コミックビーム
1999年

※”▽”はハートマークの代用。「4C」は4色カラーの略。
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1999年12月号
作者タイトル備考
志村貴子表紙
志村貴子敷居の住人含4C
作:平井和正+画:梁慶一死霊狩り
鈴木マサカズサルポンチ新連載
有川祐彼女とデート
タイム涼介東京カイシャイン
柳澤一明真・女神転生カーン
馬頭ちーめいBREAK-AGE外伝 ボトルシップ・トルーパーズ
桃吐マキル+福実未ノアル蟲酸
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
ユウジローユウジローのブライダルキック2本立て・最終回
須藤真澄おさんぽ大王
安井誠太朗ミズトカゲのいる町安井誠太から改名
竹本泉てきぱきワーキン▽ラブFX
うすね正俊砂ぼうず
鈴木みそオールナイトライブ
ヒロモト森一禁漁区
カネコアツシBAMBi
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
羽生生純恋の門
いましろたかし釣れんボーイ
鮪オーケストラBAD TRIPPERS
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
金平守人かねひらだもの新連載

 前号の感想で、バタバタと連載が終わっていくことについて「改変期なのかなあ」みたいなことを書いたが、定期購読の封筒に同封されていた奥村編集長のメッセージによるとどうも偶然だったらしい。なるほどー。
 志村貴子「敷居の住人」が表紙&巻頭カラー。小生意気なガキどもがうだうだと生活しているだけなのに、なんでこんなに面白いですかのう。3巻が11月25日発売。モリモリ面白いぜ。有川祐「彼女とデート」。「反町くん〜」よりもさらに描写がシビア。描写が硬質で一見トガっていそうなんだけど、ときに飄々とスッとぼけたりする間合いが実になんとも気持ちがよい。ノー予告読切、桃吐マキル+福実未ノアル「蟲酸」。直径1メートルはありそうなフンを転がしつつ、不吉な液体をまき散らしながら登校する蟲の転校生。セーラー服を着て言葉も喋るがやはり蟲。たいへんイヤなヒロインで何やら恐ろしい。さすがこのコンビ。第1回と書いてあるあたりも何やら不穏。桜玉吉「幽玄漫玉日記」。例の3人大げんか。ヤケクソなエネルギーが爆発していて無闇にパワフル。いやあもうタイヘンだ! ユウジロー「ユウジローのブライダルキック」は今回で最終回。あんまりウチのページでは取り上げることはなかったけれども、時折キラリと光るギャグはあって、それなりに楽しんではいたのだ。なんとなく、なくなると寂しいような気も。
 それから今号の注目として、安井誠太朗「ミズトカゲのいる沼」がある。ますます線が神経質そうになっているが、この不思議な雰囲気はなんとも魅力的。また描いてほしいけれども、それがいつになることやら。でも好きだから待ちます。ええきっと。ヒロモト森一もゲストで登場。タイトルは「禁漁区」。ヒロモト森一の、荒々しくてデフォルメの利きまくった絵はやっぱりカッコイイ。このまま定着してくんないかなあ。いましろたかし「釣れんボーイ」。今度はヒマシロ先生はイイダコ釣りに挑戦。ショールームで車の運転席に座り、あちこち釣行するのを夢想している(だけ)あたりがどうにもダメ人間っぽくてスバらしい。ああ、もうこの人はなんてダメなんだ。たまらん。


1999年11月号
作者タイトル備考
永野のりこ表紙
タイム涼介東京カイシャイン含4C
永野のりこ電波オデッセイ最終回
ユウジローユウジローのブライダルキック2本立て
作:平井和正+画:梁慶一死霊狩り
鈴木みそオールナイトライブ
柳澤一明真・女神転生カーン
志村貴子敷居の住人
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
新谷明弘期末試験前也〜双子ちゃん〜
馬頭ちーめいBREAK-AGE外伝 ボトルシップ・トルーパーズ
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
須藤真澄おさんぽ大王
有川祐彼女とデート
竹本泉てきぱきワーキン▽ラブFX
羽生生純恋の門
うすね正俊砂ぼうず
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
カネコアツシBAMBi
いましろたかし釣れんボーイ
鮪オーケストラBAD TRIPPERS
中島あつき鮮紅街
金平守人金平劇場(仮)

