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「つれづれなるマンガ感想文」7月前半
「つれづれなるマンガ感想文」8月前半
一気に下まで行きたい
実在のアーティスト、ソニンを主人公にしたザッピィ連載の、実録マンガの最終回。
ビッグコミックオリジナル連載。主人公の黒沢は44歳、独身。高校を卒業して以来26年間、建設会社で現場に出て働き続けてきた。しかし、ワールドカップサッカーの熱狂が「他人の祭り」にすぎないと気づいたとき、自分の人生のあまりの地味さに愕然とする。
7月27日放送分。
「てめえら……!」
少年KING連載。「手芸のえっちゃん」とも言われる江口洋助率いる4人の仲間たち「湘南爆走族」が、バイクで疾駆し部活やバイトや遊びに精を出し、ときどき対立チーム「地獄の軍団」とケンカしたりするギャグあり涙ありの青春「ゾク」マンガ。
7月20日放送分。
成年コミック誌。中綴じ。コンビニ売りもしている。
掲載作すべてが「超能力ネタのエッチもの」という増刊号。雑誌タイトルがすごいな。以前にデータだけあげたのだが、読んだから感想。一昨日、コンビニに行ったらまだ売ってたし。
漫画ゴラク連載。航空自衛隊一等空尉だった源都夢は、天才パイロットと呼ばれていたが、度重なる個人プレーで高価な戦闘機を何機も潰してクビに。そんな彼が始めた商売が、「紛争調停人(トラブル・シューター)」だった。クライアントが表沙汰にできないトラブルを迅速かつ秘密裏に解決する、と約束する源都夢のお手並みはいかに。
「漫画大衆」連載。魚屋二代目の鯖吉は、三十過ぎてていまだに独身だが、スケベ心は人一倍。元ヤンキーだった腕を買われて、関わった美女のトラブルをなんとか解決する。で、それで感謝されようが拒否されようが、けっきょく美女をヤってしまうのだった。
・「ソニン物語」第5回(最終回) 姫野かげまる(2003、ザッピィ8月号、メディアファクトリー)
・「最強伝説 黒沢」(1) 福本伸行(2003、小学館)
・安倍なつみ、モー娘。卒業
【テレビ】・「ハロー! モーニング。」(2003、テレビ東京)
・「湘南爆走族」(11)(1986、少年画報社) 第4話 1/5LONELY NIGHT(全)
・「湘南爆走族」全16巻 吉田聡(1983〜88、少年画報社)
【テレビ】・「ハロー! モーニング。」(2003、テレビ東京)
・「YOUNG キュン!」8月号(2003、コスミックインターナショナル)
・「超人ヤングコミック」 ヤングコミック増刊8月号(2003、少年画報社)(感想)
・「凶獣イーグル」(1) 西塔紅一、山口正人(2003、日本文芸社)
・「恋する鯖吉」(2) 桜壱バーゲン(2003、双葉社)
・「ソニン物語」第5回(最終回) 姫野かげまる(2003、ザッピィ8月号、メディアファクトリー)
「カレーライスの女」、「津軽海峡の女」、ドラマ「高校教師」出演、「東京ミッドナイトロンリネス」、アルバム「華」、初のライヴツアー、そして現在の心境と続く。
最終回は、なんだかすごく駆け足だった。マンガとしては不満も残るけど、それはマンガ家や編集者だけの責任ではないと思う。いったいどのキャラクターが動かせて、どのキャラクターが動かせないのか? その辺の中途半端さが、大きな感動に導かれない原因じゃないのか。ここに出てくるのは、ほとんどソニンだけである。
ユウキを出せとは言わないが、和田マネージャーなりつんく♂なりがもう少し師匠役で出てきてもよかったんじゃないかと思った。よき師やライバル、縁の下の力持ちが出てこないと、芸能ものは盛り上がりにくい。
なお、単行本化決定だそうである。
・「ソニン物語」第4話感想
(03.0731)
・「最強伝説 黒沢」(1) 福本伸行(2003、小学館) [amazon]
それから、黒沢は人生のかがやきを得るために、ジタバタとあがいていく……。それが「現場の連中にアジフライを1枚おごって、ありがたがられたい」という小さなものであっても。
