◆ 1998年12月下旬 ◆

12/21〜31
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12/31(木)……98年漫画おさめ

 98年もこれでおしまい。で、98年に読んだ漫画の総数を数えてみた。なお、立ち読みは当然除いてある。俺日記を元に計算したのが以下の表。

雑誌単行本同人誌
1月53480
2月637232
3月103940
4月115671
5月968028
6月100720
7月102730
8月963830
9月994626
10月107471
11月943724
12月915226
合計1119726168
月平均93.2560.5014.00
日平均3.071.990.46

 このほかに、画集とかアンソロジーとかがちょこちょこ。この程度読んでいる人は、世の中は広いし、たぶんけっこういると思う。ただ、全部感想書いたというのは自分でもまあよくやったのではないかと。
 思えば、98年はホームページ制作と原稿書き(を少し)と会社での仕事に明け暮れた1年という感じだった。とくにホームページ制作に関しては、こんなに一生懸命になって何かをやったのは、俺の生涯のうちで初めてのことかもしれない。俺は学生時代はわりと小賢しい奴だったのであんまり頑張らなくても勉強はそこそこできてしまったし、運動はハナから才能がないと諦めていた。会社の仕事なんかは必要に駆られてやっている部分が大きい、かどうかはよく分からないけどそういう側面があることはたしか。自分から進んでこれだけ継続的に情熱を傾けたことはなかったような気がする。だから今、俺様、青春真っただ中な感じである。毎日更新し続けられたというのも、自分としては自信になったし。ただ、おざなりにしか書いてなかった部分もけっこうあり、自分の文章にとくに自覚的になったのは98年も後半に入ってからだった。99年はもっともっとギッチギチに、根詰めまくりの一年にできたらいいなあと思う。こういうことをやみくもにやっていられるのも20代の間が限度ではないかと思うので、その間は完全燃焼してみようかと。弱まっているヒマなんて、ないのだ。

 あと、集計ついでに今年のOHPのアクセス数累計。俺以外の人が見てもうれしくもなんともないとは思うけど。この1年の間で、1月と12月を比べると1日あたりのアクセス数が3倍以上になっていて、こんなに伸びていいかしらという感じ。でも10月以降の伸びはあんまりないので、アクセス数もそろそろ頭打ちかなあとも思う。

日数アクセス数1日平均累計
1月31日3519113.5211316
2月28日3481124.3214789
3月31日3794122.3918583
4月30日4783159.4323366
5月31日6472208.7729838
6月30日7371245.7037209
7月31日8866286.0046075
8月31日8567267.3554642
9月30日9872329.0764514
10月31日11281363.9075795
11月30日11246374.8787041
12月31日11809380.9498850
合計365日91061249.48

 それでは30日のコミケで買った本。今回はあとは月下工房#書評系のサイトウマサトクさんの「APFSDS#0.1」と、中山明宏さんの「創廃刊リスト96〜98」を購入したが、こちらはまだあんまり目を通していない。ご両人ともご挨拶させていただこうとは思っていたのだけど、行ったときにはちょうど席を外されていてお会いできず。残念。まあサイトウさんとはわりとよくお会いしているし、中山さんともそのうちお会いする機会はあるだろう。あと、永野のりこFC「電波の友5」も購入したが、こちらも読むのに時間がかかりそうなので手をつけていない。

【同人誌】「おんなのこたち」 はしもとさちこ
【同人誌】「SF少女エス子ちゃん特別編」 はしもとさちこ
 ほのぼのSF系の、吾妻ひでおを想起させるような絵柄を持っている。「おんなのこたち」の最初のころのほうはなんとも絵が古いのだが、それは1986年〜1992年の作品をまとめたものなのでいたしかたない。最長で5ページくらいの短篇の寄せ集めなのだが、短いながらもおんなのこのちょっとした、そして不思議な心理を描いていてけっこう楽しめてしまう。それから「SF少女エス子ちゃん特別編」は、走り描き的作品なのだが、短時間で仕上げられているだけあって、ノリが良くて勢いがある。力の抜けた絵柄だけど、SF的なものに対する愛が感じられる暖かさを持っている。これははしもとさちこの「SF少女エス子ちゃん」「エフ子ちゃん」に共通することなのだけど、長年SFをやってきた人ならではの年輪を感じさせる暖かい視点がなんとも気持ちいい。この人は子育て漫画も描いていたが、「ほかほかごはん」収録作品のようなSF魂を強く感じさせる作品もある。楽しんで描いている感じがうれしい。

【同人誌】「青ラヂヲ」 夜凪 <猫ラヂヲ社>
 ちょっと冬目景的な絵柄で、スミベタの画面上での強さが印象的。話作りも絵も比較的オーソドックスで、真剣に何かを作ろうとしている気概を感じる。ただ、お話をもうちょっと煮詰めると、かなり行けそうな気がするだけに現在の状態はちょっと歯がゆいところか。ボリュームを増やしたり、分かりやすい表現を模索したりなどなど、さらなる掘り下げを期待。いいものを持っていることは確かだと思うのだ。

【同人誌】「Smiles」#2、#3 きりはらただし <迷画座>
 鉛筆描きの画風が特徴。高校生たちの恋愛のトキメキを、切なく爽やかに描写している。本人は「ときメモの女の子側の視点」と語っているが、ああなるほどなあ、と思う。素直でアクのない画風で、ストーリーもきっちり作られている。なかなか読みごたえのある本。ただ、同時にもらったペーパーにある言葉はちょっと饒舌すぎて、自意識過剰な感もあって、あんまり好きでない。少し読後感に影響してしまって残念なところではある。

【同人誌】「辺境生活」1 ひよこん <すぎぽー堂>
 硬質な線でちょいとファンタジー風味を感じさせるお話で、試しに買ってみた。たしか100円。外で日がな一日絵を描いていた女性が、空から降ってきた竜のうろこを拾ったところから始まる前半はわりといい雰囲気。後半、きっちりオチをつけてくれればあるいはという感じだったが、ちと描写力不足。現状では100円なりの出来だが、今後頑張ってくださいってところ。

【同人誌】「INSTANITY SELLECTION」 <INSTANITY>
 なんか無料配布でもらった本。サークル名もこれで正しいかどうかは分からない。絵的にも話的にももの足らなくはあるが、無料なんで文句はいうまい。女の子の片目が猫目になってしまい、だんだんと全身が猫になっていく「My Eye!」はまあまあ楽しいかなというくらい。ちなみに「SELLECTION」だとLが一文字多いと思うのだが、これは原題のままである。


12/30(水)……有明まんがいち

 ずいぶん久しぶりにコミケに行ってみた。過去の日記を検索してみたところ、95年冬以来のようだ。ということはまる3年ぶりということになる。会場がビッグサイトになってからは初めてだ。ここのところ、同人誌即売会はコミティアにしか行ってなかったのだが、さすがにコミケは人の量もサークルの数も比較にならない。人の山にかなりうっと来た。基本的に創作少年はがーっと全部回り、あとは気になるサークルだけ事前にチェックしてぽつぽつと訪問、という感じ。あんまりたくさん回ってないので、収穫も当然多くない。エロのところは人が多すぎて行く気がせず、パロは元ネタを知らないケースが多いのでこちらも行かず。となると、けっこう回るところは限られてしまった。回ったサークルの数を見ても、コミティアのときのほうが多いくらい。かかった時間は同じくらいだったんだけど。本当は創作少女も回ってもよかったのだが、人ごみに疲れてしまったのではやばやと撤退。結局買ったのは15冊くらいに止まり、自分のパワーのなさを実感。
 エロ系ではしろみかずひさ、海明寺裕、駕籠真太郎(敬称略)のサークルにだけ行った。しろみかずひさのところで「いつもどうも」と挨拶。本は売り切れだったので、漫画の原画を1枚購入。原稿用紙がヤンマガ特製原稿用紙だったのが印象的。海明寺裕は「K9ハンドブック」が置いてあったが、すでに入手済みだったので、K9スタンプとクリアケースを購入。こちらも挨拶。駕籠真太郎のところでは本を2冊購入。単行本について尋ねてみたが、三和出版からも難しそうとのこと。まあたしかにあの内容ではアナーキーすぎるわなあ。というわけで、駕籠真太郎の作品を読みたい人はますますしっかり雑誌をチェックしなくてはならないということだ。知り合いのサークルの人にも挨拶してこようと思ったのだが、ちょうど留守にされてた方が多く、会えずじまい。ちょっと残念。あとコスプレねーちゃんはもっとじっくり見物してくれば良かったかなあと思った。
 総じて俺の漫画の好みからいうと、労力対効果で考えれば、コミティアのほうが明らかに効率がいい。空いているしサークル数もちょうどいいのでじっくり見て回れるし。コミケは混んでいるし、広すぎちゃってチェックしきれないところがある。ただ、もちろんそれで一概にコミティアは良くて、コミケは良くないなんていうつもりは全然ない。コミティアのほうは創作を意識するあまり閉塞していることは確かだと思うし、コミケの懐の深さはやはり魅力だ。今回だって、もっと根性入れて回ればもっともっと収穫はあったはずだ。収穫が多くなかったのは要するに、パワー不足の俺側の問題が大きい。とりあえず同人的に弱っちい俺としては、コミケの人混みは荷が勝ちすぎるところがあるので、次のコミケにはたぶん行かないと思う。コミティアくらいが、俺のキャパにはちょうどいい感じ。
 まあ、そんなわけで今日買った本の感想第1弾。