 永野のりこ「電波オデッセイ」が最終回。今回の定期購読のおまけはそれを記念して、永野のりこ描き下ろしの1ページ漫画のコピーがついてきた。金なんて出ないのに、実にごちゃごちゃと描き込んであって本当にサービス精神あふれる人だなあとしみじみ。お話のほうも、温かく優しく終わっていって、とても良かった。この作品を読むと、自分に向かい合うその気持ちがまっすぐであるだけに、やっぱり泣けてきてしまうのだ。中島あつき「鮮紅街」も今回で最終回。こちらはイマイチ乗り切れないままだった。絵など筋はいい人だと思うので、またの登場を期待。あと、次号ではユウジロー「ユウジローのブライダルキック」も最終回になるらしい。いろいろと連載が終わっていき、ビームも様変わりしていくのだなあ。それはそうと、来月はヒロモト森一が読切で登場予定だというのはかなりうれしいところ。
 今号の巻頭カラーはタイム涼介「東京カイシャイン」。いい具合に力が抜けていて、かつ下品な言葉の使い方が巧みで楽しい。それにしてもコレを巻頭に持ってくるあたり大胆だ。志村貴子「敷居の住人」。本田くんもキクチナナコも育っていく。なんか背が伸びたような。本田くんは登校拒否になりかけで、キクチナナコも家庭の事情で雲行き怪し。すごいことが起きる漫画ではないのに読ませる。新谷明弘「期末試験前也 〜双子ちゃん〜」。いい出来。自宅のステレオのスピーカーの中に入っていた双子の老婆。彼女たちは元々、戦時中に極秘研究所で開発された電波を受信して唄う人造人間だった。極秘研究所が解体された後、彼女たちは民家に忍び込んで電気を喰らって生きのびていたのだが……。彼女たちが語る優しいご主人であった学生の話などなどは、ちょっと不思議で心暖まる物語。ラストも非常に良い。きっちりと細部まで描き込まれた心和む絵柄とお話がばっちりマッチして、気持ちのいい読後感を作り上げている。
 桜玉吉「幽玄漫玉日記」。今回はヒロポンお引っ越し編の前編。桜玉吉とビーム編集長O村氏が呑んでくだをまきまくるあたりが、爽やかならざるテンションが高まっていて面白かった。有川祐「彼女とデート」。セッちゃんは案外進んでいるのですな。それからノギーちゃんが健気でかわいくていい。肉柱ミゲルが久々に登場。「おもしろ新世紀少年ヘッドGOLD」。展開の脈絡のなさと下らなさがなかなか痛快。この人はだんだん良くなっているような気がする。いましろたかし「釣れんボーイ」。いつになくダイナミックな展開は、その後のやる気なさげな日常への布石。趣味にハマりつつもダメ人間になりきれない小心者ぶりが身につまされる。羽生生純「恋の門」。イデオンのコスプレをする恋乃の両親がバリバリに濃い。やはりイデの力はスゲエ。俺は昔からそう思っていた。


1999年10月号
作者タイトル備考
桜玉吉表紙
有川祐彼女とデート新連載・含4C
タイム涼介東京カイシャイン新連載
柳澤一明真・女神転生カーン
志村貴子敷居の住人
鈴木みそオールナイトライブ
馬頭ちーめいBREAK-AGE外伝 ボトルシップ・トルーパーズ
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
作:平井和正+画:梁慶一死霊狩り
ユウジローユウジローのブライダルキック2本立て
須藤真澄おさんぽ大王
永野のりこ電波オデッセイ
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
うすね正俊砂ぼうず
竹本泉てきぱきワーキン▽ラブFX
中島あつき鮮紅街
羽生生純恋の門
カネコアツシBAMBi
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
いましろたかし釣れんボーイ
竹谷州史PLANET 7最終回
鮪オーケストラBAD TRIPPERS
金平守人金平劇場(仮)

 今月の注目はまず新連載2本。有川祐、タイム涼介と、どちらも講談社で活躍していた人たちだ。有川祐「彼女とデート」はいきなり巻頭カラー。摂津くん、朱堂くん、八神リッちゃん……といった登場人物の名前から見るに、「反町くんには彼女がいない」と世界を同じうするのかもしれない。そういった普通な感じの高校生たちの、淡々と一部ひねくれた日常漫画。味わいは「反町くん」同様なので、あちらが好きだった人はこちらも迷わず押さえるべし。タイム涼介「東京カイシャイン」。いい加減な趣の会社の新入社員・馬具四子。そして彼女がアシスタントすることになった、何ごとも色事で解決しようとする大男・色々木。この二人がどうでもいいノリで業務を進めていく漫画の模様。下らなさが気持ち良い一作で、今後のハッスルぶりが期待される。
 最終回もアリ。竹谷州史「PLANET 7」。銀河連邦のお家騒動は、おでんのポジティブな宣言によって一件落着。明るくカラッと終わった。魅力的な絵柄で最後まで楽しかった。次回登場にも期待したい。竹谷州史の作風はもう完成されている感があるのだが、まだまだ工夫しだいで飛躍できそうな感じもする。永野のりこ「電波オデッセイ」は、原さんが過去の自分と真っ正面から向き合い、そして次回でついに最終回を迎える。原さんやキタモリ、野川さんたちの気持ちにどんな決着がつけられるのか。楽しみでもあり寂しくもあり。羽生生純「恋の門」。コミケ編。石漫画を売る門。オタクの祭典の中で、激しい妄執が渦巻く。今回は展開がやたらに濃厚であった。暑苦しさ爆発。なんだかとんでもない方向にお話が進みそうな予感。いやーすごい。
 なんかパタパタと連載が終わり、また始まっている。そろそろ雑誌のラインナップ転換期を迎えているらしい。とりあえず今回の新連載は実力派な二人。次はどんなタマを持ってくるのかとても楽しみ。


1999年9月号
作者タイトル備考
馬頭ちーめい表紙
馬頭ちーめいBREAK-AGE外伝 ボトルシップ・トルーパーズ新連載・含4C
うすね正俊砂ぼうず
志村貴子敷居の住人
永野のりこ電波オデッセイ
柳澤一明真・女神転生カーン
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
ユウジローユウジローのブライダルキック2本立て
須藤真澄おさんぽ大王
カネコアツシBAMBi
鈴木みそオールナイトライブ
作:平井和正+画:梁慶一死霊狩り
中島あつき鮮紅街
竹本泉てきぱきワーキン▽ラブFX
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
いましろたかし釣れんボーイ
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
羽生生純恋の門
竹谷州史PLANET 7
堀池さだひろジ・ガレガレ最終回
作:東京ローカル+画:仲能健児ロンリネス最終回
鮪オーケストラBAD TRIPPERS
金平守人金平劇場(仮)

