◆ 1998年11月下旬 ◆
11/21〜30
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11/30(月)……ダイヤモンドじゃイヤだもん
12月の購入予定はこんな感じ。楽しみなものがいろいろ。今年も最後だし、年末進行で忙しいけど気合い入れて読もう。年の終わりにはコミケもあるし。今年は行くつもり。
98年12月 |
日 | タイトル | 著者 | 価格 | 出版社 |
上 | ボンデージ・フェアリーズ(2) | 昆童虫 | 857 | 久保書店 |
04 | 悟空道(5) | 山口貴由 | 390 | 秋田書店 |
04 | バロン・ゴング・バトル(5) | 田口雅之 | 390 | 秋田書店 |
04 | 新・河原崎超一郎(1) | おおひなたごう | 390 | 秋田書店 |
04 | 江口寿史の犬の日記、くさいはなし、その他の短篇 | 江口寿史 | 895 | KKベストセラーズ |
05 | ヤング・パラダイス | たかしたたかし | 1000 | 白夜書房 |
05 | モザイク(2) | 山口かつみ | 505 | 小学館 |
05 | カケル(6) | 竹下堅次朗 | 505 | 小学館 |
05 | the山田家(5) | 阿部潤 | 876 | 小学館 |
05 | 歌麿(1) | 六田登 | 533 | 双葉社 |
05 | 軍鶏(2) | 橋本以蔵+たなか亜希夫 | 533 | 双葉社 |
07 | SATELLITEぢゅにゃ(1) | サガノヘルマー | 505 | 講談社 |
07 | スチームガール | うらまっく | 505 | ワニマガジン |
08 | ハッピーファミリープレウェディング | 三原ミツカズ | 924 | 祥伝社 |
10 | 零式 | | | 東京三世社 |
10 | 別冊きみとぼく | | | ソニー・マガジンズ |
10 | 俺たちのフィールド(33) | 村枝賢一 | 390 | 小学館 |
10 | ARMS(6) | 皆川亮二 | 486 | 小学館 |
10 | 羊のうた(3) | 冬目景 | 514 | スコラ |
10 | 西遊記(天の巻) | 藤原カムイ | 952 | NHK出版 |
10 | いたいけなダーリン | 田中ユタカ | 800 | 富士美出版 |
11 | 球鬼Z(2)(完) | 藤澤勇希 | 514 | 秋田書店 |
11 | 妖怪ハンター六福神 | 諸星大二郎 | 590 | 集英社 |
12 | 星組 | | | ワニマガジン |
12 | ネムキ | | | 朝日ソノラマ |
12 | 係長ブルース(1) | ロドリゲス井之介 | 743 | 日本文芸社 |
12 | ねこぢるうどん(1) | ねこぢる | 648 | 文藝春秋 |
12 | 私立星之端学園!?恋愛専科 | 米倉けんご | 819 | メディアックス |
14 | スピリッツ増刊Manpuku | | | 小学館 |
14 | 続ヒゲのOL(仮) | しりあがり寿 | 590 | 竹書房 |
中 | すくらぶ▽にゅーえき | 美女木ジャンクション | 952 | オークラ出版 |
中 | 河童 | 芥川龍之介/望月三起也 | 657 | 小池書院 |
中 | 死肉の男 | 日野日出志 | 600 | 蒼馬社 |
16 | Milky Stream liner | 佐野タカシ | 781 | フランス書院 |
17 | 大漫王 | | | 小学館 |
17 | 新マグナム増刊 | | | 講談社 |
17 | 風から聞いた話(2) | 奈知未佐子 | 838 | 集英社 |
17 | バラ色の明日(4) | いくえみ綾 | 390 | 集英社 |
17 | 一生懸命機械(2) | 吉田戦車 | 1100 | 小学館 |
17 | 大人チョップ | 花くまゆうさく | 950 | マガジンハウス |
18 | キリコ(1) | 木葉功一 | 505 | 講談社 |
18 | ディスコミュニケーション(学園編) | 植芝理一 | 505 | 講談社 |
18 | BLAME!(2) | 弐瓶勉 | 505 | 講談社 |
18 | 大猿王(1) | 寺田克也 | 1500 | 集英社 |
19 | ウルトラジャンプ | | | 集英社 |
19 | まちこSHINING(1) | 藤野美奈子 | 505 | 小学館 |
19 | シネマ(2) | 六田登 | 505 | 小学館 |
19 | 青い春 | 松本大洋 | 876 | 小学館 |
19 | 幸福の丘ニュータウン | 細野不二彦 | 952 | 小学館 |
24 | ちいさなのんちゃん | 永野のりこ | 620 | アスペクト |
24 | 幽玄漫玉日記(1) | 桜玉吉 | 980 | アスペクト |
下 | 無理ヤリ | ゴブリン | 819 | 一水社 |
下 | マンガの鬼AX(6) | 本秀康、東陽片岡ほか | 933 | 青林工藝舎 |
【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 12/14 No.52 小学館 B5中
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脚本:園村昌弘+画:中村真理子「日本映画の黄金時代 小津安二郎の謎」が新連載。俺は小津安二郎について全然詳しくないのであんまり感慨はないが、中村真理子の芯の通ったシャープな線はわりといいと思った。江川達也「東京大学物語」。イヤな漫画ではあるのだが(別にけなしているわけではなく)、村上が異常な性豪ぶりを発揮し始めた最近の展開はわりと面白い。浦沢直樹「Happy!」は、ウィンブルドンの決勝、海野vs.ニコリッチがスタート。せっかく決勝なんで、テニスシーンは今までよりも詳細に描いてほしいな〜と思う。村上かつら「いごこちのいい場所」。耕平が想いを寄せている堀川さんが、意外にも天然系のヘンな人であることが判明。キャラクターもだいぶ立ってきた。好調好調。伊藤潤二「うずまき」は、ヒロインの桐絵が今度は台風に惚れられてしまうという、なんだか破天荒な展開。一見ホラーなのだが、最近どんどん展開が馬鹿げてきていて楽しい。
【雑誌】ヤングマガジン 12/14 No.52 講談社 B5中
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こしばてつや「天然少女萬 美想少年・百夜編」がスタート。なんか異生物っぽいコギャルを描かせたらこしばてつやは抜群である。小田原ドラゴン「おやすみなさい。」。今度はクリスマスイブにレンボーブリッジを1500人の童貞のくさりでつながんとする、イカれた計画を持つアブない人が登場。1500人めの最強の童貞として、鉄郎にスポットライトが当たろうとしている。それはともかく、鉄郎の行動パターンなど、地味だけど端々まで神経の行き届いたくすぐりが素晴らしいなあ。小田原ドラゴンは、俺的には98年最大の収穫の一人。平本アキラ「アゴなしゲンとオレ物語」。今週もゲンさんは邪悪でアブない。しかも何やら髪を伸ばしているし、小学生をイジめるし。弱い者にはとことん暴力的なゲンさんの姿が、実に卑怯で自分勝手で面白い。かたぎりわかな「しすたあモルヒネ」は、軽いタッチなのにナチュラル・ハイな感じでイカれてていい。ヤンマガのショートギャグは、地味に見えて周到な狙いのある「おやすみなさい。」、とにかく暑苦しく差別的でさえあるアブない「アゴなしゲンとオレ物語」、そしてアッパー系の「しすたあモルヒネ」と非常に充実している。どれも違う味だけど、それぞれに個性的でポテンシャルが高い。
次号のヤンマガでは「LIZARD KING」の馬場康士、それから沖さやか改め山崎さやかが登場ってことで、またしても楽しみである。
【雑誌】週刊少年ジャンプ 1/1 No.01 集英社 B5平
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田中加奈子「身海魚」が新連載。天才科学者ローハンが作り出した、サメ型の人工生命体・身海魚が主役。彼は体のサイズを10mからミクロサイズまで変化させることができ、体を小さくすることで人間の血液の中を泳いでウイルスを退治し、人々の病気を治すことを使命としている。でも、ウイルスとの闘いに明け暮れ自由のない日々に嫌気の差した身海魚はローハンに歯向かい、患者の体を乗っ取ろうとする……といった感じの出だし。目のつり上がった、全体的にとんがった画風が特徴的だが、まあそこそこって程度かなあ。よくできているという印象は受けるのだけど、それ以上のものはあんまりない感じ。
尾田栄一郎「ONE PIECE」。海賊クリークとの戦闘が終了。世界中の魚が集まる海域、オール・ブルーについてうれしそうにルフィに語るサンジの姿が魅力的。島袋光年「世紀末リーダー伝たけし!」。最近、バトル編になってつまらなかったのだが、今回は非常にかっこいいセリフがあった。「なんの羞恥も疎外もない……あたり前の正義の中に今ボクはいる」「途方もない正義の中に今ボクはいる…」というものだ。「あたり前の正義」っていうのはなんとなく危険な考えっぽくもあるけれど、力のある言葉はその意味を考える以前にダイレクトにかっこいい。お話的にはそんなでもなかったが、力ある言葉を読めたので満足。新田瀕死「憂鬱サッカーダンス」は、自分をランク下だと思い込んでいるバトミントン部所属の少年が、何やらあかぬけているらしいサッカーに挑戦する。ところがこのサッカー、タンスをボール代わりにする謎のサッカーだった。絵はちょいとよしもとよしともとか井上雄彦に近い、今のジャンプには珍しくこざっぱりした画風。奇を衒ってはいるけど、憂鬱ではばたけない、ストレートに熱くもなれず、かといって捨て鉢にもなれないもどかしい青春を描いていて、けっこうアツイ作品でもある。人物の絵はいいと思うので、あとは背景とか無機物の描写がもっとうまくなるといいなーと思う。奇を衒うための一番大事な道具であるタンスが、定規で線をひいただけみたいな四角四面なものではもったいない。表面のディティールを描くだけでもだいぶ違うのに。
