コミックビーム
2000年

※”▽”はハートマークの代用。「4C」は4色カラーの略。
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2000年12月号
作者タイトル備考
桜玉吉表紙
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
須藤真澄おさんぽ大王
柳澤一明真・女神転生カーン
志村貴子敷居の住人
作:TKD+画:竹谷州史LAZREZ
うすね正俊砂ぼうず
作:平井和正+画:梁慶一死霊狩り
鈴木みそオールナイトライブ
林光默橋無醫院
安井誠太朗ミズトカゲのいる沼
竹本泉てきぱきワーキン▽ラブFX
ヒロモト森一SEX☆MACHINE
鈴木マサカズサルぽんち
作:ダークマスター+画:泉レッドマンオトナの漫画
カネコアツシBAMBi
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
羽生生純恋の門
タイム涼介東京カイシャイン
いましろたかし釣れんボーイ
市橋俊介テルオとマサル
金平守人かねひらだもの

 今号、心を揺さぶられた作品は、まず作:TKD+画:竹谷州史「LAZREZ」。日本の象徴が崩御し、改元が行われた夜、万尊は下北沢のライブハウスにいた。そして悪魔のような男と出会う。音楽と完全に溶け合うその男のインパクトはすさまじく、また万尊のテンションも上がりまくる。ページをめくったときにドスンとくるパワーがある。音と狂気が画面を埋め尽くすようで圧巻だ。それからもう一つ、羽生生純「恋の門」にもシビれた。今回は虚脱状態に陥った門が、一時実家に帰宅。今は病の床にある画家だった父の姿を見、そしてその葬式を通じて、一つ大事なものを掴む。漫画を描くこと、ペンを白い紙に走らせること。その原点に立ち返った瞬間のエクスタシーにビリビリくる。ついに彼は前に進めるのだろうか。恋乃は対照的に混迷していきそうな感じだが。それから別種のすごさは市橋俊介「テルオとマサル」。眼鏡男、マサルの狂人ぶりがさらにエスカレート。女とヤルためなら全裸も傷害も辞さず。スゲエ男だ……。ところでこの号で、女性限定で市橋俊介&タイム涼介の合コン相手を募集してるんだけど、この漫画読んで果たして何者が応募してくるのだろうか。すごく気になる。

 桜玉吉「幽玄漫玉日記」。詳しいことは記さないけど、桜玉吉、よくこういうことやるよな〜。ネタのためならどこに行くのも、そして自腹を割くのもまったく辞さず。その徹底ぶりはいつも立派だと思う。かなり笑わせてもらいました。志村貴子「敷居の住人」。今回もとても面白い。近藤ゆかのちょっとしたセリフによって、物語を一気に切なく厳しいものにしてくれている。これはズーンとこたえるなあ。鈴木みそ「オールナイトライブ」。いや〜、今回のはなかなか強烈。ゲーム専門学校の講師二人が語る、生徒たちの寒すぎる実状。いやあもう、この生徒たち最低ですな。九九くらいは覚えようよ。こりゃ確かに金ムシるつもりでないと講師もやってられんですな〜。いましろたかし「釣れんボーイ」。今最も単行本化を待ち望んでいる作品の一つ。ヒマシロ先生、よくもまあこれだけ実もフタもないことを……。


2000年11月号
作者タイトル備考
志村貴子表紙
志村貴子敷居の住人含4C
柳澤一明真・女神転生カーン
須藤真澄おさんぽ大王
うすね正俊砂ぼうず
タイム涼介東京カイシャイン
作:TKD+画:竹谷州史LAZREZ
作:平井和正+画:梁慶一死霊狩り
摩訶国彦驚異の旅
ヒロモト森一SEX☆MACHINE
作:ダークマスター+画:泉レッドマンオトナの漫画
鈴木マサカズサルぽんち
竹本泉てきぱきワーキン▽ラブFX
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
カネコアツシBAMBi
鈴木みそオールナイトライブ
市橋俊介テルオとマサル
羽生生純恋の門
林光默橋無醫院
いましろたかし釣れんボーイ
金平守人かねひらだもの

 今号も面白いが、読切作品も1〜2本欲しいところ。
 志村貴子描くところの表紙がシャレてますなあ! そんなわけで巻頭は志村貴子「敷居の住人」。これがまた面白い。近藤ゆか、中嶋さん、キクチナナコの間にいるものの、彼は置いてけぼりにされるばかり。青春はキツイです。なんか絵のほうもまたうまくなっているような。じわりじわりと、落ちることなく面白くなり続けている。すごいなあ。作:TKD+画:竹谷州史「LAZREZ」。今回は、すっかり作品を書けなくなってしまった元売れっ子少女小説家の元に、主人公・万尊がインタビューに行く。人間廃業寸前といった状態の少女小説家との言葉のやり取りは緊迫感にあふれ、やがてショッキングな結末を迎える。「表現したいものを持っているかどうか」ということが一般人と作家を分ける一番肝腎なところなんじゃないかと俺はよく思うのだけど、この作品を読んでそういった考えがまた頭をよぎった。竹谷州史の黒々とした線がお話にとてもよく合っていて、中盤から後半に向けての高まりはかなり迫力があった。総体として万尊たちをどういう方向に行かせようとしているのかはまだよく分からないところがあるんだが、この一話だけでも十二分に面白い。
 市橋俊介「テルオとマサル」。「今月はちんちんが出ないので女の子も安心して読めます!」とのこと。素晴らしい。マサルだけでなく、マサル母も相当にイカれててすごい。「テルオとマサル」にちんちんが出てこないのでもの足りなかった人にはヒロモト森一「SEX★MACHINE」がオススメ。すげえ。すげえペニスだ!! 迫力あるなー。男たるものこうありたい。しりあがり寿「弥次喜多 in DEEP」。今回のエピソードはそろそろ最終局面か。弥次さんと喜多さんの、死と生、愛と憎の狭間での最終対決となるのだろうか。なんだかお話はものすごいことになってきている。羽生生純「恋の門」。門が漫画を諦め、ふぬけに。そして働く恋乃の打算。ここまで来ても、やはり二人は噛み合っていない。この先彼らがどういう道をたどるのか。注目である。


