海賊盤のページ
〜1974年〜





『STARLESS IN TORONTO』 / (DPE-002)
Live date
: Disc 1 〜 Disc 2−(2) / Massey Hall, Toronto, CANADA. / 1974. June. 24
: Disc 2−(3) 〜 Disc 2−(7) / Palazsport Delo Sports, Brecia, ITALY. / 1974. Mar. 20

本編として収録されているのは74年6月24日のトロント公演ですが、Disc2−(3)〜(7)に
3月20日の音源がボーナストラック扱いで収録されています。

オープニングの「No Pussyfooting」は約5分も続くロングバージョン。当時としても
これだけ長くやっているのは珍しいし、どこかジェイミー在籍時代の72年10月の
パフォーマンスによく似ています。「Larks'〜 Part T」は冒頭でやや聴き辛い箇所が
あるものの、音の粒が揃った力強いパフォーマンス。ここでもやはりベースソロが
廃された短縮版での演奏となっています。この日の聴き処は4分24秒付近から約1分間
展開してゆくヴァイオリンとフリップのアルペジオの絡みで、お互いの響きを確かめ
合う様な音の対話が素晴らしいと思います。終曲部でのドラミングもパワフルで良いですね。

「Doctor Diamond」はここでも歌詞2番以降の展開が異なり、終曲部も違っているという
74年特有の演奏。やはり他日同様に中間部のアンサンブルが非常に重たいパフォーマンスです。
冒頭でウエットンが歌い出しのタイミングをミスしていますが、これはまァご愛嬌という
ところでしょうか。(^_^;)「Easy Money」はカット・インで、曲の中間インスト部分から
収録されています。「Lament」は冒頭から収録されてはいるものの、トラック(3)〜(6)で
聴けたものとは音像が異なっていて、別ソースから収録している可能性が高いですね。
故にこの曲のみ20日の演奏ではない可能性もあるのですが、残念ながら正確な日付けが
特定出来ません。ただここではドラミングが凄まじくて、中間部ではかなりジャンクな
金属音を鳴らしている一方でバスドラムもドコドコと激しく蹴散らしており、大変聴き
応えのあるへヴィなドラミングを展開しています。

尚、この3月20日公演はDGM Live Downloadでも聴く事が出来ますが、そこで聴けるものも
ショウの全体像ではなく、録音状態やパフォーマンスの内容が良しとされたもののみ。
ショウの全体を収録したファンテープは存在しますが、それは今のところファンテープ
オンリーの様ですね。

音質59〜71点。
冒頭の2曲がちょっと聴き辛い箇所があるものの、音質は曲を追うごとに少しずつ
回復してゆきます。
2CDプレス盤。


『THE ULTIMATE PARIS』 / (KC-002)
Live date
(1)〜(6): The Olympia, Paris, FRANCE. / 1973. Apr. 9
(7)〜(11): "ORTF T.V." Paris, FRANCE. / 1974. Mar. 22

ディスク中、(7)〜(11)が3月22日の音源。
上段で紹介している『NUCLEAR FUSION (Sound Invader, SI 911003)』及び、下段で紹介している
『CIGARETTES AND ICE CREAM (HIGHLAND, HL151/52#KC8)』と同内容ですが、
本作は『NUCLEAR FUSION』には未収録だった「Starless」が収録されているのが特徴です。

「Larks'〜Part U」はフェイド・イン。 メタリックなギター音が
印象的なテイクだが、曲の所々でクロスのヴァイオリンが主張する
のが面白い。トラック(2)のインプロは牧歌的な曲想で「Trio」タイプの
短い曲である。中盤、クロスの指ピック(※ピチカートと呼ぶほど弦を
はじいてはいないので)によるヴァイオリンの音色が非常に印象的だ。
これに単音のベースが和音の様に重なって非常に美しいメロディーを
奏でている。「The Night Watch」は前曲のインプロから繋がって
スタートしているが、この日も実に魅力的なアンサンブルを披露。
中間部でのギターがまた心地良く、軽めのハーモニクスや幻想的な
タッチが魅力的で、後半で入ってくるメロトロンも気持ち良く鳴っている。

次の曲が、ウラジャケには「Easy Money」と記載されているが実際に収録
されているのは「Lament」。非常にメタリックで鮮烈なパフォーマンスで、
中盤以降のメタリックなギターとビルが掻き鳴らすジャンクな金管音と
ドラミングのジャンクさのブレンド、そして搾り出す様に歌い上げる
ウエットンの歌声が魅惑的なサウンド・ヴァイオレンスを呈している。
「Starless」は演奏の凄まじさと、まだきちんと定まりきっていない
歌詞の不安定さのコントラストがユニーク。9分05秒付近から音質が
急速に劣化するが、そこで聴けるこの日の終盤部分のアヴァンギャルド
さとクールな倦怠感は、ライブで聴けるそれとは明らかに質が違っている。
これは恐らく、この音がレコーディングされていると全員知っているから
ではないか。レコーディングは記念写真を撮るのと同じで、大抵は澄ました
顔で映るものである。この日の「Starless」も確かに素晴らしいが、しかし
どこか、ライブで見せる本来の姿を隠している様な演奏にも思えてならない。

ちなみにこの「Starless」、スタジオ版の(2)番の歌詞が(1)番として歌われていて、
(2)番は適当な歌詞で歌っており、そして(3)番でまたスタジオ版の(2)番の歌詞で
もう一度歌っています。

音質95点〜70点。
マスターがサウンドボードなので音は良好。
「Starless」の9分05秒付近からは急に音質がガタ落ちするので
その部分のみ70点としてあります。
また、「Larks' Tongues In Aspic - Part U」は本作でもカット・インです。
1CDプレス盤。


『NUCLEAR FUSION』 / (Sound Invader, SI 911003)
Live date :
(1)〜(4) "ORTF T.V." Paris, FRANCE. / 1974. Mar. 22
(5)〜(6) Bremen, GERMANY. / 1972. Oct. 17
(7)〜(9) Richard's Club, Atlanta, USA. / 1973. June. 23


ディスク中、(1)〜(4)が3月22日の音源。
「Larks' Tongues In Aspic - Part U」は、本作ではフェイド・イン。
メタリックなギター音が印象的な演奏ですが、曲の所々でヴァイオリンが
かなり主張するテイクでもあります。トラック(2)のインプロ曲は
静かで牧歌的な曲想。中盤からのクロスの指ピックによると思われる
ヴァイオリンの音色が非常に印象的で、これにウエットンの単音ベースが
和音の様に重なって大変美しいメロディーを奏でています。僅か3分弱の
短いインプロですが、とても聴き応えのある演奏だと思います。

「The Night Watch」はスタジオ版とほぼ同じ。しかし中間部でギターが
スタジオ版とは少し違う音を出しています。次の曲が、ウラジャケには
「Easy Money」と記載されていますが、実際に収録されているのは「Lament」。
非常にメタリックで鮮烈なパフォーマンスで、中盤以降のメタリックなギターと
ビルが掻き鳴らすジャンクな金管音とドラミングのジャンクさのブレンド、
そして搾り出す様に歌い上げるウエットンの歌声が魅惑的なサウンドです。

という訳で、トラック(1)〜(4)の音質は94点。
マスターがサウンドボードなので音は基本的に良好。
「Starless」が未収録残念なのが痛いですね。
1CDプレス盤。


『CIGARETTES AND ICE CREAM』 / (HIGHLAND, HL151/52#KC8)
Live date
Disc1〜Disc2-(4): McMasters University, Hamilton, Ontario, CANADA. / 1974. May. 4
Disc2-(5)〜(9): "ORTF T.V." Paris, FRANCE. / 1974. Mar. 22

Disc2−(5)〜(9)が3月22日の音源。
上段で紹介している『NUCLEAR FUSION (Sound Invader, SI 911003)』及び、
『THE ULTIMATE PARIS (7)〜(11) / (KC-002)』と同内容ですが、
本作は『THE ULTIMATE PARIS』と同様に『NUCLEAR FUSION』には未収録だった
「Starless」が収録されているのが特徴です。

「Larks' Tongues In Aspic - Part U」はここでもカット・インですが、
曲のかなり後半から収録されており、そのうえピッチも非常に不安定。
ウエットンのかっこいいベースラインが図太く聞こえるのが唯一の救いでしょうか。(-_-;)

肝心の「Starless」は、『THE ULTIMATE PARIS (7)〜(11)』に使用しているマスターと
同一のものをマスター音源として使用している為、「Larks' Tongues In Aspic - Part U」の
同じ部分で切り貼りの編集跡があります(本作のトラックタイムでは8分09秒付近)。
ただ、この編集跡以降の音質は何故か本作の方が他のタイトルより良いです。

音質79点〜83点。
2曲目のインプロから音質が徐々に持ち直して
「The Night Watch」からは随分と聴き易い音質になります。
2CDプレス盤。
『THE CENTRE OF THE COSMOS』 / (ASPIC, ASP-007)
Live Date : Stadthalle, Heidleberg, GERMANY. / 1974. Mar. 29

公式ライブデータや海賊盤(本作)のジャケットには、この日の公演会場として
" Konzerthaus Elzerhof"という記載が見られますが、正しくは「Stadthalle」という会場でのライブです。
また、このライブが収録されている74年3月29日というのは、アルバム『STARLESS AND BIBLEBLACK』の発売日。
その為か、この日は非常に力の入った好演奏が目白押しの公演なのですが、
「Larks' Tongues In Aspic - Part T、U」をどちらも演奏していないという
大変珍しい異例の公演でもあります。

「Doctor Diamond」は、冒頭でアンサンブルのタイミングが若干ズレてはいますが力強い演奏。
ビルのドラミングが冒頭から実にパワフルですが、中間の静かになる部分で、ウエットンの歌声のバックで
クロスのヴァイオリンが印象的なメロディーを奏でているのも面白いです。
3曲目のインプロは、ビルの金管音が印象的に誘う幻想的な曲想。「Exiles」の前奏的な意味合いも
兼ねてはいるのでしょうけれど、不思議に存在感のある曲だと思います。
そのインプロ曲がそのままインプロヴァイズされ、メドレーとして繋がって演奏される「Exiles」は
この公演のハイライトのひとつ。冒頭から前曲のインプロヴァイズを巧みに使った極上のアンサンブルが
披露されており、曲の持つ魅力を存分に出し切っている名演奏・・・なのですが、
大変悔しいことに5分37秒で突然カット。演奏が非常に素晴らしいだけに、これはかなり萎えます。

続く5曲目は迫力あるインプロ曲。最初からテンポが速めのスリリングな展開に充ちた曲想で、
フリップのギターに導かれながら他の3人が強烈なリズムアプローチで音の洪水を聴かせてくれます
5分32秒付近から曲想が一転してスローになりますが、面白いのは6分56秒付近から
「The Night Watch」の主旋律が現れ、それが転調して消えると厳かに「Starless」の主旋律が現れて、
そのまま「Starless」へメドレーで繋がっていることです。この展開はかなり幻想的で良いです。
その「Starless」ですが、冒頭でビルが非常に細かいアプローチをしていたり、メロトロンが
いつもとは違う旋律でメロディを奏でているので要注目でしょう。前半のメロウな曲想と中間部
以降の喧騒に充ちた曲想が見事なコントラストを描いておりまさに絶品です。
「The Night Watch」は、主旋律となる冒頭のメロディーが他日よりも長く演奏されているという
ちょっと変わったスタートをしています。ギターのアプローチも秀逸で、アンサンブルの融合が
ここでも素晴らしいです。「Lament」は、冒頭部分でカットあり。冒頭の約30秒程度の演奏が
失われてのカット・イン。演奏が見事なのでこれまた残念なカット・・。(-_-;)

「Easy Money」は、序盤の歌い出し部分で歌唱とギターのタイミングが
若干ズレているのですが、このズレが意外に味わいのあるものになっています。
中間部ではそのフリップのキレたギター・アプローチとウエットンのベースラインが絶妙に絡む見事なもの。
3分28秒付近からウエットンとビルのリズム隊が急に速いテンポでリズムを刻むのですが、
これもかなり異例の展開だと思います。曲の終盤でドラムが随所でオカズを叩き込みまくる場面も
非常に迫力があります。続く「Fracture」は、この日も「Easy Money」から繋がるメドレー。
ここでもビルのアプローチが面白く、金管音を効果的に曲の随所でふんだんに散りばめながら
演奏しているのが大変印象的です。

