2000年5月中旬

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2001年5月20日(日)

ベルサイユのばら DVD-BOX2   EMOTION  <DVDボックス> 15000円

 アキバの中古屋で入手。定価2万5千円がこの値段ですよ!あいにく手持ちがなかったので出崎監督に代わってからの後半だけで我慢。ですが実際は後半だけあれば十分のように思います。
 30話くらいまでは、前半の少女漫画的展開を引きずった、宮廷をを舞台としたミステリ的オハナシになっています。ですがオスカルが近衛をやめ、市井の衛兵隊のいち中隊長になり、平民の兵士たちと接するようになってから、俄然オハナシは盛り上がります。ギリギリの日常を生きる人々の暮らしに接することによって、あるいは社会的に不可避な平民たちの不幸に接することによって、オスカルは自然と民衆の側に立つことを選択していきます。そしてバイプレイヤーの魅力的なこと!「宝島」にグレイがいたように、「ガンバ」にイカサマがいたように、ここでは衛兵隊班長のアランがものすごく魅力的に描かれるのですね。もう出崎イズムが横溢しまくっています。しかも時代は大きなフランス革命へと流れていく。歴史好きのみならずとも盛り上がるじゃあないですか!なぜ今まで買わなかったのかと、自分を責めた次第です。ここに宣言しましょう、主な出崎作品はぜんぶ買う!と。「スペースコブラ」も「あしたのジョー」も。あ、当然「宝島」と「ガンバの冒険」はもう予約してます。…いやあ、DVDって、本当に怖いですね。

コミックメガストア 6月号   コアマガジン  <漫画・雑誌> 648円

 ばんざあい!ロリの期待の星のアイツが帰ってきたぞ!その名もみなすきぽぷり。作品名は「巴ちゃんよく来たね」。何らかの理由で休筆していたのですが、見事サイテーな作品をひっさげて戻ってきました。登場するのは児童館で働く青年。いつもは決まったオコサマを相手にしているのですが、新しい女の子に狙いを定めます。「ひとりで遊びに来ない?一緒にステンドグラスを作ろう」と。そうしたズルい大人の甘いささやきに騙されて、少女は誘いに乗ってしまいます。あとはお決まりの展開。「そんな大人のはいんないよう」という少女に対し先輩は「私達たち(こども、とルビが振ってあります)だってできるん…だよ…」と。こりゃあ本当にヤバイです。「オコサマとやりたいよう」オーラがひしひしと感じられます。そして挿入シーンのねちっこい描き方と来たら。狭い膣口にごりごり突っ込んでいく感覚が伝わってくるんですね。圧倒的な存在感がある作品といえましょう。今回は月野定規もヨネケンもいないのでダメかな、と思っていたのですがとんでもない。この一本があればじゅうぶんお腹いっぱいです。
 あとは今回ちょっとはじけ方が足りないかな?と思えた鬼ノ仁と西安が気になったところです。

D-Ange  6月号   ヒット出版 <漫画・単行本> 333円

 いやあ、にしまきとおる先生「Blue Eyes」最高です。今回はならず者に絡まれて困っているメイドさん、アリスを助けたことにより、彼女と懇ろになりますよ。当然彼女も天然巨乳なわけでして。そしておなじみ「アリス、これでおまえはオレの女だ」。最高です。妙に説明的な台詞も味わい深いではないですか。
 あとはばっちり趣味世界を極めつつあるしのざき嶺先生「ぷちHEAVEN-4」でしょうか。今回は松本零士ネタ。先生の出自を示しているようで心が温まります。そして禁じ手ともいえるルリルリ!最近吹っ切れてきているのが如実に感じられるのがいいですね。「2ちゃん」での活躍も素晴らしいものがありますし。この調子でいて欲しいものだと思います。
 ただ、全体としては魅力に薄いように思います。強烈なエロでぐいぐい引っ張るタイプの作家がいないんですね。以前はみなずきゆず、みなすきぽぷり、ミルフィーユと作家が揃っていたのですが、みんな取られたか描かなくなっちゃいましたしね。ここはどしどし新人を登用してほしいと思います。女性作家を登用しているところが興味深いので、楽しみにしたいと思います。