【単行本】「ダイヤモンド」2巻 青山広美 小学館 B6
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殺人犯の種田が、顔が似ていることを理由に、傷害事件を起こしてしまったプロ野球の常勝チームの4番打者の替え玉にさせられる。それまでの人生でいいことがまったくなかった種田だが、試合に出場する機会を与えられ、水を得た魚のようにハツラツとした活躍を見せる。
野性味あふれる主人公・種田の常識外れに豪快でパワフルなスイングの気持ち良さがこの漫画の魅力。そして、この巻では対戦相手であるベテラン投手、浜野が種田を食ってしまうほどにかっこいい。かつては剛球投手だったが、肩の故障を境に変化球投手に転身していた浜野が、種田とのシビれるような対決に酔い、かつての剛球を取り戻していく。心底野球を、その一瞬の緊張感を楽しんでいる二人の姿に血が沸き立つ思い。っていうか燃えるぜベイベー。
人間の体の描き方、ポーズなんかは若干ギクシャクしたところはあるものの、それもひっくるめて押し流してしまうほどのダイナミックさ、力強さがある。最近の野球漫画の中ではかなり好きな作品。
11/29(日)……ドブツの宴
明け方までかかって書評原稿を一本片付けた後、会社に休日出勤。自分的に今月は「文章気合い入れる月間」だったこともあり、書評原稿のほうはいつもより気合いを入れて書いたつもり。でも出来はフツーかな。それにしても、やっぱり印刷される本に書くのはWebページやBBSに書くのとは緊張感が違う。対象読者層が不特定多数だし、原稿を書いた後のフォローを自分で入れることが難しいということもある。それにやっぱり金もらって書くわけだし。Webページでも金もらって書く原稿並に気合いを入れたいとは思うのだけど、さすがに日記でそれをやっていると神経がもたなくなってしまうので、まあできる範囲でやるしかあるまいて。
現代洋子結婚、ということで「ともだちなんにんなくすかな」が最終回。各方面に影響を与えたらしいこの結婚については、桐島いつみ「まいったカッパは目でわかる」にも波紋を投げかけている。そのだつくし「女の花道」は、男気のあるきっぷのいいねーちゃん、花に惚れる男が現れる。ラフに引かれた描線が、自然な感じにさばけていてかっこよく映る。よしまさこ「うてなの結婚」。今回はうてなの結婚式。非常に幸せそうで微笑ましい。こざっぱりとしてコミカルな画風もええ感じで力が抜けていていい塩梅。吉田まゆみ「くしゃみ3回」。おんな演歌歌手のルルと、九重の弟が急接近。絵柄は華麗であるが、それでいて腰のすわった骨太なところも感じる。浪花節を軽く口当たり良く料理して、楽しく読ませる。
【単行本】「ドウブツマンガ」 しりあがり寿 朝日新聞社 A5
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オール描き下ろし単行本。毎回、一つの動物をテーマにお話を構築する。その動物たちはカレーが大好きな虎だったり、タクシーに乗るシカだったり、ビデオを観る犬だったりと一見突拍子もない。だが、読み終えた後になんとも言えない哀切感のある余韻が残る。とくに巻末の2話、ライオンとクジラの話は絶品である。
「ライオン」は「自分のクラスにライオンが転校してきた」とウソをついていた少年の元に、本当にライオンがやってくる。それまでウソツキとしていじめられていた少年は、そのライオンを連れて学校に向かうが、今度はイジメっ子たちにヒキョー者扱いされる。そして目の前でいじめられ傷ついた少年を見て、ライオンは悲しい雄たけびをあげる。その音量にイジメっ子たちの鼓膜は破れ、学校は吹き飛び崩壊する。そして、ガレキの荒野を進むライオンの後ろ姿。ライオンが何を考えているかは分からない。しかし、その姿は力と誇りと、そして悲しさに満ちているようにも見える。何もいわない動物ならではの人間には理解しがたい強い意志が、そこにはあるように思えてならない。
「クジラ」は誰もいない未来世界で、二人の親子連れがクジラを見にいく。ビルの屋上から天上を進んだ先で見たクジラの姿は、神々しくそして悲しい。それを見つめる人間たちの姿もまた。静かに、ただそこにある終末の姿が感じられる作品。
面白うてやがて哀しき……そんな作品集である。
11/28(土)……ナチの刻印
人に指摘されて、プチフラワー98年11月号のプレゼントに当選していたことに気付く。俺自身は応募したことさえすっかり忘れていたのだが。当たったものはプチフラワー特製のうさぎスタンプ。絵柄はうさぎで奈知未佐子、小道迷子、大竹サラの描いたものがセットになっている。目当ては奈知未佐子だった。99年1月号で結果が発表されていたのだが、見てみると俺以外の当選者は女の人ばかり。なんか非常に浮いている感じ。
OKAMA「スクール」第2話め。前回出てきた主人公の少年・孝幸が、転校先でHでおっぱいのデカい女教師にいたづらされるという話。OKAMAの作品にしては珍しくストレートで素直に楽しい。絵のうまさは相変わらずすごいし。陽気婢「世界ノかけら」中編。やはりいい絵。目を細めてうっとりしているところの表情が色っぽい。陽気婢の描く女の子って、十分かわいいのに、それでいて平凡で地味な感じも醸し出しているところがいいなと思う。伊藤真美の新連載「LAD:UNA」は、ほとんどの人間が生殖機能をなくしていて、生殖機能を持つ人間は「センター」に管理されている未来世界が舞台。主人公が街でバッタリ出くわした少女は、実は生殖機能を持ちセンターから逃げてきていたのだった……というでだし。なかなかスタイリッシュで達者な絵。話的にもわりと大きなものになりそうで、これから期待が持てそう。ポヨ=ナマステ「リサイクルドオナニー」。自分のオナニーシーンを録画したビデオテープを好きな男に送りつけて迫る、かわいいけど強引な少女のお話。有無をいわさずどんどん押してくる呼吸が楽しい。作風的にはSABEにちょっと似ている。
天竺浪人「たからもの」。カチコチのマジメな少女が、家庭教師のお姉様の導きにより淫乱で美しい自分の魅力に目覚めていく。心理描写とちんこ描写のうまさはさすがである。ISUTOSHI「高校星プラウラ」は骨太な線で、最初っから濃厚なエロシーン。ちんこの描き方とかがゴツくて好み。馬場康士「LIZARD KING」。今度はザビタンが甲子園を目指す。暑苦しくうっとうしいギャグが魅力。十羽織ましゅまろ「血みどろっチャオちゃん」は、画面の使い方にセンスを感じる。本編で主人公たちがSEXしているコマの欄外で、出歯亀している脇役がレイプされているという楽しい構図。氷室芹夏「水の誘惑」は、碧とかずやの迷走が続く。かずや、なんとかせいっって感じ。何か水をはじくような、細くてスッキリとした描線がとてもいい。あと、六道神士の短編「ホーリーブラウニー5」も掲載されているのでファンは要チェック。
津田雅美「彼氏彼女の事情」。雪野が劇に出ることを承諾。というわけで文化祭に向けて一気に動き出す。なんかきゃいきゃいと楽しそうで微笑ましい。あとは絵が抜群に可愛らしいところがやっぱりいいところ。卵形の頭、ダイナミックにくるくる変わる頭身と表情、ほっぺたの赤らみっぷり、描線の仕上げの美しさなどなど見ていて気持ちがいい。単行本は古本屋で買おうと思っていたりするのだが、まだヒット中ってことでなかなか見かけない。でもTV放映が終わったころにがさがさと古本屋に出てくるんじゃないかなーと思って気長に見ていたりする。6巻程度だから新刊で買っても別になんてことないんだけどね。社会人は時間がないぶん金を使えという法則もあることだし。米沢りか「こっぱみじんの恋」。なんか力いっぱい体の芯から恋愛してるって感じのキャラクターたちがいい。弾けるような勢いがある。米沢りかの漫画は最初読んだときは、キャラクターたちのがぱっと口を開けた表情がなんか奇妙な感じで笑っていたのだが、読ませるだけの力強さがあって最近はけっこう好き。
【単行本】「"B.Q." THE MOUSE BOOK」 カネコアツシ アスペクト A5
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【単行本】「"B.Q." THE FLY BOOK」 カネコアツシ アスペクト A5
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カネコアツシ4、5冊めの単行本。といっても「B.Q.」自体はコミックビームで「BAMBi」の前に連載された作品だ。よって俺は全部既読。どちらも短編集。この人は近年すごく成長したなーという印象があったのだが、「B.Q.」の段階でもうほぼ完成の粋に達している。なんといってもかっこいいのが絵。スケボーの裏の絵かなんかにでもありそうで、ストリートテイストにあふれている。そしてショート・ショートとしての完成度が非常に高い。ちょいとスプラッタな風味で、ブラックな味付け。でも全体としてはギャグタッチでまとめ、どの作品もきれいにオチがつけてあってうまいなーと思う。常に均質な絵柄と同様、お話も常に一定以上の水準。その分、「コレ!」というふうに印象に残る話はないもののどれもキッチリ楽しませてくれる。「BAMBi」で長編作家としての力量も示しており、これからののびしろはあんまりなさそうな気はするが、コンスタントに力を発揮する人としてこれからも要注目である。
11/27(金)……アッシュ ナズグ ギムバトゥルっていうかー
なんか今、青春真っ只中って感じです(以下略)!っていうか眠いです!っていうかこれから会社のソファで寝るです!これじゃあ風邪が治るわけないです!っていうかあんまり治そうとしてない自分がそこにあるって感じです!