そしてこの日最高のパフォーマンスが「21st Century Schizoid Man」。ビルのドラミングが強烈なうえ、
中間部にウエットンのベースソロが入っているロング・バージョンでのプレイですが、
曲の冒頭から神懸かり的な音の説得力、厚み、そして音楽をレイプする様な凄まじい
凶暴性を内包した極上の演奏です。この曲は過去にも未来にも何度となくプレイされていますが、
この日のパフォーマンスは74年のみならず、クリムゾンの歴史の中でも屈指の名演奏だと僕は思います。

音質88点。
ところどころでかなり手痛いカットがあるのが非常に残念な音源ですが、
やはり74年のクリムゾンはタダモノではないと実感出来る一枚だと思います。
1CDプレス盤。


『KNOCK ME OUT』/ (Heart Breakers HB-943-1/2)
Live date : Elzerhof, Mainz, GERMANY. / 1974. Mar. 30

ジャケに記載された日付は間違い。
正しくは3月30日・マインツ公演での演奏が収録されています。

「No Pussyfooting」は冒頭からいきなりインプロヴァイズされ、そのまま「Doctor Diamond」へ。
オープニングから息を呑むこの展開は最初から度肝を抜かれます。
その「Doctor Diamond」は中盤以降の展開で急にリズムが重たくなり、一音一音溜め込んで
演奏しつつ終演するというちょっと変わった演奏をしています。
続くインプロ曲は、空間を感じさせるスペイシーな雰囲気の曲。各楽器の単音が折り重なって
少しずつ膨らんでゆく曲想は、異次元への扉が少しずつ開いてゆく様な印象があります。
そしてその異次元に続く扉の向こうにあるのが「Exiles」。
中間部からのメロディアスな展開はこの日もなかなか良く、クロスのメロトロンとフリップのギターが
高らかに絡み合う箇所は絶品です。

続く5曲目のインプロは"静寂もまた音のひとつ"という感じの静かなスタートで、
アジア・中近東を感じさせる様な不思議なメロディが出てきたり、そうかと思えば
混沌とした和音を発したりと、各楽器が少し音を出しては暗闇から出ては消えてゆくといった感じですが、
5分45秒付近のビルのドラムのアタック音から一転してアンサンブルとなり、コーダを迎えます。
ムード満点でなかなか聴き応えのあるインプロです。

「Starless」は、この日もウエットンが歌う適当な歌詞は相変わらず。(^_^;)
歌詞をちゃんと覚えていないのか、歌詞がまだ完全に出来上がっていないのか謎です。
しかし演奏は絶品中の絶品で、この日は冒頭からメロトロンが前面に出ているムード満点の
テイクで始まります。中間部の盛り上がりもかなり強烈で、リミッターを完全に切った
バリバリのベース音とド迫力のドラミングがたまりません。後半部ではクロスのヴァイオリンが
前面で高らかに妖しい旋律を奏でているのも印象的です。

続いての曲はジャケには「Trio」と記されていますが、これは誤記。
正しくは「Lament」が演奏されています。ビルのドラムアプローチが非常に力強いテイクです。
続く3曲目が「Trio」で、昨日発売されたばかりのアルバム版に負けない演奏を披露しています。
「Easy Money」も好演奏。Bメロが始まるとフリップのギターが不思議な絡み方をし始めて面白いですが、
中間パートではアンサンブルに力強さが一層増して更なる別世界へ連れて行かれる感じがします。
コーダでは「Fracture」にメドレーとして繋がっているという展開も大変スリリングです。

音質80点。
若干だけ音が遠く(或いは、この会場の空間を)感じられる音質です。
しかし低音がよく録れている音源なので、ウエットンのベースラインがとても迫力あります。
なお、「Fracture」と「Larks' Tongues In Aspic - Part U」の曲間にカットがありますが、
これはアンコールまでの間をカットしてあるものと思われます。
2CDプレス盤。



『QUARTET PLAYS TRIO : 2CD BOX SET』
Live Date
Disc1〜Disc2-(3): Elzerhof, Mainz, GERMANY. / 1974. Mar. 30
Disc2−(4)〜(9): Zurich, Volkshaus, SWIZRELAND. / 1973. Nov. 15

MOON CHILDレーベルがCDブート最初期に出していた2CDボックスセット。
確か限定350個のプレスだったと記憶しています。
ボックス内にはタイトルを冠した巨大なシールシートと、
このボックスが出た1993年度のカレンダーが付いています。
このカレンダーは、クリムゾンのアナログブートLP盤の名作の数々が
コラージュされたもので、マニア心をくすぐる創りになっています。

収録内容は、上段で紹介している『KNOCK ME OUT (Heart Breakers HB-943-1/2)』と同内容。
使用しているマスター音源も全く同じ物を使用しています。
ジェネレーションもほぼ同一レベルなのですが、音質は本作の方がクリアさという意味で若干欠けており、
『KNOCK ME OUT』の方がやや聴き易いです。但し、本作は低音にブーストが掛かっているので、
音の迫力という意味では断然本作の方が良いです。

音質79点。
ボーナストラックとして、Disc2−(4〜9)に73年11月15日の音源を部分的に収録してありますが、
それについての詳しい内容は73年のページの11月15日欄を参照のこと。
2CDプレス盤。ボックス仕様。


『CRIMSON MURDER CASE』 / (CMC-41274)
Live date : Spectrum, Philadelphia, Pennsylvania, USA / 1974. Apr. 12

ヨーロッパツアー後の、74年第一期アメリカツアー開始後2日目の音源。
冒頭に「The Great Deceiver 〜 Lament」というメドレーを持ってくる辺りは、
発売されたばかりのアルバム『STARLESS AND BIBLEBLACK』を意識したセットでしょう。

ジャケウラには記載されていませんが、「Exiles」の演奏前には
約1分15秒程度の短いインプロが前奏として付いています。その「Exiles」は
メロトロンが前面に出てくる中間部突入前のアプローチが他日より長く
演奏されているのが特徴で、コーダ前ではそのメロトロンとフリップのギターが
美しく絡み合う見事なパフォーマンスを聴かせてくれます。
「Easy Money」はこの日も冒頭からエッジの効いたアグレッシヴな演奏ですが、
中間パートでの盛り上がりがこの日は珍しく静かで、メロトロンのゆったりした
緊張感のある響きが逆に印象的に感じられるテイクです。

「Starless」は、後半部の強烈なアンサンブルが素晴らしい絶品テイク。
後半部の開始直後から各楽器が一斉に前面に出てきてスリリングなバトルを開始しますが、
この展開が実に色彩豊かで見事です。曲はそのまま凄まじいテンションを保ったままコーダへ
雪崩れ込みますが、あまりにも熱を帯びた為なのか、終曲部分をフリップがチョーキングで
締めているというのも大変珍しいと思います。「The Talking Drum」は、いつもより前面に出て
音が主張するクロスのヴァイオリンが非常に印象的。これが「Larks' Tongues In Aspic - Part U」に
突入するとビルのドラミングが吼え始め、ますます壮絶になったアンサンブルがピークを迎えます。
アンコールの「21st Century Schizoid Man」は、この日も中間部でウエットンの
ベースソロがあるバージョン。ズビバビと凄まじい轟音を鳴らすベースと、ビルの
的確かつ素晴らしいドラム・アプローチが絡む箇所は鳥肌モノです。

音質79点。
残念ながら周囲の観客の喋り声が終始聞こえるうえに、
全体的に低音がこもっていて各楽器の音もあまり細かくは聞こえませんが、
ウエットンのボーカルや、高音で伸びるメロトロンとヴァイオリンは良好に録れています。

また、本作のセットはこの時期にしては演奏している曲数が少なく、
「The Night Watch」や「Fracture」を演奏していないというのも不思議です。
本作では殆どの曲間が編集によってカットされてしまっている為に
フリップのMCアナウンスを愉しむことが出来ないのですが、
もしかしたら上記した曲も含めて数曲分がカットされている可能性もあり、
本作がこの日の模様を完全収録しているのかどうかはちょっと疑問が残るところだと思います。
1CDプレス盤。
『MOTHER OF DECEIT』 / (Virtuoso-003)
Live date : Spectrum, Philadelphia, Pennsylvania, USA / 1974. Apr. 12

74年4月12日公演の完全収録盤。既発タイトルとして上段で紹介している
『CRIMSON MURDER CASE (CMC-41274)』がありますが、本作はその完全版で、
ショウ冒頭の「No Pussyfooting」から収録されているのが特徴です。
これが完全版である最大の理由は使用しているマスターが『CRIMSON MURDER CASE』
とは別マスターを使っている点にあるのですが、本作で使用されたマスターは
『CRIMSON MURDER CASE』よりも音質が数段優れている事も特筆されると思います。
更に、『CRIMSON MURDER CASE』では目立ち過ぎた曲間のMCカットと、
終始近くで聞こえていた観客の会話が本作には無く、一公演がストレスの無い
ノーカット録音として聴けるという点も嬉しい限りです。

演奏内容も極上で、74年独特の優れた演奏を堪能出来ますが、
中でも音質が向上した本作で聴く「Exiles」の表現力には改めて感嘆させられると思います。
ウエットンの朗々としたボーカルの後ろで次々と溢れ出てゆくメロトロンの
憂鬱かつ美麗な音との綴れ織りは本当に見事。またこの「Exiles」の中間部突入前の
メロトロンが前面に出てくるアプローチは他日より長く演奏されているのも特徴で、
コーダ前ではそのメロトロンとフリップのギターが美しく絡み合う見事な
パフォーマンスも聴けます。「Easy Money」はビルのドラミングが非常に特徴的で、
曲に終始緊張感を与え続けているリズムアプローチが独特。
「Larks' Tongues In Aspic - Part U」は中間部でのクロスのヴァイオリンが狂的な
フレーズで舞っており、これに重低音でズビズビとリズムを刻むアンサンブルが凄まじいです。

尚、本作にはボーナス特典として初回配布分のみに『SINDELFINGEN 1973』という
タイトルのボーナスCDR(73年の項で紹介しています)も付属しています。
音質83点。1CDプレス盤。
『BARTLEY CARPET』 / (ASPIC, ASP-003/004)
Live at :
Disc1〜Disc2-(3): Muthers, Nashville, Tennessee, USA. / 1974. Apr. 17
Disc2-(4)〜(9): Rhine Hall, Dusseldorf, GERMANY. / 1973. Nov. 5

個人的に74年音源の中で3本指に入る名音源のひとつです。この日は何と言っても
ビルのドラミングが終始強烈で、冒頭「The Great Deceiver」の出だしから
彼の心地良いオカズ満載のドラミングに釘付けになります。
3曲目に繰り下げられた「Doctor Diamond」でも随所でドラムのオカズが素晴らしく、
(特に曲中盤でのアプローチは凄まじい)この曲を一層ドラマティックにしているのが
如実に伝わってきます。(4)のインプロは「Exiles」の導入的なものですが、この日は
ベースのアタック音とメロトロンの美麗な旋律に導かれてゆくという牧歌的なもの。
短いながらも大変印象的な曲想を持っていると思います。
そうした導入から厳かに始まってゆくこの日の「Exiles」は絶品。演奏の完成度が非常に高く、
ウエットンの心地良い硬質なベースラインが曲の温もりを一層引き立てています。
「Fracture」はここでもビルのドラミングが最高。ジャンクな破裂音と金物音を効果的に
連発させながら曲の緊張感をギリギリまで高め、フリップ+クロス+ウエットンと一緒に
後半の大爆発へと雪崩れ込む様子は他日には無い壮絶さが感じられ、聴く度に鳥肌が立ちます。