純愛果実 6月号   光彩書房  <漫画・雑誌> 580円

 やっぱりゼロの者「遠距離至近距離」でしょうか。水の中にいるような汁気感覚。相変わらず特殊極まりないオパーイ描写も見逃せないところです。何てったってオハナシの文芸性の高さ!それからグロを通り越して別世界に到達した月森泉「続・続・ヒトミとヒロシ」がええ感じです。そりゃ普通のカップルの普通のセックスを描いてはいるんですが…だんだん関係が深まって、ケツの穴だろうが何だろうが見せつけあっても平気、というようなカップルを描いているのですが…セックスが日常化したら、それはあとはえげつなくなるばかり。そこに自覚的なのがほほえましい限りではないですか。そして玉置勉強「足りないお姉さん」。アタマの足りないお姉さんを抱かせて稼いでいる弟、という作品なのですが、やっぱり読後感が悪いですねえ。一方でセックス描写は実にねちっこく、性器描写もリアルきわまりないのですが。そこに玉置の狙いがあるのはいうまでもないでしょう。わざと読者の足を引っかけるような展開は、かつての私小説が持っていたそれと同じ要素を持っているように思います。痛いなあ…。

いちばん上


2001年5月19日(土)

夜の童話 紺野キタ  ポプラ社  <漫画・単行本> 580円

 

栗林かなえの犯罪 吉野朔実  小学館  <漫画・単行本> 505円

 

ムーミン・コミックス10 春の気分 トーベ&ラルス・ヤンソン  筑摩書店  <漫画・単行本> 1200円

 

煩悩ゲームの世界 鈴木純平  キルタイムコミュニケーション  <一般・単行本> 950円

 

いちばん上


2001年5月18日(金)

月に開く襟(新装版) 鳩山郁子  青林工藝社  <漫画・単行本> 1200円

 現代の「絶対少年」の描き手、鳩山郁子の処女作品集が10年の時を越えて蘇りました。そうか、もうあれから10年経つのか…。根本敬の次に買ったガロ作家の作品がこの本だったものですから。感慨深いものがあります。
 やはり線の古さ、洗練の不足は否めないように思います。ですが驚かされるのは最初から一貫した「絶対少年」を描こうという意図です。もちろんこうしたメンタリティは稲垣足穂や「ジュネ」などによって準備されてきたのですが、ここまで徹底して絶対少年を描こうとした例は、当時あまりなかったわけです(鈴木翁二などの例外はありましたが)。白々しい?リアルじゃない?それは愚かな質問というものです。リアルとは隔絶したところに、少年の「絶対性」が存在するのですから。
 それから少年の「絶対性=永遠」に言及する作品があるのも興味深いところです。天空の音階と共鳴し、カリヨンの音になるために召される少年。天球にちりばめられた倍音と融合していく少年。音は絶対性や神話と強い関係を持っているわけですが、そのことをかなり早い段階から認識し、意図的に使っているのがいいんです。非常に硬質な線と練り上げられた構図がそれを強化するのはいうまでもないでしょう。新装刊を機に、多くの人に読まれて欲しい作品だと思います。

CRAFT vol.9 V.A. 大洋図書  <漫画・アンソロ> 840円

 今回の登場作家は順に門地かおり、夢花李、タカハシマコ、紺野けい子、紺野キタ、天禅桃子、樹要、高橋悠、高屋美央。今回も良質な作品が集まっています。まずは門地かおり「ダメ人間」。親友に恋とも憎しみともつかない思いを抱き、なにより圧倒的な性欲を抱く俺はダメ人間だ、と考える主人公・山科。まとまらない思いを抱き、誰も知っている人のいない田舎の駅で電車を降りる。そこに現れる山科の思い人、松伊…。山科が自分の気持ちを徹底的に抑圧しようとするのがいいんですね。好きになっちゃいけない、欲望を抱いちゃいけない。だから彼から離れなくちゃいけないんだ、というところが。「俺はおまえが好きだー!」「うん僕もだよ」という安易な展開に食傷しきっていたものですから、えらく心にピンとくる内容になっています。だってそりゃそうですよ。私は男性に欲望を感じたことはないので分からないのですが、もし抱いてしまったとしたら戸惑うでしょうからね。最後まで自分の気持ちを認めようとしないリアルさと、しかし快感に溺れてしまう描写に萌え、ちゅう感じでしょうか。
 それから紺野けいこ「本日は晴天なり」。普段は名古屋に住んでおり、何かと上京しては泊まっていく幼なじみのひろ。家主のりっちゃんはひろに対する思いを抑えきれなくなってくる…という展開です。一触即発の緊張感がいいじゃないですか。そしてついに抜いてるところを見られてしまってさあ大変。漫画的ヒキもじゅうぶん。
 そして真打ち、紺野キタ「夜桜少年」。田舎の中学校を舞台にし、野球部のエース、テツと童顔少年、シゲの引き合う心を描いているのですが…。高校進学を前に、二人の関係は揺らぐのですね。別れなければならないかもしれない状況と、別れたくない思いが交錯します。伸びない身長や可愛い容姿にコンプレックスを抱くシゲ、「男の子ってズルい」とつぶやく少女、シゲに横恋慕する後輩と、さまざまな要素を絡めて立体的なオハナシにしているところも見逃せないところです。
 …で、あとはタカハシマコ「ローズハウス」。家に帰ると可愛い少年が裸エプロンで「お風呂にする?それともボクにする?」…えー、タカハシマコ先生の場合は狙いきってやってることが分かってるのですが、でもここまで阿漕な絵を「描いてしまう」のはなかなか尋常なことではありません。端々からのぞく人を食った視点。化かされてると分かっててもいいんです!

