松本大洋

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■作家名:松本大洋(まつもと・たいよう)
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最近の話題 ……[更新停止中]


98/07/13(月)……「花」

 ビッグコミックスピリッツ、1998年No.31と32で、2号連続64ページが掲載された短編。
 山の中で大自然と共に暮らす村。そこには舞を舞うことを生業とする家族「舞方」と、舞方が舞うときに付ける面を作る家族「面方」がいた。面方の家には、外に一歩も出ない面作りの天才少年・ユリがいる。彼は森の風に住まう精霊(「彼ら」と呼ばれる存在)を見ることができる。彼らの声、姿が見えるあまり、ユリは外に恐怖心を抱いていたのだ。
 ユリの父は面方としての自分の後継者として、ユリではなくその弟で、面作りの才能はあまり豊かでない少年・ツバキを選ぶ。そして、父はユリに以前見た海の光景について語る。父はユリに外の世界を 見てほしかったのだ。
 そして、父の死に際して最後の面作りを終えたユリは、自分の心の扉を外に開き、旅立つことを決意する。それとともに世界は動き出す。彼らを見る力はツバキに受け継がれる。そして時は過ぎる。海にたどり着いたユリは、焼けるような砂を足の裏で感じ手ですくい、真っ青な海を見つめていた……。

 といった感じのお話。心を閉ざすことによって、普通の人間が見えないものを見る能力を持ち得ていた少年が、心を開くことでその力を失う代わりに新たな世界を眼で見、肌で感じられるようになっていく成長の物語である。
 この作品でもやはり目立つのは巧みな画面構成と演出力。ここぞという場面以外ではナナメのコマはほとんど使わず、ためてためて効果的に使う。ある時はページを縦に4分割したかと思えば、今度は横に4分割して同じようなアングルで家族の食卓を俯瞰し話を進める。さらに、その中で二つの別の会話がパラレルに進行していくといった技も見せる。
 後編で印象的なシーンとして、暗闇から始まり、4コマかけて徐々に明るくしていき次のページで1ページブチ抜きでパーッと白い光を描く見開きがある。光の生み出す陰影を強く意識して、空間、奥行き、質感を描きだしていく描画力は実に圧倒的だ。

 話的には難解なので何度か読み返さないとピンときにくいかもしれないが、読み返すごとに新しい発見があって、どんどんストーリーが胸に迫ってくるようになる。実に松本大洋らしい、テクニカルで、そしてファンタジックなお話に仕上がっている。松本大洋は作品数もそうたまっていないので、なかなか単行本には収録されないだろうと思う。ぜひ雑誌でチェックを入れておいてほしい。



98/05/09(金)……「子供の頃に見た空は」

 切り抜きで、「子供の頃に見た空は.」はを読む機会を得たのでレポートしておく。これは松本大洋の初期作品。単行本未収録作品。コミックモエ No.3(昭和63年=1988年6/1発行)に掲載された作品。
 少年が散歩道で高所恐怖症の雲に出会う。雲は「高いところを飛ぶのが怖い」というが、少年は「今すぐ飛ぶことはない」と慰める。二人は友達になり地上でしばし楽しいときを過ごすが、そのうちに雲もしだいに高く飛べるようになり、少年との別れが訪れる……といった感じのお話。主人公は「ストレート」に出てくる天草みたいな顔つき。わりと普通のファンタジーなお話。無理して探すほどの作品ではないけど、ちょっとした佳作ってところ。
 掲載号の日付から考えて、「ストレート」よりも前の作品。

 ついでに日記には書いておいたんだけど、ここには書いてなかった未収録作品の話題も書いておく。
 タイトルは「プープー太平洋」。このホームページを読んで下さった方が、松本大洋のインタビューの掲載されたヤンマガ赤BUTAを貸してほしいとのお便りをくれたのでお貸ししたところ、そのお礼ということで読ませてもらった。「SiFT」という音楽雑誌に掲載されたもので、各2ページ、5話分。わりとアートした感じで、「日本の兄弟」に掲載された漫画と雰囲気的には近いかな。



98/02/10(月)……スピリッツに登場

 このページは久々の更新。
 スピリッツ 2・23 No.10に松本大洋が久々に登場。巻頭カラーで3ページ。今回はスピリッツが日産と組んで「CUBE」たらいう車の宣伝をしまくっているのだが、松本大洋の漫画もタイトルがズバリ「CUBE」。でもタダのPR漫画に終わらないところがさすが松本大洋。それにしてもピンポンが終わってからすでに8ヶ月も経っていたのだなあ。



97/10/19(日)……赤ブタ掲載「猫と少年」

 16日に書いたとおり、ヤンマガ増刊赤ブタに松本大洋登場。漫画は巻頭カラーで4ページ。タイトルは「猫と少年」。タイトルどおり猫と少年が出てくる。今回の作品はファンタジー。短いページながら、鮮やか。で、今回漫画と同じくらい注目なのが、松本大洋の講談社時代当時の編集者との対談。いろいろなことが書かれているが、「ストレート」以前の読切の話についても載っていて興味深い。ここらへんの短編、読みたいなあ。
 で、俺にとってはちょっと残念で、持っていない人にとってはむちゃくちゃ悔しいお知らせ。「ストレート」の再版は恥ずかしいのでしないみたい。「点と面」もしないらしい。そんなわけで「ストレート」に関しては、ますます根気強く古本屋を回るしかなさそう。



97/10/16(木)……松本大洋最新作がヤンマガ赤ブタに!

 少年マガジンに掲載されていた情報によれば、松本大洋が10月18日のヤンマガ増刊赤ブタに初登場するらしい。しかも、表紙&巻頭カラー! 内容がすごく楽しみなのももちろんだけど、久々に講談社で描くということは、講談社との復縁が成ったということなのだろうか? すると、「ストレート」再版の目も出てくるのでは……。うーむ、いろいろな面で期待できるニュースだ。



97/09/06(土)……ダ・ヴィンチで松本大洋特集
 ダ・ヴィンチ(リクルート)の10月号で、松本大洋のロングインタビューが掲載されていた。普段は買わない本だが、これのために買う。ダ・ヴィンチの真ん中のページに「雑誌内雑誌」的形式で、「コミック ダ・ヴィンチ」というのがあり、「我ら松本大洋族」というタイトルで6ページのインタビューをやっている。
 「大友克洋以降の最重要若手漫画家の一人」などと書かれているが、たしかに俺もそう思う。インタビューの内容はまあこんなもんでしょう、という感じだったが、彼が何を考えて作品を描いているのかを知るという意味では面白かった。やっぱりこの人はかっこいい。そういえば絵本「八月の金貨」(著・山中恒・あかね書房)はそのうち買わねば。

 ようやく仕事が終わったので、「ピンポン」全5巻を一気読みする。まさに至福の瞬間だった。痛いくらいに、全身に走るトリハダ。これは間違いなく傑作だ。ラストも連載時にはちょっともの足りなく思ったものだが、まとめて一気に読むとやはりビリビリしたあ! 最終巻なんて本当に一話一話泣けてくる。こんな面白い漫画を読める俺が、幸せでないなんて誰にいえるだろう。
 97年では今のところマイベスト。96年のマイベストも「ピンポン」だったのだが。ちなみにアスベストは発ガン性物質。