◆ 1999年1月中旬 ◆

1/11〜20
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1/20(水)……勇者ポンセ様

 週刊ベースボール(ベースボール・マガジン社)を購入。なぜか吉田戦車がインタビューされていたのだ。モノクロで4ページ。吉田戦車の顔写真も半ページ分くらいの大きさで掲載されている。こんなでっかく吉田戦車の顔写真が載ったのってあんまりないんじゃないだろうか。インタビューの内容自体は、漫画と野球をなんとか関連づけようとしていて無理がちょっと感じられるのと、いってることが平凡なんであんまり面白くはない。ちなみに吉田戦車は昔は大洋ファンで(そういえば作品の中に登場する野球選手は大洋ホエールズのユニホームであることが多かった)、現在は広島ファンだとのこと。赤ヘルをかぶった(といってもモノクロだが)、かわうそのイラストも掲載されている。吉田戦車の顔が見たいという人は立ち読みくらいしとくといいんでないかと。

【雑誌】週刊少年サンデー 2/3 No.8 小学館 B5平
「なぎさMe公認」はフランスでも好調のなぎさに対して、まーくんのほうが転倒を身体が恐れてしまって不調に。ラブコメ編もいいが、ガチンコのレース編も駆け引きとかけっこう面白いのだ。久米田康治「かってに改蔵」は、部長すずの(自称)ライバルが出現。かつての伏線を生かしてきた。ああ、単行本1巻を読んでおいてよかった。ひょっとして単行本販売促進のための登場?
 今号のサンデーを読んでいて、少しマンネリっぽい感じがした。そろそろ新連載の一つも欲しいところか。

【雑誌】週刊少年マガジン 2/3 No.8 講談社 B5平
 森川ジョージ「はじめの一歩」。闘いの前のインターバル。休息期間で女の子を登場させつつ、一歩が力をつけたことを読者に実感させるあたりがうまいなあ。塀内夏子「Jドリーム完全燃焼編」。吉川がついに出場。新旧交代をまざまざと見せつけた。攻撃的なサイドバックは好きなので、これからの試合展開がさらに楽しみになってきた。本島幸久「蒼き神話マルス」。レースが終わったら、何やらこっぱずかしいラブコメ。いやあ、ベタベタだ。あと、スノボ漫画「High Life」(作:神先史土+画:いずみ誠)が新連載。あんまり長持ちしそうにない感じ。

【雑誌】ヤングマガジンUppers 2/3 No.3 講談社 B5中
 桑原真也「0(ラブ)リー打越くん!!」はついに巻頭カラー。見開きの扉が本編とかなり関係なく色っぽくていい感じ。本編では打越が豹変。本性をむき出しにして先輩に襲いかかるが……。さらに新たな女の子キャラも出現し、ますます盛り上がりそうな気配。こばやしひよこ「でぃすぱっち!!」。冒頭の女性の全裸変死体を描くときのアングルが妙でいい。主人公たちが話しているのに、一番前方でピントが合っているのが被害者の尻だったり乳だったりするのだ。最近開き直った展開が魅力。一色まこと「ピアノの森」。森でカイがピアノを弾く姿を、音楽教師・阿字野が目撃し衝撃を受ける。カイは本格的なレッスンを受けることになるのか。気持ちよさそうにピアノを弾くカイの描写がなかなかかっこよく、いつも手堅く面白い。

【雑誌】ウルトラジャンプ No.26 2/25 集英社 B5平
 寺田克也「西遊奇伝 大猿王」。今回は雪山で悟空を襲うバケモノとの対決。やっぱり高い画面のクオリティに加え、今回はバケモノ側がかなり哀しく切なくて良かった。藤原カムイ「福神町綺譚」は相変わらず好調な感じ。今回はおまけページの「福神町通信」に俺がモデルらしいキャラクターもいるぞ。「む〜ん」とかいってる。
 あと大暮維人「天井天下」と伊東岳彦「アウトロースター」はかなり豪快に落ちている。体調不良のこと。風邪には気をつけよう。そのせいかしらんが「天井天下」「アウトロースター」のテレホンカード大プレゼントがある。

【単行本】「パーコレイション」 SUEZEN 角川書店 A5
 ちょっと遅れ気味の反抗期を迎えた・黒葛野 藍(つづらの・あい)16歳はおてんばで奔放だけど、おじいちゃん子で根は素直な女の子。彼女の周りで起きる、不思議な出来事を描いた作品。藍は近所の神社で子供の狛犬が動くのを見かけるが、そういったこともありのままに受け容れてしまう柔軟な頭の持ち主。不思議なことを不思議なまま、ごく自然に受け容れる作品世界の穏やかさは気持ちがいい。そしてやはりSUEZENの絵はいい。目の端っこがきゅっとつり上がった猫目な感じでクセはあるのだけど、スラリと伸びやかで洗練されている。コロコロと転がるような不思議な味わいがある。
 ストーリーもなかなか読ます。ラストのおじいちゃんとの別れ、そしてそこからちょっとだけ大人になっていく藍。爽やかにスーッと消えるような読後感がある。眺めていてとても楽しい。

【単行本】「西遊記」天の巻 藤原カムイ NHK出版 A5
 天の巻だが2巻め。増長した孫悟空が天界と地上を巻き込み大暴れし、その後釈迦牟尼によって五行山の下に封印されるまで。天界の送り出してくるさまざまな討手を次々になぎ倒していく悟空の姿が、敏捷で力強くイキイキしている。孫悟空のやることは乱暴だが、表情とかは愛敬があって見てて楽しい。「西遊記」モノの場合、ここまではどの物語でもそれなりに見せてくるので、三蔵法師に出会い一つ二つヤマを乗り越えたあたりつまらなくなってくる作品が多い。ここからどう展開するのかがカギだろう。三蔵に会うまでに2巻を費やしており、だいぶ本格的。ここまで面白かったので次巻以降も期待。


1/19(火)……俺たちのディールド

 下ネタ御免!