 巻頭カラーで馬頭ちーめい「BREAK-AGE外伝 ボトルシップトルーパーズ」が新連載。実は本編のほうはあんまりしっかり読んでなかったのでよく分からないんだけど、とりあえず舞台は海。志村貴子「敷居の住人」。本田君、見事失恋。三角関係やら親子関係やら、奇妙な女友達の間で、小生意気な美少年がうだうだするだけの話なのになんでこんなに面白いのかという具合。いましろたかし「釣れんボーイ」。ヒマシロ先生の釣りジャンキーぶりは加速するばかり。自分の頭の中で実況解説しながら釣り続けるあたりの自己完結ぶりがたまらない。しりあがり寿「弥次喜多 in Deep」。この晩餐会シリーズは終始かなり怖い。今回はゆらゆらとしていた喜多さんと弥次さんの風景が、ついに現実を通じてリンクしてきたが……。このエピソードはまだ続くようだが、次に見えてくるモノは何か。楽しみであり、怖くもあり。
 羽生生純「恋の門」。門と恋乃、そしてさまざまな人々の欲望が、コミケに向かって収束しようとしている。何が起こるのか。何を起こすのか。次号がすごく楽しみ。竹谷州史「PLANET 7」は次号で最終回。それから作:東京ローカル+画:仲能健児「ロンリネス」は今回で最終話。「ボク」は自分の星に戻り、それなりの幸せな生活を手に入れ、残された地球人・本多はうだつのあがらぬ底辺の暮らしを営むことに。救われない結末ではあったが、このお話の幕引きにはふさわしくもある。堀池さだひろ「ジ・ガレガレ」も最終回。この人は雰囲気的には惜しいものを持っているのだけど、いまいち煮え切らない感じでもあった。
 次号では、なんとなんと。有川祐とタイム涼介の新連載が始まる。有川祐は予期しないでもなかったが、タイム涼介はビックリ。ウワーオ。


1999年8月号
作者タイトル備考
うすね正俊表紙
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
須藤真澄おさんぽ大王
うすね正俊砂ぼうず
ユウジローユウジローのブライダルキック2本立て
柳澤一明真・女神転生カーン
志村貴子敷居の住人
永野のりこ電波オデッセイ
作:平井和正+画:梁慶一死霊狩り
すがわらくにゆき魔術っ子!海堂くん!!
羽生生純恋の門含4C
竹本泉てきぱきワーキン▽ラブFX
中島あつき鮮紅街
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
入江喜和ざしき
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
カネコアツシBAMBi
いましろたかし釣れんボーイ
鮪オーケストラBAD TRIPPERS
竹谷州史PLANET 7
堀池さだひろジ・ガレガレ
鈴木みそオールナイトライブ
作:東京ローカル+画:仲能健児ロンリネス
金平守人金平劇場(仮)

 巻頭カラー、桜玉吉「幽玄漫玉日記」はついに桜玉吉が温泉で転地療養。異様な迫力を感じるほどのテンションの低さがすごいが、これを巻頭に持ってくるビーム編集部もすごいなと思う。志村貴子「敷居の住人」。ちあきが入った高校のクラスには、幼馴染みで親友「だった」むーちゃんと、ほのかな恋心を抱いていた可愛い子・ゆかりんがいたが……。ちょっと普通の少年になるかと思えたちあきだが、なかなかうまくはいかないもので。やっぱり眼鏡娘のくるみちゃんだよねー。永野のりこ「電波オデッセイ」。キタモリ悩む!……いつものことだけど。野川さんはたいへんよろしいので、ぜひぜひもっとお近づきになってほしいもの。心の距離は少し近づきつつある、かな?
 そして、今号は羽生生純「恋の門」が巻中カラー。これをカラーにするとは。愛とエゴがガシガシとぶつかり合う、恋乃と門の姿を真っ正面からと描いてくる。けして逃げない激しさ、濃密さ。すごいなあ。入江喜和「ざしき」は「ちゃらっぽこ幽霊」の続編。今回も田舎の小料理屋の一家の模様を、淡々とかつしみじみと描写。なんとも雰囲気のある描線がすごく気持ちいい。しりあがり寿「弥次喜多 in Deep」。謎めいて息苦しい展開はさらに続き、高みへと登っていく。カリカリと机を、地面をひっかく犬の爪、弥次さんの口に次々と詰め込まれていく食物。幻想的で、そして怖い。いましろたかし「釣れんボーイ」。足をケガしつつも釣具屋に出かけ、アユ情報を仕入れようとするヒマシロ先生の狂気。連載が始まって以来、ヒマシロ先生が最も一所懸命だった瞬間だったような気がする。このダメ人間ぶりはちょっとすごい。作:東京ローカル+画:仲能健児「ロンリネス」はいよいよクライマックスで次号最終回。「わたし」、そして本多こと鈴木さんの運命は? 次号が激しく気になる。
 あ、あと「噂の真相」によるビーム休刊誤報の件だけど、噂の真相の次号に誤報であったとの訂正文が載るとのこと。今回のビームで奥村編集長がそのように書いていた。少なくとも来年の5月号くらいまでは大丈夫とのことなので、読者はしばらくは余計な心配はせずとも良いようだ。