【同人誌】「印度で乱数」2冊 駕籠真太郎
「印度で乱数」というタイトルでB5版のものと、A5版のものがそれぞれ1冊ずつ出ていた。
 B5版のほうは、地球を征服しようとする宇宙人から地球を防衛しようとするレンジャーの活躍を描く。 レンジャーは、宇宙人に改造されると目される女の子を、機先を制して次々に殲滅。宇宙人も復元巨大化光線により女の子を巨大化、蘇生させる。なんといってもすごいのが、あまりといえばあんまりな残虐描写。宇宙人に改造される前の女の子は、ごく普通の一般人なのだが、 殴られ蹴られ、手や足を鋸引きされる。そして死体は放置されるのだが、それが巨大化して蘇生させられ、またしても激しく痛い目に遭う。身体中銃弾でぼこぼこにされたり、火をつけられたり、ローラーで押し潰されたり。そしてその行為が、もう次から次へと死にきらない途中で、電気切れなどの理由で放置されるのだ。そして、死にきれないで苦しんでいる彼女たちを「生き恥をさらしているのです」などと断ずるクールさ。すっげえ〜。
 さらにA5版のほうもこれまたひどい。フラミンゴで描いている大日本帝国モノと同じようなモチーフで、人間の身体を弄ぶブラックジョークの数々。その詳細で、執拗で、とことんまでに底意地の悪い描写は、まさに天才の仕事といってもいい。俺の住んでいるのと同じこの世界に、これほどまでにアナーキーでグロテスクなことを考えて生きている人間が存在しているとは、なんとも驚異的でさえある。面白すぎて読者を選びまくり。同人誌作品は、商業誌作品にもましてアナーキー。グロすぎる。ひどすぎる。ブラックすぎる。クールすぎる。冷酷すぎる。そして、素晴らしすぎる。買えて良かった。

【同人誌】「YELLOW」 きづきあきら <GRAIL>
 コミティアでもいつも買っている人だが、切り絵のようなくっきりはっきりした描線ながら艶があって、ストーリー作りも巧み。いつもうまいなあと感心してしまう。一緒の子供部屋で育った弟に対する、姉の切ない恋心を描いた作品。いけないとは分かっていても、つい着がえを見せたり、好きなお菓子を作ってあげたりして弟を喜ばせようとしてしまう姉。好きで好きでたまらないのに、それを言葉にしてしまうわけにはいかない葛藤。そこらへんの心理描写が実に見事。すっきりとした画面、かわいいキャラクター、読みごたえのあるストーリー。ああ、本当にうまい。

【同人誌】「記憶の枷」 山下真守 <山下組>
 山下組の本を買うのは久しぶり。昔初めて買った山下組の本に、やまむらはじめ(このころは有名ではなかったが)と高山瑞穂が掲載されていて、レベルの高い本だな〜と感心したことがある。それ以来コミケに行くときはいつもチェックするようにしているが、山下真守の作風はかなり好きだ。まっすぐで気持ちのいい絵柄、お話も真摯に取り組んでいる感じで好感が持てる。
 今回は山下真守個人誌。俺としては爽やかで素直な作品の印象が強かった山下真守だが、この作品はかなり暗めな雰囲気。何か忌まわしい過去があったらしく、昔の記憶を封印したまま過ごしてきた少女が、ふとした拍子にその記憶を取り戻してしまい、自ら世界と断絶しようとして殻にとじこもる。そして、彼女の兄が手を差し伸べるが……というところで以下次号。うーむ、まいったなあ。今回の話もなんか面白くなりそうな気配だし、次の号が出るころに通販の問い合わせでもしてみようか……と思ってホームページを覗いてみたが、通販は行っていない模様。

【同人誌】「ナルカワの日々」 こうの史代
 俺がスペースに行ったのは12時ちょい過ぎくらいだったが、今日の新刊ラスト1冊だった。
 B6サイズのコピー誌で、ナルカワという警備員をやっている男と一緒に暮らす女が、ナルカワをボーッと観察する。コピー本ならではのかすれた筆のタッチがとても心地よい。中国の古い書籍の挿絵を見るような、のんびりとのびやかな空気にあふれている。なんともあたたかな空気に満ちた世界がとてもいい。この人は、さらりと描かれているようにも思える背景に水墨画のような味わいがあって、それがまた作品世界の雰囲気を妙に懐かしいものにしている。ペン描きのときもカケアミ描写がとても美しい。風景描写だけでも見せることのできる作家だ。なお、こうの史代はまんがタイムジャンボの12月と1月発売号に8ページずつ漫画が掲載されるらしい。12月発売号チェックしてなかったので、明日にでも買ってこなきゃ。

【同人誌】「ねこよし」お正月特大号 青木里乃ほか
 ふくやまけいこ「まぼろし谷のねんねこ姫」をモチーフにした本。まず作りが凝っている。「なかよし」もどきのレイアウトで、便せんやらきせかえセット、シール、封筒、ぬりえといった付録が付いていて、製本もかなりしっかりしている。そして内容がこれまたいいのだ。
 まずはむらかわみちお「大団円だニャの巻」は、なんと「ねんねこ姫」の最終回を勝手に作ってしまっている。道ならぬ恋のためナメクジ系のバケモノに変身させられてしまったねんねこたちの母が、尾花丸に操られてまぼろし谷を襲うという話。ねんねこ、こがね丸たちに対する母の愛、里穂とねんねこの絆が実に感動的に描かれていて、すごくよくできている。ラストの〆も心優しく、かなりジーンと来た。このまま本当の最終回にしたって納得がいくくらい。それから中尾幸容「このごろの里穂ちゃん」もすごく良かった。「まぼろし谷のねんねこ姫」の世界から15年後、すっかり大人の女になってしまった里穂ちゃんと年老いて寝てばかりいるねんねこの日常を描く。ちょっとボケかかったねんねこは昔の想い出に浸り、そして今は白馬でも平次でもない男と付き合っている里穂の生活がバックグラウンドで淡々と進行していく。何か松本大洋がCOMIC CUEでカバーした「ドラえもん」のような、寂寥感とあたたかみのある作品に仕上がっている。たった4ページだけだが見事である。
 このほかの作品も「まぼろし谷のねんねこ姫」という作品に対する愛があふれている。加藤礼次郎による、「ねんねこ姫」のテーマソング(楽譜付き)まで付いていて、実に楽しい一冊。いやー、面白かった。これで600円は、商業誌だったら高いけど同人誌だったら十二分に安い。

【同人誌】「月の証拠」 草
【同人誌】「Parsley, Sage, Rosemary and Thyme.」 草
 この2冊、これが正確なタイトルなのかはいまいち不明。本の奥付にはそれぞれ、「原色草木図鑑」「植物図鑑」という文字も入ってるし。とりあえず表紙に書いてあるタイトルらしきもので表記してみた。
 後者のほうは「月の証拠」を買ったら付いてきたおまけ本でイラスト集。うまい絵には田中ユキ的雰囲気もあるが、かなり昔のものが多く玉石混淆、というか石多め。「月の証拠」は、父親に月面写真を見せられてそのでこぼこした姿に思わず泣き出してしまった少女が主人公。優しく光る月は、もっと素敵なものでできていると信じたい少女の気持ちが一幕のファンタジックな光景を呼ぶ……というお話。こちらの作品は新しめということもあり、絵もなかなかうまい。ちょっと紺野キタっぽいところのある、端正な絵柄。ラストは切なく美しい。なかなかうまいのだが、もう少しページ数があると、もっと読みごたえがあって良かったのではないかと思う。