【雑誌】きららセーズ 2月号 秋田書店 A5平
 天堂きりん「LAZY MOON」が連載2回目。親友の彼氏と肉体関係を持ってしまった女の子が、結局その男の本当の気持ちがつかめず切ない想いに身を焦がす。そこにからんでくる隣の家に住む少年……って感じの展開。素直な絵柄で少女の恋愛模様を描き出しててなかなか面白い。あとはいしだわかこ「小鳥遊邸の人々」が他愛ないドタバタラブコメでけっこう楽しめた。新人のおおぬきさとる「MIND+」は小野塚カホリの影響があまりにも見え見え。背景とか引いたカットとかがなく、漫画表現的な部分での腕がもうちょっとないと辛い。

【単行本】「かってに改蔵」1巻 久米田康治 小学館 新書判
 科学部の連中によって自分の肉体が改造されたと思い込んだ改蔵を中心に、下品でベタで脈絡のないギャグがえんえんと展開される作品。ギャグがテンポ良く繰り出されてきて、一発のネタだけではそれほどでなくてもしだいしだいに効いてくる。この人って何気に女の子描くのもうまい。だいたい毎回、女の子のカットが何段かブチ抜きでさりげなく挿入されたり、意味もなく色っぽげなアングルのコマがあったりとサービス精神も旺盛。スラッとした足の描き方とか好きだ。

【単行本】「からくりサーカス」6巻 藤田和日郎 小学館 新書判
 勝としろがねが仲町サーカスの一員として溶け込んでいくくだりが描かれる。あえていうなら幕間って感じ。しろがねの柔軟で、かつ一本筋がピッと入った肢体の美しさが目立った。とくにサーカスのフープを使った演技のシーンなど。まあ闘い闘いでいくのもなんなので、長期連載の場合こういうインターバルもまた良し。

【単行本】「俺たちのフィールド」34巻 村枝賢一 小学館 新書判
 ついに最終巻である。W杯本大会、アルゼンチン戦での日本代表の死闘と、その後の和也たちの姿を描く。体力の限界を超えても、なおもサポーターの声援に後押しされて最後まで気合いだけで闘い抜く和也たちの姿が感動的。大げさすぎるくらい大げさなのだが、ハイテンションのまま力強く押し切ってくれた。実際のサッカーがこんな風であるわけはない。でも熱く激しく、そして面白い。
 少年サッカーから始まり、高校サッカー、海外留学、Jリーグ参入戦、Jリーグそして代表戦、W杯とのぼりつめ、和也もサイドバック以外はほとんどすべてのポジションを体験。日本サッカーのおいしいところをほとんど網羅したようなサッカー漫画だった。面白かった。

【アンソロジー】ロリータコミック さくら Vol.2 松文館 A5平
 まただまされてみた。というのは表紙にある「大山田満月」の文字だ。例によって4色イラスト1ページのみ。たぶんそうだと思ってたのでまあいいけど。
 タイトルを見れば分かるだろうけど、ロリータ系のアンソロジー。全体的に可もなく不可もなく、それなりの作品が揃っている。ただ、ロリータ系ならではの業の深い作品はなく、その点は残念。月角「TOY」は例によって幼女に対する愛の深さを感じるのだが、線が荒れ気味のような。あとさすがに月角の作風にも慣れてしまった感がある。巻頭のA・浪漫・我慢「口紅」は、家が貧乏になり借金を肩代わりしてくれた男たちに身体をあがなっている姉妹のお話。まだ熟す前の女の子の、時折見せる娼婦のような表情がわりといいかなって感じ。


1/18(月)……蒼き狼と青き豚

【雑誌】ヤングマガジン増刊青BUTA 2/2 No.6 講談社 B5中
 アナーキーな新人発掘雑誌、赤/青BUTAは絵は下手くそでもいいからアクの強い新人をお求めのあなたにピッタリの雑誌。取り扱い店舗がもうちょっと増えてくれると入手しやすいのだが。
 天野明「少年スピン」が最終回。ブチ切れたタクマは、幼馴染みのカナの友達、リカを強姦したのちさらにカナにまで挑みかかる。知的障害があって、ギャハハハと笑い続けるタクマの姿をあまりにも生の形で描き出すストーリーはかなり絶望的にヤバい。彼の異様な笑いについて、いちおうの説明はつけられてはいるものの、その理屈はタクマ不在の場所で展開される。笑いの本当の意味はこちら側が想像したものでしかないのだ。ラストシーン、リカを犯したタクマがガラスの破片を腹に何度も突き立てながら、号泣しつつ笑い続けるシーンは鬼気迫っていて、戦慄が走る。売れないとは思うが、なんとか単行本化してほしいもの。
 久々登場、永野数馬「成り上がり。」。町の片隅で何をやるわけでもなくただじーっと座り続ける男。町の人々は最初彼を蔑むが、いつまでも意味なく座り続ける彼の姿に自分勝手に理屈をつけ、男に関係ないところでどんどん祭り上げていく。何か大きなものに巻き込まれつつも、男はけして語らないし、ずっと座り続けているだけだ。勝手な期待を裏切ったとき、彼は世間に殺されるが、それでも彼はやはり座ったまま。空っぽな自分を埋めようとせず生きていく姿は、なんとも満ち足りているようにも見える。そして、そういう男の姿を描く永野数馬はやっぱり青臭い。

【雑誌】ヤングマガジン 2/1 No.7 講談社 B5中
 福本伸行「カイジ」は、Eカード対決はだいぶ先が見えた。利根川が自滅に向かって突っ走っているようにも思える。しかし、ここであえてカイジを負けさせて片耳くらい失わせてみるのも面白いかもしれない……とか思ったが、よく考えたら限界ギリギリまで賭けてるから負けると命にも関わっちゃうのか。とにかく次号でどう出るかを見たい。コアマガジン系列のエロ漫画雑誌で描いている、船堀斉晃が読切。タイトルは「リップス」。エロ本系の出版社の新入社員が、自分の仕事に不平タラタラだったが、撮影現場で男優を経験するも勃たずそこで見せつけられたベテランエロ事師の仕事ぶりに目を覚ますというお話。さすがにエロ漫画雑誌で描いているので作風は手慣れているのだが、船堀斉晃の場合、もっとエロエロにしたほうが面白かったと思う。ちょっとヌルい。平本アキラ「アゴなしゲンとオレ物語」では、ケンヂがゲンさんを見捨てて別の運送会社に転職。なんだか職場の同僚の邪悪な表情がとても良かった。コージィ城倉「グラス・ブレス」は、主人公の宇佐美がようやくストライクをとれるようになる。異常なほどの伸びを持つストレートの描写に壮快感あり。

