めくるめく映像と内的世界

石井聰亙の魅力

 

 石井聰亙といえば、80年代に「狂い咲きサンダーロード」「爆裂都市」「逆噴射家族」で、世のパンク連中と映画好きに猛烈な印象を残した監督である。が、「逆噴射家族」(84年)の後は、劇場作品に恵まれず、カラオケの画像を撮ったり(タイマーズの「ロックン仁義」だというのがうなづけるが)、ノイバウテンのビデオを撮ったり、と、外から見れば不遇の生活を送っていた。しかし、かれはそのまま眠っていた訳ではなかった。何とヨーロッパで本格的な映像を学んできたのである。そして復帰第一作「エンジェル・ダスト」(94年)は、そのオウム事件を先取りした内容、エンディングのゾンビーズの「ふたりのシーズン」の凄さもさることながら、その映像が物凄いものになっていたのである。ちょっと映像学をかじった者なら即座に小便ちびって気絶しそうになるような、極めて雄弁な、極めて示唆深い、極めて考えさせられる映像が展開されていたのである。

 映画は、映像で語ってはじめて「映画」といえるのだ、と私は考える。現在、どこの国の映画でも多分にそうだが、殊に日本の「メジャー」映画は、映像よりも台詞で物語を語りすぎるような気がする。それは本などといった印刷メディアに適している方法なのだ。映画には映画ならではの表現手段があるのだ。ところが現在の日本で自在に映像を操り、映像で物語することのできる監督は極めて少ない。石井聰亙はそれができる、本当に数少ない、「本式」の監督なのだ。少なくとも今私は、石井聰亙は日本最高の映像作家だと考えている。

 最近のかれの活動としては、復帰三本めの映画、「ユメノ銀河」が2月15日から公開となっている。これを機に皆さんも石井聰亙の世界に触れてみたらいかがだろうか。次のリンクが大きな参考になるだろう。

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