12/29(火)……ひとりでみんなを、みんなはひとりを

 そろそろ年内の雑誌も打ち止めということで、買っておいたのだけど処理してなかった分の本に取りかかる。ようやく処理できてホッとするのも束の間。明日はコミケに行くので、未処理の漫画がドドーッと増える予定。まあ正月はヒマだし、チビチビ読みつつ同人誌用の原稿でも書こうと思う。

【雑誌】パイク 睦月 vol.16 ふゅーじょんぷろだくと A5平
 うらまっく「なっちゃんのじょうずにできるかな?」は、今回は一人対複数のご乱交セックス編。実用的にはとても好きなシチュエーションなので、わりと燃える。男二人+女一人というシチュエーションが一番好きだなあ。TAGRO「新オタク大作戦!」。貧相、眼鏡、長髪、生え際薄し、不潔、ニキビ……と、実に生々しいオタクな漫画家先生が、赤裸々に生きていくのをさらけ出す、かなりヤケクソな作品。なんか土壇場で描いたような、乱雑で気持ち悪く大ざっぱでダイナミックなエネルギーが楽しい。

【単行本】「バラ色の明日」4巻 いくえみ綾 集英社 新書判
 連作「who」Scene.1〜3と、読切「赤い月の話」を収録。
「who」のほうは、母が亡くなり父が借金をこさえて逃亡した家の娘・柚子が主人公。彼女は母方の実家に引き取られるものの、実家の人たちになかなか馴染めずしっくりこない生活を送っていた。で、ある日謎めいた男(母の弟と思われる)・融児に出会い、やみくもに彼についていくことを決意する。彼の家で、彼の恋人を含めて3人で暮らすうちに、彼と母の間柄やら、自分の気持ちなど、いろいろなものに柚子は気づいていく。とまあそんなお話。ストーリーはまだ完結していが、少女の心の揺れ、快活さ、それから居心地のいい場所を求める気持ちなどが鮮やかに描かれていて今後の展開が楽しみ。
「赤い月の話」はなかなかお見事な短篇。あるOLが、公園で弁当を食べている最中に、ヘンな男に「ユリカ」と呼びかけられる。しかし、彼女はユリカではなく、佐川琴音という名前だった。彼女は同僚の吉田という男に好意を抱いていたのだが、しだいに「ユリカ」と呼びかけてきた男に惹かれていく……といった出だし。前半は不思議な雰囲気のラブストーリーで進むのかと思っていたが、途中で一気にどんでん返し。現実と虚構の境目をゆさぶってくる。ラストの〆も鮮やか。ただ、俺としてはさらにラストでもう一回転させて、さらに読者を混乱させる……といった展開だとさらにうれしかった。
 スタイリッシュで美しく、かつ嫌味にならない達者な絵柄と、すっきりと読みやすい画面。それが実にスラリと描かれていて、うまいなあと感心する。

【単行本】「ディスコミュニケーション学園編」 植芝理一 講談社 B6
「冥界編」が終わって以降のお気楽編で独立。「ディスコミュニケーション」は、これから学園編で単行本が1巻、2巻……と出てくるのだろうか。とりあえず次の巻が出るときにはハッキリするだろう。
 お話としては戸川と、もう一人の眼鏡ムスメ、詩水さんが幼児化して学園アイドル活動をする「墜落する夢はしばらく見ない」が、煩悩爆発で面白い。ただ、最近の「ディスコミュニケーション」はなんか妙に張り切って読者に媚びているというか、サービス満点すぎる嫌いがあるので、乗れなかった人にとっては果てしなく寒い展開にも読める。引いちゃうともうつらい。俺は乗れるときと乗れないときがあって、乗れたときはやっぱりいいなあと思う。でも、どっちにせよそろそろいったん連載終わらせて、なんか別の話を立ち上げてくれるほうがうれしい。


12/28(月)……ユーグリッド幾何学

 今日で今年の仕事はおしまい。明日からお休みだ。最近、土日も休日出勤が続いてたし、なんとなく精神的に追い詰められていた感じがあった。っていうか自分で自分を追い詰めていたような気もする。他人そして自分に害意を抱くことが多く不安定な精神状態だった。日記などもダメな文章が増えていたし。でも、ここで一回リセットできそうなんで、せいぜいリハビリすることにしたい。あと、年末には宝くじで1億5000万円ほど当てることにしようと思っている。

【雑誌】ヤングキング 1/18 No.2 少年画報社 B5中
 中西やすひろ「愛DON'T恋」。幼馴染みの二人がついにくっつく。なかなか弾けるような恋愛をしていていいな〜という感じ。佐野タカシ「イケてる2人」では、佐次が新年を控えて小泉の家に押しかける。テンポ良く次々と繰り出されるラブの嵐。ああ、甘い。トロトロなり。吉本蜂矢「デビューマン」が連載再開。ノリ、テンポ、パワー、そのどれも相変わらずとてもいい。酔っ払って、男4人(いつもの3人組+千代彦パパ)が素っ裸になって交わすバカな会話がすごく楽しい。再開して良かった〜。

【雑誌】ヤングキングアワーズ 2月号 少年画報社 B5中
 脚本:田畑由秋+画:余湖裕輝「コミックマスターJ」。人気少年漫画誌の編集部が火事になり、漫画家とJ、編集、アシスタントが総出で1日で原稿をすべてあげる。力ずくで盛り上げるストーリー展開が、今回はなかなか良かった。大石まさる「はあるよこい」。豪雪地帯で仲よく暮らす父娘の物語。柔らかくてポカポカとのんびりした画風が毎度いい。回を重ねるごとにうまくなっている印象。犬上すくね「メガネガネ」。ベタベタに甘甘な恋愛モノ。それでいて、絵はスッキリとしていて、全体に嫌味じゃなく気持ちのいい作風になっている。

【雑誌】快楽天 2月号 ワニマガジン B5中
 なんといってもYUG「12月のうさぎ」だ。淡くて柔らかい、抜群にかわいい絵柄が素晴らしい。うさぎみみ少女と、いつも眠そうでちょっととろい少年の小さな恋の物語。優しくてかわいくて、メロメロになりがちな作品だ。女の子のうさみみの間に顔をのっけて目を閉じるシーンがなんとも印象的。OKAMA「スクール」。主人公の孝幸が、前回ねんごろになった学校の女教師に憧れていた少女と触れ合う。このシリーズはOKAMA作品の中でも、ストーリーがかなり分かりやすいほうですんなり読める。なかなか面白い。
 陽気婢「世界ノかけら」は分かったような、分からないような終わり方ではあるが、雰囲気はとても良かった。自分たち以外の世界と、こちら側の世界の間を、ゆらゆらとしながら生きている人たちの想いを描く。自分は誰とでも分かり合えるわけではないけれど、かといってまったく一人でもない。その状況に居心地良さを見出せるかどうかはその人しだいということか。それにしても、主人公と恋人の女の子がキスをするシーンとか、さりげなく幸せな描写がとてもうまいなーと想う。新人の月野定規「妹の恋人」。高校生の双子の兄妹の妹が交通事故で死亡してしまう。妹とレズの関係にあった女の子は、兄がずっと想い続けていた人だった。彼女は恋人を喪失した重みに耐えられず、その兄を恋人の代用にしようとするが……というお話。洗練されたタッチでなかなか達者な絵。かなり完成度の高い新人という印象を受けた。松本耳子「FUNKY GIRLS」は、幼馴染みだけど昔から反発しあっていた二人の女の子の物語。キャラクターの表情がクルクルと変わって見てて楽しい。


12/27(日)……光ファイバアコミュニケイション

 ホームページ名を「日本OHP」から「日本オーエイチピー」にしてみた。だいぶ中小企業っぽくなってきた。

 サッカー天皇杯。横浜フリューゲルスが鹿島アントラーズを下して決勝進出を果たしてしまった。試合は観てないのだけれど、なんだかすごい展開になってきた。この状況から見て、もう優勝するしかないでしょ。今、フリューゲルスはどこで試合やってもホームゲーム状態だし。やはり今年は横浜の年だったみたいだなあ。それにしても考えてみればフリューゲルスは、Jリーグ発足後、天皇杯は3回めの決勝進出。リーグ優勝はないけど、一発勝負にはなぜか強い。