各所で話題の1作。「まだ読んでないんだよねぇ」とあちこちで言うたびに、
「いや……」「新田さんはちょっと……」「読んだら凹みそうで……」「そうだよねえプックク(江口寿史のマンガ風含み笑い)」、「いや……! 何もわざとはずしたわけじゃないっスよ……!」、「そうそう……!」、「流れっていうか……タイミングっていうか……」、「あるじゃないっスか……そういうこと……!」
などと言われ続けてきて、恐くて読めなかった。内容がどうよりも、なんかそういう雰囲気が恐かった。
で、読んだ。
別に凹まなかったよ。世の中、いろいろ複雑な事情があんだよ(苦笑)。
ネットの意見もざっと見た。「辛くて見てられない」っていうのもあるんだけど、自分はもっとひどい人生を送っている人間もたくさん知ってるもん。
また私自身が黒沢よりひどい人生を今後送る可能性は充分にあるので、別にそんなね、身につまされるというのは実はあまりない。中年にはそんなヒマないです。
それよりも、今さらながら福本伸行のうまさに感動した。
たとえば、おごったアジフライを逆に盗んだとカン違いされて、黒沢が現場に置き去りにされてしまうエピソード。黒沢を置き去りにした若い衆は、黒沢が優秀な現場監督である赤松のアジフライを盗んだとカン違いして「こらしめよう」と思ってそういうことをする。
読んでて凹む人っていうのは、行為が裏目裏目に出てしまう黒沢を見て凹むんだろうけど、私がこのエピソードですごいと思うのは、やっぱり赤松の人望が自然に描かれていることと、赤松に憧れていて黒沢を置き去りにしたという若者の一種の「男気」が、逆に黒沢に降りかかって来るといううまさ。
要するに、明確な悪人っていうのはここにいない。
これで黒沢の人望のなさが完全に妄想で、みんながそれほど気にしてないなら単なるながいけんの「平口くん」とか坂本タクマの「大河原」みたいなギャグに振り幅が振り切れてしまうんだけど、そこまででもない。実際に黒沢には人望がない。そのバランスがすごいと思ったの。
後は、たぶん作者は黒沢というキャラクターに愛を注いでいると思うんだよね。だから、読んでいて私は凹むというのはない。強い悪意を感じないから。
それと、あびゅうきょの描く「影男」(→感想)とどっちが不幸か、ということを私も考えてみた。そりゃ、圧倒的に影男の方が不幸だろう。なぜなら、彼にはアニメやマンガという「好きなもの」があるのに不幸だから。いや「好きなもの」とか「シュミ」とかいう問題ではない。影男は思想というか、ものの考え方というか、思考ルートというか、そういうものを得ているのになお不幸だからだ。
本来、思想というか、ものの考え方というか、思考ルートというか、そういうものは人間を幸福にするためにあるはず。厳密に言うとそうじゃないらしいが、現代人に必要なのは自分を幸福にする思考ルートだろう。
影男はソレを模索しようとして失敗している。だから、私は影男のシリーズはマンガとしては好きだけれども、思想というか思考というか、そういう点では賛同はできない。
一方、黒沢が26年間そういうものを必要として来なかったのは、単に学がないからではないだろう。それはちょっと先走りすぎか。
いずれにしろ、メディアが提供してくれるものが「他人事」、「他人の祭り」だということに黒沢は気づいた。影男はそれに早くから気づいていながら、それにすがらざるを得ない。そうした絶望の違いはあるだろうね。
ちょっと本作のテーマとはズレた話になるが、メディアから提供されたものをどう享受するかには、やはり「あやし方」があると思うのだよ。「刃牙」に出てくる本部以蔵が「空手のあやし方」を知っていたようにね。
それより凹むのは、むかし坂辺周一が描いてた、ユースケ・サンタマリアそっくりの主人公がネット不倫する話だよ。「いまだにオレは若い」と思い込んで、しみったれた不倫するヤツ見ている方がよっぽど凹む。
(03.0730)
・安倍なつみ、モー娘。卒業