1999年7月号
作者タイトル備考
須藤真澄表紙
作:平井和正+画:梁慶一死霊狩り含4C
永野のりこ電波オデッセイ
鈴木みそオールナイトライブ
中島あつき鮮紅街
ユウジローユウジローのブライダルキック2本立て
志村貴子敷居の住人
うすね正俊砂ぼうず
羽生生純恋の門
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
すがわらくにゆき魔術っ子!海堂くん!!
須藤真澄おさんぽ大王
柳澤一明真・女神転生カーン
竹本泉てきぱきワーキン▽ラブFX
三好銀ブルーベリージャム
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
カネコアツシBAMBi
市橋俊介石川さん 飛ぶ
鮪オーケストラBAD TRIPPERS
竹谷州史PLANET 7
作:東京ローカル+画:仲能健児ロンリネス
いましろたかし釣れんボーイ
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
金平守人金平劇場(仮)最終回(仮)

 今号も粒揃いである。それにしてもゲスト読切が三好銀だというのは渋すぎではあるまいか。作品タイトルは「ブルーベリージャム」。どこだかの工場か何かで作業員をやっているらしき女性が、コミュニケーション系の情報誌(じゃま〜るみたいなものと思われる)で見つけた男性のために、都会に生えている植物を利用してジャムを作り始める。なんとなく始まったようで、いつの間にやら相手に会うこともなく終わっていく恋のようなもの。たいへんに地味だがけっこう面白かった。志村貴子「敷居の住人」。今回はキクチナナコが主役。卒業を控えていつになく鬱な彼女。この漫画には、大きなストーリーがあるわけでないし、とくに目的もない。ただダラダラと続く少年少女の生活を描き続ける。そのとくに面白いことが起きるわけでもない日常を眺めるのがなんとも楽しかったりする。羽生生純「恋の門」。石を使った漫画を描き続ける無用の人、蒼木門。彼が恋人の恋乃の勧めでアニメ系のショップに勤め始めるが、やはり彼と普通のオタクは激しく相容れない。本当にダメ人間である。その門と恋乃の、自己愛と打算に基づく恋の行方はいったいどうなるのだろうか。予断を許さない。
 桜玉吉「幽玄漫玉日記」。桜玉吉、鬱突入。というわけでテンションはこれ以上ないといっていいくらい低い。でも逆にそのテンションの低さが激しいほどで、これはこれで迫力あり。しりあがり寿「弥次喜多 in DEEP」。花咲く丘で女の子たちに囲まれて酒を飲まされ続ける弥次さん。喜多さんは薄暗い部屋の一室でお伊勢さんの話を強要され続ける。今号も無言で机を引っかく犬の爪の音が怖い。前号からのこのシリーズ、得体が知れなくすごく恐ろしい。実に大したもんである。市橋俊介「石川さん飛ぶ」。冴えない中年男、石川さんがドラッグやって飛ぶ。かなり爽快に終わっている作品。なかなか楽しい新人さんだ。そして新谷明弘が久々登場。タイトルは「期末試験前也」。4月号に掲載された作品の続編。とある学生の期末試験前の一風景。部屋に隠していたエロ本が、いつの間にやら机の上に置かれている。最初は親にバレたのかと思っていたが、そんなことが日々続くようになる。そして、あるとき見つけた人外の文字が書かれている謎のノート。実は彼の部屋には……。何気ない日常からなだらかに、そして何気なく非日常へと突入していく。その感触は妙に肌になじみ心地よい。竹谷州史「PLANET 7」。いつもながら簡潔な描線なのに、それに特徴と魅力があるというのは強い。ラフな絵でもなんか雰囲気あるし。いましろたかし「釣れんボーイ」は、珍しく海釣り。そしていよいよアユシーズン突入。ますますダメになっていくこと必至。たまんねえなあ。金平守人「金平劇場(仮)」は最終回、ではあるが。
1999年6月号
作者タイトル備考
柳澤一明表紙
須藤真澄おさんぽ大王含4C
柳澤一明真・女神転生カーン
志村貴子敷居の住人
ユウジローユウジローのブライダルキック2本立て
竹谷州史PLANET 7
永野のりこ電波オデッセイ
作:平井和正+画:梁慶一死霊狩り
園山二美蠢動
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
すがわらくにゆき魔術っ子!海堂くん!!
鈴木みそオールナイトライブ
中島あつき鮮紅街新連載
鮪オーケストラBAD TRIPPERS
竹本泉てきぱきワーキン▽ラブFX
堀池さだひろジ・ガレガレ
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
うすね正俊砂ぼうず
松山花子夢見る青年の昼と夜
羽生生純恋の門
カネコアツシBAMBi
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
いましろたかし釣れんボーイ
作:東京ローカル+画:仲能健児ロンリネス
金平守人金平劇場(仮)