2000年10月号
作者タイトル備考
しりあがり寿表紙
しりあがり寿弥次喜多 in Deep含4C
志村貴子敷居の住人
肉柱ミゲル100万円!ベガスくん
作:TKD+画:竹谷州史LAZREZ
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
カネコアツシBAMBi
いましろたかし釣れんボーイ
ハーツ&マインズ非国民最終回
林光默橋無醫院
市橋俊介テルオとマサル
作:ダークマスター+画:泉レッドマンオトナの漫画新連載
須藤真澄おさんぽ大王
ヒロモト森一SEX☆MACHINE
羽生生純恋の門
タイム涼介東京カイシャイン
うすね正俊砂ぼうず
柳澤一明真・女神転生カーン
鈴木みそオールナイトライブ
作:平井和正+画:梁慶一死霊狩り
鈴木マサカズサルぽんち
竹本泉てきぱきワーキン▽ラブFX
金平守人かねひらだもの

 今月号はたいへんに充実しておりました。読者を容赦なく鬱に突き落とす作品も多く、容赦がない。ヘビーだ。
 しりあがり寿「弥次喜多 in DEEP」が表紙でなかなかインパクトのある色遣い。作品のほうも、死と生の境界線ラインを漂う二人を中心にお話が大きく展開し、なんだかとてもすごいことになっている。いったいこの物語はどこまで行ってしまうのだろう。志村貴子「敷居の住人」。……うまい。ラストのページのズンとくる落としっぷりなど見事というほかない。中嶋さんがちょっと勇気を出している。がんばれくるみちゃん。肉柱ミゲル「100万円! ベガスくん」。100万円という物体、概念の料理の仕方がどんどんうまくなっていて、なんかすごく面白くなってきている。こういうギャグ陣営がちゃんと育ってきているというのは強いなあ。作:TKD+画:竹谷州史「LAZREZ」は、不穏な仕事から万尊がやはり恐ろしげな羽目に陥っている。なんだかたいへんな感じになってきそうだが、どのように物語は展開していくのだろうか。楽しみ。
 いましろたかし「釣れんボーイ」では、ヒマシロ先生が釣り大会5位入賞。ポジティブなんだかネガティブなんだか。ハーツ&マインズ「非国民」は今回スパッと最終回。今回の1話めの超巨乳女の話はインパクトが強くて笑えた。市橋俊介「テルオとマサル」は、扉のアオリによれば「一部サイトで大好評」らしい。ウチのサイトでも(っていうか俺)大好評ですよ!! 今回はマサルが教育実習生に青き性のムンムンぶりをぶつけんとす。とてもイヤな雄々しさがあるのでアンタッチャブルとして敬して遠ざけたいところです、実際にいたら。読者として接している分には、モアアンドモアカムカム。作:ダークマスター+画:泉レッドマン「カウントダウン」。絵の人は誰だか見れば分かるでありましょう。なんかやたらとても鬱なムードに満ちているが、主人公の男はどんなあがきを見せてくれるんだろうか。ヒロモト森一「SEX☆MACHINE」。伝説のSEX☆MACHINEのアナルとペニスはとてもスゴいぜ〜。荒々しくビンビンきている。
 鈴木マサカズ「サルぽんち」は今回ズシーンとくる重い展開。サルであろうと人間であろうと、社会からハミ出すのはつらい。そして鈴木みそ「オールナイトライブ」にも出てきた言葉が響くのだ。「生きる」。金平守人「サヨナラチビ」。今回はクッキリしたトーンの描線で、ノスタルジックに優しくお話が進めている。と思いきや。おうおうかなり煮詰まっていてすごいですなあ。最近この人、なんだか精神的には不調っぽそうだけど作品はどんどんキレてきている。作画面やトリッキーなお話作りなど技巧に長けた人だけに、こうなってくると強い。


2000年9月号
作者タイトル備考
ヒロモト森一表紙
ヒロモト森一SEX☆MACHINE新連載・含4C
志村貴子敷居の住人
肉柱ミゲル100万円!ベガスくん
作:TKD+画:竹谷州史LAZREZ
作:平井和正+画:梁慶一死霊狩り
須藤真澄おさんぽ大王
柳澤一明真・女神転生カーン
鈴木みそオールナイトライブ
竹本泉てきぱきワーキン▽ラブFX
ハーツ&マインズ非国民
林光默橋無醫院
カネコアツシBAMBi
タイム涼介東京カイシャイン
羽生生純恋の門
うすね正俊砂ぼうず
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
鈴木マサカズサルぽんち
市橋俊介テルオとマサル
須田信太郎やさしい女は何処にいる最終回
いましろたかし釣れんボーイ
金平守人かねひらだもの