アワーズライト 7月号   少年画報社  <漫画・雑誌> 305円

 おがきちか「エビアンワンダー」でしょうか。以前の読み切りでいい感じだった悪しき魂を食らう姉弟の物語です。表面的には悪の属性を持ったものが結果的には悪を食い尽くす、という逆説が面白いんですね。これは当然単行本数巻の連載でしょう。それ以外にありませんってば。次には犬上すくね「恋愛ディストーション」。定時制教師という夜の仕事を終えてストレスたまりまくったまほ先生がキレて…というオハナシです。うんうん。思い当たるところがありすぎです。私も現在夜のお仕事をしているのですが、やっぱり深夜勤務は辛いですから。それから石田敦子さま「純粋!デート倶楽部」。今回は4コマか?と思わせておいて、またもや痛ったい展開。まったくもうどうしてどいつもこいつも恋愛に対するトラウマを抱きまくってるんでしょ。以前の痛手を思い出してしまうために、次の一歩を踏み出すのに慎重になってしまう…これまた身に覚えがありまくってしまうのでずーんと暗くなってしまったことですよ。あとはおそらくあめかすり先生であろうところの中前英彦「Sweet Smoke」でしょうか。8Pしかない水原賢治の代原であろうと思われるのですが、こうした才能ある作家は積極的に載せなきゃダメだと思うんですがねぇ。

電撃大王 6+7月号    メディアワークス  <漫画・雑誌> 590円

 これまではアニメやゲームとのメディアミックス作品には全然興味がわかなかったのですが、アニメをハードに見るようになったので、俄然そうしたメディアミックス作品に注目するようになりましたね。今月はかの「シスタープリンセス」が壱河きづく作画で始まっています。サイテーのさらに底を掘り抜いた結果妖しい魅力を放っているアニメの「シスプリ」ですが、こっちの漫画版はすっきりした作画。まだ始まったばっかりですが、アニメの展開は逆方向に飛び出ているので期待大です。同様に犬威赤彦「こみパ」、さなづらひろゆき「ガンパレ」も。あ、ダメな方向でいうなら高木信孝「ココロ図書館」もちょっと凄いですね。今回は身体測定。モロこそないもののみんなで下着いっちょう姿で記念写真を撮ったりしますよ?脳が溶けているにもほどがある、というものです。
 一方普通の文脈でいい、と思うのはやはり井原裕士「Doll Master」でしょうか。ちゃんと「萌え」を分かっていながら、少年漫画風の勢いのある線で描いているところがいいんですね。萌え絵だけでは満足できない人に訴える力があるところを評価したいものです。それから栗原伸祐「まにぃロード」。「リヴァイアス」では今ひとつこの人の味が出ていなかったように思うのですが、自分のネタ…ウォーターラインシリーズをベースにしたオタク文化…となると生き生きしていること。この人が何を描きたかったのかが、実によく分かるではないですか。それにしてもウォーターラインシリーズですか。スケールモデルは現在においてモデラーの終着点だと思うのですが、陸もの→空もの→海ものの順で「濃く」なると私は思います。なんといってもウォーターラインシリーズは極端に部品が細かく、ディティールアップパーツもゼロコンマ数ミリという大きさですから。しかもそれを接着する際には接着剤のはみ出しなどは許されず、加えて完璧に塗装しなくてはなりません。そこまでやってはじめて「凄い」ものになるのですね。そこに足を突っ込むとは…。すさまじい「業」を感じるとともに、頼もしさを感じる次第です。次のウォーターラインってプリンツ・オイゲンって本当?