そうか、今頃コンサートなんですね。一度は言ってみたいなぁ。孤独。
さて、ハロモニ(→感想)でゲラゲラ笑っていたり、酒をガブガブ飲んでいたりした間にこんな発表があったそうです。
安倍なつみ、モーニング娘。卒業を発表!! (公式)
なっちモー娘卒業!つんく♂が電撃発表(ニッカンスポーツ)
なっち 来春にモー娘。卒業(デイリースポーツ)
私のような半可通の視点から言わせていただくと、「そうか、こう来たかー」という気持ちと、「安倍なっちがソロになるにはいい時期では。」という気持ちがある。
えー何だっけな、ずっと前になんかの雑誌に「安倍なつみは、ソロになる時期を逸してしまった」と残念がって書いてあって、それは私もちょっと思っていた。
実はなんで安倍なつみが「マザーシップ」と呼ばれるほどの「娘。」の中心になり得ているか、その具体的な理由はよくわからないんだけど、しかしアイドル好きの私からしても、安倍なつみが中心になってしかるべきだという気はしていた。
それは、安倍なつみがアイドルという意味でもアーティストという意味でも、正当性を獲得しているか、あるいは正当性を獲得する可能性がある存在だと私が思っているからなのだが。
ところで、少しうがった見方をすれば、昨年からの次々に先の発表をしていくつんく♂のやり方は、人為的にグループの活動に「過去」と「未来」をつくるということだと思う。
「保田圭卒業」と言われれば、その瞬間から卒業までの活動はもう「思い出」になることが定められることになる。過去はすべて思い出になるが、時間が区切られるとその強度は増す。
「新プッチモニをやる」と言われれば、それは「未来」となる。いつかくる未来。
「さくら組」も「おとめ組」も未来。当然、大所帯のモー娘。は過去、思い出となる。
観客は、現在進行形の物事を「思い出」ととらえはじめるし、これから起こるであろうことを「未来」ととらえはじめる。直接売り上げだの何だのについてはわからないが、このことはグループの存在に特別の意味を付与させることは間違いないだろう。
古い話で恐縮だが、キャンディーズが解散を決めたときから、その活動は特別なものになっていた。キャンディーズの3人が解散までの何カ月かで「そうよ! 私たちには時間がないのよ!」という、妙なギャグを何度も言っていたのを思い出す。
つんく♂は、それを人為的に、何度も何度もつくり出そうとしている。
むろん、それはまったくの捏造ではない。今までの「卒業」にはすべて意味があった。「タンポポ」改変は意味があったかどうかわからないけど、「ミニモニ。」や「プッチモニ」にはそれなりの意味があっただろうと思う。
それがハロプロの恐ろしさであると言えるだろう。戦略とか何とかいうこともあるだろうが、やはり本気なのだ。単なるシステムではない。この時期の安倍なつみの卒業には意味があると、半可通の自分でも思う。年齢的にも再来年では遅いだろうし。
しかし、これは常にイベントを発生させなければならないということでもある。個人的に、一時期格闘技の「PRIDE」を一生懸命見ていたが、やはり桜庭・ホイス戦がひとつの頂点だった。その後はもうわからなくなって、見なくなってしまった。
だから安倍なつみが抜けた後のモーニング娘。がどうなるかについて考えた場合、卒業を後藤、保田、安倍クラスのイベントとして盛り立てられる人材が今後現れるかどうかにかかっていると思う。
もっとも、これはあくまでも「モーニング娘。」を不可侵にした場合の予想であって、思わぬ手を打ってくることも当然、考えられるのだが。
ただひとつ思うのは、この「本気」の卒業が、いつか捏造にすり替わるかもしれないということを、観客は見ていなければいけないということだ。自分は、ものを見て感動はしたいが、振り回されたくはない。悪意をもって見れば、つんく♂は受け手のセンチメンタリズムを小出しに出させて商売をしているとも言えるのだから。
「解散」をすればいっぺんで終わりだが、メンバーを「卒業」させていけば同じイベントが人数ぶんできるということになるのだからね。そのことをよく覚えておきなさい。だれに言ってんだ。自分に。「愛と誠」風に。
