ノイズと茶目っ気

…塚本晋也

 

 石井聰亙とくれば、次に紹介しなくてはならないのが塚本晋也だろう。塚本晋也といえばやはり「鉄男」と「鉄男U」。海外でも高く評価され、カルトムービーと化したこの映画で、かれを覚えている人も多かろう。全編に流れるノイズ。次第に鉄と化していく体。現代の行き詰まりを描いたかのようなこの映画で、かれはいっきにアングラ界の寵児となった。映画監督以外にも俳優として(「119」など!)活躍するが、やはりその本領は映画、それも「鉄男」のようなインダストリアルな映画において発揮されると現在においても考えられている。

 …ところが、私は、別のところにもかれの重要な才能が隠れていると考えている。それは、表題にもある通り、「茶目っ気」の面である。

 「鉄男」は良かったものの、「鉄男U」は、はっきり言って非常にみすぼらしいものだった。塚本晋也のイメージのはばたきは理解でき、何を言わんとしているかも良く理解できるものの、美術/特撮が実に金がかかってなく、すっかり台無しになってしまっていたのだ。金がかかっていれば良い映画か、というと、決してそうとは限らないが、イメージを実現し、観客にそれを伝えるためには最低限のものが必要だ。「鉄男U」ではそれにすら届かないものだったのだ。ここに、塚本晋也のインダストリアル系の映画の限界が現れる。金がかかりすぎてしまうし、金を出してくれるようなスポンサーが集まらない/集めることができないという限界が。

 ところが、「妖怪ハンターヒルコ」は、ローバジェットだったにもかかわらず、実にいい青春映画に仕上がっていた。ほんとはかっこいいはずの稗田礼次郎を間抜けに演じきったジュリーの実力や、脚本の良さもあるが、妖怪退治にキンチョールを使ったり、インダストリアル映画の手法をわざとらしく持ち込んでみたりと、人を食ったような茶目っ気がローバジェットさを感じさせない、イイ効果を挙げていたのだ。これは「電柱小僧の冒険」にも同様に見られる。塚本晋也には、ノイズ=インダストリアル=バイオレンス系の映画も撮ってもらいたいが、ぜひともこうした茶目っ気の高い、ギャグ的に面白い映画を撮ってもらいたいと思うところである。

 

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