サンデーGX 6月号   小学館  <漫画・438> 438円

 みやすのんきですか…(暗い顔)…。
 それはともかく。尹仁完/梁慶一「新暗行御史」、えのあきら「ジャジャ」、酒井直行/田巻久雄「ギルステイン」荻原玲二「天使だけが翼を持っている」そして当然島本和彦「吼えよペン」と、主立った連載作品に勢いがあるのがいいですね。エロを忘れないえのあきらには脱帽です。それから成沢円「ジュリアン」も狙いまくっているもの、それがうまく当たっているという感じでしょうか。ジャージの上からでも巨乳が分かる事務員土屋さんに萌え!むざむざ萌えるのも気にくわなくはあるのですが、それでもいいんですから相当なものです。
 でもこのところ一番私が注目しているのがこいずみまり「LET IT BE!」なんですね。実は両思いの透と真子なんですが、今までの対立していたいきさつから素直になることができない。事故でチューしそうになったりちちにさわってみたりと盛り上がるイベントはあるんですが、それより先は進むことがない。この寸止め感覚!「萌え」が漫画世界を覆ってきている今、ダメなラブコメ(=簡単に恋愛が成就してしまう)が勢力を増してきていますが、ここではちゃーんと「もどかしい=正統派の」ラブコメが行われているのですね。今回も手を握られてドキドキする真子、という展開なんですが、それ以上には行かないのです。いやあまり先生、狙ってますね! 

ウルトラジャンプ 6月号    集英社  <漫画・雑誌> 410円

 今月も「バスタード」は休載。そんなことは最初っから分かっていたことであって。もう「終わりきった」、やる気のない作家に、これまたもう終わりきった作品を描かせようとしている段階でダメなんです。そういうヘタレ作家は即刻切って、別の新人にページを回した方が何倍も有益だと思うんですがね。それから木城ゆきと「銃夢」もちょっと、と思い続けてます。確かに手慣れた面白さはあるんですが(萌えキャラエルフとツヴォルフも生きてますしね)、「水中騎士」を終わらせてまで、こんな古くさい、「ガイバー」的に「終わった」作品をやる必要があるのか、と思うわけです。メディアミックスなのは知ってますけど。とにかく編集方針が過去の栄光を復活させよう、といった後ろ向きのものなのがやりきれないですね。その一方で介錯「魔法少女猫たると」を一方の柱に据えています。これは極度に終わりきってますね…。メイド服のねこみみの語尾「にゃーの」。「ここまでモロだと受けるまい」と思われていたでじこが受けてしまったので、この作品も受けるのでしょうが、ここにあるのは精神の荒廃ではないか、と思ってしまうのですね。一番濃いところだけを選んで順列組み合わせをすれば、もっとも刺激の強いものができあがります。それを摂取し続けたら…ゆくゆくはジャンキーでしょう。意図的であろうがなかろうが、なんか罪深いものを感じます。熊谷カズヒロ「サムライガン月光」だけはいいんですけどねぇ。あ、あと花見沢Q太郎の「BWH」は当然ですが。

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2001年5月16日(水)

DOLL 3 三原ミツカズ 祥伝社 <漫画・単行本> 924円

 「フィールヤング」の人気連載です。非常に精巧に作られた人形=ドールを狂言回しに、それをめぐる人間たちの姿を描いています。ドールたちは基本的に心を持たない(持つことを許されない)存在で、人間のいうことを忠実に果たすだけの存在です。ですがだからこそ、それに接する人間の心が現れてくるのですね。またドールを違法改造して心を持たせる、ということが作中によく出てくるのですが、これもまた逆説的に、それを求める人の心の空虚を明らかにするのですね。硬質な描線がビターなオハナシを強化しています。現代の寓話…ということは以前も書いたことではあるのですが、そのスタンスはこの巻でも変わることはありません。いい作品です。