(03.0729)
【テレビ】・「ハロー! モーニング。」(2003、テレビ東京)
公式ページ。
6期特集。6期メンバー一人ずつに自己紹介を書かせ、オリみたいなのに入ってもらって、その間に他メンバーが同じ項目に自分たちから見た感じを付け加えていく。その声は、オリに入った人間には聞こえない。
本当にプロレスみたいになってきた。藤本美貴の「ふてくされたように足をブラブラさせるクセ」をモノマネしていた安倍なっち&加護、(藤本は)「軽いヤンキー、軽(かる)ヤン」という発言など、あまりに忌憚がなさすぎて個人的にはハラハラしながらも、非常に満足した。
天真爛漫すぎる毒舌の吉澤ひとみもナイスだ。ちょっと藤本に対し(おそらく悪意を持って)はしゃぎすぎな安倍さんとは対照的に、よっすぃーはだれに対してもあんな感じなんだろうな、と思わせる。
「ハロモニ」は、もともとホンネがどうこうという番組ではないと私は認識しているので、藤本のマイナス要素(と私には思われる)は洗い出してギャグにしてしまった方がいい……とは思うが、なんかギリギリだったという気もする。
ま、あんなことでいちいち凹む藤本ミキティーじゃないもんな。そこは見習いたい。
他の感想サイトをいくつか覗くとどこも「道重はスゴイ」ということになっていたが、五期と比較してしまうのもナンだがやはり道重はトークにおいてすごいと言わざるを得ない。
私としては「自分で自分をカワイイと思う」と断言してしまえることが、80年代アイドルと現在のアイドルの最大の違いだと思う。「現在の」といっても、言っていいタイプと悪いタイプがいるんだけどね。松浦や道重や亀井は言っていいタイプ。
これは80年代テイストを漂わせている石川梨華が、「自分はカワイイ」といっても「決して本心ではなく、ギャグ」と受け取られることと正反対であるところにも注目したい。
他にも注目すべきところは多々あった。まず司会の保田をさしおいて徹頭徹尾安倍さんが仕切っていた点。なぜなんだ?
そして、いろいろよくしゃべる六期をきっかけに五期に水を向ける矢口。紺野に「道重と自分はタイプが似ていると思わない?」と聞くが、紺野に明解な返しはなし。なんでだ! 道重をダシに自分をアピールするチャンスだろうに!
さらに、「六期とよくメールしている」と発言して「どんなことを言い合っているの?」と質問され、あんのじょう答えられない新垣。あーイライラする! なんで何でもいいから適当言えないんだ!(まあ私だったら言えませんけどね)
あと面白かったのが「田中れいながダンスレッスンで着てくるTシャツに、オニみたいなのが描いてあって恐い」という話題になったとき、飯田かおりが「のの(辻)とかあいぼん(加護)だって、中学生の頃はクマちゃんのTシャツとか着てたのに……」と言ったら、辻・加護から同時に「そんなの着てない着てない!」という反論が。
あのくらいの年頃の子にとって「かわいい」と「幼稚っぽい」には明確な線引きがあるんだろうな、きっと。
「田中れいなヤンキー説」は、早くもお腹いっぱいという感じだ。後藤真希ヤンキー説にはロマンがあったが、田中れいなヤンキー説にはロマンのかけらも感じない。
亀井が「自分の方がかわいい」と言ったときに、明らかにプーッとふくれた道重は何なのだろう。なにげに名シーンだった。「ハロモニ」においては、辻のやきそば涙に匹敵すると思う。まあそこまで思っている人間はいないのかな。
亀井は、今のところ目立っていないが、どこでどう化学反応が起こるかわからない。
今後に期待する。それと足がきれい。モー娘。に新たなる太股エンジェル誕生かも(旧は後藤真希)
「かっぱの花道」は、夏なので怪談ネタ。ああもういいや、という感じ。もはや初期ミニモニ。の何もここには残っていない。厳しい言い方をすれば、辻・加護に後の二人が付随しているだけだ。
高橋愛の美少女ぶりはぐんぐん増していると思うが、それが「ミニモニ。」に何の貢献もしていないところが哀しい。