 園山二美「蠢動」。ううむ、ヤバい、ヤバいぞ。今号は原稿が落ちて6年前のデビュー作が掲載。未読の作品だったのでもうけたと思った人もいるだろうしわりと面白かったのはいいのだが、次号からまたしばらく休載らしい。復活してから順調だと思っていたのに、本当に危なっかしい人だ。早期復活を望む、といいたいところではあるが、中途半端な復活の仕方をしてまた休載ってことになってもつまらないので、なるべくいい形での復活を望みたい。ただ、この人の作風だと精神的な負の要因がエネルギーになりそうな部分が多そうなので、あんまり健全な精神状態でもまたそれはそれで作品的にはマイナスになっちゃうような気もする。
 志村貴子「敷居の住人」。4/27の日記で第2巻の感想で「どうからんでくるか気になる」と述べた近藤ゆかがちゃんとお話にからんできた。それからまたしても新しい娘が登場。女の子たちはそれぞれに魅力的で、それに振り回される本田の姿も他愛なくて楽しい。ただ、女の子たちの個体差がそんなに大きくないのにわりとわらわら出てくるため、ときどき「えーと、この人どんな娘だっけか」という感じになってしまうことがある。とくに近藤ゆか。キャラが立ってないわけじゃないのだけど、その人がどういう経緯で出てきたかという説明が、各話でいまいち足らないような気がしないでもない。永野のりこ「電波オデッセイ」。原さんのフクザツな家庭事情がついに語られ始めた。読んでいて身を切られるような、ザクザク心に切り込むあの展開が、さらなる深度で展開してしまうのだろうか。またもや目が離せぬ。というか離さぬ。
 羽生生純「恋の門」。同棲を続ける二人だが、その気持ちはイマイチかみ合わない。今回は恋乃が愛してやまぬ声優の本を門がなべしきに使ってしまった件で喧嘩になり、その後二人とも思い直して、付き合い方を一つ学習する。その解決は根本的なものではなく、実はお互いのエゴに基づく打算ぽかったりもするわけだが……。この二人がどんな方向に進むんだか、いまいち予測はつかないが、予測がつくよりもそっちのほうが面白い。しりあがり寿「弥次喜多 in Deep」。今回はなんだかとても怖い話。喜多さんが薄暗い晩餐会の主賓席に一人座っているところから話は始まり、そこに喜多さんが伊勢に行ったものだと思い込んでいる聴衆が、一人また一人と入ってくる。彼らは尋常でないさまで、喜多さんに伊勢の話をせがむが……。なぜ彼らは喜多さんを問い詰めるのか。その求めるものは。切羽詰まった目の光はいったい? 何も明かされないまま、ただ不安感だけが増幅していく。これはなんとも恐ろしい。いましろたかし「釣れんボーイ」。ヒマシロ先生は、もう本当にダメだ。釣りをしているとき以外で、もっともシャンとした顔つきをしているのは、タコ焼きを買うときだったりする。釣り以外のときは、どこか心ここにあらず。でも逃避まではしきれない往生ぎわの悪さまで、これだけ正面切って描かれると感心するほかない。金平守人「金平劇場(仮)」。今回は超兄貴系の暑苦しいホモネタ。パワフルでまあ笑えるが、ホンモノな人の作品と比べると、上っ面だけな感じはどうしてもする。本当にそうである人たちの、心と行いを思うと素直に笑えないというか。
1999年5月号
作者タイトル備考
園山二美表紙
竹谷州史PLANET 7含4C
柳澤一明真・女神転生カーン
志村貴子敷居の住人
永野のりこ電波オデッセイ
ユウジローユウジローのブライダルキック2本立て
鈴木みそオールナイトライブ
園山二美蠢動
入江喜和ちゃらっぽこ幽霊(後編)
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
すがわらくにゆき魔術っ子!海堂くん!!
須藤真澄おさんぽ大王
いましろたかし釣れんボーイ
うすね正俊砂ぼうず
竹本泉てきぱきワーキン▽ラブFX
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
カネコアツシBAMBi
羽生生純恋の門
作:東京ローカル+画:仲能健児ロンリネス
堀池さだひろジ・ガレガレ
高野聖ーナ春のマンガ祭'99
桃吐マキル+福実未ノアル大美空のテーマ
鮪オーケストラBAD TRIPPERS新連載
金平守人金平劇場(仮)

 先月号で予告されていたとおり、梁慶一は、アシスタント徴兵により休載。こういう休載理由はちょっとほかに見たことがないけど、梁慶一は韓国の人なので仕方ない。日本と韓国、近づいてきたような気がするとはいえ、彼我の差はまだまだ大きいようで。
 園山二美は今回は表紙も執筆。ああ、それにしても園山二美が表紙を描くようになるなんて。しかも5月25日には2冊目の単行本も出るらしい(タイトル、出版社等は不明)。感慨無量、というほどでもないか。今回の作品「蠢動 彼女はスーパー」は単行本「蠢動」に収録されている「コンビニキング」の続編。料理がまったくできないんでコンビニ飯ばかり食っていた男が、コンビニで鉢合わせた同僚の女の子と結婚して、愛に満ちた生活を送るというお話。前回ではコンビニで出会ったところまでで、今回は幸せな新婚生活篇。夫も妻ものほほんとしていて、一本ネジが抜けているような会話が楽しい。
 志村貴子「敷居の住人」。高校受験を控えたちあきの生活がちょっと賑やかになってきた。女の子たちがかわいくなってきて味を出してきてるし、最近どんどん良くなっている。顔の絵を構成するパーツ自体はいずれも簡潔なんだけど、それがいいバランスで配置されているなーと思う。鈴木みそ「本の墓場」では、鈴木みそが返品された本などの倉庫を見学に行く。見ていると死にたくなるくらいの売れない本の山の描写を見ていると、出版社に対して「絶版にするな」とかいうのがためらわれてしまう。
 入江喜和「ちゃらっぽこ幽霊」は今回後編。地方の町で小料理屋を開き、自由奔放に生きているように見えたおやじの、かっこ悪い意外な一面を娘は目撃する。かすれた感じのペンタッチになんとも味があって、懐かしいような心地よさ。またこれからも描いてほしい。いましろたかし「釣れんボーイ」。いましろ先生、っていうかヒマシロ先生、終わりまくってる。アユ釣りでヒットした瞬間「マンガ描いてるより100倍おもしろい!」と叫ぶ。ああ、たまらない堕ちっぷり。鮪オーケストラ「BAD TRIPPERS」は、近未来バイオレンスもので、今までのイカれたギャグ系の話から一変。シリアスである。でも、今のところそんなに面白くないなあ。
1999年4月号
作者タイトル備考
桜玉吉表紙
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
須藤真澄おさんぽ大王
うすね正俊砂ぼうず
竹本泉てきぱきワーキン▽ラブFX
ユウジローユウジローのブライダルキック2本立て
志村貴子敷居の住人
永野のりこ電波オデッセイ
肉柱ミゲルわんぱくディスコ
画:梁慶一+作:平井和正死霊狩り
桃吐マキル+福実未ノアル大美空のテーマ
近藤るるるミラクル高僧チベットちゃん含4C
鈴木みそオールナイトライブ
園山二美蠢動
すがわらくにゆき魔術っ子!海堂くん!!
入江喜和ちゃらっぽこ幽霊(前編)
竹谷州史PLANET 7
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
カネコアツシBAMBi
羽生生純恋の門
新谷明弘期末試験前也〜紅き者〜
作:東京ローカル+画:仲能健児ロンリネス
堀池さだひろジ・ガレガレ
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
いましろたかし釣れんボーイ第一部完
金平守人金平劇場(仮)