 桜玉吉休載もあってか、今回はいつもより若干落ち着いた印象。
 まずはなんといっても、須田真太郎「やさしい女は何処にいる」の最終回。最近ビームでは最も楽しみにしている作品の一つだったが、最後までちょっとホロっとさせるいいお話だった。冴えない男たちの意地を、明るく威勢よく、そして優しい視点で描いている。しみじみくるとてもいいお話。単行本にまとめてほしいなあ。ヒロモト森一の新連載「SEX★MACHINE」、生殖行為によるエネルギーを使って爆走するバイク人間と、その運転者である人々の物語。ヒロモト森一といえば、「要塞学園」が有名だが、荒々しくて力強い絵柄は健在。この作品の道具立ては以前、激漫でやっていた作品と同様だが、あちら掲載分も合わせて単行本化してほしいところ。志村貴子「敷居の住人」。キクチナナコが相変わらず煮詰まっているのを興味深く眺める。クオリティがコンスタントに高く、好調さをキープし続けている。
 作:TKD+画:竹谷州史「LAZREZ」。万尊は、ライター仕事のため亡霊が出るというマンモス団地を取材しにいくことに。そこで起こる思いもよらぬできごと……という感じ。お話自体は次号に続くだが、ぞくっとするアヤシゲな雰囲気はなかなかなもの。この作品、全体的にはどういう方向にいくのかなあ。まだ予想がつかない。カネコアツシ「BAMBi」は久々の復活。映画のほうが一段落ついたってことかな。市橋俊介「テルオとマサル」。今回もマサルの行動は突飛でイカれておる。なんかやけに楽しそうな表情とかが実にナイスだ。金平守人「かねひらだもの」。最近かなり好き勝手に飛ばしている印象で面白くなっている。ギャグなんでネタバレしてもしょうがないのであんまり詳しいことはいえないが、ヤケッパチでスピード感のあるノリが良い感じ。


2000年8月号
作者タイトル備考
鈴木みそ表紙
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
須藤真澄おさんぽ大王
柳澤一明真・女神転生カーン
安井誠太朗ミズトカゲのいる沼
志村貴子敷居の住人
肉柱ミゲル100万円!ベガスくん
作:TKD+画:竹谷州史LAZREZ
ハーツ&マインズ非国民
竹本泉てきぱきワーキン▽ラブFX
鈴木マサカズサルぽんち
うすね正俊砂ぼうず
鈴木みそオールナイトライブ含4C
林光默橋無醫院
タイム涼介東京カイシャイン
羽生生純恋の門
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
茶谷明茂秋桜新連載
市橋俊介テルオとマサル
須田信太郎やさしい女は何処にいる
摩訶国彦驚異の旅新連載
いましろたかし釣れんボーイ
金平守人かねひらだもの

 桜玉吉「幽玄漫玉日記」。社長の旅立ち。3ヶ月ほど休養をとるとのこと。桜玉吉の不在はちょっと寂しいけれど、充電後の爆発を楽しみにお待ちしております。安井誠太郎「ミズトカゲのいる沼」。両生類の肌を思わせるぬたっとした絵柄で再登場。驚くほどにマイペース。まあうまくいったらまた登場していただきたい。志村貴子「敷居の住人」。今回もまたうっまいなあ。本田くんの何をどうしていいもんだか全然分からない青春模様が、実に巧みに描写されている。ラストのセリフの間なんて思わずうなった。作:TKD+画:竹谷州史「LAZREZ」。今回はまた爆裂してていいねえ。とくに扉。とにかく腕も折れよと豪速球を投げ込んでくるような作風が痛快だ。鈴木みそ「オールナイトライブ」。水中出産実況リポート。当たり前といえば当たり前なのだが、やたらと生々しくてドスンと来る読みごたえ。こんなの読むと生みたくなくなっちゃうよー(生めません)。
 しりあがり寿「弥次喜多 in Deep」。死に包まれた喜多さん、常軌を逸して巨大化中の弥次さん。ますます道は混沌として、何が起こるのかまったく予想がつかなくなってきた。幻に厚みがあって、迫力を感じる物語である。そしておおおおお、茶谷明茂。1997年1月号「今日はいつもと違う帰り道……」、1997年5月号「街角パラダイス」で強烈な印象を残しまくってくれた作家さんが再登場。今回の「秋桜」はシリーズ連載となるという。ちょっと前の手触り滑らかな絵柄から若干ザラザラした質感が出てきて、五十嵐大介をも思わせるテイストになってきた。技量はもともと高い人だけに、あとはガンガン描いてくれればそれで満足。期待してまっせ。市橋俊介「テルオとマサル」。マサルの行動は、ますますハイテンションでクレイジーで意味不明になっている。絵といい話といい、イカれててたいへん愉快だ。
 須田真太郎「やさしい女は何処にいる」。今回も面白かった。不器用な男たちの不器用な生き様を、暖かく見守っている。最近の須田真太郎は本当にいいお話を描くようになってきた。荒井国夫改め摩訶国彦「マンドレイクの驚異の旅」もシリーズ連載開始。「近代物怪録鬼姫様」の人。今回はマンドレイクちゃんという娘が、古代エジプトなどの不思議を語って歩くといった趣のお話。完成された絵柄を持っている人だが、今回のは絵とお話の雰囲気も合っているし、のんびりした魅力があった。それからいましろたかし「釣れんボーイ」。いやー、ヒマシロ先生のダメっぷりは止まるところを知りませんな。自分に都合良すぎる妄想とか、もうすごく立派でないところが素晴らしいです。