私はユニット改変などの予想をあまりしない人間だが、「ミニモニ。」に関しては新メンバー投入は検討されているのではないかと思う。やはり道重か。
「投稿! 笑わん姫」は、面白かったが本編に食われてしまった。
「ハロプロワイド」で紺野に飯田が「軽説教。」というのがものすごいリアリティあったな。
ちなみに、力学(ちから・まなぶ)用語では「軽説教」は「甘説教」と言う。娘よ、このことを覚えておきなさい。
(03.0729)
・「湘南爆走族」(11)(1986、少年画報社) 第4話 1/5LONELY NIGHT(全)
「てめえら!!」
「オレ達ゃ何年間!!」
「湘爆とケンカしてきたんだ!!」
「バカヤロウ!」
吉田聡の出世作「湘南爆走族」(→感想)のワンエピソード。
イヤな男に言い寄られているところを、江口に救われひと目ぼれしてしまった女子高生、絵籐都志子。しかし、そのイヤな男と、以前に別れた男は二人とも湘南爆走族の敵対チーム「地獄の軍団」の一員だった。
二人と絵籐都志子をきっかけにトラブルになった湘爆・江口と、地獄の軍団のリーダー・権田はタイマンで対決することに……。
個人的には全エピソード随一のケッ作だと思う。「湘爆」は、おちゃらけ話とシリアス話が交互に繰り返されるという、昨今の少年マンガ(とくに少年マガジン)のパターンのさきがけだと思われるが、現在ほど決まりきった繰り返しではなく、その不定期さがそれなりにまた良かった。
シリーズ中、最初の長編シリアス話になるのが単行本第3巻の「横須賀ハッスルジェット」、続く第2弾が第5巻の「青ざめた暁」だと記憶している。
個人的にはどちらも強い印象を残しているが、「ハッスルジェット」の方は「これって、権田がでしゃばってこなければ起きなかった問題じゃないの」という感じがしたし、「青ざめた暁」は、敵チームとの抗争ばなしだが単行本1巻以内におさめるために、登場するイイキャラもそれほど活かしきれなかったような印象はある。
で本作なんだが、「だれが悪い」という真犯人探しで終わっていない点、絵藤さんの片思いが抗争につながっていてまたそれをきっかけだけに終わらせていない点、作品内でも明らかに「ワル」的存在である「地獄の軍団」の権田が、ワルらしく男気を見せる点など、非常によくまとまっている。
ラストもむちゃくちゃクサいんだけど、それもまたよし、という感じのエピソードだ。
「気づかなかったけど、この頃に何かが変わってしまったのだなあ」などと最近よく思うが、この単行本が出た86年頃から3年間くらいの間に、いろんなことが変わってしまった。
同じようなエピソードのマンガはその後も発表されていくが、やはりどこかが違う。「こういうパターンがあるからやりましょう」っていうのと、なんとなくできあがってくるものとの違いというか。本作は後者の泥臭い感じがとてもいい。どっちも好きだけどね。
(03.0727)
・「湘南爆走族」全16巻 吉田聡(1983〜88、少年画報社)
いや〜15年ぶりくらいに読んだけど、殺人的に懐かしいわ。なんかダラダラ書いてたらいくらでも書けそうな感じ。
とりあえず、連載当時の状況を私なりに説明してみる。83年頃は、「横浜銀蝿」が出てきてツッパリ(今で言うヤンキー)のスタイルが世間的に認知されつつあり、またそれが社会問題視されつつある時期でもあった。きちんと調べていないが、暴走族を主人公とした本格的な少年マンガは本作が始めてではないかと思う。
少年KINGには五十嵐浩一のバイクマンガ「ペリカンロード」も同時に連載されていて、こちらもゾクがらみの抗争に巻き込まれたりしていた。まあ基本的にはバイクブームでもあったということですな。
作者の吉田聡は、確か少年KINGか旧・少年キングのデビューで、それはゾクマンガでも何でもなく、ギャグマンガだったと記憶している。そのせいかどうか、本作に「ホンモノらしさ(本物の暴走族らしさ)」はあまりない。チーム名などはすべて元ネタをまったく予想できないモノで、むしろ実録的な部分は無い。それでもたぶんモノホンの人たちからも、バイクにたいして興味のない人たちからも愛されていた。
