートCD黎明期の隠れた名盤だと思います。

尚、Disc−1に収録されている同73年4月28日のニューヨーク公演は、
4月28日の欄を参照して下さい。

音質81点−α。(←ヒスノイズの分、若干差し引いてます)
2CDプレス盤。
『GREAT BIBLE』 / (Highland-HL112/13#KC5)
Live at : Masonic Temple, Detroit, Michigan, USA. / 1973.May.8

Disc−2の(6)〜(10)が73年音源。
前出の『DISINFECTANT (SCKC-7305CD)』及び
『THE MINCER 〜From N.Y to Detroit〜 (KC-002)』と同内容。
使用しているマスターも根本的には同じ物が使用されているのですが、
しかし本作は『THE MINCER 〜From N.Y to Detroit〜』から直落とししているか、
もしくは全く同一のテープから落とされているんじゃないかと思います。

しかもどの曲もブツ切れなうえにセットの一部しか収録されていないので、
これはもうハードコレクター向けの一枚と言わざるを得ません。
音質は、マスターとして使用したと思われる
『THE MINCER 〜From N.Y to Detroit〜』と同等です。

音質81点−α。
しかしブツ切れだらけなので、収録内容は最低レベル。
2CDプレス盤。

『ST. LOUIS 1973』 / (KC-51273 ※Special Bonus CDR for 1st set of "ATLANTA 1973 【Virtuoso 163】")
Live at : Keil Auditorium, St.Louis, Missouri, USA. / 1973. May. 12

このページの6月23日の枠で紹介している『ATLANTA 1973 (Virtuoso 163)』の
初回納品分に付いてくるボーナスCDRタイトル。下段↓で紹介している同じくギフト
タイトルだった『DAYS OF DIAMOND』で使用されていたものと同じソース(※2012年に
発掘された新ソース。ヒスノイズが少なく「Larks'〜Part II」が最後まで収録され、
「21st Century〜」も終演まで含まれたソースのこと)がこれにも使われていますが、
本作はその既発盤で使われていた2012年版ソースをリマスター収録したアッパー版の
タイトルとなっています。

具体的な改善点としてはまず、『DAYS OF DIAMOND』では全体にやや左寄りだった
音の定位がきちんとセンターに固定されている事でしょう。実際に両音源を聴き
比べてみると、確かに本作の音像は真ん中で左右のバランス良く音が聴こえています。
これは一曲目「Doctor Diamond」ではさほど差は感じませんが、2曲目「Larks'〜Part I」
からハッキリと音の定位の差に違いが感じられ、「Easy Money」に至っては第一音目で
その違いが明確に分かります。以降、ディスクエンドまできちんとセンターに音があり、
ブレの無い安定した音像で聴き通せるのが嬉しいところだと思います。

そしてもうひとつの大きな改善点が、既発盤『DAYS OF DIAMOND』で散見された
右チャンネルの音抜けが丁寧に補修されていること。例えば「Doctor Diamond」に
存在した1分13秒付近〜の右チャンネルのオフが本作では丁寧に補修されており、
きちんと右からも音が出て随分聴き易くなっています。同様に「Larks'〜Part I」も
既発では3分42秒付近〜45秒付近まで欠けていた右側の音が本作ではきちんと聴こえて
いる事も大きいと思います。またそうして丁寧に補修されて生まれ変わった音質により
演奏の魅力もよりダイレクトに伝わってくる様になっていて、この日最大の聴き処
とも言える「Exiles」に至っては音像がセンターに固定されたこともあり、音楽の
しなやかな力強さと空間性が心地良く伝わってきます。特に1分52秒付近から入って
くるヴァイオリンの鮮やかな響きに注目で、実際に既発盤と聴き比べてみるとこれ
まで聴けた響きよりも深く安定した音で旋律が舞っているのが分かると思います。

またトラック(5)のインプロも前半の静かな楽器の対話シーンでの解像度と、
中盤以降の激しい言い争いをし始めるシーン(※リズムが出てくる4分30秒付近〜)の
音の近さが既発で聴けたものより際立っています。一方でラウドな音もよりタフな
音像で飛び出してくる様になっていて、中でも「Larks'〜Part II」の出だしから
発揮される激しい音楽の動きはより力強く迫ってくると思います。ベースラインの
聴こえ具合やコーダで鳴る最終音の爆烈感もこのリマスターの音で聴くと一層の
迫力があって、ボーナスタイトルながらもまさに新定番のセントルイス公演に
なっていると思います。

尚、演奏内容の詳細については↓の『DAYS OF DIAMOND』の欄に書いたので、
そちらを参照して下さい。

音質80点〜82点〜78点。
曲が進むにつれて音質が若干改善・劣化するので、点数も少し幅を持たせました。
最後の78点は「21st Century Schizoid Man」のみで、この曲だけやや音質が劣ってます。
尚、「The Talking Drum」の3分08秒付近〜20秒付近に渡って存在する音揺れは本作でも
相変わらず存在しますが、これは修復が難しいのかもしれないですね。
1CDR。
『DAYS OF DIAMOND』 / (※This is a Bonus Gift item CDR of a Bootleg CD Shop)
Live at : Keil Auditorium, St.Louis, Missouri, USA. / 1973. May. 12

「Doctor Diamond」では開演直後いきなりウェットンのマイクにトラブルが発生しており、
冒頭の数小節分のヴォーカルが抜けています(遠くで微かに聴こえますが・・・(^_^;)。
しかし直ぐにマイクトラブルは解消し、演奏はそのまま続行。いきなりのトラブルにもかかわらず
その後の演奏に全く乱れは無く、素晴らしいパフォーマンスを披露しているのが逆に印象的です。
「Larks' Tongues In Aspic - Part T」は冒頭導入部の曲想表現が際立って見事。
ビルが細かい音を随所で叩きまくってるのも魅力で、ミステリアスなジャンクさが
非常に良く出ていると思います。後半のヴァイオリン・ソロの部分もこの日は
他日の演奏よりゆったりと、たゆたう様に弾いており、スケール感を感じます。

「Easy Money」では中間部のインプロヴァイズでギターとドラムの激しい絡みが絶品。
またこの日はこの曲の終演からインプロへは流れず、間髪入れずに「Exiles」が演奏
されるという珍しい展開を聴く事が出来ます。その「Exiles」は後半部分でウエットンが
声を引き伸ばした歌唱を披露していますが(4分44秒付近〜5分01秒付近)、ここは
他日公演同様に(或いはそれ以上に)彼の声の魅力が素晴らしく滲み出ていると思います。

(5)のインプロはビルのドラムソロから始まるという面白いスタート。
そこにミュート気味の不気味な、速く適当に指を動かしているギターが
暫く絡み、ウェットンとクロスも徐々に参加してきます。やがてフリップは
ギターからメロトロンに移行し、そこから更に不気味な曲想が膨らんで
パラノイア的なイメージが百花繚乱となりますが、「The Talking Drum」の
アプローチが彼方から現れると同時に静かにどこかへ消え去ってゆきます。
「Larks' Tongues In Aspic - Part U」も強烈で、ラウド感のある
図太いアンサンブル音がとても魅力的。後半のヴァイオリンが目立つ箇所も
この日はパラノイア的に弾き狂っておりカッコイイです。
「21st Century Schizoid Man」はラウド感と同時に重量感も際立つ演奏。
凄まじい音の暴力で場を圧倒しながら、まるで重戦車の咆哮の如く終曲しています。

最後に、聴いていて気になった収録音についてのメモを。
「Doctor Diamond」はテープの音揺れがありますが、徐々に音質回復して
「Easy Money」以降はグッと良くなります。メーカーのアナウンスによると
近年(2012年)登場したマスタークオリティ版を使用しているとの事で、確かに
既発の音像よりクオリティが増していると思います。但し、「Doctor Diamond」の
1分13秒付近〜で右チャンネルに数秒間の音抜けがあり、同様に「Larks'〜Part I」の
3分42秒付近〜45秒付近までの約3秒間に右チャンネルの音抜けがあります。
アナログテープの劣化を感じさせる箇所は時折あるものの、その他は概ね良好です。

音質77点〜80点〜76点。
曲が進むにつれて音質が若干改善・劣化するので、点数も少し幅を持たせました。
最後の76点は「21st Century Schizoid Man」のみで、この曲だけやや音質が劣ってます。
1CDR。
『ST. LOUIS MAY 12, 1973』 / (BLUE-085)
Live at : Keil Auditorium, St.Louis, Missouri, USA. / 1973. May. 12

上段↑で紹介している『DAYS OF DIAMOND (Bonus Free Gift Item)』と同内容。
使用しているマスター音源も全く同じものが使用されています。

但し本作はアナログテープ特有のヒスノイズが目立ち、それが終始サーサーと
鳴っているのが難でしょうか。個人的にはこうした粗い音はダイレクトな音像と
して捉えているので好きなのですが、気になる人には耳障りかもしれません。
また、マスターテープの劣化のせいか
「Larks' Tongues In Aspic - Part T」の3分43秒〜47秒まで右チャンネルに
音抜けが発生しているうえ、「Exiles」も冒頭00分13秒〜00分48秒まで右チャンネルが
死んでおり、その間は左チャンネルのみで聞こえます。

音質76点。
1CDR。
『KEIL AUDITORIUM, St.LOUIS 1973』
Live at : Keil Auditorium, St.Louis, Missouri, USA. / 1973. May. 12

1.Doctor Diamond
2.Larks' Tongues In Aspic - Part T
3.Easy Money
4.Exiles
5.Improvisation
6.The Talking Drum
7.Larks' Tongues In Aspic - Part U

※新譜のCDレビュー用に雑誌beatleg編集部から送られてきたコピー音源(CDR)のみを持っているので、
ジャケの画像はありません。この欄に書いてある記事はそのコピー音源を聴いての私的レビューですが、
実際の製品をそのままCDRに落としてあるものなので、音質面等は実際の製品と同じです。

上段で紹介している『ST. LOUIS MAY 12, 1973 / (BLUE-085)』と同音源。
収録に使用されているマスター音源も同じです。但し、本作に使用されたテープは
一つか二つほどジェネレーションを重ねたものが使用されたようで、
明らかに『ST. LOUIS MAY 12, 1973』よりも音質が劣っています。

そして本作の欠点は音質だけでなく、アンコール曲「21st Century Schizoid Man」が
未収録であるという点でしょう。(前の曲の)「Larks' Tongues In Aspic - Part U」が
5分16秒付近でフェイドアウトし、そのままディスクが終わってます。
うーむ・・・(-_-;)

音質76点。
音像が終始センターからやや右寄りにズレて聞こえるのも難点かな。
1CDR。
『A DAY AT THE EDGE OF THE WORLD』 / (Gold Standard-58713XK1-CAT003)
Live at : Club Agora, Cleveland, Ohio, USA. / 1973. May. 14

ジャケに記載されている日付は間違い。正しくはこの5月14日の演奏です。
2曲目のクレジットは正確にはサウンドチェックで、MCと音程調整等をしながら
「Doctor Diamond」に入ってゆくまでのものです。また本作は様々な箇所で編集作業がしてあり、
「Larks'- Part T」、(4)のインプロ、「Larks'- Part U」はフェイドイン、
そして「Easy Money」は頭切れです。更に「(4)Improvisation〜(5)Exiles」と
「(6)Easy Money〜(8)The Talking Drum」は連続しており、
「(7)Book Of Saturday」の前にはインプロを演奏しています。
しかも「(5)Exiles」では4分43秒付近で切り張り、「(10)Larks'- Part U」でも5分20秒付近で
切り張りがされていて、そのうえジャケのクレジットには11曲目として『21st Century Schizoid Man』が
表記されていますが、実際には未収録です。
最後に、本作はラジオショーの音源なので、以上の様な極悪で激しい編集作業があるとはいえ、
一応はサウンドボード音源なのでなかなか音質が良いという困った一枚。
これらを踏まえたうえで、本編の紹介に入ります。(-_-;)

この日はジョン・ウェットンの独断ステージとも言える公演です。
冒頭の『Larks' - Part T』ですが、これが1曲目になるのは前期アメリカツアーの中でこの日が初か、
もしくは前日13日もオハイオで公演しているので、その13日が初だと思います。
その一曲目『Larks' - Part T』は、既に冒頭からウェットンのベースプレイが
地鳴りの如く凄まじいです。曲の中間部など、もうウェットンが激し過ぎて他の楽器が殆ど
脇役になってしまっている感すらあります。(^_^;)

「Doctor Diamond」でも飛び跳ね廻る図太いベースラインが魅力的で、それを実にクロスとフリップが
どうにか絡んでいます。(4)のインプロは、フェイドインして途中からのものですが、ここでも
ウェットンのハイセンスでヘヴィな超絶プレイが炸裂。ここまでくるともう完全にヘヴィ・メタルの
ベースプレイですが、この70年代風の即興ブラストビートを軽々とこなし、しかも大変に色彩豊かな
音の洪水として次々と沸かせるこの才能にはただただ驚くばかりです。
この73年当時、ウェットンは音楽雑誌のインタビューで
『僕はめちゃくちゃにプレイするもんだから、やたらと弦を切ってしまうんだよ。ベースプレイヤーには
珍しいことなんだけどね。(音楽専科 / 1973年7月号)』・・・というコメントを語っていますが、
このプレイを聴けばそれも納得でしょう。
きっと、故クリフ・バートンでさえブッ飛んだに違いない超絶プレイです。(^_^;)

「Easy Money」もド迫力の演奏で手に汗握りますが、「Book Of Saturday」の冒頭で演奏している
インプロがまた素晴らしいです。これはベースのアルペジオと和音を主旋律にした静かなものですが、
ウェットン独特のリリカルなメロディーが次々と即興されて曲を引っ張ってゆきます。
そこからおごそかに『Book Of Saturday』が始まってゆくのですが、それはもう
甘美で物悲しいイメージに溢れて絶品の名演です。
そして「Larks'- Part U」は核爆発。冒頭からウェットンのベース・アクセントが強烈ですが、
4人のアンサンブルが渾然一体となったそれはもう見事と言うほか無いです。
これこそ、クリムゾン版のメタル・アンセムでしょう。
Die! Die! Die!

音質85点。1CD。

『LA-DI-DA』 / (296S @ PeaceFrog)
Live at : Club Agora, Cleveland, Ohio. / 1973. May. 14

1.Larks' Tongues In Aspic - Part T
2.Doctor Diamond
3.Improvisation
4.Exiles
5.Easy Money
6.Improvisation
7.Book Of Saturday
8.The Talking Drum
9.Larks' Tongues In Aspic - Part U

※新譜のCDレビュー用に雑誌beatleg編集部から送られてきたコピー音源(CDR)のみを持っているので、
ジャケの画像はありません。この欄に書いてある記事はそのコピー音源を聴いての私的レビューですが、
実際の製品をそのままCDRに落としてあるものなので、音質面等は実際の製品と同じです。

上段で紹介している『A DAY AT THE EDGE OF THE WORLD (Gold Standard-58713XK1-CAT003)』と同一音源。
使用しているマスターも全く同じで、恐らく『A DAY AT THE EDGE OF THE WORLD』から
落としていると思われます。音質もほぼ同じレベルです。

音質85点。1CDR。
第一次アメリカツアー後期/(6月6日〜7月2日)
『HERITAGE』 / (Sirene-125)
Live at : (Disc−1) The Warehouse, New Orleans, Louisiana, USA / 1973. June. 7

73年・74年それぞれのライブがカップリングされている作品で、Disc−1に73年音源が収録されています。
既発同音源として、73年の方は過去に『BOOK OF SATURDAY (Ayanami−028)』と
『CRIMSON CRIME (KC/CC/70S)』があり、74年分は『VIRGIN MARY (Ayanami−034)』と
『THE MILKY WAY (Peace Frog / PF-156S)』がそれぞれあります。
73年・74年のどちらの音源も、各タイトルのマスターは全て同じマスターを元にしていますが、
音質は今回発売された本作『HERITAGE』が一番聴き易くて良いです。

という訳で、このDisc−1は第一次アメリカツアー後期の2日目の音源でますます曲想の変化が
面白くなってゆく過渡期のライブであり、また1曲目「Doctor Diamond」でウエットンに何らかの問題が
突然生じて、演奏が途中で止まり掛けるというトラブルが起こる事で有名な音源でもあります。
この部分、音の悪い既発盤では歌詞の続きを言おうとして突然発音を止めている様な残響感があり、
ひょっとしてウェットンお得意の歌詞ド忘れだったのではないかと個人的には思っていたのですが、
こうして音の輪郭が明確になった良い音質で聴き直してみると、やはりこれは何らかのトラブルか、
もしくはウェットンがブレイクを狙って意図的にやったのかもしれないという感じがします。
クロスとフリップがトラブルに対処して巧みに演奏を立て直しているのも微笑ましいところです。(^_^;)

「Easy Money」ではフリップのギターのシャープな音色と、そのギター音の切れ味が素晴らしく、
中間部ではビルの静かながらも的確なパーカッションと相まって極上の音空間を披露しています。
(5)のインプロはその「Easy Money」から雪崩れ込むお馴染みの流れで始まるテイク。
序盤は静かですが、次第にブルージーでファンキーなものへと様相を変えて進んでゆきます。
フリップのギターが終始変人的で面白いですが、全体としてはそれほど大きな曲想変化に至らないという、
この時期のクリムゾンとしては或る意味で珍しいインプロだと思います。
2曲目のインプロ(8)は、こちらも4月初旬から演奏され続けているコーダ部のみが定型化された
お馴染みの展開。中盤まではヴァイオリンとギターを主軸に据えたものですが、一定のイメージまで
曲想を広げた後は例の定形コーダを使って曲を締め括っています。
「Exiles」では、朗々と歌い上げるウェットンの声が伸びて素晴らしいパフォーマンスを披露しています。

尚、本作も既発各タイトルと同じくDisc1−7曲目の41秒付近から52秒付近にかけて
マスターに起因する音揺れ・音飛びがあります。ビニール・コーティング(PP加工)されたジャケの
紙装丁もお洒落で、再発に相応しいいい感じの仕上がりになっているプレス盤2CDです。

『BOOK OF SATURDAY』 / (Ayanami−028)
Live at : The Warehouse, New Orleans, Louisiana, USA / 1973. June. 7

上段で紹介している『HERITAGE (Sirene-125)』、及び下段で紹介している
『CRIMSON CRIME (KC/CC/70S)』と同一音源。
各タイトルのマスターは全て同じマスターを元にしていますが、
音質は『HERITAGE』が一番聴き易くて良いです。

『CRIMSON CRIME』 / (KC/CC-70S)
Live at : The Warehouse, New Orleans, Louisiana, USA. / 1973. June. 7

ブートCD最初期に出回っていた音源。
この日の様子を収録したCD音源としては、本作が最古のものでした。
とはいえ、それも今や昔の話。(^_^;)
本作も上段で紹介している『HERITAGE (Sirene-125)』、及び
『BOOK OF SATURDAY (Ayanami−028)』と同一音源。
各タイトルのマスターは全て同じマスターを元にしていて、
音質は『HERITAGE』が一番聴き易くて良く、本作が一番悪いです。

音質78点。1CDプレス盤。廃盤。
『DAY AND NIGHT』 / (Moonchild Records-920304/920405)
Live at :
Majestic Theatre, Dallas, Texas, USA. / 1973.June.9 (1st Show / Disc−1)
Majestic Theater, Dallas, Texas, USA. / 1973.June.9 (2nd Show / Disc−2)

MOONCHILDレーベルの名盤。
このレーベルはブートCDが世に出始めた頃、クリムゾンの優良音源ばかりを
立て続けに出していた事で有名でしたよね。(^_^)
本作の他にも『LIVE LARKS』『TRILOGY』など、リリース数が多いレーベルでした。

本作は、ブートCDが世に出始めた頃(たぶん1992年頃だったと思う)にリリースされたにも関わらず、
同一音源(下段で紹介している『EXECUTIVE ACTION (Sirene-189)』)が2006年10月まで出なかったので、
アイテムとしてはかなり貴重なものでした。
勿論、本作はとうの昔に廃盤になっていますし、その音源的役割を『EXECUTIVE ACTION』が
引き継いだ事によって本作もリリース後15年も経ってようやく引退の一枚になった訳ですが、
そうしたブートCD黎明期からの古いファンにとっては馴染みの深い一枚でもありました。(^_^)

という訳で、本作の詳しい収録内容は下段の『EXECUTIVE ACTION』の欄を御覧下さい。
『EXECUTIVE ACTION』 / (Sirene-189)
Live at :
Majestic Theatre, Dallas, Texas, USA. / 1973.June.9 (1st Show / Disc−1)
Majestic Theater, Dallas, Texas, USA. / 1973.June.9 (2nd Show / Disc−2)

上段で紹介してある『Day And Night (Moonchild Records - 920304/920405)』と
同一音源(マスターとして使用している音源も全く同じ)。
しかし、本作はジェネレーションの低い優良なマスターを使用しており、
更には音割れ等が目立った既発の欠点を丁寧に補っている為、聴き易い音質になっているのが特徴です。

収録内容についてですが、この日は昼の部と夜の部で2回の公演をしている珍しい日という事もあって
ファンには昔からよく知られた公演です。
という訳で、まず昼の部を収録したDisc−1からみてゆくと、この昼の部はウェットンの
ベースラインがラウドに図太く録れていて、ショウ全体のグルーヴ感を高めているのが特徴です。
既発タイトル『Day And Night』では少し目立った音揺れや、ピッチのズレが本作では細かく正されている為に
音そのものは全体を通して既発よりも聴き易い印象がありますが、この音質向上効果によって
セット半ばの「Easy Money〜Improvisation」が既発よりもずっと迫力ある音像で愉しむ事が出来ました。
ビルのドラムもなかなかよく録れていて、冒頭「Larks' - Part T」や「The Talking Drum」では
いつも以上にパーカッシヴでフリーな演奏が粒の揃った音で聴く事が出来る点も心地良いです。

変わってDisc−2の夜の部ですが、こちらも既発と全く同一のマスターを使用しているものの、
音質はDisc−1の昼の部同様に若干向上しているのが嬉しい点です。ショウの内容は、昼の部の後半で目立った
アンサンブルのミスを帳消しにするかの様に、(特にビルが)素晴らしいプレイをしています。
また、ウエットンのベースも昼とは比べ物にならないほど躍動感に満ちて鋭く跳ね回っており、
リズム隊の絶好調な様子が生々しい音で収録されています。更に、この夜の部ではクロスのヴァイオリンも
大変伸びのある音で収録されているので、アンサンブル全体が昼の部よりも色彩豊かな音質になっていると思います。
それから、昼と夜どちらの公演のインプロも面白いのですが、非常に興味深い事にこの日は昼と夜どちらの部のインプロも
この時期頻繁に使用していた定型コーダを使わずに曲を閉めているので、
これはこの時期としては珍しい事だと思います。