KASHIみちのく目当ての購入。今回の「蘇れ、ゴールデンチ○ポ伝説」は、町でGークンドーというヘンな格闘技の道場を開いている兄妹の話。彼らは近親相姦している合間にGークンドーの実技もやるのだが、それがザーメンを染み込ませたルーズソックスやブリーフで闘うという、なんだかものすごく馬鹿馬鹿しいもの。タイトルも好き勝手やってるって感じでステキだ。本当に楽しそうに漫画を描いてていいなー、この人は。
【雑誌】ヤングアニマル 12/11 No.23 白泉社 B5中
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技来静也「拳闘暗黒伝セスタス」。ローマ帝国の拳奴たちの過酷な世界を描いている。三浦建太郎「ベルセルク」に近い絵柄で、描写が骨太なところも似ている。さすがに今のところ「ベルセルク」ほどの暗黒さはないが、読みごたえはバッチリ。「ベルセルク」は異端審問官の僧侶、モズグズがやたらに邪悪でいい。邪悪でモズグズというと、なんかモルグルとかナズグルとかを思い出すなあ。一つの指輪はすべてを捕らえて暗闇の中につなぎとめる! それからキャスカが再登場。白痴美が漂っていていい感じである。
文月晃「藍より青し」が新連載。町でバッタリ出会った紬姿の世間知らずな少女と、彼女にいろいろ世話を焼いた通りすがりのあんちゃんが、実は幼な馴染みであることが判明し、少女があんちゃんに押しかけ女房しようとする……というでだし。文月晃は初登場だが、なんか雰囲気的がヤングアニマルに似合いすぎ。山桜桃(新名あき)あたりも似合いそうだなー。二宮ひかる「ナイーヴ」再開。例の二人がかなり素直になり、アツアツな展開。似合わない冗談をいって恥ずかしがる麻衣子がかわいい。宇仁田ゆみ「グラス・スパイダー」。第2回め。女子高生の透子と付き合い始めたアキオが、どんどん透子にハマっていく。スッキリしてのびやかな描線が魅力的。透子の無邪気さまっすぐさがまたいい。恋愛中心の日常を描いた作品が好きな人にわりとオススメ。こいずみまり「コイズミ学習デスク」。今回は良いちんちんのお話。日本男根党(またの名をちんちん党)党員の俺としては、やはりゴツゴツとして邪悪にカリの張った奴が偉いと思う。なんとなく。カブトムシだって鹿だって、角が立派な奴が偉いのだ。ちなみにここでいう偉いというのは、別に性能を指しているわけではないのでよろしく(何をよろしくしろというのか!)
巻頭カラー、栗原まもる「アイスクリームマドンナ」が面白かった。ちょっとHで過度にかっこつけないあたりがかっこいい恋愛モノ。テイストとしては南Q太あたりが近い。モノローグで終わるラストもなかなかに余韻があっていい。木村千歌「カンベンしてちょ!」。主役の女の子の乳が大きく育ってしまったのを見て友達が彼女をそそのかし、胸を強調するような服を着させて彼のバイト先に遊びにいく。彼氏は喜んだり、ほかの男が彼女の胸に注目するのに焼きもちを焼いたりと大忙し。そして彼女も、彼氏を胸で釣っているみたいな感じがしてしまって、こちらもまた複雑な思い。絵もかわいいし、お話もまた微笑ましい。大きなおっぱいにはやっぱり感動するね、俺は。でも小さいのもそれはそれで。二宮ひかる「ナイーヴ」の麻衣子なんは、ツルリペタリとした身体がなんか触り心地良さそうだし。寄田みゆき「ラブリーシック」。ヒロインの表情が、ダイナミックにくるくると変わって見てて楽しい。
11/26(木)……カリスマの仮住まい
掲載作品のリストはコミックバーズのページ参照。
今号と次号にてポストカード(「きりきり亭のぶら雲先生」「羊のうた」「餓狼伝」「しびとの剣」「魔殺ノート退魔針」「BEAST of EAST」「陰陽師」のうち1作品)4枚組が応募者全員プレゼント。それから表紙やらピンズが抽選で当たるっていうのもある。欲しい人はどんどんおーぼ、べきであるある。
まず注目はバーズ初登場、雁須磨子「かわいい女」。この人はメロディとかでときどき描いていて、抑えたトーンの絵柄と小春日和という感じの暖かみのある作風がわりと気になっていた。「反町くんには彼女がいない」の有川祐にちょっぴり絵が似ているような感じもする。今回は仲間を裏切って組を抜け出してきたヤクザのにーちゃんが、逃亡先の宿であっせんされた身体を売っている美人のお姉ちゃんと何度も肌を重ねるうちにだんだん情が移ってきて……というお話。女の子の伏せた目つきがものうげで色っぽい。静かな面白さのある作品。冬目景「羊のうた」。うまい絵だ。きくち正太「きりきり亭のぶら雲先生」は2本立て。ぶら雲先生の童心が抜け出て童女の姿をとり騒ぎを起こすという前号の続きと、ついだお酒の種類によって違う姿形の女の子が出てくる徳利の精のお話。どちらもきれいにまとめてくる。ぶら雲姐さんは粋でいなせで艶っぽい。子供っぽさがあるところもまたいい。
ともち「愛をあげよう」。卒業を前に、巨乳娘・都が正午に猛烈アタックを開始。メロメロに甘ったるい。いや〜楽しい。作:夢枕獏+画:板垣恵介「餓狼伝」は松尾象山の昔の暴れっぷりの話。一方的に技をかけまくるシーンが迫力があって、そしてリズミカルで見ていて胸がすく。奥瀬サキ「FLOWERS」。前回掲載の98年11月号の扉の柱では「最終回」とか書いてあったのだが、ちゃんと続いている。今回も相変わらずわけが分からない。こういうのはやっぱまとめて読みたいな。でも、非常に達者で張り詰めた緊迫感漂う画面構成はこれだけでも楽しめる。
どっしり落ち着いた読みごたえのある作品が多くて面白い。老舗の味。
萩尾望都「残酷な神が支配する」。イアンが、ジェルミとグレッグの過去の呪わしい関係を問い質す。かなり痛々しくてハードな展開。俺はこの作品は途中から読み始めたんだけど、それでもグイグイ引き込まれる面白さがある。物語の器がデカい。奈知未佐子「天使のラッパ」。心暖まる優しいメルヘン。奈知未佐子は毎回コンスタントに心が洗われるええお話を描いてきて、俺は非常に好き。竹宮恵子「平安浄瑠璃物語 濃蘇芳」。源氏の王子・槐丸のあまりの美しさが、従者やチンピラどもの情欲を呼び起こす。境遇的にはかなりの苦境なのに、なんだか絢爛な感じがする。下村富美「仏師」。この人は本当に絵がうまい。細い線なのだが、描写に骨がある。ゴツゴツした男や老人を描くのもうまいところがまたいい。
【雑誌】週刊少年チャンピオン 12/10 No.53 秋田書店 B5平
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大熊良「パーフェクティーチャー」が新連載。この人は前にやっていた「ジャージマン」がけっこうヘンテコな作品だったが、今回もかなり奇を衒った作品になりそう。第1回めはちょっと滑っている感じもするけど、まあ気長に見よう。水島新司「ドカベンプロ野球編」。そうか〜、駒田は「セの岩鬼」と呼ばれているのか。スゲエな〜岩鬼。あと2、3年で2000本安打も狙える選手なのに……。
【雑誌】ヤングサンデー 12/10 No.52 小学館 B5中
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最近、しばた兄弟の間で注目度が非常に高い遊人「桜通信」。かなり話が壊れているのだ。意味もなくHな展開に持っていくための無軌道さに度胆を抜かれる。なんか意味もなくカラオケに行ったトンマと眼鏡娘が、意味もなくキスゲームを始め、さらに意味もなく肉欲に溺れようとしている。う〜ん、ヘンな漫画。いったいどこへ行こうというのか。田中圭一がヤングサンデー初登場。タイトルは「さだめ」。デビルマンのデーモンみたいな姿をした男と女の魔獣2体が、夫婦漫才みたいなノリで浪速の平和を守るって感じの情けなくも下らない作品。まあまあってところ。細野不二彦「太郎」。ガルシアvs.太郎の試合がだいぶ盛り上がってきていて面白い。山田怜司「アガペイズ」。今回も盛り上がっている。野球シーンは死ぬほどインチキ臭いのに、テンションは高い。
【雑誌】モーニング 12/10 No.52 講談社 B5中
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オグリがVリーグに昇格し、名称も「オグリポピンズ」に。ヨリにピンクのユニフォームが案外似合っている。井上雄彦「バガボンド」は、追い詰められた武蔵の目がどんどん鋭さを増してきていてすごくかっこいい。木葉功一「キリコ」。女としての顔を覗かせ始めたキリコが、しなやかでかつ弱々しいところもあってなんとも色っぽい。ちばてつや賞大賞受賞作、吉開寛二「しげんとゆきみ」。父が昔書いていた日記と、文通相手の女性との手紙を見て、父の昔の恋愛模様を知るというお話。地に足のついた絵と話作りで、なかなか読ませる力を持っている。後半まで堅実に話をつなぎ、一気に気持ちのいい爽やかなクライマックスを迎える。なかなか面白かった。
11/25(水)……死と俺とボク
今日アフタヌーンを読んでいたら、柱の部分で「私は○○のためなら死ねるっ!」とかいうのをテーマに読者のお便りを紹介していた。で、自分は何のためなら死ねるかと考えてみたのだが、自分のため以外にはたぶん死ねないだろうなーという結論に至った。こういうホームページを作っている以上「漫画のためなら死ねるっ!」とかいったらかっこいいのだろうが、そういいきる自信はない。まだまだ俺とて齢26歳。自分の可能性を信じていたいお年ごろ。死んだほうが自分にとっていいのだったら死ぬかもしらんが、他人のためになんぞ死ぬのはごめんだ。とりあえず自分だけは幸せになりたいもんです。
どうも最近元気がない。