コミケで湘爆のコスプレをしていた人たちを見たこともあるから、ヤンキーにもオタクにも愛されていたということで、そういうのは当時は非常に珍しかった。
その理由をここで断定してしまうのは吉田聡の資質を決めつけてしまうようでつまらないからしないが、今読むと登場人物たちがバカ正直で妙に熱くて、クサいお話を臆面もなく展開させていて、そこがものすごくいい。
当時の作家でいうと、その対極にいて「クサい話をクサい話として描かない」のがあだち充とか高橋留美子だったと思う。いや、ときどきシリアスな話は書くんだけどその頻度は比較で言うとすごく低かった。
そして、そういうクールな描き方はある意味定番になっていく。が、それはまた別の話か。
とくに懐かしさをそそるのは、江口のガールフレンドで手芸部の副部長・津山さんとその友人の民さんの描き方。この頃は少年マンガの女の子キャラに「属性」などという便利なものはなく、また女の子の描き分けは少女マンガよりもハッキリしていなかったから、メガネをかけていてマジメでオクテな津山さんと、ちょっと大人びている民さんの描き方が非常におとなしい。
たとえば津山さんは「おとなしくてメガネをかけている」という設定だがドジっ子でもないし、超がつく優等生でもない。対照的に描かれねばならないはずの民さんも、たとえばオクテの津山さんとは逆にものすごくススんでるとか、そういうのがない。
まあ、もともと「湘爆」のキャラクター全体が、江口以外は連載が進むに連れて練られてきた感がある当時としても独特なものだが、それにしてもこのおくゆかしさが当時なりのリアルだったと思う。
ゾクマンガなのに、お話のラブコメ部分でだれもかれも現在に比べるとものすごく純情なのも懐かしい。あーやっぱりこの頃のこういうのがいちばんいいなあ。湘爆に比べたら「いちご100%」なんてすごく淫らなマンガですよ。まあそこがいいんだけど。
「キックオフ」を再読したときにも思ったのだが、本作でも学校行事などが意外なほど丹念に描かれている。この頃のマンガの中の生徒の多くは、学校の行事と一体化しているかのようだ。
そして、キャラクターの高校卒業と同時に連載も終わる。最終回は初めて読んだが、高校三年になっても、卒業式の当日も全員のその後の身の振り方(マジメな津山さんでさえ)がまったく描かれていないことに驚いた。考えてみれば本作は一種のファンタジーなのでそれも当然なのだが、こうやって思いきりそらっとぼけるのもイイもんだね。
まあもともとバイクマンガというのはおセンチなものだが、最終回が近づいてくるとセンチメンタルな回も増えてくる。津山さんは、最終回で忘れ物をとりに卒業した高校に訪れる。そこで、学校に封じられたさまざまな思い出の幻を見て、学校を後にする。
最近は学校の卒業にここまでセンチメンタルになれるだろうか? などと思った。何もかもが変わってしまったねえ。
(03.0726)
【テレビ】・「ハロー! モーニング。」(2003、テレビ東京)
みんなで浴衣着て、一人ずつ「メンバー一人だけが当たるクイズ」を出題するという趣向。
前回、
「アイドルコントに栄光あれ〜!」と叫んで、感想はこれで最後とさせていただきます。
と書いたが、読んでくれている人もいるようなのでできるかぎり続けようかな、と思い直したりして。
基本的に感想の薄いサイトやら同人誌やらをやっていると、けっこうプラス方向で「読んでます」という感想は嬉しいですしね。
「アイドルコントに栄光あれ〜!」と叫んで爆発してしまった私は、実は日本の武術であるバリツを学んでいたので復活したということで。
で、今回、ゲーム部分は意外と面白かった。もう完全にプロレス的見方で見ていたんだけど。かつての新日的な。最近はよく知らないんでかつての、って付けておくけど。