【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 2/1 No.7 小学館 B5中
 石川優吾「よいこ」。風花たちのクラスの担任の先生が、毎度いい味を出している。すげえ下らないんだけど、つい笑ってしまう。能條純一「月下の棋士」は、近づく最終決戦の予感に少しずつ盛り上がってきている。でもとっとと滝川との名人戦まで進めていってほしいところ。青山広美「ダイヤモンド」。早川弟が打席に立ち、兄と直接対決。彼が塁に出れば種田に回るのだがという展開。たぶん塁に出るだろうから、種田との対決もそろそろと思われる。血沸き肉踊る勝負を期待したい。
 で、スピリッツでは次号から吉田戦車の新連載がスタート。タイトルは「学活 つやつや担任」。スキンヘッドに小さなシルクハットをかぶって、ハートマークのついたタンクトップとジャージの下を履いた奇妙な男が予告カットに描かれているが……。楽しみである。

【雑誌】週刊少年ジャンプ 2/1 No.8 集英社 B5平
 桂正和「I''s」。伊織には片思いの人がいるとのこと。それが一貴なのか、別の人なのかはよく分からない、ってとこで以下次号。それにしても伊織の友達の森崎さんが、そんなに大きく出てないが何気にかわいいと思う。伊織よりもむしろこっちだ。樋口大輔「ホイッスル!」。今どき個人だけの力でプレーしようという奴が立ちはだかるところは、なんとも古めかしい展開。しかし、そこが少年漫画らしくていいのだ。

【単行本】「THE NEW MOVEMENT」 KASHIみちのく 司書房 A5
 さっそくオスマンに追加。感想はそっち参照。


1/17(日)……豚骨漫画

 なんか最近読みが弱い。1月ということもあって、雑誌の発行が少なかったということもあるのだが、それにしても自分が弱まっているような感じ。かといって空いた時間で別のことに強まっているわけでもなく、ただ怠惰に暮らしている。こういうのもたまにはいいのだが、このままじゃあいかん。強まらなければ。

【雑誌】コットンコミック 2月号 東京三世社 B5中
 駕籠真太郎「駅前固定」。今回は、世の中のあらゆるものを固定して回る「固定士」の仕事ぶりを描く。何年間も満員電車に足を固定されたままでいることを定められた人々、台所に足を固定された妻、お茶の間で団らん用に固定された妻、そして寝所に固定された妻などなどが描かれる(妻が多いのは、一人の固定士の家に用途別に3人の妻が固定されているから)。不条理でグロテスクな描写を、毎度のことながら説明抜きで進めていく。今回は各ページがいくつもの章に分けられており、一つのコマ、一つのセリフが、章になっていたりして、16ページが実に第42章にまで分かれている。濃厚な描写を実にテンポ良く軽やかに進めていく腕はたいしたもの。駕籠真太郎にしては大人しくキレっぷりが足らないかなとも思うが、ファンは当然チェックするべし。たぶん単行本にはならないのだから。でもやはりこの奇想の数々をまとめて読みたい。KKベストセラーズあたりが単行本にしてくれないかなあ。渡辺ヒデユキ、「SASEMAN」シリーズ「母なる大マ○子」はいつもながらにC級。スーパーヒロイン、サセマンの腰の振動により町全体が揺れ出し、その刺激によって男たちがみんな射精するというなんだかダイナミックでいい加減な展開。この絵の古さがまたたまらない。

【雑誌】メロディ 2月号 白泉社 B5中
 巻頭カラーは柳原望の読切「さんさんさん」。大正時代に出たとこまかせな帝大生が恋人の女学生にバレンタインの贈り物をしたら、それがお固い女学校の教師に見つかって退学に。でもちゃらんぽらんな二人は勢いに任せて結婚することにし、どさくさでパン屋を開業する。軽いノリでかわいらしい絵。気軽に楽しめる作品。連載っぽい話なので続けてもいいかも。野口ともこ「熱いクチビル」はモデルのカオリコとその姉・志織の姉妹の葛藤を、彼女たちをメイクする美容院というか、ビューティ・サロン的なお店のおにーちゃんを仲介させて語るといったお話。絵が安野モヨコとか、三原ミツカズあたりの路線で、オシャレな感じ。もうちょっとダイナミックな展開があってもいいかと思うが、メイクについての企画モノ的漫画のようなので仕方ないか。少し窮屈になっているように思える。
 雁須磨子「どいつもこいつも」。今回は自衛隊内でのバレンタイン・チョコレートをめぐる一幕。自衛隊が舞台とはいえ、やっていることは学園モノのラブコメとなんら変わりなし。ムリして自衛隊ならではのお話を描こうとしてないところが、開き直ってていい感じ。ヒロイン・朱野のボケナスぶりにも心が和む。


1/16(土)……ビニールを捨て町に出そう

 最近、うちの近くの書店(文教堂書店系)2店で、平積みの漫画単行本は一番上の一冊だけビニールカバーをつけなくなった。これはとてもうれしい出来事。できれば全部の本について、ビニールをかけるのをやめてほしいところだが、とりあえず一歩前進。前からいっていることだが、やはりビニールカバーはいかん。
 漫画市場は今低迷していると伝えられているけど、これって書店のビニールカバーもいくらか影響しているのではなかろうかと俺は想像している。雑誌を読んでいる人が「この作品は面白いから単行本を買おう」というのと同じように、書店でちょっと立ち読みをして「面白そうだな」と単行本を買った人が「リアルタイムでこの作品を読みたい」と思って雑誌を買うようになるってことはけっこうあると思う。そして単行本から雑誌を買うようになった人が、同じ雑誌に載っている作家の単行本も買うようになり……という、相乗効果もあるはず。少なくとも俺はそういうふうにして読む幅を広げてきた。
 ビニールカバーは必要悪という人もいるかもしれないが、俺にとっては「ただの悪」でしかない。書店で立ち読みもできなかったら、普通の人はどうやって読む幅を広げていけるというのだろうか。中身も見ずに表紙だけで判断して買えというのか。読者の読む量、幅が膨らんでいかなかったら市場も縮小する。当たり前の話だ。そしてその一因となっているビニールカバーなんて、この不況のときにいつまでもかけている場合じゃない。ビニールカバーを外すと、短期的にはデメリットもあるかもしれないし書店の人の苦労もあるだろう。でも、長期的には市場拡大につながると俺は信じる。