「Lament」でも曲の中間部以降で聴かれるビルのオカズが心地良く、この曲の新しい魅力を
発見出来るテイクですが、コーダ部の一体感あるアンサンブルがまた実に素晴らしいです。
間髪入れずに始まる「Easy Money」も強烈。ここではフリップのギターワークが魅力的で、
アルバムテイクに近いアプローチをしていますが、よく聴くと大変魅惑的なメロディーを奏でて
いるのが分かると思います。またここで面白いのは1分33秒付近から始まるフリップのアルペジオで、
「In The Court Of The Crimson King」の一部が披露された後日19日の演奏の布石とも言える
プレイをしている点でしょう。
(19日の様子は、下段の『THE RUSTED CHAINS OF PRISON MOON』 / (HIGHLAND, HL303)の項を参照のこと)
聴き比べてみると分かりますが、両日の演奏共にかなり近いアプローチで披露しており、
これは大変興味深い演奏だと思います。この「Easy Money」のコーダ音から引き伸ばされた
不気味なギター音で始まってゆく8分近いインプロ(10)は、混沌としたイメージの中から突然出てくる
ウエットンの忙しいチョッパー気味のベース音がユニークで、それを起点として曲のイメージがゆっくりと
動き出してゆきます。全体的にミドルテンポで進みますが、終盤の6分24秒付近からビルの激しい
ドラミングを境にして急激にファスト+ヘヴィメタルな展開へ。この唐突な展開は非常に聴き応えがあります。
しかしそのハードな曲想の彼方からメロトロンの聴き慣れた旋律が出てくると、曲想は
そのまま「Starless」へと移行。この「Starless」はマスターテープに起因する音揺れがやや辛く、
5分28秒付近では約2秒間ほどの音切れもありますが演奏そのものは極めて完成度が高く、
中盤〜後半の表現力はこの日独特の深みのある好プレイを披露しているのも特徴だと思います。

Disc2−(1)のインプロはジャンクな打楽器のコラージュから入ってゆく独特のもの。
かなりの緊張感が漂う曲で、不気味な曲想をウエットンとクロスが徐々に彩ってゆきます。
3分39秒付近からメロトロンが鳴り始めるとフリップも絡み出し、不気味な緊張感を保ったまま
曲は「The Talking Drum」へと自然に移行。続く「Larks' Tongues In Aspic - Part U」は
大変メリハリの効いた演奏で、キメの部分部分がいちいちカッコいいテイク。特に後半部での
クロスとビルの絡み合いは絶品です。

音質78点。
尚、この音源では「21st Century Schizoid Man」が収録されていませんが、
たぶんアンコールでプレイしていたと思われるので、恐らく完全収録ではないと思います。
2CDプレス盤。
『THE RUSTED CHAINS OF PRISON MOON』 / (HIGHLAND, HL303)
Live Date :
(1)〜(6) Curtis Hickson Auditorium, Tampa, Florida, USA. / 1974. Apr. 19
(7)〜(8) MIDNIGHT SPECIAL TV SHOW, Burbank, California, USA. / 1973. June. 12

ディスク中、1〜6に74年4月19日の音源が収録されています。

本作の聴き処は何といっても「Easy Money」でしょう。
何と曲の途中でウェットンが「The Court Of The Crimson King」を歌い始めます。
ハプニング的な要素も強い演奏ですが、いきなりこれを歌い始めた時は
オーディエンスも他のメンバーも腰を抜かしたのではないでしょうか?(^_^;)
演奏そのものもこの日は非常にコミカルな印象があって、所々で聴けるフリップの合いの手が
とても面白いです。中間部でのウエットンのスライド奏法も聴きどころですが、
4分32秒付近からビルが突然ビートを早めて叩き出し、それに合わせてアップテンポになるという
大変珍しい展開も聴く事が出来ます。

冒頭に収録されている「Exiles」は、ウエットンのベースラインが大変美しいテイク。
演奏も見事で、中間部でのフリップのギターワークも素晴らしいものがあります。
「Starless」は、この日は12分弱もある壮大なパフォーマンス。
或る意味でかなりスタジオテイクに近い演奏なのですが、前半と後半に於ける静と動のコントラストが
この日は非常に明確に表れていて、他日よりもどっしりと腰を据えて演奏している感じがします。
但し、コーダ部分でウエットンが珍しくベースラインをミスしているのはご愛嬌かな。(^_^;)

4曲目のインプロナンバーはフェイド・イン。緊張感の中に牧歌的な雰囲気を持っているという
実に不思議な曲想で、ベースラインが主導権を取りながら次々と色彩溢れる音を重ねてゆく様は見事です。
そしてこのインプロがそのまま「The Talking Drum」に変化し、「Larks' Tongues In Aspic Part U」へと
雪崩れ込みますが、この一連のイメージの羅列と流れはまさに圧巻です。しかしこの「Larks' - Part U」は
冒頭の0分31秒付近で編集による切り貼りがあって、約1分間ほどの音楽が失われています。
これは恐らくマスターで使用した音源がこうなっているのでしょう。(T_T)

音質79点→70点。
曲が進むごとに少しずつ音質が劣化してゆきます。
また、ジャケウラに記載された曲目を見れば一目瞭然ですが、不完全収録です。
演奏面に素晴らしいシーンが幾つもある音源だけに「あぁ、これが完全収録だったらなぁ」と、
本作を聴く度に思います。(T_T)
尚、ボーナストラックとして後半(7)と(8)に73年の音源が入っていますが、
詳しくは73年のページの6月12日の欄を参照して下さい。
1CDプレス盤。


『THE DEATH SEED』 / (KC-007)
Live date : Hollywood Sportatorium, Miami, Florida, USA / 1974. Apr. 20

旧IKO IKO製のブート。
下段の『FIGURINES OF THE VIRGIN MARY』と同内容ですが、
発売はこちらの方が何年も早かった(たぶん1995年リリースだった)ブートCD黎明期のタイトルです。
内容はカット(フェィドイン・フェイドアウト)が目立ち、冒頭の「The Great Deceiver」も
フェイドインでのスタート。ドラムがかなり変則的で、ウエットンも一瞬乱されるというシーンが
微笑ましいです。「Doctor Diamond」は中間部のリズムに溜めを効かせた重厚感のある演奏で、
コーダ部での重たいながらもメリハリの効いたハーモニーはカッコいいです。
「Exiles」は僅かに前奏が入ってからスタート。全体的にメロトロンが強烈に響き渡るテイクですが、
中盤以降のメロトロンの装飾は一聴の価値ありの壮大なもの。味付け過多の様な気もするけれど、
これはこれでマニアには堪らない曲想になっています。

「Lament」もフェイドインでのスタート。ウエットンのベースラインが大変カッコいいですが、
全体的に若干スローテンポで演奏されているのも面白いです。続く「Easy Money」は絶品。
フリップのギターアプローチが繊細で曲に良く浸透しており、中間部でのギターワークも
どこか病的な響きを奏でています。ビルの金物系アプローチも絶品の冴えで絡んでいる点も
聴き逃せないポイントかと思います。「Fracture」はそんな「Easy Money」の終曲と同時に
スタートするというこの時期独特のアプローチ。この曲もド迫力の演奏で、若干スローテンポながらも
実に魅力的なアンサンブルを披露しており、特に後半爆発後のフリップの奇妙なギターは大変ユニークですし、
ドスの効いたウエットン+ビルのリズム隊に絡まるメロトロンの表現も秀逸です。
「Starless」も極上の演奏。これは74年演奏中でも5本指に入る名演で、以前数人のマニアの方達と
歓談した時にも「74年4月20日のStarlessはちょっと別格だよね」という話になった事がありました。
精神異常的なフリップの>ギターアルペジオとウエットンの超絶ベースラインが見事に絡まり合い、
まさに天上の音を出しています。

(8)のインプロは図太いベースラインに金物系のパーカッションが色彩豊かに絡まり合うもので、
クリムゾン史上最強の誉れ高い彼等のリズムワークが不気味な曲想に載せて存分に堪能出来る演奏です。
曲終盤で不思議なメロディを発するメロトロンにも注目で、何度か同じメロディを響かせながら
静かに彼方に消えてゆく様はゾクゾクします。「The Talking Drum」は、ヴァイオリンが73年中に
よく聴かせていたモード奏法に戻っているのが興味深いところ。アンサンブルの一体感が
堪らないこの日の「Larks' Tongues In Aspic - Part U」は、弾け飛ぶ様な強烈なビート感があります。
また、ここでも要所要所で小気味の良いクロスのヴァイオリンが曲を一層引き締めています。
「21st Century Schizoid Man」は、フリップの奏でる中間部のギターソロが大変ユニーク。
かなり変てこなアプローチで進みますが、途中でウエットンのちょっとしたベースソロにバトンタッチし、
再び全体が動き始めるというかなり珍しいテイク。後半5分43秒付近でパイロ(?)が炸裂した様な音が
確認出来ますが、これは恐らくビルの鉄板か何かだと思います。かなり長く引き伸ばしたコーダの表現も
大変聴き応えがあり、見事です。

音質77→80点。
冒頭〜2曲目まではイマイチの音質ですが、3曲目「Exiles」から音質が向上し、
音像もかなり安定します。低音に不思議な丸みと迫力がある音質ですが、
「The Great Deceiver」の00:38秒付近で編集の痕跡あり。
1CDプレス盤。


『FIGURINES OF THE VIRGIN MARY』 / (ASPIC, ASP002)
Live date : Hollywood Sportatorium, Miami, Florida, USA / 1974. Apr. 20

上段↑の『THE DEATH SEED (KC-007)』と同内容です。
音質も全く変わりません。本作も『THE DEATH SEED』と同様に部分的なカットが目立ちますが、
『THE DEATH SEED』では"フェイドイン・フェイドアウト処理"が施されていたのに対し、
本作はブツ切りです。

うーむ・・・(T_T)
1CDプレス盤。


『VIRGIN MARY』 / (Ayanami-034)
Live date : Music Hall, Boston, MA, USA / 1974. Apr. 23


「The Great Deceiver」はこの日、中間部で妙に目立つメロトロンが
非常に印象的。 サウンドものっけから凄まじい色彩感を放っており、
演奏の実力がショウ冒頭から炸裂するオープニングとなっています。
「Lament」はウエットンの歌唱と声が魅力的ですが、この日は部分的に
歌い辛そうにしている箇所があります。演奏は相変わらずトリッキーな
リズムが面白く、中盤から終曲にかけての音楽の推進力も凄まじいです。

トラック(4)のインプロはここでも「Exiles」の前奏的なインプロですが、
このインプロの旋律を聴いてまず思い出さなくてはならないのは、
69年12月14日にフィルモア・ウエスト公演で披露されたインプロ曲
「Mantra」でしょう(※本トラックの1分02秒付近から聴くと判り易い)。
この旋律は他にも69年7月6日のマーキー、同8月8日のハイドパーク、
9日のプランプトン、同9月7日のチェスターフィールド公演中(の各
インプロ)にも出てくる印象的な旋律ですが、つまるところこの
「The Night Watch」の冒頭の旋律は、オリジナル・ラインナップの
クリムゾンがよく披露していた「Mantra」の基本旋律が発展・変化
して誕生した可能性があることを読み解く事が出来る重要なインプロ
となっています。そんな「Exiles」は序盤からベースが非常に特徴的な
音を出しており、中盤〜後半のなめらかな浮遊感もこの日独特のムード
で流れてゆきます。ベースとメロトロンの厳かなハーモニーが強く胸に
響いてくる好演奏と言えるんじゃないでしょうか。

「Fracture」では、冒頭でウエットンのベースが奇妙なハウリング(?)を
起こしているのが確認出来ます。これが意図的なものなのかトラブルなの
かは分からないですが、しかしこれが意外なほど曲の不気味さを盛り上げており、
曲の前半部をグッと映像的なものにしています。弱音の魅力もよく出ていて、
ギターの奇妙なアルペジオと金物系の細やかな打音の対話、その後ろで終始
不気味に動くベースも生々しいですね。後半突入後の音楽の推進力も強烈で、
出口に向かう力強い音のエネルギーがうねり廻る極上の音世界が報告されて
います。また「Starless」はこの日メロトロンの調子が悪かったのかなかなか
音が立ち上がらず、冒頭部の出だしが通常より長めに始まっています。ビルが
ちょっとした打音を入れたりするなど他日では聴けない珍しい曲の出だしを
聴く事が出来るのでここは要チェックでしょう。(^_^)

トラック(8)のインプロは「The Talking Drum」に繋ぐブリッジとして
披露している約2分40秒程度の短いもの。混沌から秩序を紡ぎ出して
ゆく作業がこの日も美しく、短いながらも聴き応えのあるものになって
います。そんな「The Talking Drum」では冒頭から異音(突発的なトラブルか
ミスタッチでしょう)が発されており、こうした偶然性に導かれてなのか
序盤で聴ける弱音部の音の蠢きが他日公演以上にミステリアスな様相を
呈しています。アンコールの「21st Century Schizoid Man」はこの日も
中間部にベースソロが組み込まれたロング・バージョン。冒頭のザクザク
したメタリックなサウンドも凄まじいですが、中間パートの終盤から終曲部に
かけてはそんなサウンドイメージに更なる拍車が掛かり、約8分近くも
あるこの日限りの強力なスキゾイドマンを4人で可愛がっています。(^_^;)