あさりよしとお「ワッハマン」が再開。いよいよ黒幕が近づいてきてクライマックス。最初のころのような気楽な展開もいいが、現在のシリアスな展開もこれはこれで緊迫感があって好き。外薗昌也「犬神」。擬態タイプの犬神vs.23の闘いが始まる。擬態タイプの攻撃がなかなかに邪悪で、傷ついていく23が痛々しい。平田弘史「新首代引受人」。すべてMacで描かれた94ページの大作。今までのを読んでない人に説明しておくとこのお話は、合戦で自らの命を助けてもらう代わりに払う対価である、「首代」の取り立てを代理で行うのを生業としる首代半四郎が主人公の時代劇である。黒々とした毛筆体って感じの威風堂々とした絵、それから読みごたえのあるストーリーと非常に面白い。ただ、惜しいと思うのは欄外などで「Mac、Mac」と強調しすぎなこと。漫画は描かれた方法よりも、その内容で判断するべきものだと思う。全部CGだってことを自慢されても困る。あと10年経てば、「オールペン描き」のほうがウリになるかもしれないんだし。
小原愼司「菫画報」。今回はスミレがほとんど出てこず図書室書司・ミヤちゃんのナゾの活動でお話が終始する。淡々としているけど浪漫的。木尾士目「五年生」。最近、青臭さと説教臭さがちょっと薄れてきて読みやすくなってきていると思う。四季賞準入選、小林哲也「Pied」。ちょっと大友克洋ライクな精緻な画風がいい雰囲気。SFチックでちょっぴりブラックジョークでまあまあ楽しめる。でも天才だとは思わないので、ハガキは送らない(ラストのページの欄外に「小林氏を天才だと思う方はオハガキ下さい」と書いてあるのだ)。四季賞作品もう一作。森川未知留「万華狂」。長らく実家に帰ることを拒んでいた男が、久しぶりに実家に戻りそこにあった、7年前に死んだ兄の持ち物だった万華鏡をきっかけに封印していた記憶を掘り起こしてしまい、狂気の世界にひきずり込まれていく……というお話。神経質そうな絵柄がストーリーにマッチしていて、こちらもそれなりに楽しめる。でも、どんどん追い詰められていくあたりの描写にもうちょっと迫力がほしい。表現したいものはよく分かるのだが、迫ってくるものがあんまりない感じ。そこそこよくできているとは思うのだが……。
【雑誌】週刊少年サンデー 12/9 No.52 小学館 B5平
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藤田和日郎「からくりサーカス」。自動人形と「しろがね」の秘密がだいぶ明かされてきた。そしてゾナハ病の秘密も。なんかけったいで不自然な仕掛けだなーと思わないでもなかったゾナハ病だったが、どうやら物語の中枢に深く関わっていたようだ。これからの展開が気になる。北崎拓「なぎさMe公認」。まーくんが自信つけすぎな感じでちょっと不穏な感じもしていたのだが、やはりアクシデント。あまり悲愴感を漂わせちゃうのはこの漫画らしくない気はするが、どの程度のレベルのアクシデントに持っていくのだろうか。
【雑誌】週刊少年マガジン 12/9 No.52 講談社 B5平
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うーむ。全般的にテンションが低いような気がする。森川ジョージ「はじめの一歩」では一歩の最大の武器、デンプシーロールの落とし穴が示唆され始める。頭を大きく振るからカウンターの効果がでかいとかそんな感じかなあ。
【雑誌】コミックピンキィ 1月号 オークラ出版 B5中
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舞登志郎「メジャーデビューへの道」がお休みなのがすごく残念。病院に入院している男の妻が、担当医の手によって牝奴隷に調教される深田拓士「愁-UREI-」は、エロ小説のようなねちっこい責めが特徴。もう少し身体の線とかが柔らかくなると俺好みなのだが。でも調教内容はハードでいやらしいので、頑張ってほしい。北原武志「Design and Model」は、唾の臭いがぷんぷん漂う、臭そうでかつ道具やポーズが間抜けな調教シーンが特徴。北原武志はあんまりうまくない泥臭い絵ながらも、イジメのシーンが実に丹念に描かれていて、なんかすごく鼻の奥にツンとくるものがある。とってつけたハッピーエンドも腑抜けてて好きだ。
【アンソロジー】ロリータコミックさくら Vol.1 松文館 A5
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タイトルを見れば分かると思うが、ロリータ系のアンソロジー。表紙に「大山田満月」の文字があったので購入。「どうせイラストだけだろう」と思っていたのだが、やっぱり4色イラスト1ページだけ。何度この手にやられたことか……。イラストの出来はもうバッチリなんだけど、やっぱり漫画が読みてえなあ。月角「MAY」は、いつもながらに鉛筆描きっぽく強烈にかわいい絵柄で、幼女に邪悪なちんちん突っ込みまくりな漫画。幼女体型の描き方が非常にうまく、きっとしっかり「実物を観察」しているのだろう。月角の漫画からはホンモノの幼女好きの業を感じる。ただ、作風自体はもうだいぶ慣れてきてしまったので、も少し新しい展開が欲しいところでもある。志崎月魚「ぼくでなくちゃ」は、バツイチ同士で再婚した家庭の連れ子同士である少年と双子の妹がSEXする話。双子の片割れが兄のちんちんを入れられて「お父さんのとちがってちょうどいいの」と叫ぶあたりがなんか新鮮。女の子が「大きい」と叫ぶシーンはわりとよく見るが、「ちょうどいい」と叫ぶのはあんまり記憶になかったので。
身を切るような迸る情念が胸を打つ、園山二美の初単行本。冒頭の「狂人遺書」は自殺しようかと思って遺書を書いている女漫画家が、遺書の文章の出来に満足できず何度も書き直しているうちに、次から次へといろんな想いが頭をよぎってしまい、本来目的とする行動からどんどん外れた方向に迷走していく物語。ものすごいハイスピードで自分の感情を吐き出し、瞬く間に自分でツッコミを入れ、感情を暴発させながらのたうちまわる強烈なモノローグにはただ圧倒される。たぶん、ここらへんは園山二美の性格そのまんまなのではないかなーと思う。頭が回りすぎてしまうだけに、次から次へと自分のやることなすことに意識がいって、自分というものに一喜一憂し、結果的に無為な時間を過ごしてしまうあたりが。
巻末の、登校拒否少女が家に閉じこもり自分とそれ以外のものについて考える「宇宙のはじまり」もいい作品。外の社会からはつい浮いてしまう小さな意識の遊泳が、透明感のある表現で描写されている。内省的で、かつファンタジックな美しい物語に仕上がっている。沈思の末、「自分」という存在の広がりを見る。自分は「自分であるということ」ただ一点において、自分にとってのみ世界で一番偉いのだ。
生の自分を、シャープで艶っぽい描線で画面に叩きつけてくる、その力強い作風はなかなかほかに類を見ない。というと勢いだけの人に思えちゃうかもしれないが、描画技術やストーリーのテンポ、効果的な構図と技術的な面もしっかりしている。そしてなんといってもいいのが、キャラクターが実にイキイキしていること。
かっこつけすぎるのを肯んぜず、しかし俗に流されるのも嫌う。自分の今を常に強く意識しつつ、ある部分で冷静に評価しつつ牽制しているかのようなジレンマの感じられる作風は、きっと維持するのが疲れるだろうなーと思う。もっともったたくさんの作品を読んでみたい作家さんではあるが、まあ無理にならないようなペースで少しずつ作品を発表していってくれればそれえいいや。
11/24(火)……KときてBとかいって
昨日すっげえ体調が悪かったのだが、どうやら二日酔いだっただけでなく風邪もひいていたらしい。どうりで調子が悪かったわけだ。でも今日も夜更かし。
【雑誌】ヤングチャンピオン 12/8 No.24 秋田書店 B5中
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村生ミオ「サークル・ゲーム」。今までは操に手を出すときは、男を使ったり間接的な行動をとっていたありさがついに直接攻撃をしかける。それにしてもありさはかなり無敵である。凶悪なまでの妄執が恐ろしくて、でも遠くから見ているとちょっと間抜けな感じ。濃い世界だ。スゴイ。富沢ひとし「エイリアン9」。この作品の扉絵は毎回ヘンテコである。今回は洗濯ひもにつるされているびしょびしょのスパッツのアップ。確信犯だな。本編でくみの顔にエイリアンの体液がかかるところもかなり狙っていると見た。戸田泰成「フェティシスト」は今回が後編。黒々として油が浮いたような濃厚な絵柄が特徴的。後編はわりと他愛ない感じだった。絵柄やら「フェチ」という題材からすると、もっとギッチギチに濃い内容にしてもいいのではないかと思うが。
【雑誌】エクストラ・ビージャン 12/30 集英社 B5中
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平松伸二「どす恋ジゴロ」が素晴らしい。なんといっても雑誌のアオリ文句が「具だくさん!ちゃんこ増刊」。そして中身の馬鹿馬鹿しさもすごい。今回はヒクソン・グレイシーみたいな格闘家ヒムゾンと恋吹雪が対決するのだが、そこに割ってはいるのが「リッキー台風」のリッキー大和!そしていわく「プロレスラーをなめるな」と。自作のかつてのヒーローを登場させるなんて、なんか永井豪的になってきたな〜平松伸二。山崎浩「夏の想い出」。ビージャン系では久しぶりに見る。「どきどき」と似たような雰囲気。小学生の女の子が夏休みを、田舎で親戚のおじさんと過ごすというお話だけど、H的な要素はまったくなし。このシチュエーションでやったらシャレにならないしな(女の子が無防備なので端々でパンツや肌が見えたりするんだけど)。ちょっと見ない間に絵にほんのちょっとだけ写実味が増した感じがした。夏の暑さと自然の美しさを描き込んだ、気持ちの良い画風がやはりいい。
【雑誌】ヤングキング 12/21 No.24 少年画報社 B5中
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有村しのぶ「HOPs」。ライトでポップなエロがたまらない。大したことしてるわけじゃないんだけど妙にH。いやらしいというよりH。実用的ではないのだがソソる。有村しのぶの絵は、肌が白磁のように白くてつやつやしてそうな感じで好きだ。
【雑誌】きみとぼく 1月号 ソニー・マガジンズ B5平