【雑誌】きみとぼく 2月号 ソニー・マガジンズ B5平
 藤原薫「おまえが世界をこわしたいなら」。血の気の感じられない、まるでフランス人形かなにかのような絵柄がなんといっても目を惹く。暖かみを排除した、硬質で耽美的な絵柄はそれだけですでにミステリアスで静かな狂気をはらんでいる。そしてストーリーもまた、悲しい雰囲気を持っていて引き込まれる。氷のように冷たく妖しい魅力のある作品。連載第2回めだが、これからも期待できそう。うまく行けば一部でブレイクするのでは。架月弥「チョコの歌」。圭都がいったん田舎に戻るが、芸能人となってしまった圭都はなんだか周りとギクシャクしてしまう。過剰なネガティブシンキングで、面白いようにあれよあれよと事態を転がしていく圭都の姿が見てて楽しい。それから主線をほどけさせていくような架月弥の絵も相変わらず魅力的。それから雑誌の端々でちょこちょこ描いている植木家朗がなかなか楽しくていいなあ。

【雑誌】コーラス 2月号 集英社 B5平
 小沢真理の読切が掲載。タイトルは「胡桃」。ストーカーに悩まされる、売れっ子の新鋭小説家のお話。愛ゆえの狂気を描いたミステリアスなお話で、なかなか読みごたえがある。でも、展開はちょっと安い感じがしなくもない。くらもちふさこ「天然コケッコー」。軽妙に交わされる会話の間、テンポが非常にいい。緩急を巧みに使い分ける技巧が見事。そのだつくし「女の花道」は、キャラクターの表情がくるくると変わって見ていて楽しい。OLがわりばしくわえたままぼえーっとしたりする自然体ぶりがいいと思う。サバけた感じの絵柄も魅力。吉田まゆみ「くしゃみ3回」。骨太でがっちりと読ませる、少女漫画系ではわりと珍しいタイプだと思う。青年漫画に「演歌の達」あれば、少女漫画に「くしゃみ3回」あり。どっちも味わい深くて面白い。女バーリトゥード戦士の、セックスありのラブストーリー、もんでんあきこ「竜の結晶」は、毎度なんだかすげえ世界だなーと思う。女闘士の世界を色気たっぷりに、しかもスピリチュアルに描く。こういう世界って本当はもっと汗臭くて、豪快でむちゃくちゃなノリなんだろうなーと思うのだけど、これだけ思い込みたっぷりに美化しまくられると立派でさえある。

【雑誌】少年エース 2月号 角川書店 B5平
 木村ひかげの読切「ホットストリーム」を読みたくて購入。年中、冬に閉ざされた宇宙ステーションで銀河鉄道の発着を見守り続けていたおじさんと、列車を待つ少女がほんの一刻語り合う。寒流に乗ってやってくる無数の氷の粒がキラキラと輝くのを見ながら、少女が未来に思いを馳せるラストシーンはファンタジックで美しくてなかなか良かった。しんしんとした冷たい世界の中で繰り広げられるほんのり暖かいお話。木村ひかげは前に読んだときも、けっこういいなーと思った人なんで、もっともっとたくさん作品を描いてくれるとうれしい。巻頭カラーではCLAMP「エンジェリックレイヤー」が新連載。都会に初めて出てきた少女が、「エンジェル」と呼ばれる機械人形を操る格闘技を見てたちまち心を奪われ、自分でもエンジェルを操ってみたくなる。エンジェルは卵型の容器に入れられて販売されているおもちゃで、素体(ドール)と呼ばれる人形を自分で好みの姿に改造して操る。要するに「プラレス三四郎」みたいなものだ(古くて申しわけない)。どのくらい面白くなるかはこれからの展開しだいだけど、とりあえず達者でかわいい絵柄はなんといっても魅力だ。この絵がある時点でもう一歩リードって感じ。


12/26(土)……コッパミ人の恋

 今日はLaLaを買ってきたので「カレカノ」を読んだわけだが、アニメのほうはまだ一度も観たことがない。普段テレビを視る習慣がまったくといっていいほどなく、新聞のテレビ欄も全然見ないので、やってるってこと自体忘れちゃってんだよなー。
 で、余談になるが、漫画とアニメって絵でストーリーを語るってことで、例えばサーチエンジンなんぞでも一緒のカテゴリにまとめられてしまいがち。でも俺の感覚でいうと、漫画とアニメってユーザー層は案外重なってないって気がする。っていうか、俺の知っているディープな漫画読みの人たちって、たいていアニメはあんまり観ていないし(観ていても特定の作品に偏っているケースが多い)、逆もまたしかり。両方において、それなりのディープさを誇る人って業界人以外ではそんなに多くないんじゃなかろうか。やっぱりそれなりに道を極めようとすると、両方チェックしてたら普通時間が足りなくなると思う。
 あと、なんとなくアニメオリエンテッドな人はキャラクターにつくことが多く、漫画オリエンテッドな人はストーリーにつくことが多いような気がするんだけど気のせいだろうか? 漫画でも特定の作品しか読まないタイプの人の場合、キャラ萌えな人も多いが。ひょっとしたら摂取する量の問題かな? たくさん摂取すると、一つの作品、一人のキャラに対する執着は自然と薄くなるし。漫画マニアにキャラ萌えする人が少ないように思えるのは、ただ単に漫画のほうが大量消費に向いているとかそういったことかもしれない。少なくとも俺はまったくといっていいほどキャラ萌えしないタイプ。ただ、俺の場合そんなに友達が多いわけでもないので、一般的な漫画ファンおよびアニメファンの人の生態はよく分からねえから、少ない事例だけ見て判断を下すつもりはないのだけれども。
 それにしてもアニメとか観る時間が欲しいなあ。映画も観たいし小説も読みたいし。「時は金なり」というけど、金より時、だよなあ。

【雑誌】コミックバーズ 2月号 スコラ B5平
 山口譲司「BIRTH」が巻頭カラー。「デビルマン」的なテイストを漂わせた、凄惨な描写がいい。この人は昔からけっこううまい人だったけど、最近また絵がうまくなっていると思う。話自体はよく分からんところもあるのだが、単行本でまとめ読みするとけっこういいかも。ともち「愛をあげよう」では、正午が都をフッてしまう。負けると分かっていた都ではあるけど、決着をつけたってことはそろそろまとめにかかるのだろうか。でもまあともちのことだから、最終的にはみんな幸せにしてしまうんだろうけど。ベタベタではあるのに、なんとなくさわやか。ほんわりとした抜群のヌルさ加減、幸せ気分がたまらない。新顔の坂本一水は、ちょっとシャレた少女漫画系にでもいそうな端正な絵柄。ところどころに冬目景だの山田章博だの、なんかいろんな人の影響を受けてそうな気配を感じる。例に挙げた人たちほどうまくはないけど、まあわりと達者でまとまっている。ちょいと小粒な感じではあるけど。話はコミカルなドタバタ活劇。

【雑誌】ビッグコミックスペリオール 1/15 No.2 B5中
 なんか「4コマフェスティバル」というイベントをやってて、その優秀作にばしみつVIRLMAN「なっちゃんのこと」というのが1ページ掲載されているのだが、これどう見ても中村光信だと思う。あと上川そーやという人もどっかで見たことあるような気がするんだけど。えーと、名前なんつったっけか。思い出せねえ。
 作:坂田信弘+画:かざま鋭二「でんでん虫」。坂田信弘らしく、いつのまにかゴルフの話になっちゃってるし、最後のモノローグも坂田信弘風味爆発。脂っこいんだけど、なんかけっこう読めてしまう。強引に読者を物語に引きずり込む手腕はさすがという感じ。高田靖彦「演歌の達」、岡崎二郎「国立博物館物語」も安定して面白い。スペリオールって地味なのだけど、けっこう手堅く読める雑誌ではある。

【雑誌】LaLa 2月号 白泉社 B5平
「カレカノ」もいい。でも、今月はなんといっても米沢りかだ!「こっぱみじんの恋」。このどうしようもなくストレートでこっぱずかしいノリには脱帽する。熱烈に恋しあっている恋人の男のほうが、町の往来ではずかしげもなく実に爽やかに「シマちゃんは自分がどれだけオレを幸せにしてくれてるか知らないね!?」などと呼びかけるのである。米沢りかって最初は絵に違和感あったんだけど、慣れると濃厚なトキメキ恋愛ぶりが、圧倒されるほどにこっぱずかしくて楽しいなーと思えるようになった。方向性はともかく、濃い作品ってやっぱり好きだ。津田雅美「彼氏彼女の事情」もいつも高レベルで安定してかわいくて面白い。


12/25(金)……つまんねーねんまつ(回文)

 やっとこ98年最後の入稿作業が完了。明日から校了で29日からお休みにする予定。ようやく年末進行にも一区切り。忙しさのせいか、最近なんとなく精神的に余裕がない感じなので、正月休みでしっかりオーバーホールしたい。それよりもなによりも、年末ジャンボ当てて会社やめて隠居したいんだよねー。っていうかするぜ!