【雑誌】別冊マーガレット 2月号 集英社 B5平
 別マは少女漫画ビギナーな俺には、最初だいぶ敷居が高かったのだけど、慣れてきたらかなり面白く感じられてきた。今では少女漫画雑誌の中でも一番好きな部類。
 河原和音は「先生!」が一回お休みで、100ページの読切「プラチナ・スノウ」が掲載。貴絵と絵美子の二人がスキーに行くのだが、行った先には同じクラスの男連中も来ていて、その中には貴絵の告白を断ったばかりの小野も含まれていた。で、絵美子のほうも、昔から好きだった男の直にバッタリ出くわしてしまう。その4人のスキー場を舞台にした恋愛模様……といったお話。何やら偶然が多すぎるのがなんだが、いかにも高校生っぽい恋愛模様が楽しい。それほどスゴイって感じではないが、手堅く楽しめる。広瀬なつめ「ドキドキしようよ!」が新連載。アイドル大好きの女子高生が、芸能プロダクションの男にスカウトされる。なんだか彼女には「輝くもの」とやらがあるらしく、マネージャーもほれ込むのだが……といった感じの浮き世離れしたお話。なんとも都合よくお話が進むが、絵柄といい展開といい馬鹿馬鹿しくてよろしい。
 中原アヤ「ラブ!ラブ!ラブ!」は今回で最終回。幼馴染みの茜と大和を中心としたラブコメは、ハッピーエンドを迎える。「犬が西向きゃ尾は東」といった感じで、一体といってもいいくらい抜群のコンビなのに、片方が好きといえば相手は引き、もう片方が好きといえば相手はヘソを曲げているといった状態。なかなかかみ合わなかった二人だが、これにて一件落着、ラブラブラブ。なかなか素直になれない二人の姿がなんとも子供っぽくて可愛らしい。面白かった。スッキリとしてきれいな描線の絵も良し。いくえみ綾「バラ色の明日」は連載再開。時は流れて柚子は17歳に。そして、昔柚子をさらっていった男、ゆうじと再会する。ゆうじから投げかけられたのは情け容赦ない真実。メリハリのきいた画面描写、ストーリー展開。とてもうまい。

【雑誌】コーラススペシャル Winter 2/20 集英社 B5平
 宮川匡代「Ribbon」は巻頭カラーで80ページ。知能障害のある男とその恋人、そして彼らを見守る男の妹のお話。男のほうは仕事もきちんとしているマジメな人間なのだが、周囲の人は何かにつけて彼を、さほど悪気もなく差をつけて見てしまう。ごく普通の人が何気なく行ってしまう差別をチクチク描いてきて、読んでいてやり切れないところはあるのだが、その居心地の悪さが俺にはヒット。陰湿に話を進めて、最後にいいお話に仕立ててしまうあたりは仕事してるな、と思う。
 小栗左多利「白い雲とんでいる」。アレもやりたい、コレもやりたいって感じで、コロコロと自分の志す道を変えていく女性、美鳩が主人公。熱しやすく移ろいやすい性格で何ごとも長続きしない(というより次の興味に移ってしまう)彼女がいろいろなことをした後、それでも進んでいくしかないことに気づいていく様子はポジティブで力づけられる。ラストのふわーっと拡散していく感じもいい。それから新人の一ノ坂ひかる「めざめの日和」が良かった。子供のころからぜんそくの発作に悩まされ、自分のやりたいこともできず孤独な闘いを続けている女の子の葛藤を描いたお話。最初のほうは暗くお話がスタートするが、それでも自分を見つめてマイペースで生きていくことを決意する主人公の姿が爽やか。絵にはまだぎこちないところはあるけど(手の描き方とか、年配の人の描写はまだかなり下手)、光るものは感じる。


1/15(金)……いおぎじゅとてちてけんじゃ

 福神町のオフに参加する。このオフは新宿の紀伊国屋で行われた「クラフト・エヴィング商会」の展示をみんなで観ようという主旨で開催されたようなのだが、俺はそちらのほうには参加せず、談話室滝沢での歓談に合流。ひとしきり語り入れた後、居酒屋で飲みカラオケへ。
 最近の福神町のオフは、どうも予定が合わないことが多かったのだが、どうやら参加するのは1年ぶりくらいだったようだ。その間、屋形船とか花見とか楽しそうなことが行われていたのだが、いつもちょうど俺の仕事が忙しいときにバッティングしまくりで悔しい思いをしていたのだ。福神町はウルトラジャンプで企画が進行しているインタラクティブ・コミックのプロジェクトで、4年前の企画開始時点からわりと深く関わらせてもらっていた。詳しくは「福神町に関する覚え書き」を参照のこと。でも、最近は何かと忙しかったこともあり、プロジェクトに協力することがあまりできず、申しわけなく思っていた。でも、オフに参加すると前と同じように楽しくお話できて楽しかった。参加者は藤原カムイ氏を含む8人。プロジェクトに参加していなかったら、こうして藤原カムイ先生に酒の席でビールを注いでいただくこともなかったわけで、首をつっこんでて良かったなあとしみじみする。あと、なんか次の「福神町綺譚」では、俺がちらりと登場するみたいなことも聞いた。ううむ。とまあ、こんなおいしいこともあるので、興味を持った人はガンガン参加するべし。とりあえずはウルトラジャンプを買って、「福神町綺譚」を読むのこと。

【雑誌】ZetuMan 2月号 笠倉出版社 B5中
 あろうれい「あおいのきみ」が最終回。この連載、俺は途中から読み始めたので話はあんまりよく分からないのだけど、清楚な感じのお姉ちゃんがじょじょに肉欲にとらわれていくさまはわりといやらしくてよかった。終わり方はすこし語り足りないかなって感じがしなくもないが、狂気と妄執の入り混じる悪くないエンディングだったと思う。咲香里「太陽が落ちてくる」。何やら非常に幸せそうな初体験。現在16話で、エロ漫画としては長いほうだが、しっかりと作られている感じでいいと思う。絵も上品ながら肉感的だし。榊原薫奈緒子「おきらく仮天使 エンジェルW2」。二人の天使見習いの女の子が、天使の試験に合格するためいやらしい目にあいつつ、不幸な人々を救うため奮闘するというお話。何やらでたらめな救済法がいい加減で楽しい。絵も寸詰まった感じで可愛らしく、コロコロと変わる頭身も遊び心に満ちている。そして、エロのほうも十分ムチムチとしていて、楽しさといやらしさを両立させているあたりは立派。
 亜神和美「HYSTERIC ALIVE」。一挙2話掲載という、ちょっと異例の形態。合計ページ数は32ページ。絵が力強く、エロも激しいのでかなり読みごたえあり。ZERRY藤尾「エイリアン交差点」。こちらは8ページと短い。軽く読めるのだが、やはり短くてもの足りなくもあり。