グループには必ず「大ボケ」キャラが必要なようで、モー娘。の場合、二期まででどうだったのかはわからないけど四期以降は辻、加護が大ボケの筆頭株だった。
面白いのはキャラクターが必ずしも固定していないところで、ときによっては大ボケ役が安倍なつみになったり吉澤になったりしていたわけだけど。この辺もキャラの層の厚さを感じますね。
で、五期メンバーが入ってから、当然「駆け出しだから許される」的な大ボケ役を五期のだれかが担うはずだったと思うんだけど、どういうわけだか強力なキャラが出なかった。
この辺のしのぎあいはまさにプロレス的。辻・加護パワーが強すぎた面もあっただろうし、個人的にボケキャラになりそうだと踏んでいた紺野は、「実は頭いいキャラ」に本当になろうとしている。
ぜんぜんカンケイないが、かつての音楽番組「Musix!」のゲストで出ていたオタキング岡田斗司夫氏のキャラ分析が、数年後の現在、本当に当たった。いや紺野以外は何て言っていたか忘れちゃったけど、紺野に関しては当たった。
それが、六期の道重さゆみは研修期間を終えて早くも「新人大ボケ」の役を担おうとしている、と今回のクイズで感じた。田中れいなの肝の座りっぷりは自明だけれど、六期を見ていると五期のかつての遠慮深さがよけいわかってしまって面白い。
また、辻、加護に関しての私と力学(ちから・まなぶ)(注:普通人でありながら異次元的な人)の見解としては、ある程度狙ったボケを放ってくる加護と、全方向的に無思想なボケをかましてくる辻、という比較が定説である。
実際、加護が狙って笑わせようとしているのは事実らしいし、辻は辻なりの計算があるのだろうが、思惑どおりに行かないところが面白かったりする。
それで、加護は着実に当てていこうとするし、それがけっこうデカかったりするのに対し、辻は空振りとホームランの差が激しいように思う。この微妙な差が面白い。
今回、ガチンコでクイズの正答率が高い、という理由で結果的には辻の方が加護より目立ってしまうところなどは象徴的。しかし、たまたまだったような気もしていて、そういう意味でも二人は絶妙なライバル&パートナーなのだろう。
もう本当に「バツ&テリー」か、「ウダウダやってるヒマはねェ!」かっていうくらいの。しかも女子。これは新しい(「ダーティ・ペア」を連想したキミは、アニメショップ・ペロでバイトでもしてなさい)。
それにしても安倍なつみの潜在的ボケ飛躍ポテンシャルは、彼女が「モー娘。のマザーシップ」であるがゆえに全開できないのではないかと勘ぐってしまう。それほど個人的には彼女のボケは私のお気に入りである。
一方、「セクシー女塾」で矢口が自分の回答を自分で「シュールでしょ?」と言ってしまうのは本当にやめた方がいい。何でも「やりきる」のが美点だが、そこまでアピールしてはすべてが台無しになってしまう。
まあ今回、最も大きかったのは以前にも書いたが新曲「シャボン玉」だったわけだが。本当にこのアグレッシヴさは今日び貴重だ。最も売れるかどうかはわからないが……。
うん、今日もどうでもいいことを書いたぞ。余は満足だ。朕は国家なり。
(03.0724)
・「YOUNG キュン!」8月号(2003、コスミックインターナショナル)
いつの間にか公式ページ(コスミック出版)が出来ていた。
「陵辱遊戯」毛野楊太郎が、連載第2回。
父親が痴漢冤罪のため自殺、母親もおかしくなってしまった少女・碓氷希(うすい・のぞみ)。彼女は叔父の家に引き取られるが、その叔父からは好色な目で見られ、従姉妹の美里からは辛く当たられる。
しかし、それはエスカレートし、いつしか希をクラスメートに輪姦させるという自体にまで発展してしまう。
正直、このマンガは読む前から気が重い。薄幸な少女が徹底してヒサンな目に遭う物語だからなあ……。何というか状況的なヒサンなので、個人的にはエロス的興奮度も低いです……。
「ヒロインがどんどん不幸になっていく」Hマンガや官能小説は数多いが、それは坂道を転げ落ちるように、「不幸のつるべ打ち」がなされるからである。しかし、本作は前回と今回を読むかぎり、希も含めた個々のキャラクターの思惑のズレが歯車のかけ違いを生じさせて不幸に至るという点において、興味深い展開になってはいる。