【雑誌】アフタヌーン 2月号 講談社 B5平
 うーむ。守りに入っている感じ。次号で創刊13周年らしいが、そろそろ大幅なリニューアルを望む。連載の半分くらいは入れ換えてもいいと思うが。
 遠藤浩輝「EDEN」。なんだかだんだん面白くなってきているような気がする。このお話は連載で読むより、単行本でまとめ読みのほうが面白く感じるタイプだが、連載で読んでて面白くなりつつあるということはまとめ読みしたらさぞイケるに違いない。外薗昌也「犬神」。23がズタボロにされ、そこに史樹が駆けつける。なにやら予断を許さない展開。次号が楽しみ。高橋ツトム「地雷震」が再開。元殺人犯が刑務所を出所して、寄り合って自給自足の生活をするコミュニティが今回の舞台。人を殺した後も生きていかなければならない重みを感じる。最近の「地雷震」はわりとヘナヘナな展開が多いのだけど、今回はどんなもんだろうか。それにしてもこの人の絵はかっこいいなあ。石樹繁井「僕らのヨルは続いてく。」。四季賞の池上遼一賞受賞作。夜中につかまえたタクシーの中で起こったクレイジーな出来事を描いたサイコホラーっぽいお話。セリフのテンポで勝負する、なかなか緊迫感のある作品。濃い絵柄だけどけっこう読める。でもアフタヌーンの読者層にはあんまり合わなそうな暑苦しい作風でもある。あさりよしとお「WAHHAMAN」。クライマックス寸前。息が抜けない重苦しい緊迫感に満ちている。おもしれえじゃねえか! 小原愼司「菫画報」は今回もしみじみ良かった。

【雑誌】ヤングアニマル 1/8 No.1 白泉社 B5中
 おっ、次号で稲光伸二が登場じゃーん。これはなかなかうれしい。
 振り返ってみれば、ヤングアニマルは'98年最も充実していた雑誌の一つだろう。「ベルセルク」景気もあったが、そのほかの作品もスポ根あり、ギャグあり、エロあり、ラブコメあり、格闘あり……といった感じでバランスが取れている。
 高橋雄一郎「EKIDEN野郎!!」。スポ根+恋愛で最近なかなか面白い。主人公のブラコンの妹がなかなか意地らしくてかわいいなあ。文月晃「藍より青し」。ああ、なんか「かわいいお姉ちゃんがいきなり家にやってきて一方的に好きになってくれる」モノの王道だ。ラブコメだラブコメだ。ベタベタでとてもいいと思う。さらに二宮ひかる「ナイーヴ」も併せて読んだ日にゃあ。柴田ヨクサル「エアマスター」。振り向いた瞬間にはエアマスターは跳んでいる。描写がダイナミックで痛快。こいずみまり「コイズミ学習デスク」。女の人は気持ちよさが青天井でうらやましいなあ。

【雑誌】漫画ホットミルク 2月号 コアマガジン B5平
 みかんR「ダメなひと」がまず気になる。上京し、街角で自分の描いた絵を売ってコソコソと暮らしている男・哲朗の元に妹(?)の麻生が一人訪ねてくる。まだ幼い麻生だが、昔哲朗にいたずらされたことがあり、哲朗の元にいくことは禁じられていた。麻生はその後、父にも凌辱され、街角で見知らぬ男どもに輪姦されるなど不幸な生活を送り、最後の頼り場所として哲朗の元へとやってきたのだ。自堕落な生活を送っていた哲朗は、またしても麻生を抱くが……という感じのお話。なかなか絵が達者なロリータ系の作品。いずれ破滅が来ると分かってはいても、それでもお互いにすがらざるを得ない、ダメな男と幼女。その交わりは淫らでかつ哀しい。肉がぷくっーとした、幼女の身体の描き方はホンモノっぽさを感じる。なかなかに業が深い。そして業が深い作品は大好きだ。イデハルテル「赤赤い糸」([赤赤]は一文字)。耽美的な紙をひっかくような描線がかなり独特。女性的な描線ではあるが、エロシーンは肉感的で瑞々しい。G=ヒコロウ「猫神博士3」。今回もノリがよく楽しい。G=ヒコロウはエロ漫画系の本に載っかってる漫画のほうがやっぱり好き。

【雑誌】CUTiE comic 2月号 宝島社 B5平
 '98年といえばこの雑誌の創刊もわりと大きな話題だったんじゃなかろうか。安野モヨコを看板としたシュークリーム系の台頭は目覚ましかった。その中でもCUTiE comicはレベル的に一つ抜きん出ていて、一人勝ちって印象もある。オシャレ恋愛系のハイレベルな作品が揃っていて読みごたえがあるが、似たような系統が揃っているのも確か。一つひとつの作品が面白くとも、連続して読むと食傷気味になってしまう。そんなわけで、これからの課題は毛色の違ったアクセントになるような作品を、全体の高級感は崩さずにうまく取り込むことなんじゃないかと思う。
 安野モヨコ「ラブ・マスターX」。おもしれえ。いろんな人たちがそれぞれに一方通行の気持ちを交錯させ、そのどれもがうまく行かない。ガチャガチャと関係はいっぱいあるのに、それを複雑に見せないのは見事。こういう何角関係にもなっている恋愛モノだと、キャラクターの描き分けやキャラ立ちが甘かったりすると、そこで頭がこんがらがったりしてしまうものなのだが、このお話ではキャラクターにそれぞれ特徴があり立っているもんだから状況が把握しやすい。南Q太「夢の温度」。光の入っていないものうげな瞳がいい感じである。ウエットでないのはもちろん、ドライすぎずクールすぎず。バランスの取り方が実に見事。かわかみじゅんこ「ワレワレハ」。ヒロインの少女・奈真里は、幼馴染みの万に愛されるため、中学入学とともに眼鏡をコンタクトに、歯の矯正をとって、髪型もバッチリ決め変身する。でも、外見だけ変えて中身が弾けようとしない奈真里に、万は「お前はそんなもんじゃねえだろう」と歯がゆい思い。自分たちの出会いを運命と信ずる二人の行方は!?ってなところで以下次号。二人の強烈な確信と向こう見ずな行動が楽しい。絵はちょっと雁須磨子っぽいかな。いわみえいこ「スイカのアイス」。中学校の生活がつまらなくてつまらなくてたまらず、日々空想にふけりながら過ごしている少女が、突然爆発し黒板に自分の名前を大書し「好きなものはスイカのアイスですっっ」と叫んで駆け出す。絵はこの雑誌のほかの人たちに比べるとうまくはないが、やみくもな展開と詩的なネームのセンスはなかなかだと思う。今回のCUTiE comicの中では一番面白いと感じた。


12/24(木)……ぼいん暴食

 クリスマスイヴ。今ごろレインボーブリッジでは1500人の童貞が……。

【雑誌】週刊少年チャンピオン 1/11+14 No.4+5 秋田書店 B5平
 最近のチャンピオンで最も熱く、最もたわけているのはやはり橋本俊二「麻雀鬼ウキョウ」だ。あまりにも稚拙な麻雀勝負と、大げさな演出がばかくさくてとても楽しい。関係ないが「橋本俊二」という字を見ると、つい「榎本俊二」と読み間違えそうになってしまう。田口雅之「バロン・ゴング・バトル」。バロン vs.ゴードンの闘いは、なんと殴り合いで勝負をつけることに。まさにタイマン張ったらダチって感じである。男だ。