あかピンク 2 入江紀子 秋田書店 <漫画・単行本> 400円

 女性から見たオトナの恋愛を描く…という基本的パターンは変わらないですね。ここで描かれるのは様々な形の愛です。結婚を選ぶものもあれば選ばないものもあります。歳が離れているカップルもあれば友達のようなカップルもいます。ですが共通しているのは、自分が直面している恋愛に対して非常に積極的で肯定的、というところなのですね。もちろんこうした姿勢は、こうした姿勢を取り得ない女性からしてみれば「強者の論理」になってしまうのでしょう。ですが入江が…そして登場人物が…開き直って見せるように、結局はこうした姿勢の方が幸せに生きることができるのでしょうね。ならば幸せに生きなければ損というものです。そうした点で、救いをもたらす内容になっていると思います。いい加減「入手できる作品一覧」を載せるのはウザくなってきましたが。

魔法を信じるかい? 2 谷川史子 集英社 <漫画・単行本> 390円

 ひょんなきっかけで死神のサブローとともに過ごさなくてはならなくなったひなた。サブローの危機を救うことによって、結局ひなたはラブラブだった志賀くんとの関係を清算し、サブローと一緒に過ごすことを選びます。安定した関係になったか、と思いきや、今度はラテン系天使のマルコがひなたのまえに現れる…というオハナシです。いやー、今時「雪山で体が冷えたからハダカになって暖める」ってシチュエーションを見るとは思いませんでした。この段階でかなりヘヴォン臭が漂って来ますね。そしてひなたがサブローを選択する理由は「そこで惚れちゃったから」。ヘボ…。そして取って付けたようなライバルの登場。ヘボヘボ!ど萎え!途中まではかなりいい展開でしたし、ひなたが志賀くんを「思い出にして」しまうところなどは感心したのですが、いかんせんプロットが死臭漂う前時代的なものなんですね。あーあ、もったいない。
 ですがこのことは逆に言いますと、ある種の「かぐわしさ」がこの作品から漂ってくる、ということでもあります。こんな展開現在では逆に考えられないのですから。その意味で保護していかなければならない作品といえましょう。それから収録されている短編「雪物語」は、非常に繊細に恋心を描いている佳作です。この作品だけでも買う価値はあるかと思います。

メロディ 6月号   白泉社 <漫画・雑誌> 381円

 「どいつもこいつも」が終わってしまったので、あのハラハラ感がなくて残念だよなあ…と思うのですが、なかなかどうして面白いじゃないですか。とにかく青池保子「修道士ファルコ」魔夜峰央「パタリロ西遊記」がいいんですね。どちらもアウトオブデイトな巨匠なんですが、肩の力が抜けきっていて、物語の方が語られるのを待っている…という状態になっているように思えるものですから。人格がハタンしまくっているバンコランじゃなくて万古羅漢がナイス。
 それから新人がいいんですね。まずは武壱史穂「てのひらの宇宙」。この人は3月号に載った「夢の栖」もかなりよかったのですが、この作品も素晴らしいです。なんでも実際にやってみないと気が済まない幼なじみの勇と、幼なじみの志満。なんにでも積極的に当たる勇に志満は振り回され気味。だがある日、いつになく沈んでいる勇を見かける。修学旅行で勇は志満に、こっそり抜け出して別行動を取ろうと誘いかける…というものです。まずなんといっても絵柄がいいんですね。目の描き方に特徴があり、じつに丁寧。表情が生きてくる訳です。それから小学生らしいぎこちない感情の動きの描き方もいい感じです。ラストこそちょっと肯首できないところがありますが、大きな問題ではありません。これは注目です。次には八湖広美「姉の結婚」。歳の離れた姉とふたり暮らしをしている主人公(女子中学生)。姉はまもなく結婚を控えている。結婚するのは姉なのに、ブルーになるのは主人公の方。今までふたりっきりで築いてきた生活が崩れるかもしれないから…というものです。これはひとこと「瑞々しい」と評価したいと思います。絵や構図が抜群に上手いというわけではないのですが、いかにも思春期に子どもたちが直面しそうな問題を描くことによって、その時期特有の鋭い感性を描き出しています。これはなかなかできることではありません。漫画賞で銅賞だったとのことですが、十分水準に達している作品だと思います。いや、袴田めらに共通するものを感じるのですね。だから特に心動かされている…ということもあるのでしょうが。
 次回は「陰陽師」と成田美名子が登場とのこと。アレがなくって真っ当になってしまって…と思わなくもないですが、王道もまたいいものです。