【雑誌】Dokiッ! 2月号 竹書房 B5中
 山本夜羽「やさぐれJ-Blues」は、元天才のJリーガーと病身の少女の物語。Jリーガーのほうが札幌のチームに所属していたが、二落ちに伴いリストラの対象に。故障もあってどん底の彼を、熱烈なファンであった少女が慰める……って感じ。いかにも時事ネタって感じ。それから井荻寿一が読切で登場。井荻寿一の描く女性は、淡白な描線の中に色気があって、清楚でかつ淫らという印象を与える。なかなか両立しえない二つの性質を、実にうまく融合させているのが魅力。今回の話はみんなの憧れの女性美術教師が、生徒の策略にハマって犯されるという話なのだが、描写自体がドギツイわけでもないのにとてもいやらしい。

【単行本】「Jドリーム完全燃焼編」4巻 講談社 新書判
 W杯アジア地区予選もいよいよ佳境である。大一番、サウジアラビア戦で日本は伊達を失い苦戦を強いられる。予選の厳しさがだいぶ出てきて面白くなってきたが、人の出入りが激しくてドラマ的にはいまいち軽く思えてしまう。ただ、予選の厳しさに関してはすでに「Jドリーム」で十分語り済みなので、今回はこんなものでもいいのかな、とも思う。W杯本大会の話に早く入りたいところだろうが、予選をあんまり簡単にクリアしてしまうと「Jドリーム」での闘いはなんだったのかということになりかねないので微妙なポジションであるとはいえるだろう。
 まあ、それはともかくサッカーのプレイ一つひとつの描写は、技もいろいろと利いていて見ごたえがある。ダイレクトパス、ループシュートなど通好みのプレイがさりげなく描かれているあたりはさすが。


1/14(木)……パラクタ屋まん太

 昨日の日記のモーニングの項目にて、吉田戦車「油断ちゃんラグジュアリー」が最終回であったことを書き漏らしていた。この日記は俺用メモでもあるので、昨日日記にも追記しておく。

【雑誌】週刊少年チャンピオン 1/28 No.8 秋田書店 B5平
 巻頭カラーは「本気!II 九(カブ)外伝」。今号と次号で計41ページ掲載。板垣恵介「グラップラー刃牙」は、刃牙のおやじの若い頃の話がずっと続いている。なんかもう常識をはるかに逸脱した強さ。このくらいハッタリが利いているほうが面白くていい。能田達規「おまかせピース電器店」は、一日中ゲームをやっていたい健太郎が、現実をゲーム的に翻訳してくれる機械を発明し誰にもジャマされずにゲームに没頭しようとするが……というお話。ヴァーチャルなリアルを作るのではなく、リアルをヴァーチャルにしてしまうという、柔らかい頭でないと出てこないような発想がナイス。

【雑誌】増刊ヤングジャンプ漫革 2/20 VOLUME-16 集英社 B5中
 駕籠真太郎「超伝脳パラタクシス」が掲載。フラミンゴやコットンコミックに掲載される作品に比べて、毒ははるかに少ない。大災厄のため荒廃した地球で、冷凍睡眠により難を逃れた男女が目覚める。しかし、そこで彼らが見たものは人間の身体のパーツをつなぎ合わせた、「人間」とも「機械」ともいいがたい奇妙なものだった……というストーリー。描写はグロテスクであるが、奇妙な異世界を骨太に描写する本格的なSFでもある。スプラッタ系の描写に弱い人にはつらいだろうが。ああ、でも駕籠真太郎の本領はこれでは味わい尽せない。やはりフラミンゴとコットンコミックを読むべし。
 巻頭カラーはみやすのんき「Fight!!」。安っぽいけど、ストレートに煩悩に忠実で潔い。みやすのんきの作品は割り切りがしっかりしててけっこう好きなのだ。作:光風治+画:森永茉裕「性職者」。昔から太めのコロコロした身体つきでブスといわれてきた女の子がテレクラでSEXにハマり、男を悦ばせる充実感に目覚めていく。そしてピンサロを経て、出張性感マッサージへ。新しいテクニックを次々と覚え、誰よりも人を気持ちよくさせられる自分に自信を持つようになっていく。他人を気持ち良くさせることによってどんどん輝いていく女の子の姿はなかなか美しい。太めのぽちゃぽちゃした娘ってけっこう好き。絵はやまさき拓未と、「二軍昆虫記」の森徒利を足したような感じ。

【雑誌】ヤングキング 2/1 No.3 少年画報社 B5中
 佐野タカシ「イケてる2人」。うまい。唐突な展開で始まったと思ったけど、切なさと幸福感をなんともうまく演出している。有村しのぶ「HOPs」。毎度上品っぽいH。女性の肌の質感が非常にうまく表現されている。男の身体の描き方は相変わらずうまくないけど。柴田昌弘「サライ」は今回もけっこういやらしい。肝心の部分だけすっ飛ばしているだけに、かえってその部分で想像をかきたてる。
 全体にライトにHな作品に面白いのが多い雑誌だ。

【雑誌】ビッグコミックスペリオール 2/1 No.3 小学館 B5中
 岡崎二郎「国立博物館物語」。超大型コンピュータでシミュレーションした恐竜社会の進化の様子を丹念に描き続けているが、ヒトと化した恐竜できちんと家族ドラマやら社会問題などまでやってしまうあたりは大したもの。この実直で丁寧なストーリー構築がなんとも岡崎二郎らしい。高田靖彦「演歌の達」は、達とラジオ局の女性ディレクターの恋愛編が続く。達のような気持ちのいい男には幸せになってもらいたいもの。それにしても、二人の表情がイキイキしててとてもいいなあ。


1/13(水)……ああっ、てがみさまっ

 小田原ドラゴンの「おやすみなさい。」だが、タイトルの最後には「。」がつく。単行本が出てからすでに10か所くらいで同じ間違いを見たような気がする。要注意なのだぜ。

 昨日の日記に書いたせいか、KASHIみちのくさんが掲示板(#1078)に書き込みをしてくださった。ホームページを開設したことにより、こういううれしい出会いがいろいろと増えたのは大きな収穫。ただ、もちろんうれしくないメールがくることもある。驚いてしまうほど無礼だったり、虫のいいお願いをしてくる人もいる。KASHIみちのくさんのメールが届いた同じ日にも、一通不愉快なメールが来ていた。ポストペットで届いたら、ペットを100発くらい殴ったうえ監禁凌辱してしまいたくなるようなものが来ることもある(といっても俺はポスペ使ってないけど)。
 とはいえ、実際に送られてくるメールの多くは、こちらが恐縮してしまうくらいに丁寧なものや、本当に励ましになるようなありがたいものだったりする。そういう人たちにはありったけの感謝を捧げたい思い。厳しい批判のご意見や間違いの指摘なども、こちらとしては参考になるので、ガシガシ送っていただけるとうれしい。的を射た批判(できれば愛があるとベスト)は、的を外した称賛よりも、ときに気持ちがいいものだ。ただ、やっぱり無礼なのは勘弁だなあ。