【雑誌】モーニング 1/9+15 No.4+5 講談社 B5中
 王欣太「蒼天航路」は、官渡の戦いが最高潮。危機迫る表情の兵士たち、そして当たり前のように生まれていく死。力強く迫力のある描線が、ここにきて本領発揮という感あり。作:西村ミツル+画:かわすみひろし「大使閣下の料理人」。最近とても面白い。本題の料理うんぬんではなく、公に対して積極的にアプローチをかけまくってくるホアが意地らしくてなんともかわいく、くすぐったい。うるんだみたいな瞳の感じが艶っぽくていいのだ。かわすみひろしは女性を描かせるとやはりいいなあ。太田垣康男「一生!」。最近非常に盛り上がっている。力感あふれるボールのぶったたきあいは見ていて胸がすく。気持ちがいい。

【雑誌】ヤングサンデー 1/9+15 No.4+5 小学館 B5中
 佐藤秀峰「海猿」は第2回め。沈みかけた船の密航者を助けようとする大輔の状況はますますせっぱ詰まってきている。自分が死ぬかもしれない、それでも救助に挑むかで大輔の心は揺れる。緊迫感がみなぎる描画と演出。かなり力づくで読ませる漫画であり、最近の新人にしては珍しく骨太で直球勝負。正統派として伸びていってほしい人である。少年誌も合うかも(個人的にはチャンピオンが似合いそうな気がする)。あと、最近では山田玲司「AGAPES」も盛り上がっている。野球のプレーとしては非常にインチキくさいけど、自己を犠牲にして愛する人を甲子園に連れていこうとする姿は胸を打つ。

【雑誌】ヤングジャンプ 1/28 No.4+5 集英社 B5中
 山本康人「打撃天使ルリ」がシリーズ連載開始ということで、2号連続掲載。その2号目。要するに、「打撃マン」の女子高生版とでもいうべき作品。邪悪な人間を描いておいて、ためてためて最後に「だしゃあ」という叫びとともに鉄拳一発殴り飛ばす。一気に力を爆発させる、その一瞬のカタルシスに賭ける作風は「打撃マン」と同様。暴力での解決がいいことか悪いことなのかは措くとして、殴り飛ばす瞬間の描写はスカッとして気持ちがいい。山口譲司「ぼいん」前編。やたらにおっぱいの大きさと形にこだわるおっぱい星人な高校生が、廃墟となった洋館の壁に埋まっていたたぐいまれなる美乳を持つ女性を発見する。そこから始まるドタバタ劇……という感じになるのだろう。今回は主人公の幼なじみ系少女がなんかかわいくていいなと思った。とりあえず次号読んでみて評価って感じだろう。


12/23(水)……マンタマー・ユーゲント

 休日出勤したのに仕事が原稿が来ねえもんだから、ずっとゲームボーイカラーでドラクエモンスターズをやっていた。やっぱりゲームやるなら会社だな。仕事サボってやってるときのほうが、ヒマなときにやるよりも楽しい気がするのはなぜなのだろうか。

【雑誌】マンガの鬼AX Vol.6 青林工藝舎 A5平
 今回の特集は本秀康。本秀康は気になっているのだが、なんとなくピンと来ていない。そのうち、腰据えてじっくりと読んでみるかもしれない。菅野修「玉姫様」が気に入った。やたらに顔だけがでかい、デッサンの狂ったキャラクター。アンバランスながらも細部まで執念深く描き込まれた絵柄は、落ち着いているようないないような、妙な味わいがある。それからなんといっても面白いのが花輪和一「うれしいお正月」。日常会話のように楽しそうに人を殺したときの話をする囚人たち。そして、それとまったく同じレベルで正月のおいしい料理についての話題に花がさく。人を殺すことと、サケ切り身焼き、春雨スープ、ようかん一本の二分の一……といった料理の話題がまったく同等に語られる様子は、なんとも日常感にあふれていて味わい深い。食べ物に関する花輪和一の描写は実に丁寧で執念深い。おせち料理の、コンブ巻やらもりそばやら漬物などといったメニューの内容を延々と紹介し続けるところは、別にギャグをやっているわけでもないのに口許が緩んでしまう。東陽片岡「兄弟仁義」。しみったれた日常と、なんだか生ぬるくもある男たちの腐れた縁。黒々としてジメジメとした絵柄で起こる出来事も人生の底って感じなのに、妙にそれがカラッとしていて楽しそうであったりもする。うだつのまったく上がらない人生でも、自分が満足してさえいればそれはそれで天国なのだ。

【単行本】「電波オデッセイ」3巻 永野のりこ アスペクト B6
 永野のりこはすごい。本当にすごい。できれば封印してしまいたい、中学生的で青臭く切なく孤独でちっぽけな自分様の心のツボを、なんとまあ的確に刺激してくることか。ギリギリまで研ぎ澄まされた、自己との対面の描写。読んでいる間中、切なくやるせない思いに体がシビれっぱなしだった。他人と自分との境を意識し始め、どんどん大きくなっていく自我。そして、閉塞した世界の中でそれを打ち破る力もなく、自分で自分をどんどん煮詰めていく。それを客観視するだけの余裕なぞ、このくらいの年代の少年少女にはない。理想の自分と現実の自分の乖離、それを認めることのできない自分。そして、そうやって悩んで行き詰まっていくキタモリや原さんや、野川さんの姿を見ていると、「自分を客観視」などといってきっと自分をごまかしているのであろう今の自分がなんとも後ろめたくなる。キタモリたちの流す涙はきっと昔俺が流した涙だ……などと、どんどん青臭いことを考えてしまう自分にまた気づく。自分で自分を疎外しようとする自分、過剰なる自意識。こういったものに対する描写は永野のりこ作品には多く見られるが、この作品はその中でもとりわけ表現がダイレクトで純度が高く妥協がない。こういった思いとは無縁に生きている人たちもいるのかもしれないけど、ほっとくと自らさえ滅ぼしてしまいそうなほど強力な自意識と、それをとても受け止めきれない弱い自我がせめぎ合う人間に、どうしようもなく悲しいまでのシンパシーを感じてしまう。永野のりこの表現はそういう人たちにとって非常に重苦しく厳しいものではあるが、そしてまた限りなく優しくもある。

【単行本】「ちいさなのんちゃん」 永野のりこ アスペクト B6
 永野のりこが愛娘・のんちゃんを育ててきた、その愛と笑いとオタクスピリッツにあふれた日々をサンケイ新聞にコツコツ描いた作品。身も世もあらぬって感じで、のんちゃんを愛しまくる永野のりこののたうち回りようが非常に幸せそうで微笑ましい。細かいうえに密度が高いので読むのに時間はかかるが、ときどき吹き出すようなギャグがあったり胸がキュンとなるようなセンチメンタルでリリカルな展開があったりと、実にまあ楽しい作品なのだ。こういうふうに楽しそうにされると、なんだか子供が欲しくなってしまう。そして、「俺が子供作ったら絶対子供のうちから漫画だの小説だの与えまくって、オタク的に純粋培養しちゃうね」とか思ったりする。作るアテもないのにな。まあ作るアテがあったとしても、まだしばらくはいいけど。オタク的教育を施す前にこっちも元ネタを散々仕込んどかないといけないし。俺はまだ、そこに行く途中だ。
 まあそれはともかくとして、自分やら創作物に向かっていた永野のりこのねじくれてパワフルで、時として内に向かい暴走してしまいがちだった愛のベクトルが、のんちゃんのおかげで外に向かい精神的な安定を得たのではないかなあなどと推測してしまったりもする。

【単行本】「幽玄漫玉日記」1巻 桜玉吉 アスペクト A5
 一年間ほど仕事を休んで健康的でかつ自堕落な生活を送ったあげく、お金がなくなってきたことに気づいた桜玉吉はまたしても不健康でかつ自堕落な生活に逆戻り。で、有限会社を作ったりいろいろとやってはいるが、まあお得意かつおなじみのO村&ヒロポンとのトリオで延々と馬鹿なことをやり続ける日常を送っている模様。男三人の爽やかならざるしのぎあい、貶めあいは楽しかったりするのだが、以前よりも若干パワーが落ちている感じは受ける。っていうかこの巻は生活内容に建設的な空気を若干漂わせているせいか、いまひとつ面白くない。といっても、桜玉吉が読者の女子とデートするO村を追跡する話だとかの、手が込んでいてなおかつ一銭の得にもならなそうな行為はたいへん面白くはある。連載の最近の展開はかなり突っ走ってて面白くなってきてはいるので、続巻に期待ってなところ。