会場の都合で時間配分が決められている為だと思いますが、どちらの公演もほぼキッカリ一時間のショウ
(各ディスクのランニングタイムは、Disc−1が54分21秒、Disc−2が60分01秒)なので、
他日の公演と比べると少しボリュームに欠ける思いは残りますが、演奏内容は73年6月公演らしさが満載の
素晴らしいライブなので、聴いた後は心地良い疲労感で包まれます。(^_^;)
音質はどちらも既発に比べて若干向上している程度ではあるけれど、昼夜2回の公演を収録しているという
資料的な意味合いも高く、演奏内容も良好なので、この時期の音源としては屈指のものだと思います。

300枚限定のプレス盤2CD。
『THE RUSTED CHAINS OF PRISON MOON』 / (Highland - HL303)
Live at :
(Chapter 1〜6): Curtis Hickson Auditorium, Tampa Florida, USA. / 1974. Apr. 19
(Chapter 7〜8): "MIDNIGHT SPECIAL" TV-SHOW, Burbank California, USA. / 1973. June. 12

ディスク中、トラックナンバー(7)と(8)に収録された上記2曲のみが73年の音源で、
アメリカでテレビ放送された音源から落とされています。
どちらの曲もテレビ放送の時間枠に合わせた短縮版の演奏で、「Larks' - Part U」は
中間部がゴッソリと省かれており、「Easy Money」も演奏開始と同時にいきなりボーカルが
入ってくるという、どちらも珍しい演奏をしているのが特徴です。

『FROSTBITE』 / (Head - No Numbering CD)
Live at : "MIDNIGHT SPECIAL" TV-Show, Burbank, California, USA. / 1973. June. 12

※新譜のCDレビュー用に雑誌beatleg編集部から送られてきたコピー音源(CDR)のみを持っているので、
ジャケの画像はありません。この欄に書いてある記事はそのコピー音源を聴いての私的レビューですが、
実際の製品をそのままCDRに落としてあるものなので、音質面等は実際の製品と同じです。


上記『THE RUSTED CHAINS OF PRISON MOON / Highland-HL303』と同内容。
音質も殆ど変わりません。

『CHICAGO / SAN DIEGO 1973』 / (BLUE-179)
Live at : Sports Arena, San Diego, California, USA. / 1973. June. 15

2枚組みのブートで、Disc-2まるごと一枚に6月15日の公演が収録されています。
Disc-1に収録の同1973年4月20日のシカゴ公演については、↑の
4月20日のコメント欄を参照して下さい。

冒頭「Doctor Diamond」はフェイド・イン。曲の冒頭1分強程度が失われており、
聴けるのは途中からなんですが、これがのっけからなかなか素晴らしい演奏なだけに残念。
「Larks' Tongues In Aspic - Part T」も素晴らしい演奏。曲の中盤、曲想がフッと変わる
5分27秒付近の展開が何とも魅力的です。
「Easy Money」は割とスタンダードなプレイではあるものの演奏音が生き生きしており、
4分04秒付近から聴けるウエットンのベースラインが凄まじくかっこいいです。
演奏は7分28秒付近で一旦演奏が終りを迎えるのですが、そのままインプロに突入。
ここもまたウエットンの素晴らしいベースラインに誘われて始まるのだけど、
そのインプロ開始直後(7分30秒付近)、いきなりカットがあってインプロ途中から
カット・インで始まるという切り貼り跡。しかしまた8分36秒付近でフェイドアウト→カット・イン
という切り貼りがあり、なかなか萎えます。(-_-;)
しかしながら音を聴く限り、このインプロでは間違いなくウエットンが主導権を握っていて、
終始ズビバビと図太い音でひっきりなしに弾きまくっているのが印象的です。

11分4秒付近では、次の曲で披露する「Exiles」のベースラインに
酷似したフレーズが顔を覗かせるのもユニークです。
13分24秒付近からは定型フレーズ、即ち未発表曲「Guts On My Side」のヒナ形で
終曲してゆきますが、面白いのはコーダ手前でギターがワシャワシャと音を出しつつ、
曲の締め方を模索している様子が伺える点です。6月に入ってもまだまだ
「曲がテストされている段階 (フリップ談 : 1973年)」であることを
色濃く残した興味深いテイクだと思います。
そんなインプロから一転して始まる「Exiles」はこの日も伸び伸びとした
艶やかな楽想が見事に表現されており、聴き応えあります。
「Book Of Saturday」もまた実にムード溢れる素晴らしい演奏なのですが、
マスターテープ劣化のせいか曲の途中、1分28秒付近から左チャンネルのみになります。(-_-;)

ここから続くインプロも左チャンネルのみで始まりますが、このインプロは
ウエットンのベース×クロスのヴァイオリンという組み合わせでスタート。
これがなかなか不気味かつスリリングで非常に緊迫感のある曲想となっています。
5分08秒付近で両チャンネルに復帰し、それと共に二人のバトルは更に激化。
8分22秒付近から曲想が一転し、今度はメロトロンが前面に出てきてサウンドは更に
混沌の度合いを増してゆきます。終盤でフリップはミュート気味の奇妙なフレーズを
延々とかき鳴らしているのだけど、これがとてもユニークです。

「The Talking Drum」及び「Larks' Tongues In Aspic - Part U」は
大変メリハリのあるコントラストの効いた演奏で、ここでもやはり
ウエットンのベースラインが随所でいちいち目立っているのが特徴だと思います。
しかしビルのドラムも頑張っており、リズム隊が際立っているのがよく分かります。
「21st Century Schizoid Man」はカット・インでスタート。冒頭の約2秒ほどが
失われているものの、演奏そのものは力強いグルーヴ感に溢れた好演奏。
しかしながら楽曲中間のインスト部分終了間際(5分15秒付近)でフェイドアウト。
演奏が良いだけに、これもまた凄く萎えますよ・・・(-_-;)

音質79点〜80点。
全体的に若干ピッチが速めで、本文中にも書いた通り片チャンネルになる箇所も
随所で目立ち、バリバリというノイズ音も目立ちます。そしてカット・イン、
フェイドアウトも多く、そこかしこで切り貼りの編集跡も目立っています。
でも、演奏は良いんですよね。特に「Book Of Saturday」から続く
凄まじいインプロはファン必聴だと思います。

2CDR (・・・のうちの、本音源はDisc-2まるごと一枚分です)。

『FALLEN ANGEL / version. A』 (Ayanami-019)
Live at : Community Theater, Berkeley, California, USA. / 1973. June. 16

名門レーベルAyanami製のブート。
ジャケは当時レーベルから依頼を受けた僕が描いてます。ははは。

『version. A』と銘打ったのは、この音源の
マスターテープのダメージによって「Larks' Tongues In Aspic Part U」の
後半部分に3秒程度のカット部分があり、この修復跡を残したまま
初回分がリリースされていたからです。
1ヶ月も経たないうちにこの修復部分を完全に復元した
『version. B』(つまり現在出回っている盤)がリリースされました。
つまり『version. A』は、「Larks' Tongues In Aspic Part U」に
修復跡が残っている初回プレス盤約50枚の事を指しています。

収録内容はブートCD初期の名盤『ASTRAL NAVIGATION』(下段参照)と
同内容ですが、圧倒的に本作の方が音質良いです。
恐らく、マスターテープからの直音しか、ジェネレーションの
かなり若いテープから収録していると思われます。

演奏も音質に負けず素晴らしく、
古典音源としてスタれる事なく未だに輝きを放っています。
特に冒頭の「Doctor Diamond」「Larks' Tongues In Aspic Part T」は
極上演奏です。これはクリムゾン史上でも屈指の演奏でしょう。
他にも「Exiles」、そして何といっても「Larks' Tongues In Aspic Part U」等、
超絶の演奏が続く聴きどころ満載の一枚です。
文句無く、73年の名演奏の1つでしょう。
『FALLEN ANGEL / version. A テストプレス盤』
Live at : Community Theater, Berkeley, California, USA. / 1973. June. 16

1stプレス盤発売前のテストプレスです。
ジャケを提供したので、リリース前のテストプレス盤としてメーカーから戴きました。
ただし、イコライジング処理がversion. Aの発売版とは違っており、
ここに収録されている音質から最終イコライジング調整をして発売した事が伺えます。
また、この盤では「Larks' Tongues In Aspic Part U」のカット部分が未修復のままです。
『FALLEN ANGEL / version. B テストプレス盤』
Live at : Community Theater, Berkeley, California, USA. / 1973. June. 16

version. B・・・いわゆる2ndプレス盤です。
これはそのテストプレス盤。
これもまたver.A同様、メーカーの方に戴きました。
ブート市場で現在一般的に流通しているのはこのバージョンBの方です。
(version. A・B共にジャケは同じです)

このバージョンBは、「Larks' Tongues In Aspic Part U」の部分カットが
全く違和感無く完璧に修復されています。
この修復は見事です。ちょっと聴いただけでは分からないと思います。
『ASTRAL NAVIGATION』 / (KC-90-8077)
Live at :
(1)〜(7): Community Theater, Berkeley, California, USA. / 1973. June. 16
(8)〜(9): BBC Radio Show - Top Gear - / 1969. May. 6

トラック(1)〜(7)が73年6月16日の音源。
上段『FALLEN ANGEL / version. A』及び、下段で紹介している
『BERKELEY 1973 (Sirene-053)』と同内容。ブートレッグCDの
タイトルとしては最初期の古典音源です。音質は決して悪くないですが、
しかし現在改めて比べるとやはり後発の他タイトルの方が数段良いです。
「Larks' Tongues In Aspic Part U」の途中で発生している数秒の
カットもそのままで、『FALLEN ANGEL / version. B』や、その後の
『BERKELEY 1973 (Sirene-053)』が一般化した現在となっては
もはや本当に過去の音源という気がします。

尚、本作には音質の劣る孫コピーの2ndプレス盤、1stプレスを再リリース
した3rdプレス盤、更には1stプレスをリマスタリング処理した4thプレス盤という
音質が異なる4種類が存在します。さすがにそこまで追うほどのハードコア・コレクター
ではないんでバージョン違いの全ては持っていませんが、これらはディスク盤中央の
マトリックスナンバーがそれぞれのバージョンで違っています(※1995年頃、当時未だ
あった西新宿の某ブート屋でそれぞれのバージョンを見せて貰った事があるので確かです。
マト番号のメモ取っておけば良かった・・残念)。

音質83点。
1CDプレス盤。
『BERKELEY 1973』 / (Sirene-053)
Live at : Community Theater, Berkeley, CA, USA. / 1973. June. 16

上段で紹介してきた既発盤『ASTRAL NAVIGATION (SIAE-KC-90-8077)』及び
『FALLEN ANGEL (Ayanami-019)』と同内容ですが、本作はこれらで使用されていた
マスターカセットをダイレクトに使用した一枚です。実際にそれらの既発盤と聴き
比べてみると、素人にも分かる程に音質の差が歴然としていて驚かされます。
本作はこの日のライブの決定盤と言えるでしょう。

またこの音源では、「Larks'Tongues〜PartU」の中間部分にマスターテープの
ダメージに起因する約5秒程度の欠落箇所があった事は有名ですが、本作は
一体どこをどう繋いだのか全く分からない程に完璧で自然な繋がりになっており、
原曲の雰囲気を一切損なう事無く聴けるのも特徴です。
既発盤『FALLEN ANGEL (※ version. B)』でも別の公演から欠落相当部分を繋いで
滑らかに聴き易く仕上げていましたが、本作はそれとはケタ違いの驚異的な修復が
施されており、欠落部分があると分かっている場所を意識して何度も聴き、
ボリュームを上げてアラ捜しをしてみてもその痕跡が全く分からないほど完璧な
修復作業が施されています。

当時のメーカーのアナウンスでは『原音のもつ骨董品のようなリアルなサウンドで収録』
・・となっていましたが、名盤を再発するならこれくらいの仕事をきちんとするという
お手本の様な一枚です。演奏内容もこの6月公演ではトップ3に入るであろう極上の
ステージが収録されているだけに、これはもうこの日の決定版音源でしょう。

音質92点。
1CDプレス盤。
『GOING TO CALIFORNIA』 / (TARANTURA : TCDKC-1)
Live at : Community Theater, Berkeley, CA, USA. / 1973. June. 16

TARANTURA盤という事で期待して買ってみたのですが、音質は上段↑で紹介している
『BERKELEY 1973 (Sirene-053)』と同程度。使用しているマスター音源も全く同じものが
使用されています。但しカットがある事と、ヒスノイズが薄く残っているのが難ですね。

まずカット部分ですが、これはトラック(3)のフリップのMC中にあって、トラックタイム
としては00分11秒付近で確認出来ます。この部分、前記した『BERKELEY 1973』で聴くと
分かるんですが約5秒間程のトークが失われています。何故こんな無意味なカットが施されて
いるのか意味不明。そんなに重要な事とかキーワードを話しているとも思えないんですが・・。

そしてノイズの件ですが、本作は「サーッ・・・」というアナログテープ特有のヒスノイズが
ディスクの最初から最後まで薄っすらと聞こえるんですね。この為、クオリティ的にも一ランク劣ると
思います。ただ個人的にはこの、全くノイズ補正されていない素のままの音質の方が音にシャープさが
感じられて好きなんですが、世間的には補正されて角が取れ、丸みのある上品な音質の方が好まれるの
かもしれません。

それにしてもこの日の演奏は本当に凄いです。何度聴いても聴き飽きないというか、
聴く度に新しい発見があると思います。特に「Exiles」凄過ぎる(T_T)。あと、
「The Talking Drum」開始前の不気味なインプロ。何でしょうかね、この凄まじさは。
そしてそこから強烈なハウリング音と共に「The Talking Drum」が彼方からやってくる様子は
何度聴いても悶絶してしまいます。前後してしまうけど、冒頭「Doctor Diamond」の演奏音の
肉厚さと各楽器のスリリングな音の交差も凄いですし、「Larks' Tongues In Aspic Part I」なんて
冒頭から失禁モノの超名演ですよね。前半のキレの良い演奏と、ベースソロが入ってくる中間部の
パンチのある音のアタックは何度聴いても驚かされます。あぁ、あとこれは他日公演のMCでも時折
確認できますが、「Doctor Diamond」ではなくハッキリ「Doctor D」と言っているのも生々しいですし、
今となっては何だか遠く過ぎ去った時間を感じますよね。(^_^)

音質91点。
1CDプレス盤・紙ジャケット仕様。
『MIGHTY RUSHING SOUND』 / (PF-104S @ PeaceFrog)
Live at :
(Disc-1) Bayfront Centre, St. Petersburg, Florida, USA. / 1973. June. 20
(Disc-2) Studio Rehearsal 1973


凄まじい名演が幾つも詰まった73年の名音源。
Disc-1には6月20日のフロリダ公演が収録されており、
ボーナスディスク扱いのDisc-2には、73年度の
スタジオリハーサルの様子が収録されています。
まずは本編となるDisc-1から。

オープニング「Doctor Diamond」はスピード感・グルーヴ感のある
素晴らしい立ち上がり。曲の途中からハウリング音が鳴り出すので
後半それがやや耳障りですが(終曲後に鳴り止み、その後は解消される)、
演奏そのものは素晴らしいパフォーマンスです。
この日もロングバージョンの「Larks' Tongues In Aspic - Part T」は
これまたスピーディで、音に生命力を感じるパンチの効いた演奏。
曲の序盤(2分30秒付近〜36秒)で"パンパン・・・パンパンパン!!"と
何かの炸裂音がしているのだけど、これ爆竹なのかしら?
まさかパイロでは無いと思うのですが、当時こうした演出が
あったらしいというのが音から分かるだけでも興味深いと思います。
尚、終曲後のMC中でこの日は一曲目を「Doctor Diamond」ではなく
「Doctor D」と紹介しているのも面白いですね。

「Easy Money」はどこか慎ましく、基本的な楽想でプレイしているのが
印象的。中間のインストパートではフリップが単音(ハーモニクス?)で
幻想的な音を装飾している箇所があるのですが(2分47秒付近から聞こえてくる)、
これもまた良い感じだと思いますし、後半6分30秒付近からタイミングを合わせて
チョコチョコと入ってくるスネアの連打も良いアクセントになっていて
大変カッコイイです。

この「Easy Money」終曲後、一瞬間を置いてから始まるインプロは
曲想が静かに立ちあがってゆく導入部から非常に聴き応えがあります。
定期的に入ってくるベースの早い下降音階がカギとなって徐々に
ジャンクな様相を呈してゆき、2分43秒付近からスネアにビートが
効き出して更にラウドなものに変化してゆく様子は絶品。
その先のスリリングなインプロヴァイズも鳥肌モノです。
やがて少しずつスローダウンし、遠くから「Exiles」の
サウンドイメージが浮かび上がってきておごそかに「Exiles」が
始まってゆきますが、この曲もまたこの日は情緒溢れる豊かな
アンサンブルが素晴らしいです。曲終盤の5分31秒付近からギターが
高らかに歌い始めますが、この日のフリップのパフォーマンスは
とてもリリカルで聴き応えがあり、隠れた聴き処だと思います。
同様に次の「Book Of Saturday」でもフリップはアルペジオを
印象的に鳴らしており(2分22秒付近)、終曲部もハーモニクスで
曲を装飾していて、どちらも聴き処だと思います。

そこから続くインプロは約3分程度の短いものですが、
スネアの連打から始まるミステリアスな導入でスタート。
目立つのはドラムや鉄板のパーカッシヴなサウンドですが、
その奥でメロトロンが絶えず冷たく鳴り続けているのも印象的。
やがて「The Talking Drum」に移行してゆくのですが、
この曲の序盤でギターが強烈に音を歪めており(殆どS.Eに近い)、
これが曲後半ではほぼノイズと化し発狂寸前にまで高まります。
そして全体のサウンドとビートが炸裂したところで
「Larks' Tongues In Aspic - Part U」へ突入するのだけど、
ここの部分は恐らく73年度全公演中でも最高ランクの緊迫感が
あると思います。

こうして始まる「Larks' Tongues In Aspic - Part U」なだけに、
その演奏は壮絶そのもの。パンチの効いた凶悪なサウンドイメージを
伴ったまま一瞬の揺らぎも無く最後まで突進してゆくというウルトラ級の
極上パフォーマンスで、ラウドな音の塊が跳ね回り、歪み、
突進して炸裂する様はもう圧巻。ゾクゾクする期待感を終始保った、
まさに言葉を無くすほどの名演です。
アンコール曲「21st Century Schizoid Man」も明らかに別次元の演奏で、
エコー処理されたボーカルで絶唱するウエットンも実に凄まじいですが、
中間インストパートでのギターの暴れっぷりはそれに輪を掛けて強烈。
前述の「The Talking Drum」でのギターもそうなんですが、
この日のフリップは何かあったんでしょうかね?

このDisc-1の音質は80点〜83点。
演奏音は最初のうち若干遠めですが、「Book Of Saturday」の後の
インプロ付近から次第に音像が近くなるので、この位の幅を持たせた
点の付け方が妥当かなと思いました。また、全体的になかなか
透明感のある音質で収録されているのも特筆されると思います。

尚、「Larks' Tongues In Aspic - Part T」終曲後のMC(11分31秒付近〜)から
「Book Of Saturday」の終曲付近まで、収録音像がセンターからズレて
僅かに右チャンネル寄り気味になります。但し、さほど気になる程度では
ありません。また「Exiles」終曲後〜「Book Of Saturday」開始前の
曲間にカットあるのですが、あくまでも曲間のカットですし、これも
さほど気にならないと思います。
2CDR・・・のうちのDisc-1。

========================================================

ここからはDisc-2。
本作のDisc-2はボーナスディスク扱いになっていて、
1973年当時のクリムゾンのスタジオ・リハーサルの様子が
15分47秒間だけ収録されているという、或る意味贅沢なディスクです。(^^;)

音源はジャムセッション的なもので、まずアップテンポで
グルーヴ感のある即興演奏がカットインで途中から収録されています。
ウエットンのベースは似た様なフレーズを繰り返していますが、
フリップのギターとビルのドラムはかなり白熱した音のせめぎ合いを
延々繰り広げているのが印象的。クロスのヴァイオリンも控え目ながら
なかなか良い具合に絡んでおり、これが暫く続きます。
6分08秒付近で一度ブレイクが入り、約一分間ほど何かの話し声がした後、
6分57秒付近からインプロの続きが再開。しかしやがてブツッと途切れ、
7分14秒付近で更にその続きがカットインで始まる→更に8分07秒付近で
再びカットインで続いてゆきます。

この7分14秒付近からの収録部分では同じフレーズを
何度か繰り返し練習しているんですが、何度もそのアプローチを
試しているということは次の様な事が考えられると思います。

(1).
これはこの日のジャム・即興演奏中にたまたま生まれたフレーズで、
「今の部分、もう少し展開してみない?」と、今さっきたまたま
生まれたフレーズをいじっている

(2).
これはジャムの様に聞こえるが、既に基本的な骨組みが出来ていた
(或いは、出来つつあった)73年当時の未発表曲の一部分であり、
この日はその曲を煮詰めている

(3).
これは誰かの○○という曲で、これを軽くプレイしながら
ディスカッションを重ねつつステージ本番前のウォーミングアップをしている

・・・まぁどれが正解なのかは分かりませんが、
個人的には(1)か(2)なんじゃないかと思います。
また、この7分14秒付近からのカッインでは誰かが何かを
喋っている様子がすぐ近くで聞こえており、その会話の内容が
分かるともう少しこの曲の謎が解ける筈なんですが、僕は英語がサッパリ
分からないのでここでの会話が何について喋っているのか理解できません。
(※ヒアリングで聞き取れる方、是非教えて下さい)

少しインターバルを置いた後、10分28秒付近から再びジャム開始。
今度はウエットンの図太くブビバビと呻るベースからスタートしていますが、
やはり上記した(1)〜(3)のどれかと思われる同一の曲の一部分を
繰り返して練習している様です。11分33秒付近からはメロトロンが鳴り出し、
「Exiles」っぽいフレーズのアプローチが始まります。
12分38秒付近からは再びカットインで切り貼りされた音源が入っており、
今度はギターで「Epitph」のメロディを爪弾くフリップの様子が収録されています。
サビの部分では誰かがおどけながら歌詞を歌っているのも面白いです。(^^;)
その後もギターは爪弾かれ、アルペジオ等を交えながら暫く「Epitaph」と
ギターのフリープレイが続き、そのまま15分47秒付近でブツッと途切れて
終わっています。

クリムゾンのリハーサル音源が聴けるのは昔からこの音源のみで、
既発盤タイトルとしては下段で紹介している『EXILES' REHEARSAL / (KC-001)』が
有名ですが、何度聴いても発見があり、謎も深まる興味深い音源だと思います。
収録音の音質も良好です。

音質86点。
2CDR・・・のうちのDisc-2。
『EXILES' REHEARSAL』 / (KC-001)
Live at : Florida, USA. / 1973. June. 20