【雑誌】週刊少年マガジン 1/29 No.7 講談社 B5平
 塀内夏子「Jドリーム飛翔編」。日本ピンチでついに吉川投入。サイド攻撃は美しいので好きだ。本島幸久「蒼き神話マルス」。血しぶきあげてお馬さんが走る。競馬について全然知らない俺にさえ分かるその強引なたわけぶりが頼もしい。以前の野良馬なんてかなり笑ったし。競馬好きの人の反応も、とことんけなすのと、たわけていることが分かってて面白がるのの二種類に、真っ二つに分かれるようだ。

【雑誌】週刊少年サンデー 1/29 No.7 小学館 B5平
 満田拓也「MAJOR」。「じごくのとっくん」がずっと続く。絵は洗練されているけど、「努力・根性・勝利」の古き良きスポーツ漫画の伝統をしっかりと受け継いでいる。藤田和日郎「からくりサーカス」。命を弄ぶような、しろがねやら自動人形たちにナルミの怒り爆発。自分がなぜ子供たちの悲鳴に魂を震わせるのか、闘いの中で自分を突き詰めていく姿がかっこよかった。北崎拓「なぎさMe公認」は、なぎさ&まーくんの愛の逃避行が、予想を上回る腰砕けな結末に。でも後半はちゃんとベタベタにヌルいラブコメでしめくくってきて、うまいですな。三好雄己「デビデビ」。最近巻末が指定席となりつつあるが、やはりテンションがだいぶ落ちてきているし、仕方ないところか。今回なんか舞台が雪山。これじゃあ乳はおろか、パンチラさえできぬではないか。こんなんじゃいかん。今さらパンツなぞ見てもそれほどうれしくはないのだが、本当に必然性のないパンチラにはわびさびがあって趣深いものがあるというのに。

【雑誌】ヤングサンデー 1/29 No.7 小学館 B5中
 いやー、なんといっても遊人「桜通信」だろう。ここ数回のお話を支配していた「メガネをとったらすごくかわいく変身する女の子」と、冬馬がセックスをしたと思ったら、実にアッサリと切れて今度はいきなり吹っ切れてしまった冬馬がいけしゃあしゃあと麗とヨリを戻さんとする。あまりといえばあまりにも急速でご都合主義な展開にあっけにとられた。この無軌道ぶりはハンパじゃない。細野不二彦「太郎」。ガルシア戦から一気に一年半が過ぎ、太郎は信用金庫を辞めてボクシング一本に。サラリーマン編はあんまり好きじゃなかったので、ボクシングのほうに集中するというのはうれしい。山本英夫「殺し屋-1-」。垣原に因縁をつけた男の殺されざまがすさまじい。尻から銃弾を打ち込まれ、尻と口から血を噴出しつつ地獄車状態でグルグル回転しながら、マンションの高い階から地面に落下していく。邪悪で血みどろの暴力描写がたまらない。スゴイ。
 あと今号の注目は小学館新人コミック大賞ヤング部門入選作、花澤健吾「退屈な月」。絵柄はなんだかヤンマガ系っぽいが、ところどころタッチが若狭たけしに似ているように思える。学校の屋上でイジめられ素っ裸にされて置き去りにされた男・武田に、その間屋根の上で昼寝していた女の子・大場久美子が声をかける。くったくなく話しかけてくる彼女だが、実は同じイジめられっ子だった。下らないことを話し奔放に振る舞う彼女は、武田に明るく楽しそうに「一緒に死なない?」と持ちかける。一緒に死んでくれるならヤらせてあげる、とも。実に明るく屈託なく命を捨てようとする彼女の姿は、なんとも透明感があるが、そこに至るまでの切なさとか考えるとまた深い味わいがある。そこまで自分を捨てきれない武田の最後のセリフもまた秀逸。これもまた一つの青春物語。面白かった。

【雑誌】モーニング 1/29 No.7 講談社 B5中
 かわぐちかいじ「沈黙の艦隊・海江田四郎青春譜 瑠璃の波風」は、島の漁師と行政の折衝とか、わりと地味な舞台で進んでいるのだが、なんだかそれなりに面白い。大風呂敷を広げすぎない、地に足のついた描写が魅力。井上雄彦「バガボンド」。今号はちゃんと掲載。武蔵はずっと木につりさげられたままだ。動きがほとんどないのに読ませてくるあたりはさすが。ヒラマツ・ミノル「ヨリが飛ぶ」。ヒロコが本領発揮して、圧倒的なパフォーマンスを見せつける。ついていけるかもしれないのは、一人ヨリのみ。激しい描写が気持ちいいなあ。
 新人さんのデビュー作、幸村誠「屑星の空」は、宇宙で人工衛星の残骸などの粗大ゴミを拾うことを仕事にしている人々の話。その中の一人、ユーリは昔、高々度旅客機の事故で妻を亡くしていた。そのままの気持ちを整理する術を見つけるため、彼はひたすら宇宙に出て浮かんでいる残骸を拾い集める。最近では珍しい、骨太な宇宙モノでありなかなか面白かった。そういえば15年くらい前は、宇宙モノの漫画はすごく多かった。しかし、最近ではめっきり見ない。宇宙、超能力といった題材は、一時期乱発されすっかり安っぽくなってしまった。宇宙モノは漫画にとって鬼門とさえなりつつあるようにも思える。だが、宇宙に行くということがかなり身近になり、真にリアリティのある描写が可能になるだけの資料がいっぱいある今だからこそ、しっかりとした宇宙モノが読みたいなあと思う。そんなわけでこの「屑星の空」はわりと好感が持てた。
 吉田戦車「油断ちゃんラグジュアリー」は今号で最終回。赤サソリがいったん商店街から手を引き、しばらく油断ちゃんはスパイ業から離れ時は流れる。成長した油断ちゃんもなかなかかわいい。