音質79点。
1CDR。
『HERITAGE』 / (Sirene-125)
Live Date : (Disc−2) Music Hall, Boston, MA, USA / 1974. Apr. 23

73年・74年それぞれのライブがカップリングされているタイトルで、Disc−2に
74年音源が収録されています。既発同音源として、73年の方は過去に
『BOOK OF SATURDAY (Ayanami−028)』と『CRIMSON CRIME (KC/CC/70S)』があり、
74年は『VIRGIN MARY (Ayanami−034)』と『THE MILKY WAY (Peace Frog / PF-156S)』
(←持って無いけど音は確認済み。同一マスターです)がそれぞれあります。

使用されているマスターソースは↑で紹介している『VIRGIN MARY / (Ayanami−034)』と
全く同じ。但し本作(のDisc-2に収録された音源)は若干こもった音質で収録されており、
明瞭感と音像の近さに欠けているのが難です。

という訳で、本作Disc-2の音質は75点。
使用しているマスターがこうなっている為に仕方の無い事ではあると思いますが、
幾つかの曲で終演後の曲間がフェイドアウトで編集カットされているのが気になるところ。
また「Starless」の6分29秒辺りで一瞬だけ音揺れがあります。
2CDプレス盤。


『FADES INTO GREY』 / (Sirene-188)
Live date : Ford Auditorium, Detroit, USA. / 1974. Apr. 26

長年この日の定番既発タイトルだった『THE GOLDEN LIGHT CLIP (Highland - HL358)』(下段で紹介)
から世代交代し、代表タイトルになった一枚。使用しているマスターは全く同じ音源ですが、
本作はかなりマスターに近い音源を使用していて、音質が向上しています。
しかも既発タイトルはカットが目立つ音源でフラストレーションが残る一枚でしたが、
本作はノーカットで一公演が完全収録されており、そのうえピッチの補正も細かくされているので、
音源全体が終始安定して聴き易いのが特徴です。
メーカーのアナウンスでも「もともとヒス含有量の多い録音ですが、今回のSirene盤はピッチを調整し、
原音に影響が出ない程度にヒスノイズを軽減し、より完成度の高いサウンドに仕上げてあります」
・・・となっている通り、実際に聴き比べてみると確かに聴き易い音質になっている印象があります。

この日の「Lament」はお風呂場で歌っている様な、ウエットンの気持ち良さそうな歌声が心地良いです。
ビルのパーカッシヴな表現も見事で、後半部で聴ける粒揃いのパーカッション表現とフリップの
ノイジーなギターの綴れ合いが素晴らしいと思います。「Exiles」は、前奏として約2分程度の短い
インプロが冒頭で入ってからスタート。この冒頭のインプロの出来が極上絶品で、
夢想のごとき煌い音階で奏でられるビルの金物表現から入ってゆくという異例のもの。
こうしたビルの表現とフリップのギターアプローチがまた素晴らしく、曲本編に入ってからは
その魅力が核爆発。この演奏は74年でも間違いなく3本指に入るウルトラ級のものでしょう。
4月公演では文句無くこのテイクが最上のプレイだと思います。
そして「Fracture」もまた素晴らしく、異様に重苦しい前半部が高揚感を増してゆく様は、胃が痛く
なるほどの緊張感があります。後半部の途中からアンサンブルにズレが生じていますが、これって
わざとなのかなぁ?故意にやっているにせよ、ミスにせよ、このズレが奇妙に曲の流れと表現に合っていて、
他日の演奏には無い独特の魅力になっていると思います。続くDisc1−(6)のインプロは、
「Fracture」から繋がらずに披露されている単体曲。クロスのヴァイオリンと、ビルの金物系コラージュが
主体になっているもので、大変リリカルで牧歌的なイメージが漂う5分強の曲。なかなかの名演です。

Disc−2に移っての冒頭「The Night Watch」も凶悪なまでの美しさ。ウエットンのボーカルが
いつになく魅力的で、2分13秒付近から突然厳かに、そして大音量で絡んでくるメロトロンが
曲を抜群に盛り立てています。続く「Easy Money」はかなり異例のレアテイク。
歌詞のセンテンスに切れ目が無く、ちょっとしたラップの様に歌詞を歌い繋いでゆくという
大変変わったアプローチで披露しています。中間インプロ部でのフリップのギターも
かなりユニークな演奏をしており、メロトロンが大々的に絡んでくると異様な抑揚感を保ったまま
一気にコーダまで聴かせています。「Starless」では、この日も曲の随所でビルの金物表現が
曲を彩っていて、曲の輪郭を見事に際立たせています。また、コーダ部でのドタバタしたバスドラムの
表現も独特で、ちょっと変わった印象を残しつつ演奏を終えています。

続くインプロ曲は、非常に緊張感漂う曲想。冒頭から奇怪なイメージが溢れ、2分20秒過ぎ付近から
突然切れ込んでくるフリップのギターを皮切りに、更にジャンクでノイジーなものへと変化してゆきますが、
ビルのパーカッシヴなプレイがここでも炸裂し、後半からのクロスとの絡みも強烈。そして突然
他日以上にハイテンポなアタックで「The Talking Drum」のテーマを叩き始めると、より不気味な
イメージを増幅させたまま移行。ここで主導権を握るクロスの表現がまた狂的で、ここでしか聴けない
殺伐としたアプローチでバシバシとキメまくっています。この演奏は一度聴いたら耳から離れないでしょう。
「Larks' Tongues In Aspic - Part U」は、まるで重戦車の如き迫力があり、ここでも曲の終盤で
クロスの強烈なヴァイオリンが炸裂しています。彼がここまで前面に出て音をアピールするのは
珍しいのではないでしょうか。アンコール「21st Century Schizoid Man」も迫力の演奏。
曲のメリハリがビシビシと効いており、殆どヘヴィメタルと言っても過言では無いほど過激で荒々しい
プレイをしています。中間部はここでもインプロヴァイズされ、ウエットンのちょっとしたベースソロも
含まれていますが、アンサンブルがとにかくヘヴィネスで、表現がいちいち際立っており、
大変聴き応えのある演奏になっているのが特徴です。

音質79点。
やはりこの日の演奏は「Exiles」と「インプロ〜The Talking Drum」の2曲に尽きるでしょう。
73年のタフなツアーで鍛えられてきたこのふたつの曲は、74年に入ってからその輝きを一層と
増していましたが、この日の輝きは格別です。
2CDプレス盤。


『THE GOLDEN LIGHTS CLIP』 / (HIGHLAND - HL358)
Live date : Ford Auditorium, Detroit, USA. / 1974. Apr. 26

上段↑で紹介している『FADES INTO GREY (Sirene-188)』がリリースされるまでは
この公演の代表タイトルだった一枚。使用しているマスターは全く同じものを使用していますが、
音質は本作の方が悪いです。また、本作は曲間にも多少のカットがあるので、
聴いているとちょっとずつフラストレーションが溜まる一枚でもあります。(-_-;)

音質77点。
1CDプレス盤。


『THE GREAT DECEIVER』 / (Chapter One CO-25139)
Live date : Stanley Warner Theatre, Pittsburgh, Philadelphia, USA. / 1974. Apr. 29

1990年にリリースされた、ブートCD黎明期の一枚。
曲順が入れ替えられ、不完全収録のうえ全体にリヴァーブが掛かっていて、しかも
「Easy Money」「Exiles」「21st Century Schizoid Man」の3曲はこの日の演奏ではなく、
恐らく73年11月23日の演奏(恐らく『SONGS FOR EUROPE (NDAL 1001)』から収録していると思う)です。
音源の元になっているのはアメリカの人気ラジオ番組『THE KING BISCUIT FLOWER HOUR』の
レコーディング音源で、ラジオ放送されたもの。実際の演奏曲とセット順は
『THE GREAT DECEIVER : 4CD BOX』のDisc−3の通りです。

オフィシャルでも聴ける音源なので内容については細かく触れませんが、
この日の最大の聴きどころはやはり「Starless」でしょう。ハイハットの刻み方、
金物系の音のコラージュ、際立つクロスのプレイ、そしてメロトロンの表現力など、
どれをとっても凄まじい完成度だと思います。また「The Great Deceiver」での
病的に繊細なビルのドラムアプローチも聴きどころだと思います。

音質91点+α。
1CDプレス盤。
『AMERICANS' LAMENT』 / (NDAL-1002)
Live at :
(1)〜(6) Richard's Club, Atlanta, USA. / 1973. June. 23
(7)〜(10) Stanley Warner Theatre, Pittsburgh, Philadelphia, USA. / 1974. Apr. 29

ボーナストラック扱いの(7)〜(10)がこの日の音源。僅か4曲の収録なうえ
今となってはオフィシャル盤『THE GREAT DECEIVER : 4CD BOX / Disc−3』で完全版が
聴ける音源なので、現在ではディスク自体に殆ど価値も無くなってしまいました。ただ、
ブートに慣れ親しんだ世代としてはこちらの収録音の方が妙にしっくりくるのも事実。(^^;)

この(7)〜(10)の元音源となっているのはアメリカの人気ラジオ番組
『THE KING BISCUIT FLOWER HOUR』で放送されたもの。
(7)「The Great Deceiver」の冒頭では番組DJの軽快な語り口が聴けるの
だけど、何故か

「Let's go, Right To The Stage Of The Stanley Theatre in Pittsburgh, From 1975」

・・と言っています。なんで「1975」?(^^;)
放送ディスクのインナーシートか、放送のキューシートのデータに
そう書いてあったのかしら???謎です。

尚、本編のトラック(1)〜(8)は73年6月23日のものなので、
それはそちらを参照して下さい。

という訳で、本作トラック(7)〜(10)の音質92点。
1CDプレス盤。
『DOCTOR D』 / (Diamond - 730623)
Live at :
(1)〜(8) Richard's Club, Atlanta, USA. / 1973. June. 23
(9)〜(10) Stanley Warner Theatre, Pittsburgh, Philadelphia, USA. / 1974. Apr. 29

ボーナストラック扱いの(9)と(10)がこの日の音源で、上段↑の
『AMERICANS' LAMENT (NDAL-1002)』と同一の収録内容。ただ本作は2曲のみの収録で、
音質も本作の方が僅かに劣っています。しかしそれがどういう収録であろうとも、
今では『THE GREAT DECEIVER : 4CD BOX / Disc−3』で完全版が聴ける音源なので
このディスク自体にも殆ど価値が無くなってしまいました。
まぁただ、本作はブートLP盤同様にインナーカードが付いているのが心憎いので、
アイテムとしてのノスタルジックな嬉しさはあるのかな。(^^;)

尚、本編のトラック(1)〜(8)は73年6月23日のものなので、
それはそちらを参照して下さい。

という訳で、トラック(9)〜(10)の音質は87点。
『AMERICANS' LAMENT (NDAL-1002)』のトラック(7)〜(10)よりも
少しだけ音の明瞭感が劣っています。
1CDプレス盤。

『SOUND STREET IN PITTSBURGH 1974』 /
(※ Special Bonus CDR for limited stickered edition of "ATLANTA 1973 【Virtuoso 163】")
Recorded at : Stanley Warner Theatre, Pittsburgh, Philadelphia, USA. / 1974. Apr. 29
Broadcast Date : 1982. - JAPAN On Air 22:15 〜 23:00 pm / NHK-FM "Sound Street"

73年のページで紹介している『ATLANTA 1973 (Virtuoso 163)』の初回納品分に
付いてくるボーナスCDRタイトル。収録されているのは74年の定番音源として
知られる4月29日のピッツバーグ音源で、これが日本のラジオ局で放送された時の
模様をエアチェック収録したもの。放送は1982年で、番組名は『サウンド・ストリート』。
通常は流さないデモ音源やサウンドチェック音源を時々流す事で他では聞けない
サウンドが聴けた事で、当時音楽ファンから非常に高い人気を得ていたラジオ番組
でした。本作で聴けた放送回もそのひとつで、ここに収録された放送回では
音楽評論家の渋谷陽一さんがDJを務めています。