上段で紹介している『MIGHTY RUSHING SOUND / (PF-104S @ PeaceFrog)』と
同一音源。収録に使用しているマスターも同じなうえ、スタジオリハーサル音源が
含まれている点も同じ。しかし「同じなのに収録がディスク1枚に収まっている」
・・・という事からもお察しされる様に、ディスク1枚に収録するためライブ音源の
殆どの曲間が編集されている(フェイド・アウト〜フェイド・イン)のが難です。

まず冒頭、「Doctor Diamond」が開始されるまでのオーディエンスの歓声が
いきなり約36秒分カットされています。他にも「Larks' Tongues In Aspic - Part T」の
終演後にあるMC(上段で紹介の『MIGHTY RUSHING SOUND』の文中で書いた様に、
この日は一曲目を「Doctor Diamond」ではなく「Doctor D」と紹介しているMCです)も
丸ごとカットされていますし、ほぼ全ての曲間がフェイド・アウト〜フェイド・インの
編集で繋いであります(※演奏そのものは間違いなくこの20日の演奏で、他日のものを
部分的に繋ぐ事はしていない様です。PC上で2つの音源を同時再生して聴き、
収録されている演奏音は全て『MIGHTY RUSHING SOUND』で聴けるものと同一である事を確認済み。
「Book Of Saturday」冒頭で起こるテープヨレも全く同じです)。

スタジオリハーサル音源も『MIGHTY RUSHING SOUND』のDisc-2と同一のもの。
こちらは上記したライブ音源の様なブート製作者による意図的なカット・編集は無いのですが、
本作の方が若干ピッチが速く、結果として『MIGHTY RUSHING SOUND』のDisc-2と比べると
全体で約20秒ほど収録時間が短くなっています。

本作は73年(か、74年。いずれにしてもあの当時の)クリムゾンのリハーサル風景を
収めた音源として長らくブートCDの古典名盤でしたが、マスター音源からノーカットで
収録された『MIGHTY RUSHING SOUND』がリリースされた今となってはその役目を終えた
様な気がします。しかし本作はブートCD黎明期のあの当時、クリムゾンファンには
御馴染みだった名門レーベル"KC"シリーズの第一弾タイトルですから、懐古アイテムとしての
価値はまだまだあるんじゃないかな。プレス盤というのも魅力です。

音質84点。
『MIGHTY RUSHING SOUND』より音の解像度が少し劣っています。また、
全てではありませんが音像が若干左にズレて収録されている箇所あり。
1CDプレス盤。
『THE TALKING RYTHEM BOX』 / (Catfood - CAT1/KC-3)
Live at : (9〜12) Westpalm Beach, Florida, USA. / 1973. June. 21

9.Doctor Diamond
10.Larks' Tongues In Aspic - Part T (Long Version)
11.Larks' Tongues In Aspic - Part U (Cut)
12.21st Century Schizoid Man

本作に収録された音源中、上記の3曲のみが6月公演です。
ジャケットのウラに記載されてた日付は間違いで、正しくはこの6月21日公演の音源です。
かなり断片的にしか収録されていないのが残念な一枚。
尚、トラックナンバー1〜8は73年11月2日の音源を収録しているので
そちらの項を参照のこと。

『ATLANTA 1973』 / (Virtuoso 163)
Live at : Richard's Club, Atlanta, GA, USA. / 1973. June. 23

クリムゾンのブートレッグ史上初のリアル・ステレオ・サウンドボード音源として
2003年に登場した『ATLANTA 1973 REAL STEREO (Sirene-005)』(※1つ下段↓で
紹介)のアッパー版タイトルです。

とはいえただ単に同一マスターの焼き直しとして再発された訳ではなく、後日
僕がメーカーの方に直接伺った話では、本作は『ATLANTA 1973 REAL STEREO』で
使用したマスターとは別のルートから入手した別の上位マスター音源を使っての
製品化だった様です。音を聴くと基本音質に僅かな差が出ているのはこのためらしいん
ですね。また本作は丁寧に音が洗浄されているのも特徴で『ATLANTA 1973 REAL STEREO
(※・・長いんで、以降"既発盤"とします)』では僅かに確認出来たアナログノイズも
本作では丁寧に取り除かれており、音質だけでなくその収録音の品質も一歩リードした
アッパー版に仕立てたと教えてくれました。実際、既発盤と聴き比べてもサウンドの
明瞭感が上がっていると思いますし、既発盤で聴けたサウンドはほんの僅かに丸みがかって
いた事にも気付かされるといます。つまり本作は、サウンド全体がよりシャープでハッキリ
した音像なわけです。そしてこれにより、左右のチャンネルから出て組みあがる音像も
既発盤で聴けた以上に立体的になっている様に僕は感じました。これ、プラモデルで
言い換えると、2個のパーツの繋ぎ目がよりシャープになった事でそのパーツが一層
綺麗に組み合わさる感じに似てると思います。

という訳で本作の聴き処は幾つもありますが、まず最初にこのリアル・ステレオが
特に際立っている2曲について書こうと思います。その一つが「Easy Money」。
ここでは中間のインスト部でメロトロンが漂う中をギターが右チャンネルから
左チャンネルへシフトするシーンがあり、3分55秒付近からは左にメロトロン、
右へ戻ったギター、やや左側でベースという立体感溢れる音像でサウンドが
鳴っているという音の動きに驚かされます。そしてもうひとつステレオ感が
際立っているのが「Exiles」。曲の後半にメロトロンとギターの対比があり、
それぞれ左右のチャンネルに振り分けられているのですが、面白いのは最初左で
鳴っているメロトロンと右で鳴っているギターがまず提示され(5分12秒付近)、
この音像が次第に両者センターに寄り出して交差し、最終的には右にメロトロン、
左にギターが鳴っているというチャンネルの交差・入れ替えシーンが聴けるんですね。
これがなかなか曲のイメージにマッチしていて、新しい視点でこの曲と接する事が
出来るのも嬉しいところでしょう。またビルの打音がどれも鋭く近い音で聴こえており、
序盤から伸びやかに立ち上がってくるヴァイオリンとメロトロンの音色の対話も
終始リアルステレオらしい豊かな響きで耳に飛び込んでくると思います。

また面白いものとしてはトラック(3)でしょう。ここはフリップのMCが収録されて
いるんですが、トラックタイム2分40秒のうち喋っているのは約1分程度で、残りの
1分半強はチューニングの為の軽い音出しシーンとなっています。しかしここでの
サウンドチェックが隠れた聴き処で、チューニングしながらのギターのつま弾き、
ヴァイオリンのチェック、ミュートしたギターのコードや執拗なまでのメロトロンの
出音確認がある中で、ベースとドラムは殆どチェック無し(冒頭で一瞬だけ軽く音は
出している)なんですね。つまるところ、機材に不安を抱えながら終始ナイーヴに
なっているメロディ隊と、ドンと来いという揺ぎ無い自信に溢れたリズム隊という、
当時のクリムゾンを二分して象徴するバンド内の対比がこんな些細なシーンでも
浮き彫りになっている訳です。そしてそれすらもステレオ・サウンドボードで
聴けるのですから、本作は本当に些細なシーンまで興味の尽きない音源と言えるんじゃ
ないでしょうか。「Doctor Diamond」も73年のちょうどこの時期が一番の旬を感じる
演奏で、楽曲の運動性が非常に際立ったパフォーマンスをしていると思います。

「Larks' Tongues In Aspic Part I」はベースソロが入った73年らしいロングバージョン。
冒頭導入部の弱音の重なり合いと動きが本作の収録音ではよりクローズアップしており、
大変生々しい音の蠢きを感じる事が出来ると思います。演奏開始後から右側で鳴って
いるギターはソロの途中4分33秒付近からセンターに移って全体音に溶け込み、演奏全体が
グッ押し寄せてくる様子にも注目でしょう。ワウ・ペダルとファズが効いたベースも
耳元でブリブリと鳴っている感じが心地良いですし、オンな状態のまま一音一音が
粒立ち良く明瞭に収録されていると思います。手数の多いドラムとファズの効いた
ギターもよく聴こえ、録音の分離感が良さもしっかり伝わってくるんじゃないでしょうか。
ちなみにベースソロの後半では、ギターが右側から左側に徐々に移ってゆくシーン
(※6分56秒付近〜)があり、やかましく鳴っているベースとの対話がステレオ感溢れる
音像で繰り広がっています。またそこから続くヴァイオリンのソロも生々しい音で
浮かび上がってきますが、ここではその音色の近さにも驚かされるでしょう。ただ
モニターが不調なのか音程に若干の平坦さも感じられるのも事実なんですが、でも
この驚異的な音像の前ではそれは些細な事でしょう。

トラック(5)のインプロはベースのアルペジオと美麗なヴァイオリンの音色が既発盤以上に
艶のある音で鳴っており、リリカルなサウンドイメージをより幻想的に報告してくれます。
一転してリズムが動き出す3分17秒付近からの展開も本作はより高い緊張感を伝えていて、
ここでは各楽器の分離感の高いサウンドも耳を惹くと思います。「Book Of Saturday」では
どうしてもウエットンの歌唱に耳が行きがちですが、しかしこの収録音で注目したいのは
その後ろで鳴っているギターの細かな旋律の動きと、揺れ動くヴァイオリンの音色でしょう。
歌唱を浮き彫りにする為の弱音の魅力をこの収録音はとてもよく伝えていると思うんですね。
またノイズっぽいSEから静かに始まってゆくトラック(8)のインプロも、その怪奇系のサウンド
イメージがより生々しく飛び出してきます。このインプロは後半でヴァイオリンとドラムが
ツイン・リードで延々と対話を続ける珍しい箇所が存在しますが(※3分24秒付近〜)、ここでの
音楽的な運動性も本タイトルはより粒立ちの良い音で報告していると思います。

そんなヴァイオリンとドラムの対話は「The Talking Drum」でも明確に提示されており、
曲の中盤では二人がグイグイと楽曲の推進力を高めている様子を非常に近い音像で確認
できるのも良いですね。終曲部ではベースだけがピタッと演奏を止め、ベースレスで
最終音が引き伸ばされているのも印象的です。しかしそのベースがのっけから凶暴に
鳴り響くのが最後の「Larks' Tongues In Aspic Part II」。ミドルテンポというよりは
ややスローテンポで演奏が進んでゆくのも特徴で、バランスの良い収録音の中を慌しく
駆け巡るベースラインが心地良いです。リヴァーヴ気味のギターのリフの響き方も
素晴らしいものがあると思います。

音質99点。
1CDプレス盤。
初回納品の160枚分はシリアルナンバーが入ったステッカーと、ボーナス特典ディスクとして
ST. LOUIS 1973 / (KC-51273) 』及び『SOUND STREET IN PITTSBURGH 1974』が付属。
2013年11月15日(金)リリース。
『ATLANTA 1973 REAL STEREO』 / (Sirene 005)
Live at : Richard's Club, Atlanta, GA, USA. / 1973. June. 23

上段↑で紹介している『ATLANTA 1973 / (Virtuoso 163)』と同一の音源。
使用されているマスター音源は同じですが、出所が違う別ソース音源で
収録されているタイトルです。ただ、実際に両タイトルの収録音を聴き
比べても、パッと聴く程度では正直殆ど差は感じられません。ただ、
ヘッドホンでじっくりリンクさせて聴き比べると、本作にはほんの僅かに
ヒスノイズが確認できたり、音像に僅かな丸みがあるのが感じられると
思いますが、でもこれはもう誤差の範囲でしょう。(^_^;)

この音源は、クリムゾンのブート史上初のリアル・ステレオ・サウンドボード音源
(※Pre-FM音源)でした。また本作が2003年に登場した時にファンが喜んだのは、
この未編集のマスター音源の登場でこの日のセットリストが確定したという点です。
それまでこの日の模様を収録した音源は下段↓で紹介している通り幾つも
ありましたが、それらは全てマスター音源(つまり、本作で使用してあるもの)から
2〜3曲(※Larks' - Part T、Doctor Diamond、Easy Money等)をカットした上で
普通のオーディエンス録音のテープを継ぎ足して使い、そこにまた編集作業を加えると
いったもので、基本的にどれも聴き辛く不自然なものでした。それ故、既発のどの音源も
セット通りに収録はされていなかったですし、どの既発盤にも「Easy Money」の開始直前に
カットがあって、本作が登場するまではこの日のマスター音源は「Larks' - Part T」
「Doctor Diamond」「Easy Money」の3曲のみしか存在しないのではないかと思われて
きたフシもあったくらいです。

しかし本作はそこでのカットは勿論無く、MCを含めてショウの流れを一切止めずに
この日の模様を最初から最後までノーカットで聴けるうえ、超高品質の
リアル・ステレオ録音で登場したのですから、自分も含めてあの当時多くの
ファンは狂喜乱舞したものでした。

・・それにしても、一体どこからこんな音源が出てきたんでしょうかね。
『ATLANTA 1973』同様、音質もすこぶる良好で安定している強烈な一枚です。

音質98点+α。
1CDプレス盤。
2003年12月16日(火)リリース。
『AMERICANS' LAMENT』 / (NDAL-1002)
Live at :
(1〜6) Richard's Club, Atlanta, GA, USA. / 1973. June. 23
(*7〜10) Stanley Warner Theatre, Pittsburg, Philadelphia, USA. / 1974. Apr. 29

ブートCD黎明期から存在するタイトル。
同NDALレーベルから発売されていた『SONGS FOR EUROPE (NDAL-1001)』と一緒に、
ブートCD黎明期にクリムゾンのブートとして一世を風靡したタイトルでしたが、
不完全収録+曲順がメチャクチャに入れ替えられているのがリリース当初から
ファンには頭痛のタネでした。(-_-;) ただ、2004年12月に上段↑で紹介している
『ATLANTA 1973 REAL STEREO (Sirene-005)』がリリースされた事により、
ようやく引退=ファンの頭痛のタネが消えた感があります。(^^;)

尚、トラックナンバー(7)〜(10)は74年4月29日の公演が収録されているので、
それはは74年4月29日の欄を参照して下さい。

音質73点。
音像が全体的に左側に傾いて収録されているのが難です。
1CDプレス盤。
『DOCTOR D』 / (Diamond-730623)
Live at :
(1〜8) Richard's Club, Atlanta, GA, USA. / 1973. June. 23
(*9〜10) Stanley Warner Theatre, Pittsburg, Philadelphia, USA. / 1974. Apr. 29

アナログブートLP盤の時代からある有名な古典音源で、
ブートCD黎明期から存在する古典タイトルです。上段↑で紹介している
『AMERICANS' LAMENT (NDAL-1002)』とほぼ同内容ですが、本作は
曲順通り並んでいるのがポイント。とはいえ曲間のフェイド・イン、
フェイド・アウトがそこそこ目立つ収録なうえ、
「21st Century Schizoid Man」が未収録なのは痛いところ。
ただ音源自体は同一のソース音源を使用していると思います。

そんな訳でトラック(1)〜(8)がこの日の音源ですが、今となっては上段↑で
紹介している『ATLANTA 1973 REAL STEREO (Sirene-005)』 がリリース
された事でその役目を終えた感がありますね。(^^;)

しかしそうは言っても「Easy Money」終演と同時に始まる
牧歌的な出だしから始まるインプロは素晴らしい。冒頭で
「Easy Money」終曲部の"笑い袋の声"が被っているのが
また良い意味でミスマッチで、何とも不思議な余韻を残していると
思います。また「終盤からの激しい展開→Exiles」の流れも
スムーズで、短いながらも見事なインプロだと思います。
「Larks' Tongues In Aspic Part II」冒頭のブビバビと
ラウドな音とリズムで跳ね回るベースも最高にカッコイイです。

尚、ボーナストラックの(9)と(10)は74年4月29日のものなので、
それはそちらを参照して下さい。

音質73点+α。
『AMERICANS' LAMENT (NDAL-1002)』よりも僅かに明瞭感が増していますが、
本作も音像が全体的に左側に偏って収録されているのが難点です。
1CDプレス盤。
『LIVE IN ATLANTA 1973』 / (Outrider OR-9920)
Live at : Richard's Club, Atlanta, GA, USA. / 1973. June. 23


『AMERICANS' LAMENT (NDAL-1002)』と『DOCTOR D (Diamond-730623)』に
収録されているものと基本的に同じで、ソース音源も同一の物が使用されていますが、
これもまた意味不明な曲順の入れ替えが施されています。同一のソース音源を使用
している筈なのに、何でこういう曲順で収録されているんだろう??
訳が分かりません。(-_-;)

まぁいずれにしても、上段↑で紹介している『ATLANTA 1973 REAL STEREO (Sirene-005)』が
リリースされたことにより、ハードコレクター向けの一枚になったタイトルでしょう。

音質71点。
1CDプレス盤。
『NUCLEAR FUSION』 / (Sound Invader SI-911003)
(ディスク中、以下の3曲のみ73年)
7.Larks' Tongues In Aspic - Part T
8.Larks' Tongues In Aspic - Part U
9.Doctor Diamond

Live at : Richard's Club, Atlanta, GA, USA. / 1973.June.23


6月23日の演奏を3曲のみ収録。
音質は普通ですがアナログブートから収録されており、
時折りスクラッチノイズが目立つ箇所があります。
これもまぁ、ハードコレクター向けの一枚でしょう。(-_-;)

『CENTRAL PARK』 / (KC-003)
Live at : Central Park, New York City, USA. / 1973. June. 25

ブート最初期から存在する古典の一枚。
音質はさほど良くありませんが、6月公演の様子がよく伝わってくる音源です。
冒頭「Doctor Diamond」からかなりハイテンションで、いつもより少しテンポアップ
した演奏です。そのアップテンポな感じは「Larks' Tongues In Aspic - Part T」でも
続いており、ピッチがちょっと速いのかなという気もしますが、これはこれでスリリングな
印象もあって迫力ある好演奏として愉しめます。曲の中間部のインプロヴァイズも短めながら
実に強烈なのですが、曲の終了とほぼ同時にフェイドアウトしてしまいます。(-_-;)

続く「Easy Money 〜 Improvisation」は、2つ下段↓の『CENTRAL PARK 1973 / DVD』の欄でも
紹介している通り部分的に映像として残ってもいる有名なテイクです。ここでの演奏の様子は
数々のブートビデオに収録されてきましたが、やはり『CENTRAL PARK 1973 / DVD』が決定打でしょう。
特に2013年4月にアップグレードして再登場したリマスター版DVDはそれが顕著です。詳しくは
2つ下段の『CENTRAL PARK 1973 / DVD』及び『CENTRAL PARK 1973 / DVD : REMASTERED VERSION』
の欄に書きましたので、それを参照して下さい。

それと、ここでのインプロは同73年4月5日頃から演奏され始めた定型コーダの曲なのですが
(※後の「Guts On My Side」のヒナ型。この日のインプロは2011年に正規盤
『暗黒の世界 / 40周年記念エディション』に於いて「Fragged Dusty Wall Carpet」と
正式にタイトリングされてます)、興味深いのはこの日の「Fragged Dusty Wall Carpet」は
その定型部分「Guts On My Side」の核となる部分だけがクローズアップで演奏されている
という点でしょう。
他の日の演奏では、手順として

(1). Easy Money終曲後、まずはフリーの即興を入れる

(2). その曲想を膨らませて暫く盛り上がってゆく

(3). 頃合いを見計らってウエットンが定型リズムを刻み始める

(4). 定型コーダでインプロ終了

・・・という流れがありますが、
ここでは(1)と(2)が殆ど省略されて(3)が始まり、(4)になっています。
また、同じインプロではトラック(7)でもこの日2曲目となる短いインプロを披露していますが、
こちらはウエットンが奏でるベースの和音が幻想的な曲想を漂わせている素敵な小曲。
しかし直ぐに不気味な狂騒音が鳴り始めて「The Talking Drum」へと移行してゆきます。
この辺りのイメージの変化はとても絵画的で、素晴らしいものがありますよね。

音質75点。1CDプレス盤。
曲ごとにフェイドアウトがあり、ピッチも少し不安定。
録音機材付近に居るオーディエンスの声と絶叫が終始ウルサイので、
聴き終えるとなかなかストレスが溜まる一枚でもあります。(-_-;)
まぁ2013年4月に、下段↓で紹介している『CENTRAL PARK 1973 (No Label)』が
アップグレード版としてリリースされたので、本作も引退といったところですかね。(^_^;)
『CENTRAL PARK 1973』 / (No Label)
Live at : Central Park, New York City, USA. / 1973. June. 25

2013年4月に、約20年振りに登場した73年セントラルパーク公演の
アップグレード版。この日を収録した音源は約20年前の1990年代初頭に
出ていた、上段↑で紹介している『CENTRAL PARK (KC-003)』しか
存在していませんでしたが、ビデオ収録された事が判明している重要音源で
ありながらも何故かアップグレードがずっと置き去りにされていた不思議な
音源でした。これまでの上記既発盤では時折ピッチが狂って音が不安定に
なったり収録音の欠落が数箇所で生じたりしていましたが、本作そんな
収録音の全面的な改善と見直しに徹底したスポットを当てた収録内容に
なっているのが最大の特徴です。

まず音質面では中高域を強調するイコライズが施された事で全体の演奏音が
既発盤より2ランクほど鮮明に聴こえる様になっており、既発盤で目立って
いたヒスノイズが大幅に緩和されている点が何より特筆されます。それはもう
冒頭のイントロからして差が出ていて、中でも「Easy Money」中間部での
中〜低音のメリハリの効いたラウド感や、この日2曲目のインプロ(※トラック7)
に於ける音の輪郭の明瞭さは既発盤の収録音と比べるとかなり違って聴こえます。
同様に「Exiles」曲中で鉄板が鳴る箇所等も中音域の強調によってジャンクな
音の炸裂感がより増している点も良いですし、「21st Century Schizoid Man」でも
ボーカルラインに掛けられた弱めのエコーが既発音源よりずっと明瞭に聞き取れるため、
「♪Death Seed..」という歌詞3番の冒頭(6分18秒付近)ではその音の立ち上がりの良さに
思わずニヤリとしてしまいました。

また既発盤ではランダムに狂いが発生していたピッチが正確に補正されて
いるのも特徴で、これは特に「Larks' 〜 Part II」と「21st Century〜」で
目立っていると思います。この2曲は既発盤と比べてどちらもランタイムに
10秒〜12秒近い差が生じており(※つまり既発盤の音はピッチがそれだけ速かった)、
本作の登場によって当日演奏されたオリジナル通りのピッチで聴ける点は非常に
大きいんじゃないでしょうか。またトラック5の短いインプロでは、ピッチの修正に
加えて既発盤で生じていた音の欠落を同日演奏のDVD音声(※本作のボーナスDVD
『CENTRAL PARK 1973 / DVD : REMASTERED VERSION』)から補填することで殆ど
違和感なく修復してあり、オリジナル演奏の魅力をそのまま聴き通せるのも
嬉しいところです。

ちなみに、使用されている音源自体は本作も既発盤『CENTRAL PARK (KC-003)』も
全く同一のものが使われています。但し本作はその両作の母体となる音源を
メーカーが現在の技術で出来うる限り完璧に修正している為、既発盤の
ぼんやりした輪郭の音像とは全く違って聴こえるのも事実です。

音質79点。
1CDプレス盤。
2013年4月12日リリース。
『CENTRAL PARK 1973 / DVD : REMASTERED VERSION』(※ bonus DVD with "CENTRAL PARK 1973 (No Label)")

Live at : Central Park, New York City, USA. / 1973. June. 25 : PRO-SHOT
Direct transfer from the original 16mm film
PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.11min.