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藤枝とおる「レンアイアレルギー」。今回は酒を呑んで無敵モードに入った一重が、学園内を暴れ回るというお話。なかなか素直になれなかった両想いのセンパイを強引にくっつけ、道行く人にキスしまくる。くっきり描線が濃く仕上げのきれいな絵柄もかっちょいい。藤原薫の新連載「おまえが世界をこわしたいなら」。非常に神経質な細い線で人形のように華麗だけれど無機的なキャラクターを描く。全体を流れる素っ気なく陰をはらんだ雰囲気がいい。架月弥「チョコの歌」は、犬のファーファの造形が、回を追うごとにいい加減になっていくさまが楽しい。線はすごく単純で大ざっぱにひかれた感じなのだけど、全体の造形は自然でオシャレで魅力的。得な画風かもしれない。
【雑誌】CUTiE comic 1月号 宝島社 B5平
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今号のイチオシはオーツカヒロキ「FIRE DRIVE」。小学校6年生のイカれた少年が、中学生になってやりたいこととして「コギャルになる」ことを挙げる。理由は「無敵だから!」。絵は安野モヨコをはっきりくっきりさせた感じ。暴走するパワーと尋常でない目の光がいい。けっこう笑えた。安野モヨコ「ラブ・マスターX」も良かった。今までまっすぐに進んできたナオが男に絶望し、さらに新たなキャラクターが登場する。ついにラブマスター登場?うーん、目の離せない展開。巻頭オールカラー8P多田由美「シュガー・リーフ」。彩色がなんといっても美しい。外人さんの鼻や頬のテカリの表現がかっこいい。お話よりもとにかく絵を堪能するべしって感じの作品だ。南Q太「夢の温度」。線も画面もますます整理されてかっちょよくなってきている。淡々と低温のままお話が進み、その中にところどころぽうっとほの暖かいところがある感じ。クールになりすぎずホットになりすぎず、効果的に幸せさを小出しにして読者の心をガッチリキープする技をつかんでいる。うまいなあ。
【雑誌】Amie クリスマス特別号 講談社 B5平
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ちょっとだけ復活Amie。休刊前、最も楽しみにしていた山名沢湖が描いてないのはちょっと残念だけど。安野モヨコ「エンジェリックハウス」。休刊してからもう相当経つんで、前の話なんかほぼ忘れているのだが、ラストだけでもなんか楽しめてしまった。未来人ハルが空から来た得体のしれない乗物に乗り込もうとする、光が強烈なぶん影も鮮烈になっている4ページが気持ち良かった。ラストも爽やか。あとは藤たまき「ひみつのエコーボックス」がファンタジックでいい。カクカクとした細い小枝の枝先って感じの、軽くて触れば折れてしまいそうな描線が特徴的。カケアミとかベタではなくトーンの味わいだが、ベタッとした使われ方でなく画面が全体に乾いてライトにまとまっている感じ。
【雑誌】コミッククリムゾン 1/1 No.5 創美社 B5平
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TONO「ダスクストーリィ」がやはり注目。なんとも柔らかく滑らかで喉越しのいい描線が気持ちがいい。ほかの人には見えないいろいろなものが見えてしまう主人公が、一見オタクに思えるクラスの少年が実はいつも熱帯のジャングルを夢見る強力で美しい想像力の持ち主であることに気付くが……という出だし。想像力を遠くへと飛翔させる気持ちよさがいい感じ。青木光恵「となりの芝生は」。青木光恵のエッセイ漫画でない作品はけっこう好きだ。この作品も小品なのだけど、適度な遊び心と乙女心があって、楽しい作品に仕上がっている。
11/23(月)……BSまんが即売会
もうお気づきの人もいるかもしれないが、なんとなくホームページ名を「OHP JAPAN」にしてみた。昨日酒を呑んでいる最中に、「Jっておいしいな!」とか突如思い至り、オフィシャルホームページにしたのに続いてJAPANにしてみる。ちなみにリンク張ってくださってくださる方は、リンク先名称とか変更してくださらないでオッケーです。すごく気まぐれにやったことなので、また気まぐれにやめるかもしれないし。
創作系同人誌即売会コミティアへ行く。今回の会場は東京ビッグサイトだったのだが、別のホールではコミックシティなんぞもやっていたのでいつもより混雑。俺はといえば、昨日ベロベロに酔っ払った後遺症で二日酔い。さらにホームページを朝6時くらいまで作っていたり、朝飯を食っていなかったりと体調最悪。行きの電車の中でも胃が暴れていて、途中下車してゲロでも吐こうかと思ったくらい。実際、乗り換え駅で一度吐いた。会場がいつもより広かったこともあって、すごく消耗した。さらに人が多かったのでなんだか蒸し暑く、それがさらに追い打ちをかける。でも、こんなことで挫折しちゃいかんとかわけの分からない勇猛な気分に駆られたりもして、まあいつもくらいの収穫は確保。
最近コミティアに行くたびに知り合いの方が増えている。昨日の忘年会でお会いしたメンバーだけでなく、掲示板に書き込んでいただいているさくらのりたかさんや志賀彰さんといった方々にもご挨拶。今日お話した皆さんには、ゲロ臭くてご迷惑おかけしたかもしれず、その点は深くお詫びしたく思います。あとコミティア終了後、ニフティのパティオでご一緒している漫画友達の方々と、喫茶店でお話して帰る。
そんなわけで今日買った本は以下のもの。< >内はサークル名。兄貴が買った分もあるのだが、それは兄貴が今持っているので来週か再来週くらいにならないと読めない。そちらの感想はまた後日。
【同人誌】「PARKING!4」 <PARKING>
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毎度おなじみ(でもないか)の、漫画+評論の雑誌形式同人誌。今回漫画は山本昌幸、山川黄予美、南研一。評論はOUTDEXムネカタさん、すきまページ小田中さん、兄&俺。
今号は久しぶりに南研一が気合いの入った原稿を描いていた。48ページの力作である。タイトルは「sky walker」。誰かの書いた日記と、おそらくはそれを書いたであろう主人公の生活がリンクしながらお話は展開する。結局言葉を通してしかすべてのものを認識することができないから、人は究極的に他人を理解することなどできない。そんな静かな絶望が物語全体を支配する。ラスト、北極の海をバックに語られる短いメッセージはかなりジーンとくる。それまで細かく進んでいたストーリーが、静かにゆったりと拡散していく解放感が気持ちいい。後半、北極で死んだ主人公の友人のものであろうと思われる日記が挿入される。そこには、人々から隔絶されて「言葉から解放されていく自分」が語られているが、しかしやはりそれもまた言葉でしか伝えられないあたりがもどかしくも悲しい。この二つの日記は物語の各所で効果的に挿入されているが、一見時系列順であるかに思えて後半はひっそりと日付が時系列に沿っていなかったりする。そして日記は黒地に白抜き文字、白地に黒文字という二つの形態があるため、二つの日記に見えるが、これが実は二つの日記でなく一つの日記だったとしたら、またもっと多数の日記の集合体だったとしたら、日付には年号が書いていないため実は一人の人物が何年にも分けて書いたかもしれない……などといろいろと想像を膨らませてしまう。日記を書いた人が本当に物語内のキャラクターなのかといった問題もある。それはうがち過ぎなのかもしれないけど、そういった読み方もできるのではないかと思ってしまう奥行きを感じさせる作品。面白かった。
山本昌幸「Writing is rewriting(何度でも書け!)」はみんなが好き勝手なことをやっていて、活動停止に近い状態の映画研究会が、後輩の一人が映画の脚本を書き出したことをきっかけにイキイキと動き出していくという青春モノ。今までPARKINGで描いてきた陰鬱な雰囲気をはらんだ作品とは違って、ストレートに熱血している。この作品は実はPARKING4号の打ち合わせをしたときにネームを見せてもらっていたが、そのときと比べて後半の展開がずいぶん変わっている。ネーム時点の終盤は、脚本を書く後輩と、彼をアシストするセンパイの女の子のラブコメ的要素が強かったのだが、そこはカットされている。たしかにネームの段階でも前半の熱血映画漫画的展開との整合性が取れていない印象があったので、そこをバッサリとやってしまったのは正解だろう。山本昌幸の絵は商業誌での執筆を意識してか、前よりもだいぶ線が整理された感じがある。次回予定のページで描いている、悪くいえば描き殴り的な、良くいえば混沌とした勢いを感じるタッチも好きだったので少し残念な気もする。仕方ないことだとは思うのだけど。山川黄予美は物語の導入部だったので、まだ評価の段階にはないかな。
評論はムネカタアキマサがさくらのりたかとの対談、小田中が短編漫画、兄貴は昔読んだ作者もタイトルも分からない漫画がテーマ。テーマ選びの段階からして、それぞれの味は出ていたと思う。俺のは「俺が読んで泣いた漫画について」。自分の中から言葉を絞り出す過程が今思い起こしてみるとかなり甘く、納得の行っていない内容なのだけど言い訳はすまい。っていうかしても何にもならない。反省はするけどな。次はもっと気合い入れて書こうと決意。
【同人誌】「MATE SECOND」 小野夏芽 <KENNEDY U.S.M>