ちなみにここで聴けるライブ音源は米国のラジオ番組
「キング・ビスケット・フラワー・アワー (※以降KBFH)」が当時収録・放送した
もので、ほぼ間違いなく本作の放送内で流しているのはNHKがKBFHから当時買い入れた
放送用の原盤LPから直接音を流しているのだと思います。クリムゾンの日本のDJ解説付き
ラジオ放送音源と言えば『AMSTERDAM 1973 - JAPANESE BROADCAST』がありますが、
あれも当時のBBCからNHKが買い入れた放送原盤LPから直接音を流していましたし、そうした
原盤の買い付けと原盤の直接オンエアは当時のNHKでは当たり前の事だったのでしょう。

という訳で、この日の"サウンド・ストリート"ではその中から
「The Great Deceiver」「Lament」「The Night Watch」「Starless」の4曲を
オンエアしているのですが、これらの音源については古くは古典ブートLP
『HERETIC (TAKRL 1968)』他、↑3つ分の4月29日の欄で書いた様な既発の
ブートCDでもタイトルで聴けたものと同じです。また正規盤でも24枚組の
ボックスセット『The Road To Red』のDisc-【2】と【3】にもフルセットで
収録されている為、現在ではこのライブ音源自体に特に真新しさは無いです。
しかし本音源は、現在ではそうして当たり前の様に聴けるこのピッツバーグ音源を
産業ロック全盛だった82年にオンエアし、それについて渋谷陽一さんが鋭い見識で
語っている点こそがこの音源最大の魅力である訳です。

トークの内容をかいつまんでメモすると、例えばフリップがメロディを巧く
創れない事への推察であったり、その代替案として取っているフロントマンの
立て方についてであったり、フリップが何故82当時のディシプリン・クリムゾンを
立ち上げてまで自らの音楽方法論を実践しているかについてであったり、果ては
クリムゾンの音楽と商業性との折り合いについてであったりで、こうした事が
熱く語られています。これらのトーク部分は今年2013年に復活宣言をした今後の
クリムゾンについても(そして90年代のTHRAKクリムゾンにも)通低した問題と
なっているんですが、これはフリップがクリムゾンを継続する限りついて廻る
根本的な問題の問い直しにも感じられて大変興味深いと思います。

また本作はエアチェック収録とはいえ収録音が非常に優秀なのも特徴でしょう。
エアチェック・テープにありがちな距離感のある音像ではなく、現在のデジタルラジオ放送
と言っても充分通用するほどの近い音で、とても解像度の高い鮮明な音で録れています。
混線や電波干渉もほぼ皆無で、とても31年前のラジオ録音とは思えません。大変秀逸な
エアチェック音源だと思います。

・・それにしても、当時はそれがごく当たり前の事だったとはいえ、何と贅沢な時代
だったんでしょうか。前記した通り、ここで聴ける4月29日のピッツバーグ音源は
ほぼ間違いなく放送用の原盤LPから直接音を流していると思います。これ、たぶん現在なら
マスターデータからデジタルコピーした音を流すと思うんですが、当時だって大変貴重な
放送用原盤を惜しげもなく使って音を流していること自体、今となっては非常に贅沢なこと
だと思います。しかもこれは国営放送のプロ用業務機材で流された原盤の音な訳ですから、
やはり非常に贅沢なサウンドだと思うんですね。更にその音がこの極上音質のエアチェック録音
として残っているのですから、或る意味凄い記録音源だと思います。確かに、トーク部分が
この音源最大の聴き処である点は変わりません。でも、ここで聴けるピッツバーグ音源も、
これ以上は考え難いほどの贅沢さを伴った極上音質で収録されている事も特記しておきます。

音質(エアチェック録音状態) 98点+α。
1CDR。
『THE SILVER WALNUT』 / (ASPIC, ASP005/006)
Live at
Disc1〜Disc2−(3): Felt Forum, New York City, NY, USA. / 1974. May. 1

このレーベルお得意の"一公演完全収録+一公演不完全収録盤"で、
ニューヨークとロサンゼルスの2公演が収録されています。
ここではDisc1〜Disc2−(3)に収録された5月1日のニューヨーク公演を取り上げます。

本作と同一の音源に、下段に紹介している
『FROM HEIDLEBURG TO NEW YORK : 3CD BOX-BAG SET (EASY−001, PART A−C)』及び
『FRACTURE (Gold Standard ZA-31)』という2タイトルがありますが、最大の特徴は
本作のみがこの日の演奏を全て収録している点でしょう。当時のセットリストから
考えて恐らくこれがこの日のフルセットだろうと思いますが、残念ながら多くの曲で
カットインと曲間カットが目立ち、録音物としての不自然さが否めません。

演奏は、音にかなりエッジの効いた、キレ味の良い「The Great Deceiver」がいきなり印象的。
音質が若干不安定になる箇所があるものの、フリップの的確かつデリケートなギターワークと
ビルのパーカッシヴで細やかさが目立つこの演奏は聴きモノだと思います。
「Lament」はカットイン。冒頭2秒程度が切れています。続くインプロは「Exiles」の前奏で
2分弱と短いながらも非常にインパクトのある曲想。冒頭からメロトロンが不気味に響く
ヘヴィかつ大胆なもので、メタリックなハーモニーは迫力があります。そのメロトロンが
更に大活躍するのが、このメタリックなインプロが展開して始まってゆく「Exiles」。
まさにメロトロンの大洪水状態ですが、これに繊細なタッチが目立つフリップのギターが
絡まってゆく後半の表現は極上だと思います。「Fracture」はリズムに若干の溜めを聞かせた演奏。
前半は静かなイメージの中にウエットンのベースが目立つユニークなもので、後半に入ると
フリップのギターがいきなり炸裂するという展開。ビルの刻むやや病的なリズムも魅力的です。
尚、この「Fracture」の終曲後にフリップがMCをしているのだけど、本作では
それがカットされています。(他の音源では聴ける)

「Easy Money」はかなりメタリック。歌詞1番の後ろで聴けるギターが繊細で秀逸。
中間のインストパートで披露されるギターも病的な魅力に充ちたもので、
物凄く繊細なアルペジオを聞かせたかと思えば、突然とんでもなく変態的で重たい
音にしたりと、イメージにバラつきが激しいです。更には4分40秒付近〜5分15秒付近で
突発的なインプロヴァイズも披露していて、聴き応えのあるプレイになっています。
この「Easy Money」の終曲部はそのまま次のインプロ曲に繋がっており、これは
メロトロンと各楽器の旋律の調和が見事な牧歌的イメージのもの。2分46秒付近から
単旋律でギターが鳴り始めるとそれがそのまま「The Night Watch」の冒頭旋律に
変化するという、これまた見事な音楽の変容シーンを体験出来るのも嬉しいですね。

「Doctor Diamond」はカットイン。冒頭の約3秒程度がカットされています。この日のこの曲はどこか
曲想がひしゃげた奇妙なテイク。フリップのギターも途中で変な絡み方をしていますが、
中間のインストパートで聴けるビルのパーカッシヴなドラムは見事。「Starless」は
歌詞2番が終わった後の中間部が凄まじい。何かが転がった様な音を何度か演出する
ビルのアプローチはとても映像的だし、少しずつリズムに枝葉が付いて明確に
なるにつれて音楽が巨大に膨らみ、重くなり、臨界点を越えてノイジーになって
ゆく様子はこの日のショウ全体の大きな聴き処になっていると思います。そしてこの日の
「Larks' Tongues In Aspic - Part U」は隠れた名演奏のひとつ。粒揃いの音で曲の輪郭が
くっきりと出ていながらも基本はジャンクさ溢れる演奏で、ノイジーな音像の中を不気味に漂う
ヴァイオリンが印象的です。「21st Century Schizoid Man」も力強く、ここでは
ウエットンのボーカルが実に魅力的。中間部のインストパートも音がうねりながら上昇下降を
繰り返す箇所があり(3分56秒付近〜)、コーダの締め方も強烈です。

音質75点〜81点−α。
カットイン・カットアウト・MCカットが目立ち過ぎるのでマイナス評価。
2CDプレス盤。




『FROM HEIDLEBURG TO NEW YORK : 3CD BOX-BAG SET』 / (EASY-001, PART A〜C)
Live Date :
Disc1〜Disc2-(3) : Massey Hall, Toronto, CANADA. / 1974. June. 24
Disc2-(4)〜(9)〜Disc3-(1)〜(4) : Felt Forum, New York City, NY, USA. / 1974. May. 1
*Disc2-(10)〜(11)〜Disc3-(5)〜(11) : Outtakes "LEAGUE OF GENTLEMEN"

アナログLPブート時代のファンにはお馴染みの"TAKRL"というレーベル名を冠してはいますが、
本作は今は無き西新宿のブート店舗IKO IKOが製作した3CDボックスセット。
ブートCD黎明期の1992年か93年頃に発売されたブートで、限定300個のリリースでした。
定価は確か1万2800円だったと記憶しています。当然現在では廃盤ですが、
71年の音源を収録した『THE GROON : 4CD BOX SET』と同様に今となっては
大変珍しいボックスセットです。

創りがなかなか凝ったセットになっていて、中にはそれぞれのディスクの
収録内容が記載された3枚のピンク色の紙(画像参照)に包まれて、
ドクロマークがプリントされた煙草も1本入っていました(画像参照)。
このドクロマークの煙草は市販の煙草です(銘柄忘れた・・・)。
決して大麻とかではありませんので誤解無き様に。(^_^;)
それにしても、本作はブートCD黎明期の手作り感覚溢れるブートです。
アナログブート時代のテイストが残るこういうセットは創るのも面倒で
制作費のコストも高そうですが、それだけに創り手の想いが込められていて
嬉しいですよね。CDR全盛の安易な量産ブートばかりがはびこる現在だからこそ、
こうした手創り感の残るブートは尚更輝いている様に感じます。

という訳で、ここではDisc2-(4〜9)〜Disc3-(1〜4)に収録された5月1日公演に
ついて少し触れます。この日の公演内容については上段
『THE SILVER WALNUT / (ASPIC, ASP005/006)』で詳しく触れていますが、
本作はその『THE SILVER WALNUT』や『FRACTURE / (Gold Standard ZA-31)』とは
全く別のマスター音源から収録されている点です。曲間のカットが無いので
それなりに聴き易いのですが、残念ながら未収録の曲が幾つかあり、
完全収録ではないという点が一番の泣きどころですね。(T_T)

音質69点。
3CDプレス盤。


『FRACTURE』 / (Gold Standard ZA-31)
Live date : Felt Forum, New York City, NY, USA. / 1974. May. 1

こちらも5月1日公演の不完全収録盤。
上段↑2つ分で紹介している 『THE SILVER WALNUT / (ASPIC, ASP005/006)』及び
『FROM HEIDLEBURG TO NEW YORK : 3CD BOX-BAG SET / (EASY-001, Part A〜C)』
とも違う、第3のソース音源がマスターとして使用されています。音質も
前述の2タイトルより良好で、ここに紹介した5月1日音源の中では本作が
一番音質的に優れています。

ただ残念な事に、ショウ冒頭の「No Pussyfooting 〜 The Great Deceiver」「Lament」
「Improvisation 〜 Exiles」が本作では丸ごとカットされているという痛過ぎる
不完全収録盤です。この音質で全曲ノーカット収録ならこの5月1日音源の決定版
だったでしょうに。(-_-;)

音質84点。
1CDプレス盤。


『CIGARETTES AND ICE CREAM』 / (HIGHLAND, HL151/52#KC8)
Live date
Disc1〜Disc2-(4): McMasters University, Hamilton, Ontario, CANADA. / 1974. May. 4
Disc2-(5)〜(9): "ORTF T.V." Paris, FRANCE. / 1974.Mar.22

74年第一期アメリカツアーの最終日前日の音源。
冒頭「The Great Deceiver」はフェイドイン。「Lament」ではビルのパーカッシヴな
ドラミングがかなり目立ち、細やかでセンスの良い彼のドラムアプローチが実に素晴らしく、
曲が軽快かつテンポ良い曲想で締まって聴こえるのが印象的です。

「Exiles」の開始前には相変わらず短い前奏のインプロが披露されており、各楽器の単音が重なり合う
奇怪なコラージュ的旋律から曲に突入しています。4分05秒付近から二度連続で叩いているビルの
ドラムロール的なアプローチが珍しいですが、ウエットンのボーカル表現と
クロスのヴァイオリンにも深みがあり、終盤直前で前面に出てくるフリップのギターも病的で特徴があって、
細かいドラミングをするビルの音と相まって素晴らしい相乗効果を出しています。
「Fracture」ではいつも以上にビルのドラムが大変細かくビートを刻んでいて、
気持ちの良いオカズを連発しながら曲の起伏とメリハリを大いに効かせています。
後半突入後、終曲直前のメロトロンが前面に出てくる付近からのパフォーマンスは
強烈で、全体のアンサンブルに物凄い一体感が感じられます。