 いや、こりゃまた素晴らしいラインナップ。
 「杯気分!肴姫」「のんちゃんのり弁」の入江喜和がいきなり登場してびっくりしたと思ったら、新谷明弘や近藤るるるも読切で登場するし。しかも5月号からコミックビームの定期購読も始まるしで、なんだかすごい気合いの乗りっぷり。定期購読の要項はビームを参照するかアスキーに問い合わせしてほしい。金銭がらみのことなんで実際に自分で確認してから申し込むべし。定期購読者にはオマケをくれるらしいので、書店で手に入る地域の人も申し込むといいかも。俺は申し込むと決めた。決めまくった。
 入江喜和「ちゃらっぽこ幽霊」は、小料理屋を持つのが夢で地価の安い田舎に引っ越してきたおっさんと、その嫁、娘のお話。おっさんは腕は良くてきっぷはいいけど、ちょっと下品なところもある。おかみさんはなんかアバウトで、天然ボケ系。そんな親の間で育ち、ドライに過ごす娘。その家庭の模様が、入江喜和一流の人情味があって粋な、雰囲気のある絵で描かれる。そして、なんといっても日本酒を飲みたくなるような料理の描写。たまらん。しみじみと読める一作。次号には後編が掲載。
 それから新谷明弘「期末試験前也〜紅き者〜」は、期末試験のための勉強中、ラジオのアンテナをいろんな方向に向けていた少年が、「紅き者」という謎の存在が流す電波をキャッチしてしまい……というお話。日常の中から何気なくぬっと顔を出すSF的世界を、例の垢抜けない絵柄で丁寧に描いている。このほのぼのとした雰囲気の異世界感が、とても味がある。近藤るるる「ミラクル高僧チベットちゃん」は、「ハイパーあんな」3巻に収録された読切の、4年ぶりの続編。近藤るるるは巨乳が好きだなあ。
 連載陣も充実している。志村貴子「敷居の住人」は回を重ねるごとに面白くなっているが、絵も洗練度を増してきたような気がする。永野のりこ「電波オデッセイ」では、キタモリたちがいろいろちっぽけで、かつ彼らにとってはそれが全てである大きな悩みを抱えつつ卒業式の日を迎える。なんとも切なくてハードで、あったかくて優しくていい。読んでると俺のセンチメンタルな魂が刺激され、どうにものたうち回りたくなってしまう。
 園山二美「蠢動」は、男と別れた女がステージ上で自分の思いをぶちまける一人芝居をするというお話。巻末の作者コメントを見ると、園山二美自身は満足してなさそうだが、実にしっかり面白い。一人の女が舞台の上で叫んでいるだけなのだが、そのセリフはテンポ良く進み、女の表情も異常なほどに豊かで雄弁。こういう一人芝居ものって作者の意図が空回りしがちなのだがそれを承知のうえで、なおかつ一見空回りしているように見えてガッチリと読者の心をわしづかみにしている。うまい。演出の力と技。羽生生純「恋の門」では、門の隠された一面がいろいろ見え隠れ。ラストシーンで門の部屋の外で聞き耳を立てている黒人がいい味。いましろたかし「釣れんボーイ」は第一部完。といっても次号から第二部が始まるし、とくに何が変わるというわけでもなさそう。強烈なまでの肩の力の抜けっぷりは圧巻。

1999年3月号
作者タイトル備考
寺田克也表紙
馬頭ちーめいBREAK-AGE 含4C・最終回
柳澤一明真・女神転生カーン
竹本泉てきぱきワーキン▽ラブFX
永野のりこ電波オデッセイ
ユウジローユウジローのブライダルキック2本立て
うすね正俊砂ぼうず
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
すがわらくにゆき魔術っ子!海堂くん!!
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
須藤真澄おさんぽ大王
画:梁慶一+作:平井和正死霊狩り
カネコアツシBAMBi
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
園山二美蠢動
羽生生純恋の門
志村貴子敷居の住人
竹谷州史PLANET 7
鈴木みそオールナイトライブ
作:東京ローカル+画:仲能健児ロンリネス
堀池さだひろジ・ガレガレ
いましろたかし釣れんボーイ
桃吐マキル+福実未ノアル大美空のテーマ
しょうばやし・F・としお戦国異志 便法者
金平守人踊る大日本警察24時