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オーストラリアンフットボールのチームのメンバー、それぞれの人間模様を描いた作品。この人の作品を評するときに毎度いうことだが、とにかくその外人っぽい画風がすごい。といってもアメコミ調だとか、メビウスみたいであるといったわけではなく、あくまで漫画的でありながらイタリアンなテイストが結実しているちょっと日本人離れした絵なのだ。そしてオーストラリアンフットボールという、どう考えても日本人にはなじみがない競技が舞台っていうのも異色だ。競技自体を描くのではなく、引退を迎えた選手や、選手の家族関係、友情などがメイン。あまりにも日本人っぽくないっていうか外人くさいキャラクターであるため、どのお話も導入部分ではイマイチキャラクターの名前と性格が一致せず、少しとまどうのだが、それぞれのエピソードが読後感爽やかで静かに心にしみる面白さを持っている。絵的にはプロでも十分やっていけるレベルだと思うけど、さて、これを載っけるとしたらどこかといわれると難しい。FEEL YOUNGとかCUTiE comicとかかなあ。まあこういう人はプロうんぬんではなく、自分の描きたいものを楽しく描いているというほうが似合っているとは思う。
【同人誌】「そして人生は続く」 さくらのりたか <DARUMAYA FACTORY>
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演劇部員・スギモトが恋に悩み、演技に悩み、ジタバタしながら青春街道を突っ走る物語。さくらのりたかの作品は絵的な面からいえば、まだ完成度は高くないと思う。たぶんそれは誰に指摘されるまでもなく本人が一番承知していることだろう。でも、照れることなく斜めに構えることなく青臭い自分を押し出してくる、竹を割ったようなまっすぐでのびのびした作風は実に気持ちがいい。そしてとても面白かった。読んでいて思わず「ガンバレ!さくらのりたか!」といいたくなる(おせっかいかもしれないが)。確かにまだ未完成の部分は多い。でも、この人は自分の描きたいものをしっかりと持った人だと感じる。それは創作者にとって、あるいは一番大事なことなのかもしれないと俺は前から思っている。本当にやりたいことのある人は、最初は何も持っていなくても、回り道をすることはあっても、いずれそれをやるための自分なりの手段をなんだかんだで身につけてしまうものだ(巧拙の違いこそあれ)。例えば、漫画家さんがパソコンの知識は全然なかったんだけどいろいろと描いているうちに、ハードの仕組みなんか全然知らないまま、とりあえずお絵描きのソフトの使い方とかを自分なりに習得していってしまうように。だから、志を捨てなければこういう人はきっと伸びる。俺はそう思う。
どうでもいいが、後書きのところに「mind wears」のなかに「しばたさん/OHP」が入っているのが何やら照れくさくもあり。
黒っぽくて密度の濃い絵が気に入った。とくに「猫ラヂオ 1」の冒頭のあたり、木造の家を描いたページは木や煉瓦の質感が伝わってきてなかなか迫力がある。お話としては「USO」のほうが面白い。自分の信じていた周りのモノがすべてウソで、友達には「今まで仲よくしてきたのは全部ウソ」といわれ、大学の入学許可も、アパートの賃貸契約も、家族関係もみーんな「ウソ」。一人世の中におっぽり出される女のコのお話。自分が同じ立場だったらと思うと恐ろしい、現実をグラグラ揺さぶってくるようなお話を、あくまでギャグタッチで軽ーく描いていて面白い。
【同人誌】「ヤサシイ ユビ」 きづきあきら <GRAIL>
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黒々としたベタが印象的な、切り絵のような太くてかっちりとした描線。というのは毎回いうことだけど、それでいながら柔らかさ、暖かさを感じさせる絵柄は貴重。きづきあきらは恋愛モノの作品が多いが、どの作品も心理描写がしっかりしていて読みごたえがある。今回は彼氏のいる女の子が、彼女の手の美しさだけを愛する男に手を見せているうちに、徐々に彼に惹かれていってしまうという話。手の色っぽさ、まるで独立した生き物かのように動く不思議さなど、目のつけどころがいい。作者は手、そして男を描くのが大嫌いらしいのだけど、それを克服することもテーマだったらしい。あえて自分の苦手に挑んでいく姿勢は買える。努力の甲斐あってか、手の描き方はけっこういいと思う。男のほうはまあまあ。作風を広げたいと思うなら、汚い男や老人なども描けるようになってほしいところ。プロの作家でも美男美女以外はからきしダメな人が多いので、ちょいと厳しい注文かもしれないが。
【同人誌】「自転車ニ乗ッテ。」 藤川毅 <GRAIL>
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GRAILはきづきあきらだけではないのだなあと感心した一作。彼女のいる男を好きになってしまった少女が主人公。ふとした機会に一瞬だけ通い合う彼と少女のココロ。ミリペン系の均一で乾いた描線の絵柄もいいが、コマ割りもなかなかうまい。見せ方を心得ているなーという感じの実力派。カケアミ系の絵柄に俺は弱い。
平凡なサラリーマンと、彼に恋して陸にあがった人魚の物語。この人の場合、前にも指摘したことがあるが、人物の描き分けがうまくないのは欠点。ただ、今回は似たような感じのキャラクターが一組しか出てきていないので、そんなに顕著には感じない。それよりもやはり線が細く、涼やかな絵の打つ草が目を惹く。ノンブルがなく数える気はしないが、ページ数もかなりのものがあって読みごたえあり。
【同人誌】「海月/エンタテインメント。」 西村竜 <ちくちくNET>
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わりといつも買ってしまうサークルさん。授業をさぼっていつも校舎の裏(だと思う。後述するが背景があんまりちゃんと描かれていないのでどこなのかよく分からんのだ)でぼーっとしている女の子と、なぜかときどきそこに来るようになった謎の青年が、いろいろとお話をしながら少しずつ惹かれあっていくというお話。すっきりとした清潔感のある人物の描線は好み。ただ、背景が全然ダメなのは惜しい。ただ定規で引きましたって感じの何を表してるのだかよく分からない直線の山は残念。もうちょっと舞台とかがちゃんと分かるともっと面白く読めそうなんだけどなあ。
【同人誌】「月野が原に紅茶の香り」 水海大地 <虹石商店>
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趣味で喫茶店を兼業している鉱石商のお兄さん(絵を見るとお姉さんみたいだけどどっちなんだろう)・トウヤを主人公とするシリーズ。トウヤの元に持ち込まれた虹色の光を放つ鉱石のシーンなどは、一つ一つ色鉛筆で虹色が塗られていて少部数の同人誌ならではの手作りの味。ファンタジックな魂を感じる、爽やかに柔らかな雰囲気を持った作品。人などの作画は悪くないが建物などの無機物が苦手など、技術的にはまだまだな部分もあるが、丁寧に作られている感じで好感は持てる。
【同人誌】「未来の恋人たち」 犬上すくね <ワーカホリック>
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ヤングキングアワーズなどでも活躍中の犬上すくねの作品。生涯好きでいられる人としか付き合いたくないという女子中学生と、彼女に告白した隣の席の少年のドタバタラブコメ。幸せで甘たるくて、でも爽やかでくすぐったい一品。なんといってもこの中学生的他愛ない恋愛模様がかわいらしくていいのだ。絵のかわいさもさすが。気持ちよく読める。
97年7月発行の本なんでちょっと古いけど持ってなかったので買う。山名沢湖の絵を初めて見たときは「かわいいけど平板で、同じようなアングルばかり」っていうイメージがあった。で、しばらく気になりつつも買ってなかったのだが(俺がコミティアに行き出したころは一番本が売れていたころだったらしく、混み合っていたのも買ってなかった要因)、実際に読んでみると面白く「ごめんなさい」という感じだった。キャッチでキュートでチャーミングな絵柄と、詩心を感じさせるネームがとてもいいし、空白が多くてガランとした画面構成も作風に合っているし読みやすい。少ない言葉で大きな余韻のある作品を描ける人だ。
【同人誌】「ボンデージ・フェアリーズ ラフスケッチ集」 昆童虫 <PINHOLE>
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久保書店から「ボンデージ・フェアリーズ」の再版がスタートした昆童虫(11/14の日記参照)のイラスト集。イラスト集だけにあんまり面白くはない。ちなみに昆童虫本人がいたのでちょっと聞いてみたところ、「ボンデージ・フェアリーズ」の前に出ていた「FAIRIE FETISH」のほうは再版されないらしい。うーん、惜しい。虫が嫌いでない人にはかなりオススメの作品なんだけど。
【同人誌】「走りっぱなし」 SAI2CO笹井 <ガソリン>
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掲示板にもときどき書き込んでくださるガソリンのSAI2CO笹井さんの本。なんか「さいさいこ」と呼ばれると恥ずかしいので、笹井という名前もくっつけたとのこと。俺も人前で「我執院さん」と呼ばれるとなんか気恥ずかしいところはあるので気持ちは分からないでもない。
SAI2CO笹井(レビューモードなので敬称略)の漫画を読むのはこれが初めて。Webでイラストは見てうまいとは思っていたけど、紙媒体で見るとまた違った味わいがあっていい。ちょいと乱暴にひかれた強弱のついた線が白黒だとより黒々と見えて、画面上で見るのより映える感じがした。作品は最初の4ページがなんかわりとほのぼのした部室での1シーンを描いた青春モノのようで、「短いけどええ感じのお話だな」と思っていたら、次のページでいきなりタッチが変わり、なんか変態的な格好をしたキャラクターが暴れるアナーキーな展開に。よくいえば勢いがあり、悪くいえば支離滅裂な作品。でも非常にいい雰囲気は持っていて、読んでいて楽しいことは確か。長いのを読んでみたい人。
【同人誌】「8bit」 <8bitプロジェクトチーム>