そしてこの日最大の聴きどころが、この後に披露された強烈なインプロ曲(Disc1−(5))。
まるで昔の怪奇映画の様なかなり不気味な曲想で、メロトロンの奇怪な表現と異様な
旋律を紡ぎ出すヴァイオリンに、パーカッシヴなドラミングの絡みが絶品のインプロです。
彼方で時折り鳴るこれまた病的なベースラインも秀逸で、4分55秒付近から急激にリズムが
変化してゆく様子は鳥肌モノ必至でしょう。また曲のイメージの散らし方も驚異的な表現を
披露しており、テンポアップ後の妖艶かつ悪魔的なイメージから自然かつ巧みに夢想の様な
イメージへ変化させ、一瞬だけ「Exiles」のイメージへ戻してからどこかに儚く消えてゆく
瞬間的な構成力には開いた口が塞がりません。個人的に、74年中に披露したインプロ曲の中では
これがベストテイクなのではないか
と思います。

「The Night Watch」はウエットンのボーカル表現が際立って朗々と歌い上げている彼の
パフォーマンスが耳に心地良いです。中盤〜後半で聴けるフリップのギターワークも
デリケートな音を細やかな表現で弾いており、曲を色彩豊かに彩っています。続く
「Doctor Diamond」はここでも中間部からかなり重たいイメージで演奏しており、
ここでも74年独特のアプローチとなっている点に注目。確かにへヴィな曲想では
あるのだけど、しかしグルーヴが決して失われていないのも見事だと思います。

「Starless」は中間部の盛り上げ方が絶品のパフォーマンスで、イメージの増幅表現が見事。
またこの曲の後半でクロスのヴァイオリンに深めのエコーが掛かっているのが確認出来ますが、
5月に入った辺りから彼はこの曲でエコーを掛ける様になっており、この日の演奏はその好例では
ないかと思います。またここから続いてゆく混沌としたイメージのインプロ曲(Disc2−(3))では
ヴォリューム奏法で曲を彩ってゆくウエットンのベースが印象的。クロスのヴァイオリンも
陰鬱かつ叙情的なメロディーで曲を更に盛り上げていていて、どこか凄惨美という感じがします。
終曲部で延々と続くギターとヴァイオリンの音の対話も絶品で、ここは隠れた聴き処でしょう。

「Larks' Tongues In Aspic - Part U」はかなり攻撃的な演奏ですが、特に凄まじいのは
曲後半で聴けるヴァイオリンソロ。これが大変アグレッシヴで他日の演奏を圧倒しています。
またビルもスネアをディレイさせている箇所があってユニークなアプローチをしているのが
面白いです。そして「21st Century Schizoid Man」は曲の冒頭から凄まじく攻撃的な
ドラミングをしており、中間部から始まるギターがかなり変態的。更には3分24秒付近から
ビルが突然リズムをテンポアップさせており、この珍しいアプローチに合わせて一瞬曲が
インプロヴァイズされながら更に奇妙な和音で絡んでゆくフリップが強烈です。終曲の
コーダ音もかなり引き伸ばした独特のアプローチで、非常に聴き応えがあります。

音質50点→68点。
後半になるに従って少しずつ音質は回復してきます。しかし全体を通してに音揺れが目立ち、
あまり良い音質とはお世辞にも言えません。しかし同日の演奏を収録した
『THE VIRGIN MARY / (KC−014)』(下段参照)よりは随分と聴き易いうえ、
本作は擬似ステレオチャンネルで音が左右に振り分けられており、
カット無しで一公演が完全収録されている点も特筆されると思います。

尚、Disc−2の5曲目からはテレビ出演時の音源。同74年音源を収録したタイトル
『THE ULTIMATE PARIS』等、他のタイトルにも同内容のテレビ音源が収録されています。
詳しくは上段別枠の3月22日の欄を参照して下さい。
2CDプレス盤。


『THE VIRGIN MARY』 / (KC-014)
Live date : McMasters University, Hamilton, Ontario, CANADA / 1974. May. 4

ブートCD黎明期のタイトル。西新宿にあった旧IKO-IKO製のブートです。
今では殆ど見掛けなくなった分厚い2枚組みケース入りで、ジャケも縦に見るように
創られているという、何とも時代を感じさせてくれる仕様と装丁になってます。

収録内容は上段で紹介している『CIGARETTES AND ICE CREAM / (HIGHLAND, HL151/52#KC8)』と同じで、
マスターも全く同じ物が使われています。しかしながら本作は『CIGARETTES AND ICE CREAM』よりも
音がこもっているうえに収録音も遠いのが難点。但し、擬似ステレオで収録されている
『CIGARETTES AND ICE CREAM』と違って、本作はイコライジングされていない素の状態の
収録音を聴くことが出来るのが大きいですね。また、ラストの
「21st Century Schizoid Man」の終演後も、本作の方が 『CIGARETTES AND ICE CREAM』
より約20秒程度長く当日のオーディエンスの歓声が収録されているのも特徴です。

音質39点→45点。
同一マスターを使用している為、本作も後半になるにつれて少し音質が回復してゆきます。
まぁそれでも基本的に良い音質とはあまり言えませんが。ははは。(^_^;)
2CDプレス盤。


『THE BUBBLE'S BURST』 / (Sirene-202)
Live date : Tarrant County Convention Centre, Fort Worth, Dallas, TX, USA / 1974. June. 6

ちょっと変わったセットリストで演奏している音源。
聴いた感じでは編集されている様子も無いので、この日は何らかの理由で
演奏時間が決められたショート・プログラムだったのかもしれません。
「Easy Money」は相変わらずフリップのギターの絡み方がユニーク。ソロの展開も狂的で凄まじいです。
また冒頭から力強い声を聴かせてくれるウエットンのボーカルも魅力的です。
「Lament」は既にかなり熟成された演奏ですが、この日は展開が激しいのが面白いです。
詩的なムードで始まるボーカルとギターが印象深いですが、中間部でのギターアプローチは攻撃的で強烈。
「Fracture」は、音に溜めを殆ど効かせていないストレートな展開というちょっと珍しいパフォーマンス。
やはりこの日は何かプログラムのせいで時間に追われている為なのかもしれませんが、
こうした早めの展開でこの曲を演奏するのはなかなか珍しいと思います。

5曲目に収録されているインプロは、不協和音バリバリの怪奇的な曲想。ミドルテンポで
ムードたっぷりに曲が展開してゆきますが、クロスの奏でる美しいメロトロンと
フリップのジャンクなギター音が原色でぶつかり合い、妖しいコントラストをいくつも描いています。
「The Talking Drum」は、冒頭でビルのタムを多用したメロディアスな約30秒程度の
フリー・インプロヴァイズが付いているという他日とは一風変わった珍しいテイクで幕を開けます。
クロスの狂的なヴァイオリンもかなり前面にプッシュされていて、この日独特の印象的なフレーズを
最初から最後まで高らかにかき鳴らしているのも特徴です。そこから続く
「Larks' Tongues In Aspic - Part U」はこの日最高の演奏。冒頭のメイン・リフ部分から
アンサンブルが際立って良く、中間パートではクロスがファズを効かせたエレキ・ピアノを
一瞬披露してからヴァイオリンに持ち替えてゆくというかなり珍しいプレイが聴けたり、
その後ろでノイジーなギターがやかましく鳴っていたりと、アヴァンギャルドでジャンクな雰囲気が
たっぷり詰まった凄まじい演奏を披露しています。

「21st Century Schizoid Man」は、中間のフリーなインストゥルメンタル・パートが実に印象的なテイク。
中間部突入直後からフリップのギターがいきなり前面に出てきたかと思うと、そのまま曲を完全に支配しつつ
グイグイと引っ張ってゆく様は大変珍しい展開ですし、非常に聴き応えがあります。
コーダの締め方もこの日はかなり独特で、他日よりも長めのアプローチで終演しています。
このコーダではクロスのヴァイオリンが目立ちますが、ここでも5月4日の演奏と同様に
アンサンブルが急激にスロー→ファストになってゆく様子が確認出来ます。

音質88点。
同一音源に、下段で紹介している『LIVE IN FORT WORTH (TEXAS) 1974 / (Heart Breakers HB-932-1/2)』と
『IMPROVISATORS / (Moonchild Records-920506)』があります。使用しているマスター音源は本作を含めて
3タイトル全て同じですが、音質は本作が一番良好です。但し、録音機材の近くで終始喋っている
オーディエンス数人の声が絶えず聞こえています。これがなかなか耳障りで腹立たしい・・・(T_T)
1CDプレス盤。


『LIVE IN FORT WORTH (TEXAS) 1974』 / (Heart Breakers HB-932-1/2)
Live date : Tarrant County Convention Centre, Fort Worth, Dallas, TX, USA / 1974. June. 6

上段で紹介している『THE BUBBLE'S BURST / (Sirene-202)』及び、
下段で紹介している『IMPROVISATORS / (Moonchild Records-920506)』と同一の音源。
使用しているマスター音源も全て同じです。

本作は音質では『THE BUBBLE'S BURST / (Sirene-202)』に今ひとつ譲るものの、
これはもうコンポでイコライジングをいじれば殆ど差は無い程度だと思います。
それにしてもこのタイトル、webシッョプや店頭でやたらと観掛けますね。
74年の定番ということかしら。

音質85点。
1CDプレス盤。


『IMPROVISATORS』 / (Moonchild Records-920506)
Live date : Tarrant County Convention Centre, Fort Worth, Dallas, TX, USA / 1974. June. 6

上段↑2つ分で紹介している『THE BUBBLE'S BURST / (Sirene-202)』及び、
『IMPROVISATORS / (Moonchild Records-920506)』と同一の音源。
使用しているマスター音源も全て同じです。
音質面では他の上記2タイトルと比べてクリアさが若干欠けるうえに、
音圧が不安定な箇所があるのが難点かな。
でも基本的にそれほど悪い音質ではないですし、
これでも充分鑑賞に耐えられる音ではあると思います。

本作もまた、ブートCD黎明期にリリースされたタイトルでした。
発売は1992年か93年の春頃だったと記憶しています。
Moonchild Recordsといえば往年のクリムゾンコレクターにはお馴染みの一枚ですが、
僕も当時は随分と投資しましたよ、ええ。(^_^;)ここに画像を載せている僕の盤も、
当時リリースされた直後に西新宿のIKO-IKOに駆け込んで買った懐かしい一枚であります。
価格は確か4200円でした。

音質72点。
1CDプレス盤。
『THE SILVER WALNUT』 / (ASPIC, ASP005/006)
Live at
Disc2−(4)〜(12): Shrine Auditorium, Los Angels, CA, USA. / 1974. June. 19

本作にメインで収録されているのは74年5月1日のニューヨーク公演(5月1日の項を参照して下さい)。
ここではDisc2−(4)〜(12)に収録されたロサンゼルス公演について取り上げます。

冒頭「Larks' Tongues In Aspic - Part U」から強烈。ピッチが未補正のせいなのか、若干
テンポが速い気もしますが、重たい音でテンポ良く曲想が展開してゆく様は強烈です。
「Lament」はウエットンの声が一部苦しそうな箇所がありますが、それでもこのボーカルアプローチは
大変聴き応えのあるテイクです。演奏も一体感があり、一音一音がズシズシと気持ち良いのも特徴です。
続くインプロはこの日も「Exiles」の導入となるもの。かなり不気味な曲想で、冒頭からメロトロンと
ビルの金物系アプローチが絡み合うスリリングなものです。その「Exiles」はウエットンのベースラインが
随所で光る麗々しい演奏で、彼のボーカル表現も見事です。一方「Fracture」は音に荘厳な重たさがあり、
特に前半部ではいつになく深みのあるアプローチをしているのが印象的。そして後半は演奏音に
圧倒的な厚みがあり、音にブーストが掛かっている様な音質と相まって、幾重にも重ねられたアンサンブルの
競演表現が凄まじいです。