 馬頭ちーめい「BREAK-AGE」は最終回。あんまりきちんと読んでいなかったのだけど最終回は楽しそうな雰囲気でよろし。ちょっと最後のほうは慌ただしかった印象もあるが。永野のりこ「電波オデッセイ」。キタモリたちは受験シーズン突入。野川さんはどうなってしまうのか。気になる。しりあがり寿「弥次喜多 in Deep」。今回は道端にずっと、ただ生えている「ヤマモクさん」のお話。ずっと生えているのに、自分が何なのか、世界が何なのか、まったく分からず役に立つこともない。そんな存在が無性にいとおしく感じられてくる。余計な部分を切り捨てコアの部分だけで勝負する作風は毎度のことながら驚嘆。
 すがわらくにゆき「魔術っ子!海堂くん!!」は写植が落ちてヘロヘロに。大丈夫か? それはともかく今月発売のすがわらくにゆき日記漫画の単行本のタイトルは「おれさま!ギニャーズ」に決定。上野顕太郎「夜は千の眼を持つ」では、いろいろな漫画の食事シーンをつなぎ合わせて一話を構成している。全ての元ネタが分かる人はけっこういるだろうけど、全ての作品を所有している人はちょっと珍しいかも。勝川克志、山川直人まで入っているのはちょっとすごい。
 園山二美「蠢動」。今回も流麗な線でうまい。男と女の虚虚実実を鮮やかに描写。羽生生純「恋の門」は逆に男と女のドロドロを暑苦しく描写。志村貴子「敷居の住人」はどんどんキャラクターがイキイキしてきている感じ。女の子たちがとても魅力的。いましろたかし「釣れんボーイ」は、このやる気なさげな人生を淡々と描くダメさ加減がたまらない。なんでもない生活をあまりにも赤裸々に、かつミニマルに描く作風がすごい。今回も「ナナハン買って高速かっとんで釣りに行くんだよ!」と叫んだ次のコマで、ゴロゴロしながら「とかいいつつ人のまんが読んだりして」「あっこれまねしよう」などという志の低さが俺のハートを直撃。すごいや。桃吐マキル+福実未ノアル「大美空のテーマ」は「森繁ダイナミック」のようなハチャメチャにとっちらかった漫画。ちなみに福実未ノアルは、福耳ノボル→福耳ノアルがまた名前を変えての登場
 次号では近藤るるるが読切で久々登場。「ミラクル高僧チベットちゃん」の続編とのこと。なお、次号から表紙がリニューアル。今まではずっと寺田克也だったが、次号から連載作家の持ち回りになる。第1弾は桜玉吉。

1999年2月号
作者タイトル備考
竹本泉てきぱきワーキン▽ラブFX含4C
柳澤一明真・女神転生カーン
志村貴子敷居の住人
永野のりこ電波オデッセイ
鈴木みそオールナイトライブ
画:梁慶一+作:平井和正死霊狩り
すがわらくにゆき魔術っ子!海堂くん!!
馬頭ちーめいBREAK-AGE
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
ユウジローユウジローのブライダルキック2本立て
須藤真澄おさんぽ大王
うすね正俊砂ぼうず
竹谷州史PLANET 7
羽生生純恋の門
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
肉柱ミゲルミラクルぶたおんな
カネコアツシBAMBi
園山二美蠢動
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
堀池さだひろジ・ガレガレ
作:東京ローカル+画:仲能健児ロンリネス
いましろたかし釣れんボーイ
桃吐マキル+福耳ノアルエロい山脈
金平守人BBRビームバクレツ調査班

 志村貴子「敷居の住人」は、回を重ねるにつれ面白くなってきたと思う。キャラクターそれぞれに味が出てきた。なんといっても内気な眼鏡娘の中嶋さんがいい。絵も清潔感があってオシャレ。永野のりこ「電波オデッセイ」は、中学生男女を狭い空間の中で煮詰めて煮詰めて、追い込んで追い込んでいく過程がたまらない。小賢しく物事を考える少年少女時代を送った人ならば、必ず身に覚えのあるような思考を、安易な笑いや日々の雑事にまぎらしたりせず徹底的に研ぎ澄ませていく。自分以外の誰も自分を救ってはくれないが、自分以外の誰もが敵というわけでもない。とことんシビアで、とことん暖かい。
 馬頭ちーめい「BREAK-AGE」は、次号で最終回。いろいろな伏線などがバタバタと、駆け足で収拾をつけられていく。少し詰め込みすぎのような気も。竹谷州史「PLANET 7」。O次郎の生い立ちが語られ、そして第7惑星が少しずつ裏の姿を見せ始める。物語はこれから本番という感じ。線がぶっとくてカケアミを多用した、黒々とした絵柄は今回も気持ちがいい。羽生生純「恋の門」。門が去って虚脱状態の恋乃は、門に追いすがる。しかし、前号で門が押しつけられた子供が出てきて、冷ややかな雰囲気。次号は修羅場か。それにしてもこの漫画は、先の展開の予想が非常にしづらい。確固として不安定な足どりがかっこよくもある。
 肉柱ミゲル「ミラクルぶたおんな」。肉柱ミゲルはなんだかギャグがだんだんこなれてきて面白くなっているような気がする。今回は、本当に優しいのはおとうさんゴリラかおかあさんゴリラかということで口げんかになった子供たちの話。ここでいうおとうさん/おかあさんゴリラとは、特定の動物を指すのではなくあくまで「父、母の属性を持つゴリラ」という概念的な存在なのだが、それに「定職にもつけねえでバクチばっかやってる」などと勝手にキャラクターづけするあたりがわりといい感じ。カネコアツシ「BAMBi」。最後のオチも利いているし、キャラクターの性格づけもうまい。切れ味抜群。
 園山二美は女の人生の4分の1を支配する「生理」がテーマ。はいずり回る主人公の女性の姿は、生々しく不様でもあるのだが、それでもかっこよく見せてしまうのは描線の美しさのたまものといえるかもしれない。そしていましろたかし「釣れんボーイ」。この覇気のなさ、他力本願ぶり。本格的ダメ人間を描いた異色作。たまらん。
 で、アスペクトからは今月下旬(コミックビームのメールサービスによると30日)に、松本充代の単行本「潜む声、鏡の中の遺書、その他の短篇」が発売されるようだ。これは1998年についに二度目の死を遂げたガロ(青林堂)掲載作品をまとめた単行本になる模様。