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「密・リターンズ!」「きりん」の八神健主催の作品集。八神健の絵は相変わらずアクがなくサッパリとしていて気持ちがいい。妙に頑な態度を取る男子小学生と、彼の近所に住んでいて周りのことを気にしてビクビクしてばかりいる女子中学生(たぶん。高校生ではないと思う)のお話。彼女が少年から取り上げたH本を見てオナニーしていたら、幽体離脱してしまって……というわけで、お得意の離魂ネタは健在。眼鏡ッ娘である少女がかわいい小品。あくまで小品という感じ。
かわいい絵柄なのだけど、作風はシニカルでブラック。「殺人」をテーマとして、メッセージ性の強いショートストーリー、それからトークが詰まっている。何やらむき出しの刃物のような、そんな危なさ、痛々しさをはらんだ本。メッセージ性が強いわりに漫画が説教臭くないのは、漫画部分は皮肉だけにとどめて、直接的なメッセージはトーク部分にまとめられているせいもあろうか。
【同人誌】「アノマロカリスの夢」 蜈蚣Melibe
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今回のコミティアはわりと規模が大きかったせいか、プロの作家の参加も多く見られた。そしてその中で俺が最も狂喜したのが蜈蚣Melibeである。何種類も本を持ってきていたので、「ここにある奴全部1冊ずつ下さい」攻撃をかけた。コミケに行ってない俺としてはこのチャンスを逃すわけにはいかなかったのだ。
まず「人形〜夜」シリーズは、「バージェスの乙女たち」でおなじみの有機人形たちのお話である。口唇奉仕に特化するために、性器や肛門、目などを全部縫いつけ四肢を切断するという改造を施されたフェラチオ専門ドールなど、強烈な世界を描いている。しかし、それでもそこからは愛が色濃く感じられる。奇矯な姿をしてはいても、蜈蚣Melibeはそれを美しいと思っているのだろうし、実際に作り出したキャラクターたちを愛しまくっているのだと思う。だから読んでいるほうもただのSMに終わらない味を感じることができるのだ。94年発行の「人形初夜」では、その時点でデザインの決まっていがバージェスドールたち17体ほどが掲載されている。ドクター・バージェスの生い立ちなども描かれていて、この世界への理解を深めることができる。この有機人形ワールドは、フラミンゴに発表された分はまだ氷山の一角みたいなものだったのだなあと驚嘆。
「木の上の猫姫」は第153回ヤングジャンプ月例新人賞佳作、ベアーズクラブ92年夏号掲載作品。ドクター・バージェスよりも前の時代に、獣を人間化、人間を獣化する研究をしていたドクターが主人公。ドクター・バージェスの原点にも近いキャラクター(後書きによると、それ以前の作品に出てきたものからドクター・バージェスが生まれるまでの中間的存在らしい)。
「アノマロカリスの夢」は有機人形モノも一作含んではいるが、あとの2作は蜈蚣Melibeが昔青年誌や少年誌で描いた作品。スゴロクにかける学生たちの熱く馬鹿馬鹿しいドラマ(小学館新人漫画大賞最終審査落ち)やら、マネージャを強姦した野球部のレギュラーに対して控えの選手たちが反旗をひるがえして勝負をいどむ熱血野球漫画(ヤングジャンプ月例新人賞奨励賞)など、今の作風から考えると信じられないような作品。わりと細かい作品リストも付いているのだが、1980年代初頭からまとまった漫画を描き始めたようで(雑誌に掲載され始めたのは1987年ごろから)、キャリアはかなり長いらしい。
【同人誌】「ディムロイドの日々」 飛海ねこ <ろざりお>
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蜈蚣Melibeのところで一緒に売っていた本。蜈蚣Melibeの有機人形世界に題材をとったほのぼの4コマ。完成度は高くないけど、蜈蚣Melibeで本を作ってしまうその目のつけどころにびっくり。
11/22(日)……池部クロ
ちょっと早いが、俺が原稿を書かせてもらっているコミティア系の同人誌サークルPARKINGの忘年会。池袋で呑む。山川直人、黄予美夫妻をはじめ、三五千波、山名沢湖、天野春彦坊といった今まで読者と漫画家という関係でしかなかった人々と呑めてかなり楽しかった。俺は生ビール4杯と日本酒4合くらいを呑んでかなりヘロヘロになり、ふらふらしながら家に帰り着く。で、帰ってきてからまた漫画を読み、そして明日はコミティアに出かけるのであった。
【雑誌】花とゆめ 12/5 No.24 白泉社 B5平
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山田南平「紅茶王子」。体育祭のチアガールのシーンに、わらわらした女子高生の健康的なかわいらしさがあって良かった。今目の前にあることに一生懸命になっている姿ってかわいいよなー。羅川真理茂「しゃにむにGO」。非常に正統派なテニス漫画。力強さから来る気持ち良さが持ち味の男系のスポーツ漫画にはない、上品でほのぼのとした楽しさがある。望月花梨「笑えない理由」は、ギクシャクしていた二人がうまくいってとりあえずはひとまず最終回。といっても新年の第4号にはまた復活するみたいだけど。今回の作品は続きモノを意識しているためか、今までの少年少女の非常に微妙な部分での心の揺れを描いた漫画とはちょいと違う。大きなストーリーがあるのはいいけど、細かな心理描写が消えてしまって少しもの足りなくも感じてしまう。で、次号は最近注目の高尾滋「人形芝居」が掲載されるのでかなり楽しみ。
またしても安寿はなこ(池部ハナコ)目当てに購入。今回の「おはいり…」はコタツを出した女のコの家で、彼氏と彼女が戯れながらセックスになだれ込むという話。なんといってもこの幸せそうな雰囲気がいい。女の身体は妊娠したときに赤ちゃんを冷やさないように脂肪でくるまれてるから、触ってみると冷たいけど中はあったかいということを語るあたりの表現が柔らかで優しくて非常にいい。こういった細やかなところに目を向けるところが女の人ならではって感じがする。あとコタツから顔だけ出してくる女の子が無邪気でかわいい。それから春籠漸「お帰りっ」は、新婚夫婦が近所の人たちとスワッピングする話で、なかなかいやらしかった。夫に焼き餅を焼いて、ほかの男たちとのセックスに流されていく奥さんがいい感じ。心は抗いつつも、夫の目の前でメロメロにされていく様がソソる。っていか、俺は人妻モノってすごく好きなんだーっ!!(力説してもな)
【雑誌】週刊少年ジャンプ 12/7 No.52 集英社 B5平
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鈴木央のゴルフ漫画「ライジングインパクト」が巻頭カラーで新連載。わりと作画がしっかりしていてまあまあかな、って感じ。今後の展開しだい。尾田栄一郎「ONE PIECE」。ダイナミックなコマ割りとのびやかで迫力のある構図。毎度面白いなあ。あと、浅美裕子「WILD HALF」が最終回。
面白いと聞いていたので、古本屋で買ってくる。読んでみた。非常に面白かった。とくに第3話めの名門校で長年教鞭をとっていて現在は年老いて特別講義のみしている女教師と、外部から入学して内部の人たちの閉鎖的な雰囲気に疑問を抱きつつ自分を抑えていた女生徒のお話「早春賦」が非常に良かった。4編の短編が収録されているが、その他の作品も粒揃い。上品で清らかな雰囲気を感じさせる学校世界を舞台に、閉鎖的なその世界をどうにかしてやろうとする女の子たちを描いていて、その雰囲気作りは抜群である。キャラクターたちの心理の揺れなどの描写も見事。もちろん、白い石から掘り出されたような神経質なまでに清潔感のある作画もいい。とっても面白いのでオススメだ。
11/21(土)……猿人(ましらびと)
11/13の日記に書いた松本大洋「花男」の新装版のクリアケース入り版、神保町で見つけたので買ってしまった。11/13の日記では「白の塗料でイラストが描いてある」と書いたが、正確にいうと白の塗料で描いた上に金の塗料が載っけてあるという感じ。松本大洋ページに画像を載っけておきたいところだが、立体物だしそれなりに画像を大きくしないと見えないのでどうしようかな、って感じ。
あと、今日は地元の古本屋に行ってきた。まあいろいろ買ってきたわけだが、俺の知らなかった奈知未佐子の単行本を2冊発見。片方は漫画で読む教科書系のシリーズの1冊で「光明皇后」、もう片方はTVドラマ「キミの瞳に恋してる」をコミック化したもの。いつものおとぎ話調のファンタジックな絵でなく、バリバリの少女漫画調の絵だった。両方ともかなり面白くなさそうだったので買わないで済ました。
【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 12/7 No.51 小学館 B5中
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月曜日が休みなので今日発売である。石川優吾「よいこ」が、前号同様、妙に下らなくて笑ってしまった。ここのところのプロレス編のベタなギャグは、なかなかに切れ味がいい。村上かつら「いごこちのいい場所」。今週も面白かった。フーゾクでバッタリ当たってしまった、親友のお姉さんに近況報告する主人公。気負わず衒わず、着実にお話が展開している。石井達哉「プロファイリング師 朕集院犬清」。今回はすごく面白かった。強引に自分に都合のいい下品な結論に持っていく犬清の詭弁(とさえいえないほどの強引なこじつけ)が爆発である。なんといっても犬清が登場したときのセリフが「スチャワーデスさん…私はプロファイリング師なのです。かっこいいですか?」である。自分のために世界を回してしまいそうな我田引水ぶりが素晴らしい。今週のスピリッツでは俺としては一番面白かった。岩明均「七夕の国」。次回(1/11発売号掲載)で最終回らしい。んー?あんまり盛り上がってないような気がするんだけどなあ。このままで終わりなの?