2000年7月号
作者タイトル備考
志村貴子表紙
志村貴子敷居の住人含4C
タイム涼介東京カイシャイン
作:平井和正+画:梁慶一死霊狩り
肉柱ミゲル100万円!ベガスくん新連載
作:TKD+画:竹谷州史LAZREZ
ハーツ&マインズ非国民
竹本泉てきぱきワーキン▽ラブFX
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
須藤真澄おさんぽ大王
林光默橋無醫院
カネコアツシBAMBi
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
うすね正俊砂ぼうず
安井誠太朗ミズトカゲのいる沼
羽生生純恋の門
鈴木マサカズサルぽんち
須田信太郎やさしい女は何処にいる
市橋俊介テルオとマサル
深谷陽SAIGON DREAMS
いましろたかし釣れんボーイ
金平守人かねひらだもの

 深谷陽がビーム初登場。タイトルは「SAIGON DREAMS」。お得意の東南アジア系作品。日本人の男と現地の女性との恋を語る。あちら方面の暑い空気を感じさせる作画がこのお話でも効果的である。深谷陽は、掲載誌にいまいち恵まれてない感は受けるけど、実にしっかりした力量の持ち主で絵も話もハイレベル。これを機会にビームでコンスタントに描いてくれると、また層が暑くなりますな。志村貴子「敷居の住人」。相変わらず本田くんは翻弄されっぱなし。しゃれてはいるがハードなお話でもあり、読みごたえバッチリ。肉柱ミゲル「100万円ベガスくん」は新連載。100万円というブツに対するこだわりがストレートに。下らないノリがなかなかグッド。この人は最初そんなに面白く思わなかったが、じょじょに面白くなってきた感あり。作:TKD+画:竹谷州史「LAZREZ」。万尊のすっきりしない生き様が泥臭く、ビシバシ力強く描かれる。拳でぶん殴るような作風が潔くてかっこいい。上野顕太郎「夜は千の眼を持つ」。今回はゲームブック形式。こりゃまた相当ヒマでないと読めなさそうな。
 しりあがり寿「弥次喜多 in DEEP」。喜多さんはこのまま死んでしまうのか。現実と夢の境目、入り混じったエリアをゆらゆら進み、ときに両者の大断層を見せつける。ううむ深い。安井誠太郎「ミズトカゲのいる沼」が久しぶりに掲載。次いつ載るかは分からないけれども待ちますとも。安井誠太朗の線は、またしても両生類的なぬめりが増して独特の風味を醸し出している。光沢のなさが強く印象に残る。羽生生純「恋の門」。会社がつぶれたり漫画がウケなくなったり、恋乃に次々と不幸が。今までは生活力のない門を恋乃が補う形で二人の関係は推移してきたが、そのバックボーンがなくなってどう転んでいくのか。楽しみ。須田真太郎「やさしい女は何処にいる」。うーん、この人は本当にいいお話を描くなあ。絵柄は泥臭いけれども、読み口は爽やかでときに感動的だ。しみじみ読ませるお話を描くだけの力量がある。市橋俊介「テルオとマサル」。今回も眼鏡デブ・マサルの行動がとくに奇矯でおもしろおかしい。いましろたかし「釣れんボーイ」。ヒマシロ先生のダメっぷりますます加速中。絶句するほどの身もフタもなさがスパイシー。
 あと、今月号から定期購読の振替用紙が付属した。便利。


2000年6月号
作者タイトル備考
桜玉吉表紙
羽生生純恋の門含4C
志村貴子敷居の住人
ハーツ&マインズ非国民新連載
作:TKD+画:竹谷州史LAZREZ
タイム涼介東京カイシャイン
林光默橋無醫院
鈴木マサカズサルぽんち
作:平井和正+画:梁慶一死霊狩り
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
須藤真澄おさんぽ大王
鈴木みそオールナイトライブ
竹本泉てきぱきワーキン▽ラブFX
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
カネコアツシBAMBi
市橋俊介テルオとマサル
うすね正俊砂ぼうず
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
いましろたかし釣れんボーイ
小田扉スミ子の窓
福実未ノアル+桃吐マキル蟲酸
須田信太郎やさしい女は何処にいる
金平守人かねひらだもの