【単行本】「幸福の丘ニュータウン」 細野不二彦 小学館 A5
 外から見れば、幸福そうな、でも心の中に絶望的な暗闇を抱えた団地妻たちの姿を描いた、サイコホラーテイストの短編集。さすがに細野不二彦だけあって、一編一編手堅くまとめてあり仕事師ぶりを感じさせる。でも、テレビの1時間ドラマにでもありそうな安っぽさを感じるのも確か。そして、安っぽいなら安っぽいなりの作品を描いてしまう細野不二彦の腕前にまた感心しつつも、そんなに面白いとは思っていない自分をも同時に感じてしまう。


12/22(火)……赤い頭をマルクスる

 ちょっと前に、気が向いてサイト名を「OHP JAPAN」にしてみたが、今日また気が向いたので「日本OHP」にしてみた。なんとなく法人みたいでいいかなあと思うのだが、どうだろう。ちなみに気が向いたらまた変えるつもりなので、リンク張ってくださっている方はリンク先名称とか変えないで全然かまわないです。っていうか変えていただいちゃうと申しわけないような。

【雑誌】フラミンゴ 2月号 三和出版 A5平
 今回のフラミンゴは非常に良かった。満足。駕籠真太郎、北原武志、町野変丸海明寺裕天竺浪人白井薫範……うーん、ゴージャス(もちろん俺にとって)。
海明寺裕「めしべのアルバム」前編はペットショップで買われてきたK9母子と、2頭をしつける少年のお話。今までのように人間だったと思っていた者が調教されるのではなく、最初から社会システムにしっかりと組み込まれたK9の姿が描かれていて、この世界もさらに堅牢になってきた感じがする。蜈蚣Melibe「バージェスの乙女たち−アノマロカリスの章−」。しょっぱなで延々尾崎豊「卒業」の替え歌をやっていたり実に楽しそう。その後、バージェスのすさまじい過去についての描写もあり、いきなりシリアスに。そして、バージェスはアノマロカリスのもとへと向かうのだ。世界観は異常であっても、ここには一つの愛の形がある。それはすでにかっこいいとさえ思える。
 北原武志「FRIENDS」。今回も陰湿なイジメは延々と続く。実に臭そうな体液の匂い漂う調教、全然色っぽくなくただ嫌悪感のみがあふれる描写など、見ていて本当にツンとくる。物語はそろそろ終わりそうな雰囲気だが、単行本待ってるぜ。駕籠真太郎「満州国最期の日」。恒例の戦争モノシリーズだが、このシニカルでブラックな視点。執拗に続くグロテスクな描写。そして底意地の悪いクールな笑い。素晴らしい! 淫乱なアメリカ女でさえ「勝つまでは欲しがらな」くしてしまう日本精神の具現である人糞、日本精神あふれる糞を発射する巨人兵器、さらには人を赤く染める共産便。自由主義便もいりまじり、糞が飛び交う一大ページェントが展開されるラストシーンはあまりにもイカれていて感動的でさえある。駕籠真太郎、サイコー!負けたぜベイベー! それから白井薫範「笑ってぶたぱん」は今回最終回。嬉々として調教されるぶたぱん、そして彼女を調教するきつねとの歪んだ、けれども強い愛。いやー、スゲエスゲエ。自ら人豚の道を極めようとするぶたぱんの目の輝きには慄然とさせられる。

【雑誌】ドルフィン 2月号 司書房 B5中
 今月はKASHIみちのくが描いてないのがちと残念。
 MARO「デビルリベンジャー」後編。ああ、やっぱ、MAROはバカチンだ。楽しい。お話としては、ヤクザに逆恨みされた刑事が奥さんを拉致されて、奥さんはヤクザに麻薬を打たれて犯されまくる一方、刑事は復讐に向けて燃えるって感じ。セリフの間抜けさ加減がとてもいいのだ。今回も「オラ喰らいな!濃い精子を!!」っていうところで、「濃い精子」に「ヘビーザーメン」とルビが振ってあるのを見た瞬間に思わず吹き出してしまった。そしてラストの腰砕けなオチ。たまらん。横山ミチル「痴漢環状線」。ああ、こりゃまたモロに八神ひろき「G-taste」の影響を受けてますな。草津てるにょ「…in the darkness」。「目が見えなくなった」と偽って、愛想をつかして出ていった夫の弟を家に呼びつける、そばに人がいなくては生きていけない弱い女の哀しいお話。この人って実用一本な人なのかと思っていたのだが、こういう陰鬱なお話も描けるのだなあと感心。絵も描線がだいぶシャープになっているし、伸びているなあという印象。みやびつづる「艶母」は最終回。結局のところ、奥さんは息子の性に溺れまくってラスト。予想された結末ではあったけど、実用性はバッチリだったのでこれで良し。っていうかこのお話の場合、結末の出来よりも途中経過で抜かせてナンボでしょ。

【雑誌】コミックアルファ 1/7 No.1 メディアファクトリー B5中
 やはり山川直人目当て。今回の「早すぎた男」は、超能力を使えるのに手品師の道を選んだ男の話。超能力が超能力と意識されない職業を選んで能力を無駄に浪費することによって、自分の人生を退屈にしたその能力に対して反逆する。ほのぼのした絵なのに、哀愁が漂っていていい感じだ。それから知らない間に古谷三敏とファミリー企画が連載をやっていた。タイトルは「タンポポ橋わたれ!」。田舎に住む老夫婦ののんびりとした日常を描く。おじいさんのほうが、山に向かいながら「桃太郎」のおじいさんはなぜ山に行かなくてはならなかったのかということを考察したりしてるところがいいなと思った。俺もこういう役に立たないことを考え続けていたいもの。枯れた味わいと静かな暖かみがある作品。作:安刀乱地巣+画:バロン吉本「シャイニング」。哀愁に満ちたおじさんプロレスラーの生活を描いた話で、浪花節的展開もいいのだが、最後のどうしようもないダジャレがかなりうれしかった。やたら濃い絵と下らないギャグのコントラストが楽しい。

【雑誌】ヤングチャンピオン 1/12 No.2 秋田書店 B5中
 山本夜羽「マルクスガール」が新連載。ストリートで絵を描いている女の子と、彼女の絵に一目ぼれして都会に出てきた少年の出会いがまず描かれる。その後、少年は彼女の部屋に行くが、「世の中を変えたい」という彼女の部屋の壁一面に描かれていたのはマルクスの顔……というわけで、何やら山本夜羽らしい説教くさい展開も待っていそうだが、女の子はいつになくグラマーで乳が目立つ。完全に説教しないか、有無をいわせないくらい説教しまくるか、どっちかに徹底すると面白くなるのではないかと思う。村生ミオ「サークルゲーム」は、ありさがいなくなったと思ったら一難去ってまた一難。また悪夢が始まってしまうらしいのだが、今までだって十分悪夢だったような。富沢ひとし「エイリアン9」は巨大エイリアンが去るが、何やらこれからに余韻を残しそうな展開。何が起こるかまだ得体がしれず、毎回楽しみだ。

【雑誌】ビッグコミックオリジナル 1/5 No.1 小学館 B5中
 テンマたちの行く先にヨハンがまたもや先回り。女装したヨハンの柔らかい笑顔からその奥の闇が感じられて、うすら寒いものがある。こういう演出とか、浦沢直樹ってやっぱりうまいなあ。弘兼憲史「黄昏流星群」。ちょっと年増の女性アナウンサーとプロデューサーの不倫話が明るみに。そしてプロデューサーの妻が女性アナのもとに復讐にやってくるというなかなかベタな展開。さてどのようにオチをつけてくるもんなのだろうか。「黄昏流星群」はわりと読みごたえがあって好きだ。

【雑誌】週刊少年サンデー 1/15 No.4 小学館 B5平
 藤田和日郎「からくりサーカス」は、鳴海が過去のことをじょじょに思い出しながら自動人形どもと闘う。鳴海の格闘シーンは、身体一つで闘っているという感じがして、胸がすく力強さがある。彼が闘っているところを見るのはなんとも楽しいねえ。満田拓也「MAJOR」。吾郎は早速その素質をいかんなく発揮している。アナクロな特訓もいかにも少年漫画って感じで燃えるものがある。北崎拓「なぎさMe公認」。ああ、なんかなぎさがヤル気まんまん。っていうかヤルのか? っていうかヤレ、とは思うがヤルまいな。そっちのほうが楽しいし。

【雑誌】週刊少年マガジン 1/10+15 No.4+5 講談社 B5平
 石垣ゆうき「MMR緊急報告 第101の予言」。今回のネタは2000年問題かあ。うわー、こわーい。キャー。塀内夏子「Jドリーム完全燃焼編」は、相手チームのエースがダイナモ・キエフってところが渋くていいなー、と。それはともかく、前回の北村のループシュートは山口の韓国戦の奴がモデルなんだろうな。


12/21(月)……いつからか俺は!