コミックバンチ 創刊1号   コアミックス/新潮社 <漫画・雑誌> 210円

 ずいぶん前から準備を重ね、大々的な宣伝をぶちあげた話題の雑誌がとうとう出ました。表紙はやっぱりこの人、原哲夫。収録作品は順に原哲夫「蒼天の拳」、北条司「Angel Heart」、今泉伸二「リプレイJ」、おおつぼマキ「貧民の食卓」、柴田錬三郎/柳川喜弘「眠狂四郎」、次原隆二「レストアガレージ251」、渡辺保裕「ワイルドリーガー」の7本です。まあ…イヤというほど最盛期のジャンプ作家/懐かしい作家で固めている、という印象ですね。2号ではこせきこうじ、にわのまこと、3号ではながいのりあきが登場するということですし。ですからあのころの夢をもう一度、という安易な雑誌と思われても仕方のない部分はあると思います。ターゲットもあのころのジャンプに触れていた人…25歳から35歳の男性…に絞りきってますし。また内容的にも古さを感じるところがあります。やっぱり「シティーハンター」だったのか、とものすごくがっくりした「Angel Heart」、いまどき目のなかにハートマークを描いてるよ、とものすごくがっくりした「レストアガレージ251」など。
 ですが雑誌全体は決してダメではありません。ここで挙げた両作品とも、ダメな作品というわけではないのです。ゆっくりと時間をかけ、納得のいくいい作品を作ろうという意図がひしひしと伝わってくるのですから。そして図抜けて面白い作品もあります。まずは「眠狂四郎」。耽美な絵柄とピカレスクなオハナシが見事に一致しています。ケレン味あふれる画面構成も惹かれるものがあります。そして本命「蒼天の拳」。1935年の日本を舞台に、ケンシロウの叔父に当たる霞拳志朗が活躍するというものなんですが…内容が**最高**なんです。原といえばギャグ炸裂の大怪作「アテルイ二世」で復活をアピールしましたが、この作品はさらに強烈になっているんですね。「ぬく?」「いや ぬかないでぇー」「だめ」ですから。「龍は関係ないよ」ですから。いや、この雑誌は買ってすぐに電車で読んだんですが、笑いをこらえるのに必死でしたよ。「アテルイ」同様、訳の分からない特殊能力を持っているところも大笑いです。つかみはバッチリといったところでしょうか。とりもなおさず、この作品のためだけにも買う価値はじゅうぶんにあります。打ち切りになろうが上手く続こうが、この作品はもうすでに殿堂入りを果たしたといっても過言ではないでしょう。加えて良心的な他の作品があるわけですから。
 今後登場する作品も興味深いです。4号では韓国の作家が日韓同時で作品を発表するとのこと。15日の朝日新聞の朝刊にも載ってましたね。こうした日韓の文化交流は注目したいところです。また3号では梅川和美が登場。そう、あの「太陽革命」の梅川ですよ。「フラッパー」での連載を後回しにしてこちらで連載、ということのようですが、これは期待しないではいられないというものではないですか。内容はショタじゃないようですが。
 過去の栄光をもう一度、という姿勢があるのは間違いないでしょう。また編集の、作家の「いい作品を作ろう、内容で勝負しよう」というアプローチが、成功するとは限らないのも間違いないでしょう。若い年齢層にアピールするかな、というと、この号の内容からすると厳しいものがあると思いますから。現在的な「萌え」の徹底的な欠如には、危惧を抱くところではあります。ですがいろんな意味で「魂のこもった」、良心的な雑誌になっていると思います。こいつは買って応援しようと思います。

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2001年5月14日(月)

ガロ 6月号   青林堂 <漫画・雑誌> 743円

 特集は新装刊される「ぢるぢる旅行記」。ねこぢるの3周忌を記念して(?)再びインドへ行った山野一へのインタビューが中心になっています。ねこぢるの実弟と行ったというのですが、活発であちこち行きたがる彼に対して、山野は安宿でぐでーとしているばかり。そうそう、このバロウズみたいなダル感覚がいいんですよ。あとは盛り上がってきた大越孝太郎「天国に結ぶ恋」、絵のうまさが現代的なオハナシを得ていい感じになったチ川ユポ「Give blood save one's life」、相変わらずの夢日記的展開が好ましい…性的メタファの使い方が相変わらず悩ましい…津野裕子「乙女椿」といったところです。
 それから次号から奇数月の10日に発行される隔月誌になるとのこと。確かに苦戦していたのは分かりますが…ここはどうにか踏ん張って欲しいと切望する次第です。