執筆者は、他に影乃いりす、Cuvie、高苗京鈴、水島空彦、日由るま、氷純舞、りゅうき夕海、百済内創、よしき龍馬。
(03.0720)
・「超人ヤングコミック」 ヤングコミック増刊8月号(2003、少年画報社)(感想)
山田こうすけ「透明社員」がメインで、単行本未収録作品が3本載っている。
本作は「左手でオナニーして射精をガマンすると、服ごと透明になれる」サラリーマン・清水が、透明になっては女の子にイタズラするという他愛ない話。
山田こうすけは月刊少年チャンピオンで連載されていた「ためしたガール」も読んだことがあるが、女の子のキャラクターが異様にドライなのが特徴か。「ためしたガール」なんて、「自分が魅力的かどうか」を気の弱い主人公を誘惑して毎回実験する、というのが主旨だったから性悪な話だよね。
絵的には、ややH系のグラビアのようなポージングが誌面に展開されているのが特徴。
他もひととおり読んだが、こういうワンテーマのアンソロジー的なHマンガというのは、そのテーマにどれだけ情念を持っているかでどうしても面白さが左右されてしまう。逆に言えば、「超能力でエッチなことをしたい」と考えたこともない執筆者は苦しかっただろうなぁと思わせるものが多かった。
「10倍感じさせて」武林武士が、主人公がミクロ化してセクシー女医さんとやっちゃう話。巨大女の好きな人はどうぞ。
「STOP!」車海老は、「時間が止められる」という設定だが昨今のギャルゲーにありそうなオチはちょっとだけ面白かった。
絵に特徴があって面白いのは「ボッキン☆ラブ」松本耳子、しかし設定がムリヤリすぎる。
「嗚呼! 熱血エスパー番長」小野寺浩二は、あいかわらずの勢いで巻末をシメていた。
執筆者は他に、白虎丸、永野あかね、ちば・ぢろう、東風水生、車海老、、ピロンタン、小野寺浩二、ピンナップが葉月京、THE SEIJI、川本貴裕。
(03.0720)
・「凶獣イーグル」(1) 西塔紅一、山口正人(2003、日本文芸社) [amazon]
基本的に何週かでひとつのトラブルを解決していく形式。おおまかは同じ原作者の「野獣警察」(→感想)と似たような感じだが、とにかくツカミである第1話がものすごくぶっとんでいたので、普通のハナシになってから物足りなく感じてしまう。
とりあえず、何にでも飛行機をからませてほしい。それが主人公・源都夢の、トラブル・シューターとしての最大の特徴なのだから。
人を食った、ワクワクさせてくれるネームはあいかわらず、好調。
(03.0717)
・「恋する鯖吉」(2) 桜壱バーゲン(2003、双葉社) [amazon]
基本的には1巻の感想で書いたことと、思うところは変わらず。
第2巻を読んで気づいたが、本作はいかにも寅さん的な設定を備えていながら、トラブル解決を頼んでくる女もけっこうズルいやつとかいいかげんなやつが多くて、マドンナ的な主人公が不可侵な女性とかは出てこない。要するに、出てくる女性が全員ビッチなの。
「ズル」とか「いいかげん」っていうのも、女のしたたかさとか魔性とかじゃなくて、単にズルとかずぼらなだけ。どんなやつが出てきても、偏差値40くらい。
でもそれがイイと思うんだな。そんなアタマのいいやつばっかりで、世の中できてないと思うし。女の人の造形はみんなエロいし。
ところで「真珠夫人」などをやっていた時間帯に、「寛太ですッ」というドラマが始まった。新聞屋の息子・寛太が、ご近所のトラブルを解決しようとしたり、憧れの女性にメロメロになったりといった本作に酷似した設定だが、当たり前のハナシだが人情ものにシフトしていて印象はぜんぜん違う。
もしかして「ご近所一心太助的作品」のブームなのだろうか。違うと思う。
(03.0717)
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