【雑誌】まんがタイムジャンボ 2月号 芳文社 B5平
 こうの史代「願いのすべて」後編(8ページ)を読むために購入。少し古めの画風ではあるのだけど、柔らかくて温かな雰囲気が非常にいい。また背景なども描き込まれていて、一枚絵でも勝負できる。目次のところにあるイラストもいい雰囲気だ。トーンを使わないカケアミ系の画風に俺はかなり弱いので、この人の絵柄もやはり大好きなのだ。とはいえ、同人誌のほうが好き勝手に描いていて面白いとは思う。作風が荒れない程度に、もっとたくさん作品を描いてくれるとうれしい。


1/12(火)……いもむしごーろごろ

 え〜と、なんかドルフィンとかで描いているKASHIみちのくさんらしい方からメールが届いた。返事を書こうとしたらメールアドレスが不正だったらしく、ちゃんと送れない。本物のKASHIみちのくさんかどうかメールだけでは判断がつかないのだけど(すごく短い文面だったし)、もしホンモノだったらすごくビックリ&うれしい。というわけでこのページを見てくださるかどうか分からないながら、いちおうこちらでお返事してみる。

 いつも「馬鹿っぽい」などと書いてしまってますが、アレは褒め言葉のつもりです。最近のエロ漫画では作品を最も楽しみにしている人の一人です。アレだけ楽しそうな雰囲気が伝わってくる漫画もなかなか見ません。ドルフィン等に掲載された作品は、今のところそこだけ雑誌から切り抜いて保存していたりしますが、早いとこ作品が単行本にまとまることをお祈りしています。いや、ホントに楽しみにしてます。

【雑誌】月刊少年マガジン 2月号 講談社 B5平
 とだ勝之「Mr.釣りどれん」。プロ野球、高校野球、それから野球漫画のパロディ尽くしの釣り大会。かなり遊びまくっている。少年漫画らしい寸詰まりで健康的な絵のわりに、読売巨人軍に関してのパロディはけっこう毒もあり。志名坂高次「受験の帝王」。マグナムが下宿生活を開始。先輩の勧めてくれたアパートの臭さにすぐ引っ越して、かわいい女の子ばかりの下宿へ。かなり「ラブひな」的状況だ。愛原司「VIVA!CALCIO」。ああ、もう相変わらずオタクなサッカー漫画だなあ。日本ではあんまり知る人もいないであろう、ラツィオのDFの名前とかまでちゃんと書いてあるあたりがなんとも。間部正志「SPEED KING」。ちゃんとした陸上漫画なのに、キャラクターの目つきが異様に邪悪。あとやはり不良娘のエミがかわいいのであった。そして、石川けんじ「MMバタフライ」。なんだかすごく良かった。水泳漫画なのだが、水を切り裂いて突き抜けていく泳者の視点が非常に迫力がある。身体から沸き上がってくる爆発的な力、身体が吸い込まれていくような水の流れ、なんとも気持ちがいい。

【雑誌】ヤングチャンピオン 1/26 No.3 秋田書店 B5平
 久寿川なるおの競輪漫画「打鐘からはじまる」が新連載。女性競輪選手が主人公。久寿川なるおは、前はソープ嬢や競馬の漫画もやったし、なかなかオヤジくさいところをついてくる。岡田和人「教科書にないッ!」。新キャラクター、控えめに見えて意外と大胆な行動をとる新人女教師登場。細身なのにやたら乳がデカい。う〜ん、サービス満点。でも肝心なところまでは見せないところが、もどかしくてまたいいのだ。富沢ひとし「エイリアン9」。なんだかどんどんハードな展開になりつつあるが、先の予想がつかない。何をしでかすか分からない面白さ。そして単行本第1巻が2月12日発売。建国記念日の次の日は、「エイリアン9」の日だ。岡田ユキオが読切で登場。タイトルは「サディスティック・ミカ・バンドー」。とある高校のクラスにとびきり美人の転校生がやってくる。彼女を見て一番ビックリしたのは、クラスの男・岸田。岸田は小学生のころ、女王様然として振る舞う彼女に奴隷扱いされ屈辱的な生活を送っていたのだ。成長し、より妖艶な魅力を身につけて帰ってきた彼女に岸田はドキドキしっぱなし、という感じのお話。岡田ユキオの描く女性は、相変わらず色っぽくて小悪魔的な魅力をたたえていていい。川島よしお「さくらんぼ論理」。ああ、くだらねえ〜。色気がふんだんに無駄に使われていて楽しい。

【単行本】「ボンデージフェアリーズ」2、3巻 久保書店 A5
 再版本である。俺は旧版のほうは2巻だけ買い逃していたので、再版はけっこううれしい。
 ストーリーを要約すると、森を守る妖精の少女が昆虫や小動物とSEXする、となる。なんといってもその昆虫の描写がスゴイ。こういうふうに昆虫とSEXするとかなったら、普通の漫画だったら少しくらい擬人化する。目を人間のキャラクターっぽく描いたりといった感じで。しかし、この漫画はそういうのはまったくなし。ゴキブリやらカミキリムシやら、ザリガニやらがとことん写実的に描かれるのである。その詳細な描写には、虫好きな人々の業の深さを感じずにはいれない。そしてそれとミスマッチなのが、昆虫たちの性器。ここだけは人間と同じ形なのだ。それがまた昆虫の姿と同じくらいリアルに、愛をもって描かているのである。
 絵だけでなく、話もまた面白い。各ストーリーに盛り込まれた、下らないダジャレとかもなかなかのキレ味。そして虫と妖精なのになんだか妙にいやらしいのだ。これで興奮してしまうというのは、はなはだ悔しいのだが、リアルちんぽの威力は大したものなのである。
 全3巻が再版されたが、俺のオススメは短編集である2巻と3巻。1巻はちょっと重めの話だし、虫のバリエーションが2〜3巻と比べて少なめなので、まずは2〜3巻から挑戦してみてほしい。虫嫌いの人にはツライかもしれないけど。

【単行本】「球魂」2巻 岩田やすてる 小学館 B6
 熱血卓球漫画、である。しかし、その読み口はかなり濃い。別に邪悪なことをしているわけではない。きちんと卓球しているのである。でも妙に濃いのだ。まず絵柄のクセがとても強い。とくにキャラクターの表情は暑苦しく、爽やかさがまったくなく脂っこい。オヤジ系の脂っこさともまた違う。キャラクターたちはどれもこれも、容姿的にはまったくかっこよくない。だけど面白い。岩田やすてるの漫画は、「MAD JAM」もそうだったが、力が入っていて人々もみんな邪悪な表情をしているのに、なんだか妙にハズしているの。別に表現的にすごいことをやっているわけではなく、案外まともなことをやっているのに、どうにも間違った感じの面白さを感じる。そこらへんのナチュラルなズレっぷりが楽しい。