 今号もテンション高し。アクのある雑誌だけに万人が面白がれるわけではないけれども、重要なのは自分にとって面白いってこと。万人のことなんか知るもんか。とはいえ、読みたい人が変えないという状況はやはりもったいなさすぎる。というわけで次号からは入手の確実性を高めるべく、定期購読の振り替え用紙が付属するようになるらしい。入手に不安がある人はぜひ申し込むべし。おまけもあるしね。
 ハーツ&マインズ「非国民」が新連載。どうやら例のコンビであるらしい漫画である。熱い原作者と、味のある作画者。絶妙のコンビであるだけにこれから期待できそう。いましろたかし「釣れんボーイ」。ヒマシロ先生絶不調。ダメ人間ぶりは留まるところを知らず。ここまでくるとお見事というほかない。うーん、単行本でまとめ読みしたい! 作:TKD+画:竹谷州史「LAZREZ」。連載第2回め。なかなかにテンションが高い。男の情念を原稿用紙に叩きつけるような、熱い作風にビリビリしびれる。
 小田扉が登場。タイトルは「スミ子の窓」。淡々とした話運びながら、端々の力の抜け方が絶妙で気持ちが良い。シンプルだけど、雰囲気のある絵柄は、これはこれですごくうまいと思うのだ。一枚の絵でこれだけ語れる人ってそうそういない。さらにコピー誌がよく似合う肩の凝らなさもあって、なんだか1時間でも2時間でも読んでいたくなる作風である。福実未ノアル+桃吐マキル「蟲酸」。奇妙な半人半蟲な転校生少女のダイナミックな物語がまたしても登場。生理的嫌悪感を催すようなクセのある事物が描かれているのに、その描きっぷりは妙に爽やかで痛快。気持ちいいのである。須田真太郎「やさしい女は何処にいる」。最近とてもいい。ぶきっちょな男たちの純情を、力のある筆力で泥臭く、かつ爽やかに描いている。このごろとみにいいお話を作っている注目株。
 羽生生純「恋の門」が巻頭カラー。恋乃の強引な誘いにより、声優のファンクラブのバスツアーに参加させられることになった門。信者的ファンの集まりのなか、門の存在は圧倒的に場違い。思えば、彼らの恋の物語も、この世界においては濃密すぎて場違いだ。この違和感、ズレによるトリップ感が羽生生純作品の魅力の一つである。志村貴子「敷居の住人」。ひさびさにキクチナナコのハードな内面にスポットが当てられる。幸せになってほしいものです。市橋俊介「テルオとマサル」。テルオに愛する人ができる。そしてそれはあまりにも意外な相手。何気なくクレイジーであり、物語のテンポも軽妙。


2000年5月号
作者タイトル備考
竹谷州史表紙
作:TKD+画:竹谷州史LAZREZ新連載・含4C
志村貴子敷居の住人
タイム涼介東京カイシャイン
うすね正俊砂ぼうず
鈴木マサカズサルポンチ
林光默橋無醫院
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
須藤真澄おさんぽ大王
羽生生純恋の門
作:平井和正+画:梁慶一死霊狩り
鈴木みそオールナイトライブ
柳澤一明真・女神転生カーン
竹本泉てきぱきワーキン▽ラブFX
有川祐彼女とデート最終回
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
市橋俊介テルオとマサル
須田信太郎やさしい女は何処にいる
いましろたかし釣れんボーイ
新谷明弘期末試験前也〜ときめき注意報〜
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
金平守人かねひらだもの

 エンターブレインからの発行になって第一発め。会社が変わったとはいえ、やたらと高いテンションは変わらない、というかむしろパワーアップしているようにさえ思える。しかも毎月こうなんだから、ちょっと信じられないほどである。これがたったの490円で読めるなんて。もちろんアクが強いから万人向けではないけれども、読みたい人が読めばそれでいいのだ。たとえ何万部売れようとも、俺が読むのは今目の前にある一冊だけなのだし。他人にとってどうかなんて知らない。俺にとって面白いこと、それがいちばん大事。全力を挙げて、読ませていただきますぜ。
 まずは巻頭カラー、作:TKD+画:竹谷州史「LAZREZ」。「PLANET 7」の竹谷州史の新連載だ。竹谷州史は太い線で黒がとても黒々とした骨っぽさと、ころころしたキュートさを兼ね備えた、非常にイキのいい描き手である。夢ばかり見てうだつのあがらぬ生活をしていた、ゴツゴツと人相の悪い万尊という男が、ある日、内なる衝動を爆発させ、コンサートの壇上に乱入し、あらん限りの力を振り絞って「清水次郎長」からの一節を叫ぶ。そのパフォーマンスに圧倒された少年と万尊が出会い、物語は動き始めていく。まだ始まったばかりでどう進むか分からないが、絵にもお話にもガツガツとぶつかってくる力がある。かなり面白くなりそうな気配で期待大。有川祐「彼女とデート」は最終回。最後までとても面白かった。もったいないので中身についてはあまり語らないでおくが、最終回だけでも独立した短編として立派に通用するだけのクオリティを持っている。心の暗部をザクリとつかみだし、ありありと描写する鋭さにはクラクラしてしまう。単行本は5月末発売予定とのこと。まとめ読みしたら、またやられてしまいそうだ。
 志村貴子「敷居の住人」は、毎回書いているがすごくいい。オシャレであり深みもあり、小僧小娘たちのキャラクターも立っている。ずっと彼らの生活を観察していたくなる。タイム涼介「東京カイシャイン」。馬鹿馬鹿しくて下品でへにょへにょと脱力。何気ないセリフがキク。上下逆さまコリアンパワー漫画、林光默「橋無醫院」。今回も話は見えてこないが、気合いビシバシでハッタリの利いた画面作りがかっこいい。精緻でかつ荒々しい。羽生生純「恋の門」。嫉妬に燃え、やがて自分の心の中で恋乃が占める部分の大きさに気づく門。そして彼はペンを執る。でもやはり、この二人を結びつけるものはかなりの部分で打算なのだ。甘えのない表現、情念パワーが迫る。 しりあがり寿「弥次喜多 in DEEP」。いつもすごいけど、今回もまた。鬼気迫る迫力。市橋俊介「テルオとマサル」は、今回もやたらテンションが高い。待ち合わせに遅刻したくせに、ティッシュ配りの女の子と話しているテルオを見て、いきなり「この色情魔!!」といって殴りかかるマサルの暴虐ぶりがたまらない。恐ろしい男だ。
 須田信太郎「やさしい女は何処にいる」。この前のエクストラビージャンに載った読切「未来の住人」もすごくいいお話だったが、今回もよかった。地味ながら、人情味のあるお話を、キザでなく押しつけがましくなく描ける実力派だ。新谷明弘「期末試験前也〜ときめき注意報〜」は、一本のお話が34個のパーツに分かれていて、それが順番がごちゃまぜに配置されていて「次はどこだろう」ッて感じで探しながら読んでいくトリッキーな構成。頭から通すとお話が分からないけど、ちゃんと順を追うと、なるほどなかなか巧妙な作りであることが分かる。いましろたかし「釣れんボーイ」。ヒマシロ先生は、毎回毎回絶句させてくれる。仕事をほったらかして釣りに入れ込むと思えば、今度は仕事をほったらかして病院の女先生に恋慕。なんかどの方面も中途半端であるあたり業が深い。
 なお、今回はカネコアツシ「BAMBi」はお休み。