 今年の日記も最後のファイルに突入。最近なんだか日記のファイル容量がやけにデカくなってきて、10日分書くと50KBは確実に超える。12月中旬のなんて78KBと今までの最大記録となってしまった。何をそんなに書いていたんだったっけかのう。というわけでちょっと調べてみたところ、日記だけで98年は今の段階で1.74MB書いていたということが判明した。これじゃあホームページのスペースも足りなくなるわけだ。

【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 1/4+11 No.2+3 小学館 B5中
「ラブレター」の作画を担当した若狭たけしの新連載「合同ナイン」がスタート。野球漫画の模様。実は姉妹校であった進学校と不良校の野球部が、人数が足りないため合同チームを結成することに。両校の仲は正直いって悪く、野球部員もいきなり衝突。といった感じの出だし。これからの展開しだいだが、面白くなってくれればなんでもいい。柴門ふみ「ブックエンド」。大人の恋愛でなく、子供の恋物語をわりとマジメにやってる感じで、けっこういい。柴門ふみは嫌いだけど、作品はそうバカにしたもんでもないのだ。現代洋子「おごってジャンケン隊」。今回のゲストは西原理恵子なのだが、俺がかねてから思っていたことをズバリといってくれた。それは「半年かけて30万負けたくらいでギャーギャー騒ぐんじゃねーよ」ってことだ。いや、そりゃ俺が30万負けたら悔しいけど、こういう企画でやるんだったらそんくらいじゃヌルいかと。こっちが見ていて不安になるくらいシャレにならないことやってくれないと、俺はなんかグッとこない。でも、広く訴えるには安心できる笑いくらいのレベルのほうがちょうどいいのかもしれない。村上かつら「いごこちのいい場所」。今回もとても面白いな〜と思っていたら、なんと次号で最終回。そろそろ単行本出ないかな。あと、作:坂田信弘+画:中原裕「奈緒子」は非常に強引だけど、やっぱり面白いのだ。なりふりかまわぬ盛り上げっぷりが痛快でさえある。

【雑誌】ヤングマガジン 1/11+18 No.3+4 講談社 B5中
 巻頭カラーで古谷実が読切。タイトルは「いつかオレだって」。無職のままなーんもいいことないまま、コソコソと暮らしてきた男、堀田としのぶのうだつの上がらない情けない日常を描いたギャグ漫画。力も知恵も金も容姿も、何も持たないまま生きてきた堀田の姿はおかしくもあるが、哀しくもある。山崎さやか「フローズン」。桃花にまとわりつくかと思っていたイジメられっ子の少女が、実は非常に打算的で卑怯な考えの基に動いていたことが判明。陰湿な妄念がドロドロするさまを、実に淡々と描いている。連載3回目だけど、けっこう面白くなりそうな気配がしてきた。前川かずお「DEI48」。今回も繋ぎ女たちがわけの分からないマヌケなポーズでパフォーマンス。何やってんだ、こいつら。しかも、一気に話をすっ飛ばそうとするかのごとき展開を見せている。小田原ドラゴン「おやすみなさい。」。1500人童貞、ベイブリッジクリスマス破壊計画は、鉄郎の男気により思わぬラストに。鉄郎、あんた最高だぜ。

【雑誌】ぶ〜け 1月号 集英社 B5平
 印象に残ったのは、柏屋コッコ「柏屋コッコの人生漫才」あたり。家の門などをお手製のファンシーグッズやらイルミネーションやらで埋め尽くしている、ステキなおうち&奥さんの話がとくに気になる。俺のウチの近くにもそういう人が住んでいることもあって。俺のウチの近くにあるその家は玄関のところに、「I▽COUNTRY」(▽はハートマークの代用)とか書いてあるダッサいボートとか出してあって、なんだかすごくいい感じなのだ。この漫画は着ぐるみのデザインがあんまりかわいくないところもなんとなくソソる。あとは、全体に「まあまあ」な作品が多いような気がした。突出はしてない感じ。手堅くはあると思うが。

【雑誌】きららセーズ 1月号 秋田書店 A5平
 秋田書店のわりに、垢抜けた感じのかっこよげな絵の人が多いなあという感じ。
 新連載、天堂きりん「レイジームーン」がわりといい感じだった。親友・マナの彼氏・えみつについ惹かれてしまう女の子・ジン。えみつもジンのことを気に入っていて、マナに内緒で関係を結んでしまう。そこから生まれる三角関係……っていうのが今回のお話。あと、この3人にからんできたちょいと生意気な男のコ的キャラクターもちょびっと登場し、これからの展開に対する伏線となっている気配。描線はわりとシャープな感じなのだけれども、女の子たちはいかにも子供っていうかわいらしさもある。上條淳士系(っていうのも失礼だとは思うのだが。思うにこういう系統の絵柄の人は一生「上條淳士に似ている」とか言われるのだろうなあ)のかっちょよげな絵柄である、東山むつき「極上天使」もなかなか。白黒のコントラストの利いた絵柄がかっこいいだけでなく、すっきりした画面で読みやすいのもいい。いしだわかこの新連載「小鳥遊邸の人々」は、「ぺきょおおおお」などという、奇声を発する女の子が無邪気な感じでかわいい。あと、冒頭にある須藤真澄のイラストメルヘン「うさぎ」は、須藤真澄らしいチマチマしたCGが愛らしい。須藤真澄のこの8ページだけ、ポストカードサイズになっている。CGなので、串団子線ではないのも特徴。

【雑誌】あ!ホクサイ 2月号 辰巳出版 B5中
 今月は安寿はなこ(=池部ハナコ)が描いていなくて残念。次号予告にもとりあえず名前は出てないがさてどげなもんじゃろう。そんなわけで今号は飛び抜けた感じのする作品はない。どれもわりと、そこそこ程度か、それ以下レベルのエロ漫画が詰まってるって感じかな。巻末の猪上晴輝「いつかのメリークリスマス」は、ちょっとだけ桂正和的絵を目指しているのかな、という匂いを感じる。乳の描き方は乳首の形がきれいで好みではある。

【雑誌】Natural Hi Vol.42 富士美出版 B5中
 今まであんまり買っていなかった光善寺恵だが、今回はわりと良かった。タイトルは「スクラッチパーティ」。ある学校を舞台にしたお話なのだが、その学校では日直の男女は首に首輪をつけただけの素っ裸の状態で授業に出席する。そして授業中、授業の合間、お昼休みの間中、クラスのみんなのおもちゃになって犯されまくる。すごく異様な状況ではあるのだが、それがまったく当たり前のことであるかのように、ごく自然にカラリと明るくやられているところがなんだかスゴイ。矢凪まさし「カワイイ女と呼ばれたい」。この人のちょいとセル画っぽい、ペターっとしてそれでいて滑らかで柔らかい画風はけっこう目を惹く、っていうかとっつきやすい。別にいやらしくはないんだけど、キャラクターの表情がクルクル変わり、なんだか実に楽しそう。ひぢりれい「Shangri-La」。この人はやっぱり絵がうめえ。力強い骨太な線でありながらも、少女たちは実に可憐に描かれている。そしてやってることもハード。でも全般的な画面の印象はシャープ。カッチリとした太い線と、細くシャカシャカとひかれた顔の紅潮を表す線のコントラストが見事。絵だけでかなり読めてしまう人。ウルトラジャンプあたりで、長めの話を描いたらきっとウケるのではないかな〜。ひな。「3丁目の回覧板」。淡くキュートな画風で、読み口爽やか。ヌルめでかわいいもの好きの人にオススメ。


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