松本大洋
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■作家名:松本大洋(まつもと・たいよう)
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「青い春」
いわゆる「不良」と呼ばれる人たちをモチーフとした短編を集めた作品集。ワイルドな雰囲気が漂う作品が多いので、ちょっと肌に合わないという人もいるかもしれない。
シンナーでボロボロになった歯を見せてニカッと笑い、現実をすでに過去のものとしてとらえる彼らの姿を、松本大洋は「一番身近にいたヒーローだった様に思う」と語っている。乱暴で目立ちたがり屋で、でもシャイ。彼らは馬鹿をやっているように見えるだろうし、実際馬鹿なのかもしれない。でも後先を考えずに、若い年代を無駄遣いする彼らの生き様は妙に潔くて憧れもする。
この中で注目作品を挙げるなら、「ファミリーレストランは僕らのパラダイスなのさ!」になるだろうか。ファミリーレストランでたむろする目的を持たない学生たちの、中身のない会話が同時並行して進み、それがどんどんスピードを上げて回転していく。あくまで中身はないままに。テンポ良くお話を見せるための、コマ割りやら演出やらが見事である。「鈴木さん」には「鉄コン筋クリート」の、鈴木および木村の原型(というかまんまだが)が登場するので、この二人のファンは注目。
「しあわせなら手をたたこう」は、学校の屋上の手すりから身を乗り出してつかまり、手を離してまた掴むまでの間に何回手を叩けるかという度胸試しに興じる不良の話。それから「リボルバー」ではひょんなことから不良たちが拳銃を手に入れてしまい、それを巡ってオタオタする。拳銃があるからといって何をするというわけでもなく、ラストは意味もなくロシアンルーレットをして終わる。この2作品では、不良達の無目的で、明日を考えない虚無的な思考が描かれている。面倒くささそうに時間をつぶしていく彼らの生態を、激することなくつぶさに描いていて興味深い。どちらかというと「しあわせなら手をたたこう」があくまでも虚無的なのに対し、「リボルバー」は楽観的な印象と受ける。
なお、98年にA5サイズの新装版が発売されたので、現在購入するとしたらそちらのほうが入手しやすい。新装版には巻頭4色カラー描き下ろし「青い春」(4ページ)も収録されている。また、新装版用の後書きも1ページ追加されている。
シリーズ:BIG SPIRITS COMICS BC3221
初版発行:1993/7/1
ISBN:ISBN4-09-183221-0 C079
価格:500円(1993年7月現在)
判型:B6・2色カラー付き
■新装版
シリーズ:BIG SPIRITS COMICS SPECIAL BCS5734
初版発行:1999/2/1
ISBN:ISBN4-09-185734-5 C9979
価格:920円(本体876円)
判型:A5