2000年4月号
作者タイトル備考
林光默表紙
林光默橋無醫院新連載・含4C
タイム涼介東京カイシャイン
うすね正俊砂ぼうず
志村貴子敷居の住人
竹本泉てきぱきワーキン▽ラブFX
鈴木マサカズサルポンチ
作:平井和正+画:梁慶一死霊狩り
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
須藤真澄おさんぽ大王
柳澤一明真・女神転生カーン
鈴木みそオールナイトライブ
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
カネコアツシBAMBi
羽生生純恋の門
市橋俊介テルオとマサル
須田信太郎やさしい女は何処にいる
有川祐彼女とデート
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
いましろたかし釣れんボーイ
金平守人かねひらだもの

 コリアンパワー第2弾。林光默「橋無醫院」(きょむいいん)が新連載。韓国語は通常横書きで表記されるため、縦書きの日本の漫画雑誌とは読み進める方向が逆である。この漫画も日本の通常の漫画とは逆開きで描かれている。日本ではパソコン雑誌などに載っている漫画は、通常と逆開きだ。で、今回の作品を掲載するに当たって、ビームは大胆な方式を選んだ。雑誌の初っぱなからほかの漫画とは上下逆に印刷。本をひっくり返して読むようにという指示付き。通常、こういう開きが逆の作品を載せる場合は、巻末に掲載して後ろから読んでもらうようにするというのが通例だが、どうしてもこの作品を巻頭カラーに持ってきたかったのだろう。アジアから新しいパワーを持ってこようとする試み、本を逆にしてもいいとさえ決断するほどの意気込み。実にビームらしい心意気といえよう。お話は、悪玉に追われている娼婦と、街でぶらぶらしている頭が足りなめだがムチャクチャな格闘能力を誇る男が出会い、そこから物語が動き始める……といったもの。舞台は韓国の地方都市って感じだろうか。まだお話が始まったばかりで、ストーリーはいまいち見えないのだが、絵はかなり細かく描き込まれていてハイクオリティだし、アクションシーンも迫力があって面白げな雰囲気がビンビン。
 志村貴子「敷居の住人」。ここしばらくずっと、毎回毎回メキメキ音がしそうなほど面白いのだが、今回もメキメキ。達者でシャレた絵で、少年少女のもやもやした思いを冷静に記述し続ける。洗練された描写と、切り込んでいく手際の巧みさ。おもしろーい。桜玉吉「幽玄漫玉日記」。ヒロポンの部屋を、ファンシーだったり下品だったり、ちょっと小粋でイヤなアイテムで埋め尽くす桜玉吉とO村。いらないところに手間をかけまくる、念の入りっぷりが楽しい。しりあがり寿「弥次喜多 in DEEP」。氷の下に閉じ込められた喜多さんを助け出そうとする弥次さんの前に、異形の者が立ちはだかる。寒くて冷たく異様な場所で繰り広げられるであろう、めくるめくであろう世界に期待が高まる。市橋俊介「テルオとマサル」。今回もテルオとマサルは、クレイジーで暑苦しく、やたらとテンションが高い。常軌を逸した者たちの前に、僕らは無力だ! カッコイイぜ。イエー!
 須田信太郎「やさしい女は何処にいる」。不完全燃焼で、燃えのこりがくすぶり続ける男たちの姿が、泥臭く哀愁をもって描かれていて良い感じ。有川祐「彼女とデート」は、いよいよ次号で最終回。今回は、途中まではビシバシと緊迫感にあふれ、最後で凍て付いた雰囲気が溶け出す。次号どう決着をつけるのか。すごく楽しみ。いましろたかし「釣れんボーイ」は今月も面白かった。ヒマシロ先生とその妻の、葛藤とちょっと心暖まる物語。金平守人「かねひらだもの」。このタイトルになってから、ノリが良くなっていてずいぶん面白さがアップした印象。今回も下らないギャグをテンポ良く繰り出してきて、面白く読めた。
 次号から作:TKD+画:竹谷州史で新連載スタート。うひょ、楽しみ。


2000年3月号
作者タイトル備考
うすね正俊表紙
うすね正俊砂ぼうず含4C
志村貴子敷居の住人
吉田戦車ひどいじゃないか兄さん
須田信太郎やさしい女は何処にいる
タイム涼介東京カイシャイン
柳澤一明真・女神転生カーン
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
須藤真澄おさんぽ大王
馬頭ちーめいBREAK-AGE外伝 ボトルシップ・トルーパーズ
桃吐マキル+福実未ノアル蟲酸
作:平井和正+画:梁慶一死霊狩り
鈴木みそオールナイトライブ
カネコアツシBAMBi
市橋俊介テルオとマサル
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
羽生生純恋の門
鈴木マサカズサルポンチ
竹本泉てきぱきワーキン▽ラブFX
有川祐彼女とデート
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
いましろたかし釣れんボーイ
松本充代陽の下の恋人(後編)
金平守人かねひらだもの