花音 6月号 芳文社 <漫画・雑誌> 638円

 お決まりの台詞で申し訳ないんですが、やっぱり書かねばならんでしょう。「南野ましろ先生って凄いなあ!」と。とうとう表情表現をカキモジで済ませるようになってしまいましたよ!気合いの抜け方もここまで来ると立派です。
 …それはともかく。まっとうなボーイズ文脈でいいのはやはりCJ Michalsky「時の羅針盤」でしょうか。無理矢理思い人と引き離される超能力を持った少年・暁人。元の暮らしに戻っても彼のことを忘れることはできない。そして超能力さえも失ってしまう。それを知った、彼を利用しようとしているヒヒ爺いは、「ならばワシの慰み者にするかのう」とイヤらしく笑う。それを見た暁人の保護者・黒田は、ここぞとばかりに自分の思いを遂げようとする…。げへへへ。ええですなあ。一方で清らかな恋愛を描きながらも、当の暁人は獣欲の犠牲になるんですから。まったくCJという人は欲望と悲劇というものをよく分かっていらっしゃる。いたいけな少年がムリヤリ…だから燃えるんじゃあ!それから高口里純(作)/穂波ゆきね(画)「恋の渇き」もいい終わり方をしています。もともと穂波は非常に絵こそ巧いものの、オハナシが今ひとつという弱点を持っていました。それがストーリー・テラーの高口里純の原作を得たのですから、レベルが高いものにならないわけがありません。もう一つ面白いのは、三人の男が共通に愛した女を設定することで、男同士の「求めあうセックス」を正当化しているところが上手いです。論理的ボーイズラブといったところでしょうか。この作品はすぐに単行本化されるとのことですので、待ってみたいと思います。あとは高井戸あけみといったところでしょうか。ボーイズラブのなかではもっとも読みやすく、おすすめできる作品が多い雑誌になっていると思います。

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2001年5月12日(土)

貧乳計画 V.A. あまとりあ社 <漫画・アンソロ> 900円

 今回の登場作家は順に山野紺三郎、てるき熊、流星ひかる、フェニキア雅子、かにかに、地底怪獣、ガビョ布、栗東てしお、みはらじゅん、茅薙隆裕。今回もロリ魂(ろりだま)満開の内容です。ただ今回はちょっとパンチ力が足りないような。それはおそらく、流星ひかるとフェニキア雅子という「男少女まんが」コンボが前の方にあり、美味しい部分が早く来すぎてしまっているからではないか、と思います。それぞれの作品は悪くなく、特にフェニキア雅子の作品はロリレズで強烈だったりするんですがね。あとは久しぶりの茅薙隆裕が目立つところです。「あたしを女にして」と幼女が訴えますよ?

Comic Cue Vol.100   イースト・プレス <漫画・雑誌> 999円

 んなわけねーだろ!!というツッコミをよそに第100号です。大きな変化としては版型が大きくなり(A4)、ずいぶん薄くなったことが挙げられます。値段の割には薄く見えるかもしれないですね。ですがそれを補ってあまりある特徴があるのです。前半はばばかよ、朝倉世界一、吉田戦車、かわかみじゅんこ、しりあがり寿、寺田克也、タカノ綾、水谷さるころ、中川いさみ、やまだないと、本秀康、魚喃キリコ、黒田硫黄、おおひなたごう、南Q太、古屋兎丸、とり・みき、和田ラヂヲ…ふう、多いですなあ…の作品が載っているのですが、これがみんなカラー作品。もちろんページ数は多くて10Pなんですが、これだけの錚々たるメンツにカラーで描かせるとは。今までにあまり例のなかった試みなので、非常に新鮮に見えます。作家一人あたりのページ数が減少する、という弊害はあると思いますが、全体がカラーの作品なんてなかなかお目にかかれないじゃないですか。その点でこうした試みは実にいいんじゃないかと思います。この調子。出来れば隔月で…。後半は人気連載の地下沢中也「兆 Sign」水野純子「ドリーム・タワー」になっています。こちらは白黒なんですが、ボリュームがありますね。カラー作品のボリュームの少なさをこちらで補い、じっくりと「読ませる」構成になっているのも見逃せません。
 まあ、賛否両論あるのでしょうが、私はこの試みを評価したいと思いますね。「H.」と違い、ちゃんと旬の漫画家をそろえているところもありますし。サブカル臭くたっていいじゃないか、と思います。