『CENTRAL PARK 1973 (No Label)』にボーナスアイテムとして付属している
同73年6月25日公演のDVD映像版。このDVDは2006年に西新宿の某ブートレッグ
CDショップのギフトアイテムとして初登場したもの(※下段↓で紹介している
『CENTRAL PARK 1973 / DVD』)ですが、今回はリマスターが施されての再登場。

主な変更点は、トップにメニュー画面が設置された事でチャプターでの曲選択が
可能になった事と、映像・音声面を強化した点が挙げられます。まず2006年版では
強かった映像の赤みが若干緩和されてシャープさが加わった事で更に鑑賞し易く
なっており、音声も2006年版より音圧が上げられていて、高音域のノイズ箇所を
カットして音像を適度に整える事でグレードアップしたサウンドが実現しています。
その他、細かいことだけどジャケット裏側の表記デザインも少し変更されてますね。
ちなみに収録は2006年版と同じく「Easy Money」とインプロ「Fragged Dusty Wall Carpet」
の2曲のみです。

またこの映像は、現在では2011年に正規盤『暗黒の世界 / 40周年記念エディション』
のDVDサイドにボーナス映像として収録された事で広く知られる様になりましたが、
本作最大の特徴はその正規盤ではカットされた冒頭約10秒間に渡っての映像調整用
カラーバーまで含めた"ノーカット全長版"として鑑賞出来る点です。細かいところまで
気にするコレクターにとってこれはなかなかデカイですよ。

そしてそんな映像を改めて観ると、やはりインプロ「Fragged Dusty WallCarpet」の
構成に興味が尽きません。というのは、この日のショウは恐らく時間枠が1時間と
決められていたショートプログラムとなっており、このインプロも他日とは違って
ショートバージョンとなっている為です。73年の他の音源を聴けば明らかですが、
本来なら「Easy Money」から雪崩れ込む序盤のフリーの即興がもっと長いのに、
時間枠を考えて後半の定型パート(※後の"Guts On My Side")のみをクローズアップ
した省略形のインプロになっているんですね。更に言えば、この直後から始まる
73年2回目の米国ツアー(9月19日〜)からはインプロにリズムボックスを使用する
ものがメインとなり、通常のこうしたインプロ演奏は影を潜めてしまうので、
その意味からもこの特殊な省略形のインプロがプロショット映像として、
しかも全長版で鑑賞出来る点は大きいと思います。

音質・画質94点+α。
1DVD-R。

『CENTRAL PARK 1973 / DVD』 (※This is a Bonus Gift item DVDR of a Bootleg CD Shop)

Live at : Central Park, New York City, USA. / 1973. June. 25 : PRO-SHOT
Direct transfer from the original 16mm film
PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.11min.

2006年に西新宿の某ブートレッグCDショップのギフトアイテムとして登場したDVD。
この日の映像はこれまでに数多くのクリムゾンの既発ブートビデオに収録され、
既発ブートCDとしても『CENTRAL PARK (KC-003)』等で部分的に聴けたものですが、
本作は既発ブートビデオ映像とはケタ違いの鮮明映像で収録されています。
後の2011年に正規盤『暗黒の世界 / 40周年記念エディション』のボーナス映像としても
収録されましたが、それに先駆けて2006年に突如この映像が出てきた時は世界中の
ファンが度肝を抜かれたものでした。撮影は16oフィルムで、少なくとも2・3台の
カメラで撮影・編集してある事から、元々はアメリカかイギリスのテレビ局が
何らかの目的で撮影したものと思われます。

こうしてオフィシャル級の画質で観ると、既発のブート映像では疑問だった細かな事が
判って面白いですね。例えば僕が興味深かったのは、演奏中の各メンバーの顔、特に目の表情が
確認出来た事でした。難解な箇所を弾きつつも何かに笑いながら歌っているウェットンが居たり、
クロスが、『トゥールディランダン、ンドゥリラン、バラダン、ウフーフ〜ゥ♪』と、
お馴染みのEasy Money導入部のメロディをウェットンに合わせて熱っぽく歌っている表情も
本作だからこそ詳細に確認出来ると思います。
また、同じくクロスの、メロトロンからヴァイオリンに移行する時のタイミングとその様子も
これでよく判りますし、ジェイミー脱退後のジャンクなサウンドをブラフォードがどの様にして発し、
継承・再現・そして発展させていたのかもこれで視覚的に理解出来ると思います。
フリップにしても、この若い時期の彼の演奏の様子と目の表情から、内に秘めた凄まじい情熱を
胸に感じない人はいないでしょう。

なお、本編の演奏終了後にメンバーが軽く挨拶してステージを去る様子が挿入されていますが、
このことからも間違いなくこの日は終演までこのままビデオシューティングが行われていたのでしょう。
・・・これはもちろん推測ですが、こうして本格的に撮影されたはずのこの日のショウが、
たったの2曲分の撮影のみで終わっているという事はまず無いと思うので、
もしかしたら、どこかにこの日のショウを最初から最後まで一部始終撮影した
未編集のままのマスター映像が眠っている可能性もあるんじゃないでしょうか?
スゲー観たい・・(-_-;)

尚、余談ですが本作はなんと無料ギフトアイテムでした(もちろん、既に配布は終了しています)。
プレス数量は確か300枚限定だったと記憶しています。Sirene, Ayanami, Windmillのタイトルを1枚買えば
本作が付いてくるという好条件の配布だった事もあり、配布後は速攻で無くなったそうです。

音質・画質93点。
1DVD-R。

1973年 第二次アメリカツアー(9月19日〜10月15日)
『QUEBEC' 73』
Live at : Capitol Theatre, Quebec. / 1973. Sep. 19

1.Larks' Tongues In Aspic - Part T
2.Lament
3.Fracture
4.Easy Money
5.Improvisation
6.Larks' Tongues In Aspic - Part U
7.The Night Watch

※新譜のCDレビュー用に雑誌beatleg編集部から送られてきたコピー音源(CDR)のみを持っているので、
ジャケの画像はありません。この欄に書いてある記事はそのコピー音源を聴いての私的レビューですが、
実際の製品をそのままCDRに落としてあるものなので、音質面等は実際の製品と同じです。

第二次アメリカツアーの初日音源。
曲の終了ごとにカットがあり、収録された曲を見てもこんなセットだった筈が無く
不完全収録と分かりますが、演奏内容はフリップの言葉の借りれば"音楽を真新しくする"為の
工夫が盛り込まれており、どれも興味の尽きないプレイをしているライブです。
冒頭の「Larks' - Part T」ではコーダ部がアレンジされて不思議な終わり方をしていたり、
「Fracture」の中間部で奇妙なインプロパートが挿入されていたりと、冒頭から興味が尽きない
テイクが目白押しです。

インプロはリズムボックスを使用していますが、6月公演までは使用していなかったので、
恐らくライブでリズムボックスを使用したのはこの日が初だったのではないでしょうか。
ただし、まだ慣れていないというか、どこかリズムボックスを持て余している印象も時折り
垣間見られるのも事実で、11月公演の頃の様に機械的なリズムラインを有機的なインプロに
変質させる様な生々しい迫力に溢れたものではないのが面白いところです。
ここでの演奏は、なんというか、猫が何かの物体に興味深々で何度も猫パンチを出すがごとく、
機械的なリズムに各自それぞれのリズムセンスで音を絡めているという感じがします。(^_^;)
アンサンブルとしての面白さはさほど感じないインプロですが、しかしこれはこれで
新しいアプローチに挑む当時の彼らの様子が伝わってきて興味深いと思います。

演奏音はちょっと遠めに感じるものの音質はまぁまぁで、この時期のオーディエンス録音としては
よく録れている部類に入るんじゃないでしょうか。

音質83点。1CDR。
『N.Y. ACADEMY OF MUSIC 1973』
Live at : Academy Of Music, New York, USA. / 1973. Sep. 22

Disc−1
1.Larks' Tongues In Aspic - Part T
2.Easy Money
3.The Night Watch
4.Fracture
5.Book Of Saturday
6.Lament

Disc−2
1.Improvisation
2.Exiles
3.Larks' Tongues In Aspic - Part U
4.21st Century Schizoid Man

※新譜のCDレビュー用に雑誌beatleg編集部から送られてきたコピー音源(CDR)のみを持っているので、
ジャケの画像はありません。この欄に書いてある記事はそのコピー音源を聴いての私的レビューですが、
実際の製品をそのままCDRに落としてあるものなので、音質面等は実際の製品と同じです。


Disc1−(1)は、いささかアレンジが不安定。しかし19日の演奏よりはくっきりと曲の輪郭が
出てきています。「The Night Watch」は非常に落ち着いた演奏で、基本に立ち返ったベーシックな
曲想を目指して演奏しているかの様な印象を受けます。それと一転して「Fracture」はまだ混沌の最中。
リズム隊は既にこの日の時点で曲のベーシックラインを完成させている事がこの音源で分かりますが、
不安定なのはクロスヴァイオリンで、終始フラフラと妖しく音を出して蠢いています。(^_^;)
また、曲の中間部〜終盤のインプロヴァイズは突発的で狂的な様相を呈しており、
特にフリップとクロスの絡み合いは凄まじいものがあるのも特徴です。

Disc2−(1)のインプロは勿論リズムボックス使用のものですが、序盤は少し病的な曲想で始まっています。
中盤からクロスが前面に出てウェットンがそれに応えていますが、コーダ同73年4月8日公演からの
定形パターンで締められています。続く(2)「Exiles」の導入部がこの日は一風変わっていてユニーク。
この即興(定形?)メロディーは69年12月のフィルモア公演でも披露していたものですが、
この曲の原型が実はこのメロディーだったのではないかと伺わせる非常に興味深い演奏で、
このテイクは研究資料としても非常に優れていると思います。

ショウのラストでは、後述する同9月25日の公演と同じくこの日も『Larks'- Part U』が単体で
演奏されているのが面白いです。『太陽と旋律』の発売から半年が過ぎ、セットにも変化が見られる様に
なったこの時期、セット位置が定型化してしまったこの曲のライブでの扱い方についても色々と
検討されていた事を伺わせてくれます。

音質76点。
1CDR。
『THE BUBBLE'S BURST』 / (PF-347D @ PeaceFrog)
Live Data (Disc1〜Disc2-(3)): Orpheum Theatre, Boston, Massachusetts, USA. / 1973. Sep. 23

2枚組のディスクで、Disc1〜Disc2-(3)にこの日の演奏を収録しています。
Dsc2-(4)〜(7)は同1973年3月18日の演奏なので、それは3月18日の欄を
参照して下さい。

この日の「Larks' Tongues In Aspic - Part T」は中間部の
ベースソロを廃したショートバージョン。やや演奏内容に炸裂感が
欠けるというか、弾け切れていないというか、そんな印象もあるのですが
よく聴くとビルが細かな打音でアレコレと曲を装飾しており、
なかなかのパフォーマンスになっていると思います。
ちなみにこの曲のショートカットの傾向は今後も暫く続き、
徐々にこの短縮バージョンが主体となってゆくようです。

「Easy Money」は曲の終盤で後にヴァイオリンとメロトロンで演奏される部分が
ギターとメロトロンで進行しているという一風変わったテイク。
この日は基本的にアルバム版に近いスタンダードな演奏なんだけど、
さすがに中間部のパフォーマンスは静と動のコントラストがより強く
効いており、派手さは控え目ながらも素晴らしい演奏をしています。

「The Night Watch」はほんの少しロングバージョン。
中盤でベースとドラムが目立つ箇所があります。曲想にやや不安定さを残していて、
まだ若干、曲をテストしているといった具合でしょうか。
「Fracture」は序盤でクロスが目立った動きをしており、
ビルの金物系の音も曲を通してかなり目立った動きをしています。
楽曲自体は前半部分はもう殆ど完成の域に達していますが、
中間部(6分30秒付近)からはインプロ部分も顔を覗かせており、
後半部分の爆発も唐突に始まっています。まだまだ中間部〜後半への
繋ぎ方を暗中模索している印象が色濃く残る演奏ですが、
そのぶん興味深い聴き処が多いのも事実です。
「Book Of Saturday」はほぼ完成形ですが「Lament」はまだまだ
思索段階の印象が強くあり、プロトタイプ的なアプローチが随所で
確認出来る大変興味深いパフォーマンスとなっています。

Disc-2に移り、冒頭(1)インプロはこの日もリズムボックスを
使用したもので、序盤から非常にスリリングな展開を聴かせる好演奏。
ベーシックの打ち込みビートに合わせて4人が徐々に絡んでゆく様子は
とても聴き応えがあり、ビートに合わせて即席で次々とベースラインを
刻んでゆくウエットンと、奇妙な切り込み・カッティングを試す
フリップの対比がユニーク。もてあましているクロスと、遊んでいるような
ビルのドラミング・パーカッションも面白いですが、それらのアプローチが
9分17秒付近から纏まりのあるサウンドに変化し、11分18秒付近で再び離散。
リズムボックスのビートが消えると幻想的なサウンドイメージが場を包み、
やがて静かに拡散して終曲しています。

「Larks' Tongues In Aspic - Part U」はやはり中盤、3分45秒付近からの
中間部ベースアプローチと、そこから切り込んでくるフリップのギターが
鮮烈なイメージを曲に添えており、力強いアンサンブルを保ったままコーダへ。
この日の「21st Century Schizoid Man」は中間部にウエットンのベースソロを
インクルードしたバージョン。楽曲前半部でもビルが若干変わったリズム
アプローチを試しており、なかなか聴き応えのある演奏内容となっています。

音質84点。
2CDR。

『SHARK'S LUNGS IN ORPHEUM』 / (No-Label : BS27 501483X IFPI L601)
Live at : Orpheum Theater, Boston, MA, USA. / 1973. Sep. 23

ジャケに記載されている5月4日というデータはデタラメ。
正しくはこの9月23日の公演です。

上段で紹介している『THE BUBBLE'S BURST / (PF-347D @ PeaceFrog)』
及び下段で紹介している『LIVE AT ORPHEUM THEATER / (Moonchild-MC910102)』
と同内容。マスターも全く同じものを使用しています。

しかしながら本作はDisc-1冒頭部分がインプロ開始直前から収録されており、
この部分が本作より音質の良い『THE BUBBLE'S BURST / (PF-347D @ PeaceFrog)』よりも
約17秒間ほど長く収録されているのが特徴です。
よりマスター音源に近い収録時間を求めるなら本作ですが、
音質では若干劣っているのが玉にキズですね。

音質80点。
1CDプレス盤。
『LIVE AT ORPHEUM THEATER』 / (Moonchild-MC910102)
Live at : Orpheum Theater, Boston, MA, USA. / 1973. Sep. 23

上段で紹介している『SHARK'S LUNGS IN ORPHEUM (BS27 501483X IFPI L601)』
及び『THE BUBBLE'S BURST / (PF-347D @ PeaceFrog)』と同内容。
マスターも全く同じものを使用しているのですが、
「Book Of Saturday」と「Lament」がカットされて未収録。
うーむ・・・(-_-;)

音質81点。
1CDプレス盤。
『WILLIAMS TOWN 1973』 / (Red Circle RCD-2031)
Live at : Coliseum, Williams Town, Mass, USA. / 1973. Sep. 25

珍しいプレイが沢山詰まった音源。
「Larks' Tongues In Aspic - Part T」はここでも短縮版ですが、
この日は非常にエネルギッシュな演奏を披露しています。
ベースソロを廃したぶん、逆に曲が締まった印象を与えていると思えるテイクです。
「Easy Money」ではビルの刻むハイハットのアクセントが効いて、
曲のメリハリがよく出る様になっています。「Fracture」はこの日もかなり長めの演奏。
中間部の緊張感が延々と続き、破裂寸前でギリギリの音のせめぎ合いが凄まじいです。
プレイしている本人達にもオーディエンスにも、
その疲労と快楽が混ぜんとなってゆく素晴らしい瞬間が詰まっていて、
この日のハイライトとも思えるグッド・パフォーマンスです。

「The Night Watch」はかなり遅めのテンポ。たぶん意図的にこのテンポにしているのだと思いますが、
アルバム版でのドラムとベースの細やかなフレーズが省かれており、これはこれで
興味深い演奏です。「Exiles」はギターソロが無いという変わった展開で、代わりにクロスが
ソロを奏でているのも珍しいですよね。またこの日もショウの最後で「The Talking Drum」からの
移行ではなく、「Larks' Tongues In Aspic - Part U」が単体で演奏されるという大変珍しい展開が聴けます。

音質79点。
1CDR。
『THE NIGHT WATCHERS』 / (WATCH TOWER - WT 2005140/1)
Live at : University of Texas, Arlington, USA. / 1973. Oct. 6

アナログブートLP時代からある有名な古典音源。
往年のファンには御馴染みの音源ですし、同一のマスターから
ブートCD化されたタイトルも幾つか存在しますが本作はその中でも
群を抜いており、たぶんマスターテープから直落とししたのではと
思えるほど優れた音質で収録されているのが特徴です。
もちろん一公演完全ノーカットで収録されています。

「Larks' Tongues In Aspic - Part T」はビルが打音のアクセントを変え、
リズムに変化を与えているのが興味深いです。ショートバージョンに
なってかなりの纏まりを感じさせる演奏で、この日はどこか腰を据えた
へヴィな曲想で演奏しているのも面白いと思いますし、ヴァイオリンソロが終わって
終曲部へ向かう抑揚感(8分55秒付近〜)などはかなり強烈です。
「Easy Money」はウエットンが愉しそう。(^^;)1分03秒付近では珍しく「Um...」などと
ひと息入れた声を出してますし、1分36秒付近でも何かに笑いながら歌っています。
演奏も極上のもので、特に中間のインストパートは(かなり音質が良いため)各楽器の
絡みが明瞭に伝わってくるので他日の公演以上にこの曲の構造がよく分かりますし、
その生命力に満ちた音楽がダイレクトに伝わってきて思わず身震いすること請け合いです。(^^)

これは「The Night Watch」も同様で、静寂の中から曲想が浮かび上がってくる
冒頭から、もうため息が出るほど凄いパフォーマンスをしています。
この序盤で"コンコンコンコン・・・"という音(00分35秒付近〜43秒付近。木琴?)が
聞こえるのだけど、他日のブート音源では潰れてなかなか聞こえ辛いこうした各楽器の
細かい音が何層にも重なってゆく様子はまさに絶品だと思います。ギターの音色も
絹の様に滑らかで、それをメロトロンと、そしてビルの細かい打音が包み込んで
装飾してゆく様子は鳥肌が立つほどです。
「Fracture」も強烈で、奇妙なギターフレーズの後ろで装飾し続けるビルの打音が
終始凄まじく、要所で音を揺らしながら絡んでくるヴァイオリンも見事。
この、序盤の静かな音の重ね方を聴いても分かりますが、やはりクリムゾンは
弱音の出し方と弱音の重ね方が実に巧いと思います。
楽想はかなり絞り込まれ・練り込まれてきてはいるものの、この時期はまだ
曲をテストしている最中なので、中間部のブリッジ(6分25秒付近〜)はこの日も独特の展開。
ビートは強まり、メロトロンもかなり前面に出て盛り立て、ベースはブビバビと
強烈なフレーズをマシンガンの様に繰り出し、ビルも叩きながら気合を入れている声が
確認できます(6分41秒付近)。そしてこの日はこれらのアンサンブルが一度拡散し、
音が一度消えてから再び集合してくるという珍しい展開があり(9分35秒付近〜10分41秒付近)、
これを経た上で最後の大爆発へと繋いでいます。11分05秒付近〜12秒付近で聴ける
ビルのスリリングなアプローチもかなり聴きモノですし、その直後から入ってくる
ギターの奇妙な(ロボットが弾いている様な、或いはかなりエレポップな)アプローチも
実にユニーク。アンサンブルが収束し、そしてギターでフッと開放される終曲部の様子も
大変素晴らしいと思います。

「Book Of Saturday」も静かな弱音が綴り折られてゆく様子が素晴らしく、
ウエットンがまたしっとり歌い上げていて見事です。コーダ部で
フリップが放つハーモニクスも曲を見事に飾りつつ締めています。
「Lament」も序盤でビルの金物系が細かく曲を装飾しており、
ラウドな展開に突入してからのアンサンブルも凄まじい。
ウエットンはこの曲でも熱唱しているのですが、3分16秒付近と19秒付近では
ベースの打音に合わせてマイクから離れた位置で「Ah...!! Ah!!」と
発している掛け声も微かにレコードされており、熱演の様子が伺えます。

この「Lament」の後から始まるインプロはリズムボックスを使用した
この時期独特のもの。定型パターンで鳴るリズムに乗せて各楽器が
少しずつ音を重ねてゆきますが、低音でミュートを効かせた様な音で
生き物の様にうねるベース音と、鉄筋で煌く音を綴るビルの打音との
コントラストが非常に眩しいシーンが序盤から炸裂。カウベルと鉄筋の
打音の向こうではクロス(だと思う)がエレキ・ピアノを奏でている
シーンもあり(3分10秒付近〜4分00秒付近)、メンバーそれぞれが
持てるスキルを発揮して実にスリリングな即興を繰り広げています。
ギターが前面で絡んでくると音楽はよりラウドでアヴァンギャルドな
様相を強め、ひとつひとつの音がより表情豊かで生命力溢れるものへと変化し、
それが頂点でフッと拡散し始めた途端に「Exiles」のメロディが現れ、
そのまま曲は「Exiles」へ。
この「Exiles」もまた実に見事な名演で、壮大にたゆたう曲想が
この日も存分に表現されており、中盤〜後半で流れる
ヴァイオリンの装飾音とメロトロンの洪水がグッと迫ってくる箇所は
もう言葉にならない程の感動です。(T_T)