1/11(月)……ちくわぶ大魔神

 横浜ベイスターズの契約更改が全選手終了。契約更改のラストバッターがヤクルト→近鉄を経て入ってきた荒井だったのはちょっと笑っちゃうが。ベイスターズの総年棒は、ついに12球団の中でジャイアンツに次いで2番めにまで上昇したらしい。一億円以上の選手を数えてみても、投手は佐々木、野村、斎藤隆、野手は谷繁、駒田、ローズ、石井、鈴木尚で全部で8人いる。野手のレギュラーは半分以上が1億円プレーヤーで、残りの3人(進藤、佐伯、波留)も5000万円以上。ちょっと前までは全球団の中で10位とかだったのに。隔世の感。それにしてもお金いっぱいもらえてうらやましいなあ。

【雑誌】コミックビーム 2月号 アスペクト B5平
 志村貴子「敷居の住人」は、回を重ねるにつれ面白くなってきたと思う。キャラクターそれぞれに味が出てきた。なんといっても内気な眼鏡娘の中嶋さんがいい。絵も清潔感があってオシャレ。永野のりこ「電波オデッセイ」は、中学生男女を狭い空間の中で煮詰めて煮詰めて、追い込んで追い込んでいく過程がたまらない。小賢しく物事を考える少年少女時代を送った人ならば、必ず身に覚えのあるような思考を、安易な笑いや日々の雑事にまぎらしたりせず徹底的に研ぎ澄ませていく。自分以外の誰も自分を救ってはくれないが、自分以外の誰もが敵というわけでもない。とことんシビアで、とことん暖かい。
 馬頭ちーめい「BREAK-AGE」は、次号で最終回。いろいろな伏線などがバタバタと、駆け足で収拾をつけられていく。少し詰め込みすぎのような気も。竹谷州史「PLANET 7」。O次郎の生い立ちが語られ、そして第7惑星が少しずつ裏の姿を見せ始める。物語はこれから本番という感じ。線がぶっとくてカケアミを多用した、黒々とした絵柄は今回も気持ちがいい。羽生生純「恋の門」。門が去って虚脱状態の恋乃は、門に追いすがる。しかし、前号で門が押しつけられた子供が出てきて、冷ややかな雰囲気。次号は修羅場か。それにしてもこの漫画は、先の展開の予想が非常にしづらい。確固として不安定な足どりがかっこよくもある。
 肉柱ミゲル「ミラクルぶたおんな」。肉柱ミゲルはなんだかギャグがだんだんこなれてきて面白くなっているような気がする。今回は、本当に優しいのはおとうさんゴリラかおかあさんゴリラかということで口げんかになった子供たちの話。ここでいうおとうさん/おかあさんゴリラとは、特定の動物を指すのではなくあくまで「父、母の属性を持つゴリラ」という概念的な存在なのだが、それに「定職にもつけねえでバクチばっかやってる」などと勝手にキャラクターづけするあたりがわりといい感じ。カネコアツシ「BAMBi」。最後のオチも利いているし、キャラクターの性格づけもうまい。切れ味抜群。
 園山二美は女の人生の4分の1を支配する「生理」がテーマ。はいずり回る主人公の女性の姿は、生々しく不様でもあるのだが、それでもかっこよく見せてしまうのは描線の美しさのたまものといえるかもしれない。そしていましろたかし「釣れんボーイ」。この覇気のなさ、他力本願ぶり。本格的ダメ人間を描いた異色作。たまらん。
 で、アスペクトからは今月下旬(コミックビームのメールサービスによると30日)に、松本充代の単行本「潜む声、鏡の中の遺書、その他の短篇」が発売されるようだ。これは1998年についに二度目の死を遂げたガロ(青林堂)掲載作品をまとめた単行本になる模様。

【雑誌】週刊少年ジャンプ 1/31 No.7 集英社 B5平
 桂正和「I''s」は、一貴が告白するがやはりというオチ。次号あたりで泉ちゃんがからんできそうなところ。でもいつきがいいなあ。武井宏之「シャーマンキング」。やはり、というかシャーマン武闘会みたいなものが始まってしまう。ジャンプパターン。樋口大輔「ホイッスル!」。なんとなく、サッカー漫画って野球漫画に比べてアナクロなものが多いような気がするなあ。というわけでこれも。絵は今風にきれいだが、センス的にはかなり古め。でもけっこう好きだったりする。

【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 1/25 No.6 小学館 B5中
 榎本ナリコ「センチメントの季節」が復活。例によって例のごとく、思春期の女の子の心の揺れと性を描く。手堅くまとめて絵もきれい。浦沢直樹「Happy!」。今回もウィンブルドン決勝戦が白熱していてなかなか面白かった。青山広美「ダイヤモンド」。今回は両軍のエース、早川兄弟の因縁の過去が語られる。大げさだがけっこうドラマを見せる。岩明均「七夕の国」は今回で最終回。連載で読んでいる限りではいまいち盛り上げ、突っ込みが足りなかったような気がする。単行本でまとめて読むとまた違うのかもしらんけど。

【雑誌】漫画サンデーフォアマン 1/22 No.2 実業之日本社 B5中
 最近読んでなかったのだが、いつの間にやらカサギヒロシ、秋月めぐる、パンチョ近藤、そして東陽片岡とクセモノが揃っている。
 その中で一番楽しめたのは東陽片岡「裏町劇場」。いつもと同じで、しみったれたオヤジどもが愚にもつかない人生をあっけらかんといきていく様を、味のある絵で丁寧に描き込んでいる。秋月めぐる「清志朗の蹴り!!」(原作:田中誠一)は、うらぶれたサラリーマンがムエタイに目覚めていくという話みたいだが、まだ導入部。やはり秋月めぐるにはサッカー漫画を描いてほしいのだが、とりあえず漫画界に残ってさえいればいずれチャンスもあるかもしれない。描き続けることが生きること、だ。それにしても、なんか山田貴敏にだいぶ似てきたような。カサギヒロシ「クマロボ」は、女の子がツキノワグマ型のロボットに閉じ込められて出られなくなってしまい、ホンモノのクマと間違えられ人々をパニックに陥れる。連載第3話でここまでを読んでないのでなんともいえないところはあるが、女の子のキャラクターはやはり芯が強そうで、それでいて艶があって魅力的。


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