「Easy Money」は序盤からフリップのギターがユニーク。妙にリズムを決めていたり、奇妙なコードを
弾いてみたりと、面白いプレイをしています。中間のインストパートでは、そのフリップとビルの
パーカッシヴな絡み合いが終盤にあり、大変聴き応えがあります。またこの日もこの「Easy Money」の
コーダからそのまま6分弱のインプロ曲が続いていますが、この日のインプロは牧歌的な雰囲気がある
どこか懐かしいイメージのもの。1分50秒付近から始まってゆくフリップのアルペジオの表現は、
71年頃の彼自身がよく披露していたアプローチに似ていて興味深いです。その後曲想は各楽器のイメージが
どんどん綴れ織りになって膨らみ、そのまま「The Night Watch」へと自然に移行。ここでも
ダンディズムさ溢れるウエットンの声が非常に魅力的です。そのウエットンの声の魅力が更に一段と強く
感じられるのが「Starless」で、特に前半部の彼の声は中域音にしっとりとした深みが出ており、
この天性の声質に新たな魅力を再発見すること間違いなしでしょう。2分33秒付近では
一瞬だけ彼のボーカルにディレイが掛かるのもユニークです。これだけ演奏とウエットンの声に
魅力が出ているこの曲ですが、物凄く残念なことに後半突入直前の7分31秒付近で
突然フェイドアウトしてCD終了。これはかなり萎えますよ・・・。(-_-;)

音質73点。
残念ながらショウの後半が未収録な為に不完全収録音源ですが、演奏内容はすこぶる良質で、
聴きどころの多い音源だと思います。音質はお風呂場で聴いている様な若干遠めの収録音です。
尚、「Easy Money」の5分47秒付近に一瞬だけ音像の歪みがあります。
2CDプレス盤。
『THIS FARAWAY LAND』 / (PF-068S @ PeaceFrog)
Live at : Performing Arts Centre, Milwaukee, Wisconsin, USA. / 1974. June. 22

「Larks' Tongues In Aspic - Part U」はカット・イン。
曲冒頭の数秒間が失われていますが演奏はダイナミックで迫力があり、
ラウドで凄まじいエネルギーがいきなりビシビシと感じられる好演奏。
これはなかなか凄いですよ。(^^)続く「Lament」も強烈で、ウエットンの
歌声もこの日は非常に力強く素晴らしいです。曲の途中、2分50秒付近から
絡んでくるギターも切れ味が素晴らしく、ビートを叩き付けるビルの仕事も
随所で光っています(※1分27秒付近からの細かいパーカッシヴな仕事も素晴らしい)。
終曲部のアンサンブルも音の塊が一気に迫ってきて身震いする様な迫力があります。(^^)

「Exiles」はこの日も冒頭に約1分半ほどの強烈なインプロから入ってゆくスタイル。
のっけから4人の凶悪な音がぶつかり合い、細かく病的なギターフレーズが掻き鳴ら
される様子は凄まじいものがあります。やがて徐々に音を散らしながら曲の主旋律が
姿を現してくる様子は圧巻でしょう。曲本編に入ってからも演奏は目が覚める様な
色彩感を随所で放っており、重厚で伸びのあるアンサンブルが見事に開花しています。

続くインプロはビルのパーカッシヴな打音からスタート。
中盤まではやや混沌としていますがフリップのギターが絡んでくる3分33秒付近から
次第に目鼻が付いてきてアンサンブルに重みと方向性が出てきます。
4分55秒付近で一度ブレイクし曲想に更なる変化が訪れ、ミドルテンポを保ったまま
サウンドの迫力を増しつつ終曲へ向かっています。この間、殆どのシーンで
ビルが細かい打音をアレコレと放っているんだけど、これが曲想を一層クールな
ものにしていると思います。

「Easy Money」冒頭がフェイド・イン。序盤からギターが奇妙なフレーズで
変態的に絡んでおり、等間隔で図太く鳴らされるベースの単旋律と不思議な
相乗効果を生んでいます。インストの中間部に突入してからもアタックの強い
ベース音を基軸に曲想が拡がりを見せ、タフな音の塊を維持したまま終曲へ。
そしてこの終曲部がそのまま「Fracture」に変化するという74年のお決まりコースに
なるんだけど、この「Fracture」はなんとたったの21秒でカット→次の「Starless」が
フェイド・インで被って始まっています。
・・・うーむ・・・(-_-;)
しかしそんな始まり方をするとはいえ、ここでの「Starless」がまた良いんですね。
前半の歌詞付きパートはウエットンの歌声に深く心を奪われますし、
インストの中間部も凄まじい緊張感が一音一音に重たく漂い、9分55秒から始まる
後半の炸裂感には圧倒的な迫力があります。

「21st Century Schizoid Man」は出だしからヘヴィ・メタル。
ウエットンのボーカルにはエコー処理が施されており、
サウンドの凶悪感を増しているのが印象的。(^^;)
中間部は凄まじくノイジーで、言うなればグラインドコア・メタルな様相を
呈しており、この日はフリップが積極的に前面に出て絡んでいるのも面白いです。
そしてこの中間部のインストは4分04秒付近で一度ブレイクし(これ珍しい)、
ウエットンのベースに誘われて再び重低音と混沌のアンサンブルへ突入。
後半開始の歌詞3番("♪ Death Seed Blind Man's...♪")からは
ボーカルラインに更なる(!!!)エコーが効かされており、
これはもう音による暴力・レイプと言っても過言ではありませんな。(^^;)
でもこれが実にかっこいいサウンドで、見事にこの日のショウを締め括っています。

音質80点。
カット・インとフェイド・アウト、フェイド・インが多いですし、
「Fracture」は僅か21秒しか収録されていない不完全収録盤ですが、
音楽的にはかなり聴き処の多い好盤だと思います。
1CDR。




『FROM HEIDLEBURG TO NEW YORK : 3CD BOX-BAG SET』 / (EASY-001, Part A〜C)
Live Date :
Disc1〜Disc2-(3) : Massey Hall, Toronto, CANADA. / 1974. June. 24
Disc2-(4〜9)〜Disc3-(1〜4) : Felt Forum, New York City, NY, USA. / 1974. May. 1
*Disc2-(10〜11)〜Disc3-(5〜11) : Outtakes "LEAGUE OF GENTLEMEN"

ジャケ記載のDisc1〜Disc2-(3)のクレジットには74年3月29日のHeidleburg公演と記載されていますが、
これはデタラメ。正しくは74年6月24日のトロント公演が収録されています。
この6月24日のライブはオフィシャル盤『THE GREAT DECEIVER : 4CD BOX SET』に4曲のみ収録されて
有名になりましたが、ブートLP盤として昔からこの日の音源は全長版が存在し、長きに渡って
世界中のコアなクリムゾンファンや音源コレクター達に親しまれ続けてきた歴史ある音源でした。
つまり、オフィシャルに収録された4曲以外のパフォーマンスが聴けるという点で、
今もその音源的な価値は全く失っていないばかりか、オフィシャルではやむなく削除された
楽曲郡を再考察出来る絶好の資料音源にもなっています。

この日の演奏で突出しているのは、オフィシャル『THE GREAT DECEIVER : 4CD BOX SET』にも
収録された「improv - The Golden Walnut」と「Fracture」が特に傑出していると個人的には
思います(特に「Fracture」はこの日の演奏がクリムゾン史上最高パフォーマンスだと思う)が、
ここではそのオフィシャル盤には収録されなかった楽曲郡について書きたいと思います。

「Larks' Tongues In Aspic - Part U」はジャンクでノイジーな力強い演奏が開演と同時に
襲ってくる強烈なパフォーマンス。 曲後半に狂的な音で切り込んでくるヴァイオリンも大変
印象深い鮮烈さを放っていると思います。
「Lament」も演奏音に凄まじい一体感があり、後半のアップテンポになるところの表現力は強烈です。
ウエットンの熱唱もいつになく張りがあって極上。少しのチューニング作業を経てから始まる
「Exiles」も繊細さとラウドさが混在した素晴らしい演奏で、5分17秒付近から始まるメロトロンと
ウエットンの瑞々しく跳ね回るベースラインとの信じ難いほど妖麗なメロディの絡み合いが見事です。
またあまり目立ちませんが中間部でのフリップも美しく繊細なアルペジオを時折り奏でたりしており、
聴きどころの多い魅力的なパフォーマンスになっています。
この「Exiles」の終曲後と、次のインプロ曲(オフィシャル盤『THE GREAT DECEIVER : 4CD BOX SET』の
Disc4−(1)にも収録された"The Golden Walnut")の間は、恐らくMCカットをして切り張りしてあると
思われます。そしてこの強烈なインプロ曲から「The Night Watch」〜「Fracture」〜
「improv-Clueless And Slightly Slack」までは『THE GREAT DECEIVER : 4CD BOX SET』の
Disc4−(1)〜(4)までと完全に同一ですが、本作は腹立たしいことにここで編集作業がしてあり、
何と「The Night Watch」の後にこの日の最後に披露された「21st Century Schizoid Man」が
収録されてるんですね・・。(-_-;)

なんでこういう元々のセット順をあえて無神経に崩そうとするのか分かりませんが、
これは恐らくボーナストラック(リーグ・オブ・ジェントルメンのでもトラック他)を
収録するにはDisc3のCD収録時間が足らなくなってしまい、やむなくこの曲をDisc2に
詰め込んだ為でしょう。この日の「21st Century Schizoid Man」は素晴らしく、
ラストにこれを聞くと素晴らしい余韻が残るものなだけに、無神経な編集によって
この位置に収録されているのはかなりの違和感があります。(-_-;)

「Easy Money」は、中間のインストパートに突入してからが聴きモノ。フリップの
細やかなギターアプローチからスタートし、その後ろでまるで時計の秒針の様に
チキチキと病的なリズムを細かく刻み続けるビルとの対比がいきなり凄いです。
やがてメロトロンとベースラインが絡んでくると曲は一気に抑揚感を増し、
イメージを増幅させながら後半へ。その後半突入と同時に切れ込んでくるウエットンの
ボーカルの表現も実に力強く、強烈なアンサンブルでコーダに向かっています。
続く「Starless」でもウエットンのボーカルアプローチが素晴らしく、前半部の
彼の色彩豊かな表現力には改めて舌を巻かされると思います。そして何と言っても、
後半突入直後から一斉に各楽器が0→MAXまで立ち上がる凄まじいアンサンブルは、
初めて聴いたら絶対に鳥肌が立つ筈。これはファン必聴のグレートパフォーマンスでしょう。

音質86点。
この日の演奏を収録したタイトル(下段に紹介してある『CD版 STARLESS IN TORONTO / (DPE-002)』と
『BLACK BIBLE / (Moon Child Records, MC910203)』)の中では一番音質が良く、
細かな音まで確認出来るのが本作ですが、残念ながら「21st Century Schizoid Man」の
収録位置が入れ替えられています。(-_-;)また、他のタイトルとの音像の違いから、
本作だけがアナログLP盤『STARLESS IN TORONTO』の直落としではなく別ソースの
マスターから収録されており、恐らく『STARLESS IN TORONTO』を製作する際に
使用された大元のマスターテープから落としているんじゃないかと思います。
(※アナログ落としの音というよりは、明らかにテープ落としの音像なので)
3CDプレス盤。


『STARLESS IN TORONTO』/ (DPE-002)
Live date
: Disc 1 〜 Disc 2−(2) / Massey Hall, Toronto, CANADA. / 1974. June. 24
: Disc 2−(3) 〜 Disc 2−(7) / Palazsport Delo Sports, Brecia, ITALY. / 1974. Mar. 20

本作は、古典の名盤アナログブートLP『STARLESS IN TORONTO』をCDに直落とししたタイトル。
いわばCD版の『STARLESS IN TORONTO』ですが、このうち6月24日公演が
Disc1〜Disc2−(2)に渡って収録されています。

本作はアナログ盤直落としの為に、欠点として曲間の静かな所になるとスクラッチノイズが
やたらと目立ちます。しかしながら、僕よりも歳上のアナログLPブート時代からこの音源に
慣れ親しんでいた世代には、本作の方が音に自然な温もりがあって好まれているみたいです。(^_^)
シャリシャリとしたザラつきが妙に目立つ音で収録されていますが、
個人的にはストレートで良い音質だと思います。

尚、残念なことに本作の「Larks' Tongues In Aspic - Part U」はカットイン。
冒頭が僅かに切れています。また、殆どの曲と曲との間(MCやチューニング中のインターバル)が
編集でカットされているのも痛いですね。更には「Fracture」の7分03秒〜07秒までの約4秒間に渡り、
謎の無音部分があります。・・・うーむ。(-_-;)