「The Talking Drum」はインプロから繋がらない単体でのスタート。
繊細で怪しいビルのスピーディな打音が魅惑的で、素晴らしい
導入部を表現しています。直後に出てくるノイジー過ぎるギターも
無表情で冷たいアプローチで絡んでおり、リズムと装飾音の嵐が
徐々に高まってゆく音楽にグイグイ引き込まれてしまうと思います。
演奏の中盤頃から、誰かが(たぶんビルだと思う)叫び声を何度も発している
シーンが続いているのだけど、こういう実際の演奏中の息遣いも聞こえてくると
より迫力を感じますよね。
一方、ここから続く「Larks' Tongues In Aspic - Part U」はとてもへヴィな演奏。
4分00秒付近から約37秒間も繰り広がるヴァイオリンの狂的な装飾音はこの日も凄まじく、
まさにやりたい放題やっているクロスの熱演の様子が目に浮かびますし、
コーダへ向かう音の収束も大変力強いものを感じます。
続く「21st Century Schizoid Man」もこの日はとってもヘヴィメタル。
フィードバックを使ったギターソロが印象的で、和音による色彩豊かな音の洪水が
終始素晴らしいです。中間部のインストパートではウエットンのベースソロも
組み込まれていますが、それと対峙する様に切り込んでくるノイジーな
ギターサウンドがまたネジが外れた感じで最高です。フリップ凄い。(^^;)

最後にひとつだけ付記しておくと、この古典音源は昔から「Book Of Saturday」の
中盤1分53秒付近〜2分00秒付近(本作でのトラックタイム)で約7〜9秒間分の音の欠損が
あり、その部分でカット切り貼りした編集跡がある音源としても知られています。
本作でもこの痕跡は残ったままなのですが、しかし本作はこの欠損部分を
他日の音源から非常に巧く繋いである事は特筆されるでしょう。
この約7秒間分のみ少しだけ音の品質が落ちるものの、しかし殆ど全くと
言って良いほど音楽と流れを壊していない点は大きく評価出来ると思います。

そして勿論、音質面は言う事無し。
一応はオーディエンス録音なのですが、サウンドボードと言っても
通用する程の解像度と透明度を持っており、そのうえ音にシャープな
キレとパンチまで感じる驚愕の優良音源。一体どうやってシューティング
したのか分かりませんが、出来過ぎなくらい良い音で録れています。
下段↓で紹介している同日音源タイトルも複数存在しますが、
この日を捉えた音源としては間違いなく本作が決定盤でしょう。

音質96点。
2CDプレス盤。
『TEXAS HALL ARLINGTON』 / (H-BOMB MUSIC-HMB9513/9514)
Live at : University of Texas, Arlington, USA. / 1973. Oct. 6

同一音源に↑で紹介している『THE NIGHT WATCHERS / (WATCH TOWER - WT 2005140/1)』
及び、下段↓2タイトル分で紹介している
『LIVE IN ARLINGTON 1973 − PART ONE / (TWP-CD-206)』及び
『LIVE IN ARLINGTON 1973 − PART TWO / (TWP-CD-207)』と同一。
使用しているマスターは本作も同じですが、しかしより近いのは
『THE NIGHT WATCHERS』の方で、近いというよりも全く同じテープを
マスターとして使用しています。

しかしながら本作は、この古典音源のマスターテープに起因する
「Book Of Saturday」の欠損部分が修復されておらず、カット・切り貼りの
痕跡が残ったままです(※本作のトラックタイムでは1分44秒付近)。
つまり本作のこの箇所は、

1分44秒付近でカット→約7秒間分の音が欠落した状態でその後の演奏が間髪入れずに続く・・・

という状態で収録されています。
さほど音楽を壊しているとは思いませんが、やや気になるのは確かです。

音質は良く、さすがジャケットに「From The Original Master Tape」と
明記してある通り大変優良な収録音なのですが、しかしながら
アップグレード版として後に登場した上記の『THE NIGHT WATCHERS』と
聴き比べると音圧がややか細いうえ、音の解像度も若干劣っている事が
分かると思います。そしてやはり、前述の通り「Book Of Saturday」の
欠損部分が修復されていない点が最大の難点ではないでしょうか。
プレス盤で紙ジャケ(しかも元になったブートLPのジャケを偲ばせるデザイン)
というのは個人的に大好きな仕様なのですが、やはり『THE NIGHT WATCHERS』が
リリースされた以降は、その役目を充分に終えた過去の一枚になったと思います。

音質92点。
2CDプレス盤・紙ジャケ仕様。
『LIVE IN ARLINGTON 1973 − PART ONE』 / (TWP-CD-206)
Live at : University of Texas, Arlington, USA. / 1973. Oct. 6

↑2段分で紹介している『THE NIGHT WATCHERS / (WATCH TOWER - WT 2005140/1)』
及び『TEXAS HALL ARLINGTON (H-BOMB MUSIC-HMB9513/9514)』

マスターも同じ物が使用されていますが、
本作はブートLP(※数種存在したので正確にはわかりませんが、
恐らく『TEXAS HALL ARLINGTON 1973』だと思う)から落とされた
盤落としのディスクで、静かな箇所になると僅かにスクラッチ音が確認できます。
またこうして元々が収録時間が限られたLP盤の為、本作も曲間やMCが
ほぼ全てカット(フェイド・イン〜フェイド・アウト処理)されたままの姿で
収録されているのも特徴(・・・というか、難点)です。

但し音質は良く、なかなか迫力のある音像で収録されているのも特筆されますが、
若干解像度と透明感に欠けるゴツゴツした音像で収録されているのが難ですし、
演奏音周辺の深度もいまひとつ。何よりもやはり曲間やMCがカットされまくっているのは痛い・・・。

ブートCD黎明期は人気のあったディスクでしたが、今となってはもう
ハードコア・コレクター向けの一枚だと思います。(-_-;)

音質89点。
1CDプレス盤。
『LIVE IN ARLINGTON 1973 − PART TWO』 / (TWP-CD-207)
Live at : University of Texas, Arlington, USA. / 1973. Oct. 6

ひとつ↑で紹介している『LIVE IN ARLINGTON 1973 − PART ONE / (TWP-CD-206)』の
続きとなっているディスク。ショウの中盤「Book Of Saturday」から、
ショウのラスト「21st Century Schizoid Man」まで収録されています。

音源そのものは↑2段分で紹介した
『THE NIGHT WATCHERS / (WATCH TOWER - WT 2005140/1)』及び
『TEXAS HALL ARLINGTON / (H-BOMB MUSIC-HMB9513/9514)』と同一音源です。
マスターも同じ物を使用していますが、パート1と同じく本作はブートLPからの盤落とし。
パート1同様、スクラッチ音とカットが目立つ一枚です。

そしてまた本作も上記2タイトルと同様、「Book Of Saturday」に
マスター音源に起因する編集跡があります(※本作のトラックタイムでは1分17秒付近)。
この部分の様子は上記した『TEXAS HALL ARLINGTON』と同一なのですが、
実はよく聴いてみるとカットされている時間が約2秒ほど長く、
僅かにズレた位置から切り貼り編集されているのが確認出来ます。
つまり本作の「Book Of Saturday」では

1分17秒付近(他の2タイトルとほぼ同一の箇所)でカット→約9秒間分の音が欠落した状態で
その後の演奏が間髪入れずに続く・・・

という状態で収録されています。
これもまァさほど音楽を壊しているとは思いませんが、
しかし『TEXAS HALL ARLINGTON』よりも切り貼りが雑で粗く、音質も悪いので、
上記2タイトルの中では本作の編集跡が一番気になるのは確かです。

音質87点。
「Book Of Saturday」と「Lament」で音揺れが目立つ箇所があるので、
品質劣化分としてディスク・パート1より2点引きました。
でも基本的には良い音で収録されています。
1CDプレス盤。


『LADY SUPERMARKET』 / (ASPIC, ASP001)
Live date : The Cow Palace Theatre, San Francisco, CA, USA / 1973. Oct. 12 or 13

ジャケ記載の日付では1974年6月13日のサンフランシスコ公演となっていますが、
セットリストの並びと演奏内容から考えてこれは73年公演だと思います。
73年中にこのセットでサンフランシスコで演奏された日付を絞ってゆくと
10月12日と13日(※同じ場所で2日間連続でやっている)が該当するので、
恐らくこの日の演奏で間違いないしょう。

収録内容は下段で紹介している『LADY SUPERMARKET IN SAN FRANCISCO / (ZA−15)』と
全くの同内容で、使用しているマスター音源も全く同じ。但し本作の方が全体的に
音のこもりが少なく、細部が比較的聴き易くなっているのが特徴だと思います。

この音源で面白いのはインプロ曲を全く披露していないという点です。
またどの曲も殆どインプロヴァイズ作業が無く、更には通常ではあまり考えられない
ショウの展開とセットの組み方をしているのも特徴です。
しかしながら、数箇所で明らかな編集作業が入っている部分があるので、
本当にこれがこの日のショウ全体の様子だったのかという点では個人的に疑問を感じるところです。

オープニングの「Larks' Tongues In Aspic Part T」は中間部を演奏しないショートバージョン。
テンポが速く、非常にラウドで、コーダ部分ではビルのドラムがかなり目立つド迫力の演奏です。
「Easy Money」は、かなりアルバムテイクに近い演奏。これはこれで逆に珍しいと思います。
ウエットンの「ドドッ、ドドッ」という歌メロのバックで鳴るベースのアタック音が妙に重々しく、
メリハリが効いています。また曲中盤のインプロ部分も他日の演奏よりかなり控え目かつ静かで、
これもまたアルバムテイク的なアプローチで興味深いところだと思います。そして終曲と同時に
立て続けて演奏される(ここでインターバルが入らないのは非常に珍しいですが、編集されている可能性も
否定出来ない)「The Night Watch」は、後半のギターソロが印象的。ウエットンのボーカルも
フレーズの音程を少し変えて歌っている箇所があり、ギターと共に曲後半から一気に盛り上がりを見せています。
「Lament」は秀逸の出来映えで、かなり締まった緊張感のある演奏をしています。曲の中盤では、ノイジーに
ワウを使ったフリップのギターソロの後ろでウエットンがベースのラインを意図的に崩しており、
この奇妙なリズムアプローチがかなりユニーク。ビルの金物系の表現も素晴らしいです。

「Cat Food」は「Peace−A Themeから繋がらない単独の演奏」で、なかなか珍しいテイク。
曲の冒頭ではビルのちょっとしたドラムロールみたいなものが入ってから曲がスタートしていますが、
どこかカットインした編集の痕跡の様にも思えます。ノーカットなのかなぁ・・・?(-_-;)
しかし曲そのものの完成度は非常に高く、アンサンブルの一体感が強烈です。
「Exiles」も、この日は普段ならば冒頭に前奏としてインプロヴァイズ〜メロトロンの洪水という
アプローチがありますが、これが完全に排除されていきなり本編が始まるという大変珍しいスタート。
とはいえ曲想は大変ムードに溢れた色彩感のあるもので、序盤から厳かに響くメロトロンが素敵です。
但し、マスター音源の不具合の為と思われる劣化箇所があり、2分43秒付近と3分19秒付近で
それぞれ瞬間的にフェイドアウト〜フェイドインを繰り返しています。

「Fracture」はビルとウエットンのリズムアプローチが絶品のテイク。特に凄いのは後半の爆発部分
直前(6分49秒〜8分13秒)で聴けるこの二人のインプロヴァイズ作業で、約一年前の73年秋頃の演奏で
披露していた展開を再びやっている点でしょう。また後半突入後もリズムにかなりの溜めを効かせた
スリリングな演奏をしていて、とても聴き応えがあります。そしてこの「Fracture」終曲から
立て続けに披露(これもまたかなり珍しい)される「Larks' Tongues In Aspic - Part U」も強烈。
曲想表現に抜群のキレがあり、そのイメージを更に研ぎ澄ましているのがクロスのヴァイオリンで、
物凄くエッジの効いた演奏を聴く事が出来ます。そのクロスは後半部でも狂的な音のノートチョイスで
ヴァイオリンのソロを披露していて、これもまた凄まじいものがあります。

更に「21st Century Schizoid Man」も全開。最初の第一音から迫力が全然違います。
音の粒が見事に揃った大胆かつ瑞々しい演奏で、これだけ力強い纏まった曲想でこの曲が
披露されるのも珍しいくらいのグッドパフォーマンスだと思います。
中間部のギターパートも最初から変態的なアプローチで曲に絡んでおり、
ウエットンのベースソロもこの日は妙に長く演奏しています。
この時期独特の、急激にファストなテンポに変化する展開も見事で、
和音を絡めたギターアプローチに変化してからもかなり長めに中間部が続いてゆきます。

最後に補足として、やはり本作が本当に一公演完全収録かどうかという点で疑問が残ります。
理由は幾つかありますが、目立つものとしては、

(1).「Exiles」終曲後と「Fracture」の開演前で明らかなMCカットがある。
(2).「Fracture」の後に「Larks' Tongues In Aspic Part U」がいきなり演奏されており、
本来あるべき筈の「The Talking Drum」が演奏されていない。

このうち、特に気になるのは(2)の流れです。これ本当なのかなぁ・・・。
よく聴くとカット・編集されている様にも感じるのですが、この箇所は部分的な音質劣化も
手伝っていて、何度聴いても僕にはどちらとも判別出来ません・・・。
うーん。(-_-;)

音質79点。
(但し、「Fracture」の5分30秒付近から終曲付近まで急に音がこもって音質が悪くなるので、
この部分のみ67点)
1CDプレス盤。


『LADY SUPERMARKET IN SAN FRANCISCO』 / (ZA-15)
Live date : The Cow Palace Theatre, San Francisco, CA, USA / 1973. Oct. 12 or 13

上段で紹介している『LADY SUPERMARKET / (ASPIC, ASP001)』と同内容です。
本作の方が何年も前に発売されていましたが、『LADY SUPERMARKET』が発売されてからは
影が薄くなってしまいましたね・・・(^_^;)
使用しているマスターはどちらのタイトルも全く同一のマスターから落とされていますが、
音質は本作の方が悪く、音のこもり方が目立ちます。
ハードコレクター向けの一枚でしょう。(^_^;)

音質75点。
(但し、「Fracture」の5分30秒付近から終曲付近まで急に音がこもって音質が悪くなるので、
この部分のみ59点)
1CDプレス盤。
『HALFCUT DIAMOND』 / (Highland HL160/61#KC8)
Live at : (Disc−2) Civic Auditorium, Santa Monica, CA, USA. / 1973. Oct. 15

第二次アメリカツアーの最終日。
ディスク中、Disc2−(4)〜(11)が10月15日の演奏で、まだ不完全な
イメージを引きずる曲もありますが、ツアー最終日という事もあってこれまでの総括的なプレイを
展開している感じがします。

「Larks' Tongues In Aspic - Part T」はここでもショートバージョン。
若干テンポが早めにプレイされていますが、ビルの攻撃的なドラミングが随所で光る素晴らしい演奏です。
(5)の「Easy Money」はフェイドイン。(4)の「Larks' Tongues In Aspic - Part T」終演後に
あった筈のMCと、曲冒頭の15秒程度がカットされています。この「Easy Money」ですが、中盤の
ビルのパーカッシヴなプレイがジェイミー在籍時を思わせる非常にジャンクなもので、
そこにフリップの狂的なギターが絡んで凄まじい曲想とイマジネーションを放っている好演奏です。

「The Night Watch」はほぼ完成形に達しており、とても魅力的な仕上がりになっています。
「Fracture」では序盤からビルのジャンクな音が後方で鳴りまくっており、かなり攻撃的な印象を
放っているテイクです。また、この曲はこの日も中間部がインプロヴァイズされていますが、
延々と冗長なインプロヴァイズをしていないという点も特筆されると思います。
妖しいメロトロンの調べをバックにウェットンとビルが激しいリズムの嵐を吹かせますが、
そのまますっきりとコーダに繋げている展開はとても印象的です。
なお、この曲は残念ながらコーダ部の9分35秒付近で切り張りの編集跡があります。

「Book Of Saturday」もフェイドイン。フリップのギターメロディが素晴らしく、
非常に可愛らしい曲想になっているのが面白いです。そして「Lament」(9)もフェイドイン。(-_-;)
冒頭20秒ぐらいが失われていますが、後半のベースラインが凄まじくて良い感じの演奏です。
そしてこの音源で一番素晴らしいのが「Peace - A Theme」と「Cat Food」。
特に「Cat Food」のアンサンブルは見事というほかないベストプレイで、個人的な感想としては
10月公演中のこの曲の演奏ではこれがベストテイクだと思います。

音質78点。2CDプレス盤。
曲間のカットや編集が目立つ不完全収録版で、聴いていてもかなりフラストレーションが溜まる一枚ですが、
興味深い演奏をしている音源ではあると思います。
尚、Disc1〜Disc2−(3)までは73年5月6日の音源なので、その日付の欄を参照して下さい。
1973年 第二次イギリスツアー(10月23日〜10月29日)
『AT RAINBOW THEATRE』 / (TARANTURA : TCDKC-3-1,2)
Live at : The Rainbow Theater, London, UK / 1973. Oct. 26

ブート音源の黎明期から知られていた名音源をTARANTURAが出したというので
気になって購入。メーカーのアナウンスでは「マスターカセット→DAT→プレスした本作」
・・という2ndジェネである点が大きく謳われていたので興味を持ちました。
ただ、以前から知られていた下段↓で紹介している同日音源の名既発盤
『THE MINCE (SIRA-CD 27/28)』や『RAINBOW 1973 (Sirene-229)』が音質良好
だったので果たしてどうかなとは思ったのだけど、音を聴いて納得しました。
確かに各既発盤より音質上がってると思います。

ディスクを聴いてまず感じたのは演奏音の近さとストレートなダイナミック感。
これは『THE MINCE』他の既発盤にあったヒスノイズが殆ど無くなり、無音で
静かな箇所も透明感が格段に増している点が大きいと思います。また音圧が
一段と向上しているのも嬉しいポイントでした。この威力が感じられるのが
序盤の「Easy Money」で、冒頭の第一音目の鮮明度からして他の既発盤より
秀でているのが明確に分かると思います。中間部の肉厚なサウンドがより
鮮明に迫ってくる様子も鳥肌モノで、まるで曲の構造と運動性が立体的なビジョン
として浮かび上がってくるよう。オープニング「Larks' Tongues In Aspic Part I」
にしても冒頭他で入ってくる金物系の音の細かさ、ラウドさから一転する中間部の
静かな箇所など、静寂さの中で妖しく動く音の揺らぎがより鮮明に聞こえることで
静と動のコントラストが際立って聞こえると思います。

「Fracture」は10月15日までの第二次アメリカツアーでは中間部に未整理の
インプロ箇所が若干入っていましたが、このツアーからはそれが整理されて
引締まった曲想に変化し、スタジオ版のスタイルに近くなっているのが確認出来ます。
後半の開始から暫く(7分30秒付近〜)はまだ少しモタつきがあってドライヴ感がやや
希薄な感じだけれども、後の演奏と比べるとそのギャップが面白いですね。
「Lament」ではビルによる金物系の煌きが近くて鮮明で、曲が動いてゆく中間部
以降のラウドな表現→コーダでの激しい演奏の展開がこの日も見事。
尚、終曲後はMC(a)が始まり、約1分後まだ話している途中でフェイド・アウト。
ディスク2に移ると、そのMC(a)の部分から再び始まり、フェイド・アウト無しで
次のインプロが始まっています。

そのDisc2−(2)のインプロはこの日もリズムボックスを取り入れたもの。
ジャンクな混沌系からスタートし、ベースが序盤からこれでもかというほど
リズムマシンに絡んでおり、無機質なリズムを有機的な媒体に変質させているのが
興味深いです。中盤で聞けるベースとギターの対話も聴き応えありますし、
7分38秒付近から少しだけ入ってくる鉄琴(?)も"ここしかない!"という美味しい
ところで入っており、これはビルのセンスの良さを感じますね。「Exiles」は
まるで音の魂が昇華してゆく様な切ないサウンド・ドラマが感じられる好テイク。
歌詞1番と2番のブリッジで聴ける鉄板叩き系のサウンド(2分15秒付近)も壮絶で、
それが歌詞2番のバックで静かに奏でられるギターフレーズと対照となって
激しくも見事なコントラストを生んでいます。

もう一つのインプロ(Disc2−(4))は、ビルの鉄琴と単音のギターフレーズが絡んだ
幻想系のイメージからスタート。直後にヴァイオリンの旋律がそれを引き継ぎ、
そこから楽器同士の対話がまどろみながら絡まってゆきます。やがて4分47秒付近から
特徴的なギターのブロークンコードがミュート気味に入り、これに呼応する様に
4分54秒付近から鉄琴が同一のフレーズで激しく鳴らされ、それを合図とするかの
様に突然ブレイク。まだ微かにギターが鳴り続けてるのだけどそれも暫くすると
突然鳴り止み、彼方から「The Talking Drum」の動機となるベースがゆっくりと
入ってきます。「Larks' Tongues In Aspic Part II」は序盤で聴けるドラムの
拍の取り方が他日とちょっと変わっている様に思います。中盤〜後半のラウドな
炸裂感は相変わらず冴えていて、堂に入った演奏表現の幅を感じますね。
アンコールで披露される「Peace - A Theme 〜 Cat Food」もなかなかのもの。
ベースのアタック音がこの音源では際立っているぶん、楽曲の輪郭と運動性が
ダイレクトに感じられるのが良いですね。2分24秒付近から入ってくるギターの
奇妙なフレーズも病的というか変態的で素晴らしいです。(^_^;)

音質89点。
2CDプレス盤・紙ジャケット仕様。
『THE MINCE』 / (SIRA-CD 27/28)
Live at :
Disc1(1)〜(5)+Disc2−(1)〜(7) : The Rainbow Theater, London, UK / 1973. Oct. 26
※Disc1-(6 = The Rich Tapestry Of Life) : Bremen, GERMANY. / 1972. Oct. 17
※Disc2-(8)〜(9)Bonus Track : Community Theater, Berkeley, CA, USA. / 1973. June. 16

ジャケ記載の3月18日という表記はデタラメ。正しくはこの10月26日の公演です。
上段↑で紹介している『AT RAINBOW THEATRE (TARANTURA : TCDKC-3-1,2)』が
リリースされるまでこの日の音源の決定版でしたが、今となっては若干格落ち
した感がありますね。使用しているマスター音源も全く同じものが使われていますが、
『AT RAINBOW THEATRE』と聴き比べると音質が若干劣化しているのが分かると思います。

尚、Disc2−(2)のインプロの途中(4分04〜06秒付近)で、約2秒間の音飛びあり。

音質86点。
2CDプレス盤。
『RAINBOW 1973』 / (Sirene-229)
Live at : Rainbow Theater, London, UK. / 1973. Oct. 26

上段↑と下段↓でそれぞれ紹介している『AT RAINBOW THEATRE (TARANTURA : TCDKC-3-1,2)』
及び『THE MINCE (SIRA-CD 27/28) 』と同一音源。使用されているソース音源も同一のものです。
音質は『THE MINCE』よりヒスノイズはかなり低減されているものの、そのリマスタリング処理の
せいか少しだけ音が奥に引っ込んでしまっている印象を個人的には受けました。ただこれはもう
好みの差でしかないと思います。個人的には本作の様に角が取れて上品な丸い音像よりは、例え
ヒスノイズが目立っていても粗くてシャープな音像の方が好きなので「音が奥へ引っ込んでいる」と
感じるだけかもしれません。しかしながら本作の様に上品な音質の方を好まれる方も多く居られる筈で、
実際に聴き比べてみた時に「こっちだって良い音じゃねーか!」とお感じになられたら御免なさい。