 志村貴子「敷居の住人」。ちょっと影が薄めだった近藤ゆかが今回のメインで、いきなり色濃い影をドスーンと落とす。孤立して強がりつつくじけもする魂たちを、あのオシャレな絵柄で逃げることなく描く。じんじん来ます。吉田戦車「ひどいじゃないか兄さん」。素晴らしく面白かった。例の、ひげを生やして赤や緑の服を着用、いいトシしてといんといんと跳ね回っている、不気味なおやじ兄弟のお話完結編だ。兄弟のうっとうしさ、歯の生えた小鳥、うざったい人々。吉田戦車はなんと「いい顔」を描くのだろう。しびれる〜。タイム涼介「東京カイシャイン」。あけすけに下品で下らなくて良い。馬頭ちーめいが体調不良ということで「ボトルシップ・トルーパーズ」は途中までの掲載。ここで第一部・完にして、体調回復後ま第二部再開する運びとのこと。その分、桃吐マキル+福実未ノアル「蟲酸」の第2話が掲載されているのは不幸中の幸い。蟲の国からやってきた、ナゾの転校生ムシズさんの奇妙な生態を描くイカれた作品。ダイナミックでエクスクルーシブ。面白いナリ。市橋俊介「テルオとマサル」。テルオとマサルが彼らの河原野球(というかなんというか)によって負傷した徘徊老人を拾得する。キャラクターはくどいけど、ギャグはさりげなくかつクレイジー。とくに身勝手で暑苦しい顔で思わずイジメたくなるような空気をまき散らす、眼鏡男マサルがお気に入りだ。
 しりあがり寿「弥次喜多 in DEEP」、羽生生純「恋の門」の2作は、コンスタントに迫力があってしかも高いレベルで突っ走っている。今号も充実。有川祐「彼女とデート」は、セッちゃんがついに八神に気持ちを伝え急展開。今回はいつになく表面的に目立つ動きがあった。有川祐ホームページによれば全8話で今回が6話め。そろそろクライマックス。ますます面白くなってきた。いましろたかし「釣れんボーイ」。ヒマシロ先生、ラブレターですかあ。うーむ、ますます募るダメ人間ぶり。素晴らしい。そして後編掲載の松本充代「陽の下の恋人」のダークな読後感にまたまたしてやられる。きれいな少年への愛が高じて、小学校の教師を目指した女性。陰湿な策略を巡らし、ストーカーまがいの行為をし、可愛い少年を追い回す成人女性の執念深さに慄然とする。美しくない子供は「野菜」として、心中からバッサリ切り捨てる。さっぱりした絵柄なのに、その描写は果てしなくねちっこい。ズーンとした気持ちになれるヘヴィな一作。松本充代はやっぱりスゴイぜ。
 あと、桜玉吉「しあわせのかたち愛蔵本」全3巻プラス1冊(ファンブック「桜玉吉のかたち」)が2000年3月に出るらしい。今回は「WoodBallの唄」のCDはつかないのかなー。うっぼーうっぼーうぼうぼううぼー。カネコアツシ「BAMBi」は映画化決定。


2000年2月号
作者タイトル備考
カネコアツシ表紙
カネコアツシBAMBi含4C
志村貴子敷居の住人
鈴木マサカズサルぽんち
作:平井和正+画:梁慶一死霊狩り
タイム涼介東京カイシャイン
柳澤一明真・女神転生カーン
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
馬頭ちーめいBREAK-AGE外伝 ボトルシップ・トルーパーズ
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
須藤真澄おさんぽ大王
竹本泉てきぱきワーキン▽ラブFX
須田信太郎やさしい女は何処にいる新連載
有川祐彼女とデート
鈴木みそオールナイトライブ
市橋俊介テルオとマサル新連載
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
松本充代陽の下の恋人(前編)
肉柱ミゲル100万円! ベガスくん
羽生生純恋の門
いましろたかし釣れんボーイ
高木律回遊魚
金平守人かねひらだもの