コミックバーズ 6月号   ソニー・マガジンズ <漫画・雑誌> 467円

 古屋兎丸「Marieの奏でる音楽」がないとちょっと盛り下がってしまうのは仕方のないところでしょう。また期待していた新谷かおる「日の丸あげて」も中途半端に終わっちゃってますし(どうしちゃったんでしょうねえ)。ですがなかなかどうして。新名あき「Devil Smile」、ともち「れ・り・び」、東城和美「いちばんっ!!」の骨抜き三作品が揃っていれば、それだけでこの雑誌はもう問題なし、というところに達していると思います。冬目景「羊のうた」、浅田寅ヲ「すべてがFになる」、相川有「極楽丸」、田島安恵「アクア・ステップ・アップ」も調子がいいですしね。それにしてもナンザの胸の谷間…ネクタイをばっちり挟み込む14歳…。

アイラ vol.8   三和出版 <漫画・雑誌> 552円

 今回はちょっと低調かな、と思います。ですが圧巻は天竺浪人「後門」。登場するのは双子の兄弟。母親は兄の方は素直に、子どもらしく育てるものの、弟の方には「おまえはどこから生まれてきたの?オマンコなわけないでしょう。アナルから生まれてきたのよ」と厳しい教育を施します。ネタの特殊性といいチャイルドアビューズバリバリの展開といい狂っちゃってるお母さんといい泣き出してる弟といいものすごい迫力です。そうそう、やはり天竺といえばこうした特殊系のオハナシで本領を発揮するはず。「激漫」のハートウォーミングものも悪くはないですが、こっちの方でこそ生きるのだと思います。スゲエ作品です。来月は待望の堀骨砕三と、船堀斉晃が登場するとのこと。

桃姫 6月号   富士見出版 <漫画・雑誌> 505円

 山形せい「ウタマロ。」が初っぱなからいい感じです。アメリカ人の英語教師と男子生徒がキッツイセックスをキメルという内容なんですが、アメリカンな開けっぴろげなエロがいいんですね。アメコミを意識した、それでいて「美少女漫画」のフォーマットからはずれていない個性的な絵柄も注目すべきところ。それから木静謙二「Find」も盛り上がってますね。ホノボノ学園ものかと思っていたのですが、急転直下ヤクザがヤクで女をメロメロにして…という展開になっているのが注目されます。この人も絵に特徴があり、ちゃんとデッサンをこなしながらも、密度の濃いエロを描くことができるというのが特徴だと思います。やっぱりビダイセーなんでしょうか。それから長谷円「兎と亀の接点」。必ずしも「美少女漫画」のフォーマットに従っていない、ちょっと古風な絵柄なんですが、この人の場合オハナシがいいんですね。親の事業の失敗のために、小娘に服従せざるを得なくなる青年。高飛車に、まさにお姫様のように青年に接する小娘。しかし…というものです。ありきたりなプロットですが、細かい心理描写を行うことによって、陳腐な表現から一歩先に進んでいます。それには絵柄が果たしている役割も大きいと思います。あとは結構薄口の作品が続くのですが、しろみかずひさとぐんぱんが極端に濃厚で特殊なエロをかましてくれます。特殊だ…。

零式 Vol.29   リイド社 <漫画・雑誌> 524円

 全体に感じるのはセンスの良さ。大島永遠、すえひろがり、むつきつとむと、エロさと清潔感の同居した作品を集めているところが注目されます。そして安森然「ウォーターエンジン」(今回は未完成部分があり残念)と、宇佐見渉ですから。「快楽天」に通じる現代的なエロの姿がここにあるのだと思います。その一方でまぐろ帝國や電光石火轟のような訳の分からない(当然誉め言葉)を載せ場を乱し、小石川ふにや中田ゆみで読者を腑抜けさせる。バラエティ、という点ではもっとも成功しているエロ雑誌だと思います。

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Last-Update: Thursday, 13-Nov-2014 09:16:51 JST