音質84点+α。
300枚限定発売の2CDプレス盤。
ビニールコーティングされたPP加工のジャケも綺麗ですし、デザインも秀逸だと思います。
また、ジャケ内部に使用されている当時のライブ写真も珍しいものが使用されており、
視覚的にも高級感のあるブートだと思います。
『GREAT BIBLE』 / (Highland-HL112/13#KC5)
Live at : Rainbow Theater, London, UK. / 1973. Oct. 26

前出『AT RAINBOW THEATRE (TARANTURA : TCDKC-3-1,2)』『THE MINCE (SIRA-CD 27/28)』
及び『RAINBOW 1973 (Sirene-229)』と同内容。但し使用しているマスターが違っていて、
本作はオープニングの様子が他タイトルより30秒ほど長く収録されています。
しかしマスターテープに起因する音揺れが酷く、聴き苦しい箇所が最後までかなり
目立つのが難ですな。聴き通すのに根性が要る一枚です。(-_-;)

音質27点。
2CDプレス盤。
1973年 第二次ヨーロッパツアー(11月2日〜11月29日)
『THE TALKING RYTHEM BOX』 / (Catfood - CAT1/KC-3)
Live at :
(1)〜(8) Hamburg, GERMANY. / 1973. Nov. 2
(9)〜(12) Westpalm Beach, Florida, USA. / 1973. June. 21

第二次ヨーロッパツアーの初日音源です。
曲間のMCは全てカットされ、更にはショウの途中までしか収録されていない不完全なものではありますが、
初日当日の様子を生々しく伝えている音源です。

「Larks' Tongues In Aspic - Part T」は既に定番となった短縮版の演奏ですが、
もう完全にフォームが固まってソツなく演奏をこなしています。
この曲の中盤でクロスのヴァイオリンがリリカルな即興メロディーを奏でていていますが、
これが実に印象的なテイクです。
「Easy Money」と「The Night Watch」はどちらも非常にシャープな曲想になっており、
中間部のインプロヴァイズもさほどしつこく無く適度にまとめてあって、曲と歌を
しっかり聴かせようという演奏スタイルに変化している感じがします。
「Fracture」は好演奏ながらも曲の途中(7分51秒付近)でカット。この日のプレイは珍しく静かな落ち着いた
もので、他日の様に張り詰めた緊張感はあまり感じられません。また中間部の贅肉もきっちり落と
されていて、この辺りは第二次イギリスツアー中で披露していたスタイルを継承している感じがします。

「Book Of Saturday」はここにきて完全にショウのアクセント的な存在になった感がありますね。(^_^;)
小曲としてこじんまりと纏められており、3〜4月頃の公演で占めていた役割や曲想を比べると
天と地ほどの差が感じられると思います。「Lament」は中間部以降のベースラインとギターの絡み合いが強烈。
(7)のインプロは、ここでもリズムボックスを使用した即興テイクを披露しています。
1分50秒付近からクロスがエレキピアノで前面に出てくると、ウェットンも図太いベースラインで
音符の洪水を弾きまくってきて、かなり激しい曲想へと変化してゆきます。
フリップも狂的なギターでそこに絡み、ビルも鉄板等のジャンクな破裂音を発してきますが、
リズムボックスの基本的に無機質な音をより有機的に変質させてゆく様は圧巻です。
そのまま雪崩れ込む「Exiles」は、冒頭からウェットンのベースラインが一風変わっていて面白いですが、
この曲もまたソツなく余裕をもってこなしている印象があり、どちらかといえば曲の
ドラマ性に重きを置いて演奏をするスタイルに変化している感じがします。

音質86点。
1CDプレス盤。
『IN ARMOUR BRIGHT』 / (PF-141S @ PeaceFrog)
Live at : Jahrhundethalle, Frankfurt, GERMANY. / 1973. Nov. 3

第二次ヨーロッパツアーツアー2日目の音源。
「Larks' Tongues In Aspic - Part T」はこの日もショートバージョンで、
冒頭部分から鉄板・鉄筋系のジャンクなサウンドが絡んでゾクゾクする
スタートを切っています。ビルは曲後半もかなりジャンクさ溢れるパーカッシヴな
プレイをしていますが、これが中盤の静かな部分との対比となって
ショートバージョンの良さをよく引き出した曲想になっていると思います。
「Easy Money」はスタジオバージョンに近い演奏。他日なら爆発する中盤の
インスト部も随分と大人しく静か目で、逆に意表を付かれる演奏です。

「The Night Watch」はドラマ性を強く感じる演奏で、曲の良さが存分に
出ている名演。こういうのを聴くと、シングルカットした理由もウンウンと頷けます。(^^)
「Fracture」は、どこか搾り出す様な息苦しさから入ってゆく冒頭部が印象的。
緊張感も前日の演奏より感じられますし、曲想に変化が訪れる5分43秒付近も
ハッとさせられます。「Book Of Saturday」は気品ある仕上がり。どこか抑揚を
押さえ込んだ曲想にもなっており、終曲部で音を散らすギター音も良い感じです。
「Lament」は引き締まった演奏で、曲の輪郭が際立っています。2分51秒付近から
入ってくるギターもちょっと病的というか変な感じでユニーク。

(7)のインプロは、クロスの奏でるエレキ・ピアノ(だと思う)のフレーズから幕を上げる幻想型。
前日のインプロに似た展開ですが、和音のベースが重々しく響き渡ると荘厳さを増し、
非常にムードある曲想へと変化してゆくのが特徴です。3分30秒付近からドラムが急に
絡んできて徐々にジャンクな曲想へ向かい、フリップとビルの音の対話を経た後に
歪んだメロトロンの音が入って音が分厚くなり、その分厚い音がそのまま「Exiles」冒頭の
音として変貌を遂げ、そのまま「Exiles」へ雪崩れ込んでゆきます。
「Larks' Tongues In Aspic - Part U」は「The Talking Drum」から繋がらない単体での演奏で、
冒頭部のギターが掻き鳴らされていきなり始まっています。強弱メリハリのある力強い演奏で、
中でも2分24秒〜29分秒付近で聴けるアタックの強い・スピーディなベースラインが非常に
カッコイイんですが、残念ながら曲の後半4分50秒付近でフェイドアウトしてディスクが
終わってしまいます。・・・う〜む・・・(^_^;)

音質84点。
下段↓で紹介している同一音源『THE RETURN OF THE CRIMSON KING / (Chapter One CO-25120)』と
比べると、音が若干潰れている+僅かに音が遠い・・のですが、録音レベルは終始安定しており、
音質に変化が無い+編集跡の無いノーカット収録なぶん、本作の方が聴き易いです。
1CDR。
『THE RETURN OF THE CRIMSON KING』 / (Chapter One CO-25120)
Live at : Jahrhundethalle, Frankfurt, GERMANY. / 1973. Nov. 3

上段で紹介している『IN ARMOUR BRIGHT / (PF-141S @ PeaceFrog)』と同一音源。
使用しているマスターも全く同じものを使用しています。
音質は、ディスク冒頭では音が近くて透明感もあるので決して悪くないんですが、
残念ながらそれに付随して以下の様な編集跡が所々で目立ちます。

まず「Larks' Tongues In Aspic - Part T」の終曲後ですが、
本来ならフリップによるバンドと曲名の紹介があり、その後簡単なチューニングを経て
暫く経ってから次の「Easy Money」が始まるのですが、本作ではその
「簡単なチューニングとEasy Money開始までの約一分強の間」がカットされています
(『IN ARMOUR BRIGHT』ではこの部分がノーカット収録されています)。
「The Night Watch」でも途中3分15秒〜18秒で約3秒間の音飛びがあり、
「Fracture」では7分46秒付近で一瞬音飛び→8分06秒付近でも音飛びした後、
もう一度後半突入部分から始まるというかなりズサンな編集跡があります
(しかし曲は最後まで収録されている)。

そしてこの「Fracture」の終曲後にフェイド・アウト→フェイド・インで
「Book Of Saturday」が始まっているのですが、この間の数秒間の間も
失われています(『IN ARMOUR BRIGHT』ではノーカット収録)。
ラストの「Larks' Tongues In Aspic - Part U」も後半の終曲手前で
フェイド・アウトして終わっていますが、これは『IN ARMOUR BRIGHT』も同じです。
恐らくマスターテープがそうなっているのでしょう。

音質は、ディスクスタート〜(2)「Easy Money」の冒頭まで86点。
「Easy Money」の途中から音が徐々に劣化し始め、その後は終りまで82点くらい。
しかし音に透明感と明瞭感があり、特に「Larks' Tongues In Aspic - Part T」に関しては
『IN ARMOUR BRIGHT』よりも音が近くて非常に聴き易いんですが、やはり上記してきた
随所で見られる編集跡を考えると『IN ARMOUR BRIGHT』に軍配が上がるかな、と思います。
1CDプレス盤。
『DROWNING IN MIRACLE SAUCE』 / (PF-348D @ PeaceFrog)
Live at : Rhine Halle, Dusseldorf, GERMANY. / 1973. Nov. 5

「Larks' Tongues In Aspic - Part T」は凄まじい立ち上がり。
のっけからパーカッシヴでジャンクなサウンドをビルが装飾しまくっており、
ラウドでグルーヴに溢れた音の塊が徐々に姿を現す様子は絶品です。
もちろんベースソロが廃されたショートバージョンですが、
ヴァイオリンが目立つ中盤〜再びラウドに締めてゆく後半への流れは
大変ドラマティックで、重厚感と気品を兼ね備えた名演だと思います。
「Cat Food」はオリジナルの持つユニークな曲のイメージを巧く再現
している好演奏です。アンサンブルも立体感があり、右に左にと
動き回る様な躍動感も秀逸だと思います。

一転して「The Night Watch」はこの日も魅惑的なパフォーマンス。
中間部でのギターソロ(3分03秒付近〜3分50秒付近)もフリップらしい
リリカルさがよく出ていると思います。
「Fracture」はアルバム版に近いイメージ(=11月23日タイプ)での立ち上がり。
途中、3分07秒付近から入ってくる様な金物系を叩くビルのイメージも、
クロスのヴァイオリンも、その音を入れる場所とタイミングがほぼ定まった様子を
伺わせます。前半終了直前でリズムに溜めを効かせた演出があったり、
楽曲終盤付近ではでフリップがトレモロを入れたり(9分37秒付近〜47秒付近)、
メロトロンが違う音程で表現していたり(これはメロトロンが不安定な為?)と、
他日の演奏とは一風変わったアプローチで曲を演出しているのも興味深いところです。
「Easy Money」は、中間部突入手前(2分37秒付近)からギターがアルペジオを
入れ始めているのが印象的。その後も淡々と"フリップ節"で弾き続けていますが、
相変わらずブビバビとマイペースでベースを鳴らしているウエットンも面白い。(^^;)

終曲後、少しの間を置いてから始まるインプロはこの日最大の聴きどころ。
マイナーコードのギターの単音が下でひとつ、和音が上でふたつ、
高低でリズミカルに交互に鳴るイメージの中を他の楽器が走馬灯の様に
軽く鳴っては消えてゆくイメージからスタート。ビルは木琴やベルを鳴らし、
クロスもクラシカルでメルヘンチックなマイナー・メロディーを
奏で始めます(2分09秒付近)。その音像は奇怪ではあるけれど同時にユーモラスでもあり、
まるで外国の古い御伽噺のBGMにでもなりそうな雰囲気が漂っているようです。
3分01秒付近で一旦ブレイクし、3分40秒付近から再びギターの不気味で
リズミカルな単音旋律が復帰。この辺りは凄くスリリングでゾクゾクします。
中盤、曲想が変わると(5分16秒付近)今度はメロトロンが分厚い音で被さってきて、
古い白黒の恐怖映画で使っていたサウンドトラックの様な音像を創り出します。
そしてこのメロトロンが次第に変貌して「Exiles」の冒頭へと繋がっています。

しかしそれだけでは終わらないのがこの日の凄いところ。
その「Exiles」の終演後にもう一度、このインプロの続きとも言える即興が
プレイされているんですね。導入はビルの木琴(だと思う)で誘われ、
幻燈機に映し出された古いメルヘン映画の様な音像が再び始まってゆきます。
この木琴は終始鳴り続け、これに奇怪なギターの旋律やら重たい単音でうねる
ベースやらが装飾されてゆき、曲の終盤で囁く様に「The Talking Drum」の
旋律が鳴り始めます。まさに鳥肌が立つこと請け合いの4分半です。(^^)

この「The Talking Drum」ですが、終曲手前の5分15秒付近から
急に低音のアタックが目立つよう演奏されている(録音状態でそう
聞こえるのではなく、明らかにその様に演奏・打音している)のだけど、
これがまた迫力あって凄く良いです。そしてそこから繋がる
「Larks' Tongues In Aspic - Part U」は冒頭から音楽が炸裂しており、
凄まじいサウンドイメージが繰り広がっています。後半のラウドな
部分も実にダイナミックな演奏で、ヴァイオリンのノイジーな音が
フロントで舞いながら楽曲を装飾してゆく様子も見事です。

音質80点。
「Fracture」終演後と「Book Of Saturday」が始まるまでの曲間で
カットがありますが、さほど気になりません。
2CDR。
『DUSSELDORF 1973』
Live at : Rhine Halle, Dusseldorf, Germany. / 1973. Nov. 5

※新譜のCDレビュー用に雑誌beatleg編集部から送られてきたコピー音源(CDR)のみを持っているので、
ジャケの画像はありません。この欄に書いてある記事はそのコピー音源を聴いての私的レビューですが、
実際の製品をそのままCDRに落としてあるものなので、音質面等は実際の製品と同じです。

上段で紹介している『DROWNING IN MIRACLE SAUCE / (PF-348D @ PeaceFrog)』
及び、下段で紹介している『BARTLEY CARPET / (ASP003-004)』と同内容。
使用しているマスターも全く同じです。
但し、下記の様な編集跡もあるのが難です。

まず本作は、冒頭「No Pussyfooting」の出だし00分11秒付近〜17秒付近までの
約6秒間が空白・無音になっています。(※『DROWNING IN MIRACLE SAUCE』では
この無音・空白間にもちゃんと音が入っています。また『BARTLEY CARPET』は
そもそもこの部分をカットしてのフェイド・インでディスクがスタートしています)

もうひとつ、本作は「Fracture」と「Book Of Saturday」の曲間カットに
一瞬ノイズが入ってます。(※『DROWNING IN MIRACLE SAUCE』にはこのノイズが
入っておらず、スムーズに繋いであります)

音質79点。
ヘッドホンで『DROWNING IN MIRACLE SAUCE』の収録音と比べると、
本作はほんの僅かですが収録音が奥まって聞こえます。
一応そのぶん1点差し引きましたが、殆ど変わらない程度です。
2CDR。
『BARTLEY CARPET』 / (ASP003-004)
Live at :
Disc1〜Disc2-(3): Muthers, Nashville, Tennessee, USA / 1974. Apr. 17
Disc2-(4)〜(9): Rhine Halle, Dusseldorf, GERMANY. / 1973. Nov. 5

メインで収録されているのは74年4月のナッシュビル公演ですが、
Disc2−(4)〜(9)が本欄で扱う73年11月5日公演です。
上2つで紹介している『DROWNING IN MIRACLE SAUCE / (PF-348D @ PeaceFrog)』
及び『DUSSELDORF 1973 / Red Circle』と同一音源で、マスターも同じものを使用
しています。但し本作はクレジットを見ても一目瞭然ですが、不完全収録盤です。

そもそも不完全収録なので細かいこと言っても意味無いのですが、
冒頭「No Pussyfooting」はディスクスタート〜約20秒間分が
カットされてのフェイド・インとなっています。
(※他の上記2タイトルでは収録されている)

また収録音も若干左寄りで、音像がセンターに無いというのも
難点でしょうか。まぁボーナス扱いですし、このタイトルの
メインの収録はあくまでも74年4月のナッシュビル公演なので
仕方ないですねぇ。

音質78〜80点。
曲が進むにつれて少しずつ音質が向上しています。
但し、音像の透明度はなかなかのものがあります。
2CD。
『THE POISON DOOR』 / (KC-006)
Live at : A.S.T.V. Halle, Saarbruegen, GERMANY. / 1973. Nov. 8

旧IKO IKO製のブート。
所々で音の歪みが気になりますが、
遊び心に溢れた余裕ある演奏が詰まった素晴らしい公演が収録されています。

この日の「Larks' Tongues In Aspic - Part T」は少しハイテンポ。
この時期らしい短縮版としての演奏ですが、最初からトップギアに入れた緊迫感ある演奏をしています。
曲の中間部に於けるクロスのソロはこの日ちょっと長めに弾いているのも特徴です。
「Cat Food」はこの日もウェットンの図太いベースが跳ね回っていて、曲に素晴らしい躍動感を与えています。
曲後半のビート感も極上で、これはなかなかの好演奏のひとつでしょう。クロスの狂的な
ヴァイオリンも素敵な味付けになっていると思います。
「Fracture」は、緊張感溢れるフリップのギターが冴え渡るテイク。ドラムが変化を出し過ぎて
少しリズムの消化不良を起こしている箇所も見受けられ、そのせいで後半ではアンサンブルが
巧く機能しない部分もありますが、この日は少しリキみ過ぎてしまったのかもしれないですね。(^_^;)

「Book Of Saturday」はウェットンが歌詞を間違えてしまい、最初から
演奏のやり直しをしているという非常に珍しいテイク。
しかしテイク2はこの日も素晴らしくチャーミングで、ムードに溢れた素晴らしい演奏を披露しています。
(9)のインプロは、何とカントリー調のカッティング・フレーズから入ってゆくという大変珍しい演奏。
ビルが奏でる鉄琴と、図太いビートを連発するベースがそれをどんどん輪郭ある曲想に変化させてゆき、
最後はヘヴィ・メタルの様な分厚いアンサンブルで終わるという圧巻の内容です。
「Exiles」は、中間部からのウェットンとビルのドラムが実にスリリングかつユニークで、
この曲独特の抑揚感をここでも感じるでしょう。
またここでの「Larks' Tongues In Aspic - Part U」も実に素晴らしい演奏なのですが、この日はその
導入部となる「The Talking Drum」が絶品。特にクロスのヴァイオリンが見事で、他日以上に
心に響くメロディを存分に弾きまくっているのが印象的です。
曲そのものも他日より確実にハイテンポで緊張感を誘っており、
それがまた音楽を揺り動かす良いカンフル剤になっている様にも感じます。

音質79点。1CDプレス盤。廃盤。
『THIRD REICH』 / (※ Special Bonus CDR for 1st set of "FASCIST" (Sirene-165))
Live at : A.S.T.V. Halle, Saarbruegen, GERMANY. / 1973. Nov. 8

11月13日の欄で詳しく紹介している『FASCIST (Sirene-165)』を購入すると付いてきた
無料配布のボーナスディスクCD。収録内容は上段で紹介している既発盤
『THE POISON DOOR (KC-006)』と同じで、使用しているマスターも全く同じですが、
音質は本作の方が若干優れています。
各楽器の細やかな音も、既発タイトルより多少聴き易くなっているのは
嬉しいところです。(^_^)

音質81点。限定150枚のボーナス配布1CD。
『NIGHTMARE』 / (Sirene-175)
Live at : Palazzo Dello Sport, Turin, Italy. / 1973. Nov. 12

装い新たに再発された一枚。同一音源の既発盤として『AVANT GARDE (Ayanami-161)』と
『TIME MACHINE (LZCD 027/28)』がありますが、本作はピッチ補正を基本にした修正が細やかに施されていて、
既発盤よりもグッと聴き易くなっているのが特徴です。マスターに起因する「The Night Watch」中間部の
ハウリングや「Larks' Part II」での部分的な音の劣化は既発盤と同じですが、全体的な音の安定感は
本作が一番ではないでしょうか。

本作の登場でこの日の演奏がより豊かな音像で聴ける様になった事で、個人的に既発と違った印象を受けたのは
「Fracture」でした。過去の2タイトルではこの曲が若干ピッチが早く、また中間部で音質不安定な箇所も
あったのですが、本作で聴き直すと実に堂々たる演奏として聴けるのは嬉しいところです。
また、この日一番の聴きどころとも言える「Easy Money〜Improvisation〜Exiles」の流れも、
レトロ・ダイナミックな温もりのある音像で仕上げられており、これも既発タイトルとは
かなり違った曲の印象を受けると思います。これと同時に、既発ではイマイチ聴き取り辛かったインプロ前半の
か細いベースラインも、本作では自然に聴き取れるのが嬉しいです。

再発盤とはいえ各楽器の音もバランス良く録れているし、
緊張感溢れる73年終盤の様子をよりストレートに伝えてくれる好盤です。(^_^)

音質88点。2CDプレス盤。

『AVANT GARDE』 / (Ayanami−161)
Live at : Palazzo Dello Sport, Turin, ITALY. / 1973. Nov. 12

上段で紹介した『NIGHTMARE (Sirene-175)』及び、下段で紹介している
『TIME MACHINE (LZCD-027/28)』と同内容。
上段の『NIGHTMARE』の欄では各タイトルの音質の違いについて書いたので、
ここではこの日の演奏内容についてちょっと書きます。

「Larks' Tongues In Aspic - Part T」はリズムに溜めを効かせ過ぎていて、少々違和感を受けるテイクです。
中間部でビルがカウベルを鳴らすのもこの時期独特ですが、コーダではタムを使用したドラムソロがあり、
鉄琴の音色で終わってゆく幻想的なテイクが愉しめます。
「Cat Food」はウェットンのヴォーカルが苦しそうで、部分的に声が出きっていない処もある面白いテイク。
(8)のインプロは興味深いもので、ギターのアルペジオと東洋的な音色のパーカッションで始まり、
それをベースが引き継いでゆくという展開なのですが、注目すべき点はここでのウェットンの
ベースラインが、明らかに後の「Starless」後半部分となる原型フレーズだという事です。
これはかなり興味深い演奏だと思います。(^_^)

Disc−2では、(3)のインプロで2台のメロトロンが音の洪水を溢れさせています。
そのメロトロンの音の海の中をビルのパーカッシヴがドラムが泳いでゆく様相で曲が進むのですが、
時にギターが、時にヴァイオリンがその海に出てきて一緒に泳ぐといった雰囲気のもので、
こうした展開のインプロはかなり珍しいと思います。
ショウの締めくくりとなる「21st Century Schizoid Man」では、フリップが珍しくギターソロに
曲のリフを取り込んで弾いている点も非常に興味深いです。

音質85点。2CDプレス盤。
尚、Disc1−(5)「The Night Watch」の1分50秒付近と1分59秒付近でハウリングの様なノイズが入っていますが、
これはマスターテープに起因するものと思われます。
『TIME MACHINE』 / (LZCD-027/28)
Live at : Palazzo Dello Sport, Turin, ITALY. / 1973. Nov. 12