1999年1月号
作者タイトル備考
桜玉吉幽玄漫玉日記含4C
馬頭ちーめいBREAK-AGE
須藤真澄おさんぽ大王
羽生生純恋の門
柳澤一明真・女神転生カーン
永野のりこ電波オデッセイ
竹本泉てきぱきワーキン▽ラブFX
竹谷州史PLANET 7
画:梁慶一+作:平井和正死霊狩り
園山二美蠢動連載再開・含4C
カネコアツシBAMBi
ユウジローユウジローのブライダルキック2本立て
上野顕太郎夜は千の眼を持つ
志村貴子敷居の住人
うすね正俊砂ぼうず
鈴木みそオールナイトライブ
すがわらくにゆき魔術っ子!海堂くん!!
しりあがり寿弥次喜多 in Deep
小池桂一ウルトラヘヴン第1部・完
いましろたかし釣れんボーイ
作:東京ローカル+画:仲能健児ロンリネス
堀池さだひろジ・ガレガレ
桃吐マキル+福耳ノアルエロい山脈
金平守人BBRビームバクレツ調査班

 今月号も充実。
 まずはなんといっても!祝・連載再開、園山二美「蠢動」!いやー、めでたい。しかも巻中4色カラー含む、である。サブタイトルは「ガラパラダイス」。大人の雰囲気を漂わせた感じのお姉さん・幸子が、会社の年始パーティで出会った、なんだか仕事ができなさそうなボーッとした男にハマってしまう。何を考えているかよく分からない奴なのだが、一度かわいいと思ってしまったものはもうたまらない。で、彼がボーッとしているそんなとき、彼の意識はガラパゴスの動物たちの元へと飛んでいる。思わずガラパゴスの動物たちに嫉妬してしまう幸子。全体に漂う、のんびりとした南国ムード。テンションをギチギチに上げて飛ばしまくるだけが園山二美の味ではないということを痛感させられる。ブランク関係なしに面白い。次号も掲載されるみたいなので、とってもうれしい。
 羽生生純「恋の門」では、門が恋乃の元から出奔し、旅先の町で飲み屋のママのヒモになる。どこまでも堕ちていく自分におびえる門の姿は、羽生生純の陰のある画風にあまりに似合いすぎている。永野のりこ「電波オデッセイ」では、キタモリがやけにポエティック。そして野川さんはついに入院。責任を感じて、切ない言葉を吐き出し続けるキタモリの姿がすごくもどかしく、そしてそのもどかしさがまた心地よい。若いっていいぜ!俺もまだ26歳で老いたわけではないが、中学生というのはそれとはまた一段違う若さじゃけえのう。竹谷州史「PLANET 7」は黒々とした画面と、かわいい絵柄にいつもながら惚れ惚れとする。王女・おでんの沈んだ表情がとてもソソる。作:平井和正+画:梁慶一「死霊狩り」。黒人看護婦・ジューンが出てきてから面白くなってきた。暴力と狂気が渦巻く退廃的な世界を、シャープで力強い絵で見事に描いている。
 カネコアツシ「BAMBi」。プラチナ・マスクとバンビの闘いが決着。この人は本当にうまくなったなあと思う。テンポの良いストーリー展開、迫力のある描画。時折挟み込まれる回想シーンもいいアクセントになっている。上野顕太郎「夜は千の眼を持つ」。今回は漫画の中のキャラクターが、漫画を朗読するというもの。ネタは榎本俊二「えの素」と松本霊士「宇宙戦艦ヤマト」。そんなもん朗読しても面白くないだろうと思う人がいるかもしれない。そう、たしかに朗読しただけでは何がなんだか分からない。しかし、その「つまらないこと」が漫画内で淡々と進行しているという構図はとても面白い。アイデア勝ち(上野顕太郎の漫画はみんなそうだが)。しりあがり寿「弥次喜多 in Deep」は廃物の山編が終了。ゴミの山、死の世界で新しい命が生まれようとするが、その子は一つの宇宙であり、この世とは相容れないものであった。その新しい生命を誕生させるべく、廃物の山の王が外の宇宙へと飛び立っていくシーンは、混沌として難解ではあるが、有無をいわせず読者の心を動かす力を持っている。
 小池桂一「ウルトラヘヴン」は今号で第1部・完。ペーパー・ドラッグのような、頭がクラクラするようなイメージが次から次へとわき出てくる。オチはなんだかあっけらかんとした感じ。いましろたかし「釣れんボーイ」。アユ中毒で人生をも狂わさんとする、ダメ人間ヒマシロの姿が切実すぎるくらい。しかも、それに完全に没入することもできず、一度はアユのために断った仕事を、思い直して受けてしまったりするあたりの弱さもこれまたいい味。金平守人「BBRビームバクレツ調査班」は、MMRのパクリ。ちょっとスベリ気味か。

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