【雑誌】ヤングマガジン 12/7 No.51 講談社 B5中
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ハロルド作石「ストッパー毒島」。今回で第一部最終回だが、なんとなく勝負があっさりつきすぎた感じはする。でもまあここまで面白かったからいいや。漫画は「始め良ければそれで良し。中が良くてもそれで良し。終わり良くてもそれで良し」だ。最初っから最後までまったく面白くない作品だって世の中にはいっぱりあるんだし、どっか面白いところがあればみっけもんくらいの感じでいたほうが、より楽しく読んでいけると思う。地下沢中也「ギンザ小学校」。今回はなかなかイッちゃった展開。下らなくて強引な展開が面白かった。そして平本アキラ「アゴなしゲンとオレ物語」。今回もまたムチャクチャにアブない。ゲンさんとなじみのパブ喫茶のママが、お互いにエスカレートさせ合いながら魂の叫びを挙げる。ゲンさんをも食うほどの、強烈にテンションの高いママがすさまじい。恐ろしい漫画である。かたぎりわかな「しすたあモルヒネ」。回を重ねるごとにギャグのテンポが良くなってきている。姉の脈絡のない行動、言動がいい。かわいい絵なのに、当たり前のように異常な展開をして楽しい。イダタツヒコ「HeRaLD」は今回で最終回。来年の1月7日単行本上下巻が同時発売とのこと。さほど怖くはなかったが、イダタツヒコの絵の上達は感じられた。またその内登場してほしい。
今回はあんまり面白くなかった。いつもよりも濃さが足りない。慣れの問題でもあるけど、今回は全般的にちょっとテンション低めだったのも確かだと思う。本当に臭いが漂ってくるような作品が少なかった。今回は北原武志、駕籠真太郎といった強烈どころが掲載されてないのも一因だろう。
巻頭カラーは海明寺裕「異境の掟」。今回はどうやら読切の模様。K9になるべき生物「オンナモドキ」を研究する欧米系の女研究者と、その姉の話。妹を馬鹿にしていた姉が、妹の策略によりオンナモドキと同じ烙印やしっぽをつけられ、金毛オンナモドキとして飼育されるに至る。K9とは実はちっぽけな島国に生息する希少種の生物であったことなどが判明してきた。K9世界はじょじょに完成の域に近づいてきている。蜈蚣Melibe「バージェスの乙女たち−アノマロカリスの章−」。これだけ異様な世界を展開しているのに、この人は本当に楽しそうだ。とくにオマケの4コマ漫画のほのぼのぶりが圧巻。天竺浪人「SEASON IN THE ABYSS」。今回はいつもの「便器」シリーズにあらず。暗やみの中で髪を切られたり、かつらをつけたりしながら、いろいろな髪型にされて犯され続ける少女の姿をサイレントで描いている。サイレント劇って俺はあんまり好きじゃないのだが、このお話もちょっと見せ方としては弱い。もう一工夫欲しい。和泉慎太郎「みんな、優しく……」はスカトロ的意味合いでは、今回最も臭そうだった。細い線で描かれたウンコの姿がかなり生々しい。古賀燕「八月の濡れた浴衣」は、丸尾末広、駕籠真太郎、千之ナイフといったところをちょっと思い出させる。昭和初期と思われる時代が舞台で、少女がヘンなおじさんにいたづらされている様を、幼女が覗き見るという構図。まだ絵はそれほどうまくはないが、ねちっこさを感じる線で、雰囲気はなかなかいい。新人ということでこれからに期待。
創刊100号である。ということはもう8年くらい続いてるのか〜。
KASHIみちのく「BURNING」が非常に馬鹿馬鹿しくて素晴らしかった。ご主人様の精液をエネルギーに動いているリッチドール(人型万能ペット)同士が対決するのだが、その闘いのリングがすごい。4辺のうち2辺のふちにはふれると精液を発射するちんぽの小型爆弾を3人ずつ装備、もう2辺にはロープがなく、場外に落ちると3人がかりでレイプされる、という仕組み。どうやったらこんな馬鹿なもん考えつくんだーって感じの、本当に馬鹿な漫画。ものすごく下らなくて、しかも楽しそうで最高だ。KASHIみちのくの作品は大好きである。そろそろ単行本になってほしい。それから馬鹿さ加減では負けちゃいないのが、MARO「デビルリベンジャー」前編である。「ABILITY」でも発揮されたムチャクチャなセンスが素晴らしい。ストーリーは暴力団によって刑事の妻がとらえられ、散々に犯されるというもの。アゴが外れてもいいように麻酔を打った奥さんの口にチンポを3本ネジ込み、「いくらでも噛んでもいいぜ 甘噛だから気持ちいいぐらいだ!!」とか、「三本同時にミルクセーキを御馳走してやれ!」などの、邪悪なのに妙に間が抜けた表現が素晴らしい。
巻頭カラーではマーシーラビットが新連載。タイトルは「PRISONER-IDOL」。アイドルが散々調教され回すというお話になるようだ。この人の実用一本槍な作風は前から好ましく思っていた。せっかく続きものなので、もうみっちり責め抜いてもらいたい。よくも悪くも健康的すぎるセックスになってしまうが、たぷたぷした乳と豊富な男汁はなかなかいやらしい。あと、この人の作品は本当に意味のないパンチラが多く、そういう面でサービス精神たっぷりなのも頼もしい。今回も全ページ中、裸も下着も出てこないのはたった3ページしかないという徹底ぶり。その3ページにしたって、しどけない寝姿とか見えそで見えないスカートの中といったカットはあるのだ。これもまた立派である。草津てるにょ「シリガルママVSお年頃シーフ」。この人の描く乳はデカくてツヤツヤしているところが俺好み。なかなかHな作品を描く、最近わりと楽しみな人だ。
CUTiE comicに掲載された「釦」全3話、「OPUS XVI」「スタハノフ運動」を収録した作品集。表題作の「釦」は、カッコイイけど女たらしでちょっと性格の悪い男・高口、彼が実は好きなのだけど素直になれない春名、そして春名の親友の京の3人の、掛け違えた釦のようにすれ違う思いを描いた作品。春名は高口が好きなのだけど、京に頼み込まれ高口との仲を取り持ってしまう。京と表面上は仲よくしつつも、心の整理を付けられない春名は高口と肉体関係を持つ。それぞれが仲よくしているように見えながら、3人の心の亀裂は広がっていく。華麗で耽美的でヴィジュアル系な絵柄がかっこいい。しだいにギクシャクしていく男と女の心理がうまく描けていて面白い。ただ、男女関係があまりにかっこよすぎて、なんか遠い世界の話のようにも思えてしまうことも確か。よくできてはいるんだけど、もう一押しの迫力が欲しいところ。
【単行本】「西遊記」地の巻 藤原カムイ NHK出版 A5
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11/19の日記の少年チャンピオンの項で、「西遊記」ものの作品に成功例が少ないみたいなことを書いたばかりだが、これもタイトルどおり西遊記モノで、1冊まるまる描き下ろしのオールカラー単行本である。NHK出版では安彦良和「JESUS」なども同じように描き下ろしオールカラーで出している。
で、読んだ感想だけどなかなか面白い。石から生まれたサルが、ほかのサルを従えてその王になる。そして、その幸せがいつまでも続くことを願うようになり、不老不死の法を求めて仙術を学ぶ。並外れた力を手に入れたサルは、悪行を見かねた天帝によって天界に召されるが……というところで地の巻は終わる。よくある西遊記もののように、孫悟空が三蔵法師に出会うところから始まるわけではない。というか地の巻ではまだ三蔵法師も出てこないのだ。このゆっくりしたペースに、本気で西遊記に取り組もうという意気込みを感じる。実際に岩波文庫の「西遊記」(小野忍訳)を底本としており、また参考文献も豊富で、知識に裏打ちされた重厚な話作りになっている。
そしてなんといってもいいのが、オールカラーで描かれた絵。ときに雄大に、ときにコミカルに、奥行きを感じさせる美麗な画面になっている。悟空のキャラクターもイキイキとしていて、生意気だけど憎めない。雑誌ベースでないということもあり、急場しのぎでその場を取り繕おうとするほころびもなく、非常に完成度の高い仕上がりになっている。これからの展開が非常に楽しみになる一作。次は天の巻(1月上旬発売)らしいが、何巻まで続くのだろうか。このお話のペースからいうと、かなりの巻数いきそうな感じだが……。
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