 まずは表紙がカッコイイ。ビームという文字の中にバンビとパンピ、そしてそこからにゅっと拳銃が飛び出している。白地が目に映える。そして巻頭カラーもカネコアツシ「BAMBi」。アクションのダイナミックさが光る。
 志村貴子「敷居の住人」は、キクチナナコと本田くんが家出して、金もないのに京都へ直行。二人だけの修学旅行。小生意気なガキどもの、うだつのあがらない日常でしかないのに、すでにスッカリ彼らから目を離せなくなっている自分が今ここにある。有川祐「彼女とデート」。淡々と進んでいるようで、気がつくとお話はどんどんシリアスに深まっている。ふとんの中の、まだ体温であったまってない部分って感じの気持ち良くヒヤリとした読み心地。いましろたかし「釣れんボーイ」。ヒマシロ先生サイコー。中年的なエロさが増しつつ妄想でそれなりに満足してしまって、今日も釣りしている覇気のなさがもうビンビンと伝わってくる。その小人ぶりは感動的でさえある。スゴイ。読切、松本充代「陽の下の恋人」(前編)は、少女のころからストーカー気質と少年趣味を持った女性が、大人になってから美少年を追い回す物語。手口の周到さと執拗さにゾッとする。閉塞しきったこの女性の精神状態が非常に恐ろしい。静かに狂った女性を描かせると松本充代は抜群にうまい。高木律「回遊魚」。セリフが少なく張り詰めたような緊張感がある。それから画面作りが丁寧で、なかなかいい雰囲気。
 須田信太郎「やさしいい女は何処にいる」が新連載。父が死んで家業を継ぐことになり、ガサツな母親、姉妹と女たちにこき使われるスエヒロ。しかも学生時代との彼女とは別れ、いいとこなしな日々。絵柄はかなりクセがあって個性的。イッパツぶちかますパワーはあるので、それなりに面白くなりそう。新連載もいっちょ。市橋俊介「テルオとマサル」。こちらは激しく壊れていて面白かった。切羽詰まった状態で公衆便所に駆け込んだが大きい方は使用禁止。思い余ってあさがおのほうに脱糞しようとしていた、太めの眼鏡男子・マサル。そんなとき、彼は不良風な男・テルオと運命的な出会いを果たす。テルオはマサルの学校にやってきた転校生で、やがて肉弾と日本刀でタイマンを張り親友となる。うっとうしいテンションの高さがステキな一作。かなり期待。


2000年1月号
作者タイトル備考
梁慶一表紙
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
須藤真澄おさんぽ大王
作:平井和正+画:梁慶一死霊狩り
志村貴子敷居の住人
鈴木マサカズサルぽんち
柳澤一明真・女神転生カーン
有川祐彼女とデート
鈴木みそオールナイトライブ
うすね正俊砂ぼうず
羽生生純恋の門含4C
竹本泉てきぱきワーキン▽ラブFX
松本花子誰が地球を救ったか
タイム涼介東京カイシャイン
カネコアツシBAMBi
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
入江喜和あこがれ
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
三好銀まじない女のトマトソース
いましろたかし釣れんボーイ
鮪オーケストラBAD TRIPPERS最終回
期末試験前也〜僕と僕と僕と
金平守人かねひらだもの

 今号も充実。
 まずは連載陣。巻頭カラーは桜玉吉「幽玄漫玉日記」。雑誌を開くと、桜玉吉が暗い海と灰色の空をバックに佇む姿がドーン。インパクトあるなあ。志村貴子「敷居の住人」。今回も面白い。ともに学校になじめずフラフラし続ける本田くんとキクチナナコの間柄が、いい具合にこなれてきていて心地いい。大きな物語はないのに、彼らが暮らすさまを見ることがなんと楽しいことか。有川祐「彼女とデート」。セッちゃんとノギーがデート。八神はその間にプロポーズを受ける。八神の楽しまぬ目つき、暗い夢、無口なセッちゃんなどなど、日常は淡々と進みつつピーンとした緊張感がある。これからもますます楽しみ。羽生生純「恋の門」。今回は巻中4色カラーあり。門の才能に目をつける女性の出現、門のバイト先の店長と恋乃の出会い。打算と自己愛が絡みながら結びついていた門と恋乃の間に暗雲が漂う。次号以降かなり揺れ動きそうだ。タイム涼介「東京カイシャイン」。あけっぴろげな下品ぶりと、下らないギャグが楽しい。新商品のデザインと名前が非常にナイス。
 しりあがり寿「弥次喜多 in DEEP」。天に向かってどこまでも伸びる石段を上り続ける、弥次喜多と宿場のオカマ。その道程で交わされる彼らの会話はユーモラスだが、さまざまなものが消えていく悲しさと、それらに対する暖かい思慕に満ちていて、読んでいて思わず泣けてきた。余分なものを削ぎ落とした表現が、ダイレクトに突き刺さってきて胸を打つ。いましろたかし「釣れんボーイ」。今回もすごい。釣り用のまきえを、渾身の力を込めて叫びつつ握りまくるヒマシロ先生の勇姿。「わかるかっ!? バカ共」「いやわからんでいい!!」。サイコー!! 鮪オーケストラ「BAD TRIPPERS」は最終回。イマイチ乗れず。金平守人「かねひらだもの」。いい加減な線で描かれた女の子が、なんとなくフラフラしつつ行き当たりばったりな生活を送る。女の子のセリフ回しがちょっと楽しい。今回は面白かった。

 それから今月は読切が実にシブい。松山花子はライトで今風だが、なんといっても入江喜和と三好銀という取り合わせがすごい。まず入江喜和「あこがれ」は、例の小料理屋一家の生活を描いた作品。下町情緒なんて言葉で片付けてしまうのはなんか安っぽくてイヤだが、この世界の温度はしっくりと肌になじむ。三好銀「まじない女のトマトソース」もいい。ちょっとした問題はあるがおおむね普通の人たちの日常を、しめやかな筆致で淡々と描き出す。ものすごく地味な作品だが、味わい深い。そして新谷明弘「期末試験前也 〜僕と僕と僕と君〜」も面白かった。期末試験の勉強にいそしむ少年が、ときおり細胞分裂する。この世界では人間は単細胞生物だ。にょごにょごと分裂を繰り返しながら、試験勉強は延々と続く。発想の特異さ、そしてそれを実に自然に昇華している。このシリーズ、回を重ねるにつれどんどん良くなってきている。
 次号では須田新太郎と市橋俊介が新連載。そして松本充代、高木律が読切で登場。ますます熱いコミックビームだ。


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