前出『NIGHTMARE (Sirene-175)』や『AVANT GARDE (Ayanami-161)』と同内容。
マスターは同じ物が使われていますが、音質は本作の方が劣っています。

確かに音質では後発の上記2タイトルより劣っていますが、しかし本作は
そのパッケージングにも魅力があると思います。
画像を観て戴くと分かりますが、本作は観音開き仕様の特殊な紙ジャケ仕様となっており、
ジャケ内側にも当時の様子を英文で綴ってあると思われる素晴らしい装丁が魅力です。
1970年代の古典アナログブート盤の様な、手作り感覚に溢れた温もりのある一枚だと思いますし、
良品アイテムとして手元に置いておきたくなる一枚でもあります。

音質80点。
観音開き仕様の特殊紙ジャケ2CDR。
ナンバリング入り限定1000枚プレス・廃盤。
『FASCIST』 / (Sirene-165)
Live at : Palatza Delo Sport, Rome, ITALY. / 1973. Nov. 13

大発掘の音源。
既にファンの間では長い間親しまれてきた音源で、同日を収録した既発盤としては
下段で紹介してる『MIRRORS (Wild Bird WBR-CD-9015)』と、
『SOLVE ET COAGURA (Teddy Bear Records - TB72)』の2タイトルがありましが、
これらはどちらもショウの中盤と後半が不完全収録でした。ところが本作の登場により、
これがほぼ完全な形で一公演を通して聴ける事になった(しかも初登場を5曲も含む)のですが、
往年のファンにとってこれはウルトラ級の大発掘・大発見でした。

というのも、この日は後年にデヴィッド・クロスが
『イタリアのスポーツ競技場で、機関銃を持った警官隊が我々の居る上のバルコニーを
パトロールしている姿がライトが当たって見えた』・・・と述懐している様に、
ショウの後半『21st Century Schizoid Man』で熱狂したファンの収拾がつかなくなり、
機動隊が出動して一時的にショウの終盤が中断してしまったからです。
この時、警備隊が喧騒を収めながらクリムゾンに2回目のアンコールを依頼するのですが、
それに応じてステージに向かうフリップに急接近したファンが居て、
それを観た一人の警備員が威嚇の発砲をしてしまいます。
これに怒ったヒッピー達はステージに電力を供給する電気ケーブルを引っこ抜いてしまい、
ちょっとした暴動が起こってしまったのですが、暫くして騒ぎが収まり、電力が回復した後、
ようやくクリムゾンは「Cat Food」を演奏した・・・という生々しいエピソードが残っているからです。

つまり、暴動による中断時間があっただけに、例えその中断時間をカットする為に録音機材を
止めていたとしても、群集の暴動と混乱の中でショウの続きを録音するのはなかなか困難な事
だったと思われるし、それが原因で今日までこの日の音源が不完全収録のままだった事も
頷ける訳なのですが、それが本作の登場によってほぼ完全な形でこの日のステージが聴ける様に
なったのだから、これはもうファンにとって嬉しい事件と言うほか無い訳です。

そんな本公演の聴き処は幾つもありますが、基本的な聴きどころは下段で紹介している
『MIRRORS』の欄を参照して戴くとして、ここではそれら既発盤でカットされ、本作で
ブート初登場になったショウの中間部「Easy Money〜Improvisation〜Exiles」(Disc2−1〜3)を
中心にレポートしてゆきます。
面白いのは、この3つの曲が切れ目の無いメドレーとして演奏されている事で、どこか
同73年4月の演奏形態を思わせる展開に似ている事です。また、ここでのインプロは
前後の曲を繋ぐブリッジとしての役割を果たしながらも独自の曲想をきちんと持ったオリジナルなもので、
フリップの攻撃的なギターが実に印象的です。

そして同じく本作でブート初登場となった「21st Century Schizoid Man」も強烈。
特に中間部からの盛り上がりが抜群で、カッティングするフリップのギターと、
図太い音で跳ね回るウエットンのベースラインの絡みは絶品。中間部の後半で披露される
ユニゾンで音を駆け巡るパートなど、あまりに凄くて失神すること請け合いです。
ただ、残念ながら8分55秒付近で突然ブツ切れて終わってしまうのですが、
これがテープの残量切れによるものなのか、もしくは暴動の始まりを察知して身の危険を
感じた録音者が意図的に録音を止めたものなのか、真相は分かりません。

そして何よりも興味深く最大の疑問となるのが、上記した暴動の後に披露された
セカンドアンコールの「Cat Food」でしょう。明らかにDisc1−(4)とは別の演奏だし、
暴動は収まっても熱気は冷めやらないオーディエンスの歓声が演奏前で確認出来ますが、
これは一体どういう事でしょうか?
・・・というのも、これまでの既発2タイトルではこのDisc1−(4)の「Cat Food」は
この『セカンド・アンコールでのCat Foodの演奏が編集されてDisc1−(4)に配置されていた』のだと
ファンの間では信じられてきたからです。しかしここに収録されたセカンド・アンコールの「Cat Food」は、
明らかにDisc1−(4)とは別の演奏です。だとすると、過去の"編集説"は間違いだという事になりますし、
新たに次の2点を再検証しなければならなくなってくる筈です。
すなわち、

1. この日は「Cat Food」を2回演奏した。
2. どちらかの「Cat Food」が他日の音源。

・・・果たしてどちらが正しいのかは今後の研究課題になってくると思いますが、
いずれにしても本作は73年クリムゾンの閉ざされた扉を大きく開け放ち、
更なる研究課題を呈した最大の問題作と言っても過言では無いでしょう。

尚、本作で使用しているマスターテープは既発2タイトルと同一のものですが、
かなりマスターに近い音源を使用している為か、音質面でも過去最高と言えます。
また細かなことではあるけれど、既発ではカットされていた曲間のチューニング部分も
完全に収録されているので、これを聴くといかに既発タイトルがカットと編集だらけ
だったかも分かると思います。
プレス盤2CD。

『MIRRORS』 / (Wild Bird Records, WBR-CD-9015)
Live at : Palatza Delo Sport, Rome, ITALY. / 1973. Nov. 13

ブートCD黎明期から今日までの長きに渡り、この11月13日の模様を
伝え続けてきた古典の名盤。しかし上段で紹介している『FASCIST (Sirene-165)』が
2006年にリリースされた事により、本作もようやく引退を迎えました。(^_^;)

不完全収録盤ではありますが、さすがに長きに渡って親しまれてきた音源だけに
音質にも古典音源独特の温もりがあり、これはこれで現在でも充分に聴き応えがある一枚だと思います。
・・・という訳で、上段の『FASCIST (Sirene-165)』では書き切れなかったこの日の
演奏内容を駆け足で下記してみました。

「Larks' Tongues In Aspic - Part T」は冒頭から凄まじい音のせめぎ合いで、
暴力的なまでに激しい演奏を披露しています。中間部のヴァイオリンは情感溢れるプレイで、
クロスの素晴らしいイマジネーションを感じる事が出来る好演奏です。
「Cat Food」はフェイドイン。しかしこの曲の演奏としてはこの時期最高のベストプレイと
言えると思います。跳ね廻るウェットンの力強いベースラインと、ビルの素晴らしいドラミングは
まさに圧巻です。
続く「The Night Watch」も好演奏。伸びて通るヴォーカルと、透明感のあるギターフレーズのハーモニーは、
音の向こう側にある珠玉の美しさを確かに感じさせてくれます。「Fracture」も秀逸で、どこか74年6月頃の演奏を
彷彿させる疾走のベースラインがかっこいいです。コーダに向かう8分05秒からの展開は、この曲の
全ての演奏中でも屈指のものだと思います。

「Book Of Saturday」も至高の演奏。恐らく73年中のこの曲のベストプレイではないでしょうか。
中盤以降の粒の揃った70年代風ブラストビートは音楽の極上の瞬間を伝えてくれます。
(7)−aのインプロも凄まじいです。どこか病的でノイジーな主旋律を軸とした曲想で、張り詰めた空気が
終始漂っているのが特徴です。それが続く(7)−bに受け継がれると、クロスの東洋的な音色のヴァイオリンが
前面に出てきます。面白いのは、ここでのビルのドラミングが72年12月15日・ポーツマス公演で
ジェイミーが叩いていたコンガのメロディーに似ていること。発される音がどこか呪術的な様相を
呈していて興味深いです。そして「Larks' Tongues In Aspic - Part U」。
最強・最狂で、見事という言葉しか出てきません。(^_^)

音質86点。1CDプレス盤。廃盤。

『THE GREATEST SWINDLER / ANOTHER SIDE OF "...BUT NEITHER ARE THEY OTHERWISE"』 / (Night Sun 003-004)
Live at : Volkshaus Zurich, Switzerland. (※ Mixed at Power Mountain Studios London) / 1973. Nov. 15

73年屈指の名演・名音源のひとつです。
「Larks' Tongues In Aspic Part I」は中間部にベースソロが無いショートバージョン。
音楽の大きさがよく伝わってくる完璧な演奏で、アンサンブルのキレも見事だと思います。
この日も2日前のローマ公演同様に後半で聴けるヴァイオリンソロの情感豊かな音色と響きが
印象的で、そのヴァイオリンのソロ終盤から鉄琴か貝殻風鈴の音が印象的に入ってくるのだけど、
このビルのアプローチも見事ですね。そしてそこから一気に終曲部の展開が襲ってくるスリリング
な展開は特筆されると思います。「Lament」は序盤通常通りに始まりますが、歌詞2番に入るところ
からボーカルラインにエコーが掛かり、曲の印象がガラリと一転するのがユニーク。歌詞3番からは
またエコー無しに戻っています。それにしてもここでの凄まじいまでの演奏力は強烈。終盤へ
向かうにつれてへヴィなサウンドが渾然一体となって畳み掛ける様子も見事ですし、
一糸乱れぬ演奏音がフッと突然終わる終曲部では一瞬間が開いてから拍手が起こっています。
曲を知っていたにせよ知らなかったにせよ、オーディエンスも目の前で起こっていた
アンサンブルの凄さに呆気に取られていたんじゃないでしょうか。(^_^;)

「Cat Food」もこの時期らしい跳ね回る曲想がかっこいいですね。ブビバビと明快に
弾け廻るウエットンのベース音がこの日も楽曲を牽引する強力な推進力となっており、
キレの良いアンサンブルがどんどん重なってゆく様子に惹き込まれること請け合いでしょう。
「The Night Watch」も優れた名演で、弱音と強音のコントラストが非常に眩しい逸品。
中間部(2分51秒付近〜)から入ってくるメロトロンとギターの絡み合いも実に心地良い響きで
は共鳴しており、そこから導かれてのヴァイオリン、そして終曲へ向かうアンサンブルの
響きは本当に魅力的なシーンになっていると思います。名曲「Fracture」は異次元へ
誘うサウンドアプローチがこの時点で未知の領域へ踏み込み始めた事を伺わせる素晴らしい
パフォーマンスとなっており、全編に高い緊張感が漲っているのが印象的です。
この日は後半部で若干アンサンブルが乱れる箇所がありますが、それでも音楽の質の高さは
保たれていて、聴き終えるとグッタリする心地良い疲労感も伴っている様に思います。

そして「The Law Of Maximum Distress」。この音源最大の魅力と聴き処は何と言っても
これがノーカット完全版として聴ける点でしょう。この曲は4枚組のオフィシャルライブ盤
『THE GREAT DECEIVER 4CD BOX』では前半をパート1、後半をパート2と分けて中間部がブツ切られて
収録されており、その意図的に削除(※・・ですよね、あれは)された部分には「The Mincer」の原型が
演奏されていたのは熱心なファンには有名な話。本作ではそのカットされた「The Mincer」の
原型部分がオリジナル演奏の状態で収録されており、この曲の全容と「The Mincer」誕生の瞬間を
存分に堪能する事が出来ます。

ただこの「The Law Of Maximum Distress」、本作では大変残念な事に出だしの一音目が
切れているんですね・・(T_T)
これ、たぶんメーカーが本タイトルを製作する際の単純なポカミスだと思うんですが、
一音目が切れたカットインで突然始まっているのが非常に残念なところです。
ちなみにひとつ下の欄↓で紹介している、本作と同マスター同音源を使用した別タイトル
『DREAMS TO A REAL SHOW / (Highland−HL373/374)』ではこの部分、ちゃんと冒頭から
収録されています。

しかしながらパート1の終盤から中間部「The Mincer」へ繋がるブリッジの箇所は各種オフィシャル
(※上記『THE GREAT DECEIVER』や『暗黒の世界 - 40周年記念エディション』等)で聴けるものより
自然でスムーズですし、オフィシャルでは突然音質が変わる後半パート2への繋ぎも当然ながら
本音源の方が自然な流れと共に鑑賞出来るので違和感が無く聴き易いです。そしてこの中間部
「The Mincer」の原型パートですが、やはり各種オフィシャルに使用されたのは間違いなく
本作に使用された音源でしょう。ちなみに本音源・本トラックの10分04秒付近で一瞬だけ
「ブツッ」という目立つノイズが入っていますが、これは前記した同マスター同音源の
タイトル『DREAMS TO A REAL SHOW』の同曲でも同じ箇所でノイズが入ってます。
(※『DREAMS TO A REAL SHOW』のトラックタイムではDisc2-(1)の9分56秒付近)

「Easy Money」はこの日もギターのトリッキーな動きと音色が冒頭から耳を惹くパフォーマンス。
アンサンブル全体としては割とベーシックな演奏だと思うんですが、やはりこの曲はついつい
ギターの動きに耳が反応してしまいます。中間インスト部ではハーモニクスを入れたりミュートで
弾いてみたりしていますが、それでもこの日は他日ほど際立った動きをしておらず、全体の楽想が
あまり崩されていない点が逆に面白いんじゃないかと思います。むしろ他日とは若干違った印象を
受けるのがこの日の「Exiles」で、エッジの効いたヴァイオリンの動きが他日のものより際立って
いると思います(1分54秒付近〜ほか)。また、あまり目立ちませんが演奏を通して後ろで鳴っている
ドラムのリムショット(?)の抑制を効かせたリズムキープもこの日の演奏をより引き立てている
意外な隠し味になっているんじゃないかとも思います。

Disc2-(4)のインプロ「Some More pussyfooting」は混沌系。うねる様な歪んだサウンドカオスが
序盤から魅力的で、各楽器の鋭い絡み合いがスリリングに重なってゆく名インプロだと思います。
演奏の終盤、5分08秒付近から一瞬だけ「The Talking Drum」のテーマが出てきますが歪んで一度消え、
終盤で改めてテーマが出てくるのも聴き処でしょう。「Larks' Tongues In Aspic Part II」は
凄まじいエネルギーが解放され圧倒的なサウンドアタックが炸裂していますが、残念ながら
終曲手前でブツ切れで終了。3分02秒付近から突入してゆく中間部のアンサンブルの切れ味、
そしてそこから繋がる狂的なヴァイオリンのアプローチなどここでのパフォーマンスはすこぶる
良いだけに、これは何とも後味が悪い・・(T_T)
まぁマスターがそこで切れているんだから仕方が無いけれども、オフィシャルライブボックス
『THE GREAT DECEIVER 4CD BOX / Disc−4』にもこの日の「Larks' - Part II」は未収録なので、
このトラックの尻切れトンボ感は余計痛いですね。(T_T)

その「Larks' - Part II」は楽曲の終盤が少し切れているだけですが、しかし楽曲カットという意味では
『THE GREAT DECEIVER 4CD BOX / Disc−4』では楽曲が丸ごと削除されていた「Lament」「Peace - A Theme」
「Cat Food」「The Night Watch」「Fracture」及び「Exiles」が、本作ではノーカットで収録されて
いるので、本作でこれらが聴けるという意味は非常に大きいと思います。或る意味、こういう音源が
あるからこそ、ブート音源の愉しさがあると痛感させられる一枚ではないでしょうか。
尚、本作で聴ける「The Night Watch」ですが、ここでの演奏の後半部分が同73年10月23日の同曲に
差し替えられて『THE GREAT DECEIVER 4CD BOX / Disc−"2"』のトラック(8)に収められています。

音質86点。
2CDプレス盤。紙ジャケット仕様 / 300枚限定生産盤。
『DREAMS TO A REAL SHOW』 / (Highland−HL373/374)
Live at : Volkshaus Zurich, Switzerland. / 1973. Nov. 15

ひとつ↑の欄で紹介している
『THE GREATEST SWINDLER / ANOTHER SIDE OF "...BUT NEITHER ARE THEY OTHERWISE" (Night Sun 003-004)』
と同音源・同マスターが使用されているタイトル。

同音源・同マスターなので収録内容的にはどちらもほぼ同一ですが、聴き比べてみると
両タイトルには若干の違いがあって、それが「音質」と「部分カットの差」なんですね。
まず音質ですが、『THE GREATEST SWINDLER...』に比べると本作は音の解像度が粗めで、
演奏音も僅かに遠めに感じる音で収録されています。一方『THE GREATEST SWINDLER...』は
本作よりも音圧が高めで演奏音が近く鳴っており、左右の出力バランスも整えられているように思います。
これはたぶん『THE GREATEST SWINDLER...』の方がジェネレーションの低い音源をマスターに
しているか、もしくはタイトルを商品化する際に業者が施したリマスタリング作業の差でしょう。

部分カットについてですが、これは『THE GREATEST SWINDLER...』の欄でも書きましたが
「The Law Of Maximum Distress」の冒頭が『THE GREATEST SWINDLER...』では僅かに切れて
いるのに対し、本作ではちゃんと冒頭から収録されています。これは本作のアドヴァンテージでしょう。
しかし一方で両タイトルとも尻切れトンボで終わっている「Larks' Tongues In Aspic Part II」
の終盤部分については、本作の方が手前でフェイドアウトしており、『THE GREATEST SWINDLER...』
に収録されているトラックの方が(ブツ切れではあるものの)約4秒間ほど長く収録されています。

どちらの音源にも一長一短ありますが、いずれにしてもこの音源のキモは「The Law Of Maximum Distress」
がノーカットで聴けるという点と、オフィシャルライブ盤『THE GREAT DECEIVER 4CD BOX』のディスク4に
未収録の演奏が聴けるという点なので、音源としての存在価値は今後も色褪せる事無く大きいと思います。

音質84点。
2CDプレス盤。



『QUARTET PLAYS TRIO : 2CD BOX SET』
Live Date
Disc-1〜Disc2-(3): Elzerhof, Mainz, GERMANY. / 1974. Mar. 30
: Disc2−(4)〜(9) : Zurich, Volkshaus, SWIZRELAND. / 1973. Nov. 15

MOON CHILDレーベルがCDブート最初期に出していた2CDボックスセット。
確か限定350個のプレスだったと記憶しています。
ボックス内にはタイトルを冠した巨大なシールシートと、
このボックスが出た1993年度のカレンダーが付いています。
このカレンダーは、クリムゾンのアナログブートLP盤の名作の数々が
コラージュされたもので、マニア心をくすぐる創りになっています。

収録内容は、Disc2−(4〜9)にボーナストラック扱いで73年11月15日の音源を収録。
上段で紹介している『DREAMS TO A REAL SHOW / (Highland−HL373/374)』と同内容ですが、
ショウの一部分のみを収録してあるので不完全収録盤です。
但し、この収録曲を御覧戴ければお分かりの通り、本作は1993年に発売されたばかりのオフィシャル盤
『THE GREAT DECEIVER : 4CD BOX SET』のDisc−4に未収録だった音源を補填する意味合いで
リリースされたので、発売当時は非常に意義深いブートレッグでした。

音質85点。
使用しているマスター音源は『DREAMS TO A REAL SHOW』と全く同じ物を使用しています。
ジェネレーションもほぼ同一レベルですが、音質は本作の方が若干だけ良いです。
Disc1〜Disc2−(3)にはメインに収録した音源として74年3月30日の音源を収録。
それについての詳しい内容は74年のページの3月30日欄を参照のこと。
2CDプレス盤・ボックス仕様。
『HURRI CURRI』 / (PF-297D @ PeaceFrog)
Live at : Salle Playel, Paris, FRANCE. / 1973. Nov. 19

裏ジャケ記載のクレジットでは
「Palais Paul Videl, Avignon, FRANCE. / 1974. Mar. 24」・・と
なっているけれど、これはデタラメ。本作入手時、このセットリストを
観た瞬間から怪しいとは思っていましたが、昨夜2つ下段↓で紹介している
『PARIS 1973』のCDRを聴き直していたら「!!!」・・と、気付きました。
これ、同じ日にそれぞれ別の人が別の位置から収録した別ソース同日音源です。

気付いたキッカケになったのは「Easy Money」の冒頭部でのギターの動き。
この日は歌詞1番スタート直後から鳴り出すギターが非常に特徴的な動きをしており、
これが『PARIS 1973』でも聴けた事で確信した訳です(※しかも『PARIS 1973』の
Disc-2はちょうどこの特徴的なギターのシーンからフェイド・インしており、これが
ラッキーだった(^^;)。また、「Lament」の3分20秒付近〜3分28秒付近で聴ける
ベースラインとギターの動きも非常に特徴的(※ベースラインが急速に駆け上がり、
頂点で奇妙なギターフレーズ+「Yeah!!」という掛け声が聞こえる)でしたし、
これに続く「Cat Food」の冒頭でマイクが一瞬オフになっているのも聴き比べに
分かり易い特徴だと思います。

まぁ何にしても日付が判明して個人的にスッキリしました。
という訳でこの公演のレビューを。
この日もなかなか良いステージを繰り広げています。

「Larks' Tongues In Aspic - Part T」はショートバージョン。
静と動のコントラストが眩しい演奏で、曲前半の破裂する様な曲想と
中間部の静かな演奏に非常にメリハリが効いていて素晴らしい演奏です。
後半突入前(6分13秒)からビルが奇妙な音(恐らく鉄板をスティックでこすっている)を
発しているのだけど、これがまたサウンドイメージをグッと盛り立てていて
思わず身震いしてしまいます。
「Lament」はアルバム版に近い演奏で、さほどの炸裂感は感じられず。
またギターがやや表現過多で後半に少々散漫な印象があるのも面白いです。
おごそかな「Peace - A Theme」から導かれる「Cat Food」もこの日は若干
アヴァンギャルド感に薄い印象があると思います。弾けているというよりは
丁寧に演奏している雰囲気があり、これはこれで面白いと思います。
続く「The Night Watch」は実に見事な演奏で、これもアルバム版に
忠実でありながらもイメージが増幅された素晴らしいパフォーマンスとなっています。
ただ、2分53秒付近で編集の痕跡(恐らくそうだと思う)があり、この部分で約1〜2秒ほどの
音が抜けているように思えるのですが、これは僕の気のせいでしょうか?