音質83点。
2CDプレス盤。


『BLACK BIBLE』 / (Moon Child Records, MC910203)
Live date : Massey Hall, Toronto, CANADA. / 1974. June. 24

名門レーベルMoon Childが1991年の初頭にリリースした、ブートCD黎明期のタイトル。
本作は『FROM HEIDLEBURG TO NEW YORK : 3CD BOX-BAG SET / (EASY-001, Part A〜C)』
と同一のマスターソースを使用している音源で、恐らく本作と
『FROM HEIDLEBURG TO NEW YORK』は、その収録音像からアナログブートLP
『STARLESS IN TORONTO』からの盤落とし"ではなく"、どちらもそのマスター
ソースとなったテープから収録されていると思われます。
『STARLESS IN TORONTO / (DPE-002)』は盤落としであるため、
この収録音の差は大きいですね。

しかしながら本作は何故か「Easy Money」と「21st Century Schizoid Man」
がカットされた不完全収録盤。恐らくCD1枚に収録する為の措置だったの
でしょうが、このため、2013年10月現在でもこの日の音源をセット順に
曲間のカット無しで完全収録したタイトルは未だ不在のままです。

音質82点。
スクラッチノイズが無く、多少角が取れた丸みのある音で収録されているのが特徴です。
録音程度の良い、直落とししたテープで聴いている様な音質です。
1CDプレス盤。
『BREATH OF YESTERDAY』 / (PF-282D @ PeaceFrog)
Live at :
Disc1+Disc2−(1)〜(5) : Town Hall, Leeds, West Yorkshire, England. / 1973. Mar. 22
*Disc2−(6)〜(7) : Coliseum, Cape Cod, Massachusetts, USA. / 1974. June. 26

本編は73年3月22日のイギリス・ヨークシャー公演ですが、
ボーナストラック扱いで収録されているDisc2−(6)〜(7)が
ここで紹介する74年6月26日の米国マサチューセッツ音源。

まず(6)の「Fracture」はなかなかの名演。音質が歪んでいるので
若干分かり辛いけれども、序盤の弱音の応酬による音の緊張感は
充分伝わってきます。中間部に差し掛かってリズムが動き出すと
躍動するリズムラインの動きが生々しい輝きを放っているのが
感じ取れるでしょう。後半のサウンドの力強い炸裂感も同様で、
特にメロトロンに包まれながら全ての音が収束してゆく終曲部の
力強いサウンドには大きな聴き処になっています。

(7)の「21st Century Schizoid Man」も楽曲のダイナミックさが強く
出ている屈指の名演。音楽のスケールが大きく、エネルギーに満ち溢れており、
特に狂的なまでに歪められた中間のインプロパートは4人の知と技が見事に融合しています。
但し、残念ながらそのインプロパート終了間際5分53秒付近でフェイドアウト。
射精寸前で消えてゆくこのフェイドアウトは凄く萎える・・・(+_+;)

という訳で、Disc2-トラック(6)と(7)の音質は40点。
録音状態のせいか使用したテープのジェネレーションのせいか、
低音も若干割れてます。(-_-;)
2CDR。
『LAST STAND STARLESS』 / (Highland - HL036#KC3)
Live date : Central Park, New York City, New York, USA. / 1974. July. 1

70年代クリムゾンの最終公演を収録した音源。
導入SE「No Pussyfooting」を掻き消す様に始まる一曲目は何と
「21st Century Schizoid Man」。かなり溜めを効かせた重苦しい
パフォーマンスですが、破壊力満点で既にフルヴォルテージ。
いきなりレッドゾーン突入でメーター振り切っています。(^^;)
この日はウエットンのボーカル・エコーが"途中から部分的に"掛けられており
(歌詞2番の歌唱中にブワッと掛かり始める。3番も同様)、なかなか面白いです。
また中間インストパート開始直後から高らかに展開するギターソロが
狂的・病的で凄まじく、それと対になるバックの演奏も実にフレキシブル。
ウエットンのベースラインもかなり攻撃的なアプローチで弾いていて
大変かっこいいです。(^^)

「Lament」は比較的落ち着いた演奏ですが、2分50秒付近から一気にベースが唸り始め、
強烈なラウド感を保ったままコーダへ。序盤から丁寧に演奏しているので、この
荒れ狂う後半部とのコントラストが鮮烈。アンサンブルにも素晴らしいキレが
感じられる好演奏です。「Exiles」はここでも冒頭で各楽器の単音が綴れ合う
不気味な短いインプロを前奏として披露してからスタート。ここではヴァイオリンと
図太いベースがよく絡み合い、曲をよく盛り立てています。3分39付近秒から
メロトロンの大洪水が始まると音の一体感と躍動感が急激に高まり、情感豊かな
音の空間が次々と紡ぎ出されてゆく様子は鳥肌モノでしょう。終曲付近で聴ける
ギターの静かなハーモニクスから導かれる全体音の収束と拡散の壮絶な響きは
失禁必至です。

ここから続くインプロ曲は、ロングトーン調のギター音から導かれてスタート。
これにすぐ東洋風の旋律を奏でるエレキピアノが鳴り始め、エキゾチックな
曲想が場を支配します。しかし2分59秒付近から図太いベースラインが
ラウドなリズムラインを刻み始めると混沌が急速に豪快な音の塊に変化。
強烈なビートが場を支配し、音楽の推進力が加速するこの辺りの展開は
凄まじいです。クロスがメロトロンとヴァイオリンの選択を迷っている
印象もあって面白い。(^^;)後半でテンポアップして曲想が浮き上がると、
そのまま豪快なイメージを維持しつつタフな印象を残したまま終曲しています。
事実上、これは70年代クリムゾンが残した最後のインプロですが、これまでの
総決算とも言える素晴らしいパフォーマンスで、まさに音楽そのものの跳躍を
感じられるインプロだと思います。

「Easy Money」はカットイン。冒頭約3秒ほどの音が失われています。
この曲も最後にかなり異様かつスリリングな曲想で演奏されており、
まさに危険な音楽の香りがプンプンしています。フリップのギター
アプローチも随所で異常に細かいのも特徴でしょう。中間のインスト部は
この日もインプロ作業が途中に入っており、出口付近でベースラインが
突然暴走して(4分36秒付近〜)曲の推進力が徐々に増してゆく様子は壮絶です。
「Fracture」がまた悶絶必至の超絶パフォーマンスとなっています。
演奏突入後少ししたところでビルが定間隔で音をカツコツと入れ始めるの
ですが(1分49秒付近〜)、これが時計の秒針の様なイメージを出しており
不気味さとドラマ性をグッと上げていると思います(※←個人的な印象では
アルバム『ポセイドンのめざめ』の終曲「The Devils Triangle」の第三パート、
"Garden Of Warm"突入時にカチコチ鳴っている不気味な時計の音を想起します)。
またこの前半部はベースとギターの細かいアルペジオが絡まり合うデリケートな
印象を与えていますが、そんな中で時折り奇妙に蠢くベースラインが実にエロい。(^^;)
音楽が炸裂する後半突入後も、その狂騒の中でベースが強烈な存在感をアピール
しており、コーダで地鳴りの様に即興で音程下降させながら曲を捻じ伏せてゆく
シーンは壮絶そのものです。・・但し、残念ながら9分00秒付近でツギハギ編集
した痕跡あり。演奏が極上なだけにこれは痛い・・。

「Starless」はこの日、いつになく荘厳でヘヴィな曲想。冒頭でいきなり
歌詞を間違っているウエットンは相変わらずですが、しかしその朗々と
歌い上げる湿った木管楽器の様な素晴らしい声の響きは極上。思わず
聴き惚れること請け合いです。中間パートに入るとビルが金物系のかなり
目立つ単音で曲を挑発する様に独特の絡みをみせてきます。これが大変効果的で、
後半の爆発を誘う導火線の様な役割を果たしており、後半突入と同時に
サウンドが大爆発を起こす様子は筆舌に尽くし難い鮮烈さを放っています。
そしてコーダ部では音楽がその様々な制圧から解き放たれてゆく類稀な瞬間を
体験出来るでしょう。これ、間違い無く70年代のクリムゾンが奏でた最高の
「Starless」じゃないかなぁ。素晴らしい。

「The Talking Drum」はジャンクな鉄板の破裂音(だと思う)からスタート。
フィルターが掛かったロングトーンのギターイメージが蜂の羽音の様に鳴り響き、
そこにクロスが更なる奇怪なノートチョイス音でヴァイオリンを掻き鳴らして絡み合い、
神経を逆撫でする様なイメージがどんどん増幅されてゆく様子は強烈。
冒頭で時折「プップー」というクラクションの様な音が聞こえるのもユニークですが、
このラストライブ終演後のシーン(トラックナンバー11)でも同一の音が一瞬聞こえる
ので、これはビルではなくステージ付近or会場付近の何かの音なのでしょう。
でも、そうした本人達の意思ではない偶然性もまたライブの醍醐味だと思いますし、
その日その時の曲の表情でもあると思います。

最後の「Larks' Tongues In Aspic - Part U」は序盤のAメロのアンサンブル中、
前曲「The Talking Drum」での異様な緊張感から開放された、半ば精神が壊れ
かかった様なフリップのギター音が悲鳴を上げている(ハウリング?)のが
確認出来ますが、その狂的なAメロが終わって突然静かなパートに移る箇所の
コントラストが大変生々しいと思います。後半ではクロスのエコーを効かせた
凄まじいヴァイオリンソロがありますが、これが終わると再び静かで穏やかな
イメージになり(4分36秒付近〜)、不思議なほどボクトツな(しかし緊張感は
持続している)シーンが一瞬だけ顔を覗かせます。直ぐにまたラウドな
イメージになってコーダを迎えるのだけど、この一瞬だけ出てくる不気味な
静けさがまた音楽的な心象風景とも感じられて魅力的です。

音質93点。
元々音質良いですが、「Exiles」付近から更に解像度が増してきます。
演奏音の近さも抜群で、低音のパンチや透明感もあり、まさに
74年の決定盤と言っても良いほどに生々しい音源だと思います。
尚、(2)と(3)の間、(4)と(5)の間、(9)と(10)の間など、曲間の編集カットが
結構目立つのも困った特徴です。また「Fracture」後半9分00秒付近で
マスター音源に起因する切り貼りの編集作業跡もあります。
しかしそれでも尚、この内容はそれら欠点を補って余りあるほどの
素晴らしいドキュメント音源であると思います。
1CDプレス盤。


『LAST LIVE SHOW』 / (4 701-2)
Live at : Central Park, New York City, New York, USA. / 1974. July. 1

70年代クリムゾンの最終日をブートCD黎明期から伝えた名盤古典タイトル。
アナログブートLP時代からある不朽の名盤タイトルのCD版で、僕の記憶では
ブートCDが市場に出回り始めた1990年の夏頃には既に西新宿の店頭に
並んでいたと憶えがあります。上段↑で紹介している
『LAST STAND STARLESS (Highland - HL036#KC3)』が1997年に登場するまで、
"クリムゾンのラストライブと言えばコレ"というくらいの定番タイトルでした。

・・とはいえ、『LAST STAND STARLESS』と比べても本作の音質は殆ど変わりません。
使用されているマスターも全く同じものが使われています・・というか、
同一のマスターテープから落としたというよりは、『LAST STAND STARLESS』は
本作をコピーして創ったんじゃないでしょうか。というのは、音の明瞭さは
本作の方が若干(※ヘッドホンで聴き比べると"あぁ、なるほど・・"と、ほんの
僅かに差が分かる程度)に劣るけれど、それはテープのジェネレーションの差と
いうよりは、イコライジング処理で明度が少し補正されたと思える程度だからです。

という訳で個人的にはジャケットやディスク盤面の、いかにも黎明期の
ブートCDっぽいチープなデザインセンス(※←褒め言葉です。念の為)に
好感が持てるので、僕は本作の方が好きです。後に本家DGMからもこの日の
音源が出たけれど(※コレクションボックスvol.4 / DGM CLUB-10)、長年
ブート慣れ親しんだ感覚としては、キングクリムゾンのラストライブと
言えばやっぱり本作が一番しっくりきますねぇ。(^^)

音質92点+α。
『LAST STAND STARLESS』と同一音源なので、カットの位置や「Fracture」後半の
編集跡の位置(※本作ではトラックナンバー(8)の1分37秒付近)も同一です。
もちろん演奏音の近さも同様に抜群で低音のパンチや透明感もあり、
ミドルレンジの音像も申し分ないと思います。
1CDプレス盤。