「Fracture」は73年度のインプロ中で何度もテストされてきた成果が
見事に結実しており、曲として完全に機能している様子が伺える好演奏。
アルバム版に近いプレイなんだけれども、この日は丁寧に(・・というより
安全運転で)演奏している印象を個人的には持ちました。曲後半の炸裂感と
ビート感もまぁまぁあるんだけど、やはりどこか慎重な印象が僕には感じられます。
ただ、ドラムのアプローチにアルバム版とは違う箇所が多くて、個人的には
この日のドラミングの方がドラマティックだと思います。

「Book Of Saturday」は冒頭が僅かに切れた状態でのフェイド・イン。でも
しんみりした雰囲気がとても良くて、外へ外へと出てゆく様な音でなくグッと
そこに留まる様な印象がある好パフォーマンスだと思います。「Easy Money」は
曲の出だし直後からフリップが独特のアルペジオを奏でていたり(1分07秒付近〜)、
出しゃばらず、しかし確かに変な事を後ろでしているビルがいたり、
そんな中を伸びやかに、切れのある声で歌い上げるウエットンが居たり、
不気味に音を染めてゆくメロトロンがあったりと、序盤から音と音の空白に
緊張感が漂っています。曲中盤のアヴァンギャルド感も申し分なく、4人の
白熱する知の技の絡み合いが絶妙です。

Disc-2に移りすぐ始まる(1)のインプロはメロトロンに導かれて静かなスタート。
各楽器の単音が妖しく揺らめき合い、1分13秒付近から聞こえる笛のような
音色(※これ何の楽器だろう?クロスのヴァイオリン?ビルがホイッスルとか
オカリナを吹いてる?)も独特で、透明感のあるサウンドイメージの中で
4人のイマジネーションが様々に交錯してゆく様子は非常に聴き応えあります。
4分50秒付近から曲想が変わり、ビート感も加わって徐々に激しさを増してゆきますが、
変則的なビートとアタックの強いベース音(特に6分40秒付近〜のベースは
弦が切れそうなアタックを何度も繰り返していてかっこいい)が気持ち良いです。
終盤でヴァイオリンとギターが前面に出てきますがそれが徐々に形を変え、
突如フッと「Exiles」が産まれる様子も見事です。

その「Exiles」はスケール感のある重厚かつ伸びのあるパフォーマンス。
終演後、ひと息置いてから始まってゆくこの日2つ目のインプロは
「タン、タン、タン・・・・・タン、タン、タン・・・」というのが
繰り返されるだけの単純かつ実に印象的な、そして不気味なパーカッション
からスタート。これにメロトロンが加わり、直ぐに音が凶悪に歪み、
序盤からかなりカオスな曲想になっています。中盤からエネルギーが
何度か暴発しては徐々にに鎮火し、静寂の彼方から「The Talking Drum」が
始まってゆく様子は強烈。僅か6分半程度のインプロなんだけど大変印象的な
インプロ曲です。尚、その「The Talking Drum」は序盤から最後まで
ビルのドラムがパーカッシヴに舞っており、これまたこの日独特の
パフォーマンスだと思います。

「Larks' Tongues In Aspic - Part U」は2分21秒付近〜25秒付近で聞ける
ドラミングが大変かっこよく、ビルのこういう仕事・オカズって見事だなぁと
思います。序盤はやや大人しめの演奏ですがこのビルの仕事を境に
曲想がダイナミックになり、終盤は盛り上がるのだけど終曲直前でフェイド・アウト。
これひどい・・・(T_T)すぐにフェイド・インして「21st Century Schizoid Man」が
始まりますが、この曲のみ収録音と残響音・空間性が若干変わっており、
これが本当にこの日の演奏かどうか少々怪しく思います。
でも演奏そのものは見事で、曲中間部のジャジーな箇所ではフリップが
激しくカッティングを刻んだり、ビルが素晴らしくビート感のある
ドラミングを披露しているので思わず耳が反応してしまう筈です。

音質80点。
2CDR。
『AVIGNON, PALAIS VIDEL 74.3.24』 (RED CIRCLE - Label Number Unknown)

Disc−1
1.Intro〜Larks' Tongues In Aspic - Part T
2.Lament
3.Peace - A Theme
4.Cat Food
5.The Night Watch
6.Fracture
7.Book Of Saturday
8.Easy Money

Disc−2
1.Improvisation
2.Exiles
3.Improvisation
4.The Talking Drum
5.Larks' Tongues In Aspic - Part U
6.21st Century Schizoid Man

Live at : Salle Playel, Paris, FRANCE. / 1973.Nov.19


※新譜のCDレビュー用に雑誌beatleg編集部から送られてきたコピー音源(CDR)を
持っているので、ジャケの画像はありません。この欄に書いてある記事はその
コピー音源を聴いての私的レビューですが、実際の製品をそのままCDRに落として
あるものなので、音質は実際の製品と同じです。

タイトルは『AVIGNON, PALAIS VIDEL 74.3.24』となっているけれど、
上段↑で紹介している『HURRI CURRI (PF-297D @ PeaceFrog)』と同音源。
従って、実際には73年11月19日の公演が収録されています。
使用しているマスターも全く同じものが使われていますが、よく聴くと
「Book Of Saturday」が素のままフェイド・インしているのが確認出来ます。
『HURRI CURRI』ではこの部分を前曲「Fracture」終演後のオーディエンスの
歓声と拍手に巧く被せてフェイド・インしているのですが、このことから
恐らく『HURRI CURRI』は本作に使用しているマスターを若干編集して
聴き易くしたタイトルである事が分かります。或いは、レア盤だった本作を
丸ごとコピー編集して後に『HURRI CURRI』が創られた可能性も高いんじゃないかな。

その根拠として、本作は『HURRI CURRI』より僅かに音が近く、音は粗め
ながらも明瞭感は高い=ジェネレーションの若さを感じます。逆に言うと
『HURRI CURRI』は、本作より丸みを帯びた聴き易い音質ではあるけれども
そのぶん確実にイコライジングで音質をいじられているとも言えます。
どちらを取るかは個人の好みですが、同一音源ながらそうした僅かな差が
僅かながらもある事は特記されると思います。

音質80点+α。
2CDR。
『PARIS 1973』 (RED CIRCLE - Label Number Unknown)

Disc−1
1.(Opening : Improvisation〜) Larks' Tongues In Aspic - Part T
2.Lament
3.Peace - A Theme
4.Cat Food
5.The Night Watch
6.Fracture
7.Book Of Saturday (〜Easy Money : Fade Out)

Disc−2
1.(Fade In)〜Easy Money
2.Improvisation
3.Exiles
4.(Improvisation)〜The Talking Drum (Cut)
5.(Cut In)〜Larks' Tongues In Aspic - Part U

Live at : Salle Playel, Paris, FRANCE. / 1973.Nov.19

※新譜のCDレビュー用に雑誌beatleg編集部から送られてきたコピー音源(CDR)を
持っているので、ジャケの画像はありません。この欄に書いてある記事はその
コピー音源を聴いての私的レビューですが、実際の製品をそのままCDRに落として
あるものなので、音質は実際の製品と同じです。

上段↑2タイトル分で紹介している『HURRI CURRI (PF-297D @ PeaceFrog)』及び
『AVIGNON, PALAIS VIDEL 74.3.24』の同日・別ソース音源。
同日の別音源なので聴き比べが面白いのだけど音質的には確実に本作の方が劣っており、
殆どの曲間でフェイド・アウト→フェイド・インのカットがあって聴き辛いです。

具体的にはまず「Book Of Saturday」ですが、前曲「Fracture」の終演後に
冒頭が一瞬聞こえてカットされ、暫く無音で間が空いてからの再スタート。
またその終演後から始まる「Easy Money」は冒頭でフェイド・アウトしてディスク1が終了。
そしてディスク・チェンジ後、そのディスク1でフェイドアウトしたところからのフェイド・イン。
しかも1分43秒付近で切り貼りがしてあり、その間の約1分程度の音も失われています。(-_-;)

またDisc2−(4)のインプロは後半でマスターテープの劣化の為かピッチが早くなったり
遅くなったりしており、仕舞いには9分58秒付近で一度切れ、11分09秒付近で完全に
ブツ切れたまま「Larks' Tongues In Aspic - Part U」が途中からカット・イン
しているというお粗末さ。そのうえ更に「21st Century Schizoid Man」は未収録。
うーむ・・・(-_-;)

音質68点−α。
2CDR。


『SONGS FOR EUROPE』 / (NDAL-1001)
Live at :
(1)〜(8) : Concertgebouw, Amsterdam, Netherlands. / 1973. Nov. 23
(9)〜(10): BBC Top Gear Session, London, UK. / 1969. May. 6

ブートCD黎明期に一斉を風靡した海外の名門レーベル『NDAL』の傑作名盤であり、
アナログブート時代から存在する名盤中の超名盤ブートレッグです。
本作は、当時よく出回っていたアナログブート盤からのコピーではなく、
「ラジオ局の放送用オープンリールテープから直接落としていた」為に、
あの頃に乱発されまくった23日音源の中でも別格で音質が良かったのでした。
あまりに極上の音質なので人気が高く、販売しても直ぐに完売し、
ブートなのに初回プレスのオリジナル盤にはプレミアが付くという
異例の現象まで起きた一枚でした。

そんな訳で、このブートにはオリジナル1stプレス盤とジャケ違いの2ndプレス盤、
そして日本の業者にコピーされた日本コピー盤の3種類が存在します。
2ndプレス盤はジャケが違うので一目瞭然ですが、
紛らわしいのが1stプレス盤と日本製のコピー盤で、
それぞれの見分け方はCD盤(表)中央のCDを挿す"中央穴の周り"に
銀色で表記されている刻印表記(マトリックス・ナンバー)の違いです。

オリジナル盤は『NDAL 1001 T203-7703 (01)』
コピー盤は『NDAL-1001 2656』

と表記されています。
(オリジナルとコピーでは、ジャケの紙質と色合いも実は若干違います)

オリジナルの1st盤はプレス数がそれ程多くなかったので大変珍しい一枚です。
・・・というよりも、あまりにも人気の高い盤だった為、粗悪な日本コピー盤が直ぐに
安値で大量にお店に出回り、オリジナル盤のプレスがコピーに
追い付かなかったというのが当時の現状でした。
この為、NDALはブートとしては異例のデフジャケ(2ndプレス盤)の発売を敢行した訳です。

ちなみに、僕の持っているこの盤はオリジナル1stプレス盤。 (画像参照)
オフィシャル盤の発売で当時ほどの価値は無くなってしまいましたが、
ファンにとってはブートCD発売黎明期の懐かしい1枚です。

『POP SPECTACULAR: BBC IN CONCERT』 / (KCPS01-2342)
Live at : Concertgebouw, Amsterdam, Netherlands. / 1973. Nov. 23

前出『SONGS FOR EUROPE / NDAL-1001』と同じく、イギリスBBCラジオの
放送用音源を元にしている点は同じですが、本作は放送用のトランスクリプション・ディスク原盤から
落とされたもので、マスターを完全未編集のままダイレクトに収録している一枚です。
既発盤との決定的な違いは、なんといってもこのリマスタリングされていない原盤独自の極上音質でしょう。
特にオフィシャル盤と聴き比べると歴然としますが、ブラフォードのシンバル類とウェットンの
ベースのアタック音が別物と言って良いほどに違っています。
更には本作でのメロトロンの奥深い湿った響き方など、今まで聴いていた音は一体何だったのかと
思ってしまうほどの優れモノです。(^_^)

オフィシャルの音と本作で、どちらの音像が好みかは各自の好みによると思いますが、
バンドの素の音を好んで聴くタイプの、いわゆるブートを聴き慣れた人ならば
間違いなく本作の方が好きになれると思います。
スクラッチノイズも一切無く実に素晴らしい音質で収録されており、
アナログ時代から星の数ほど出回ってきた23日のブートとしては、本作が決定盤だと思います。
オフィシャル『THE NIGHT WATCH』では味わえない、至福の50分間です。(^_^)

限定300枚プレス盤。1CD。
『UN REVE SANS CONSEQUENCE SPECIALE』 / (TAKRL-CD 1928)
Live at : Concertgebouw, Amsterdam, Netherlands. / 1973. Nov. 23

アナログブート時代の名盤タイトルをCD化したもの。
ブートLP時代から星の数ほどリリースされ、オフィシャルでも『THE NIGHT WATCH』として
発売済みの音源ですが、この音源をファンの間で一躍有名にしたのはアナログLP時代の
同名タイトル『UN REVE SANS CONSEQUENCE SPECIALE』でした。
本作は、その名盤と謳われたアナログブートを忠実にコピーした一枚。

音質96点。1CD。
『UN REVE SANS CONSEQUENCE SPECIALE』 /
(※ Special Bonus CDR for 1st set of "AMSTERDAM 1973 - JAPANESE BROADCAST (No Label)" and
"JUMBLE OF LIES (Sirene-120)", This is Picture Disc CDR with 2 Inserts)
Live at : Concertgebouw, Amsterdam, Netherlands. / 1973. Nov. 23

下段↓で紹介している『AMSTERDAM 1973 - JAPANESE BROADCAST (No Label)』、及び
『JUMBLE OF LIES (Sirene-120)』を買うとオマケで付いていたボーナスCDR。
アナログ盤ブートLP『UN REVE SANS CONSEQUENCE SPECIALE (TAKRL 1928)』盤を
忠実に復刻再現したディスクです(但し、紙ジャケではなくプラスケース仕様だけど)。
アムステルダム音源はもう公式盤が出て随分久しいですが、やはり往年のファンに
とってこのライブは「この名盤で聴けるあの音」に強い郷愁と親しみがあるのも
事実でしょうし、僕もコレで愉しむ方がしっくりきます。原盤通り、本来ならショウ後半の
「Medley : The Mincer」から冒頭収録されているのもニヤリとさせられます。(^^;)

本作はシングルCD用の薄いケースにオリジナル原盤通りインサート・シートタイプの
ジャケ(オモテとウラ両方)が収納されているのが特徴(※←画像を参照)。
配布数は、『JUMBLE OF LIES』の配布時が確か150枚で、
『AMSTERDAM 1973 - JAPANESE BROADCAST』の配布が80枚。
ボーナスタイトルではあるんですが、ブートLP盤にじっと耳を傾けてた
あの頃の微熱や時代の空気をギュっと封じ込めた素晴らしい好アイテムとして
仕上がっている点は強く特記しておきたいと思います。針パチもほぼ皆無ですし、
原盤の収録音を忠実かつ高品質に落としているので、手軽に楽しむにはかなり
優れモノの一枚だと思います。後にオフィシャルでリリースされたCD
『THE NIGHT WATCH』の変にイコライジングを効かせた音と比較しても
本作は非常に聴き易いアナログ盤特有の音がして嬉しくなりますね。

ちなみに、前述した通り本作は過去にも一度、既発盤『JUMBLE OF LIES』の
リリース時にボーナスディスクとして復刻されているのですが、今回
再復刻された本作はその時のものとは黄色い方(つまり表ジャケ)のシートの
色合いがほんの僅かに濃くなっています。加えて言えば、ディスク表にプリント
されたオレンジ色も本作の方が濃いです(※但しこれは、手持ちの旧盤の色が
経年劣化したのかもしれませんが・・)。まぁ、それだけの差と言ってしまえば
それだけなのですが、アイテムとしての差は一応あるワケです。
オリジナルLP盤中央のレーベル面(A面)がプリントされたピクチャーディスク
仕様になっているのもニクイ演出でしょう。(^_^;)

音質96点。
1CDR / ボーナスディスク。
『AMSTERDAM 1973 - JAPANESE BROADCAST』 / (No Label)
Recorded at the Concertgebouw, Amsterdam, Netherlands. / 1973. Nov. 23
Broadcast Date: 1976. Dec. 12 - JAPAN On Air 21:00〜22:00 PM / NHK-FM "Young Jockey"

音楽評論家の渋谷陽一さんが若い頃にDJを務めていたNHK-FMのラジオ番組
「ヤング・ジョッキー (Young Jockey)」。この番組で1976年12月12日に
放送されたクリムゾンの回をノーカット完全収録したタイトルです。
番組中に流れるのは通常アルバムからの選曲ではなく、73年11月23日の
アムステルダム公演、つまり上段↑の数々で紹介してきた、クリムゾンの
ライブが伝説となったあのライブ音源です。

しかも興味深いのはこの番組内で流れる音源がそれらの音源の大元となっている
英国BBCの放送原盤『BBC Transcription Services Disc (CN 2063/S)』が使用
されていることでしょう。つまり1976年当時にBBCからNHKに提供された(※或いは、
BBCから放送権を買った事でNHKに送られてきた)オリジナル原盤から直接音を
流しているわけです。1976年当時、このBBCの放送原盤という通常のレコード屋では
売られていないレコードから音が流されているという興味は当時のファンにとって
どれだけ大きく不思議なものだったか計り知れません。でもそんな40年前のファンが
持ったであろう不思議なレコードへの興味と初体験の興奮がここに詰まってるんですね。

3つほど上段↑で紹介している『POP SPECTACULAR: BBC IN CONCERT (KCPS01-2342)』が
この原盤を直落とししたタイトルで、その欄のサムネイル画像をクリックすると原盤現物の
ラベル部分がプリントされた内ジャケを観る事が出来ます。

しかし何と言っても本作最大の特徴は、渋谷さんのクリムゾンに対する鋭い切り口と
見解でしょう。この音源を聴いたことはあっても、それが一体どう凄くて当時どの様な
意味を持っていたのかを、彼独特の尖鋭的な解説で紐解いてゆけるワクワク感は
格別なものがあると思います。トークの中にはこのアムステルダム音源を収録した
ブートレッグについて喋っている箇所もあり、既に1976年の時点でこの音源がどれだけ
有名なものであったのかが分かるのも聴き処でしょう。その他、クリムゾンが
73年〜74年になっても何故ライブでは必ず「21st Century Schizoid Man」を演奏して
いたのかという独特の解釈や、インプロ作業と創られた楽曲が持っている二面性への言及、
更にはプログレッシヴ・ロックの拡大再生産の中でひたむきに「No」と否定し続けた
クリムゾンとフリップの姿勢についても鋭い切り口で読み解いています。

ただひとつ謎なのは、トーク冒頭で彼がこのライブの日付を「1974年4月27日」と
言っていること。勿論これは間違いで、何故この様な日付を言っているのか
不思議でなりません。ただ、これを喋っている時の彼は何かの資料を探しながら
トークしているので、たぶん放送局の番組スタッフが用意したメモか、キューシートに
書かれていた何か別の日付をライブの日付と勘違いして読んでいる様な気がします。
また番組終了間際のトークではこのBBC放送原盤について再度触れて喋っている
箇所があって、そこでは「・・何かテレビもあるそうですけど、是非観たいものです」
と語っており、当時BBCが撮影していた何らかのクリムゾンの映像番組があったらしい
様子がポロっと顔を覗かせる点も興味深いところです。

公式盤がとうの昔にリリースされている現在、ここで聴けるライブ音源
自体に真新しさは無いです。しかしクリムゾンのブートを熱心に聴き込んで
きた人であればこそ、プロの音楽評論家があの時代のラジオで真剣に語る
クリムゾンのライブ評と考察に盲を開かれるだろうし、当時のブートレッグに
ついて言及する箇所では興味を掻き立てられるんじゃないでしょうか。
厳密に言うと、このBBCのアムステルダム音源は1974年の夏頃にラジオ関東
(※=現在のラジオ日本)でも深夜の音楽番組で放送された事があるそうで、
どうも本作で聴けるヤングジョッキーの放送で流れたのが初めてでは
なかった様です(※初回レビューを書いた後日、年配のファンの方に御指摘を
戴きました)。しかしブートと無縁で語ることが出来ない伝説のライブが
ラジオから日本全国に流された瞬間を今再びブートで聴くという奇妙な
原点回帰は非常に面白いですし、日本のクリムゾンファンであればこそ
一度は耳にしておくべき重要音源だと思います。

音質(=受信状態)は、94点。
収録はFMのエアチェックですが受信状態は非常に良好で、
混線のノイズも全く入っていません。大変聴き易い音質(=受信状態)です。
初回プレス80枚分はナンバリングステッカー付き。
1CDプレス盤。
『KING CRIMSON 1973 BARCELONA』

Disc−1
1.Larks' Tongues In Aspic - Part T
2.Peace - A Theme
3.Cat Food
4.Fracture
5.The Night Watch
6.Book Of Saturday
7.Lament

Disc−2
1.Easy Money
2.Exiles
3.Improvisation
4.The Talking Drum
5.Larks' Tongues In Aspic - Part U
6.21st Century Schizoid Man

Live at : Palas Dela Sport, Grenodiers, Barcelona, ITALY. / 1973.Nov.28


※新譜のCDレビュー用に雑誌beatleg編集部から送られてきたコピー音源(CDR)のみを持っているので、
ジャケの画像はありません。この欄に書いてある記事はそのコピー音源を聴いての私的レビューですが、
実際の製品をそのままCDRに落としてあるものなので、音質面等は実際の製品と同じです。


「Larks' Tongues In Aspic - Part T」はここでも短縮版。ビルが所々で非常に魅力的なオカズを
叩いているのですが、その手数が凄いです。中間部のヴァイオリンもスッキリと纏められており、
研ぎ澄まされたシャープな曲想になっているのが特徴の曲想です。
「Cat Food」はこの日もウェットンのベースラインが跳ね廻っていますが、後半部のビルとの
絡み合いはリズムの交錯が素晴らしく、第二次イギリスツアー中でも屈指のリズムバトルが聴けます。
「Fracture」もほぼ完成形。中間部で鉄琴の音色が目立つ様になるのもこの頃からの特徴です。
またこの日は6分50秒〜7分40秒の約1分間でコーダ部への突入タイミングが巧く合わず、
何度かモタついている様子が聴けてちょっと面白いです。「Lament」は、ここでもビルの
ドラミングの手数が凄くて、入れられる隙間を見つけると即興で効果的なオカズのフレーズを
次々と入れています。(^_^;)

Disc2−(1)「Easy Money」はフェイドイン。冒頭部が約10秒ほど欠落しています。
「Exiles」は中間部でのフリップとクロスの音の交錯が素晴らしく、この曲を一層と情感に溢れた
ものに高めている感じです。この日唯一のインプロ(3)は、7分間弱に渡って繰り広げられる
静かで不気味なイメージのもので、約2週間前の11月12日の演奏スタイルに近いです。
2台のメロトロンが妖しい音の世界を次々と紡ぎ出し、ベースとドラムがそこを漂ってゆくという
感じの曲です。曲想に劇的な変化は無いですが、幻想的な緊張感があって素敵なパフォーマンスだと思います。
アンコールの「21st Century Schizoid Man」は、中間部がかなりインプロヴァイズされていますが、
良い意味で肩の力が抜けて余裕すら感じさせてくれる演奏で、明日が73年全公演の最終日だと
メンバー自身も分かっているだけに、この曲で最終日に向けての肩慣らしをしていたのかもしれないですね。(^_^;)